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でも2016 年 4 月に閣僚会議において 薬剤耐性 (AMR) 対策アクションプラン が取りまとめられ, 薬剤耐性サーベイランスが目標の1つとなり, それを担う主要機関としての地 1) 方衛生研究所の役割についても言及されている. また, わが国における薬剤耐性菌の状況,1980 年代 グラム陽性

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平成 28 年度愛媛衛環研年報 19 (2016)

愛媛県の医療機関で分離された薬剤耐性菌株の遺伝子解析

仙波敬子 園部祥代 木村俊也*1 井上智 四宮博人

松井真理*2 鈴木里和*2

Genetic analysis of antimicrobial resistant strains isolated in medical institutions in Ehime

Keiko SEMBA, Sachiyo SONOBE, Toshiya KIMURA, Satoshi INOUE, Hiroto SHINOMIYA,

Mari MATSUI, Satowa SUZUKI

In recent years, increase in infections with antimicrobial resistant bacteria has become a global problem. Antimicrobial resistant bacteria have a wide variety of bacterial species and resistant mechanisms, and their regional characteristics are also observed. Thus, it is important for controlling antimicrobial resistance to recognize the situation of these antimicrobial resistant bacteria detected in various regions. Therefore, in order to investigate the status of antimicrobial resistant bacteria in Ehime prefecture genetic and molecular epidemiological analysis were performed using various bacteria isolated in medical institutions; carbapenem-resistant Enterobacteriaceae (CRE), methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA), penicillin-methicillin-resistant Streptococcus pneumoniae(PRSP), multidrug-methicillin-resistant Pseudomonas aeruginosa(MDRP), extended-spectrum lactamase(ESBL) producing bacteria, AmpC

β-lactamase(AmpC) producing bacteria and Acinetobacter spp. As the results, blaIMP-6 and blaGES-24 were detected in

isolated CRE strains, and we clarified that the dissemination of blaGES-24 was occurred by horizontal transfer of plasmid

among 12 CRE isolates. Furthermore, we revealed the detection status of community-acquired MRSA(CA-MRSA) in hospitals using POT method based on molecular epidemiological analysis. We also found that serotype replacement and earning of multi-antimicrobial-resistance were progressing in PRSP, the genotype of isolates with metallo-β-lactamase gene in MDRP was all IMP-1 type, and CTX-M-9 group was the most in ESBL producing bacteria. Sixty-four % of Acinetobacter spp. isolates was A. baumannii, and three of these showed resistant to carbapenem and fluoroquinolone, suggesting that these are epidemic clonal lineage, international clone II.

Keywords : carbapenem-resistant Enterobacteriaceae (CRE), methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA), penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae(PRSP), multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa(MDRP), extended-spectrum β-lactamase(ESBL)producing bacteria, AmpC β-lactamase(AmpC)producing bacteria, Acinetobacter baumannii じめに 薬剤耐性菌による感染症が世界的に拡大している.こ のこと ,公衆衛生および社会経済に重大な影響を与え ており,医療機関のみの問題で なく,健常者も含め国 民一般に共通する重要課題であり,監視と対策の取り組 みが急務となっている.2015年5月に世界保健機構総会 で薬剤耐性に関する国際行動計画が採択され,わが国 愛媛県立衛生環境研究所 松山市三番町8丁目234番地 *1 八幡浜保健所 *2 国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター第一室

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でも2016年4月に閣僚会議において「薬剤耐性(AMR)対 策アクションプラン」が取りまとめられ,薬剤耐性サーベイ ランスが目標の1つとなり,それを担う主要機関としての地 方衛生研究所の役割1)についても言及されている. また,わが国における薬剤耐性菌の状況 ,1980年代 グラム陽性菌のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) などが主流であった2)が,続いてグラム陰性菌である薬剤 耐 性 緑 膿 菌 ( MDRP ) , 薬 剤 耐 性 ア シ ネ ト バ ク タ ー (MDRA)のアウトブレイク3),そして近年 ,基質特異性 拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌およびグラム陰性菌 感染症治療の切り札的抗菌薬のカルバペネムに耐性を 獲得したカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)が問 題となっている4).薬剤耐性菌 様々な菌種や耐性機序 があり,それによって対策が変わってくる.また,地域によ って分離菌株に特性があると報告されていることから,菌 種や地域の分布状況を把握すること 薬剤耐性菌対策 において重要であると考えられる. そこで,我々 ,愛媛県における薬剤耐性菌の分布状 況を把握するため,県内の医療機関において患者検体 から分離された薬剤耐性菌株を収集し,解析を実施した ので報告する. 材料と方法 1 対象菌株 (1)カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE) ア カルバペネマーゼ遺伝子型別:2014 年~2016 年に患 者検体から分離された 56 株 イ プラスミド DNA 解析:2008 年~2016 年に患者検体か ら分離された blaGES-24を保有する 12 株 (2)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) 2014 年に患者検体から分離された 223 株 (3)ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP) 2014 年~2016 年に患者検体から分離された 74 株 (4)薬剤耐性緑膿菌(MDRP) 2014 年~2016 年に患者検体から分離された 30 株 (5)基質拡張型 β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌 2014 年~2016 年に患者検体から分離された 364 株 (6)AmpC 型 β-ラクタマーゼ(AmpC)産生菌 2014 年~2016 年に患者検体から分離されたセファマイ シン耐性の Escherichia coli また Klebsiella spp. 31 株 (7)アシネトバクター属菌 2014 年~2016 年に患者検体から分離された 70 株 2 検査方法 (1)CRE ア カルバペネマーゼ遺伝子の検出5) ディスク法を用いたカルバペネマーゼ産生性のスクリー ニング検査後,PCR 法によるカルバペネマーゼ遺伝子 (IMP-1 型,IMP-2 型,VIM 型,NDM 型,KPC 型, OXA-48 型,GES 型)の検出を行った. イ シークエンス解析 検出されたカルバペネマーゼ遺伝子についてサンガ ーシークエンス法により塩基配列を決定し BLAST 検索 により遺伝子型を決定した. ウ プラスミド DNA 解析

blaGES-24保有菌株の 4 菌種 12 株(E. cloacae 4 株,K.

pneumoniae 6 株,K. oxytoca 1 株,S. marcescens 1 株) について,次世代シークエンサーMiSeq 解読および Global Plasmidome Analyzing Tool(GPAT)による解析 国立感染症研究所細菌第二部および病原体ゲノム解析 研究センターで実施した. (2)MRSA ア 耐性遺伝子の検出5) ディスク拡散法による MRSA 同定後,PCR 法による耐 性遺伝子(mecA)の検出を行った. イ 分子疫学解析 mecA 遺伝子を確認した 213 株について,PCR-based ORF Typing 法(POT 法)(関東化学)による解析を実施し た. ウ 表皮剥離毒素(ET-A)遺伝子および白血球破壊毒素 (PVL)遺伝子の検出6)~8) (3)PRSP ア 血清型別9) 8 つの Multiplex PCR 反応を実施した.プライマー配 列 CDC ホームページ(http://www.cdc.gov/streplab/ pcr. html)を参照した. イ 薬剤耐性遺伝子の検出 ペニシリン耐性に関わる遺伝子(pbp1a,pbp2b,pbp2x) 5) およびマクロライド耐性遺伝子(mefA,ermB)9)の検出を行 った. (4)MDRP ア メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)遺伝子の検出5) SMA ディスク(栄研化学)を用いた MBL 産生スクリー ニング検査後,PCR 法による MBL 遺伝子(blaIMP-1,

blaIMP-2,blaVIM-2,blaNDM-1)の検出を行った.

イ 分子疫学解析 POT 法を実施した. (5)ESBL 産生菌

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クラブラン酸,スルバクタム含有ディスク法を用いた ESBL 産生性スクリーニング検査後,PCR 法による ESBL 遺伝子(blaCTX-M-1group, blaCTX-M-2 group, blaCTX-M-9 group)

の検出を行った. (6) AmpC 産生菌

ア AmpC 遺伝子の検出10)

ボロン酸含有ディスクを用いた AmpC 産生性スクリーニ ング検査後,PCR 法による AmpC 遺伝子(MOX 型,CIT 型,DHA 型,ACC 型,EBC 型,FOX 型)の検出を行っ た. (7)アシネトバクター属菌の検査法 ア 薬剤感受性試験 センシディスク(BD)を用い,判定 ディスクの添付文 書判定基準に従った.使用ディスク セフォタキシム (CTX),セフタジジム(CAZ),イミペネム(IPM),メロぺネ ム(MEPM),アズトレオナム(AZT),セフェピム(CFPM), ピペラシン(PIPC),アミカシン(AMK),シプロフロキサシ ン(CPFX),ミノサイクリン(MINO),コリスチン(CL), ス ルフィソキサゾール(G.25)の 12 剤を用いた. イ 菌種同定試験 ropB 遺伝子を対象とした Multiplex PCR 法11)による菌 種の鑑別 ウ OXA 型 β-ラクタマーゼ遺伝子及び MBL 遺伝子の検 出5) PCR 法による OXA 型 β-ラクタマーゼ遺伝子(OXA-51-like , OXA-23-like , OXA-40/24-like , OXA-58-like , ISAba1)の検出を行った.カルバペネム系抗菌薬に耐性 を示し,OXA 型 β-ラクタマーゼ遺伝子が検出されなかっ た株について ,MBL 遺伝子の検出を実施した. 本研究 ,愛媛県立衛生環境研究所倫理審査委員会 設置要綱に基づく,許可を得て実施した. 結果および考察 1 CRE CRE 2014 年 9 月に五類感染症の全数把握対象疾 患となった CRE 感染症の原因菌である.また,カルバペ ネマーゼを産生する菌をカルバペネマーゼ産生腸内細 菌科細菌(CPE)という.CPE が保有するカルバペネマー ゼ遺伝子 ,多くの場合プラスミド上に存在し,接合伝達 などにより腸内細菌科の他の菌種にプラスミドが水平伝達 することにより,カルバペネム感性菌が耐性菌となることか ら,CPE について 医療機関等において特に注意が必 要である. 2014 年~2016 年に分離された CRE 56 株であり,8 株からカルバペネマーゼ遺伝子が確認された.検出され た カ ル バ ペ ネ マ ー ゼ 遺 伝 子 , blaIMP-1group( K.

pneumoniae 1 株 ) , blaGES ( E. cloacae 3 株 , K.

pneumoniae 3 株,K. oxytoca 1 株)であった(表 1). IMP-1group 国内で最も多く分離されている遺伝子型 である 12).K. pneumoniae から検出された bla IMP-1group , シークエンス解析の結果 blaIMP-6であることが判明した. 国立感染症研究所のデータによると遺伝子型 地域によ り流行している型が異なり,東日本で blaIMP-1が多く,西 日本で blaIMP-6 が多く検出されている 10).今回検出さ れた blaIMP-6保有株 薬剤感受性試験でイミペネムに感 性を示すため検査で検出されにくいことから,CRE のなか でも特に探知が困難であり注意が必要である.大規模病 院において,プラスミド上の blaIMP-6が長期間に渡り院内 伝播した事例も報告されている 12).また,シークエンス解 析の結果,今回検出された blaGESの 7 株 全て blaGES-24

であった.blaGES 保有の CRE 四国地方で検出されて

表 1 CRE の菌種名と菌株数 菌種 菌株数 カルバペネマーゼ 遺伝子型 Enterobacter cloacae 23(3) GE 型 Enterobacter aerogenes 15 Enterobacter spp. 2 Escherichia coli 2

Klebsiella pneumoniae 6(4) IMP-1 型、GE 型 Klebsiella oxytoca 1(1) GE 型 erratia marcescens 1 Providencia stuartii 1 Citrobacter freundii 5 計 56(8) ( )は CPE の菌株数 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 70 75 77 91 92 93 98 104 106 108 110 122 図 1 MR A の POT1 値別集計結果 POT 型 株 数

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いるが,国内報告数 少なく 13),今後の広がりが警戒さ れている.GES 型 β-ラクタマーゼ ,G170S また G170N のアミノ酸変異によりカルバペネマーゼ活性を有 すると報告がある 14)~16).今回検出された bla GES-24 , G170S のアミノ酸変異を確認し,カルバペネマーゼ産生 株であった.そこで,2008 年~2013 年に医療機関で分 離された blaGES-24保有菌株を加えた 4 菌種 12 株につい

てプラスミド DNA 解析を実施した結果,全て blaGES-24が

約 80kb の IncL/M 上の約 5kb のクラスⅠインテグロン構 造中に検出された.このインテグロン構造中に アミノグリ コシド耐性(acc6’-31),スルホンアミド耐性(sull)に関与 する薬剤耐性遺伝子も存在した(データ示さず).12 株由 来のプラスミドの相同性 ,86%~100%で部分的な挿入 や欠失が認められるが高い相同性を示した.つまり,

blaGES-24を含む IncL/M プラスミドが挿入,欠失などの変

化を伴いながら数年間にわたって複数菌種を含む複数の 株に水平伝達し広がったことが示唆された.

今回の調査の結果から,愛媛県の状況が明らかになっ た.西日本で報告が多く,検査上注意する必要がある blaIMP-6保有菌株および国内で報告数の少ない blaGES-24

が複数の菌種から確認された.今後もこれらの動向を注 視する必要がある. 2 MRSA MRSA ,メチシリンに代表される β-ラクタム系抗菌薬 に耐性を獲得した黄色ブドウ球菌である.MRSA 医療 現場で最も多く検出される薬剤耐性菌であり,感染経路 や細菌学的特徴から院内感染型 MRSA(HA-MRSA)と 市中感染型 MRSA( CA-MRSA) に分類さ れる .HA-MRSA 従来から院内感染原因菌として問題になってお り,院内での感染管理が必要である.また,近年増加傾向 にある CA-MRSA ,病原性が高く,市中で感染を起こ すことから問題になっている17) 223 株中 213 株(96%)で mecA 遺伝子の保有が確認 できた.213 株の POT 法による解析の結果,POT1 が 93 を示す HA-MRSA が全体の 52%を占め,これ 日本の HA-MRSA の 大 部 分 を 占 め る と 報 告 さ れ て い る NY/JAPAN クローンであると推測された 17).また,次に多 く検出された POT1 の値 106 であり,近年増加が懸念 されている CA-MRSA であると推測された(図 1).さらに, POT1~3 の値について,90 種類に分類された.そのうち, 30 種類について 同一 POT 型が 2 株以上検出され,医 療機関別,診療科別に集計しても複数の株が同一の POT 型を示したことから,院内での伝播の可能性が示唆 された.また,ET-A を産生するクローンが示す POT 型で あると報告されている 18)70-18-81 が 6 株検出され,PCR 法により,ET-A 遺伝子を保有していることを確認した.さ らに,米国で問題となっている CA-MRSA である USA-300 が示すとされる 18)POT 型 106-77-113 を示す株が 1 株検出され,PCR 法により,白血球破壊毒素(PVL)遺伝 子の保有を確認した.ET-A を産生するクローンについて 同一診療科での集積もあり,院内での伝播の可能性が 示唆された. 今回の調査結果 感染対策を講じる上で重要な知見 を提供するものと考える. N=70 図 2 アシネトバクター属菌株の同定結果 表 2 E BL 産生菌の遺伝子型別 菌種 株数 CTX-M 型 1 2 9 1/9 UT E. coli 337 81 7 241 2 6 K. pneumoniae 20 7 4 7 2 Raoultella planticola 1 1 E. cloacae 3 3 Proteus spp. 3 2 1 計 364 91 13 249 2 9 表 3 AmpC 産生菌の遺伝子型別 菌種 株数 遺伝子型 CIT DHA UT E.coli 28 21 1 6 K. pneumoniae 3 0 2 1 計 31 21 3 7

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3 PRSP PRSP と ,肺炎球菌の第一選択薬であるペニシリンに 耐性を獲得した肺炎球菌である.肺炎球菌 肺炎,中耳 炎,髄膜炎などの様々な感染症の起炎菌になることがあり, 感染症予防のため,ワクチンが導入されている.これによ り,肺炎球菌による侵襲性感染症の減少が報告されてい るが,その血清型置換が問題となっている.加えて,ペニ シリン耐性肺炎球菌(PRSP)の増加,多剤耐性化も世界 的な問題となっている. PRSP 74 株のうち,肺炎球菌の莢膜多糖体遺伝子 (cpsA)および自己融解酵素遺伝子(lytA)の保有を確認し た 61 株を対象とした.PCR 法の結果,血清型 12 種類 に分類された.最も多く検出されたの 15A/15F であり, 全体の 28%を占めた.年齢別で ,0~3 歳(総株数 24) で 15A/15F の割合が最も多く,40%であった.15A/15F ワクチンに含まれていない血清型である.2013 年から の定期接種の開始により,多くの 0~3 歳児がワクチンを 接種されたと考えられるため,ワクチン接種により血清型 置換が起こっている可能性が示唆された.また,pbp1a, pbp2b,pbp2x の検出の結果,全ての株で 2 つ以上の pbp 遺伝子が変異し,3 つの pbp 遺伝子が変異している ものも 47 株(77%)認められた.マクロライド耐性遺伝子 についても全ての株で検出され,mefA と ermB の両遺伝 子を保有しているもの 15 株(25%)であった.これらの 結果 ,既報 9)と同程度であった.以上のことから,愛媛 県でも国内外の状況と同様に,血清型置換および多剤耐 性化が進んでいることが示唆され,今後も注視が必要で ある. 4 MDRP カルバペネム系,フルオロキノロン系,アミノグリコシド 系に耐性を示す緑膿菌である.緑膿菌 環境中に広く存 在し,医療機関等において 日和見感染を引き起こす主 な病原菌である.2000 年代以降,MDRP による院内感染 事例が数多く報告され問題となっている.カルバペネム系 抗菌薬に耐性を示す MDRP が保有する MBL 遺伝子 プラスミドで伝達されうるので院内感染対策上重要であり, 検出状況を把握する必要がある. 30 株中 20 株(69%)から MBL 遺伝子 blaIMP-1groupが 検出された.これ 国内で最も優位な型である 19).POT 法の結果,8 種類の POT 型に分類された.blaIMP-1groupが

検出された POT1 全て 207 であり,分離例が多いと報 告されている 20)クローンであった.医療機関別に集計す ると同一の POT 型が多数検出された医療機関があり院 内伝播が示唆されたが,今回の調査 株数が少ないため 広域に伝播している型の把握に 至らなかった.また,近 年 GES 型β-ラクタマーゼ産生菌による院内感染事例も 報告されている 21)ため,今後も MDRP の遺伝子型およ び分子疫学解析の動向に注視する必要がある. 5 ESBL 産生菌 ESBL 産生菌 院内および市中感染の原因菌として治 療や感染対策上の問題となっている4).また,ESBL 遺伝 子 カルバペネマーゼ遺伝子同様に耐性遺伝子がプラ スミドを介して他の菌種に伝播することがある 24).今回調 査した ESBL 産生菌 364 株について,菌種別の遺伝子 型の結果を表 2 に示す.ESBL 遺伝子型 ,E. coli で 337 株中 241 株(72%)から blaCTX-M-9groupが検出され最も

多く,次いで blaCTX-M-1group(24%),blaCTX-M-2group(2%)の

順であった.これ これまでの報告 22)~24)と同様の傾向で あった.K. pneumoniae で blaCTX-M-1group と bla CTX-M-9group がともに 35%(20 株中 7 株)検出され,bla

CTX-M-2group 20%(20 株中 4 株)であった.これまでの報告で

,K. pneumoniae blaCTX-M-2group が多いとあるが,愛

媛県において blaCTX-M-1group と blaCTX-M-9group が多かった.

6 AmpC 産生菌 AmpC 遺伝子 様々なグラム陰性桿菌が保有すること があり,菌種特異的に染色体上にコードされているものと, プラスミド上にコードされているもの(プラスミド性 AmpC) がある.後者の主な菌種 Klebsiella spp. や E. coli であ る.また,プラスミド性 AmpC 第三世代セファロスポリン やセファマイシンに耐性を示し,プラスミド 菌株から菌株 へ伝達される.今回の調査で プラスミド性 AmpC を対 象としたため収集菌種 E. coli および Klebsiella spp. と した.その内訳 E. coli 28 株,K. pneumoniae 3 株であっ た.AmpC 産生菌 31 株についての菌種別の遺伝子型 の結果を表 3 に示す.AmpC 遺伝子型 ,CIT 型 21 株 (E. coli),DHA 型 3 株(E. coli 1 株,K. pneumoniae 2 株), 型別不能 7 株(E. coli 6 株,K. pneumoniae 1 株)であった.

CIT 型 世界的に最も広く分布が確認されている型であ り,わが国でも複数報告されている 23).DHA 型 K. pneumoniae を中心に世界的に分布しており,わが国でも まれに報告25)がある型であった. 7 アシネトバクター属菌 アシネトバクター属菌のうち,3系統の薬剤(カルバペネ ム系,フルオロキノロン系,アミノグリコシド系)に耐性を示 すものを,薬剤耐性アシネトバクター(MDRA)という.平 成26年9月に五類定点把握疾患から全数把握疾患の対 象となった.現在まで県内での届出 ないが,ひとたび院 内感染が起こると環境中に広く分布するため排除が困難

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な 菌 で あ る . 主 に 感 染 症 の 原 因 と な る 菌 種 Acinetobacter baumannii が 最 も 多 く , さ ら に , A. baumannii 多剤耐性化し,院内感染を起こしやすい流 行型International cloneⅡ(ICⅡ)があることが報告24)され ている.また,A. baumanniiの分離率が高いほど,高度な 薬剤耐性菌とされるICⅡの検出が高いことが示唆される. 70株中45株(64%)がA. baumanniiであった(図2).また, MEPM(カルバぺネム系抗菌薬)に耐性の株が4株あり, そのうち3株 CPFX(フルオロキノロン系抗菌薬)にも耐 性であり,その他にもCTX,CAZ,AZT,PIPC,G25に耐 性 を 示 し た . こ の 3 株 PCR 法 に よ っ て い ず れ も OXA-51-like β-ラクタマーゼ遺伝子とその上流にISAba1 が検出された.このことにより,ISAba1を獲得したことによ るOXA-51-like β-ラクタマーゼ産生株であることが判明した. 今回の調査により,A. baumanniiの分離率 64%であ った.これ ,全国調査のA. baumanniiの分離率74%26,27) より,若干低いことが分かった.また,CPFX耐性のアシネ トバクター属菌 ICⅡである可能性を考慮する必要があ ると報告26)されている.今回,CPFXに耐性を示す株 4 株であった.そのうちの3株について ,カルバペネム系 抗菌薬およびその他の抗菌薬にも耐性を示していたこと からICⅡであることが示唆された.ICⅡについて ,多剤 耐性化しやすいこと,院内感染を起こしやすいことなどか ら今後も注視していく必要がある. まとめ 薬剤耐性菌による感染症の対策に資する知見を得るた めに県内の医療機関で分離された薬剤耐性菌株の薬剤 耐性遺伝子解析および分子疫学解析を行い,検出状況 を把握した. 1 今回の調査で収集した CRE 56 株のうち,CPE 8 株 検出された.遺伝子型 検査の見落としが懸念される IMP-6 と,報告が稀な GES-24 であった.

2 12 株の CRE が保有する blaGES-24 同一のプラスミド

からの派生であったことが解明された. 3 MRSA の分子疫学解析により院内感染が示唆される 事例があった.また CA-MRSA が 37%検出され,そのう ちの 6 株から ET-A 遺伝子,1 株から PVL 遺伝子の保有 を確認した. 4 PRSP の血清型および薬剤耐性遺伝子保有状況から, 血清型置換および多剤耐性化が進んでいることが示唆さ れた. 5 MDRP から検出された MBL 遺伝子 ,すべて

blaIMP-1groupであった.ESBL 産生菌,AmpC 産生菌の遺

伝子型の検出率 CTX-M-9group(68%)CIT 型(68%) が最も高いことが分かった.これらのことから,県内の薬剤 耐性遺伝子型別の分布状況が把握できた. 6 A. baumannii の検出率 64%であり,そのうち 3 株 が ICⅡである可能性が示唆された. 7 これまで不明であった愛媛県内の薬剤耐性菌の遺伝 子型別などの検出状況を把握し,対策の基礎資料とする ことができたが,今後も動向に注意する必要がある. 本研究 ,愛媛県立衛生環境研究所特別研究事業費 によりなされたものである. 謝辞 菌株の収集に御協力いただきました医療機関,保健所 および,アシネトバクター属菌の菌種同定試験にご協力 いただいた富山県衛生研究所細菌部の綿引正則先生に 深謝いたします. 文 献 1) 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン:国際的に脅威 となる感染症対策関係閣僚会議 2) モダンメディア,58(1),(2012) 3) 国立感染症研究所:病原微生物検出情報,31,197-198(2010) 4) 吉川耕平ほか:日本臨床微生物学雑誌,24(1) ,9-16(2014) 5) 病原体検出マニュアル:国立感染症研究所 6) 山田貴 子ほか :日本 臨床微生物学雑誌 ,26(4)21-25(2016)

7) Zhang K.et al:J Chin Microbiol,46,1118-1122(2008) 8) McClure JA.et al: J Chin Microbiol,44,1141-1144(2006) 9) 園部祥代ほか:愛媛県衛環研年報,18,1-4(2015) 10) 薬剤耐性菌研修会資料:国立感染症研究所 11) 厚生労働科学研究費補助金平成26年度 分担研究 報告書「アシネトバクター属菌の鑑別法に関する研究」 12) 国立感染症研究所:病原微生物検出情報,35,10-11(2014) 13) 福田千恵美ほか:香川県環境保健研究センター所報 15,47-50(2016) 14) 井深章子:日本化学療法学会雑誌,61(3)287-291(2013) 15) 荒川宜新:日本化学療法学会雑誌,63(2)187-197(2015) 16) Bontron S. et al:Antimicrob Agents Chemother,

59(3),1664-1670(2015)

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18) シカジーニアス分子疫学解析POTキット(黄色ブドウ 球菌用)取扱説明書 19) 岡 陽 子 : 日 本 化 学 療 法 学 会 雑 誌 , 53(8) , 479-482(2005) 20) シカジーニアス分子疫学解析POTキット(緑膿菌用) 取扱説明書 21) 国立感染症研究所:病原微生物検出情報,35,227-228(2014) 22) 三好そよ美ほか:医学検査,63(6),714-718(2014)

23) Nakamura. et al : Am J Clin Pathol , 137 , 620-629(2012)

24) Harada Y. et al:J Med Microb Diagn,2,3(2013) 25) 土井洋平:化学療法の領域,28(10)2044-2052(2012) 26)

国立感染症研究所:病原微生物検出情報,35,291-293(2014)

27) 八柳潤ほか:秋田県健康環境センター年報,9,36-40(2013)

表 1  CRE の菌種名と菌株数  菌種  菌株数  カルバペネマーゼ  遺伝子型  Enterobacter cloacae  23(3)  GE 型  Enterobacter aerogenes  15  Enterobacter  spp

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