認知症ケアにおける介護職の確信獲得プロセスの研 究
その他のタイトル A Process on Care Staff's Assurance of Taking Care of People with Dementia
著者 狭間 香代子
雑誌名 關西大學文學論集
巻 57
号 2
ページ 59‑77
発行年 2007‑10‑20
URL http://hdl.handle.net/10112/12519
認知症ケアにおける介護職の 確伯獲得プロセスの研究
I . 研究の背景と目的 1 . 問題の所在
狭 間 香 代 子
老人介護施設での認知症利用者の介護方法は,近年になって大きく転換して いる。従来の認知症ケアは抑圧的,事後的であったが, ここ数年間に,バリデ ーションやパーソン・センタード・ケア,当事者の語りなどが紹介され,認知 症の人々の生活の質を向上することで,行動障害を緩和する介護方法へと移行
している。
わが国で開発された「センター方式」も老人介護施設などで導入され,アセ スメントを通して,職員が利用者の生活歴などの情報を収集し,利用者個人の 特技や過去の主要な役割などを把握して,利用者の主観的世界に沿った介護を
目指している。
利用者中心の介護では,職員が個々の利用者に関する情報をいかに活用でき るかが介護の質に影響する。介護における情報活用能力は,介護職の専門性向 上のためにも不可欠である。福祉専門職としての専門性確立のためには,職員 間での情報共有化プロセスの明確化は重要な課題である。
しかしながら,老人介護施設での職員の情報共有プロセスを専門性向上との 関連から把握した研究はきわめて少ない。職員間での情報伝達には,口頭によ るものと記録によるものとがあるが,前者に関しては,職場内での命令・報告
という研究が中心であり,後者には介護記録の書き方などの研究が多い。
闘西大學『文學論集』第 57 巻第 2 号
2 . 研究の目的
多くの介護老人福祉施設では,アセスメント・ケアプランというプロセスを 経て,利用者のニーズを尊重した介護を試みている。しかし,認知症利用者の 状況や行動傾向は個別性が強く,一般的でマニュアル化した介護方法では限界 がある。この限界を埋めるには,実際の認知症利用者の介護現場で,介護職員 が認知症者に特有な行動をいかに理解して,介護力向上に結びつけるか, また 各職員が利用者の情報をいかに獲得し,活用しているかを明らかにしなければ ならない。特に,施設における認知症の人々の介護は,一対一の関係ではなく,
複数の利用者と複数の介護職との日常的な関わりを通して行われている。そこ では,個々の利用者の行動理解に職員間の相互作用が大きく影響すると思われ る 。
本研究でば複数の職員で介護が提供される介護老人福祉施設での認知症利 用者介護において,介護職が認知症利用者の行動理解による介護力向上のプロ
セスを利用者の情報共有化の視点から捉え,このプロセスにおける職員間相 互作用の影響を明らかにすることを目的にする。
I I . 研究方法
1 . 調査方法
実際に認知症ケアが行われている現場で, どのような相互作用に基づいて認 知症利用者の行動理解がなされているかを把握するためには現場に密着した データ収集と分析の必要がある。本研究では,そのための方法として,修正版 グラウンデッド・セオリー・アプローチ (M‑GTA) による調査法を採用し 特定の介護老人福祉施設の認知症フロアで働く介護職員にインタビューしてデ ータを収集し,それらを分析した。
M‑GTA は,グラウンデッド・セオリー・アプローチの分析法をより活用し
やすく修正したもので, ヒューマン・サービスといわれる対人援助領域で展開
される様々な人々の相互作用とその影響を分析する方法として広く用いられて
いる。
認知症ケアにおける介護職の確信獲得プロセスの研究(狭間)
2 . データ収集
①調査期間
2005 年 7 月ー 1 1 月
②分析対象者
介護老人福祉施設の同一認知症フロアで働く介護職員 1 1 名 女性 9 名(正職員 7 名・パート 2 名)→ チーフ 1 名 男 性 2 名(正職員)→サブチーフ 1 名
3 . 分析手順
介護職員 1 1 名のインタビュー内容を逐語録としてデータ化した後, M‑GTA の分析法を用いてデータ分析を行った。その手順は以下のようである。
第 1 に,多様な内容を含むと思われる一人のデータを選び,解釈によって概 念を生成する。第 2に,概念名,概念定義,具体例などを記した分析ワークシ ートを作成する。第 3に,生成された概念を軸に他のデータから類似例や対極 例を収集し,具体例に追加していく。第 4 に,生成された概念間の関係である
プロセス性に着目して,概念をカテゴリー化するとともに,中心的概念を特定 化した。第 5 に,結果図を作成し,プロセスを文章化した。
皿 結 果 と 考 察
1 . 全体像
ここでは分析結果の概要を述べる。文中での下線部の語旬は生成された概念 であり,[]の語旬はカテゴリーを表している。結果図(図 1) はプロセスを 視覚的に示したものである。
認知症フロアで介護職がフロア内の共有情報を活用して専門性を向上させて いく過程は,分析によって,職員の確信形成プロセスとして示された。それは,
介護職が認知症フロアに配属されたときに感じる不確かさによるとまどいを解
消して,認知症利用者の行動の意味を了解できるように,職員間での介護情報
を収集し,共有情報を増やすことで確信をもった介護力を向上させていくプロ
闊西大學『文學論集』第 5 7 巻第 2 号
介護職の確信獲得プロセス
[不確実の気づき]
違いによるとまどい ストレスの発生
0口 I
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[引出しづくり]
形 か ら の 学 び
根 拠 か ら の 学 び > シミュレーション化
[確信の形成]
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る か か わ わ が る が 味 か い 意 わ 合 の が ね 動 長 兼 行 波
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安心できる関係づくり
文字化の困難さ 不 可 解 な 行 動 の 認 知 工夫したケアの創出
[口頭情報の摺り合せ]
図 1
いつでも見られる情報 確 信 で き る 情 報 の 記 録
[文字化情報の集積]
[ ] カテゴリー名 概念名
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