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知財経営教育の在り方に関する一考察

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(1)

1.本稿の目的

周知の通り,2002 年 2 月には小泉内閣の下 で「知的財産戦略会議」が設置され,同 7 月に は日本初の「知的財産戦略大綱」(以下,「知財 戦略大綱」と略称)が決定し発表され,同 12 月には「知的財産基本法」が公布された。

知財戦略大綱の第 2 章「基本的方向」の「4.

人的基盤の充実」では,日本の状況を踏まえた うえで,日本においても,米国におけるマネー ジメント・オブ・テクノロジー(MOT)のよ うな技術経営プロフェッショナルコースの創設 などを通じて,人材育成に努めなければならな い,と提起され,2004 年 9 月の時点では,東 京大学大学院,京都大学大学院,大阪大学大学 院,立教大学大学院等 60 余りの教育機関が,

既存の教育内容に,多様な技術経営関連プログ ラムを加えて開講するようになった1)。さらに その後,東京工業大学大学院など複数の「知財 専門職大学院」も設置された2)

知財戦略大綱が謳っている「知財立国」の実 現,とりわけ知財の「創造戦略,保護戦略,活 用戦略」の具現化には,これに応じた強力な知 財人材の育成が不可欠であるが,10 年間経っ た今日において,人的基盤となる戦略的な知財 人材の育成について,知財経営3)教育の在り 方を含む多面的な検討は有意義なものになろ う,と筆者は考える。

本稿はこのような背景認識の下で,立教大学 大学院ビジネスデザイン研究科(Rikkyo Busi- ness School, 略称:RBS)が 2004 年度から開講 し,筆者が担当してきた「知的財産論」を一つ の事例として扱い,まず 2 で同科目の「概要と 計画」,3 で筆者が持つ問題意識を踏まえて目指 した「基本的特徴」,4 で「文献と視点」,5 で「若 干の考察」,といった流れで述べることにし,少 しでもかような検討に資すれば幸いである4) 2.概要と計画

RBS の履修要項では,「知的財産論」の講義 概要について次のように明記されている。

すなわち,「特許,商標,著作,営業秘密な どといった知的財産は巨大な事業リスクか,そ れとも強い競争の武器か,知的財産諸法の勉 強ではなく,『経営活動』の中で,競争的な優 位性の構築,維持,及び強化に必要な知財経営

『論』を考える。」

「本講義では,『知財ありき』のような発想を 批判的に捉え,知的経済の進展,インターネッ トの普及,及び経済のグローバル化といった時 代的な背景と,いわゆる『技術経営(MOT)』

との関連性を念頭に置きながら,経営コンサル ティング事例なども素材に加えて,経営戦略5)

における知財の出番や活用法などにかかる基本 的な知識,戦略的な視点及び実践的な考え方の 一角を実学的に習得する。」

知財経営教育の在り方に関する一考察

― RBS の開講科目「知的財産論」を素材に―

張   輝

An essay in the intellectual property management education:

Referring to the intellectual properties of RBS

CHOH, Ki

(2)

「具体的には講義形式ではなく,基本的な紹 介,説明及び視点の提示以外,主に質疑応答や ディスカッションを通じて共に考えていく。と 同時に,受講者に1回の調査発表をしてもらう。

なお,多数的な要望を踏まえて講義内容等を調 整する予定」である。

また,同履修要項では,同科目の講義計画に ついて,表 1 のように明記されている。

3.基本的特徴

前項で述べた講義の概要や計画は次のような 特徴を表すように目指して設定した内容であ る。すなわち,第一に,学習の対象を広く設定 する。第二に,知財の経営論をベースに置く。

第三に,知財のグローバル化に留意する。以下,

筆者が持つ問題意識や現状認識も踏まえて,こ れらの基本的特徴について順次述べる。

3.1 学習の対象を広く設定する

周知のように,知財といえば,特許権,意匠 権,商標権,著作権,営業秘密,育成者権等,

実に多岐にわたる無形資産である。「知的財産 論」「知的財産特講」「知的財産要論」「知的財 産権論」などを開講している大学または大学院 は,特許権か商標権,または著作権など,その どちらかに絞って開講しているケースがほとん どである。これに対し,RBS の「知的財産論」

では,2004 年度から一貫して特許権,商標権,

著作権,営業秘密をメインにしながら,意匠権,

回路配置利用権,育成者権などにも触れて,学 習の対象を広く設定した授業を続けている。こ れは次のように考えたからである。

まず,RBS の教育理念は「ゼネラリストの スペシャリスト」を養成することだからであ る。多くのビジネススクールがスペシャリスト の養成を目標に置いているであろうことに対し て,RBS は頑なに「ゼネラリストのスペシャ リスト」を目指すと実行し続けてきたビジネ ススクールである6)。学問分野も実務分野もま すます細分化され,複合型人材にあたる分野横 断的な人材こそが求められる時代の中で,RBS の教育理念に共感し,「知的財産論」において 表 1 RBS における「知的財産論」の講義計画

No テーマ 内容の提要

1 プロローグ

(1)米国発の「プロパテント政策」の背景や狙い

(2)知的財産を論じる際のいくつかの実学的な視点

(3)わが国における知財ビジネスの現状と課題

2 特許権とビジネス

(1)日本企業は「日米特許戦争」で負けたのか?

(2)最も「強い」知財ともみられる特許権の特質

(3)ビジネスの観点から「中村裁判」を考える

(4)「死の谷」を超える特許/特許ライセンス戦略

3 商標権とビジネス

(1)外食産業にまで及ぶ商標トラブルの底流

(2)「半永久」的な商標権の特質と分類の初見直し

(3)地域ブランドの争奪と世界ブランドの育成

(4)ブランドの形成における四つのステップ

4 著作権とビジネス

(1)ファイル交換ソフト Winny に逆転無罪か

(2)「権利の束」と称される著作権の特質

(3)人形にも著作権が存在するか? 電子著作物は?

(4)コンテンツビジネスにおける著作権の要

5 営業秘密とビジネス

(1)コカコーラ社のトップシークレット

(2)経産省「営業秘密管理指針」の狙いと関連動向

(3)重要性が高まる営業秘密の特質

(4)営業秘密に関するビジネス実務上の留意点 6 エピローグ

(1)公取委はなぜ米クアルコムに対し排除命令か?

(2)知財戦略と標準化戦略との関係は?

(3)ビジネスモデルを支える知的財産の統合的活用 出所:立教大学大学院ビジネスデザイン研究科 2012 年度履修要項。

(3)

も,特許権か著作権といった特定の知財につい て深く教育するという知財スペシャリストの養 成ではなく,ビジネスの現場で求められる知財 の基本を広く知って活用する考え方を持つビジ ネス・クリエーターの育成である。

次に,筆者自身の実務経験を通じてもこのよ うな必要性を実感しているからである。日本企 業は知財に関する社内組織でいえば,特許チー ム → 特許室 → 知財室 → 知財本部 → 知財事 業部というように変わってきてはいるが,筆者 が携わる経営コンサルティングの中で接してい る知財案件の顧客は,経営的権限を有しない企 業の知財部キーマンというより,企業の事業部 のキーマンが比較的多い7)。事業部のキーマン は新規事業等を構想しようとする際に,関わっ てくる特許権問題,商標権問題,著作権問題,

営業秘密問題等について,それぞれの専門家に 聞くまでもなく,自らタイムリーに適切な認識 や一定の判断を行っていかなければならない。

そして,昨今,経営資源としての知的財産を 複合的かつ有機的に活用する「知財ミックス」8)

が求められるようになった。あのアップルとサ ムスンとの間で争われている,スマートフォン に関する知財訴訟が話題となっているが,その 中身は,特許権,実用新案権,意匠権(design  patent)および商標権と,多岐にわたっている。

この事件に象徴されるように,近年の商品開発 においては,技術的仕様,操作性,外観,イ メージ等により価値ある顧客経験の提供が追求 され,知財マネジメントにおいても多様な態様 の要素を考慮した取り組みが必要となってきて いる9)。学習の対象を広く設定することは重要 な視角となろう。

3.2 知財の経営論をベースに置く

今日でも,知財に関する講義,書籍,セミ ナー,特集,論文等の中で,「知財戦略」と題 するものは少なくない。しかし,内容のポイン トを確認すると,知財戦略と言いながら実質的 には知財法務や特許法務,または出願手続等を

展開しているものが多い。知財戦略という用語 は,国,業界,企業といった異なるレベルでは 実質的にどのような意味合いや表現形態を持ち うるか。国レベルの知財戦略は例えば「法律」

や「政策」で表し,業界レベルの知財戦略は例 えば「指針」や「ガイド」で具現化され,企業 レベルや事業レベルの知財戦略は「経営」に置 いた知財論を展開するものであると考える10) でなければ,回収の得られない知財開発論に 偏ってしまい,経営資源の一つとなる知財及び 知財経営の本質が見えにくくなる,と指摘した い。以下,若干論述する。

まず,RBS はビジネスの構想力と戦略的思 考を育成・開発する MBA コースであり,意欲 あるビジネスパーソンを対象にしたビジネス スクール型大学院である。事業構想の実現に必 要な専門知識を総合的・体系的に修得するため の豊富な選択科目が多数提供され,ビジネスの フレームワークを理解し,創造的ビジネスプロ ジェクトを構想する戦略的思考能力と豊かな学 識を備えた人材の育成を目指している。このよ うな教育目的及びカリキュラムの中にある「知 的財産論」であるため,知財の経営論に視座を 置いて講義するのは自然であろう。

次に,知財の経営論をベースに置くのは日本 における知財マネジメントをめぐる重要な課題 の一つとなっているからである。知財戦略とは 知財の戦略的な①創出,②保護,③活用,④人 材育成という四つの柱から構成されているの に,2012 年 12 月現在,様々な知財戦略セミナー や年に一度の某大型シンポジウムでも,法的側 面を中心に展開された「法律論」が多く,「死 の谷」を越えるための創出論や競争力の増強に 繋がる「活用論」という「知財経営」論は散発 的にしか見られない。前述した「講義の概要」

の中で,「知財ありき」のような発想を批判的 に捉える,と明記したのもそこに一因があり,

これは「事業フォーカス」11)や経営を通じて知 財の真価が現れて来なければ,知財戦略の持続 化が可能かと疑問視されるからである。

(4)

なお,日本では,「少数の例外を除き,MBA を基盤とする MOT 教育(略称 MBA モデル)

に,多くを期待することはできないであろう」

という指摘は存在する12)。これは,「経営大学 院というものの性質上,教育には『人的ネット ワーク効果』が期待される,ということであ る」との点を少々強調し過ぎている認識ではな いか,と筆者はそのような意識を持つ。法科大 学院モデルはともかくとして,理工系大学院モ デルが最もよい形態なのかについては,多角的 に議論する余地があろう13)。また,MBA を基 盤とする MOT 教育,さらにいうと知財経営教 育というのも有用で重要なツールの一つになる と筆者は考える。

3.3 知財のグローバル化に留意する

知財を履修したことのある方には言うまでも ないが,特許等の知財権は,国毎に発生し,そ の国でしか効力を有しない。例えば日本の知財 権は,海外では効力を有しない。逆に,海外の 知財権は,日本国内では効力を有しない。した がって,日本企業の事業が海外との関わりを持 たず国内だけで完結している時代には,日本国

内だけで特許等の知財権を考慮していれば一般 的には十分と考えられる。海外で生産された発 明品も日本に輸入された段階で日本の知財権の 効力範囲内に入るからである。

ところで,前述したように,知財は経営資源 の一つであり,経済のグローバル化が進む中,

知財のグローバル化も進化している。下図で示 した世界五大特許庁間の特許出願状況は,相互 に激しく対流している一端が窺える14)

しかし,これは単なる特許の国際化になるこ とを意味するものだけではなく,特許をある国 に出願するということは,その国に何らかの

「事業」を考える可能性が高いであろうという 経験知等から,レベルや形態は別として,商標 権や著作権また営業秘密の諸問題も自然に付い てくるものになる,と考えられる。

このような背景認識を踏まえて,講義ではい ろいろな国際的な紛争事例を紹介し,経営戦略 との関係やビジネスの観点から議論する。例え ば,特許権に関しては,「日米」特許戦争によく 登場する,ミノルタの自動焦点カメラの特許侵 害訴訟の件を,商標権に関しては,「日中」間の 偽物問題や不法模倣,また商標の先行登録の件

出所:特許庁(2009)『特許行政年次報告書』。

図 1 世界五大特許庁間の特許出願状況 396,291

456,154

26,026 32,870

24,611 18,100 666

6,347

140,763

245,161 172,469

78,794

35,603 64,000

22,889

12,103 24,420

8,467

296

3,903 22,887 11,084

22,976

4,934 1,146

(5)

を,著作権に関しては,「日タイ」で逆判決とな り,著作権ビジネスの落とし穴と指摘されるウル トラマンの海外利用の件を,営業秘密に関して は,「日韓」の間に起きたことで,新日鉄のコア 技術が韓国に流失してしまった係争中の件を挙 げる。多角的なディスカッションを通じて,知財 のグローバル化につれて持たされている法的問 題ではなく,事業課題を感じさせるのである15)

現在,多くの企業で展開されているグローバ ルビジネスでは,それぞれの事業展開に引きず られて,法務や税務も否応なくグローバル化の 大きな波に巻き込まれている。その中で,知財 の役割が見直され,その利用価値に注目が集 まってきている。また,知的創造サイクルに関わ る業務は,社内の事業全体に広がっており,も はや専門の部署のみで対応できる業務ではなく なってきている。このような業務に携わるには,

知的財産の取得から活用に至るまでの多様かつ 有効な知識が必要となり,知財のグローバル化 を直視できるビジネス・クリエーターは企業の 国際的競争力の増強に貢献すると期待されよう。

4.文献と視点

RBS(厳密にはその「修士課程」)における「知 的財産論」は,研究者を養成することを念頭に 学問的な啓発を行おうというより16),ビジネス・

クリエーターになることを目指し,MBA を取 る社会人院生の事業構想力の向上に直結させよ うとするものである。このため,知財の経営論 をベースにしながら,技術や法務にも関連付け る筆者従来の「法律×経営×技術」の考え方17)

を念頭に進む。時間的には全部で 7 回× 3 時間

= 21 時間の中で,講義,ディスカッション,履 修者による調査発表といったような構成であり,

履修後は期限内にレポートの提出となっている。

本科目のシラバスには参考文献を例示してい るが,実際は毎回,前述した基本的な特徴を考 えて,主題に相応しい代表的な文献と最新のト ピックを配布するようにしている18)。また文 献を選択する際は,本科目に限らないが,研究

者と実務者の両方による論考等を選ぶようにし ている。さらに,参考文献は紙面の資料だけで はなく,動画なども対象としている。経営コン サルティングの実例も紹介するが,これは原則 として非配布としている。以下では,プロロー グとエピローグを除いた毎回の事例部分や視点 について例示的に述べる。

「特許権とビジネス」では,真冬にアイスク リームという逆転の発想で開発されたロッテの 人気商品「雪見だいふく」を取り上げ,同商品 に関する特許の取得を通じて,出願プロセスを 知ると同時に,商品化や差別化戦略による後発 メーカーの市場参入,成功した裏に「特許」と いう公権力のお墨付きが無限の圧力になってラ イバルのメーカーを駆逐していたことを解説す る。また,一時日本中の知財意識を大いに向上 させた「中村裁判」を取り上げるが,当科目で は,青色発光ダイオード(LED)の開発者で ある中村修二氏が日亜化学工業在籍時に発明し た特許の「相当の対価」についてではなく,技 術者の観点からと経営者の観点からの受け止め 方の比較についてディスカッションを展開さ せる。あと,フェースブックが狙う「次」と は,フェースブック上場への両面作戦,すなわ ちリスク回避のための,特許相次ぎ取得とベン チャー買収をどう考えるかについても,事業戦 略の観点から議論させる。

「商標権とビジネス」では,参入障壁が低く 競争の激しい外食業界で,模倣を巡り,後を絶 たないトラブル連発の事例を取り上げ,特許庁 は企業のロゴマークなどを保護する商標法を抜 本改正する検討をはじめたことを提起する。経 済産業省は,商標として保護する対象は「文字」

「記号」「図形」だけではなく,CM で流れる企 業名の「音程」やロゴの「動き」,製品に付い ているマークの「位置」などにも広げる方針で ある19)。また,日本ではしばしば伝えられる 日中間の偽物問題や多様な商標紛争の事例を通 じて,その背景や可能性と限界について議論さ せる。最後に,地域商標制度の導入を背景に,

(6)

地域ブランドの形成や振興も対象に加え,ブラ ンド構築や拡張の基本的なステップを説明する 一方,具体的な「進め方」の前にまずは企業の

「あり方」の検討が重要だと強調する。

「著作権とビジネス」では,特許権や商標権 に比べて,様々なサブ権利が存在しているこ とを踏まえたうえで,とくにコンテンツビジ ネスとの関連が深いと思われるサブ権利(例 えば,複製権やネット送信権など)に特化し,

YouTube 等の動画サイトに流れている著作権 利用料は誰が払うべきか,しかし実際は誰が 払っているのか,という問題提起を経て,「く まのぷーちゃん」著作権,ディズニー勝訴,人 形の著作権の有無という伝統的な事例から,近 年の歌声合成ソフトが生んだ歌姫「初音ミク」

にはどのような問題が生じたのか,なぜアマゾ ンが日本の電子書籍市場に参入してきたのか,

ニコニコの動画サイトはなぜ成功しているの か,音楽クラウド「暗雲」の行方はどうなるか など,コンテンツビジネスに密接に関係し,新 たなビジネスモデルの構想にも資するポイント を発見するように議論を起こさせる。

「営業秘密とビジネス」では,コカコーラ社 と営業秘密のトピックから始まり,経済産業省 発の「営業秘密管理指針」を参考資料にしなが ら,米国では「know-how」と言い,中国では

「企業秘密」と言い,日本では「営業秘密」と 言う知財はなぜいまますます重要になってきて いるのか,営業秘密として法的保護を得られる ためにはどのような要件が不可欠なのか,関連 要件を満たすためには,日常業務の中でどのよ うな制度整備やアクションが必要か,戦略的な 新技術の開発が成功した際,特許をとるべき か,営業秘密として管理しておくべきか,また は一部を特許化し,一部をノウハウにするべき か,というオープン戦略とクローズ戦略を提起 し,日本の技術流出を食い止めるにはどうした らよいかなどについて,従来から多くの事例に 触れるとともに,前述した新日鉄のコア技術の 流失(韓国の鉄鋼最大手ポスコと新日鉄の技術

部門にいた元社員)の事例をメインに紹介し,

ディスカッションをさせる。

前述したほか,事業化構想やビジネスの観点 から,知財の活用と独禁法との関係や,知財と 標準化戦略との関係,また知財の多様な評価な ど,本来なら「知的財産論」の中で論じるべき であるが,筆者が担当する他の科目との関係で 触れる程度にし,または時間的な関係で割愛し たことについて,重要な説明を加える。

履修者は一度調査発表をするが,近年発表さ れたテーマを例示すると,「サトウの切り餅製 造禁止,8 億円賠償命令の解読」「臨床研究と 臨床試験の特許を考える」「医薬業界の特許か ら見えたもの」「リチウムイオン電池特許動向 を読む」「マクドナルド社の知的財産」「地域ブ ランドの現状と課題」「ジュエリー業界におけ る知的財産権について(意匠権における事例を もとに)」「商標とビジネス〜カード業界の事例 から」「著作権の拡大と経済,とくにレコード 業界とダウンロード罰則化に関する考察」「ソ フトウェア著作権とビジネス」「知財をどう経 営に生かしていくか」「知財とビジネス〜グ ローバル化に向けて企業や個人が備えるべきこ と〜」など多彩にある。最初は戸惑う履修者が 自信を持って発表したことには,筆者の講義を 補完する点もあり,考えさせられる時もある。

以上のように,講義で多くの事例やその年そ の年の最新トピックを取り入れるのは,少しで も履修者に深い関心を持ってもらい,面白く感 じてもらい,そして本質的なところに入っても らうようにするためである。毎回,履修者との 対話やディスカッション,調査発表を巡る積極 的な質疑応答など,社会人院生との「共振」は 有益である。

5.若干の考察

本稿は,10 年前に策定し公表された日本初 の知財戦略大綱,とりわけ事業にも明るい戦略 的な知財人材の養成を巡る議論の一つとして,

RBS が 2004 年度から開講し,筆者が担当して

(7)

きた「知的財産論」を一つの事例として扱い,

その「概要と計画」「基本的特徴」「文献と視点」

といった順で,筆者が従来から持つ問題意識や これに対する一部私見を交えて述べてきた。以 下では,いままで述べてきたことを踏まえなが ら,知財経営教育の在り方に関する若干の考察 を行い,本稿を結ぶ。

5.1 法律・経営・技術の 3 者間関係

日本が掲げる「知財立国」という戦略目標の 実現には,事業構想や企業経営の基本を理解 し,戦略的思考ができる知財人材が不可欠だと いう認識が広まる中で,どのようにしてかよう な知財人材を育成していくべきかについては,

いまこそ多様な観点から,とりわけいままで活 発に展開されてこなかった知財経営教育の議論 は,企業レベルにおいて深化していくのが重要 であろうと再度強調しておきたい。

日本は従来から知財の創出や保護に取り組ん でおり,特許を中心とする知財の質や量では日 本は世界の知財大国になっていることはいうま でもない。しかし,「技術力で勝る日本が,な ぜ事業で負けるのか」といえば,知財を生かす

経営的なアプローチによる思考の不足が一要因 であると筆者は考える。法律的アプローチはし ばしば「何をしてはいけないか」という規範的 思考が強いことから,時に事業構想の阻害要因 になりうるし,技術的アプローチは「技術力が あれば事業はうまくいく」というような誤解や 技術者の「タコツボ化」20)から,機能やデザイ ンにかかる顧客ニーズを無視してしまうリスク 要因ともなりうる。事業を構想する際は,世の 中に存在するニーズの把握や創出を前提にし,

経営的アプローチの下で自由で創発的に考えて いかなければならない。

前述したように,RBS で講義を行う際は,事 業構想力に資するゼネラリストの養成の一環と して,「法律×経営×技術」という考え方の下 で,知財の経営論をベースに置きながら,知財 の法律的また技術的観点からの説明や議論にも 若干及ぶようにしている。授業における法律と 技術の占める割合は毎年履修者のバックグラン ドによって変化するが,法律・経営・技術の 3 者間の横断的関係に関する基本的な考え方や,

学習し議論する意味や狙いに変更する点はほと んどない。表 2 はその考え方や議論の視点につ 表 2 RBS「知的財産論」で考える横断的関係

No テーマ 法 律 経 営 技 術 事 例

1 プロローグ 知財戦略大綱

知財共通の特質 競争戦略

2 特許権とビジネス

各知財の法的定義や 取得に必要な法的プ ロセス,それぞれの 法的特質,各知財の ビジネスとの接点,

課題。

研究開発戦略 ライセンス戦略 選択と集中

技術の進化によって 各知財に,また知財 の活用や事業の構想 に,どのような影響 を与えているのか,

課題。

味の素の調味料 雪見だいふく ミノルタカメラ 中村裁判

3 商標権とビジネス ブランド戦略

マーケティング戦略 営業 PR

スターバックス 吉野家 冬物語地域ブランド

4 著作権とビジネス コンテンツビジネス ビジネスモデル CRM

ウルトラマン ウィニー 電子書籍ニコニコ動画

5 営業秘密とビジネス クローズ戦略

複合戦略優位性維持

コカコーラ IBM特別接着剤 新日本製鉄

6 エピローグ 知財の統合的活用

ビジネスモデル  イノベーション 

出所:筆者(2012)。

(8)

いて例示する。

いうまでもないが,特許権,商標権,著作権,

営業秘密などといった知財はすべて法律によっ て生まれた期限付きの権利であると同時に,それ ぞれの対象客体,保護範囲,利用形態等に異な る点も少なくない。知財の経営論にベースを置い て考えるなら,知財の法的定義や取得に必要な 法的プロセス,それぞれの法的特質,各知財の ビジネスとの接点,課題といった法的基礎につい ては説明するのが必要であろう。また,知財には 技術に関わるものが非常に多く,技術の進化に よって,知財の権利拡大をもたらすと同時に,知 財ビジネスの形態や事業化構想における知財の 位置づけの変化も生まれたことが多いとのこと から,技術動向にも触れる必要があると考える。

しかし,全 7 回,毎回 3 時間という限られた 時間の中で,知財全般を学習の対象にするとい う広範な構成を設定した以上,特許権,商標権,

著作権,営業秘密といったそれぞれの知財につ いて深く法的に考究することには無理がある。

また,技術の動向に言及する際は技術の先端性 がどのようなものかという議論より,事業化 構想において競争的優位性の構築や形成に,技 術はどのようにしてその役割を果たすか,技術 が知財自身または知財ビジネスの形態にどのよ うな影響を与えたかについて考えさせる。毎年,

履修者のバックグランドにもよるが,どこまで広 げるか,どこまで深く立入するかについては,1 回目の授業時に実施する履修者アンケートの結 果を踏まえて検討し,時に調整も行う21)

このように,知財の経営論をベースに置きな がら,知財の法律的また技術的観点からの説明 や議論にも若干及ぶように横断的に進めるの は,「法律×経営×技術」という考え方の具現 化に必要な探索である。知財経営の理念に立脚 しつつ事業戦略の視点を持ち,ビジネスの競争 力を維持し強化するためには,「技術,ビジネ ス,知財をリンクさせる能力」22)が身に付くよ うに発想し実行するのも必要となるであろう。

5.2 「知財ミックス」に着目する実学的研究 今日,知財は経済のグローバル化とともに企 業や経済社会の命運を左右するほど支配的な位 置を占めるに至っており,近年ではこれについ て批判的観点も存在するものの23),知財とい う権利自体の強化や拡大化によって企業が事業 を行ううえで競争的な優位性を形成する要素の 一つとなっている。また,伝統的に知財と言え ば,技術経営や知財経営という分野が連想され る場合が少なくないが,いまは技術との関係の 有無に関係なく,知財というのは現代的な企業 経営を行ううえで必要不可欠なリソースの一つ となったのである。

筆者は RBS で開講された「知的財産論」の 当初から,また携わる関連の実務や講演におい ても,未熟だが一貫して知財の「統合的活用」

が重要だと述べ続けてきた。このこともあっ て,最近,知財の本質や現状を踏まえて,特許 権だけではなく,特許以外の知財も含めた適切 な「知財ミックス」に基づいた総合的な知財マ ネジメントが必要だ,というように指摘する論 説に接して,共感する点が多い。その一段を次 に転記しよう。

すなわち,「『経営に資する知財活動』,『3 位 一体の知財戦略』といったことが言われるよう になって久しい。また,企業においても特許部 から知財本部へと名称の変更や組織の強化が図 られるようになった。現在も知財戦略に関する 論文や書籍も目にすることが多い。しかし,こ ういった論文などにおいて,知財戦略と言いな がらその実は特許に偏ったものが多く,また知 財に携わる多くのマネージャーの意識としても,

知財戦略=特許戦略というのが実情ではなかろ うか。」また,「各知財法制度の改正に際しても,

隣接する法域との法律的な整合性の観点からの 議論がなされることはあっても,トータルな知 財ミックスという観点からの議論はあまりなさ れてこなかった。」という問題提起である24)

もともと,特許権や著作権などといった知財 というのは法律によって生まれた素晴らしいも

(9)

のではあるが,あくまでも経営資源(場合に よっては重要になる経営資源)の一つにすぎな い。企業は,経営方針や事業戦略の下で,知財 とその他の経営資源との相乗効果を生成させて 企業競争力を高めていくものである。このよう な認識から,知財を論述する際に必要とされる 基本的な知識は知財に限らず,技術,人事,財 務,マーケティングなど経営全般にわたる内容 であり25),経営戦略や発展段階によっては知 財の「統合的活用」言い換えれば「知財ミック ス」を必要とするものである。

とくに,これまでの技術開発競争下において は,解決すべき課題が最初にあり,それに対し て解決方法や手段を模索し,優れた提案をした ものが特許権を獲得できるという特許制度の流 れに沿った行動をとっていればよかった。しか し,オープン・イノベーションがますます重要 視される環境下において,解決手段そのものの 豊富化が先になされ,しかも流通するようにな ると,課題の「解決」からむしろ課題の「創造」

へと競争軸が移り,「解決手段」競争から「課 題創造」競争へと変わってきた26)。この場合,

競争的優位性を左右する要素は特許権以外の知 財を含むことが多くなるのである。

しかし,事業構想,ひいては企業経営におい て,どの段階か局面のどの時点で,どの知財の 何の特性を必要とし,どのように知財の特質を 活かすかについて,実学的に研究を重ねていか なければならない。経営戦略論という視角から いうと,例えば,企業内部の経営資源に着目す る「リソースベース論」と外部環境の変化に着 目する「ポジショニング論」に分けて論じられ るのが解りやすいが,戦略的な権利化を考える 際は社外の競合者との関係の中で行っていくこ とから,ポジショニング論の観点と整合する が,権利化された知財の活用は重要な経営資源 の一つとして用いることになることから,リ ソースベース論と整合する。このような認識か ら,事業構想や事業戦略に基づいて,いかに

「知財ミックス」を考えるかが重要となる。

また,知財を持つだけでは多くの場合,「宝 の持ち腐れ」になってしまい,その「真価」が 見えてこないだけではなく,知財開発に関わっ た費用の回収ができず,その維持にかかるコス トも一定の期間において増えていくだけのこと になってしまう。知財の戦略的な創出,保護,

活用が実現されてはじめて企業の競争力の増強 に直結するものになる。このためには,知財の 法的特質を理解し,新商品開発や事業化構想,

また企業の経営をする際にそれをフル活用で き,「知財ミックス」を研究して知財の真価が 可視化できるよう,「課題の創造」に取り組む 事業創造型の人材育成が不可欠である。

知財経営教育は,今後「知財ミックス」がま すます求められると予想される知財経営の方向 性も踏まえ,問題を直視することによって企業 の事業部門がどのように活動を行っているかに 集中すること27)も重要であり,そして,法的 アプローチまたは技術的アプローチから経営的 アプローチによる主導へと変化させ,融合空間 における概念ブレンド28)を誘発し,知財の経 営論をベースに置く時代のビジネス・クリエー ターの育成には不可欠となろう29)

1) 経済産業省大学連携推進課(2004),15 ページ,

同(2005),15 〜 16 ページ。

2) 実際,知財教育は社会人向けの専門家育成だけ ではなく,小学校,中学校,工業高校,商業高 校,国立高専,大学において広く行われるように なった。井口泰孝・世良清・松岡守・松村浩幸・

篭原裕明・本江哲行・谷口牧子・木村友久・岡 田広司・片桐昌直(2011),1 〜 11 ページ,世良 清(2006)「知的創造力養成に向けて」等『Right  Now! ライトナウ』No.12, 48 〜 51 ページ。

3) 近年,新聞や雑誌などにおいて「知財経営」とい う用語はしばしば登場し,時には「技術経営」と いう用語と置き換えられたり類似用語として用い られたりされるが,必ずしも明確に定義された用 語であるとは言えない。本稿では,「知財を中心 とした知の経営」(岡田依里(2003),147 ページ)

や,「知財を創造し,それを活用することにより 事業を強くする経営」(丸島儀一(2011),18 ペー ジ)に共通する考え方を持つ。

(10)

4) 知財経営という観点から知的財産を論考する際,

「イノベーション」や「ビジネスモデル」など との関係も深いことはいうまでもない。筆者は RBS で,「知的財産論」のほか,「イノベーショ ン・マネジメント」「ビジネスモデル入門」「産 業クラスター論」も担当していることから,イ ノベーションやビジネスモデルなどとの関連に 関しては触れる程度にし,関連科目で詳述する ことにしている。

5) 経営戦略という用語は business strategy, com- petitive strategy, corporate strategy, manage- ment strategy と多様に用いられるように,様々 な意味や使われ方を持つ,バズワードの一つで あるとも称されるが,経営戦略を論考する文献 は多彩に存在する。本稿では例示として,浅川 和宏(2011)『グローバル経営入門』日本経済新 聞(1 版 6 刷),23 〜 48 ページを挙げる。氏は 経営戦略論の流れを大きく 3 つに整理してみた。

1 つ目は戦略の「中身」を扱うストラテジー・

コンテントと言われる流れ,2 つ目は戦略の立 案ないし実行に関する「過程」を主に扱うスト ラテジー・プロセスと言われる流れ,3 つ目は 企業固有の経営資源(リソース)を競争優位の 源泉と捉える「リソース・ベースト・ビュー」

と言われる流れである。このような経営戦略論 における知財論の深耕は別稿に譲りたい。

6) 亀川雅人「変化に敏感なゼネラリストこそが,

時代のビジネスリーダーになれる」 自由の学府か らのメッセージ④,廣江彰「委員長挨拶」(立教 大学大学院ビジネスデザイン研究科公式サイト)

http://www.rikkyo.ac.jp/sindaigakuin/bizsite/

about/chairperson.html.

7) 日本企業における知財部門の役割については多 様な議論が存在する。例えば,「経営知財」とい う概念を提起し戦略部門としての知財部門と位 置付けて論じる,山崎攻(2010),721 ページも あれば,「時として知財部門における業務は不要 である」を含めて指摘する,知的財産マネジメ ント第 1 委員会第 2 小委員会(2012),1137 〜 1152 ページもある。

8) 筆者は従来から「知財の統合的活用」という表 現で指摘してきたが,最近,「知財ミックス」と いう概念を提起され,知財マネジメントの高度 化に着目した研究も見られる(一例として,知 的財産マネジメント第 2 委員会第 1 小委員会

(2012)763 〜 765 ページ)。

9) 東和知的財産研究所「第 4 回 東和知的財産研 究所懸賞論文 募集」案内,2012 年 8 月。

10) 関連する文献として,阿部博之(2012),53 ペー ジ,張輝(2013)を参照されたい。

11) Burgelman,  R. A.,  C. M.  Christensen,  S. C. 

Wheelwright, (2004) 「ハイテク経営の真髄」,

140 〜 152 ページ。傑出したハイテク企業は,6 つの面の大半において高い水準を示す傾向にあ る。すなわち,①事業フォーカス,②適応力,

③組織の結合力,④起業の文化,⑤高潔さの意 識,⑥現場主義の経営陣,である。

12) 玉井克哉(2005),29 ページ。

13) MOT 教育にとって,いわゆる「MBA モデル」

「法科大学院モデル」「理工系大学院モデル」の どれが最もよい形態になりうるかに関しては,

どのような前提で比較的考察を行うべきなのか,

どのような評価方法が適切と考えられるのか,

どの射程範囲においてその有効性が認められる のかなど,多角的に議論するのも有益と考える。

14) なお,近年については WIPO(2012)を参照されたい。

15) 小川紘一(2010),355 ページも挙げることができる。

16) 知財経営(というより「知財マネジメント」関 連)について本質的に問う論考の例示として,

岡田依里(2004),20 〜 25 ページ,Manning, C. D.,  P. Raghavan & H. Schuetze (2008),pp.369-384,

松居祐一(2008),坂田一郎「グリーン・イノベー ション下の特許制度」日本経済新聞「経済教室」

2009 年 6 月 24 日,菊池純一(2012),Okada, E. 

(2012),知的財産情報検索委員会第 1 小委員会

(2012),1155 〜 1166 ページ,知的財産情報検索 委員会第 2 小委員会(2012),1582 〜 1597 ペー ジなどがある。

17) こ れ は 筆 者 が 10 年 前 に 示 し た 考 え 方( 張 輝

(2003),8 ページ)であるが,法律または法務的 側面も加えることを提唱すると同時に,加える際 には「+」ではなく「×」というように表現した。

これは法律や経営や技術といった異なる側面を 盛り合わせしておけばよいというようなことでは なく,異なる側面の内在的な関連性に着目してよ り大きな効果を考えようという意図である。しか しその後,実務ではある程度実践し続けてはい るが,学術的な検討はそれほど深めていない。

18) 岡田依里(2003),張輝(2003)。

19) 日本経済新聞,2011 年 12 月 13 日夕刊 1 面。

20) 伊丹敬之(2009),246 〜 249 ページ。同氏は,

「技術者のタコツボ化とは,自身の専門領域のタ コツボに閉じこもりきりになる,という意味で ある」と説明し,「そのために,周囲との協力体 制が作れず,組織から心が離れてしまう」こと や,「…自分の仕事のやり方や考え方が正しいと 信じ,自分が企業活動の中心であるとさえ勘違 いしているケースも多い。」と指摘する。

21) 知財教育に関しては,従来から知財部員を中心 にした知財専門人材の育成を巡る議論が多かっ

(11)

たが,最近,教育者は知財部門,非教育者は知 財部門以外の社員等と設定し,社内知財教育の 在り方を検討する動きがある(知的財産マネジ メント第 2 委員会第 3 小委員会(2012),977 〜 987 ページ)。非教育者を知財部門以外の社員等 に設定することには大きな意味を持つと思われ るが,経営論をベースに置かないような社内知 財教育が日本企業の競争力にどこまで繋がるか は依然として課題であろう。

22) 大嶋洋一(2012),1686 〜 1688 ページ。

23) 一例として,猪木武徳「歴史と思想に学ぶ 特 許は技術革新を促すか」日本経済新聞「経済教 室」2012 年 10 月 1 日。

24) 知的財産マネジメント第 2 委員会第 1 小委員会

(2012),763 〜 765 ページ。なお,一部共通す る指摘として,小野曜(2012),44 〜 53 ページ。

もちろん,あのような指摘は少しも法的議論自 体の重要性を否定するものではない。

25) 塚越雅信(2012),54 ページ。

26) 知的財産マネジメント第 2 委員会第 1 小委員会

(2012),763 〜 765 ページ。なお,オープン・イ ノベーションについて,「その意義の強調の陰で その障害が過小評価される傾向」という指摘(伊 丹(2009)参照)に留意する必要もあろう。

27) Coase, R. H. (1988),宮沢健一ほか訳(1992),82

〜 83 ページ。これは氏の産業組織論について

「問題への直接的なアプローチが求められる」と 述べられている見解ではあるが,本稿の趣旨か ら,知財経営論に置き換えてもよいのではない かと筆者は考える。

28) Fauconnier, G. and M. Turner, (2002), pp.45-50.,

張輝(2012),p.36。

29) 筆者は,大学では工学部を,大学院では法学研 究科を,勤務先では社内 MBA コースを経て,

戦略系経営コンサルタント等を務める。そこで,

知財案件も含む多様な実務に携わる経験を若干 有することから,本テーマを論ずるわずかばか りの資格があるかもしれない。しかし,多岐に わたる技術の日進月歩な進化,ますますグロー バルな展開に巻き込まれる企業の多角的経営,

実社会の急速な変化に追いつかない法律の現実 を踏まえて考える場合,微々たる筆者の限界は いかに大きなものかと実感する毎日である。本 稿を通じて,関係者の方々による共同研究がさ らに強化されればと願うばかりである。

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参照

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