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希麟『続一切経音義』反切小考

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Academic year: 2021

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古代文字資料館発行『KOTONOHA』第 208 号(2020 年 3 月)

『續一切經

義』反切小考

大竹昌巳 一 の五京の一つに數えられ,南京析津府と された幽州(燕京)は, 領內におけ る 族 の中心地として榮え,金代には中都,元代には大都,さらに 淸代および 現代中國においては北京と呼ばれて首都機能を擔う存在へと變貌していった。それに い,當地の 語方言も北方 語圈において な役 を獲得するに至った。 代 語 の解 は,このような 世北方 語の展開,特にその黎 を理解する上で重 な 味を するものである。 ところで,ある時代・ある地域の言語 を同時代 料によって知ろうとするとき, そうした 料には大別して 2 つのタイプが存在する。1つは他言語の話 が,自言語 を して當該言語 を記錄したもの,或いは に當該言語の話 が自言語を して他 の言語 を記錄したものであり,もう1 つは當該言語の話 自身がその 韻を內省し 記錄したものである。 は として對 料であり,後 の 料としては や 圖の いがある。各々から得られる 報はその種 や質において大いに異なるため, それらをバランスよく斟 量してこそ質の高い 韻體系の再 が可能となる。 代 語 の硏究は, 年, 丹語 料が利用可能となったことで劇 に 展した。 しかしながら,こうした對 料を用いた硏究にはある部 においては限界もあり, より精確な 韻體系の再 を むには今 べた後 の 料が必 になってくる。 現代に傳わる數少ない 人の 作に,希 『續一切經 義』と行均『 龕手鏡』が ある。兩書には數多くの が含まれており,これらが 代 語 に基づくものであ れば,その再 の極めて 力な 料となる。果たして,これらの はそうした 料 と看做すことができるだろうか。 本稿は,このうち希 『續一切經 義』 が 代 再 に 用であるか否かを檢 討するものである。 二 希 集『續一切經 義』10 卷(以下,『希 義』)は, 琳 『一切經 義』100 卷

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(783‒807年 。以下,『 琳 義』)の續 として,同書未收の佛敎典 に含まれる 語を 取り上げて ・義 ・字體 を施した隨函形式の 義書である1)。高麗大 藏經に收められて今に傳わる2)。卷首の 名に據れば, は燕京崇仁寺の 侶で ある。卷5 の記 から,同卷纂 時點で統和 5 年(987)であったことが知られる(神 尾1937: 80f)。 以下に『希 義』 の一例を示す(原 の細字 は〈 〉で括って示す)3) (1) 鸚鵡〈上,烏 反。下, 武。下又作「䳇」,同。『山 經』云:黃山 鳥,靑 羽赤喙,人舌能作人語,名曰鸚鵡。『曲禮』曰:鸚鵡,能言不離飛鳥。〉 〔『希 義』卷4「『大乘本生心地觀經』卷第一」(四 02)〕 上 に見られるような「鸚」字に對する反切「烏 反」や「鵡」字に對する直 「武」 が『希 義』 の 體である。 坂井(1955)はこうした『希 義』 を宋代( 代)北方 を反映する 料と して 析しているが,そもそも同書 がそうした 料と看做しうるのかという根本 な問題を檢討していない。少なくとも義 に關する限り先行諸書の引用を旨とする 『希 義』の纂 態度から見て, に關してもやはり先行書の襲用ではないかと いうことは當然疑ってみなければならない。例えば上に擧げた は, 示はされて いないが『 琳 義』からの引用であるのが 白であり,そこに含まれる を直接 代 を反映するものと看做すことはできない。 (2) 鸚鵡〈上,烏 反。下, 武。或作「䳇」,二體同。『山 經』云:黃山 鳥, 靑羽赤喙,人舌能作人語,名曰鸚鵡。『曲礼』曰:鸚鵡能言不離飛鳥是也。〉 〔『 琳 義』卷4「『大般若波羅蜜多經』卷第三百九十八」(〇四 23)〕 切 (2004)に據れば,『希 義』 3429 例(典據を 示する 等を除く) のうち,『 琳 義』と用字が一致するもの1252 例(36.5%),陳彭年等 『大宋重修 廣韻』(1008 年 書。以下,宋本『廣韻』)と一致するもの 1743 例(50.8%)であり, 重複を除いた2458 例(71.7%)が『 琳 義』または宋本『廣韻』の用字と一致する 1) ただし,『希 義』卷1が 解對象とする『大乘理趣六波羅蜜多經』(788 年般若譯)は 『 琳 義』卷41 ですでに 解對象として われており,重複している。 2) 丹大藏經に收められたものが高麗に傳わったものと考えられる(高田2010: 12f)。その ほか,刊本殘簡一葉がカラホトから發見されている(聶鴻 2001)。 3) 以下,『希 義』および『 琳 義』は高麗藏本(K.1497/K.1498)に依據する。

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という。この一致 の高さは,希 が に際して『 琳 義』や切韻系韻書を參照 したことを物語っている。ただ,切 (2004)はこれら『 琳 義』や宋本『廣韻』 と一致する その他を除いて殘る824例(24.0%)を希 自身の と 斷している が,この點については大いに再考の餘地がある。 第一に,希 が參照したとみられる書 が他にもあるにも關わらず,切 (2004) は『 琳 義』・宋本『廣韻』の2 書と比 するのみで,殘りの反切を て希 自身の 反切に歸してしまっている。 第二に,切 (2004)自身も めるように,宋本『廣韻』は『希 義』以後の 立であって,希 が參照したのは宋本『廣韻』そのものではありえない。切 (2004) が宋本『廣韻』のみを參照してそれ以 の切韻諸本,特に五代から 宋代にかけての 時 に 行していた孫 『 韻』系統の韻書に關わる諸本の反切を考慮に入れなかっ たのは片手落ちと言わざるを得ない。 第三に,切 (2004)が希 自身の と 斷し, 世北方 の特徵を表わすとし て擧げている例を檢討してみると,極めて多くの疎漏・ があり,實際には切韻系 韻書や『 琳 義』に依據しているとみるべき用字が數多くある4) 以上の點から,切 (2004)のデータは信賴性に缺ける。そこで,『希 義』 の典據については改めて 査する必 がある。 三 後 するように希 は「切韻」と「孫緬ママ廣韻」(單に「廣韻」「孫緬」とも)という 2 種 の切韻系韻書を利用している。『希 義』において は600 囘以上言 され るのに對して後 への言 は十數囘に留まるが, には『 琳 義』等の先行書か らの孫引きも多く含まれ,「切韻」の名の下に複數のeditionの『切韻』が指されている と考えられるために,その性格を一槪に論ずることはできない。一方,「孫緬廣韻」は その名から見て孫 『 韻』系統の一本であり,ここから希 が少なくとも孫 『 4) 一例を擧げれば,『希 義』「縛撲」項〔五18〕に「下,蒲角反。」(「蒲」は 濁 )と あるのに關して,「撲」字は宋本『廣韻』では〈普木切〉(「普」は 淸 )だから,淸聲母 と濁聲母の混同を示す例だと切 (2004)は解釋しているが,宋本『廣韻』入聲覺韻・雹 小韻(蒲角切)に「𢷏〈相𢷏。亦作「撲」。〉」とあるのを見 している。蔣本『 韻』入聲 覺韻・雹小韻( 角反)も「撲〈相〃。〉」を收めており,却って入聲屋韻・朴小韻(普木 反)には「撲」字を收めない。從って,これは淸濁混同を示す例に當たらないどころか, 反切用字が宋本『廣韻』等と一致するため切韻系韻書に依據していることが らかな例で ある。切 (2004)にはこうした見落としや 解がかなりあることに が必 である。

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韻』系統の韻書を參照したことは らかである5)。そこで,以下ではまず『希 義』 の中に『 琳 義』と孫 『 韻』系韻書を典據とする がいかほど含まれている かを 査しよう。 5) 孫 『 韻』5 卷は〔隋〕陸法言『切韻』5 卷(601 年 書)の增補改訂版の一つで,その 一本をさらに增補改訂したのが宋本『廣韻』5 卷である。孫 『 韻』は他にも「孫 切 韻」(源順『倭名 聚抄』等)や「廣切韻」(『 琳 義』),「孫 廣韻」(〔南宋〕志磐『佛 統紀』)など樣々に呼ばれたが,實際,孫 『 韻』の中にも樣々な異本が存在した。 安 の菅原是善『東宮切韻』(佚書)が引く「孫 」は 開元21 年(733)の初 本 であり(上田1956: 88f),〔淸〕卞永譽『式古堂書畫彙考』卷 8 にはその初 本の序 と各 卷の韻目數・丁數が引かれている(王國維1927)。また天寶 10 載(751)の序 を する 重定本が知られ,これには「論曰」で始まる 章が附隨するものとしないものとがある。 論のある序 は宋本『廣韻』卷頭に收められており,敦煌出土寫本P.2638 紙背(表は後 淸泰3 年(936)の牒狀)にも同 がある。一方で,論のない天寶十載孫 序を する寫本 (刻本缺損部の補寫)も敦煌から出土しているが(P.2016 表),これは宋本『廣韻』の藍本 となった系統の孫 『 韻』とは しく體裁の異なるものであり,書名も「切韻」となっ ている(上田1973: 24‒33, 41, 42f, 62‒64)。 現傳する最大の『 韻』寫本である蔣 舊藏 寫本『 韻』殘卷(以下,蔣本『 韻』) は,卷4「去聲五十九韻」のうち「八 未韻」後 から「十九 代韻」末尾 くまでと「廿 五 願韻」末尾 くから卷末まで,さらに卷5「入聲卅四韻」の 葉を殘す。同寫本は闕 筆の狀況から 肅宗・代宗閒(在位756‒762・762‒779)の寫本とされ(王國維 1923),ま た『東宮切韻』 引の初 本佚 とはかなり異同が見られること(中村1991: 165),韻目 數も『書畫彙考』の記載とは異なることから,開元初 本ではありえず,天寶重定本の系 統に屬する最初 の寫本と看做すのが 當である。 『希 義』の引く「孫緬廣韻」や〔後晉〕可洪『新集藏經 義隨函錄』(940 年 書。 『可洪 義』)の引く「孫 韻」は總じて蔣本『 韻』よりも宋本『廣韻』に い(徐時儀 2002,徐 東 2012: 229‒238)ので,五代∼ 宋代に 行し,宋本『廣韻』の藍本となった 孫 『 韻』は天寶重定本にさらに改訂が加わったものと考えなければならない。天寶十 載孫 序の後ろに論が附隨するのは天寶重定本にさらに後人の手が加わっていることの 證しである。〔南宋〕張淏『雲谷雜記』卷2は「 天寶中,孫 因隋陸法言『切韻』作『 韻』五卷。後又 『廣 韻』五卷,不知 人名氏。……景德中[1004‒07],又詔陳彭年以 『廣 韻』等重行 定,大中祥符元年[1008]改爲『大宋重修廣韻』。」と記し,宋本『廣 韻』が藍本としたのが孫 『 韻』ではなく 不 の『廣 韻』なる書であったとして いる。上 の「孫緬廣韻」や「孫 韻」など五代∼ 宋代に 行していた孫 『 韻』系 統の韻書はこの『廣 韻』と同種の韻書であろう。後人の手が加わっても原 の名を冠 して呼ぶことは珍しいことではない。 ところで,〔北宋〕徐鉉 定『說 解字』(986 年 書,いわゆる「大徐本」)の序 には 「『說 』之時,未 反切,後人附益,互 異同。孫 『 韻』行之已久,今竝以孫 切 爲定。」とあって,當時の『說 解字』に附されていた反切に異同があるのをすべて孫 『 韻』の反切によって正したという。大徐本『說 』の反切を實際に見てみると,切韻 系韻書の同一小韻 屬字に對して異なる反切が附されていることが多々あるため,大徐本 の 反切を孫 『 韻』に由來すると看做すことはできないが(舊來の反切が修正されず に殘ったものか),切韻諸本の反切と比 することでどの反切が孫 『 韻』に由來する かはほとんどの場合に見當を付けることができる。この大徐本が依據した孫 『 韻』に は蔣本『 韻』になく宋本『廣韻』にある增加小韻が存したと考えられる(徐 東 2012: 124‒136)ので,大徐本 據『 韻』も天寶以後再重定本の系統に屬することが かる。從 って,五代∼ 宋代に 行していた孫 『 韻』系韻書の反切を知る上で大徐本『說 』 反切も 力な 料となる。

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しかし,そうは言っても,3000例を超える すべてを檢討するには厖大な時閒を する。そこで,ここでは試みに切韻系韻書の去聲未韻から代韻までの各韻(未・御・ ・暮・泰・霽・祭・卦・怪・夬・ ・代の諸韻)の 屬字に對する反切211 例のみ について檢討を加える6) 以下はその手順と結果である。まず, 査範圍の『希 義』反切について『 琳 義』からの引用か否かを檢討し,引用と 斷された場合には以下各表の「推定され る典據」 に「 琳」と記して〔 〕內に高麗藏本での卷丁數を示した(卷數を 數 字,丁數をアラビア數字で示す)7) に,『 琳 義』からの引用と 斷された反切を除いた殘りの反切について,孫 『 韻』系韻書からの引用と看做しうるか否かを檢討した。 體 には,蔣本『 韻』 反切,大徐本『說 解字』反切のうち孫 『 韻』に由來すると推定される反切,宋 本『廣韻』反切の3 種のいずれかと一致するものを孫 『 韻』系韻書からの引用と 看做し,「推定される典據」 に「孫 」と記した。 兩 査を經て『 琳 義』とも孫 『 韻』系韻書とも用字が一致しないと 斷さ れた殘りの反切には,「推定される典據」 に☆または★を記した(兩記號の 味につ いては後で べる)。 6) この範圍を んだことについては蔣本『 韻』の殘卷部 に當たること以外に特別な 圖 はないことを豫め斷っておく。檢索には上田(1986)を利用したが,氣付いた限り 2 例の 脫漏があったため補った。また,『希 義』原 の「□,○○反。……△, 同上。」の ような記載について,上田(1986)は□字の反切として〈○○反〉を 錄するのみならず, △字の反切としても〈○○反〉を 錄するが,本 査では後 のような例は對象外とした。 7) 『 琳 義』からの引用か否かを 斷する基準は,單に反切用字が一致するか否かだけで なく,反切を含む 體が相似しているか否かに置いた。 が『 琳 義』とやや異 なる場合には「?」を附した。

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【未韻】 『希 義』 孫 『 韻』諸本反切8) 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 001 非味 六09 (缺) *方未 方味 琳〔〇二32〕 002 〃 方未 九03 〃 〃 〃 孫 003 〃 九18 〃 〃 〃 孫 004 𠂔 肥味 一10 (扶沸) *扶沸 (扶涕) 琳〔〇二04〕 005 漑 基懿 三18 (居未) *居未 居豙 琳〔〇七05〕 006 欷 許旣 九04 許旣 *許旣 許旣 孫 007 卉 輝貴 三13 (缺) *許貴 許貴 琳〔〇八21ほか〕? 008 〃 許貴 四10 〃 〃 〃 孫 009 云貴 二15 (缺) *云貴 于貴 孫 010 𦝩 韋畏 二16 〃 〃 〃 琳〔〇五04〕 【御韻】 『希 義』 孫 『 韻』諸本反切 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 011 張慮 五03 慮 *陟慮 陟慮 琳〔一〇20〕 012 濾 廬 五20 (良據) *良據 (良倨) 琳〔六二31〕 8) 蔣本『 韻』(「蔣本」と略する)欄に關して,「(缺)」とあるのは當該字を含む小韻の反切 (或いは當該小韻 體)が缺損部に當たり不 なものを指す。反切上下字の一方のみを缺 する場合はその部 を「□」で示す。 蔣本および宋本『廣韻』(「宋本」と略する)欄に關して,反切に( )を附したものは, 當該小韻自體は存在するが,その小韻に當該字を收めないことを 味する。例えば,004 「𠂔」〈肥味反〉について,その反切が示す小韻は蔣本では〈扶沸反〉の反切を附されて存 在し,宋本では〈扶涕切〉(「涕」は「沸」の )の反切を附されて存在するが,兩書のそ の小韻に「𠂔」字そのものは含まれていない。またこれらの欄について,下線を引いた字 は らかな 字である。 大徐本『說 解字』(「大徐本」と略する)欄に關しては,ここに示したのは當該 を 表わすに した同書反切のうち,孫 『 韻』由來と推定されるものであり,大徐本で實 際に當該字に附されている反切と一致するとは限らないことに されたい。例えば,大 徐本で001「 」字に實際に附されている反切は上聲尾韻の を示す〈 尾切〉のみで, 問題にしている去聲未韻の ではないため,このような場合には同 字から 切な反切 (この場合は「沸」字に附された〈方未切〉)を探してきて提示している。同樣に,大徐本 では183「械」字に〈胡戒切〉とあるが,同 の「 䦏 衸」4 字には〈胡介切〉とあり, こちらが孫 『 韻』に由來する反切と推定されるため,後 を取って示してある。また, 194「話」字には〈胡快切〉とあるが,蔣本・宋本を含む切韻諸本の反切が て〈下快反 [切]〉であることから,大徐本の〈胡快切〉が孫 『 韻』に由來するとは考えがたい。 しかし「話」字には他に同 字がないため,大徐本が參照した孫 『 韻』で當該小韻の 反切が何であったのかは知りえない。このように大徐本が依據した孫 『 韻』の反切が 不 な場合には「?」で示した。 なお,大徐本は靜嘉堂 庫藏宋刊本(四部叢刊 收),宋本『廣韻』は澤存堂本に據る。

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013 詛 側據 三18 莊助 *莊助 莊助 琳〔二七63〕 014 〃 〃 六14 〃 〃 〃 琳〔二七63〕 015 〃 〃 六22 〃 〃 〃 琳〔二七63〕 016 常恕 九07 常恕 *常恕 常恕 孫 017 踞 居御 七03 居御 *居御 居御 琳〔四二15〕 018 遽 其倨 二07 其倨 *其倨 其據 孫 019 〃 〃 九04 〃 〃 〃 孫 020 〃 渠預 三19 〃 〃 〃 琳〔二三18, 23〕 021 馭 牛倨 七05 牛據 *牛據 牛倨 ☆9) 022 〃 牛據 九07 〃 〃 〃 孫 023 〃 〃 九15 〃 〃 〃 孫 024 瘀 於據 三10 衣倨 *依倨 依倨 琳〔六二20〕 025 淤 依倨 五22 〃 〃 〃 孫 026 豫 羊恕 三15 羊洳 *羊茹 羊洳 ☆ 027 〃 餘據 五24 〃 〃 〃 琳〔〇三05〕 028 〃 羊茹 八15 〃 〃 〃 ☆10) 029 〃 羊洳 九10 〃 〃 〃 孫 030 輿 余據 八14 〃 〃 〃 琳〔二七13〕 【 韻】 『希 義』 孫 『 韻』諸本反切 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 031 仆 芳 一11 方 *芳 芳 孫 032 附 符 八08 符 *符 符 孫 033 〃 九12 〃 〃 〃 孫 034 務 三19 * 孫 035 丶 竹句 三02 (中句) *中句 (中句) ☆11) 036 〃 五03 中句 〃 中句 琳〔一〇20〕 9) 宋本〈牛倨切〉と一致するものの,蔣本〈牛據反〉,大徐本〈牛據切〉であり,『希 義』 に〈牛據反〉とする箇 もあってこちらを孫 『 韻』からの引用と 斷したため,必然 にこの〈牛倨反〉は孫 『 韻』からの引用ではないと考えることになる。 10) 大徐本〈羊茹切〉と一致するものの,蔣本〈羊洳反〉,宋本〈羊洳切〉であり,『希 義』 に〈羊洳反〉とする箇 もあってこちらを孫 『 韻』からの引用と 斷したため,必然 にこの〈羊茹反〉は孫 『 韻』からの引用ではないと考えることになる。 11) 「丶」字は宋本〈知庾切〉(上聲麌韻)。去聲の は諸書にも見えない。

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037 竹句 十05 中句 *中句 中句 ★ 038 力句 七04 (良 ) ? (良 ) 琳〔四二16〕 039 屢 良 十16 良 〃 良 孫 040 娶 七句 九02 七句 *七句 七句 孫 041 聚 疾喩 二04 才句 *才句 才句 琳〔二一30〕 042 之戍 二07 (之戍) *之戍 之戍 孫 043 馵 之句 二14 之戍 〃 〃 ★ 044 〃 之戍 七05 〃 〃 〃 孫 045 炷 朱 三13 〃 〃 〃 ☆ 046 澍 朱戍 五08 〃 〃 〃 琳〔一〇26〕 047 〃 朱樹 六05 〃 〃 〃 琳〔三八13〕 048 戍 式句 四02 (缺) *傷 傷 ☆ 049 寓 牛 十02 牛 *牛 牛 孫 050 羽 王句 十04 王 *王 王 ★ 【暮韻】 『希 義』 孫 『 韻』諸本反切 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 051 哺 蒲慕 一15 故 * 故 故 琳〔四一37〕12) 052 捕 蒲故 二08 〃 〃 〃 ★ 053 〃 故 四16 〃 〃 〃 孫 054 度 徒故 五07 徒故 *徒故 徒故 孫 055 怒 乃故 三14 奴故 *乃故 乃故 孫 056 〃 〃 六21 〃 〃 〃 孫 057 路 盧故 二13 洛故 *洛故 洛故 ☆ 058 〃 洛故 四01 〃 〃 〃 孫 059 輅 〃 五03 〃 〃 〃 孫 060 〃 〃 五23 〃 〃 〃 孫 061 〃 〃 六17 〃 〃 〃 孫 062 〃 〃 八06 〃 〃 〃 孫 12) 『希 義』の〈蒲慕反〉に對して『 琳 義』當該箇 は〈蒲暮反〉に作るが, 1 で 觸れたように『希 義』卷1 は『 琳 義』卷 41 と同一の經典を 解對象とし,『 琳 義』で旣 の語についてはほぼその を襲用するので,兩 の反切用字の⻝い いは いずれかの 寫・ 刻によって生じたものと考えられる。なお,『 琳 義』の別の箇 で は當該字の反切を〈蒲慕反〉に作るものもあるが, は卷41 が最もよく一致する。

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063 輅 洛故 八08 洛故 *洛故 洛故 孫 064 〃 〃 九07 〃 〃 〃 孫 065 〃 〃 九13 〃 〃 〃 孫 066 露 〃 八16 〃 〃 〃 孫 067 塑 桑故 五17 (桑故) *桑故 桑故 孫 068 固 古 六18 古暮 *古慕 古暮 ☆ 069 寤 五故 一16 五故 *五故 五故 琳〔四一40〕 070 〃 吾故 三02 〃 〃 〃 琳〔〇五02〕 071 〃 〃 三19 〃 〃 〃 琳〔七七37〕? 072 〃 〃 九07 〃 〃 〃 琳〔七七37〕? 073 五故 九10 〃 〃 〃 孫 074 頀 胡故 十14 胡 *胡 胡 ★ 075 惡 烏故 九14 烏故 *烏故 烏路 孫 【泰韻】 『希 義』 孫 『 韻』諸本反切 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 076 貝 蓋 三15 (缺) * 蓋 蓋 孫 077 霈 普蓋 三12 普蓋 *普蓋 普蓋 孫 078 〃 〃 九09 〃 〃 〃 孫 079 蛻 湯外 五11 他外 *他外 他外 琳〔五六46〕 080 大 徒蓋 一04 (缺) *徒蓋 徒蓋 孫 081 籟 落大 一04 □蓋 *洛帶 落蓋 ☆ 082 〃 洛大 五04 〃 〃 〃 ☆ 083 瀨 落大 三16 〃 〃 〃 ☆ 084 癩 來大 六10 〃 〃 〃 琳〔〇二26〕 085 厲 來大 六10 (□蓋) 〃 (落蓋) 琳〔〇二26〕 086 垓礙 一13 古太 *古太 古太 琳〔四一29〕 087 〃 垓艾 三07 〃 〃 〃 琳〔六〇13〕 088 蓋 古太 六08 〃 〃 〃 孫 089 膾 瓌外 一14 古外 *古外 古外 琳〔〇一33〕 090 〃 〃 四09 〃 〃 〃 琳〔〇一33〕 091 〃 〃 六09 〃 〃 〃 琳〔〇一33〕 092 〃 古外 四15 〃 〃 〃 琳〔二七55〕

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093 刂 古外 二07 (古外) *古外 古外 琳〔〇三20〕 094 𥢶 苦會 五11 苦會 *苦會 苦會 孫 095 𡖦 五會 九11 (五會) *五會 (五會) 孫 ?13) 096 戶艾 九08 (缺) *胡蓋 胡蓋 ☆ 097 薈 烏外 三20 烏外 *烏外 烏外 琳〔二七43〕 098 〃 〃 九07 〃 〃 〃 琳〔二七43〕 【霽韻】14) 『希 義』 韻』諸本反切 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 099 疋閉 三04 匹詣 ? 匹詣 琳〔八八05〕? 100 〃 〃 十06 〃 〃 〃 琳〔八八05〕 101 薜 鼙閉 一14 計 *蒲計 蒲計 琳〔三三41〕 102 〃 蒲計 四02 〃 〃 〃 孫 103 〃 〃 八03 〃 〃 〃 孫 104 〃 〃 八15 〃 〃 〃 孫 105 〃 〃 九03 〃 〃 〃 孫 106 〃 〃 九13 〃 〃 〃 孫 107 〃 〃 九15 〃 〃 〃 孫 108 〃 〃 十12 〃 〃 〃 孫 109 〃 桂 八09 〃 〃 〃 琳〔二九08〕 110 諦 都計 四09 許計 *都計 都計 孫 111 洟 他計 四07 他計 *他計 他計 孫 112 〃 〃 六04 〃 〃 〃 孫 113 〃 〃 九04 〃 〃 〃 孫 114 遞 特計 二19 特計 *特計 特計 孫 115 茘 黎 一14 郞計 *郞計 郞計 琳〔三三41〕 116 戾 郞計 三10 〃 〃 〃 孫 117 〃 〃 八04 〃 〃 〃 孫 13) 當該字(『根本說一切 部 奈耶破 事』卷 12 に「𡖦甥」として見える)は『集韻』や『 龕手鏡』にも未收。「外」字の反切に據ったか。 14) 「 」字(宋本〈烏結切〉,入聲 韻)に對して〈煙継反〉(「継」は霽韻字)と した箇 がある(「螟蛉」項〔一12〕)が,當該箇 は『 琳 義』「螟蛉」項〔四一 27〕の襲用 であり,同箇 では〈煙結反〉に作るから,「継」は らかに「結」の 字である。從って, これは霽韻ではなく 韻の例として うべきものであるから本表には含めない。

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118 儷 郞計 三20 郞計 *郞計 郞計 孫 119 〃 〃 九10 〃 〃 〃 孫 120 〃 四11 〃 〃 〃 孫 121 濟 子計 四19 子計 *子計 子計 孫 122 劑 在詣 五16 在詣 *在詣 在詣 孫 123 壻 蘇計 九02 蘇計 *穌計 蘇計 孫 124 繼 古詣 三09 古詣 *古詣 古詣 孫 125 繫 〃 三20 〃 〃 〃 孫 126 系 胡計 十08 胡計 *胡計 胡計 孫 127 翳 於計 二01 於計 *於計 於計 孫 128 〃 二04 〃 〃 〃 孫 129 〃 〃 三04 〃 〃 〃 孫 130 〃 〃 三18 〃 〃 〃 琳〔〇二26〕 131 〃 〃 六13 〃 〃 〃 孫 【祭韻】 『希 義』 孫 『 韻』諸本反切 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 132 袂 一20 必袂 *必袂 必袂 琳〔四一49〕 133 〃 〃 二08 〃 〃 〃 琳〔〇四22〕 134 袂 弥勵 二16 弥 *彌 彌 琳〔二三25〕 135 綴 衞 五04 陟衞 *陟衞 陟衞 琳〔一〇22〕 136 勵 力制 三17 力制 *力制 力制 孫 137 礪 〃 十07 〃 〃 〃 孫 138 祭 子例 二14 子例 *子例 子例 孫 139 〃 〃 四19 〃 〃 〃 孫 140 〃 〃 八14 〃 〃 〃 孫 141 〃 〃 九06 〃 〃 〃 孫 142 際 〃 三03 〃 〃 〃 孫 143 歲 六15 (缺) *此芮 此芮 琳〔〇三32〕 144 歲 相銳 九10 相銳 *相銳 相銳 孫 145 彗 隨銳 五07 祥歲 *祥歲 祥歲 琳〔二九39〕 146 囚歲 八17 〃 〃 〃 ★

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147 贅 隹芮 一16 之芮 *之芮 之芮 琳〔四一39〕15) 148 〃 〃 二06 〃 〃 〃 琳〔四一39〕 149 掣 昌制 五12 尺制 *尺制 尺制 琳〔〇二07ほか〕? 150 〃 〃 七16 〃 〃 〃 孫 16) 151 〃 昌世 六15 〃 〃 〃 ★ 152 〃 〃 六16 〃 〃 〃 ★ 153 蛻 舒芮 五11 舒芮 * 芮 舒芮 孫 154 噬 時制 三09 時制 *時制 時制 孫 155 筮 〃 四17 〃 〃 〃 孫 156 誓 〃 十01 〃 〃 〃 孫 157 蚋 而稅 三16 而銳 *而銳 而銳 琳〔〇九27〕 158 居乂 一04 居例 *居例 居例 琳〔四一03〕 159 藝 魚祭 五05 魚祭 *魚祭 魚祭 孫 160 〃 〃 八07 〃 〃 〃 孫 161 囈 〃 九06 〃 〃 〃 孫 162 曳 餘世 六15 餘制 *餘制 餘制 ★ 163 叡 悅惠 八07 以芮 *以芮 以芮 琳〔六〇20〕 【卦韻】 『希 義』 孫 『 韻』諸本反切 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 164 普賣 二17 (匹卦) *匹卦 匹卦 琳〔〇五03〕 165 疋賣 五10 〃 〃 〃 ★ 166 派 疋卦 十17 匹卦 〃 〃 孫 167 賣 莫懈 八17 莫懈 ? 莫懈 孫 168 債 側懈 四19 側賣 *側賣 側賣 ☆ 169 邂 胡賣 五14 胡懈 *胡懈 胡懈 ☆ 170 胡卦 二07 胡卦 *胡卦 胡卦 孫 15) 『 琳 義』は〈 芮反〉(「 」は「莊」の異體字)に作るが,同書のその他の箇 では 「贅」字の反切上字に莊母字を用いることがなく て章母字であること,『希 義』の當 該 は『 琳 義』の とほぼ同 であり,その襲用と考えられることから,現行本 『 琳 義』の〈 芮反〉は〈隹芮反〉の 寫・ 刻と看做すのが 當である。實際,『 琳 義』の別箇 では〈隹芮反〉に作るものも存在する〔〇四14,一二 25〕。 16) 『希 義』 は「掣擊〈上,昌列反。……又 昌制反。〉」とする。一方,蔣本『 韻』 や宋本『廣韻』の入聲薛韻には「掣〈……昌列反[切]。又昌制反[切]。〉」とあるので, 『希 義』の當該反切はこの記 に據ったものと考える。

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171 隘 介 一06 烏懈 *烏懈 烏懈 琳〔四一07〕 172 〃 烏懈 五20 〃 〃 〃 孫 173 〃 櫻介 六10 〃 〃 〃 琳〔〇四14〕 【怪韻】 『希 義』 孫 『 韻』諸本反切 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 174 排拜 二16 拜 *蒲拜 蒲拜 琳〔二四37〕 175 〃 蒲拜 九05 〃 〃 〃 孫 176 瘵 齋薤 十10 側界 *側介 側界 琳〔八八10〕 177 疥 薤 六04 古拜 *古拜 古拜 ★ 178 〃 皆隘 六10 〃 〃 〃 琳〔〇四14〕 179 怪 古壞 八04 古壞 *古壞 古壞 孫 180 〃 〃 九08 〃 〃 〃 孫 181 喟 口恠 三18 苦恠 *苦怪 苦怪 琳〔三二13〕? 182 聵 吾恠 五12 五恠 *五怪 五怪 琳〔〇三15〕 183 械 胡戒 五06 胡介 *胡介 胡介 ☆17) 184 〃 〃 八06 〃 〃 〃 ☆ 185 壞 懷聵 三06 胡恠 ? 胡怪 琳〔〇三15〕 186 〃 〃 三13 〃 〃 〃 琳〔〇三15〕 187 〃 〃 五12 〃 〃 〃 琳〔〇三15〕 188 〃 懷恠 七12 〃 〃 〃 琳〔三七08〕 189 噫 厄界 十18 烏界 ? 烏界 琳〔八九07〕 【夬韻】 『希 義』 孫 『 韻』諸本反切 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 190 敗 蒲邁 九15 □ * 邁 邁 ★ 191 蠆 丑芥 六07 丑介 *丑芥 丑犗 孫 192 犗 古邁 三09 古 ? 古 ★ 193 夬 古快 十12 古邁 *古賣 古賣 琳〔八八11〕 194 話 胡快 八15 下快 ? 下快 ★ 17) 『 琳 義』に〈胡戒反〉〔一七 35,五二 52,七三 25〕あるも が合わない。

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【 韻】 『希 義』 孫 『 韻』諸本反切 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 195 背 補妹 九04 妹 *補妹 補妹 孫 196 珮 蒲妹 三06 ( 昧) *蒲妹 蒲昧 孫 197 〃 〃 七15 〃 〃 〃 孫 198 盧對 五15 盧對 *盧對 盧對 孫 199 耒 〃 八13 〃 〃 〃 孫 200 〃 盧會 十07 〃 〃 〃 琳〔八五02〕 201 誨 外 二06 內 * 內 內 ★ 202 〃 〃 三20 〃 〃 〃 ★ 203 殨 胡對 八12 胡對 *胡對 胡對 孫 【代韻】 『希 義』 孫 『 韻』諸本反切 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 204 袋 徒耐 九05 徒耐 *徒耐 徒耐 孫 205 苦 六20 苦摡 *苦蓋 苦蓋 ★ 206 〃 苦戴 七07 〃 〃 〃 琳〔二七61〕 207 〃 〃 九17 〃 〃 〃 琳〔二七61〕 208 〃 開蓋 十18 〃 〃 〃 琳〔八九07〕 209 苦 十01 〃 〃 〃 ★ 210 礙 五 二07 五 *五漑 五漑 孫 211 癩18) 落代 04 (缺) *洛代 洛代 ★ 以上の結果を するに, 査範圍の『希 義』反切211 例のうち,『 琳 義』に 依據したと推定されるもの73例(34.6%),それを除いた殘りの反切のうち孫 『 韻』 系韻書に依據した可能性のあるもの103例( 體の48.8%)で,兩 合わせて83.4%に する。また,殘りの 35 例のうち,以下の 7 例(上揭の諸表で★で示したものの一 部)は 寫・ 刻が疑われ,やはり孫 『 韻』系韻書に據った可能性がある。 18) 『希 義』は「疥癩〈……下,落代反。……『說 』作「㾢」。經 作「癩」,俗字也。〉」 として「癩」を「㾢」の俗字とするが,切韻系韻書では「癩」は泰韻,「㾢」は代韻に屬す。 ここの「落代反」は後 の を取ったものと 斷し,代韻字として う。

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『希 義』 孫 『 韻』諸本反切 推定される典據 # 字 反切 卷丁 蔣本 大徐本 宋本 052 捕 蒲故 二08 故 * 故 故 孫 ? 190 敗 蒲邁 九15 □ * 邁 邁 孫 ? 201 誨 外 二06 內 * 內 內 孫 ? 202 〃 〃 三20 〃 〃 〃 孫 ? 205 苦 六20 苦摡 *苦蓋 苦蓋 孫 ? 209 苦 十01 〃 〃 〃 孫 ? 211 癩 落代 六04 (缺) *洛代 洛代 孫 ? 「蒲」と「 」の 寫はよくあることで,『希 義』の 纂・傳承 か依據した 孫 『 韻』系韻書の段階で〈 故反〉,〈 邁反〉が〈蒲故反〉,〈蒲邁反〉に られ たことは十 に考えられる。 「 」字は反切上字として常用されるものではなく,宋本『廣韻』でも4 小韻での 用に留まる。希 が偶然この字を反切上字に んだと考えるよりも,孫 『 韻』 系韻書の反切を襲用したと考える方が遙かに自然であろう。「外」と「內」は 筆 第 では見 る可能性がある19) 手 と木 の 別は寫本においては曖昧で,「摡」を「槪」と した上で字體を「 」 に書き換えることもありうるだろう20) 「落」と「洛」の 寫も十 にありうる21) 四 殘りの28例について檢討しよう。すでに指摘したように,希 が參照した書 は 19) 2 箇 とも〈 外反〉となっていることからすると,『希 義』が依據した孫 『 韻』 の段階ですでに っていた蓋然性が大きい。なお,「外」は泰韻,「內」は代韻字である。 20) 孫 『 韻』はそれ以 の切韻諸本で「愛」字を下字としていた 3 つの反切すべてを改め ており,蔣本では〈五愛反〉〈胡愛反〉が〈五 反〉〈胡 反〉となるのに對して〈苦愛反〉 のみ〈苦摡反〉となっている。他 2 例から見るかぎり〈苦 反〉とするテキストが曾て存 在したとしても不思議ではない。つまり,蔣本〈苦摡反〉の方が 寫である可能性もある。 ただし,930 年代 立の源順『倭名 聚抄』(十卷本の卷5,二十卷本の卷 13)が引く『 韻』は代韻字「鎧」の反切を〈苦蓋反〉としており,宋本『廣韻』等と同じく「 」小韻 (溪母代韻)の反切を〈苦蓋反〉とする孫 『 韻』系韻書が930 年代にすでに存在し(か つ日本にまで流傳し)ていたことにも留 しなければならない。 21) 現に『希 義』〈湯落反〉〔一 12〕:『 琳 義』〈湯洛反〉〔四一 28〕という 寫がある (『大乘理趣六波羅蜜多經』卷3 中の「𩧐駝」の上字に對する )。

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『 琳 義』と孫 『 韻』系韻書に留まらない。『希 義』書中には幾種 もの小 學書や四部に跨がる廣汎な書 が引用されている。しかしながら,その多くは『 琳 義』等の先行諸書からの孫引きであり,希 が直接參照した書 はずっと限定され ると考えられる。 希 が直接參照しえた書 ,特に小學書を知るに當たって の記 は貴重である。 (3) 燈炷〈下,朱 反。 代字也。案陸氏『釋 』、『切韻』、許愼『說 』、『玉 』、 『字林』、『古今正字』竝無。唯孫緬『廣韻』收在「 」字內。〉 〔『希 義』卷3「『新大方廣佛 嚴經』卷第四十」(三 13)〕 似の は『 琳 義』にも複數見えるが22),列擧する字書 の內譯が異なるた め,この案語は希 自身のものと められる。從って,少なくともここに列擧された 陸德 『經典釋 』,陸法言『切韻』,許愼『說 解字』, 野王『玉 』,呂忱『字林』, 張戩『古今正字』(および孫緬『廣韻』)は希 が直接參照しえたと考えてよい23) ただ,彼が目睹しえたこれらのテキストを今日の我々が同じように見ることは最早 不可能である。『字林』と『古今正字』は散佚して今に傳わらない。また,『說 』や 『玉 』,『切韻』は,特に 代以降,後人の手が加わった樣々な改 本が行なわれる ようになったことが諸書の記 や佚 ・斷簡によって知られるが,宋代に敕 の徐鉉 定『說 解字』(大徐本),『大廣益會玉 』(以下,宋本『玉 』),『大宋重修廣韻』 (宋本『廣韻』)が刊印されるに んで,それ以 の異本はほとんどが えてしまった。 それゆえ,上 の諸書は『古今正字』を除いていずれも曾て を備えていた小學書 であるが,希 の目睹したテキストは現行本や現存の零細な斷簡・佚 から推知する 他なく,それらに由來する の特定作業には自ずから限界がある。この點は十 に 留 しておく必 がある。 希 が『 琳 義』や孫 『 韻』系韻書以外に上 書の をも利用していたと 考えるべき根據は以下のような例から得られる。 22) 例えば,「燈炷〈下, 。……本無此字,譯經 以 書出。唯『集訓切韻』新集入韻。『玉 』、『說 』、『字林』、『字統』、『古今正字』等無此字。〉」〔六〇36〕。 23) 他に希 が〔 〕張參『五經 字』(776 年序。『五經 義』,『五經字樣』とも)も參照した ことが以下の案語から知られる:「 甲〈上,胡慣反。……案『說 』、『字林』、『玉 』皆 胡慣反。唯『五經 字 義』 古患反。……〉」〔四10〕。因みに,これは『五經 字』 卷上「二手部」の「 〈古患反。『釋 』竝 患。〉」に基づく記 だが,これ自體,『經典 釋 』卷10「儀禮 義・士 禮第十四」の「㩊衣〈 宣。手發衣曰㩊。又作 , 患、古 患反。〉」に基づく記 であり,『經典釋 』を參照していたはずの希 が,ここでは同書に 當たれていない。「 」字が見出し語に立たないこともあって見 したのであろう。

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(4) 蚖蝮〈……下,芳 反。陸氏『釋 』云:蝮, 。 上 針,大 百餘斤。一 名 ,一名蝮虺。……〉 〔『希 義』卷6「『佛說穰 利童女經』一卷」(六 06)〕 これに對應する は『 琳 義』には見えず,切韻諸本の反切〈芳福反[切]〉(蔣 本・大徐本・宋本),〈芳伏反〉(切三・王一・王二・王三)とも一致しない24)。ところ が,この〈芳 反〉は『經典釋 』の と一致するのである25) (5) 𧐛〈字亦作「蝮」。芳 反。又 六反。此蛇,色如綬, 上 針,大 百餘斤。 又一名反 , 一孔。〉 〔『經典釋 』卷 30「爾 義下・釋魚第十六」〕 もう1 つ例を示そう。 (6) 疥癩〈上, 薤反。『切韻』:瘡疥也。 野王云:疥,瘙也。卽風瘙也。……〉 〔『希 義』卷6「『佛母大孔雀 王經』卷中」(六 04)〕 やはりこれに對應する は『 琳 義』にはなく,在證される切韻諸本の反切も て〈古拜反[切]〉であって用字が合わない。ところがこの〈 薤反〉は『玉 』(宋 本『玉 』および『篆隸萬象名義』)と一致するのである(宋本『玉 』のみ示す)26) (7) 疥〈 薤切。瘙也。〉 〔宋本『玉 』卷 11「疒部第一百四十八」〕 このように,義 に『經典釋 』や『玉 』を引用した箇 において反切用字もそ れらの書に一致する例があることは,希 がこれらの書の をも利用していること の らかな證左である。 典據不 として殘っている28 例のうち,(小徐本・大徐本以 の)『說 解字』27) 24) 切韻諸本の反切は上田(1975)に據る。 25) 『經典釋 』は中國國家圖書館藏宋刻宋元遞修本を底本とする。 26) 宋本『玉 』は澤存堂本を底本とする。 27) 5に引いた大徐本序にあるように,許愼の時代には反切法が存在せず,『說 』に反切が 附されたのは後代のことである。その反切を知る手かがりとしては, 寫本『說 』殘卷 (木部・口部),『經典釋 』等に引かれる佚 ,〔 〕李陽冰『刊定說 』(佚書)に基づ く〔北宋〕郭忠恕『汗簡』・〔北宋〕夢英『篆書目錄 旁字源 』(999 年建立)等があるが, これらによって知られる說 は,幾つかの書に引かれる がむしろ『玉 』のそれと 一致するのを除けば,佚 から知られる『字林』のそれと一致するという( 謨1948)。

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『字林』,『玉 』,(孫 『 韻』系統でない)『切韻』,『經典釋 』のいずれかと反切 用字が一致するものは以下の11 例存在する(三の表中,★で示したものの一部)。 『希 義』 典據の候補 # 字 反切 卷丁 中の引用書 037 竹句 十05 — 說 (汗簡,字源 ,五經)28) 043 馵 之句 二14 — 字林(釋 ・爾 釋畜 引) 074 頀 胡故 十14 字書 玉 (萬象名義,宋本) 切韻(王二,王三) 146 囚歲 八17 爾 釋草,郭璞序 切韻(王一,王二,王三)29) 151 掣 昌世 六15 說 ,爾 (釋訓) 釋 ・爾 釋詁30) 152 〃 〃 六16 — 〃 162 曳 餘世 六15 — 釋 ・爾 釋訓 165 疋賣 五10 — 說 (汗簡,字源 )31) 177 疥 薤 六04 切韻, 野王 玉 (萬象名義,宋本) 192 犗 古邁 三09 切韻 切韻(王二,王三) 194 話 胡快 八15 玉 ,說 ,詩 玉 (原本,萬象名義)32) 說 ( ・秋興賦 引)33) また,050「羽」〈王句反〉〔十04〕( 中で『說 』を引用)については,『說 』 が〈于句反〉(『字源 』に據る。『五經 字』も同じ)であり,「王」を「于」の 寫と看做すならば,說 と一致する。 さらに,『五經 字』の も多くが『說 』『字林』 に一致するという(ibid.)。 28) なお,宋本『玉 』も〈竹句切〉だが,『萬象名義』は〈竹樹反〉に作る。 29) なお,『經典釋 』卷 30「爾 義下・釋草第十三」では「蔧」〈息 、囚銳二反〉,卷 29 「爾 義上・爾 序」では「 」〈似說反。又囚醉反。一 息 反〉の を付す。 30) なお,『經典釋 』卷 29「爾 義上・釋訓第三」では「掣〈本或作「𢊏」,同。充世反。 『說 』云:引而縱之。〉曳〈餘世反。〉」とある。 31) なお,宋本『玉 』も〈匹賣切〉だが,『萬象名義』は〈 加反〉に作る。 32) 『萬象名義』は〈 快反〉に る。宋本『玉 』は〈胡卦切〉に作る。 33) 李善 に「『說 』曰:話,會合善言也。胡快切。」とある。ただ,『 』李善 の引く「說 」は原本系『玉 』反切に異ならないことが指摘されており( 謨1948),その 因が,李善の據った『說 』が『玉 』から反切を 錄していたためか,それとも李善が 『說 』からでなく『玉 』から直接引用したためなのかは定かでない。いずれにせよ, 「話」〈胡快反〉は畢竟『玉 』に由來するとみてよい。なお,大徐本反切も〈胡快切〉で あり,これは孫 『 韻』に由來するとは考えにくい(切韻諸本すべて〈下快反〉)ので, 說 舊 を踏襲したものか,或いは『玉 』に據ったものであろう。

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結局, 査範圍の反切211 例のうち典據不 として殘ったのは,三の表中,☆で示 した か16 例(7.6%)に ぎず,ほとんどは『 琳 義』や孫 『 韻』系韻書をは じめ上に擧げた諸書のいずれかと用字が一致する。しかもこれは,當時希 が參照し えたテキストの多くが散佚して知りえない現狀で らかにしうる數字であり,殘りの 16例と一致する反切用字が,失われたテキストの中に存した可能性は十 にあるので ある34)。その可能性を考慮するならば,少なくとも以上のごく限られた 査範圍內で は『希 義』にのみ特 の反切用字はほぼないと言ってよい。 五 以上見てきたように,希 は自らの語 に基づいて を創作したのでなければ, 特定の一書に依據して を附したのでもなく,複數の時代・地域に跨がる諸典 か ら を 集しているのである35)。ただ,このことは希 に對して く無關心 で,何らの指針も たずに參照元の をそのまま引用したことを 味するわけでは ない。 に擧げる『希 義』の 釋は『 琳 義』からの引用であるのが 白であるが, 引用に際して上字の反切が改められている36) (8) 罘網〈上, 謀反。 『禮記』云:罘,獸罟也。『韻英』云: 也。『說 』: 罟也。從罒不聲也。罟, 古。 , 姐耶反。下,無倣反。亦作「网」,正作 「罔」也。〉 〔『希 義』卷1「『大乘理趣六波羅蜜多經』卷第三」(一 14)〕 (9) 罘網〈上,附無反。 『礼記』云:罘,獸罟也。『韻英』云: 也。『說 』: 罟也。從罒不聲也。罟, 古。 , 濟耶反。下,無倣反。亦作「冈」。〉 〔『 琳 義』卷41「『大乘理趣六波羅蜜多經』卷第三」(四一 36)〕 34) 例えば,183, 184「械」〈胡戒反〉〔五 06,八 06〕はその 2 箇所ともで『玉 』を引用して おり,その反切についても『玉 』に依據した可能性があるが,その宋代以 の を知る 上で重 な『萬象名義』はこの部 を脫しており,未詳である(なお,宋本『玉 』は〈亥 誡切〉)。 35) 卷首の 名に「希 集」とあるのは,希 が行なったのがあくまでも 集であって で なかったことをよく物語っている。 36) そのほか,「 」字の反切用字も〈濟耶反〉から〈姐耶反〉に改められているように見える が,その理由は定かでない(「濟」は精母薺韻・精母霽韻二音,「姐」は精母馬韻)。或いは, 現行本『 琳 義』の「濟」は「姐」の 寫・ 刻か。〈姐耶反〉という反切の は『 琳 義』が典型 に 用する反切用字法(河野1955)に っている。

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この〈 謀反〉は宋本『廣韻』および完本王韻(王三)の反切と一致しており,希 は切韻系韻書(孫 『 韻』か)に依據して反切を改めたことが推知される37) 代關中 (秦 )では尤侯韻(相配する上去聲韻を ねる。以下も同樣) 屬の 唇 聲母字の多くが 模韻( 攝)に合流していたため,『 琳 義』では『切韻』を 含む舊來の字書がそれらの字に尤侯韻の を するのをしばしば「吳 」「吳楚之 」 と呼んで排斥して 模韻の で讀むことを是としている38)。上記の竝母尤韻字「罘」 に對する反切〈附無反〉(「無」は 韻字)はそれを反映したものである。ところが, 希 は卻ってこれを んで傳統 な切韻系韻書の反切を 用しているのである39) の例も 體は『 琳 義』の引用であるが,反切は改められている。 (10) 熊羆〈上,羽弓反。『毛詩』云:惟熊惟羆。『說 』云:獸也。似豕,山居 蟄, 舐足掌。其掌[似人掌,名曰 ]40)。 , 煩。下, 悲。 』云:羆,如 熊,黃白 。郭璞曰:似熊,長頭高脚,猛㺖多力,能拔樹木也。〉 〔『希 義』卷1「『大乘理趣六波羅蜜多經』卷第一」(一 07)〕 (11) 熊羆〈上,許窮反。『毛詩』:惟熊惟羆。『說 』:獸也。似豕,山居 蟄,舐足 掌。其掌似人名掌[掌,名]41) 曰 。 , 煩。下羆, 悲。 :羆,似 熊而黃白色。郭璞曰:似熊而大,頭長脚高,猛憨多力,能拔樹木也。〉 〔『 琳 義』卷41「『大乘理趣六波羅蜜多經』卷第一」(四一 09)〕 37) なお,切三・王一は〈 謀反〉,王二は〈 謀反〉。大徐本『說 』では〈 牟切〉とあり, その 據する孫 『 韻』ではそうであったらしい。そのほか,『玉 』は『萬象名義』が 〈扶流反〉,宋本『玉 』が〈 牟切〉となっている。 38) 例えば,「 囊〈附無反。『玉 』 扶尤反,陸法言 謀反。下二,皆吳楚之 也。今竝 不取。〉」〔〇七32〕。ただし,こうした 記は一貫しておらず,『 琳 義』には一方で舊 來の 切をそのまま用いた箇 も混在している(上田1983)。 39) 希 の現實の 韻體系において「罘」字がどう讀まれたかは定かでない。 代石刻 中の 韻 では輕唇 尤韻去聲字「副」「富」が尤侯韻上去聲字「遘」「 」「宥」「獸」「竇」「胄」 「 」「彀」「陋」「秀」「後」「廐」「晝」「壽」「岫」「朽」と押韻した例(『蕭德溫墓誌銘』 1075 年 )があるが, 丹 字 料では「副」「富」は puu(または fuu)と表記されるよ うに 攝に合流している。他の 韻特徵に關しても 語 色 の强い墓誌銘等の韻 料 と口語 色 の强い對 料とでは相 が見られるため, 代には複數 の 語 が存在 したと推定されるが,この場合に「副」「富」が尤侯韻字と押韻するのは,輕唇 尤韻 が 代の讀書 では流攝に留まっていたためという說 だけでなく,現實の語 を無 し て傳統 な韻書の枠組みに從って押韻されたためという說 も可能であろう。それゆえ, 「罘」字の反切を〈附無反〉から〈 謀反〉に改めたことによって 代 に う とな っているのか否かは決しがたい。 40) 原 では脫字があると考えられるため,『 琳 義』の對應箇 に基づき補う。 41) 原 では「掌」と「名」を轉倒しているが, および同 を引く『 琳 義』の他箇 〔七〇26 ほか〕により改める。

(21)

『希 義』の〈羽弓反〉は宋本『廣韻』および大徐本『說 』の反切に一致して おり,やはり孫 『 韻』系韻書の反切を 用したものと推定される42) 東韻拗 の「熊」「雄」2 字は切韻系韻書の 韻體系では于母であり,一般に于母に 對應する現代官話方言の聲母はゼロ聲母であるが,「熊」「雄」2字に限っては例外 に(匣母や曉母に對應するところの)ɕ-(< *x-)が對應する。これに呼應して『 琳 義』も「熊」には〈畫窮反〉〔一一09〕のように匣母字や,上記の〈許窮反〉のよう に曉母字の反切上字を用いているが43),希 はこれを 用せず,わざわざ切韻系韻書 に據って于母字を上字とする〈羽弓反〉に改めているのである44) ここに,希 の の基本 勢を見ることができる。すなわち,切韻系韻書である 孫 『 韻』とそれ以外の諸書とで に⻝い いがある場合には, を優先させ るという「切韻至上 義」とも言うべき 勢である。このように希 は引用する に對して一定の注 を拂って手を加えてはいるが,その目 は を現實にではなく 規範に合わせるためであったとみるべきであろう。 六 以上檢討してきたように,( 査範圍から 衍する限り)『希 義』 のほとん どは希 が參照しえた諸典 の現行テキストや佚 ・斷簡の中に用字の一致する を見出すことができる。このことから,『希 義』 は先行する諸典 ,とりわけ 『切韻』の流れを む孫 『 韻』系統の韻書と『 琳 義』の兩書を參照して附さ れたもので,希 自身が新作したものではないと推定される。もっとも,反切を新作 せず先行書のそれを用いたとしても,當代の 韻に 合するもののみを 擇 に 用 すれば,その反切は當代の 韻を反映することになるので,反切の襲用は卽ち當代の 韻 料としての 格喪失を 味するわけではない。しかしながら,『希 義』の場 合は,そうした方向で反切の 擇を行なっているようにはどうも見えない45)。むしろ, 42) なお,切二・王二・王三は〈羽 反〉。『玉 』では『萬象名義』が〈胡 反〉(〈胡宮反〉 の か),宋本『玉 』が〈于弓切〉である。 43) また「熊」に對して「 雄」とも記すので,「雄」も「熊」と同 であったことが かる。 44) 丹 字 料では「雄」をkiwŋgʷと表記しており, 代 (口語 ?)ではゼロ聲母では なく舌背 聲母を したことが かる(契丹語 料では 語の舌背 擦 x-(曉匣母)も 氣舌背破裂 k-(溪母と 聲群母)も拗 では 別なく契丹語k-として 容され る)。ただし,讀書 ではゼロ聲母であったという可能性も否定できないから,〈羽弓反〉 が 代 に卽した になっていないとは言い切れない。 45) これは 代の讀書 がどのようなものであったかが らかでない以上確實なことが言え ないのだが,例えば反切上字として重唇 と輕唇 を 別しないことなど,古風な特徵を 示す反切までも切韻系韻書のものを襲用している(例えば「弼」〈房密反〉〔二15〕:蔣本・

(22)

希 が 重するのは傳統 な切韻 (ただしそれは孫 『 韻』系統のもの)である。 以上の點から,『希 義』 の 代 語 硏究における 料價値は極めて限定 で あると結論づけなければならない46) 參考 獻 神尾弌春(1937)『 丹佛敎 考』大 :滿洲 協會(東京:第一書 ,1982 年 復刻). 河野六郞(1955)「 琳衆經 義の反切の特色」『中國 硏究會會報』5(1)(『河野六 郞 作集』第2 卷,261‒266,東京: 凡 ,1979 年). 河野六郞(1979)『 料 韻表』河野六郞 作集 第 2 卷 別册,東京: 凡 . 切 しのぶ(2004)「『續一切經 義』における希 切の考察」『九州中國學會報』42: 1‒15. 中村 之(1991)「孫 『 韻』について」『富山大學人 學部紀 』17: 151‒168. 聶鴻 (2001)「黑城 出《續一切經 義》殘片考」『北方 物』2001(1): 95‒96. 坂井 一(1955)「希 《續一切經 義》反切攷―陽韻尾 について―」『中國 硏究會會報』5(1)(『中國語學硏究』376‒394,東京: 古書院,1995 年). 高田時雄(2010)「藏經 義の敦煌吐魯番本と高麗藏」『敦煌寫本硏究年報』4: 1‒13. 上田正(1956)「東宮切韻論考」『國語學』24: 79‒94. 上田正〔 〕(1973)『切韻殘卷諸本補正』東洋學 獻センター叢刊第19 輯,東京:東 京大學東洋 硏究 附屬東洋學 獻センター刊行委員會. 上田正(1975)『切韻諸本反切總覽』京都:均 . 上田正(1983)「 琳 論考」『日本中國學會報』35: 167‒176. 上田正(1986)『希 反切總覽』神戶(私家版). 大徐本・宋本同)ことからこのように臆測される。 46) 本 で論じてきたように『希 義』 に系統 に 代 が反映していることは めな いが,個別事例において 代 の手がかりを得られる可能性はある。例えば,『希 義』 「鳳凰」項〔一08〕は『 琳 義』「鳳凰」項〔四一 11〕の上字に對する反切〈馮諷反〉 を〈馮貢反〉に改めているが,この反切は切韻諸本(王一・王二・王三・大徐本・宋本) と一致するから,切韻系韻書に依據して改めたことが推定される。「鳳」と「諷」は東韻拗 ,「貢」は東韻直 であるが,輕唇 では拗介 の脫落により直 が生じたから, 一見すると「諷」と「貢」は同韻字となっていて〈馮諷反〉から〈馮貢反〉への書き換え は何の變 も ぼさないように思われる。しかし,例えば 鮮 字 では「諷」puŋ に對 して「貢」goŋ,「鳳」boŋ であり(河野(1979)に據り,訓民正 は 字して示す),「諷」 は「貢」とも「鳳」とも韻を異にする。希 がわざわざ書き換えを行なっていることから すると, 代 でも「諷」と「貢」は同韻でなかった可能性が考えられよう(「鳳」と「貢」 が同韻であったとまでは言えないが)。

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王國維(1923)「書吳縣蔣氏藏 寫本 韻後」『觀堂集林』卷第八,10‒14,烏 :密韻 樓. 王國維(1927)「書式古堂書畫彙考 錄 韻後」『觀堂集林』增訂再版,卷第八,9‒10 (『 甯王忠愨 書』初集). 徐 東(2012)『蔣藏本《 韻》硏究』北京:北京大學出版 . 徐時儀(2002)「《希 義》引《廣韻》考」『 獻』2002(1): 24‒35. 謨(1948)「 本說 與說 舊 」『中央硏究院歷 語言硏究 集刊』20(上): 107‒ 130(『問學集』下册,723‒759,北京:中華書局,1966 年). ※本稿は JSPS 科硏費(特別硏究員奬勵費 17J04094)の助 を けた硏究 果の一部 である。

参照

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