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食と放射能に関する説明会 ( 塙工業高等学校 ) 放射線 放射性物質と健康影響 田内広 ( 茨城大学理学部生物科学コース担当 ) 1. はじめにレントゲン博士が X 線を発見してから 120 年が経ちました ( ちなみに キュリー夫妻による放射性同位元素ラジウムの発見はレントゲン

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食と放射能に関する説明会 (塙工業高等学校) 2016.1.28

放射線・放射性物質と健康影響

田内 広(茨城大学理学部

生物科学コース担当

1.はじめに

レントゲン博士が X 線を発見してから 120 年が経ちました(ちなみに、キュリー夫妻による 放射性同位元素ラジウムの発見はレントゲンの 3 年後です)。この間、広島・長崎の原爆、地 上核実験、第五福竜丸事件、チェルノブイリ事故、JCO 事故など、多くの放射線被ばくが生み 出されてきました。2011 年 3 月に起きた福島第一原子力発電所事故で、私たち日本人は再び放 射性物質による汚染に直面しています。大量の放射線に被ばくすれば確実に「がん」の発症頻 度が上昇しますが、全員が「がん」になる訳ではありませんし、たとえ人工の放射線被ばくが なくても私たちは「放射線・放射能ゼロ」で暮らすことはできません。この講演では、そのこ とをご理解いただくために、放射線の基礎に続いて人体に与える影響の概要を紹介します。本 日のお話しが、「放射線と科学的に向き合う」きっかけになれば幸いです。

2.放射線に関する基礎事項

放射性物質、放射線、放射能

放射性物質(放射性同位元素) とは、同じ元素でありながら、原子 核の構成(主に中性子の数)が異 なるために、エネルギーを放出し て安定な状態に変化する性質を 持っている原子です。その時に放 出されるエネルギー(光の一種) や粒子が放射線です。

放射線の量について

物理的な放射線量の単位はエネルギーに基づいたグレイ(Gy) 1 Gy= 1 J/kg :1 kg の物質に 1 J(ジュール)のエネルギーを与える放射線量 1 cal = 4.2 J なので、1グレイは約 0.24 cal/kg とも言えます。 放射線防護で用いられる放射線被ばくの単位:シーベルト(Sv)とは? 「シーベルト(Sv)」は生体影響を考慮して換算する値で、単なる物理的な放射線量ではあり ません。放射線の人体影響は、放射線の種類や対象とする影響、さらには年齢などによって 異なるので、グレイ(Gy)では、被ばくによるリスクを一目で判断することができません。 そこで、あらかじめ人体影響の違い(致死がんになるリスクを中心に)を見積もって換算す るようにしたのがシーベルトです。なお、シーベルトには「実効線量」「等価線量」「1cm 線 量当量」などがあり、評価範囲が異なります。どのシーベルトなのか知ることも大切です。 ホタルに例えると・・・

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内部被ばくの場合:摂取したベクレルからシーベルトを計算します。換算に用いる「実効線量 係数」には、年齢などによる体内への滞留時間や影響の違いが加味されています。 外部被ばくの場合:グレイ(Gy)で求められる放射線量に、放射線の種類や被ばく形態による換 算係数を掛けてシーベルトにします。ガンマ線:1Gy=ほぼ1Sv 体内に取り込まれた放射性セシウムはどのくらいとどまるのか? EC SAGE project 2007 線量と線量率 「線量率」は、一定時間あたりの被ばく量を指します。単に「線量」というと、そこには時間 の要因は入っていません。しかし、生物影響は時間あたりの量で大きく変化します。1 年分の 風邪薬を一気に飲むと命が危なくなるのと同じで、放射線の線量は同じでも線量率によって影 響は大きく変わるのです。 自然の放射線・放射性物質 日本人は1年間に約 2.1 ミリシーベルトの自然放射線を浴びています(世界平均の 2.4 ミリシ ーベルトよりやや少ない)。自然の放射性物質による内部被ばくもあります。なかでも放射性 カリウム(K-40)は、成人男子の体内に約 4,000 ベクレル存在していて、そこから年間 0.18 ミリシーベルトの被ばくを受けています。ちなみに、放射性セシウムは放射性カリウムと良く 内部被ばく(預託実効線量)の計算式: (内部被ばく量)= (摂取したベクレル数)×(実効線量係数) 放射性セシウムの実効線量係数(経口摂取) (マイクロシーベルト/ベクレル) !"#$%&'(! !"#$%&')! *+,'-./! 0102&! 01023! 4+,&567/! 010&2! 010&3! 89,2%(5/! 0100:3! 010&'! ;<! 010&'! 010&:! [計算例] 3,400ベクレル/kg の和牛ステーキ200g を食べ た場合の被ばく量 (セシウム 137 のみの場合) 成人 3,400×200/1,000×0.013 = 8.9 マイクロシーベルト 乳児 3,400×200/1,000×0.021=14.3 マイクロシーベルト (セシウム 134 とセシウム 137 が半分ずつならば 成人 10.9、乳児 16.0 になります) !"#"""!"#$%&'()$!%&*+,-./%01%234567%89! 0 1 % 2 3 :;;' ! " # $! <=! >?@A%"BC! D(EF' G(DHF' DD(DEF' IJ!

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3.細胞と遺伝子

生物の基本単位は細胞です。ヒトの身体は、約 60 兆個の細胞から構成されており、赤血球 を除く全ての細胞が生命の設計図である遺伝子を持っています。遺伝子の本体はデオキシリ ボ核酸(DNA)です。DNA は長い鎖状分子2本から成る、太さわずか 2 nm(ナノメートル)の 二重らせん型をした生体高分子化合物です。直径が 10 から 30 マイクロメートルのヒト細胞 には、延べ 1.8 m もの長さの DNA が含まれています。その長い二重らせん分子には、情報と なる「遺伝暗号」が記録されています。DNA の遺伝情報は、アデニン(A)、グアニン(G)、 シトシン(C)、チミン(T)という 4 種類の塩基で表され、A と T、G と C という組み合わせ で対合することで、二重らせん構造が保たれると同時に、情報の複製を可能にしています。 DNA は、ヒストンと呼ばれるタンパク質と結合して「クロマチン(染色糸)」と呼ばれる構造 をとってコンパクトに折りたたまれ、細胞核の中に収納されています。クロマチンを構成し ている DNA は設計図のマスターコピーですので、遺伝子を利用して「製品」を作る(これを 「遺伝子の発現」といいます)時には、DNA の情報がもう一つの核酸であるリボ核酸(RNA) に転写されます。RNA に転写された情報をもとにして、アミノ酸を材料に、製品であるタン パク質(酵素や身体の成分)が合成されます。 わたしたちの身体を構成する細胞の一つ一つが、ヒト全体を作るのに必要な約 23,000 種類 の遺伝子全て(1セット分をゲノムと呼びます)を含む、約 30 億塩基対の DNA を2セット(合 計 60 億塩基対)持っているわけですが、それぞれの細胞がどの遺伝子を使うかは、細胞の状 況や分化の状態によって厳密に制御されています。そのため、身体を構成する分化した細胞 では、ぜったいに使わない遺伝子がたくさん含まれていることになります。 また、ヒトのDNAには、いわゆる遺伝情報でない部分が多数存在しており、このことによって も遺伝子の変化を少なくする効果があるものと考えられています。

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4.遺伝子(DNA)の損傷とは?

細胞内の DNA には、様々な外的・内的要因によって多数の損傷(=化学的な構造変化)が生 じています。遺伝子の安定性を維持するためには、生じた損傷がすみやかに修復される必要 がありますから、細胞にはそのような遺伝子の損傷に対応する仕組みが備わっています。特 に、細胞増殖をおこなう周期のなかで、細胞分裂をしている時期以外には DNA 損傷修復を行 う複数の経路が機能していることがわかっています。 放射線によって DNA に何が起こるのか? 細胞における放射線の主な「標的」は DNA と考えられています。放射線は「遺伝子損傷の デパート」であり、実際、放射線に被ばくした細胞の遺伝子 DNA には、塩基損傷、一本鎖切 断、二本鎖切断と呼ばれる多くの種類の DNA 損傷が生じます。その中でも、DNA の切断(DNA 二重鎖切断)は、修復に手間がかかり重篤な損傷であるといわれます。しかし、これらの損 傷出さえも、その大半はすみやかに修復されています。ただし、短時間に多数の損傷が生じ てしまうと、一部は元通りに修復できないという事態が生じてしまい、細胞の致死による組 織異常などをもたらします。また、少数の傷であってもまれに修復に失敗することがあり、 それらは遺伝子の突然変異や発がんにつながる第 1 歩となりますが、遺伝子の異常が残って も、その細胞が「がん」になるにはもっと多くのことが起きる必要があります。 !"#! $%&'! ()#*+!

© Hiroshi Tauchi, Ibaraki Univ. 2002!

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【参考】異常な細胞を排除する生体機構(アポトーシス) 細胞がDNAの損傷を正常に修復できなかった場合、その細胞が体内に残り続ける(あるいは 分裂して増え続ける)ことは、多細胞生物の生体維持に良くない場合の方が多くなります。 このような事態を避けるために、異常に気付いた細胞自身がエネルギーを使って死んでゆく 仕組みがあります。この仕組みをアポトーシス(apoptosis)といい、細胞核の中のDNAが切 断されて凝集し、細胞全体が小胞に分かれて、周囲の細胞やマクロファージなどに貪食され ます。アポトーシスは、異常な細胞を除去して突然変異や発がんなどを抑える重要な経路の 1つですが、もともとは受精卵から生物の身体が作られるときや普段の新陳代謝に必要な経 路として備わったものなのです。

5.放射線の人体影響

放射線被ばくで起きる影響には、比較的短い時間で症状が現れる急性障害と、何年も経って 影響が現れる晩発障害があります。人が死んだり、皮膚が火傷のような症状になったり、髪 の毛が抜けるのは急性障害で、一般的に大量被ばくした時にだけ現れます。晩発障害には、 がんの発症や白内障があります。 晩発障害:放射線を被ばくした後、数年から数十年後にあらわれる障害 (1)白内障:眼の水晶体が放射線被ばくによって混濁を生じる。しきい値があり、X線の1 回急性照射で 0.5〜2Gy 以上、潜伏期は 2〜3 年とされる。 (2)放射線発がん:放射線の被ばくにより、白血病(慢性リンパ性白血病を除く)、肺がん、 甲状腺がん、乳がんなどがひきおこされます。しかし、被ばくしたら必ずがんに なるのではなく、がんを発症する確率が高くなるのです。 確率的影響と確定的影響 放射線防護の立場では、放射線による障害を2 つに大別して考えます。ひとつは確定的影響で、 ある線量(「しきい値」と呼びます)を越えないと 障害が現れず、しきい値を越えると線量の増加に 応じてその障害の激しさが増すというものです。 白内障や皮膚障害、胎児の異常などはこの例です。 一方、影響の発生にしきい値がなく、線量の増大 につれてその影響の発生する確率だけが増すとい うものを確率的影響と呼び、発がんと遺伝的影響 が含まれます。被ばくが少ないときに問題になる のは確率的影響で、放射線の安全管理では、ごく 微量の被ばくでも発がんが増えると仮定して(下 図の直線仮説で)基準が作られています。しかし、 実際に報告されている多くの大規模調査や実験デ ータからは、急性被ばくで 100mSv(mGy)を下回 る被ばくでは、発がん頻度は自然発生頻度のゆら 確定的影響のしきい値の例 (急性被ばく) リンパ球の減少: 100〜250 mSv 胎児の異常: 100mSv 確率的影響と放射線被ばく !"#Gy$! 0! %&'()*+,-./! )*012345 678!"9! #:;+<=>?3$! @ABCDEF!"GHI! !"#Gy$! 0! %&'()* +,-./! ' ( ) * ' ( ) * !! "! #! $! !JKLM% "JN!OM% #JPQ8;RSM% $JTUVWXM!

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胎児の被ばく影響 胎児に対する影響は妊娠中の被ばくでなければ起きません。また、ある線量(しきい値)を越えな ければ放射線の影響は生じません。 胎児への放射線の影響は、被ばくした胎児の発達段階と密接に関連しています。 (a)着床前の被ばく:着床以前(受精後 8 日程度まで)の胚は放射線に弱く、X 線 50〜250mGy で障害を受けます。障害を受けた胚は死亡しますが、生き残った胚は正常です。 (b)器官形成期(受精後 2〜6 週)の被ばく:この時期に被ばくすると奇形になることがあり ます。そのしきい値は、X 線で 100mGy 程度です。 (c)胎児期の被ばく:脳の発達時期でもあるので、3〜12 週で被ばくすると小頭症、8〜15 週 で被ばくすると大脳皮質の形成障害(精神遅滞)が起こることがあります。しかし、こ れにも X 線で 200mGy 程度のしきい値があります。 遺伝性影響とは? 放射線被ばくによって生殖細胞に突然変異などが起き、それが子孫に伝わる場合があるか もしれません。ヒトでは、自然発生する突然変異率を2倍にする線量は 0.5〜2.5Gy と推定 されていますが、これは仮定であり、3世代以上にわたる原爆被爆者の健康調査でも、実 際にヒトで確認された遺伝的影響はありません。 内部被ばくの生体影響

放射線被ばくの中でも放射性物質を体内に取り込む内部被ばくは、ある一定の時間、組織 の細胞が直接放射線被ばくし続けるという点で外部被ばくと異なる特徴があります。また、 外部被ばくではほとんど問題にならないアルファ線や弱いベータ線を放出する放射性物質も、 内部被ばくでは考慮する必要があります。特に、特定の臓器に蓄積する化学的性質をもった 放射性物質による内部被ばくには注意が必要になります。しかし、「放射線の影響」という観 点から見ると、どんな生体影響も被ばく量で頻度や症状が決まるものであり、「内部被ばくで あるか、外部被ばくであるか」とか、「放射性物質が天然のものか、人工のものか」は関係あ りません。つまり、どんな被ばくであっても被ばく量が多ければ影響が現れますし、被ばく 量が少なければ放射線の影響は見えないレベルでしかないということです。

6.がん細胞と発がん

「がん(癌)」とは、何らかの原因で正常な組織の中から時間をかけて出現する異常な細胞 集団です。その細胞には、次のような生物学的な特徴があります。 1.増殖能力が高い

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2.無限に増殖できる(正常な身体の細胞には寿命があります) 3.形態的に未分化なものが多い 4.周囲の細胞とコミュニケーションしない傾向が強い そのために、際限なく増殖し続け、周囲の組織に入り込む(浸潤、転移)こともある。 もし、放射線などによって遺伝子に損傷を受け、異常を持った細胞が生き残ると「がん細胞」 になる可能性があります。しかし、「遺伝子の異常=発がん」ではありません。「がん細胞」に なるには、さらに多くの変化(それぞれは滅多に起きない)が蓄積する必要があります。 なお、ここで言う「遺伝子の異常」は、遺伝子自体の変化のみではなく、遺伝子のスイッチ の入れ方の変化も含んでいます。細胞の「がん化」とは、増殖制御の異常であることから、遺 伝子の変化はこのステップのほんの一部であり、むしろ遺伝子のスイッチの制御(エピジェネ ティックな制御といいます)が重要であることがわかりつつあります。

7.「発がんリスク・がん死亡リスク」が意味するものは?

短時間に数千mSvというような大量の放射線被ばくを受けると発がん頻度は明らかに上昇し ます。一方で、放射線が原因で起きた「がん」と、自然に起きた「がん」は今の科学では区別 できません。そのため、放射線が「がん」を引き起こしたかどうかは頻度で考えるしかありま せん。急性被ばくでも100mSvを下回ると、放射線によって「がん」が増えたかどうかわからな くなります(自然の発症頻度との差が見いだせなくなる)。ただし、安全を考える放射線防護 では、急性大量被ばくでの増加割合から推定し、「100mSvの被ばくにより生涯でがんになって 死ぬ人が0.5%増える」と仮定しています。 また、「年間1mSv」という一般公 衆の被ばく限度は、「余分な被ばく を自然レベルに抑えなさい」とい う社会規範としての基準であり、 危険と安全の境界ではありません。 「発がんリスク」のリスクとは 「確率」を意味する言葉であり、 対象は集団であって、個人ではあ りません。また、確率は「絶対に その割合になる」という意味でも 「がん」ができるまでに必要な変化 1. 遺伝子の変異(DNA の情報が変化する) 遺伝子の働きを正常に保つのに重要なタンパク質の設計図(遺伝子)に変異が起きる。 遺伝子を守る(制御する)遺伝子の変異は、時として重大な影響を与える 2. 細胞の増殖能力が高まる(増殖制御の異常) 3. 細胞の寿命が延びる(無限の増殖能力を獲得する) 4. 周囲の監視機構:免疫機構(異物や異常な細胞を排除する機構)から逃れる !"#$%$&'! ()*+,-! ./012*34! 567/$&89:" ;<=>?@! EFGHIJ! KLMN! OPQ;RSTU,@! VWXYZ[X/U,! 5\U,! ]^! _`abcd! MNeJ! fghYijh;kl@! mnopqYrsn! Z#X/my-z{! |}~! ÄÅ! IJÇ)É!

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8.飲食物等の摂取基準の考え方

国際放射線防護委員会(ICRP)は、一般公衆の年間被ばく限度(自然の被ばくと医療被ばくを除く、 追加的な被ばく)を年間 1 ミリシーベルトと勧告しています。福島原発事故以前は国内の食品に関す る明確な基準はありませんでしたが、事故直後に暫定基準値として年間 5 ミリシーベルト未満を担保 する濃度が提示され(事故時の規制としては厳しいランク)、その翌年からは、平常時の基準として年 間 1 ミリシーベルトを担保する濃度となっています。その考え方ですが、流通食品の半分が限度ぎり ぎりの汚染があると仮定して、年齢ごとに年間 1 ミリシーベルトとなる汚染濃度を計算すると次頁の表 のようになります。アンダーラインの値が基準となり、その値を丸めて基準値が決められています。な お、牛乳と乳製品は乳幼児の被ばくをさらに抑える(流通品の 100%が基準値レベルの場合も担保 する)という目的で、一般食品の半分に設定されています。さらに飲料水については、世界保健機関 (WHO)のガイダンス基準を採用して 10 ベクレル/kg(年間 1 ミリシーベルトよりはるかに低い値)にな っています。 現在の基準値は放射性セシウムで計算されていますが、実際には他の人工放射性物質も含んだ 上での基準値となっています。というのは、平常時において他の人工放射性物質は放射性セシウム よりも存在比が小さいため、量が多く検出もしやすい放射性セシウムで制限すれば、その他も十分制 限可能であるという判断からです。実は、日本のように、食品を全て「ひとまとめ」にして規制値をかけ ている国の例は少なく、多くの国や地域では摂取量に応じて飲食物をグループ分けして定められて います。 一般食品(野菜・穀物・肉魚類)の年間摂取で 1 ミリシーベルトとなる限度 食品中の放射能測定における「検出限界」とは? 実際の放射性物質は均一に変化(「壊変」と言います)しているのではなく、バラバラに 壊変して放射線を出しています。従って、放射能は 1 秒あたりの壊変数の平均であって、 実際の壊変数は瞬間ごとにばらついているのです。 実際の測定で、「絶対にある」と言えるためには、その壊変のばらつきを考慮しても、「含 まれている」といえる壊変数(放射能)以上であることが必要です。例えば、たくさんの 石ころの中に「宝石がある」と言うためには、宝石の割合がある一定以上でないと見つけ るのが難しいのはもちろん、探す人の判別能力や探す時間・範囲、類似物の混入などが影 響します。これと同じように、放射能の検出限界は、測定器の能力、測定時間、他の放射 性物質の量、試料全体の量などによって変わるのです。

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9.おわりに

生体内では、たった1つの DNA 損傷に対して、修復に関わるタンパク質分子が何百、何千個 (場合によってはそれを超える数で)も集合し、さらに多数のタンパク質が役割分担して生体 の応答反応を支えています。「修復する」ということだけを考えれば、ほんの数個のタンパク 質分子が損傷部位にやってくれば十分なはずです。にもかかわらず、一見、無駄に思えるほど の多くの分子が普段から存在していて、損傷に集まるということは、どんな想定外の事態にも 最善の方法で対応し、コストは度外視で重要な遺伝情報や個体をまもろうとする、究極の品質 管理システムとも言えます。しかも、修復に関わるタンパク質分子は危機対応のためだけにい るのではなく、普段は別の生体反応に機能するといった柔軟性も備えています。生物が、さま ざまな危機を乗り越えて 36 億年もの間にわたって地球上で生命をつなぐことができたのは、 このような多機能・柔軟・確実な分子群の働き(の進化)によるものです。 私たちの生活にはさまざまなリスク要因があります。とりわけ「がん」に関しては、多くの リスク因子が複雑に作用しあって生涯の発がん頻度に影響しています。ですから、一つのリス ク因子にとらわれすぎて、他のもっと大きなリスク因子を見逃すことのないようにしたいもの です。先が見えない事態に直面した時、ただ心配して「やみくもに」対処するのではなく、情 報を入手して整理し、「今あるリスク」と「それを避ける行動によるリスク」を比べて、リス クが低い選択(なによりも納得できる選択)をとれるかどうかが、未来を大きく左右します。 リスクを適切に判断するには、科学的事実を集め(提供し)、それに基づいて論理的・客観的 かつ冷静に自身で考えることが重要であると思います。 マニュアル化された効率主義がますます広がり、人員削減も進んで、最少人数・低コストで やり繰りしようという現代社会では、「もっと人が配置されていれば、もっと安全コストが投 資されていれば、防ぐことができたで あろう」事故や事件が増えているよう な気がします。人間社会も効率だけを 追い求めるのではなく、細胞の中にあ る柔軟かつ確実な危機管理システム に学ぶべきところが多々あると思う のは私だけでしょうか。

もっと深く知るために(参考文献) 1.放射線と生体影響に関して (ぜひ参考にしていただきたい本です)

「本当のところを教えて!放射線のリスク」 −放射線影響研究者からのメッセージ− 日本放射線影響学会 編 医療科学社 (2015 年 2 月刊) 2.放射線に関して 「やさしい放射線とアイソトープ」 日本アイソトープ協会 編 丸善 放射線の生体影響に関する疑問や質問がある場合は

日本放射線影響学会 Q&A 対応グループ (「日本放射線影響学会」で 検索 )

放射性物質と向き合うには ・ 土は食べない (放射性セシウムは土壌に結合している) ・ 野菜類(特に根菜)は表面を良く洗う ・ 野生きのこ、山菜、野生動物の肉は要注意(不安なら測定) ・ お店で売られている水産物は検査済み(検出限界以下か、 あってもわずか) 生産者は: 可能なかぎり、測定して情報を公開する 消費者は: 「検出されたかどうか」ではなく、レベルで判断する

参照

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