研究論文
特別支援学級のための音楽鑑賞教材研究I
〜音楽授業観察による指導目標の考察〜
宮下茂 (長崎大学教育学部)
Ⅰはじめに
筆者は、平成19年2月23日に長崎大学教育学部附属養護学校(現特別支援学 校)で開催された公開研究発表会に於ける中学部指導助言者の任を得た。そして 指導助言に先立ち、同年1月29日から3回に亘り同校中学部の藤田美穂子教諭に よる音楽授業の観察を行った。(註1)
それらの観察により、指導助言者として特別支援学校での音楽授業の内容に興 味を抱いたと同時に、演奏家としても降様の興味を抱いた。そして筆者の指導活 動や演奏活動を特別支援学校の生徒に役立てることや、どのようにすれば役立て ることができるか等を考えるようになった。
その後も現在までの約1年間に亘り、同校の音楽授業観察を行ってきた。
また平成19年6月6日から3回に亘り、長崎県立盲学校幼少部に於いて音楽授 業を行う機会を得たことから、同年5月2年目に同校幼少部の牟田秀子教諭による 音楽授業の観察も行った。(註2)
本論分では、これまで筆者が行ってきた授業観察の記録の中から事例を挙げ、
音楽授業に於ける目標として、筆者の考えを明らかとする。 .
Ⅱ特別支援学校及び盲学校の授業観察
これまでの観察内容から、生徒の特徴として捉えられたいくつかの事例を、指 導内容と生徒の反応を基に考察し、以下にまとめる。
(事例1)段階的なリズム学習での生徒の反応について
ここでは様々なリズムを感じることを目標とした授業に於ける、生徒の反応を 例として学習内容と指導内容を考察する。
この授業では様々な音楽に合わせた身体表現を基に、リズム(拍子)の学習を 行っていた。それを3回の連続した授業により、段階的に学習していた。
各回の指導内容と生徒の反応の様子については、【表1】にまとめる。
1回目の授業では、ほとんどの生徒が拍子の違いを理解できず、2拍子を「楽 しい行進」、3拍子を「行進+別の動作」として反応し、生徒たちは拍子の違いを 感じ取っていなかった。そこで2回目の授業では、2拍子のみを取り上げ、2拍
目の強調を繰り返し学習していた。すると3回目の授業では、生徒たちが「歩く リズム」の規則的な流れを「2拍子」として認識し始め、3拍子も「行進(2拍 子)+別の動作」ではなく、本来の「3拍子」の認識が見られた。
これらの観察内容から、一度に多くの内容を盛り込まない、段階的な学習内容、
単純で明快な筋道の立った指導内容の必要性とその効果が分かった。
【表
1
】 段 階 的 な リ ズ ム 学 習 で の 生 徒 の 反 応指 導 内 容 生 徒 の 反 応 分 析 等
[指導1]ピアノ演奏に合わせた、異なる拍子での表現学習
‑・・....・・....・....・H・.目..・.・0・.."・..."・ ・ ....‑......・.......・...........・...・....."・"・....・・・ー............・.................................崎....・..................・"・............・・・・H・H・ ...........・..........・.........・..........・"・"・.....・・0・.... ・......・・・ ...... 目 ・.."..........・.....・
① 2拍子(アイーダの行進)= ① 2拍子に合わせて楽しそうに ① 2拍 子 の 音 楽 に 合 わ せ て 身
足 踏 み 運 動 足踏みを繰り返す。 体表現できる。
‑・・ ・・ ・・・・ ・・・・・・..........・.......・....・ .... 句 ... ‑・・・・・・・M・....・・・・a・・.....................・m ・・....・・・・・H・・・....・....................................... ......・.....・......・.....・....・..."・.............・..................................・"・............・......・....・・.
② 3拍子(エーデルワイス)= ③ 元 気 よ く 横 に ス テ ッ プ を 踏 ②3拍 子 の 音 楽 に 合 わ せ て 身 横へのステップ運動(2拍)と み、3拍目に楽しそうに手を 体表現できる。
f自 手 拍 子(1拍)の組み合わせ 叩く。
子 ......目・........................................・.....・................・"・.....・・....... ・... ・ ・・・0・ ・........ . ・......・.......・..................・"・.....・....・目.目....・................. ' ・......・"・・・・・・・・・・・・・・・・............・M・.....・・..................・"・...・.........・"・..........・...・......
品T
のu. ④ 4拍子(ビリーブ)=横へのス ⑤元気よく左右にステップを繰 ③4拍 子 の 音 楽 に 合 わ せ て 身 習 テップ運動(左lこ2拍、右に り返し踏む。 体表現できる。
〆,由局,A、F
2拍の繰り返し) 1
回 ヨ"..・.................................白.........・‑・・....・...".................................・......・....................・ . .........・"・.........."目 ・・・・・H・.....................・........・....・.... ・.............‑・ ....‑・ .........・...・.......・・....・a・...........‑回目 ......・........
、
、J [指導2]音 楽CDr白鳥 J(サンサーンス)に合わせた、3拍子の指揮を行う学習
ー.....・..........................................・ ・・・0・・0・・ー ....... ・..................・........... ・..・・・・・・・...................・. . 回 . 岨四 回目同M・................目"目"・.........・‑・......・...............‑・・...........・・m ・m・・・・..............・・・......・‑・.................同町 町一 ....・...........
音 楽 視 聴 後 の 教 師 の 発 問 等 生徒に以下の反応が見られた。 f指 導1Jでは、音楽に合わせて (1) r何拍子でしょう?J (1)生徒Aの 回 答r1、2、1、 身体表現できていた。しかし、3
2‑‑‑J 種類の音楽の違いを、拍子の違
(2) r手を振ってみましょう』 (2)生 徒Bの行動:手を振るが、 いとして理解していないことが分
4拍子の動き かる。
[指導]音楽CDr魔 王 の 宮 殿J(グリーク)に合わせて2拍 子 の 表 現 学 習
(註:実際は4拍子の音楽であるが、2拍子として拍子を認識して勤く学習)
目・...・・.....・・...‑回田町 田叩白山.一"・.........・......・則的向.....・"・...・・・・....................... ‑.田町・.... ・..・......... ・・‑........ 回目 白・.... ・..‑・......・‑・......・‑・..........・・・......・m・...̲...・‑田 ・町ω・・..................... ・.・・....... ・..目........・"・・・.........・M・‑・・・・・M・........同四回・.‑.......・.....・..........・....
(1)音楽に合わせてr1、2Jの掛 (1)元気よく前後に足踏みを繰 (1)の指導でスムーズに動いて
拍 け声と共に前後に足踏み運 り返す。 いた生徒が、 (2)の 指 導 で 一 旦
子 勤 戸惑いを見せた。しかし、繰り返
の ー ザ... ・h
(2)掛 け 声 のr2Jを強調して、 (2)掛 け 声 と 勤 き が か み 合 わ すことにより、 (3)の 指 導 内 容 を 習
r、旬 (1)と同様に動く(2拍 子 を ず、難しそうな動きになる。 全員ができた。また、高度な動き 第
2 意識できるように拍を強調) に見える(4)の 指 導 内 容 が で き 回、
、J
(3) 2拍目で手拍子を入れて動 (3)全員が手拍子を入れること る生徒もいた。
く ができる。
(4) 2拍目で足を踏みしめて、 (4)数名の生徒のみ、踏みしめ 拍を強調しながら動く ができる。
[指導]音楽CDrボレロJ(ラヴェル)に合わせた、3拍 子 の 表 現 学 習
‑・・...........................ー ・ ............・..........."・....・・・M・M・......̲............................................・..........・・......・‑・........・.... ・・.・ー..̲..........・・・・.....・目........‑・・・・・・.....・田町田.目"
(1)音楽なしに3拍子で動く練習 (1)約7割の生徒ができる。 第1回の学習では3拍 子 の 理 解
拍 ( 1、2拍で行進、3拍目で停 が 見 ら れ な か っ た が 、 徐 々 に 子 止の勤きを前後に繰り返す) (2) (1)での練習よりも音楽の r 1、2、止まるjの意識から、
‑ ザ
の.... ー. (2)音 楽 に 合 わ せ てr1、2、3J テンポが遅いため、初めの r 1、2、3Jの意識に変わり、r3 習
第 の掛け芦を付け、(1)と同椋 うち動きがだんだん速くなる 拍子』の発言もあり、3拍 子 の 理
3 に動く が、徐々にテンポと動きが 解が感じられた。
、回‑'
(3)音 楽 に 合 わ せ た 勤 き を 考 え 合い始める。
る 発 問 『 ど う 動 い た ら 良 (3)生 徒Cの 回 答r3拍 子 で 歩
い?J きます』
L..
(事例
2
) 生 徒 の 観 察 力 と 模 倣 の 様 子 に つ い てこ こ で は グ ル ー プ に 分 か れ て 身 体 表 現 を 行 う 授 業 で 見 ら れ た 、 生 徒 の 反 応 を 例 としてその特徴を考察する。
この授業では音楽に合わせた様々な身体表現を、「指揮 J
r
メロディ Jr
動きjの3
グループに分かれて学習していた。その学習の様子を観察する中で、「メロディ Jグ ル ー プ に 属 し て い た 生 徒 D の反 応が筆者の自に留まった。
指 導 内 容 と 生 徒
D
の反応の様子を、【表2
]にまとめる。「メロディ
J
グ ル ー プ で は ギ タ ー と ス テ ィ ッ ク を 使 い 、 チ ェ ロ 演 奏 の 仕 草 を 表 現 す る 活 動 を 行 っ た 。 グ ル ー プ 担 当 のS T
が 順 番 に 生 徒 と 向 か い 合 い 、 そ の 仕 草 を指導していFた。生徒
D
がS T
か ら 指 導 を 受 け て い る 問 、 生 徒D
の 視 界 に はS T
しか見えておら ず 、 生 徒 D は チ ェ ロ 演 奏 の 仕 草 を 真 剣 な 表 情 で 行 っ て い た 。 し か しS T
が他の生 徒への指導のために移動したところ、生徒 D の視界に離れた場所で練習を行う「指 揮jグループの様予が入ってきた。すると生徒D
はすぐに明るい表情になり、「指 揮J
グ ル ー プ と 同 じ 動 き を 始 め た 。 そ の 後 、 再 びS T
が 視 界 に 入 る と ( 視 界 を 遮 ると)、すぐにチェロ演奏の動きに戻った。これらの観察内容から、生徒 Dの 見 え る も の へ の 興 味 や 関 心 の 高 さ 、 動 き を 観 察する能力や動きを模倣する能力の高さが分かった。
【表
2】 生 徒 の 観 察 力 と 模 倣 の 様 子
指 導 内 容 生 徒 の 反 応 分 析 等
{学習内容]グループに分かれて、音楽
CDr
白鳥J
(グリーク)に合わせた身体表現を行う学習‑
・ ・...............・...........・...・....・・.....".....・.・....・‑・・......・....・ .......・................・・"..・"・・......目"・...・... "・・・・・・・・・・・ ・.............................・"・.........・.................・ ........ ・.旬目・..........・・・H・・............・"・....・................・ ... "・・・・H..・ . ・. " ・...・.......・"・......... "
「指揮
J r
メロディJ r
勤き』の3
グルー ※ 『メロディ』グループの生徒D
に 生 徒D
は、自の前のST
の動きや興 プに分かれて活動する 注目しTこ。 昧を引かれる『指揮jグループの勤『指揮
J :
拍子に合わせて手を振るST
と生徒が向き合って弾き真似を きを観察し、その動きを即座に理『メロディ
J :
ギターとスティックを使つ 練習。ST
が 他 の 生 徒 の 指 導 に 移 解し、動きの模倣ができる。てチェロの弾き真似をする 動。視界に入った「指揮』グループ
『動き
J
:布を使って白鳥の動きを の動きを模倣。ST
が 視 界 に 戻 る表現する と、弾き真似を再開。
(事例 3) 映 像 付 鑑 賞 教 材 と 記 憶 、 知 識 と の 結 び 付 き に つ い て
こ こ で は 映 像 付 鑑 賞 教 材 を 使 っ た 鑑 賞 授 業 で 見 ら れ た 、 生 徒 の 反 応 を 例 と し て その特徴を考察する。
こ の 授 業 で は 映 像 付 鑑 賞 教 材 を 使 用 し 、 標 題 と 音 楽 の 結 び 付 き を 知 り 、 映 像 か ら音楽のイメージを感じるための学習を行った。
そ の 学 習 の 様 子 を 観 察 す る 中 で 、 映 像 に 対 す る 生 徒 Fの反応が筆者の目に留ま っ た 。 指 導 内 容 と 生 徒
F
の反応の様子を、【表3
】にまとめる。鑑 賞 教 材 の 映 像 に は 、 水 面 に 浮 か ぶ 白 鳥 の 姿 が 映 さ れ て い た 。 そ の 姿 は 穏 や か
で あ り 、 白 鳥 の 鳴 く 姿 も 、 羽 ば た く 姿 も 映 り 込 ん で い な い 。 白 鳥 の 様 子 に つ い て の 教 師 の 問 い 掛 け に 対 し 、 他 の 生 徒 が 「 泳 い で い るj と 答 え る 中 、 生 徒
F
は 「 泳 い で い るJr
羽 広 げ たJr
口 開 け たJと 映 像 に は な い 答 え を 繰 り 返 し て い た 。こ れ ら の 観 察 内 容 か ら 、 生 徒 の 映 像 へ の 興 味 や 関 心 の 高 さ 、 映 像 と 自 身 の 記 憶 と を 結 び 付 け る 能 力 が あ る こ と が 分 か っ た 。
【表
3
】 映 像 付 鑑 賞 教 材 と 記 憶 、 知 識 と の 結 び 付 き指導内容 生徒の反応 分析等
[学習内容]]映像付鑑賞教材を使用した、「白鳥J(サンサーンス)の音楽の特徴とイメージの学習活動
M・・・・・..̲..・・.... ー ・町・..̲.̲.̲........・. 目"・....‑・.........・̲.‑・,‑,‑...・.........................‑・・..̲..・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・.‑・...........目・............・....・"・,・・・・ー...................・.....・・H・H・M・....‑・・ ̲.....̲............・...............・......目・.......・.....̲..・・・・・・・・・・・・・・・・・̲..四 回 目......‑........・.‑・・・・・・e
(1)映像付教材での鑑賞(チェロ (1)数名の生徒がテレビ画面に (2)映像への興味と関心が高く、
演奏の様子と水面に浮かぶ 近づき、全ての生徒が映像に 集中して鑑賞している。
白鳥の映像による) 注目する。
(2) 映像鑑賞後の発問『白鳥は (2)生徒の回答 (2)音楽と白鳥の映像を鑑賞し、
何をしているでしょう?J 生徒E r泳いでいる』 ゆったりとした音楽的な動きを 生徒F r池、泳いでいる、羽、 学ばせる指導内容。映像中
広げた、口、開けた」 の白鳥に動きがなく、水面に
浮いているだけであったが、生 徒の発言は映像の内容と異 なり、その内容から映像を解 して記憶や知識(水面下で足 を動かして泳ぐ、翼を羽ばた かせて飛ぶ、鴫く等)とがイメ ージとして表れ、発言と結び 付いたと考えられる。
(事例
4
) 振 り 付 け 創 作 活 動 で の 様 子 に つ い て授 業 観 察 の 中 で 歌 唱 活 動 は 歌 に 振 り を 付 け て 行 わ れ る こ と が 多 く 、 生 徒 も 喜 ん で そ の 活 動 を 行 っ て い た 。
振 り 付 け の 創 作 は 生 徒 全 員 で 考 え 、 歌 詞 の 言 葉 に 合 っ た 動 き の ア イ デ ア を 出 し 合 い 、 良 い 動 き が 出 る と す ぐ に 全 員 が 覚 え 、 踊 り な が ら 歌 っ て い た 。
創 作 活 動 中 は 全 員 が 活 き 活 き と 参 加 し 、 曲 を 通 す と 複 雑 に 思 え る 動 き で も 、 そ の 流 れ を 全 員 が す ぐ に 覚 え 、 歌 唱 活 動 を 行 っ た 。 し か し 自 分 の 動 き が 採 用 さ れ な い 場 合 、 最 後 ま で 自 分 の 動 き を 続 け る 生 徒 も 見 ら れ た 。
こ れ ら の 観 察 内 容 か ら 、 多 く の 生 徒 に 振 り 付 け 創 作 に 対 す る 豊 か な 創 造 性 が あ る こ と が 分 か っ た 。
し か し 身 体 表 現 活 動 で も 見 ら れ た が 、 興 味 の わ か な い 内 容 や 題 材 ( 曲 ) の 場 合 、 最 後 ま で 無 反 応 を 通 し 、 他 の 生 徒 が 活 動 し て い て も 動 か な い 生 徒 が い る こ と や 、 逆 に 興 味 の わ く 内 容 や 題 材 ( 曲 ) で も 、 自 分 の 好 み と 活 動 内 容 が 異 な る と 、 最 後 ま で 自 分 の 好 み を 通 す 生 徒 が い る 等 、 生 徒 の 興 味 が わ く よ う に 誘 導 し て い く 必 要
性があることが分かった。
(事例
5
) お 互 い を 認 め 、 誉 め あ う 様 子 に つ い て授業観察の中で、「誰が上手だったか」と教師が問いかける場面が度々あった。
ほ と ん ど の 場 合 、 教 師 が 生 徒 の 名 前 を 挙 げ て み て も 数 名 の 生 徒 が 反 応 を 示 す の みであった。
し か し 時 と し て 、 多 数 の 生 徒 が 発 聞 に 反 応 し 、 互 い に 誉 め あ う 場 面 が あ っ た 。 特に
r
(事例1) J
で 挙 げ たr 2拍 子 の 足 踏 み 運 動j の よ う な 、 単 純 な 学 習 活 動 の 後 に 、 教 師 が 発 問 す る と 多 数 の 生 徒 に 反 応 が 見 ら れ た 。
こ れ ら の 観 察 内 容 か ら 、 複 雑 な 学 習 活 動 内 容 で は 、 生 徒 が 気 乗 り し な い 様 子 で 反 応 を 示 さ な い が 、 単 純 な 学 習 活 動 内 容 で は 、 多 数 の 生 徒 が 余 裕 を 感 じ 、 授 業 で の 会 話 に 参 加 し 、 他 の 生 徒 の 活 動 に 目 を 向 け る こ と が で き 、 互 い に 誉 め あ え る こ
とが分かった。
(事例 6) 盲 学 校 の 音 楽 授 業 の 様 子 に つ い て 盲学校では歌唱と合奏の授業を観察した。
歌 唱 で は 、 児 童
6
名 に よ る 斉 唱 が 行 わ れ た 。 ま た 合 奏 で は 、 一 度 階 名 で 歌 唱 し た 後 、 鍵 盤 ハ ー モ ニ カ 、 リ コ ー ダ ー 、 打 楽 器 の3
グ ル ー プ に 分 か れ て 練 習 し 、 最 後に合奏を行った。歌 唱 は
6
名の歌声とは思えない声量であった。合奏は、
2
グ ル ー プ を 組 み 合 わ せ 、 そ の 組 み 合 わ せ を 変 え な が ら 合 奏 練 習 を し た 後 、 全 体 の 合 奏 を 数 回 行 っ た 。 生 徒 は そ れ ま で の 授 業 で 、 階 名 で の 歌 唱 と そ れ ぞ れ の 楽 器 の 練 習 を 行 っ て き て い た 。 こ の 日 行 っ た 合 奏 は 児 童 に と っ て 初 め て の 合 奏 で あ っ た 。 そ の 演 奏 は 初 め て 合 わ せ た と は 思 え な い 、 よ く そ ろ っ た 演 奏 が で きていた。そ れ ぞ れ の 活 動 の 後 に 、 児 童 の 感 想 が 述 べ ら れ た 。
歌 唱 に つ い て は
r w
ラ ラ ラ 』 を も っ と は っ き り と 歌 い ま し ょ うJ r口 を 聞 い て 歌 いましょうj 等 、 歌 唱 に 対 す る 修 正 意 見 が は っ き り と 述 べ ら れ て い た 。
合 奏 で は 「 ハ ー モ ニ カ で の シ の 指 と ド の 指 が 小 指 だ か ら 、 移 動 を 早 く す る の が 難 し か っ た
J
等 反 省 の 意 見 も あ っ た が 、 「 み ん な で 合 わ せ て き れ い に な っ た の で 良 か っ たJ rみ ん な で 合 わ せ て 上 手 だ っ た の で き れ い だ っ たJ
等の感想が述べられた。
こ れ ら の 観 察 内 容 か ら 、 盲 学 校 の 児 童 は 自 分 の 演 奏 を 他 の 児 童 の 演 奏 に 合 わ せ る 能 力 、 そ の た め の 音 に 対 す る す ば や い 反 応 、 ま た 周 り の 音 を 聞 き 取 る 能 力 に 優 れていることが分かった。
歌 唱 で の 歌 声 の 大 き さ に つ い て も 、 自 分 が 歌 っ て い る 声 へ の 関 心 よ り も 、 周 り の 児 童 の 歌 声 へ の 意 識 が 勝 っ て い る 現 わ れ と 考 え ら れ た 。
川まとめ
こ れ ま で の 観 察 内 容 の 考 察 を 受 け 、 音 楽 段 業 に 於 け る 特 別 支 援 学 校 並 び に 盲 学
校 の 生 徒 や 児 童 に 見 ら れ 、 さ ら に 伸 ば し た い 能 力 と 指 導 上 の 留 意 点 を 以 下 に ま と める。
(1)生徒及び児童に見られ、さらに伸ばせる能力
・ 観 察 力 と 模 倣 の 能 力 ( 特 別 支 援 学 校 )
・ 音 楽 と 映 像 の 刺 激 を 、 知 識 と 想 像 に 結 び 付 け る 能 力 ( 特 別 支 援 学 校 )
・ 音 に 対 す る す ば や い 反 応 、 音 を 聞 く 能 力 ( 盲 学 校 )
・ 言 葉 か ら 導 く 想 像 力 ( 共 通 )
・ 自 分 の 好 み や 良 い も の を 選 択 す る 能 力 ( 共 通 )
・ 仲 間 と 知 識 や 意 識 を 共 有 で き る 能 力 ( 共 通 )
・ お 互 い を 客 観 視 で き る 能 力 ( 共 通 )
・ お 互 い に 誉 め あ え る 能 力 ( 共 通 )
( 2 )
指 導 実 践 上 の 留 意 点・ 興 味 や 関 心 を 持 て る 題 材 及 び 教 材 の 必 要 性 ( 共 通 )
・ 単 純 で 明 快 な 筋 道 の 立 っ た 指 導 内 容 の 必 要 性 ( 共 通 )
・主たる教員と補助教員が、生徒及び児童が能力を発揮した瞬間を見逃さずに、
生 徒 及 び 児 童 の 能 力 を 次 の 授 業 に 繋 げ ら れ る 、 ゆ と り の 持 て る 指 導 教 材 の 必 要性(共通)
・ 生 徒 及 び 児 童 が 集 中 で き る 指 導 の 間 合 い ( 共 通 )
・ 生 徒 及 び 児 童 が 集 中 で き る 環 境 ( 共 通 )
以 上 の 内 容 を 基 に 、 今 後 は 特 別 支 援 学 校 並 び に 盲 学 校 に お い て 、 知 的 障 害 の 度 合 い や 情 緒 の 安 定 の 違 い を 越 え 、 共 通 す る 様 々 な 能 力 を 伸 ば せ る 内 容 の 音 楽 鑑 賞 プ ロ グ ラ ム を 研 究 し 、 実 演 に よ る 鑑 賞 授 業 の 試 行 を 行 う 計 画 で あ る 。
註
( 1
)長崎大学附属養護学校(現附属特別支援学校)中学部では、第1
学年から第3
学年までの生徒1 8
名の合同で、藤田美穂子教諭と5
名のS T
教諭により、音 楽授業が行われていた。( 2
)長崎県立盲学校幼小学部では、幼児2
名、第l
学年から第6
学年までの児童9
名、合計1 1名の合同で、牟田秀子教諭を始めとする 6
名の教諭により、音楽授業が行われている。授業観察では、欠席等のため出席児童数
9名であり、
歌唱は 6名、合奏は 9名での授業であった。