85 本研究の目的は,中国家電市場において売上高1位で,洗濯機,エアコン,冷蔵庫のトップ シェアを占めている青島海爾股份有限公司(以下,ハイアールと称す)の成功要因を明らかにし て,その競争優位の源泉を検討することである。現在,中国の家電業界は外資企業の参入,研究 開発費の高騰など競争環境の激化に直面している。その中で中国家電企業の売上高推移を見て,
ハイアールが圧倒的業績の伸びを示していることが分かった。そこで,ハイアールが急成長し,
トップシェアを獲得するまでに,どのような戦略を展開してきたのかを明らかにしたい。ハイ アールの成長プロセスとその経営戦略を研究することによって,同社が急速に成長し,市場シェ アを獲得した要因を解明する。
これまでハイアールの先行研究では,競争優位の源泉としてグローバル戦略やマーケティング が指摘されてきた。しかし,ハイアールの売上高の成長をみると,多角化によって成長している ことが分かり,特にM&Aという方法を使って成長してきている。先行研究では多角化戦略に ついて研究は少なく,また,その動機と効果についても説明されていなかった。したがって,本 研究ではハイアールの競争優位について,M&Aによる多角化戦略の観点から解明する。
本研究の流れとしては,まず,多角化戦略,M&A,競争優位に関連する先行研究を踏まえて,
ハイアールの分析方法を決定する。
つぎに,ハイアールの成長の背景となる中国家電企業環境を考察する。そこで中国の家電企業 成長の背景とその市場の特徴を見,特に中国の家電製品の市場状況において,冷蔵庫,エアコン,
洗濯機という3分野を取り上げる。その3分野が大きいシェアを占めており,他分野より市場成 長率が高く伸びている。これに基づいて,ハイアールが新たな分野に参入する理由および動機を 明らかにする。
また,ハイアールに関する沿革および成長プロセスについて紹介し,家電業界におけるライバ ルより優れたパフォーマンスについて述べる。そして,同社の発展を3段階に分けて,各段階の 特徴を明らかにする。さらに,ハイアールの製品の売上高寄与率を見ると,黒物製品より白物家 電の方が,貢献度が大きいことが分かる。売上高に対する貢献度が大きい白物3分野に焦点を絞 り,ハイアールが白物家電に積極的に参入した1992年〜2000年に限定して分析する。
最後は,ハイアールの競争優位を究明するために,まず,ハイアールが今まで行ってきた他社 に対するM&Aの例を取り上げる。企業の吸収合併によって,同社は買収された企業の市場 シェアを継承できただけではなく,技術資源を獲得できたが,それと同時に,M&Aによって さまざまな問題が発生した。M&Aによって生じたこれらの問題を解決するために,組織統合 の施策を実施し,問題を解決することを通じて,成長を持続させ,競争優位をもたらしたことを 明らかにする。
結論としては,ハイアールはM&Aによる多角化戦略で成功したが,その競争優位の源泉と しては組織統合が挙げられる。つまり,M&Aによって冷蔵庫,エアコン,洗濯機事業の成功 がハイアールの急成長の要因になったが,M&A後に組織統合を迅速に実施することを決め,3 つの主要領域(人事,管理,教育)に焦点を合わせた施策を実施した。こうして,買収後生じた
ハイアールの多角化戦略と競争優位に関する研究
曽 嬌 修士論文 アブストラクト
86
組織の融合を阻む問題,内部管理の問題,従業員離職問題,社員の素質の問題を解決して,うま く統合し,統合効果の発現につなげることができるようになった。
曽 嬌:ハイアールの多角化戦略と競争優位に関する研究