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保 健 ・医療 協 同組 合論 ノ ー トー そ の1

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保 健 ・医 療 協 同 組 合 論 ノ.̲̲.ト そ の1 一 近 年 の 保 健 ・医 療 協 同 組 合 の 国 際 的 動 向 と

マ ル ク ス ・エ ンゲ ル ス の 協 同組 合 論

日 野 秀 逸

は じめ に

本 稿 は、 実 態 的 に も理 論 的 に も新 しい領 域 で あ る保 健 ・医 療協 同組 合 に関 す る、筆 者 の研 究 ノー トで あ る。一 般 に理 論 は、2っ の 源 を持 つ。1つ は現 実 、実 態 で あ る。 こ こで 言 え ば保 健 ・医療 協 同組 合運 動 で あ る。 も う1っ は先 行 す る理 論 で あ る。

保 健 ・医療 協 同組 合 は、後 述 す るよ うに、国 際協 同 組 合 同盟(ICA)で も各 国 の活 動 の 全 容 を 把 握 で きて いな い新 た な協 同 組 合 運 動 で あ る。 しか も、福 祉 協 同組 合 や環 境 協 同組 合 な ど と と もに、21世 紀 にお いて 協 同 組合 が しか るべ き役 割 を果 たす こ とを期 待 され て い る、戦 略 的 に重 要 な領 域 で あ る。

この ノ ー トは、 保 健 ・医療 協 同 組 合運 動 の実 態 と、 理 論化 の前 提 とな る先 行 理 論 とを 検 討 し、 筆 者 の 考 え る保 健 ・医療 協 同組 合 論 を提 示 す るた め の 、準 備 作 業 で あ る。 叙 述 に お い て は、 ノー トとい う性 格 か ら、 文 献 ・資料 か らの 引用

とそれ に対 す る筆 者 の コメ ン トが 多 く含 まれ る こ とを断 って お く。

1協 同組 合 運 動 の新 分 野 と して の保 健 ・医療 協 同組 合

1‑1各 論 の 確 立 の 重 要 性

従来 、協 同組 合の中心 は、農業協 同組合 と消費協 同組合(そ れ も労働者 を主 た る組 合員 とす る消費協 同組合)で あ り、協同組合理 論 もこれ らの分野 を想定 して構 想 され る ことが多か った。特 に日本で は農業協 同組合が主 た る対象 であ った。

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288 保 健 。医 療協 同組 合論 ノー トー そ の1

この点 に関 して松 村 は次 の よ うに述 べて い る。 「協 同 組 合 は労 働 組合 とは違 っ て 、 そ の構 成 員 に本 質 的 な差異 が あ る。 っ ま り、 範 疇 的 に異 な った組 合 員 に よ って 、それ ぞれ の、 しか し同 じく協 同組合 と呼ば れ る ものが構 成 されて い る。 も ち ろん これ らの協 同組合 は同一 な い し類似 した面 を少 なか らず も って い るが 、そ の組 合 員 の 差 異 に よ って 本 質 的 差異 が生 じ、 これ らを 同一 に論 じる と、特 に本 質 論 の段 階 で混 乱 と誤 りを導 くこ とにな る。協 同組 合 論(本 質論 、原 論)は 、欧 米 で は区 別 して 論 述 され る場 合 が 多 く、わ が 国 で も これ らに な ら った もの もあ るが 、 最近 で は 一 般 論 と して各 種 の協 同組 合 が 、 あ たか も同 一 で あ るか の よ う に論ぜ られ て い る。 こ うな って い る理 由 はあ ま り定 か で はな いが 、お そ ら く、わ が 国 の 特徴 と して 、 協 同組 合 の 創 設 と発 展 が 多 分 に行 政 的 で あ り、 か っ農 業 協 同組 合(産 業組 合=小 資本 の協 同組 合)に 偏 重 し、反 対 に消 費 協 同組 合(労 者 の 生 活協 同組 合)が 著 し く立 ち遅 れ て い る とい う現 実 に関 連 す る もの と思 わ れ る。 戦前 の 多 くの期 間 、 わ が 国 の協 同組 合 が農 業 協 同組 合 のみ の よ うな状 況 の 下 で は 、 この よ うな本 質 論 で もそ れ ほ ど支 障 は な か ったか も しれ な い。 しか し生 活協 同組 合 もか な り発 展 して い る現 状 で は 、/協 同 組 合 の理解 を混 迷 させ るだ けで な く、実 際 面 を正 し く指 導 す る こ とに も問題 が 生 ず る。 それ ゆえ わが 国 の慣 例 に した が って協 同組 合 を論 ず る な ら、一 般 論 にお いて 、 各種 協 同組 合 の 同一 性 と、 よ り重 要 な異 質 性 を まず 明 確 に指 摘 した あ とで 、 各種 協 同 組 合 の 分 析 、 いわ ば各 論 を展 開 す る とい う方 法 を と るべ きで あ ろ う。 あ るい は各 種 協

百 咀Aそ れ ぞれ 別 盲組Aと して°A"る の るの で あ ろ'と

に か 百 咀A訟 に お い て の 急 別 の 百 咀A塾 る こ とで

あ ろゑ(松 村 善 四郎 、中川 雄 一郎 、『協 同組 合 の思想 と理 論 』、 日本経 済 評 論 社 、 1985年 、124‑125ペ ー ジ、下 線 は筆 者 の もの)。

筆者 は 、松 村 の提 案 を妥 当 な もの と考 え る。 そ して 、 下 線 の指 摘 を念 頭 に置 きつ っ作 業 を進 め た い。

1‑2保 健 ・医 療 協 同 組 合 自体 の 多 様 性

松 村 は、 各 協 同 組 合 が その構 成 員 の 階級 あ るい は階 層 によ って 、本 質 的 な差

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異 を持 っ と主 張 して いる。 その上 で 、協 同組合 を3っ の範 疇 に区分 して いる。 こ うで あ る。 「協 同 組 合 を構 成 しな け れ ば な らな い問題 を持 った範 疇 は、大 方 の研 究者 が示 す よ うに3つ であ り、 した が って協 同組合 も3種 類 とい うこ とにな る」。

1つ は資本 主 義 経 済 の初 期 に封 建 的 小生 産 者 が、没落 か ら身 を守 るた め に組 織 し た小 生 産者 協 同組 合(生 産 協 同組 合)。1つ は労 働者 階級 の貧 困 問 題 に対 処 す る 消費(生 活)協 同組 合 。1つ は小 資本(例 え ば農業 、中 小 企 業 等)協 同組 合 で あ る(前 出 、125ペ ー ジ)。

とこ ろで 、 保 健 ・医療 協 同組 合 に は、 開業 医(=小 資本)を 構 成 員 とす る も のが あ る し、 わ が 国 の厚生 農 業 協 同組 合 連合 会 の よ うに、 農 業 協 同組 合 の 県単 位 の連 合 会 が所 有 ・運 営 す る保 健 ・医療 協 同組 合 もあ る。 これ は 、小 資本 協 同 組 合 の2次 協 同 組 合 が組 織 す る保 健 ・医療 協 同 組 合 で あ る。

ス ウ ェー デ ンや スペ イ ンな どに は 、労 働 者 が 組 合 員 で あ り、 しか も消 費 協 同 組 合で は な く保 健 ・医療 サ ー ビス生 産 を 目的 とす る協 同 組 合 が 存 在 す る。 これ は、松 村 の言 う3つ の範 疇 には含 まれ な いで あ ろ う。労 働 者 階級 が解 決 しな けれ ば な らな いの は 、 決 して消 費 分 野 の 問 題 だ けで は な い。 労 働 者 階級 が 、 資 本 主 義 経済 に お け る生 産 の担 い手 と して 立 ち現 れ 、 か っ経 済 活 動 の管 理 能 力 を も身 にっ け る こ とが 、社 会主 義(共 産 主 義 の初 期 段 階 と して の)へ の移 行 の 不 可 欠 な要因 で あ る とす れ ば な お さ らで あ る。 こ う した労 働 者 の 生 産 協 同組 合 が 、 保 健 ・医療 領 域 に 存 在 して い る。

また 、 日本 生 活 協 同組 合 連 合 会 医療 部 会 の よ うに、 主 と して労 働 者 ・勤 労 市 民 を組 合 員 と し、 か つ 職員 の殆 ど も同 じ協 同 組 合 の 組 合 員 で あ る、保 健 ・医療 協 同組 合 も存 在 す る。 これ は、 労 働 者 消費 協 同組 合(労 働 者 生 協)と い う範 疇 と、保 健 ・医療 労 働 者 を組 合 員 とす る労 働 者 生 産 協 同 組 合 と い う範 疇 の統 合 さ れ た もの と して 、 独 自の範 疇 を形 成 す るので は なか ろ うか 。

1‑3国 際協 同組 合運 動 に お け る保 健 ・医 療 協 同組 合 へ の 関心

さて、保健 ・医療協同組合が新 た な協同組合運動の領域 で あ ると言 い切 る こ とは、正確 では ない。わが国では少 な くと も戦前 の産業組合 法の下での医療利

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用 組 合 が 、1919年 に 島 根 県 で 活 動 を 開 始 して い る。 ま た 、 ア メ リカ で は マ イ ケ ル ・シ ェ イ デ ィ ド(MichaelShadid)医 師 が 、 記 録 に 残 って い る最 初 の 保 健 ・医 療 協 同 組 合 を1929年 にオ ク ラ ホ マ の 農 村 地 帯 で 設 立 した。 か れ は 引 き続 き1930 年 代 に 農 村 地 帯 で 精 力 的 に 協 同 組 合 医 療 を 推 進 した 。 現 在 で も、 組 合 員(選 権 を 有 す る正 組 合 員)8万 人 、会 員(選 挙 権 を 持 た な い利 用 組 合 員)37万 人(1991 年 度 の 数)を 擁 す るGroupHealthCo‑operativeofPugetSoundが シア トル を 拠 点 と して 活 動 して い る。GHCは1947年 に発 足 し、 今 日で は ア メ リカ 全 土 の 健 康 保 持 機 構(HealthMaintenanceOrganisation=前 払 い制 保 健 ・医 療 供 給 シス テ ム)の 中 で も、12位 の 組 織 人 員 を 有 して い る。

筆 者 が1992年 に 行 った カ ナ ダ の 保 健 ・医 療 協 同 組 合 に 関 す る調 査 で は 、 カ ナ ダ に 少 な く と も10以 上 の 保 健 ・医 療 協 同 組 合(こ れ は 労 働 者 消 費 協 同 組 合 で あ り、 そ この 従 業 員 は カ ナ ダ公 務 員 労 働 組 合 に 組 織 され て い る。 つ ま り、 ほ ぼ 公 共 セ ク タ ー と 同 様 に 位 置 づ け られ て い る)が あ り、5つ は サ ス カ チ ュ ワ ン州 に 、 4つ は マ ニ トバ 州 に 、1っ は ア ル バ ー タ州 に あ った 。 最 も古 い の は1962年 に創 設 さ れ た サ ス カ トゥ ー ン市 の 協 同 組 合 で あ る(DennisGruending,TheFirst

TenYears,CommunityHealthServiceAssociation,Sasukatoon,1974。 ま た 、 日野 秀 逸 、 「カ ナ ダ の 医 療 生 協 」、 『健 康 生 協 』、 日本 生 活 協 同 組 合 連 合 会 医 療 部 会 、 通 巻5号 、6号 、1992年)。

この ほ か に も、 創 設 以 来30年 か ら40年 の 歴 史 を 持 つ 保 健 ・医 療 協 同 組 合 が ア ジ ア 各 国 に存 在 し て い る。 とす れ ば 、 保 健 ・医 療 協 同 組 合 が 新 参 協 同 組 合 だ と い う の は 、 む し ろ 国 際 協 同 組 合 同 盟 に 代 表 さ れ る従 来 の 協 同 組 合 運 動 の 側 の 認 知 が 遅 れ た と い う こ とを 意 味 して い る と い うべ き で あ ろ う。 もち ろ ん 、ICAに 保 健 ・医 療 協 同 組 合 に た いす る認 識 が ま っ た く欠 け て い た と言 うつ も りは な い 。 個 々 に は 、 触 れ られ て い た し、 ま た 協 同 組 合 運 動 に 思 想 的 影 響 を 及 ぼ した イ ギ

リ ス の ロ バ ー ト ・オ ー エ ンや フ ラ ン ス の サ ン ・シ モ ン 時 代 か ら 「協 同 組 合 は ま た 、 コ ミ ュニ テ ィの 構 成 員 の 健 康 につ い て 関 心 を持 って い た」の だ し、(ICA,「21 世 紀 に お け る 協 同 組 合 の ア イ デ ンテ ィ テ ィ ー 背 景 資 料 」、1994年 、 日本 生 活 協 同 組 合 連 合 会 『協 同 組 合 原 則 の 検 討 資 料 』、1994年 、 所 収 、34ペ ー ジ)、ICA が こ れ ま で2度 制 定 した協 同 組 合 原 則 に 包 含 され た5っ の 伝 統 の1っ は 、 「広 い

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保 健 ・医療 協 同組 合論 ノ ー トー その1 291

範 囲 の サ ー ビス を 提 供 す る協 同組 合 を取 り巻 いて い る。 例 え ば保 険 、 医療 、 住 宅 、育 児 の協 同 組 合 も含 ん で お り、 この伝 統 は 、 時 に は他 の分 野 の協 同組 合 と 提 携 して 、 ま た 時 に は単 独 で、 非 常 に大 規 模 な協 同組 合 を生 み だ した 。 これ も ま た、広 範 囲 で 多様 な成 長 の可 能 性 を持 って い る分 野 なので あ る」(同 、26ペ ー

ジ)と も語 られ て い る。

しか し、保 健 ・医 療 を独 自の 協 同 組 合 範 疇 と して、 一般 的 にで は な く当面 の 優 先 順 位 の高 い協 同組 合 と位 置 づ け たの は、 近 年 の ことで あ る。

この 問題 意 識 に立 って 、ICAで の論 議 を 中心 に、保 健 ・医療 協 同組 合 に対 す る 関 心 の形 成 を あ とづ け て お こ う。

1‑41CAと 保 健 ・医 療 協 同 組 合

ICAは 、1992年 段 階 で全世 界 に5億5千 万 人 の組 合 員 を有 す る組 織 で あ り、国 連 の経 済 社 会 理 事 会(EconomicandSocialCouncil.国 連 の 主 要機 関 の1っ で 、 経 済 ・社 会 ・文 化 ・教 育 ・保健 ・医療 に 関 わ る国 際的 事 項 を 扱 って い る)を は

じめ い くっか の 国 連 の専 門 機関 にお いて 、カ テ ゴ リー1(カ テ ゴ リー1の 地 位 を 与 え られ て い るの は、約700余 りのNGOの うちで 国 際赤 十 字 社 連 盟 、 世 界 労 連 、 国際 自 由労 連 、 な ど35団 体 で あ り、上 記 の経 済社 会 理事 会 に対 す る議 題 提案 権

と一 定 の発言 権 が 認 め られ て い る)の 地 位 を持 っ非 政 府組 織(NGO)と して、活 発 な国 際活 動 を 展 開 して いる。

さて周 知 の よ うに 、現 代 の 協 同 組 合 の 起 源 、 世 界 の 消費 者 協 同 組合 運動 の 出 発点 は 、 イ ギ リス に お け る貧 困 か らの 解 放 を求 め る労働 者 た ち の 運動 、具 体 的 には、産 業 革命 期 の、 ロ ッチデ ール の公 正先 駆 者 組合 の運 動 で あ る。 これ は 、単 に生 活 必需 品 を共 同 購 買 す るだ けで は な く、 住 宅 建 設 や 、失 業 者 の ため に土 地 を購 入 して消 費 者 の 必要 とす る食 糧 の生 産 も、 そ の宣言 に うた って い た。

1869年 に は、 フ ラ ンス 、 ドイ ツ、 ス ウ ェー デ ン、イ タ リア、 デ ンマ ー クの代 表 を招 いて第1回 の英 国協 同組 合大 会 が 開 かれ た。1886年 には、 フ ラ ンス協 同 組 合 が 、 国 際的 な協 同組 合 の協 同 組 合 委 員 会 の設 立 と協 同組 合 の崇 高 な原 則 の 拡 大 を 要求 し、国 際 協 同組 合 同盟(InternationalCooperativeUnion)創 設 計

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画 を提 案 し採 択 され た。

しか し1895年 のICAの 形成 まで には路線 上 の対立 に起 因す る中断 があ った。 そ れ は、イ ギ リスの協 同組 合 運動 内部 で 、労 働 者 の生産 者協 同組 合 が主導 した 「 想 主義 」 と、卸 売 協 同組 合 ・消 費協 同組 合 が 主 導 した 「現 実 主 義 」 との 論争 で あ る。前 者 は、 利 益 共 同分 配 とコー ・パ ー トナ ー シ ップす な わ ち 「労 働 者生 産 組 合 と消 費組 合 との 共 同 出資 で 生 産 を 行 い、 消費 組 合 が 販売 を担 当す る とい う 経 営 形態 」(竹 内哲 夫 、生 田靖 著 、 『協 同組 合 の理 論 と歴 史 』、 ミネル ヴ ァ書 房、

1976年 、43ペ ー ジ)の 原 則 に基 づ き、「協 同組 合 労 働 とい う生 産 点 で の権 利 を基 盤 に据 え 、 その拡 大 の路 線 の うえ に協 同 組 合 運 動 を位 置 づ けよ うとす るオ ウエ ン的 系譜 の 発想 」(同 前、43ペ ー ジ)で あ った。 後 者 は、卸 売 協 同 組合 の実 践 に 従 う消費協 同組合 組 合員 の意 見 と支配 の重 要 性 を強調 し、各 参 加協 同組 合 と個 々

の組 合 員 に対 す る利 益分 配 を 目指 したの で あ る。

1895年 のICA設 立 時 に は前 者 す な わ ち生 産者 協 同組 合 派 が 多数 派 を形 成 した が 、資 本 主 義 の発 展 す な わ ち独 占資 本 主 義 段 階 は、 前 者 の試 み の 客観 的 可 能性 をせ ば め 、 しだ い に、 よ り 「現 実 的 な」 後 者 が、 国際 協 同組 合運 動 の中 心 的潮 流 を なす に至 った。

1910年 第8回 ハ ンブル ク大 会 で は、利 益 共 同 分 配 と コ ー ・パ ー トナ ー シ ップ の原 則が 削 除 され 、1921年 第10回 バ ー ゼル 大 会 にお いてICA憲 章 の改訂 が なさ れ 、 ロ ッチデ ー ル原 則 が 採択 され た。 そ して 、1931年 の第13回 ウ ィー ン大 会 で 協 同組 合 原 則 制 定 の ため の 特別 委 員 会 が設 置 され、1934年 の 第14回 ロ ン ド

ン大 会 で の論 議 を経 て、1937年 の第15回 パ リ大 会 で は次 の 七項 目か らな る協 同組 合 原則(① 組 合 員 公 開、② 民 主 的運 営 、③ 利 用 高 に応 じた剰 余 金 の分 配 、④ 出 資 に対 す る利子 の制 限 、⑤ 政 治的 ・宗 教 的 中 立 、⑥現 金 取 引 、⑦ 教育 の促進) が 採 択 され、 さ らに1966年 の第23回 ウイ ー ン大 会 で新 たに6原 則 が採 択 され、

これ は今 日で もなお 有 効 で あ る。

6原 則 は以 下 の通 りで あ る。

1.「 加 入 の 自 由 」

協 同 組合 へ の加 入 は 自由意 思 によ るべ きで あ り、組 合の サ ー ビス を利 用す

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保健 ・医療 協 同組合 論 ノ ー トー その1

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る こ とが で き、組 合 員 と して の責 任 を 引 き受 け る意 思 の あ る人 々の す べ て に 対 し、 人 為 的 な制 限 あ る いは何 らか の社 会 的 ・政 治 的 また は宗 教 的 な差 別 な しに認 め られ ね ば な らな い。

2.「 民 主 的 管 理 」

協 同組 合 は民 主 的 組 織 であ る。 その業 務 は選 挙 され、あ るいは組 合 員 の 同 意 した方 法 に よ って任 命 され 、そ して組 合 員 に対 し責任 を もっ人 々 に よ って 管 理 され ね ば な らな い。単 位 組合 の組 合 員 は、 平 等 の投 票 権 と組 合 の諸 決 定 に参加 す る権 利 を享 受す べ きで あ る。 単位 組 合 以外 にっ いて は 、その 理 は民 主 的 基 礎 の上 に行 な わ れ るべ きで あ る。

3.「 資 本 利 子 の 制 限 」

出資に対 して利息が支払われ る場合で も、その利率 は必ず厳格 に制限 されね ばな らない。

4.「 剰 余 金(節 約 金)の 配 分 基 準 」

組合の運営 によ って剰余金 または節約金が生 じた場合で も、それはその組 合 の組合員 に帰属す るものであ り、そ して1組 合員が他の者 の犠牲 にお いて 利す ることを避 け るよ うな方法で分配 され なけ れ ばな らな い。

5.「 教 育 促 進 の た め の 準 備 金 」

すべての協同組 合は、 その組合員、役員 、職員および一般大 衆 に対 して、

協同の原則 と手法 にっ いて、経済的お よび民主的教育をす るための準備金を 用意 しなければな らない。 これ らに対 し、われわれは協同組合相 互の協同 に よる発展 の原則を追加す ることが重要 であ ると考 え る。

6.「 協 同 組 合 間 協 同 」

すべての協同組合組織は、その組合員 な らびに共 同体の利益 に もっともよ く奉仕す るため に、地方的 ・全国的 な らびに国際的 の各段階 にお いて、あ ら

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ゆ る可 能 な方 法 で、他 の協 同組 合 と積 極 的 に協 同すべ きで あ る(前 出、『協 同 組 合原 則 の検 討 資料 』、44ペ ー ジ)。

さて 、1960年 代 か ら70年 代 にか けて 、西 欧 の 特 に消費 協 同組 合 で は 、 「ア イ デ ンテ ィテ ィーの 危 機」 と称 さ れ る事 態 が 生 じた。 オ ラ ンダの 消費 協 同組 合 の 失 敗 は、 ヨー ロ ッパ の悲 話 の は じま りといわ れ て い る。1959年 か ら組 織 の改編 (230の 単 位 協 同 組 合 を18の 地域 組 合 へ統 合)が 始 ま り、1967年 には合 併 が完 了 し、協 同組 合 は 、2大 統 合 グル ー プに な った。 そ して、民 間流 通大 資 本 との競 争 に敗 退 し、CO‑OPUAは 民 間 の チ ェ ー ンス トア に買 い取 られ 、残 った も う1っ の 協 同組 合 も衰 退 して い る。 この原 因 と して は 、① 地 方 自治 の伝統 の 中 で 、適 切 な事 業 規 模 へ 発 展 で きなか った こ と、 ② 主 な協 同組 合 の間 に連帯 の意 識 が 欠如 し、協 同組 合 の アイ デ ンテ ィテ ィーが 喪 失 した こ と、④ 他 の消 費者 グル ープ と ほ とん ど協 同 しなか った こと、⑤ 政 府 の保 守 的 な社 会 政 策 に対 して対 案 を提 示

し大 衆 的 な運 動 に して い くオル ター ナ テイブ運 動 との統 合 を求 め るべ きで あ った が 、実 際 に は、 そ う しな か った こ と、 ⑥ 現 代 的経 営 に の りお くれ た こ と、 が あ げ られ る。

フラ ンスで も、小 さな協 同組 合 を 合併 して 大 地 域 協 同組 合 を作 ったが 、1985 年 に は消 費 協 同 組 合 は危 機 を迎 え る こ とに な った。 この危 機 に対 応 して 、活 動

の集 中 な ど にっ とめ たが 、経 済 後 退 に対 す る積 極 策 とは な らず に 、赤 字 は累 積 し、 大 消 費 協 同組 合 は倒 産 した り民 間 会 社 へ 売 却 され 、 事実 上崩 壊 して しま っ た。

ドイ ツで は1964年 の改 革 委員 会 を 創設 し、消 費 協 同組 合 の構造 改 革 を 開始 し た。 同 委員 会 は、大 規 模地 域 協 同組 合 の考 え方 を採 択 し、138の 協 同組 合 を 、20 協 同組 合 に合 併 した。 しか し、組 合員 の増 加 は少 な くな りっ いに は全 体 数 も減 少 し、 自己資本 率 も減少 した。1970年 に、協 同 組 合 を株 式 会社 とす る方 針 につ いて議 論 が な され 、 後 に この方 針 が実 現 した が 、 これ は ドイ ツ協 同組 合 の 崩壊 を ひ きお こ した。1981年 に、CO‑OPAG(協 同 組 合 株 式 会社)が 組 織 され たが, 汚 職 等 に よ って倒 産 した り、大 部 分 が 民 間 資 本 へ売 り渡 され た。既 存 の 協 同組 合 に買 い戻 され た もの もあ ったが ご く0部 にす ぎな か った。 結 局 、流 通 資本 と

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保 健 ・医療 協 同組 合論 ノー トー そ の1 295

の競 争 に勝 つ こ とを第1優 先順 位 と し、 「組 織 は組 合 員 に よ って 、 また組 合員 の ため に あ る もの 」 とい う本 来 の 視 点 を無 視 して き た ため に、 ヨー ロ ッパ の協 同 組 合 は 、 少 数 の 指 導 者 と専 従 職 員集 団 に よ る経 営 体 へ と移 行 し、 結 局 は失 敗 し

た。 これ らの経 験 を ふ まえ て言 え る こ とは 、協 同 組 合 運 動 は 、常 に組 合 員 の運 動 と して の 本質 を保 持 し、組 合 員 の参 加 を常 にす す め る ことが大 切 で あ り、急 激 な社 会 の 変化 に対 応 して 、新 しい組 合 員 の要 求 に即 した協 同組 合運 動 を つ く

る必 要 が あ ると い う ことで あ る(ICAの 成立 と各大 会 で の主 た る論点 につ いて は、

前 出、武 内 、生 田共 著 お よ び大 谷 正 夫 、 「ICAの軌 跡 と世 界 の生協 運動 」、西 村 酪 通 編著 、 『現 代 の協 同組 合 とそ の基 本 問 題 』、 啓 文 社 、1992年 を参 考 に した)。

以上 の よ うな西 欧 協 同組 合 の危 機 を背 景 に、ICAは 再生 に取 り組 む。 そ の第 一 歩 が、1980年 の モ ス ク ワで の第27回 大 会 にお け る レイ ドロー報 告 「西 暦2000 年 にお け る協 同 組 合 」 で あ った 。 カ ナ ダの協 同組 合 学 者 の レイ ドロウ ー は 、長 文 の報 告 を提 出 した。 全 容 は 『西 暦2000年 にお け る協 同組合 一 レイ ドロー報 告 』(日 本 協 同 組 合 学 会訳 編 、 日本 経 済 評論 社 、1989年)に 譲 るが 、 こ こで は、

彼 自身 の要 約 を示 し、これ以 後 の本 ノー トの論 題 に関わ る2点 につ いて コメ ン ト を加 え よ う。

「この章 では 、 この報 告 にお け る主 な具体 的提 案 と勧 告 を述べ て きた。 そ れ ら を要 約 す れ ば、

今 後 、 世 界 中 の協 同組 合 は 、 と くに世 界 の食 糧 問題 に、生 産 か ら消 費 まで の 全過 程 にわ た って 、 そ の努 力 を集 中す べ きで あ る。 これ は 、人 類 に と って の 重 要 なニ ーズ の 分 野 で あ り、 こ こで は協 同組 合 は 、 世 界 的 な指導 性 を 発 揮 す る

こ とが で き る。

労 働 者生 産 協 同組合 は、労 働 者 と職 場 との 間 に新 しい関係 を築 き、 も う1っ の産 業 革 命 を もた らす 最 良 の手 段 で あ る。

従 来 の 消費 協 同組 合 は、 た ん に資 本 主 義 企 業 と競 争 す るだ けで な く、 それ 以上 の こ とをす るよ うな方 向へ 転 換 すべ きで あ る。 そ うすれ ば、ユニ ー クで 、違 った形 態 の事 業 体 と して知 られ るよ うに な り、組 合 員 だ けに奉 仕 す る よ う にな るだ ろ う。

都 市 の 住人 に奉仕 す るた め には 、都 市 の な か に村 を建 設 す るの に役 立 つ 多

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くの 異 種 協 同 組 合 の 集 合 体 を っ く る べ き で あ る」(同 前 、177ペ ー ジ)。

コ メ ン トの1っ は、③ と④ に関わ る こ とで あ る。 レイ ドロー は、組合 員 お よ び 地 域 住 民 の 要求 に広 範 に対 応 す る活 動 の参 考 例 あ る いは典 型 例 を 、農 村 の総 合 的事 業 を 行 う協 同組 合 に求 め て い る。 そ して 、 そ の経 験 を 、 都市 部 に も協 同組 合 の事 業 拡 大 と協 同組 合 間 協 同 とい う方 式 を 通 じて展 開 で き る と主 張 して い る ので あ る。 そ して、 この 種 の 農 業 協 同組 合 の具 体 例 と して 日本 の農 協 を挙 げて

い る。

こ うで あ る。 「基 本 的 には大 都 市 は、平均 的 ・典 型 的状 況 で は、 ほ とん ど人間 関係 の な い、 お 互 いに ま った く他 人 と して生 活 して い る こ とが 多 い人 間 の 集団 で あ る。 都 市 は、 多 くの住 民 に と って 孤 独 と疎 外 の 大 海 で あ る。一 協 同組 合 の偉 大 な 目的 は 、地 域 社 会 や村 落 を た くさん 大 都 会 の なか に建 設 す る ことで な

けれ ば な らぬ。 多 くの社 会的 経 済 的 ニ ーズ に応 え て 、 地 域 社 会 の 創設 に総 合的 効果 を及 ぼす 協 同組 合 的/地 域 を設 立 す る ことが で き る。 一

協 同組 合 地 域 社 会 な る もの を創 設 す る とい う点 で 、 都 会 の人 々 に強 力 な影響 を与 え るた め に は 、 た とえ ば 日本 の 総 合 農 協 の よ うな総 合 的方 法 が と られ な け れ ば な らな い。 従 来 の消 費 協 同 組 合 で は不充 分 で あ る。 なぜ な らば 、 都 市 の住 人 を い ろ い ろ な点 で護 りきれ な いか らで あ る。

典 型 的 な 日本 の状 況 の なか で 、 総 合 農協 が 何 を し、 どん なサ ー ヴ ィス を 提供 して い るか を考 え て み た い。 それ は生 産 資材 の 供給 、農 産 物 の販 売 を して い る。

貯 蓄 信用 組 織 で あ り、保 険 の取 扱 店 で あ り、生 活物 資 の 供給 セ ンター で もあ る。

さ らに医療 サ ー ヴ ィスや 、あ る地域 で は病 院 での 診療 や治療 も提 供 して い る。農 民 に対 して は営 農 指 導 も し、 文化 活 動 の た め の コニ ュニ テ ィ ・セ ンター も運 営 して い る。要 す る に、 この 種 の協 同組 合 はで き るだ け広 範 な経 済 的社 会 的 サ ー ヴ ィス を提 供 して い る。 も し総 合 農 協 が な け れ ば、 農 民 の生 活 や地 域 社 会 全 体 は、 ま った く異 な った もの とな ろ う。

これ ほ ど広範 な サ ー ヴ ィス と事 業 は、都 市部 で は1っ の総 合協 同組 合 で 実施 し うる もの で は な い。 しか し、住 民 が 容 易 に通 う こ との で き る協 同組 合 サ ー ヴ ィ ス ・セ ンタ ーの な か に、 そ れ/そ れ の機 能 を持 った組 織 を 同 居 させ る こ とは可

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保 健 ・医療 協 同 組 合論 ノー トー そ の1

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能 で あ る。 そ の 一般 的 な 目的 は、住 宅 、貯 蓄、信 用 、医 療 、食料 そ の他 日用 品 、 老 人 介 護 、 託 児 所 、保 育 園 な どの サ ー ヴ ィスを 各 種 の 協 同組 合 で提 供 す る こ と

に よ って 、 は っ き り と した地 域社 会 を つ く りあ げ る こ とで な け れ ば な らな い」

(174‑176ペ ー ジ)。

レイ ドロ ーは 、 この よ うに、 西 欧 に お け る協 同 組合 の衰 退 が 著 しい都 市 部 で の協 同 組 合再 建 の方 向性 を、 総 合 的 な物 財 ・サ ー ビス 財 の 提 供 、 それ を 消 費 協 同組 合 が事 業 拡 張 と協 同 組 合 間 協 同 を作 り上 げ る方 向 と、 労 働 者 生 産 協 同 組 合 の創設 とに よ って展 開 しよ う とい う方 針 を提 起 した。 後 者 の 論 点 は② に深 く関 わ って くる。 す なわ ち 「発典 した 消費 協 同組 合 の種 々 の部 門 の ほ か に、家 庭 用 品 の修 理 、 製 パ ン、理 ・美容 、靴 修 理 、 ク リーニ ング、 自動 車 修 理 な どの業 種 で各 種 労 働 者協 同組 合 を設 立 す る こ とが で きよ う。 こ う して地 域 内 の多 くの協 同組 合 人 が 消費 者 と して だ けで な く、 生 産 者 あ るい は労 働 者 と して も協 同 組 合 活動 に関 わ る こ とに な ろ う」(176ペ ー ジ)と 言 うので あ る。

さて筆 者 の コ メ ン トの第1は 、 日本 の農 協 に対 す る評 価 で あ る。農 協 が 日本 の 農民 の生活 を良 かれ 悪 しかれ大 き く規 定 して い るこ とには疑 問 の余 地 が な い。 し か し、 積 極 的 な 協 同組 合活 動 を農 協 が 行 って きた の か ど うか 、っ ま り協 同 組 合 原則 に照 ら して 組 合 員 の 自主 性 の尊 重 や 決 定 ・運 営 へ の 参 加 が 保 障 され て いた の か、 さ らには 協 同組 合 と して の政 治 的 中立 が守 られ て きた の か、 等 々の 重 要

な部 分 で、 論議 の余 地 が 多 々残 され て い るの で は なか ろ うか。

しか し、 筆者 が 問題 に した い の は直 接 に は上 記 の こ とで は な い。 医療 に限 っ た評価 の問 題 で あ る。農 協 の 医療 機 関 は厚 生 連 が 運 営 して い る。 厚 生 連 の 医療 活 動 が協 同組 合 の あ り方 に照 ら して、 妥 当 な道 を た ど って きた の か いなか にっ いて、ここで詳 細 な議論 を行 う余 裕 は な い。 そ こで 、筆者 が 座長 をっ とめ た1993 年 の第13回EI本 協 同組 合学 会 大会 にお け る ミニ シ ンポ ジ ウム 「健 康 ・医療 領 域

の協 同 組合 一 現 状 ・問題 点 ・展 望 一 」 の要 約 か ら、 一一部 を 引 いて お こ う。

1993年10月17日 に上記 の ミニ シ ンポ ジウムが 開 かれ た。 本 学 会 で 「健 康 ・ 医療 領 域 の協 同 組 合 」 を ま と ま った形 で 取 り上 げ るの は初 め て で あ った。 日本 生 活協 同組 合連 合 会 医療 部 会事 務局 長篠 崎次男 氏 が 、「医療 生協 の現状 と問題 点 」

と題 す る報 告 を 行 った。 次 に愛 知 県 厚 生 農 業 協 同組 合 連 合 会 参事 細 江詞 次 氏 が

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「農 協 医療 にっ いて 」報 告 した。氏 の 報告 は 「概 説 」 と 「課 題 」 と 「将 来 に 向 け 根 元 的 に問 わ な くて は な らな い こ と」 に分 か れ て いた。 概説 で は、 「貧 しいが 故 に 医療 を受 け られ な い悲劇 を、 貧 しさ故 とか 医 師 そ の ものへ の反 抗 とい う形 で 解 決 す るの で は な く、 その根 底 に位 置 す る 自由 開 業 医制 に求 め、 その制 度 自体 を逆 手 に と って 、医 師 その もの を雇 用 し、医 療 を 確保 しよ うと した動 き こそが 、 農 村 医療 の 原 点 とい え る」 と し、 戦 後 に お いて も医療 の量 的 確 保 とい う政 策 的 必 要 の担 い手 と して 農 協 の 医療 機 関 は 日赤 や 済生 会 な ど と と もに公 的 医療 機 関 の指 定 を受 けた の で あ る。 この過 程 で協 同組 合 の 医療 とは何 か とい う点 の論 議 は必 ず しも十 分 に は行 わ れ ず、 国 民 皆 保 険 後 も 「農協 医療 の意 義 は喪失 した の か ど うかの 原 理 的 問 いか けの な い ま ま、 逆 に規模 拡大 を繰 り返 し、 一般 の 医療 機 関 と何 ら変 わ る こ との な い医療 事業 の推 進 ・拡 大 とな って い った」。 こ う して

「農協 医療が 、今再 び原則 論 も含 めて 問 い直 され よ う と して い る現 実 が あ る」。 課 題 や 将来 の 問 いか け も、 この視 点 か ら展 開 され た。 医療 生協 と比 べ た場 合 に、国 民 皆 保 険 達 成後 の 農 協 医 療 の役 割 につ い て論 議 が あ ま りな さ れず に、 公的 医療' 機 関 と して 一般 的 な 医療事 業 の拡 大 を進 め て きた こ との矛 盾 が 、 経 営 や組 合 員

の参 加 や 行 政 との 関 係 等 の諸 分 野 で 発 生 して い る。整 理 す べ き論 点 は 多 い こ と を指 摘 した 報告 で あ った 。細 江 氏 の 報 告 は協 同組 合 の ア イ デ ンテ ィテ ィー とい うテ ーマ につ なが る重 い問 いか けを含 ん で いた。 第3の 報 告 は 日本生 活協 同組 合 連 合 会 医療 部 会 運 営 委 員長 加 藤 昭 治 氏 の 「保 健 医療 協 同組 合 の国 際 的広 が り と

日本 の 医療 生 協 」 で あ り、 滋 賀 大学 経 済 学 部 の成 瀬 龍 夫 氏 が 総 括 コ メ ン トを 行 った(『 協 同組 合 研 究 』、1994年 春 期号 、 日本 協 同組 合 学 会)。

見 られ るよ うに、 農 協 の 医療 は決 して 協 同 組 合 原 則 に則 って 、 組合 員 の ニ ー ズ に応 え て展 開 され た もの とは言 え な い ことを 、当事 者 が 認 め て い るので あ る。

な お、 日本 の医 療 に 関す る協 同組 合 の あ り片 と して 、 農 協方 式 を 是 とす る見解 が ヨー ロ ッパ の 関 係 者 に多 い。 情 報 不 足 、 あ るい は不正 確 な情 報 の なせ るわ ざ

と言 え よ う。

も う1っ の コ メ ン トは、労 働 者協 同 組 合 にっ いて で あ る。先 述 の よ うに、ICA を 中 心 とす る協 同組 合 運 動 の なか で 、 労 働 者 協 同 組 合 は殆 ど無 視 され るよ うに な った。 この状 況 に 根 本 的 な改 変 を 迫 った のが レイ ドロー報 告 の持 つ 画期 的 意

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保 健 ・医療 協 同組 合 論 ノ ー トー その1 299

義 で あ る。報 告 の なか で 彼 は こ う述 べ て い る。 「過 去20年 間 に お け る世界 の協 同組 合 に と って の 、最 も重 要 か っ大 きな変化 の1っ は 、労 働 者 協 同 組 合 に関 す る 全 面 的 な概 念 の回 復 で あ った。 過 去75年 あ る いは それ以 上 、 それ とな く無 視 さ れ て きたが 、 い まや 労 働 者 協 同組 合 は多 くの協 同組 合 人 の心 の な か に尊 敬 の念 を も って 迎 え られ る よ うに な っ たの で あ る。 そ して今 世 紀 の 残 りの期 間、 労 働 者 協 同組合 に多 くの期待 が寄 せ られ て い る。 一 協 同組 合人 は2世 代 にわ た って、

労 働 者 生 産 協 同 組 合 は 失 敗 の運 命 に あ り、 大 した もの に はな らな い の だ と信 じ させ られ て きた の で あ る。/と ころが 、1950年 代 にな って 、 い くっ か の ヨー ロ ッパ諸 国 や第3世 界 で も、方 向転 換 が見 られ るよ うに な った。 ス ペ イ ンの モ ン ド ラ ゴ ン協 同組 合 複 合体(complex)が 、 高 度 な産業 発展 の新 た な段 階 の 労 働者 協 同組 合 の姿 を示 したの で あ る。各 国 の政 府 は病 め る資本 主 義 産 業 救 済 の ため に、

この 協 同組 合 に注 目 し始 め た。 この こ と に関 す る新 しい文 献 の数 は 驚 くべ き も の で 、 あ ま り関 心 を惹 か な いだ ろ う と思 わ れ て いた ア メ リカ に お いて もそ うで

あ った。 イギ リス の非 公 式 な集 計 に よれ ば、1世 代 前 に と りわ け ウ ェ ッブ夫妻 に よ って労 働者 協 同組 合 は死 滅 した と宣 言 されて い たの に、 その イ ギ リス で近年 、 400も の労 働 者 協 同 組 合 が 設 立 され て い る。

労働 者協 同組 合 の再生 は、第2次 産業 革 命 の始 ま りを意 味 す るのだ と予 想 す る ことが で きる。 第1次 産 業 革 命 で は、労 働 者 や 職 人 は生 産 手 段 の 管理 権 を失 い、

そ の所 有権 や管 理 権 は は 企業 家 や投 資 家 の 手 に移 った の で あ る。 っ ま り資本 が 労 働 を雇 うよ うにな った。 と ころが労 働 者 協 同組 合 は その関係 を逆転 させ る。 つ ま り労 働 が 資本 を雇 うこ とに な る。 も し大 規 模 に これ が 発展 す れ ば 、 これ らの 協 同 組合 は、 ま さ に新 しい産 業 革 命 の先 導 役 をっ とめ る こ とに な るだ ろ う」(同 前 、158‑159ペ ー ジ)。

こ こで は、 レイ ドロー を して労 働 者 協 同 組 合 の再 発 見 せ しめ た最 大 の実 践 例 は 、 ス ペ イ ン西 北 部 の モ ン ドラ ゴ ン地 域 の労 働 者 生 産 協 同組 合 を核 とす る各 種 協 同組 合 の複 合 体 に よ る、 協 同組 合 的 地 域 共 同体 形 成 で あ った こ とを確 認 して お こ う。 モ ン ドラ ゴ ンの 協 同組 合 運 動 の理 論 は、 実 は マ ル クス理 論 の 強 い影 響 の もと に進 め られ た こ と も、 記 憶 して お こ う。

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Sao 保 健 ・医療 協 同組 合 論 ノ ー トー そ の1

1‑6保 健 ・医療 協 同組 合 の近 年 の国 際 的結 集

近 年 、 保 健 ・医 療 協 同 組 合 に た いす る関心 が たか ま りっつ あ る。特 徴 的 な出 来 事 を提 示 して 、 状 況 の 理解 の 一助 と した い。

まず 、特 筆 すべ き は1992年 に、東京 で 開 か れ た第1回 国 際 保 健 ・医療 協 同組 合 フ ォー ラ ムで あ る。 この フ ォー ラム は 同時 期 に東 京 で 開 かれ たICA第30回 会 の関 連 行 事 と して 開 催 され た 。保 健 ・医療 分 野 の 協 同組 合 の国 際会 議 自体 が 初 めて の こ とで あ り、 またICAが 保 健 ・医療 分 野 の協 同組 合 に大 きな関心 を もっ て い る こ とを具体 的 に示 した もの で もあ った。

フ ォー ラム には海 外8力 国 か ら24名 、国 内 か ら147名 が参 加 した。参加 者 の なか には 、マ ル コスICA会 長 、 ソー ダー ソ ンICA専 務 理 事 、 それ にICA東 京大 会 で

変 化 す る世 界 協 同組 合 の基 本 的 価値 」 と題 す る報 告 を行 った ス ヴェ ン ・べ 一 ク氏 な ど も参加 した 。

ICAと して も、べ 一 ク報 告 の第3章 「90年 代 へ の 出発 点一 過 去 の経 験 に照 ら して一 」の なか で、第6節 を 「新 しい協 同組 合 」にあて て い る。 そ こでは、「 去 数 十 年 間 の良 い側 面 の 中 に、 新 しい形 の協 同 組 合 が 出 て き た こと とが あ げ ら

れ る。 将 来 に 向 けて の出 発 に当 た って 、 これ らの動 向を語 らず に お くとい うの は誤 解 を招 くこ とに な ろ う」(べ 一 ク、 『変 化 す る世 界 協 同組 合 の基本 的価 値 』、 日本 協 同組 合 連絡 協 議 会 訳 、 発 行 、1992年 、101ペ ー ジ)。

「これ らの新 しい協 同組 合 は、 それ ぞ れ に異 な る多 くの ニ ー ズ に応 えて、 しば しば 、 自助 の特 質 を持 っ きわめ て非 公 式 な協 同組 合 の前 の段 階 の 組織(前 段 階 の協 同組 合)と も言 え る よ うな形 で、 ま た、 さ ま ざ ま な形 態 で 設 立 されて いる。

ま た、 女 性 や 青 年 、 身 障 者 な どの た め に、 あ る いは これ らの人 々の手 に よ る さま ざ ま な形 態 の 協 同組 合 もあ る。 さ らに は、 健 康食 品 、 資源 節 約 的製 品 、 無 農 薬 製 品 、地 域 の 自立 と い った、 特 殊 な 目的 の ため に形 成 され て い る協 同 組 合 もあ る。新 しいサ ー ビス の分 野 に関 して も、 しば しば 、 設 計 士 、 デ ー タ 技 術者 、 コ ンサ ル タ ン トな どの よ うな きわ め て高 い教 育 を受 け た人 た ちの手 に よ る さ まざ ま な形 態 の協 同 組 合 が作 られ て い る。 ま た 、例 え ば 、 託児 所 、 高齢 者 の世 話 、 予 防 的 医 療 、 アル コ ール 中毒 者 や 麻 薬 中毒 者 の 治 療 と い うよ うな社

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保 健 ・医療 協 同組合 論 ノー トー その1 301

会 福 祉 分野 の 協 同組 合 もあ り、 さ らに、 映 画 製 作 者 、 演劇 人 、 オ ー ケ ス トラの た め の協 同 組 合 と い った 、 さま ざ ま な種 類 の文 化 的 な協 同組 合 も出現 して い る。

これ は 、 あ る面 で は協 同組 合 概 念 が生 きて お り、 多 くの人 々が 、 自分 た ち の 持 っ 共 通 の ニ ー/ズ を満 たす ため の 活動 を 組 織 す る上 で の ガ イ ドライ ン と して 、 社 会 の持 っ 既 存 の制 度 構 造 に あ る欠 陥 に対 す る反 応 と して、 あ るい は 、別 の形 の組 織 を意 識 的 に考 え 出 した い と い う人 々の 意志 と して 、協 同 組 合 概 念 を選 ん で い る とい う事 実 を証 明 す る もので あ る。 ま た、 あ る面 で は これ らは、 既 存 の 協 同組 合 に対 す るす る批 判 で もあ り、 わ れ わ れ が これ に対 して 目をつ ぶ る こ と は で きな い。」(102‑103ペ ー ジ)。

この よ うに近 年 、注 目 を集 め て い る新 しい種類 の協 同組 合 に、 保 健 ・医療 協 同組 合 も含 まれ る。 ベ ー ク氏 自身 も、 この報 告 を 準備 す る過 程 で 、 日本 生 活 協 同組 合 連 合 会 医 療部 会 に加 盟 して い る、群 馬 県 の 「利 根保 健 生 協 」 や 「医療 生 協 さ いた ま」 な どの診 療 所 、 病 院 を訪 ね 、協 同 組 合幹 部 や組 合 員 活 動 家 との懇 談 も行 って い る。

この フ ォー ラ ムで は 、 各 国 の 保健 ・医 療 協 同組 合 の実 状 を相 互 に理 解 す る こ とと、今 後 の国 際交 流 の足 場 を築 くこ とが 主 た る課 題 とされ た。 日本 を 含 む9力 国 だ けを とって も、保健 ・医療 協 同 組 合 の 多様 性 が 明 らか に な った。 た とえ ば、

ブラ ジル に は強力 な医 師協 同 組合 が 存在 し、「国 家 に も営 利企 業 に も依 存 しな い」

保健 ・医療 シス テ ム を志 向 して い る。 ま た、 ス ペ イ ンに も有 力 な 医 師協 同組 合 や 歯科 協 同 組 合 が あ る。 これ らは 、 いず れ も生 産 者 協 同組 合 の範 疇 には い る も の で あ る。

ス ウ ェー デ ンで は協 同組 合 診 療 所 が準 備 され つ っ あ り、 そ れ は 従来 の 県 が 独 占的 に保 健 ・医療 サ ー ビスを供 給 す る シス テ ム の 見 直 しと連 動 して 展 開 され て い る。 ス ウ ェー デ ンの場 合 は、 医 療 費 抑 制 策 と医療 労 働 者 の 自発 的 労 働 へ の志 向 と、 住 民 の柔 軟 な対応 ので き る シス テ ム へ の期 待 とが、 複 雑 にか らみ あ った 試 み にな って い る。 今 の と ころ、 ス ウ ェー デ ンで 準備 され て い るの は や は り生 産者 協 同 組合 で あ る。(『国 際保 健 ・医療 協 同 組 合 フ ォー ラム報 告 書 』参 照 。 日

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302 保 健 ・医 療 協 同組 合 論 ノ ー トー その1

本 生活 協 同組 合連 合会 医療部 会 、全 国 厚 生農 業協 同組 合連 合 会 、刊 行 、1993年 ス ウ ェー デ ンの保 健 ・医療 協 同 組 合 の 問 題 に っ いて は 、 さ しあ た り拙 著 『ヨー

ロ ッパ 医療 紀 行 』 参 照 。新 日本 医 学 出 版 社 、1994年)。

わ が 国 で は、農業 協 同組 合法 に もとつ く県単 位 の厚 生 農業 協 同組合 連 合会(厚 生 連)が 医療 機 関 を 設 立 ・運 営 して い る。 ま た、 生 協 法 の もと に保健 ・医療 協 同組 合 が 設 立 ・運 営 され一 般 に 医療 生 協 と称 され て い る。 厚 生 連 の 医療 機 関 は、

二 次 協 同組 合 と して の 県 単 位 の厚 生 連 が 設立 して い るの で、 協 同組 合 の性 格 を 規 定 す る上 で の難 しさが あ る。 医 療 機 関 の労 働 者 が 出 資者 で あ り、運 営 の責 任 者 で あ る とい う生 産者 協 同組 合 の特 質 を,厚 生 連 が 備 え て い る とは言 え な い。 農 協 の組 合 員 が 利 用 者 で あ り結 局 は出 資 者 で もあ る ことを考 慮 す れ ば 、一 種 の消 費 者 ・顧 客協 同組 合 に位 置 づ け られ る もの で あろ う。 以上 の事 情 を反 映 して 、わ が 国 で は保 健 ・医療 分 野 の協 同 組 合 は、消 費 協 同組 合 の範 疇 で 理 解 されて い る。

しか し、OECD加 盟 国 の なか で は 、保 健 ・医 療協 同組 合 の多 くは生 産 者協 同 組合 で あ る。

第30回ICA大 会 最 終 日に は、 フ ォー ラ ムの組 織 委 員 で あ る加 藤 昭治 日本 生 活 協 同 組 合 連 合 会 医療 部会 運 営 委 員 長 が 、特 別 報 告 を要 請 され た。

「国 際 保 健 ・医療 協 同組 合 フ ォー ラム の報 告;

会長 お よ び参 加者 の み な さん 、私 は 日本 生 活 協 同組 合 連 合 会 医療 部 会 の 運営 委 員長 の加 藤で す。 私 は、第30回ICA大 会 が成 功 した こ とを心 か らお祝 い し、ま た、発言 の機 会 を与 え て下 さ った こ とを 感謝 いた します。 私 は 、記 念 す べ きICA 東京 大 会 と関連 して開 かれ た第1回 国 際保 健 ・医療 協 同組 合 フ ォー ラム にっ いて ご報 告 で き る こ とを 大 変 うれ し く思 います 。

これ は始 めて の試 み で した が 、10月22日 、23日 の2日 間 、国立 が ん セ ンター の国 際 会議 場 で 開催 され ま した 。開 会 の 時 に はICAの マ ル コス会 長 か らわ ざわ ざ ご挨 拶 を い た だ きま した 。 改 め て厚 くお 礼 を 申 し上 げ ます一 」(前 出 、 『国 際 保 健 ・医 療 協 同 組 合 フ ォー ラム 報告 書 』、127ペ ー ジ)。

1994年4月 には ス リラ ンカの コ ロ ンボ で、第1回 保 健 ・医療 協 同組 合 ア ジァ 会議 が 開 催 され た。 こ こに は4力 国42名 が参 加 した。 日本 生 活 協 同組 合 連 合会

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保 健 ・医療 協 同組 合 論 ノー トー その1 303

医療 部 会 の 加 藤 昭 治運 営 委 員 長 が 行 った基 調 報 告 で は、 ア ジア に250以 上 の保 健 ・医療 協 同組 合 が 存 在 し、世 界 の保 健 ・医 療協 同組 合 の過 半 数 は ア ジア にあ る こ とが 示 され た。 ア ジアの場 合 は 、 マ レー シア の 医 師協 同組 合 の よ うな生 産 者 協 同組 合 もあ るが 、主 と して 、小 規 模 な消 費協 同組 合 で あ る。 な お、 この基 調 報 告 には 次 の 文言 が 見 られ る。 「さて1992年10月 、東 京 で 第1回 国 際 保 健 ・ 医療 協 同 組 合 フ ォー ラ ムが 開 か れ て か ら早 くも1年 半 が 経 過 しま した。 あ の フ

ォー ラ ムは 世 界 の保 健 ・医療 協 同組 合 の 代 表 が初 め て一 堂 に集 ま り、 極 め て友 好 的 な雰 囲 気 の 中で 、私 た ちが 予 期 して いた 以上 の成 功 を お さめ ま した。 私 は そ の直後 に開 か れ た第30回ICA大 会 に参 加 し、最 終 日に第1回 国 際保 健 ・医 療協 同組 合 フ ォー ラム につ いての 報告 を行 いま した。 これ は国 際 協 同組 合 運 動 史 上、

初 めて 保健 ・医 療 協 同組 合 が 認 知 さ れ歓 迎 され た とい う意 味 で 、 大 変 記 念 す べ き ことで あ った と思 いま す」。

1995年 に はマ ンチ ェス ターで 国 際 保 健 ・医療 協 同 組 合 フ ォー ラ ムが 開 か れ る 予 定 で あ り、1996年 には第2回 ア ジア会 議 が イ ン ドで 開 か れ る予 定 で あ る。 ま た 、組合 員56000人 を誇 るブ ラ ジル の 医 師協 同組 合(UNIMED)も 、 ア メ リカ大 陸で の国 際会議iに積 極的姿 勢 を示 して い る。 さ らに、1995年3月 に は国連 が 「社 会 開発 サ ミッ ト」 を開 催 す るが 、 そ こで は社 会 発展 に対 す る協 同組 合 企 業 の貢 献一 新 たな社 会 的共 同の指 針 が主 た るテ ーマ と して取 り上 げ られ 、保 健 ・医療 領 域 の協 同組 合 企 業 とい う部 門 で は、1992年 の フ ォー ラム に お け る報 告 ・討 論 が 少 な か らず参 考 に され るはず で あ る。 国連 が お こな う初 め て の 「社 会 開 発 サ ミッ ト」 で は保 健 ・医療 ・福 祉 の領 域 に お いて協 同組 合 が 中 心 的 役 割 を に な う 可 能 性 と現 実性 が 論議 さ れ る予 定 な の で あ る。

また、 これ らす で に開 催が 確 定 して い る0連 の 国 際会 議 の 重要 な課 題 と して 、 保健 ・医 療 協 同 組 合 の範 疇化 の作 業 が挙 げ られ て い る。 これ は 、 い うな らば保 健 ・医療 協 同組 合 の 自己認 識 の作 業 と言 え よ う。 と りわ け 、1995年3月 の 国連 の会 議で は 、詳 細 な保 健 ・医療 協 同組合 の 区分が 提起 され る予 定 で あ る し、1995 年9月 の第2回 国 際保 健 ・医療 協 同組 合 フ ォー ラムで は、保 健 ・医療 協 同組 合 の カテ ゴ リー を検 討 す る独 自の 作 業委 員 会 の設 置 が 予 定 され て い る。

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304 保 健 ・医 療協 同組 合論 ノ ー トー そ の1

2保 健 ・医 療 と共 同体 ・協 同 に関 す る予 備 的考 察

以 上 に述 べ て きた 、保 健 ・医療 領 域 にお いて協 同組 合 が 増 加 しっ っ あ る とい うの は、 具 体 的 事 実 で あ る。 その理 由 あ る いは き っか け、 契 機 を原 理 的 に考 察 して お きた い。 保 健 ・医療(保 健=衛 生 と医療=治 療 は、 現 在 で こそハ イ フ ン で 、比 較 的 『気 楽 に』っ な げ る こ とが で きるが、 お よ そ19世 紀 半 ばまで は両 者 は基本 的 に別 の事柄 で あ った。 医師 たち も住 民 も健康 に注 意 を 向 け る余裕 は、学 問的 基 盤 か らみ て も生 き るの に精一 杯 とい う生 活 実 態 か らみ て も、客 観的 に存 在 しな か った。 もち ろん、 あ れ これ の 限 定 され た経 験 に基 づ く 『養 生 訓』 の類 は枚 挙 に い とま の な いほ ど、各 国 で 各 時 代 に流 布 して い た の で は あ るが)そ の た め に は保 健 ・医療 と協 同 との 一 般 的 な関 わ りに 目を配 って お くのが こ との順 序 とい う もの で あ ろ う。

人 間 社会 が 存 立 ・存続 し歴史 をつ くるた め には、4つ の契 機 が存 在 す る。 それ は、 「あ らゆ る人 間 的 存 在 の、 したが って また あ らゆ る歴 史 の第 一 の前提 一 生 き る こ とが で きね ば な らな い」 こ とで あ り、 この た め に は 「な に は さて お き 飲 食 、 住 、 衣 そ の他 、若 干 の こ とが な くて は か な わ な い。 したが らて最 初 の歴 史 的 行 為 は これ らの必 要 の充足 の た め の諸 手 段 の産 出(下 線 は 日野一 以 下 同 様)」 で あ る。 「第 二 は 、充 た され た第 一 の必 要 そ の もの、 充 足 の行 動 お よ びす で に獲 得 され た充 足 の ため の用 具 が 新 しい諸 必 要 を生 み だ す とい うこ と」 で あ る。 第 三 は 「彼 ら自身 の 生活 を 日々新 し くっ くる とこ ろの 人 間 た ちが 他 の 人 間 た ちを っ く り、 繁殖 しは じめ る とい うこ と」 で あ る。 第 四 の 契 機 は 「労働魍 互 る且 己 の生 の生 産 に して も、 生 殖 に お け る他 人 の生 の生 産 に して も、 お よそ 生 の生 産 な る もの は と りもな お さず 或 る二 重 の関係 と して 面 では 自然 的関 係 と して、他 面 で は社 会 的関 係 と して 一 現 れ る。 こ こで社 会 的 と いうの は、 ど の よ うな条 件 の も とで あれ 、 どの よ うな仕 方 にお いて で あれ 、 そ して どの よ う な 目的 の た めで あれ 、 と もか く幾 人 かの 諸個 人 の 協働 とい う意 味 で あ る」。 そ し て、特 定 の 生 産 様式 また は工 業 的 段 階 は 常 に特 定 の協 働 様 式 ま た は社 会 的 段 階

と結 び っ いて い るの で あ るか ら、 人 間 の歴 史 は常 に工 業 お よ び交 換 の歴 史 との っ なが りの なか で研 究 され な けれ ば な らない こ とで あ る(マ ル クス、 エ ンゲ ル

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保 健 ・医 療協 同組合 論 ノー トー その1 305

ス 、 「 ドイ ツ ・ イ デ オ ロ ギ ー 」、 マ ル ク ス ・エ ン ゲ ル ス 全 集3巻 、 大 月 書 店 、23

‑26ペ ー ジ) 。

生 き るた め に不 可 欠 な 「そ の他若 干 の こ と」 に、 医療 を 含 め る こ とは不 自然 で はあ る ま い。 なぜ な ら、 労 働 に お いて も生 殖 に お いて も、 それ らが 「生 の生 産 」 に成功 す るた め には 、「人 間 その もの の 自然 的身 体 的 性 質 」(同 前 、16ペ ー ジ)が 損 なわ れ て いな い ことを要件 とす るか らで あ る。 そ して保 健 ・医療 は、ま さ に人 間社 会 に お け る 「生 の生 産 」 の枢 要 と関 わ る社 会 的活 動 な の で あ る。 原 始 共 同体 以 来 の 、 保 健 ・医 療 と共 同 体 との 関 わ りにつ いて は 、 こ こで詳 論 す る 余 裕 が な いが(拙 著 、 『健康 問 題 の 過 去 ・現 在 ・未 来 一 保 健 活動 の歩 み』、 医 学 書 院、 印刷 中 、参 照 の こと)、 そ こで は医 療要 求 の特 徴 と深 く関 わ って、一 般 的 な物 財 や サ ー ビス 財 と比 べ て、 供 給 と財 政 の両 面 に お いて 、協 同的 原 理 が 働 きや す か った の も事 実 で あ る(こ の 点 の考 察 は、 さ しあ た り拙 著 『医療 の基 礎 理論 』、労 働 旬報 社 、1983年 お よび 『医療 と歴 史 』、 日本 生 活 協 同組 合 連 合会 医 療 部 会 、1990年 を 参 照 され た い)。

協 同的原 理 と関 わ る医 療要 求 の特 徴 の1例 と して、支 払 い能 力 と無 関係 に医療 要 求 が 発生 す る とい う こ とを と りあ げ よ う。 一般 の消 費 で は 自 らの支 払 い能 力 に応 じて消 費 す るの が 、す くな くと もその 社 会 が ま だ 「必 要 に応 じて 受 け取 り、

能力 に応 じて 働 く」 とい う原理 で動 くこ とが で きな い段 階 で は、当然 で あ る。 し か し、 医療 サ ー ビス は事 情 が 違 う。 具 体 的 に言 え ば病 気 の 有 無 、 軽 重 は支払 い 能 力 とは基 本 的 に無 関係 で あ る。 む しろ 「病 気 と貧 乏 の悪 循 環 」 と古 くか ら言 わ れ て きた よ うに、 逆 相 関 を示 す場 合 の 方 が 多 いの で あ る。 この た め に、 医 療 要求 を満 たす こ とは 、協 同 ・共 同 で行 わ れ ざ るを得 な い。 そ の ため の社 会 的 ・組 織 的形 態 が 、薬 師講 、定 礼 、共 済 、 社 会 保 険、 国 民 医療 事 業(ナ シ ョナ ル ・ヘ ル ス ・サ ー ビス)な どで あ る。

資 本 主義 か ら共 産 主義 の低 い段 階 へ 移 行 した社 会 の若 干 の 特徴 を示 した文 章 の 中で 、 マ ル クス は次 の よ うに述 べ て い る。

「社 会 的総 生 産 物 か らは、次 の ものが 控 除 され な け れ ば な らな い。

第 一 に、 消耗 され た生 産 手 段 を置 きか え るた め の補 填 分

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306 保 健 ・医療 協 同組 合 論 ノ ー トー そ の1

第 二 に、生 産 を 拡 張 す るた めの 追加 部 分 。

第三 に、事 故 や天 災 によ る障害 にそ なえ る予備 積立 また は保 険積 立 。一 だが、

各 個 人 に分 配 さ れ る まえ に、 この な か か らま た、 次 の ものが 控 除 され る。

第0に 、 直接 に生 産 に属 さな い一 般 管 理 費 。

この 部分 は最 初 か ら、 今 日の社 会 に く らべ れ ば きわ めて ひ ど く縮小 され 、 そ して 新 社会 が 発 展 す るに つ れ て ます ます 減 少 す る。

第 二 に、学 校 や衛 生 設備 等 々 の よ うな い ろん な 欲求 を共 同 で み た す た め に あ て る部 分。

この 部 分 は最 初 か ら、 今 日の社 会 に く らべ て ひ ど くふ え 、 そ して新 社 会 が 発 展 す る につ れて ます ま すふ え る。 」(ゴ ー タ綱 領 批 判 、全 集19巻 、18‑19

ペ ー ジ)。

保 健 ・医療 は第2の 部 分 に入 る とみ て 間違 い なか ろ う。

人類 社 会 の経 済 活動 に は、歴 史 的 に も、理 論 的 に も3っ の原 理 が 存在 す る。協 同的 原 理 、市 場 経 済 原理 、計 画 経 済 原 理 で あ る。 これ らは 、原 始 共 同体 に お い て協 同的原 理 が全 一 的 に作 用 した こ とを例 外 と して、比重 の 違 い は あ って も1っ の社 会 に共 存 して き た。 中世 封 建 社 会 を と って み て も、村 落 共 同 体 に お け る協 同的原 理 、 ま た都 市 ギ ル ドに お け る協 同的 原 理 とな らん で 、 明 らか に市 場 的 原 理 が存 在 した。 他 方 で村 落 共 同体 で もギ ル ドで も、 生産 は一 定 の計 画 に したが

って営 まれ た。 計 画 経 済 原 理 も存 在 して い た。

1980年 代 にわ れ われ が 経験 した、保 健 ・医療 に お け る市 場 の 失敗(こ の典 型 で あ るア メ リカ医 療 につ いて は、拙 著 、『岐 路 に立 っ 日本 とアメ リカの 医療』、新 日本 医学 出版 社 、1994年 を参 照)と 、 ソ連 型 の国家 が 中央 集 権 的 に指 令 す る国 家 の失 敗(こ の点 につ いて は東 ドイ ツの保 健 ・医療 にっ いて考 察 した拙著 、『ヨー ロ ッパ 医療 紀 行 』、 新 日本 医学 出 版 社 、1994年 お よび 『医療 労 働 と協 同 と患 者 の 権 利 』、 日本生 活 協 同組 合 連 合 会 医療 部会 、1993年 を参 照)は 、 あ らた めて 協 同 的原 理 へ の 関 心 を高 め た。 理 論 的 に は計 画 経 済 原 理 と協 同 的原 理 の間 に は 密接 な関係 が あ る はず で あ った。 そ れ は、 「計 画経 済原 理 とい うの は ひ とっ の経 済社 会 の構 成 員 が 、 市 場 経 済 原 理 の も とに お け るよ うに外 部 的必 然 性 に一 面 的

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