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表 4
ると、その使い勝手のよさがお判りい ただけるだろう。お値段も手頃である。
市場では、このサイズの土鍋を、170
~250スリランカ・ルピー(約160~
230円)くらいで手に入れることがで きる。これはちょうど、大衆食堂で魚 入りのカレーを2食注文するのと同じ くらいの価格だ。
こうした手軽さゆえか、私がお世話 になった多くの家庭では、アルミやス テンレス製の鍋と並んで、頻繁に土鍋 が使われていた。カレーを煮込むだけ でなく、和え物を作ったり炊飯前の米 に混じった小石を取り除くためのボウ ルとして使われたり、マニュオカ(タ ピオカの原料となるキャッサバという 植物の根茎)や芋を煮るときにも活躍 する。土鍋には用途に合わせてさまざ まな形や大きさがあり、壺のように入
り口が狭く深いものから、中華鍋のよ うに中央がくぼんでいるもの、両手な べや取っ手が付いていないものまで 多種多様である。土鍋はとくに、酸味 のある料理に適している。ゴラカ(ガ ルシニア・カンボディカ)という酸 味の強い干し果実を使ったアンブル ティヤールという魚のカレーや、アッ チャール(香辛料入りピクルス)、ル ヌデヒ(ライムの塩漬け)などの保存 食をつくるとき、金属製の鍋では酸と 反応して鍋が溶けてしまうが、土鍋で あれば料理をいれっぱなしにしておい ても心配は要らない。また、富裕層の あいだでは洗濯機や冷蔵庫等の家電と ともに炊飯器が普及するなか、他の料 理はガスコンロと金属鍋で調理しても、
米だけは竃かまどで土鍋を使って炊くという 家庭も少なくない。理由は、何といっ ても美味しいから!竃から伝わるやわ らかな熱でじっくりと火が通り、ふっ くらと美味しく炊けるのだ。
土鍋を竃で煮炊きすると、新品のと きにはレンガ色をしていた表面が煤すすま みれになって触ると手が真っ黒になっ てしまう。だが、ココナツの繊維で磨 くように洗って大切に使い込んであげ ると、料理で使われるココナツミルク の油分とともに煤の色が染み込んで何 とも味わい深い艶をもつようになる。
日本の我が家で使っている土鍋は、私 が帰国するときに、お世話になった家 庭のお母さんがアンブルティヤールを 入れてもたせてくれたものだ。竃のに おいや香辛料の香りがしっかりとしみ ついている。何度も竃で使われたため、
新品とは程遠く真っ黒だが、この使い 込まれた土鍋でスリランカ料理をつく るとき、たとえガスコンロの上であっ ても、その香りとともに、薪がパチパ チと燃える音や、女性たちと交わした 会話がよみがえってくる。
スリランカからもち帰ったおみやげ のなかで、一番のお気に入りは、何と いっても土鍋(マティ・ワラン)であ る。ガイドブックに土鍋が登場するこ となんてまずないし、「なんで土鍋な の?」という声も聞こえてきそうだが、
スリランカ滞在中、暇さえあれば女性 たちの集まる台所でおしゃべりを楽し んでいた私にとって、ありふれた調理 道具である土鍋は、現地で出会った 人々やいろいろな出来事を思い出させ てくれるかけがえのないものだ。
スリランカの土鍋は、レンガ色のシ ンプルなデザインの素焼きで、非常に 軽く、そして安価である。私がもち帰っ た土鍋は、直径およそ20センチメート ル、1.7リットルほどの大きさで、重さ は約600グラム。同様のサイズの日本 の土鍋(1.7キログラム)と比較され
ポロス(ジャックフルーツの若い実)のカレー を煮込む。土鍋には通常、蓋はついておらず、
弱火で煮詰めるようにして味を凝縮させる。薪 と一緒にくべてあるのは、ココナツの外皮。薪 による調理に使われた土鍋は、煤で表面が黒ず んでいく。
台所には女性たちや子供 が自然と集まり、手を動 かしながら、おしゃべり に花を咲かせる。笑い声 にまぎれて、薪のにおい やパチパチ燃える音、野 菜の香りやココナツを削 る音が途切れることがな い。台所はにぎやかで楽 しい場所だ。
特別な来客でもない限り、調理 後は土鍋ごとテーブルに並べられ る。米飯をよそった皿に各人が思 い思いにカレーをかけていくブッ フェ方式が日常のスタイル。中央 にあるのは、赤米の粉でできたイ ンディヤッパー(蒸した米麺)。
スリランカのお母さ んが持たせてくれた 土 鍋。この 鍋で お 母さんが作ってくれ た、数えきれない料 理と彼女の笑顔を思 い出す。
竃で調理をする。家庭用 の竃は二口あり、右下部 で薪を燃やすため右口は 強火、左口は弱火と使い 分けることができる。竃 の天井部では、ゴラカの 果実を干している。煙で 燻されて美味しくなるそ うだ。
インド
梅村絢美
うめむら あやみ
日本学術振興会特別研究員(京都大学)
スリランカ
コロンボ
2014 07 no. 12 [発行]東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1 電話042-330-5600 FAX 042-330-5610
定価 : 本体476円+税
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