債権の貸倒損失 に係 る課税事件
(税法理解のために)
‑‑・法人税更生処分等取消請求事件 の検討 [東京地判平
1 3・ 3・ 2
平成9年 (行 り)第260号]‑‑・長 島 常 光
一 事件の背景
1990年代初めのバブル経済の崩壊後,銀行や証券 を巡 る不祥事が多発 し, 1)
銀行の不良債権が巨大化 し、各種金融機関の経営が破綻 した。数年前 に,銀 行の巨大 な不良債権 に係 る住宅専門会社処理のための財政資金投入の過程 に おいて,国内では銀行の貸手責任 を追及する機運 もあったが,現在では借手 の責任 ・経営者責任 も追及 されている。大手銀行各行 は2001年3月期の決算 で,不良債権の処理額 を当初の見込み より大幅に増や した。 この結果,赤字 を計上 した ところが相次 ぎ,経営環境の厳 しさを映す決算が行われた。各行 とも思い切 って不良債権 を処理 したことを強調 しているが,問題の解決には 至 っていない。銀行 は,危機意識 を強 く持 ち,経営健全化へ向けた措置 を迅
2) 速に進めるべ きである。
日本政府が この 4月に決めた緊急経済対策は,主要銀行の融資債権の うち, 既 に破綻 した り,破綻が懸念 されるものについて2年以内に処理するよう求 めることであった。不良債権の最終処理 に具体的な目標期限を走めたのがそ 199
の特徴 である。ある銀行 では,従来の 自行 の資産査定が甘か ったことか ら不 3)
良債権予備軍 とも言 える 「要注意先」債権 を査定 し直 した結果,回収 に懸念 4)
がある 「破綻懸念先」債権が1兆円以上 も増 えた。別の大手金融 グループで は,同 じ企業 に対す る資産分類が傘下の銀行 によって区々 とい う例が多 くあ った とい う。土地の担保評価が甘す ぎる とい う声 も多い。担保価値 は各行 と も時価 を参考 に決めている としているが,実際 に債権 を回収す るために土地 を処分 した場合,その評価 をはるかに下回る額 しか得 られないのが実情であ る。
資産の評価 を変 えれば,当然,積 まなければな らない貸倒引当金の額 も大 きく変わって くる。要注意先 (Ⅱ分類)の引当率は資産の3%前後,破綻懸念
5) 6)
先 (Ⅲ分類)では
1 5%
,実質破綻先(
Ⅳ分類)では7 0%
,破綻先 (Ⅳ分類) では1 0 0%
に増 える。 この ようなことを考 えれば, これ まで銀行が必要 な引 当てをしていたのか疑問になる。今十分 な形で引当てをすれば,相当規模 の 追加損失の計上 を迫 られることになるだろう。資産の厳格 な査定や,安易 な 債権放棄 を防止す ることをきちん と進めていかなければ,結局は1 9 9 0
年代初 めか ら続 く問題 の先送 りを くり返す ことにな り,問題解決 は困難 となろう。本件の場合でいえば上記 Ⅳ分類 に該当す る。わが国にとって,今後 の景気 回復 と不 良債権 問題 の解決 は,金融 システムにとって最大 の課題 と言 える。
本稿 で取上 げた判決は, まさにこの大問題 に関係 している。
二 法人税更生処分等取消請求事件の概要
上述の緊急の問題 として,本研究では,平成13年の法人税更生処分等取消 請求事件の判決 を分析 ・検討す ることに したい。
平成13年3月2日,東京地方裁判所民事第3部 (横 山雅行裁判長)は,原 告 (日本興業銀行) と国税当局 との間で見解が対立 していた旧住専向け債権 の放棄額 の損金処理 (無税償却)の件 につ き,被告 (麹町税務署長)が行 っ
た更正処分 (追徴課税)及びこれに係 る過少 申告加算税賦課決定処分等 は違 法であるとして,処分の取消 しを命ずる判決 を言い渡 した。すなわち,東京 地裁は,JHL社の資産の状況,原告の全額債権放棄 をしなければならない状 況等 を勘案すれば,これを貸倒損失 として処理 したことは相当であるとした。
この ように銀行の保有する貸付債権が税法上貸倒 か否か を巡 り争われた判例 7)
は見当た らず,昨今,銀行の不良債権の最終処理が問題 となっているときで もあ り,極めて意義のある判決 と評価 される。判決文 は長大 につ き,紙面の
8) 都合上割愛するが,以下において,簡潔に触れてい きたい。
1 事案の概要
この判決の事案 をより詳細 に説明 しよう。
「住宅金融専 門会社 (住専)の母体行 である原告 (日本興業銀行。以下
「原告」 とい う)が,当該住専 (日本ハ ウジングロー ン。以下 「JHL社」 と いう)に対する残高3760億5500万円の貸付債権 (「本件債権」)を平成8年3 月29日付 けでJHL社 との間で債権放棄約定書 を締結 して放棄 し,本件債権 相当額 を平成7年度の事業年度の損金の額 に算入 して青色確定 申告 をした と
ころ,被告が,本件債権相当額は本件事業年度の損金の額 に算入することが で きない として,平成8年8月23日に納付すべ き税額 を1285億円余 とす る更 正処分及びこれに係 る過少 申告加算税191億 円余 の賦課決定処分 を行 った。
さらに,平成10年3月31日には,新たな更正理由に基づ く,納付すべ き税額 を21億 円余 りとする再更正処分並 びにこれに係 る過少 申告加算税賦課決定処
9) 10)
分及び重加算税賦課決定処分 を行 った。原告が,被告 に対 し,右更正処分並 びに過少 申告加算税賦課決定処分及び重加算税賦課決定処分の取消 しを求め たものである」。
2 事件の争点 本件の争点は,
債権の貸倒損失 に係 る課税事件 201
1 原告の本件事業年度の法人税の計算上,本件債権 につ き,本件事業年 度 において原告 に法人税法22条3項 3号の 「損失」が生 じたとして,本 件債権 を損金 に算入す ることがで きるか否か
すなわち,第‑に,本件債権が平成8年3月末時点 においてその全額 が回収不能であったか否か (争点 1)
第二 に,本件債権放棄 によって本件債権相当額 につ き,原告 に法人税 法上の損金 と評価 し得 る損失が発生 した と認め られるか否か (争点2) 2 原告が本件債権相当額 を損金に算入 して本件確定 申告 を したことにつ き 「正当な理由 (国税通則法65条4項)」が認め られるか否か (争点3) である。
(1) 争点 1に対す る裁判所の認定 (下線 は筆者)
第一に,債権の全額が回収不能か否かについては,法人税法が法人の合理 的な経済活動 によって もた らされる利益 に着 目して法人税 を課 していること か らすると (法人税法4条),合理的な経済活動 に関す る社会通念 に照 らし て判断するのが相当である。 この点について被告 は,回収不能 とは,回収不 能 を推定 し得 る法律 的措置が採 られた場合及びこれに準 じるような場令,す なわち,債務者の死亡や所在不明又は事業閉鎖 とい うような回収不能の事実 が不可逆的で,一義的に明白な場合 に限 られると主張する。確かに,被告主 張の ような場合が回収不能 に当たることは明 らかであるが,このような場合 に該当 しない限 り,必ず強制執行等の法的措置 を講 じて回収不能か否か を明 らかにすることを要求す ることは,納税者 に対 して無益 な費用 と時間を費や させ るものであって経済的にみて非合理的な活動 を強いるもの と評価せ ざる を得 ない場合 もあると考 えられる。すなわち,法的措置 を講ずれば,ある程 度の回収 を図れる可能性がない とはいえない場合 において も,諸般の事情 を 総合的に考慮 し,法的措置 を講ずることが,有害又は無益であって経済的に みて非合理的で行 うに値 しない行為であると評価で きる場合 には, もはや当 該債権は経済的に無価値 とな り,社会通念上当該債権の回収が不能であると
評価すべ きである。
第二 に, これを本件 についてみるに,本件新事業計画の破綻の後,JHL社 の資産 は,一般行及び系統 (農林系金融機関)の債権 についてさえその全額 を弁済す るには不足 していた上,住専処理問題 は政治問題化 し世間の注 目を 集めていた ところ,原告 は,系統か ら信義則上の責任 を追及 されかねない立 場 に陥 ってお り, これ を避 けるには本件債権 を放棄す るほか ない と認識 し,
これ を公 に していた し, このことは,関係者間の共通の認識であったばか り か,政府与党 は もとよ り, この間題 に対 して厳 しい姿勢で臨んでいた野党や マス コミ及 び一般世論 において も異論が なかったことか らす ると,少 な くと ち,平成8年3月末 までの間に,原告 は,本件債権 を回収す ることが事実上 不可能 になっていた もの とい うべ きであ り,本件債権 は,本件事業年度 にお
いて,社会通念上回収不能の状態 にあった もの とい うべ きである。
また,仮 に政府 の住専処理策が成立せずJHL社 を破産手続 きによって処 理せ ざるを得 ない事態が予想 された として も,原告が債権届 出を してその手 続 きに参加す ることは,法的にみて も不可能 に近 く,法的 には可能であった として も,原告 にとって有害かつ無益 であって経済的 にみて非合理的で行 う に値 しない行為 とい うほかはないか ら上記の判断 を左右す る ものではない。
(2)争点2に対す る裁判所 の認定
裁判所 は,本件債権 につ き,争点 1について判示 した通 り,平成8年3月 末の時点で既 に全額 回収不能の状態 にあ り経済的な価値 はな くなっていた と 評価すべ きであ り,争点2については もはや判断 を示す必要はないが,念の ため,仮 に被告 の見解 を前提 として,本件債権放棄 による損金算入が認め ら れるか否かについて も判断 を示 した。
「第一 に,法人税法37条 は,法人が した無償 による経済的利益 の供与 につ き,原則 として損金算入 を否定 しているが,債権放棄のすべ てについて無償 の もの と評価す るのは妥当性 を欠 くとい うはかないのであ り,債権放棄の理 由が,単 なる任意の利益処分 にとどまらず,経済的にみて合理的であ り,税
債権の貸倒損失 に係 る課税事件 203
法上 これ を損金 と評価 しない ことが納税者 に対 して経済的にみて無益又 は有 害 な行動 を強い るこ ととなるな ど不合理 な結果 を招 くと認 め られ る場合 に は,その無償性 を否定 し,寄付金 に該当 しない とし得 る もの とい うべ きであ る。 この点 については,課税庁の通達上 も一定の場合 においては寄付金該当 性 を否定す るとの取扱 い も行 われているが,債権放棄 による損金算入の可否 は,それが法人税法
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条 にい う無償 による経済的利益 の供与 に該当す るか否 か とい う法解釈 によるべ き問題 であ り,課税庁の定める通達 はこの解釈 に適 合す る限度でのみ適法 と評価 されるのであるか ら,法人税基本通達所定の事 由に該当 しない ことのみ をもってその損金該当性 を否定す ることは許 されない。
第二 に,本件の事実関係か らす ると,原告 は,平成7年9月,新事業計画 の失敗が明 らかになった時点 までには,新事業計画 を達成で きなかったこと によ り,母体行 としての責任 を果 たす意味か ら系統や一般行 の受ける損害 を で きるだけ軽減す るために少 な くとも自己の債権 回収は諦 めざるを得 ない と の判断に至 り, さらに本件債権放棄の時点 までには,政府 の住専スキームに 従 ってJHL社 を処理す るのが最善の途であ り,仮 にこのスキームが成立 し ない場合 にも,破産手続 きにおいて自己の債権の回収 を図ることは,仮 にそ れが法的に可能であって も,それに要する費用 と時間は多大 な もの とな り, 社会全体か らの批判 を受けるおそれ もあったばか りか,系統や一般行 とい う 多 くの同業者か ら信義則 に反す るとの非難 を受 け, さらには損害賠償請求 を 誘発 し,回収可能額 を超 える損害 を発生 させ るとい う結果 を招 くおそれがあ るとの判断の下 に,む しろ債権放棄 をす ることによって,それ以上の責任 を 追及 されることによる負担の増加 をで きるだけ避 けるのが得策である と判断
したことによるもの と認めるのが相当である。
そ うす ると,上記の ような理由によ り本件債権放棄 をす ることは,経済的 にみて合理的であって, これ を損金 と評価 しない ことは,納税者 に対 して, 損害 を顧ず に債権 を行使す ることを命 じているに等 しく,経済的にみて無益
かつ有害で非合理的な行動 を強いる結果 を招 くことになる。
第三に,被告 は,損金算入の前提 として,損失の確定 を要す る とす るが, そこでい う確定 とは,抽象的な権利義務の発生 に止 どまらず訴訟 において請 求又 は確認 し得 る程度 に具体的に発生 していることを意味するもの と解すべ きである。 この ような観点か ら本件債権放棄 をみる と,その内容 は,民法
1 2 7
条2
項 にい う解除条件 に当た り,その意思表示後条件成否未定の間 も債 権放棄の法的効力 は発生 してお り,その効力 は,抽象的なものではな く,訴 訟 において も本件債務の不存在が確認 される程度 に具体的に発生 しているの であるか ら,損失の発生 は確定 しているとい うべ きである。 」
3 裁判の結論
裁判所 は,本件 につ き次の ように結論 した。
「本件債権は,平成8年3月末 までに社会通念上全額回収不能 となってお り,仮 に回収不能でない として も,本件債権放棄 によってその全額 を損金 に 算入すべ きものであるか ら,法人税の計算 において,本件債権相当額 を損金 の額 に算入 した原告の本件確定 申告 は適法である。上記 を損金の額 に算入す ると原告の所得金額 はマイナス となることは明 らかであるか ら,上記金額 を 損金の額 に算入することがで きない としてされた本件再更正処分 は,その余 の点 を判断するまで もな く,違法 なもの として取消 しを免れない し,本件再 更正処分 によって新 たに加 えられた更正理由を考慮 して も,原告 には納付す べ き税額が発生 しないことは明 らかであるか ら,過少 申告加算税及び重加算 税 を賦課 されるいわれはな く,結局,本件再更正処分等 は,争点3について 判断するまで もな く,いずれ も取消 しを免れない。」
債権の貸倒損失 に係 る課税事件 205
三
判決の分析 ・検討1 貸倒れの認定
JHL社 に対する金銭債権が平成8年3月31日現在 において貸倒れ と認定 さ れ,そのことを前提 として,本件の課税問題が起 きている。 しか し,そ もそ もこの前提が正 しかったか否かが まず問題 とされなければならない。 この点 について,法律論 としての貸倒 れは,その金銭債権が法律上消滅 している場 合 をいい,法的行為 を通 じて債権者が,その債権 を有 していない状態 をい う。
これは回収不能の場合 における債権放棄が前提 になっている。 これに対 し, 事実上の貸倒れは,法的には債権 を有 していて も事実上,経済的な観点か ら みて債権が存在 していないに等 しい場合 を貸倒 れ とする。貸倒れを認定する ためには回収不能の状況が存在することが必要である。
税務上の貸倒損失 は,法人税法基本通達 (以下,法基通 とい う)
9‑6‑
1か ら
9‑6‑3
に区分 されている。法基通9‑6‑1( 4 )
においては,
「債 11)務者の債務超過の状態が相当期 間継続 し,その貸金等の弁済 を受けることが で きない と認め られる場合 において,その債務者 に対 し書面 により明 らかに された債務免除額」 は貸倒れ として,その事実の発生 した日の属する事業年 度の損金の額 に算入 されることを規定 している。
理論的には,弁済 を受けることが困難であると認識 されることが,最 も重 要 なことであ り,債務免 除は,その事後的処理手続 きに過 ぎない, といえ
る。
本件では,原処分庁 の判断 (平成8.8.23更正処分) (平成9.7.29減額更正処 分)は,(∋本件債権 は平成8年3月末時点においてその全額が回収不能 とは 認め られない。(参本件債権 に解除条件が付 されているか ら本件事業年度 に本 件債権放棄が確定 している とは認め られない。従 って
,
「本件債権相当額 を 本件事業年度の損金の額 に算入することはで きない。
」 とした。尚,約1年後,平成9年3月期 に税務上貸倒れが確定 した として,損金認
容 の減額更正 と している。
2 裁判上の争点 に関す る判断
本判決 においては,次 の3つ を争点 としてい る。
(1) 本件債権 を全額 回収不能 とす ることの可否 (争点1) (2)本件債権 と損金算入 の当否 (争点2)
(3) 原告が本件貸倒相 当額 を損金算入 して確定 申告 した ことにつ き正 当な理 由があるか (争点3)
( 3 )
は,(1)及 び( 2 )
の結果の問題 であ り, まず,(1)と( 2 )
が,そ して,特 に判決 においては,問題 は(1)であ って(2)は附随的 なこ とに過 ぎない としてい る。従 って, ここでは,(1)の本件債権 が全額 回収不 能であ ったか否か について被告 の主張 と裁判所 の判断 を検討 したい。<被告の主張 >
「回収不能 とい うため には,債務者 の資産状況,支払能力等 か ら当該債権 の回収が事実上不可能であることが客観 的 に明 らかでなければな らない。具 体的 には,強制執行 ,破産手続,会社更生,整理 とい った回収不 能 を推定 し 得 る法律 的措置が採 られた場合及 び これ に準 じる ような場合 ,す なわち債務
12)
者 の死亡 や所在不 明又 は事 業 閉鎖 とい うような回収不 能 の事 実 が不 可逆 的 で,一時的 に明 白な場合 に限 られる。」 と主張す る。
3 判決の論 旨 (1) 判 断の前提
法人の各事業年度 の所得 の金額 は,当該事業年度 の益金 の額 か ら当該事業 年度 の損金 の額 を控 除 した金額 とす る もの とされ (法 人税法22条1項),損 金 に該当す る ものは,(∋当該事業年度 の収益 に係 る売上原価 ,完成工事原価 その他 これ らに準ず る原価 の額,(∋右① に掲 げる もののほか,当該事業年度 の販売費,一般管理費 その他 の費用 の額,③ 当該事業年度 の損失 の額で資本
債権の貸倒損失 に係 る課税事件 207
等取引以外 の取引 に係 る ものであ り (同条3項),その額 は一般 に公正妥当 と認め られる会計処理の基準 にしたがって計算 されるもの と規定 されている (同条4項)。従 って,法人の有する金銭債権が回収不能になったことによる 損失の額 は,各事業年度 の所得の計算上損金 の額 に算入 されることになる (法人税法22条 3項 3号)。 しか し,法人税法33条 2項が,金銭債権 について 評価損の計上 を禁止 していることにかんがみると,金銭債権が回収不能 にな ったことによって損金の額 に算入することがで きるのは,金銭債権の全額が 回収不能である場合 に限 られるもの と解する。法基通9‑6‑2もこのこと を明 らかに しているもの と解 される。
ここでい う債権の全額が回収不能か否かについては,まず基本 として 「法 人税法が法人の合理的な経済活動 によって もた らされる利益 に着 目して法人 税 を課 していることか らす ると (法人税法4条),合理的な社会通念 に照 ら
して判断す るのが相当である
。
」 としているのは,税法の法解釈上あるいは 事実の認定上 において も,基本 として存在するものである。因みに,貸倒れ の事実認定 については,昭和41年の 「税法 と企業会計 との調整 に関する意見 書」の 「各論五の2
」 において,一般的に妥当な事実認定基準 として,債務 者の支払い能力の実情 に則 して債権の回収可能性 を判断すべ きと明 らかに し ているが,個 々の債権 についての回収不能を認定す るに当たっては, この基 準の通用 は多 くの場合厳格 に過 ぎるきらいがあ り,税務官庁 と企業 との間に これを巡 っての争いが絶 えない。貸倒れに関するこの ような税務上の判定は, 企業の貸倒 れの実態 に必ず しも即応 していないので,企業の合理的な判断による貸倒処理の余地 を認めることとす るのが望 ましい
。
」 としている。 また, 法人税法52条第1項所定の 「貸金」が取立不能 とな り損失が発生 したか否か は,その会計処理が適正である限 り,確定決算 に示 された 「法人の意思 に従 う」 ことを原則 とす ると解 されている。 このことは商法32条における 「公正 なる会計慣行」 といって もよいのである。法人税基本通達前文 において も
,
「通達中に例示がない とか通達 に規定 さ 208れてい ない とかの理 由だけで法令 の趣 旨や社 会通念等 に即 しない解釈 に陥 っ た りす る こ との ない よう留 意 の こ と。」 と明示 されてい る。 この こ とは,経 済 的 に発 生す る所得 に対 して課税 す る とい う観 点 か ら,法 的事 実 のみ を問題 とす るので はな く,それ以外 に経 済的事 実 を も採 り入 れて判 断すべ きこ とは 当然 であ る。
(2) 判断の根拠
① 本件 母体
2
行 がJ HL
社 に対 す る債権 を全 額放 棄 した と して も,一般 行及 び系統 の債権 を全額返済す る こ とは不 可能であ った こ とも明 白であ る。す なわ ち,平成8
年3
月2 1
日のJ HL
社 の処 理 ス キ ー ム におい て, 正常資産及 び不 良資産 の うち回収が見込 まれ る ものの合計額 は1兆2103 億 円 とされ,一般行 及 び系統 がJ HL
社 に対 して有 してい る債 権 の9 2 6 4
億 円及 び9933億 円の合計1兆9197をはるか に下 回 ってお り,当時 の不動 産市況及 び一般 に破綻 した会社 の資産 は破綻 時の評価額 か らさ らに劣化 しが ちであ るこ とか らす る と,平成8年3月末 時点 は もとよ り,将来 的 に も,本件母体行
2
行 がJ HL
社 に対す る債権 を全額放棄 した と して も, 一般行及 び系統 の債権 の全額 を返済す る こ とは不 可能であ った とい うことであ る。
⑦ 原告 が
J HL
社 に対 して有 す る債権 の全 額 を放 棄せ ざる を得 ない こ と は,原告 は もとよ り関係 者 の共通 の認識 であ り, 同社 の処理 を考 えるに 当た っての当然 の前提 と して,それ以上 の負担 をいか に食 い止 め るか と い うことを問題 と していた とい うべ きであ る。③ 原告 が
J HL
社 に対 す る債権 を放棄 しない こ とは,社 会全体 を敵 に回 す に等 しく,社会 的存在 としての銀行 と しては 自己 に とって この上 な く 有害 な行為 とい うはか ない上,代 表者 の言 を翻 す こ とに よる社 会 的信用 の失 墜 とい う面 か らも, もはや社会通念上許 され ない状態 にな っていた もの とい うべ きであ る。④ 原告 は,系統 [農 中,信連 ,共済連及 び全 共連 の総称 (農協系統金融
債権の貸倒損失 に係 る課税事件 209
機関)か ら信義則上の責任 を追及 されかねない立場 に立 ってお り,これ を避 けるには,本件債権 を放棄するはかない と認識 し, これを公 に して いた し,このことは関係者間の共通の認識であったばか りか,政府与党 はもとより,この間題 に対 して厳 しい姿勢で臨んでいた野党やマス コミ 及び一般世論 において も異論が なかったことか らす ると,少 な くとも, 平成8年3月末 までの間に,原告は,本件債権 を回収することが事実上 不可能になっていた もの というべ きであ り,本件債権 は,本件事業年度 において,社会通念上回収不能の状態 にあった もの というべ きである。」 (以上,判決 を部分的に引用)
四 評釈
1 判決の示唆
債権の全額が回収不能か否かについては
,
「法人税法が法人の合理的な経 済活動 によって もた らされる利益 に着 目して法人税 を課 していることか らす ると (法人税法4条),合理的な経済活動 に関する社会通念 に照 らして判断 するのが相当である。‑‑・一部省略,被告の主張するような場合が回収不能 に当たることは明 らかであるが,この ような場合 に該当 しない限 り,必ず強 制執行等の法的措置 を講 じて回収不能か否かを明 らかにすることを要求する ことは,納税者 に対 して無益 な費用 と時間を費や させ るものであって,経済 的にみて非合理的な活動 を強いるもの と評価せ ざるを得 ない場合 もあると考 える。法的措置 をとることに対す る債務者等の利害関係人か らの対抗手段の発生 が予想 されるリスクとの対比等諸般の事情 を総合的に考慮 し,法的措置 を講 ずることが,有害又 は無益であって経済的にみて非合理的で行 うに値 しない 行為であると評価で きる場合 には,もはや当該債権 は経済的に無価値 とな り, 社会通念上当該債権の回収が不能であると評価すべ きである。」 とした。筆
者 は以下の理由か ら,本件判決 を全面的に支持す る。
2 評釈者の結論
(1) 判決 は,本件 の巨額債権 につ き回収不能 とい う事実認定 に焦点 を当て, その債権者の置かれている状況 を詳細 に分析 して判断 に至 ってい ること。
す なわち,1 JHL社 の設立の経緯及び原告 との関係 ,2 JHL社の債務 に 13)
対す る原告 の保証 と集合債権譲渡担保への切替 え,3 JHL社 を含 む住専 の経営状態の悪化 と大蔵省 による第 1次立入 り調査 ,4 第一次再建計画 をめ ぐる交渉経緯等 ,5 第二次再建計画 と本件新事業計画 をめ ぐる交渉 経緯等,6本件新事業計画の破綻,7 JHL社処理 に関す る本件母体五社 と系統 との折衝 の経緯,8住専処理方策の策定,9住専処理 をめ ぐる国 会等の動向,10本件債権放棄及びJHL社への整理 に至 る経緯,の10項 目 に亘 って,その事実関係 を詳細 に分析 ・吟味 している。その結果,法的手 続への移行 を前提 とす ること自体非現実的であった ことを証拠 によって認 定 した上で 「諸般の事情 を総合的に考慮 し,法的措置 を講ず ることが,有 害又 は無益であって経済的にみて非合理的で行 うに値 しない行為である と 評価 で きる場合 には, もはや当該債権 は経済的に無価値 とな り,社会通念 上当該債権の回収が不能であると評価すべ きである。」 と規範 を定立 した。
全体 として,本判決の堅実 な事実認定 と審理及 び的確 な法律解釈 は誠 に理 14) 路整然 ・明白にて,納得性があ り,その判断は高 く評価 されるべ きである。
(2) 判決は,貸倒 れの事実認定が最 も重要であって,その事実認定 に於 て原 告 の主張す る事業年度 に該 当す る貸倒損失 と認定 された ものであるか ら,
もはや疑念の差 し挟 む余地 はない もの と考 える。すなわち,JHL社 の資産 価値 につ き 「一般行及 び系統の債権 について さえその全額 を弁済す るのに は不足 していた」 と評価 し, また,JHL社が法的整理 に移行 した場合 につ いて,原告が本件 「債権 を回収す ることは,法的 にみて も不可能 に近 く, かつ仮 にそれが可能であった として も
」
「経済的 にみて非合理的で行 うに債権の貸倒損失 に係 る課税事件 211
値 しない」 こ とか ら,本件債権 は平成8年3月末 までの間 に回収不 能 にな っていた と結論 づ けてい る。
本判決が前提 と した,社 会通念上 の回収不 能の状態 にあ ったか どうかの 基準 と,それ に適合す る もの と して認定 した本件 の具体 的事 実関係 及 び事
15) 情 はいず れ も極 めて的確 と思料 され るこ と。
また,解 除条件付債権放棄 の点 は附随的 な もの と してお り,本件債権 の回収 を正面 か ら論 じる こ とに よって本件 更正処分 を取消 してい る。本 件 は住専処理 とい う,従 来 の個別 的 な貸倒事案 とは全 く様 相 を異 にす る,
ほ とん どの金融機 関 を巻 き込 んでの金融組織 の根 幹 に も関わ って くる よ うな事案 において,法人税 法基本通達 の形式及 び従 来 の判例 に とらわれ ず に,税法 の根 源 的理念 と社 会通念 の御旗 の下 に,事 実認定 を通 じて公 正 な真 実 とは何 か,何 が公平 なる正義 か を明 らか に して,貸倒 れ (回収 16) 不 能) の判 断基準 を示 した点 に, この判 決 の重要 な意義 を見 出だせ る。
(3) 債権 の全額が 回収不 能か否 かについては,法人税法が法人の合理的な 経 済活動 に よって もた らされ る利益 に着 目 して法 人税 を課 してい る こ と か らす る と (法 人税法 第4条),合 理 的 な経 済活動 に関す る社 会通念 に 照 ら して判 断す るのが相 当であ る。 と して,税法理念 に基づ く所得金額
17) に課税 す る立場 で判 断 してお り,納得性 が あ るこ と。
(4) 貸倒 れの処理 は,結果 として会計処理 の問題 であ り,会計実務 の専 門 家 であ る公 認会計士 の事 実認定 に基ず く法定監査 の結果 もまた重視 され るべ きで あ る と考 える。
(5)判決が判示 してい る ように,債権 が 回収不 能か どうか は事 実認定 の問 題 で あ って,通達 に合 致 してい るか ら貸倒 れ となるので はない。勿論 , 現実 には,実務 上通達 に合致 してい る こ とに よって,課税 の貸倒 れ と し て処 理 され る こ とに もなるが,通達 に合 致 してい ない場合 におい て も, 貸倒 れ となる こ とも十分 あ り得 る こ とであ って, この意味 において,判 決 は 「課税庁 の定 め る通達 は,法令 の解釈 に適合 す る限度 でのみ適法 と
評価 されるのである
。
」 としている。従 って,判決 は,課税の実務 にお いて通達 を金科玉条 とする形式論 を,事実認定 に基づ く課税の法理論か 18) ら一刀両断にこれを退け,結論 を導 き出 した もの とみることがで きる。(6)本件債権放棄 に付 された附款 (条件) は,民法127条2項 (解除条件 附法律行為 は条件成就の時 よ りその効力 を失 う。) にい う解除条件 に当 た り,その意思表示後条件成就未定の間 も債権放棄の法的効力は発生 し てお り,その効力は抽象的なものではな く,訴訟 において も本件債務の 不存在が確認 される程度 に具体的に発生 しているとい う解釈,即 ち,解 除条件附債権放棄契約 において契約時に損失 を計上 し解除条件が成就 し たときに収益 を計上するとい う会計 ・税務処理が,なにゆえ常 に (常 に でない とす るならば,いかなる状況の もとに)公正処理基準 に違背する のかを被告 は論 じていないこと。
(7) 被告 は
,
「原告が,他のほとん ど全 ての銀行が債権放棄 を見合わせた ことを知 りなが ら,本件事業年度 において本件解除条件 を付 して本件債 権 を放棄することとしたのは,課税負担 を免れると共に将来の法的整理 手続 における回収の途 を確保するとい う意味 を有 していた」 と主張する が,そ もそ も法令の解釈 として,債権放棄 を見合わせた 「他のほ とんど の銀行」 と同 じ行動 をとらなかったことが,何故「 (
不 当に)課税 を免 れる」 ことになるのか全 く不明である。何故 ならば,被告の主張は,本 件更正処分が,
「各母体行が足並みを揃 えて債権放棄 を行 うべ きである」という,税法の解釈 ・適用 とは異質の理由 ・目的を前提 として行 われた ことを窺わせ るものであ り,本件更正処分の非合理性 は,結局 この一点 に集約 されると言 える。
(8) 最後 に,本件債権 に係 る損失の年度帰属の問題 に触れておこう。
①原告は,本件債権 は回収不能 と判断 し,本件債権 に係 る損失が平成 7 年度 に帰属するとして同年度の確定 申告 において損金 に算入 したが, 被告 は右 申告 を否認 し,右損失が平成8年度 に帰属す るとして同年度
債権の貸倒損失 に係 る課税事件 213
の確定 申告 を経ず して職権更正 を行 い,改 めて平成8年度 の損金 と認 めたわけであ る。 しか しなが ら,本来法人税法では,欠損金の繰戻 し 制度 (法人税法81条)が規定 されてお り,平成7年度 と平成8年度 に も,
19) この規定が通用 されていれば,本件訴訟 はなか った と考 え られ る。
② しか し,法人税法81条 は,従前有効 に適用 されて きたが,税収不足 を 理 由に租税特別措置法66条の14の時限立法 によ り,平成4年か らその 適用が停止 された ままである。本件訴訟 の焦点 となった平成8年3月 末 には,かか る停止措置の期 限が到来 したが,数多 くの 日切 れ法案 と
20) 一括 して格別 の国会討議 もない ままに延長 された経緯がある。
③翻 って,本事案 について,平成7年度 と平成8年度 を通ず る時 日の経 過 をみ る と,被告 の主張す る法的整理 は現実的でなか った。平成8年 7月か らの原告 に対す る国税調査 で, この点は確認で きたわけである。
本来,あ る年度 に生 じた欠損金 は,人為的 に区切 られた当該事業年度 のみ でな くその前後 の事業年度 の利益 と通算す るのが安 当であ る とい うのが, シ
21)
ヤウプ勧告 に由来す る税制 の基本 であ り,法人税法81条 の趣 旨であ る。 この 点 を考慮すれば,被告 は,結局,平成8年度 においては,本件 の損失 の損金 算入 を認めているのであるか ら,本件債権が平成7年度 において貸倒 れであ る として,同年度 の損金 に算入 した原告 の処理 を強いて否認す る理 由 もなか った もの と思 われ,かかる原告の処理 を認容 して もよか った と考 える。
おわ りに,貸倒損失 に係 る事実認定 ・法解釈 について,新 たな問題堤起 と なった本判決が どう評価 されるのか,控訴審の行方が注 目されるところである。
以上
注
1) (三訂)金融 ・経済用語辞典 (経済法令研究会,平成12年4月)377‑37 8頁参照。「不良債権 とは,約定通 りに元利金の返済がなされないか, また
214 No.22 2
はその懸念がある債権 をい う。現実 にどの ような基準で不 良債権 と判定す る かは,必ず しも明確ではない。い くつかの事例 をみると,次の通 りである。
第1に,全銀協 の 「従来基準公表不 良債権」 は次の4項 目を挙 げている。
①破綻先債権 (更生手続,破産,和議,整理,取引停止処分等のあった債務 者 に対す る債権),(参延滞債権 (6カ月以上延滞の未収利息不計上債権 の う ち(∋と金利棚上 げ債権 を除 くもの),(参金利減免等債権 (公定歩合以下金利 減免債権や金利棚上 げ債権 な ど),④経営支援先債権 (損金処理 による債権 放棄 を行い,支援継続中の債権)0
第2に,全銀協の 「新基準 リスク管理債権」 は,次の4項 目を挙 げている。
①破綻先債権 (上記① と同様),②延滞債権 (上記② と同様),③3カ月以上 延滞債権 (ただ し,①(参に該当 しない もの),④貸 出条件緩和債権 (金利減 免,金利棚上げ,元金返済猶予,債権放棄,現金贈与,代物弁済受け入れな
ど)0
第3に,1998年 よ り導入 された早期是正措置の一環で金融監督庁が定める 基準 による,いわゆる 「分類債権」である。 これは自己資本比率 に基づ く区 分 を基準 に発動 されることか ら,その前提 として適正 な償却 ・引当が行 われ ることが不可欠 となる。す なわち,Ⅰ分類 (非分類)(Ⅲ分類 , Ⅲ分類お よ びⅣ分類 としない資産), Ⅱ分類 (個別 に適切 な リス ク管理 を要す る債権),
Ⅲ分類 (最終の回収 または価値 に重大 な懸念が存在す る資産),Ⅳ分類 (回 収不可能 または無価値 と判定 される資産)の合計である」。
○ さ くら銀行調査部編 rビジュアル金融の基本
J
(日本経済新聞社,平成12 年7月)132‑133頁参照。早期是正措置での 自己査定では 「債務者 を次 の五つ に区分 して,個別の貸出金の資金使途等の性格,担保 ・保証の状況 か ら,資産の分類区分 を判定する。正 常 先 :貸出条件 ・履行状況が正常 な債務者,業況が順調 な債務者。
要 注 意 先 :貸 出条件,履行状況 に問題のある債務者,業況が低調 な意思 安定 な債務者。
破綻懸念先 :経営難の状況 にあ り,今後,破綻 に陥 る可能性が大 きい債務 者。
実質破綻先 :法的,形式的な破綻の事実 は発生 していない ものの,深刻 な 経営難の状態 にあ り,再建の見込みが立 たない状況 にあると 認め られる等,実質的に破綻 に陥っている債務者。
破 綻 先 :破産,精算,会社整理,会社更生,和議 ,手形交換所 におけ
債権の貸倒損失 に係 る課税事件 215
る取引停止処分等の事 由によ り破綻 に陥っている債務者」。
○ 週刊東洋経済 「特集,入 門不 良債権最終処理」 (東洋経済新報社,2001,5, 19)26頁〜27頁参照。不 良債権の事例 を図解入 りで詳 しい説明がある。
2) 日本経済新 聞朝刊 (平成13年4月 4日付)参照。
3) 「要注意先」 とは,前掲 (注1)参照。
4) 「破綻懸念先」 とは,前掲 (注1)参照。
5)「実質破綻先」 とは,前掲 (注1)参照。
6) 「破綻先」 とは,前掲 (注1)参照。
7) 債権貸倒 の認定 についての判例 としては
,
「(債務者 に)債権 を支払 う能力 が全 くなか った とは‑がい に断定で きないに して も,債権 の回収 は相手 のあ る仕事 であって,債務者 の態度や誠意 に負 うところが大 き く,‑・‑債権 回収 について最高,最 良の方法 を もってこれ を行 わなければ貸倒 と認めない とい うのでば,債権者 (被課税者) に難 きを強いる ものにほかな らない」 として, 貸倒 を認 めた ものがある (東京高判 昭42・12・26判例 時報516号50頁)。 尚, この判決 は,上告審で も支持 されている (最二小判昭49・3 ・8金融法務事 情No.72131頁)08) 金融法務事情No.1605 (2001.3.15)30‑31頁参照。
9)尾崎護 『税 の常識 (平成13年版)j 日経文庫836,177頁参照。
過少 申告加算税 は,他 の加算税 と同様 に適正 な申告納税制度 を確保す る為 に設 け られてい る もの。従 って,法人税 ,所得税,相続税 ,贈与税,消費税 の ように申告納税 の制度 を とる税 について,法定 申告期 限 までに申告 は した が,それが過少 であった とい う場合 に税務署長の賦課決定処分 に基づいて鍋 付す る。過少 申告加算税 の税額 は,更正又 は修正 申告 によ り増加す る税額の 10%相当である。
10) 前掲注 9)尾崎,重加算税 は,過少 申告加算税,無 申告加算税又 は不納付 加算税が課 され る場合で, しか も所得税額計算 の基礎 となる事実 を隠 し,又 は仮装 していた ときに,過少 申告加算税及び不納付加算税 に代 え,その隠 し た り, また仮装 した事実 に関係のない部分 を除いた残余 の税額 の35% (無 申 告の場合 は40%)相 当額が課 される。
ll) 右 山昌一郎 ・右 山秀一 F貸倒 れ と不 良債権償却 の税務j (中央経済社 ,辛 成10年10月)58頁参照。相 当期 間については,従来の解釈 は3‑ 5年,現在 はおおむね 1年以上 と解 されている。
12) 本件主張 において, これに準ず る もの として
,
「債務者の死亡や所在不 明」
を掲 げているが, これは個人債務者の問題であって,法人の場合 には該当 し ない。
13) 内閣法制局法令用語研 究会編 F法律用語辞典』 (有斐 閣,平成9年1月) 645頁参照。「工場の施設の ように,全体が有機的に結合 している ものや,倉 庫 ・店舗の内部 にある商品の ように,販売 ・仕入れなどのために出入 りがあ って も総体 として独立の価値が認め られるものについては,一括 して譲渡担 保 (所有権 をいったん債権者 に移転 させ,債務者が債務 の弁済 を した ときに 所有権 を戻す方法 による担保制度)の 目的 とすること,また,その譲渡担保。
近年判例 によって認め られている」。
14) 武田昌輔 は,本判決 を許 して 「この判決は,審査 が十分行 き届 いてお り, 解釈,審理方法 を含 めて範 に足 る ものである。」 としてい る。武 田昌輔 「判 決 に学ぶ貸倒損失の処理 一平成13・3 ・2興銀 に対す る判決 ‑」 (税経通信, VOL56,No.8,2001年6月号)21頁参照。
15) 森 厚治 「住専母体行の貸倒損失 に関すると東京地判平13・3 ・2につい て」 (金融法務事情No.1607,2001.4.5)16頁参照。
16) 武田昌輔 「母体行の解除条件付債権放棄 と貸倒損失 に関する裁決について」
金融法務事情No.1510,1998.3.25)25‑41頁及び前掲,注14)21頁参照。 な お, この判示部分 について,品川芳宜 は,同論文 「条件付債権放棄 と貸倒損 失の計上時期」 (税経通信,2001年8月号巻頭論文)の中で 「各事業年度 の 所得 の金額」の計算構造上 を踏 まえた解釈論 としては極 めて疑問。」 として いる。
1 7 )
河本一郎 ・波速幸則 「住専向け債権の 「貸 出金償却」 をめ ぐる東京地裁判 決」,(商事法務No.1593,2001.4.25)77頁参照。18) 前掲注14)21頁参照。
19) 前掲注17)参照。法人税法81条は,欠損金の繰戻 しによる還付 の請求方法 について,規定 している。
20)前掲注17)河本一郎 ・渡連幸別 は,本判決 を契機 として,欠損金の遡及還 付制度 の正常化 について も議論 が深 まるこ とを次 の ように提言 してい る。
「今 日,銀行 の不 良債権 の最終処理が重要 な政治 ・経済問題 として注 目を集 める中,遡及還付制度の正常化が盤上 に上 って もおか しくな く, また,平成 11年 3月期 より税効果会計が導入 され, これが正常 に適用 されてい く上で も 必須の要件であることは論 をまたない (なお,1986年 に,アメリカ政府が銀 行の直接償却 (writeoff) か ら生ず る欠損金 に対 して既往10年 間に遡 って税
債権の貸倒損失 に係 る課税事件 217
を還付 (payback)した こ とにつ き, 日経新 聞平 成10年9月9日付 夕刊 参 照)。」
21)金子宏 F租税 法 (第5版)j (弘文堂 ,平成7年3月)61頁〜72頁参照。 シ ャ ウ プ勧 告 とい うの は , 昭和24年 の 「シ ャ ウ プ使 節 団 日本 税 制 報 告 書 」 (ReportonJapaneseTaxationbytheShoupMission,Vol.1‑4)の通称 である。
昭和24年 に,経 済安定9原則 を実現す るため, ドッジライ ンに基づ く超均衡 予算が編成 され,それ に よってイ ンフレーシ ョンは急速 に収束 に向か ったが.
それ に引 き続 き,かねての懸案 であ ったわが 国の税制 の全面 的 な再検討 と改 革 のため, 占領軍総司令部 の招 きで,昭和24年5月10日, アメ リカか ら, コ ロンビア大学教授 の カール ・シャウプ博 士 を団長 とす るシ ャウプ使節 団が来 日し,約3か月間半 に亘 ってわが国の税制 について調査 ・検討 を行 ったのち, 同年9月15日膨大 な報告書 を発表 した。 これが,いわゆ るシ ャウプ勧 告 であ る。勧告 内容 は,国 と地方 を通ず るわが国の税制全体 の長期 的 なあ り方 を勧 告 してい る。その基本方針 は,①公平 な租税制度 の確立,② 租税行政 の改善,
③ 地方財 政の強化 ,の三点 に要約す るこ とがで きる。
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