防災科学技術研究所主要災害調査 第55 号 2019 年 10 月 * 国立研究開発法人 防災科学技術研究所 地震津波火山ネットワークセンター
防災科学技術研究所陸海統合地震津波火山観測網
(
MOWLAS)が捉えた
平成
30 年北海道胆振東部地震
-観測記録・解析結果・臨時観測- 松原 誠*・田中佐千子*・鈴木 亘*・ヤノエリザベストモコ*・ 上野友岳*・木村武志*The 2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake Observed by NIED MOWLAS
Seismograms, analysis, and temporal observation-Makoto MATSUBARA, Sachiko TANAKA, Wataru SUZUKI, Tomoko Elizabeth YANO, Tomotake UENO, and Takeshi KIMURA
*Network Center for Earthquake, Tsunami and Volcano,
National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience, Japan
Abstract
The 2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake hit central Hokkaido on September 6, 2018 and had a maximum seismic intensity of 7 in Atsuma town. The earthquake caused a blackout in all of Hokkaido for multiple days affecting the real-time transmission of seismic waveform data to the NIED MOWLAS. Before the mainshock, there was few seismicity at depths of 25-50 km. The NIED Hi-net depth for the mainshock was 36 km. Initial aftershocks locations identified an approximately 40 km long, north-south striking plane that dips steeply to the east. The focal mechanisms indicated that the mainshock was reverse faulting with a maximum principal stress of NE-SW, or the fault was strike-slip. The NIED F-net determined a reverse-faulting moment tensor with a maximum principal stress in the ENE-WSW direction. The aftershocks had both reverse and strike-slip mechanisms across the area. Using the Double-Difference method with waveform correlation, the relocated aftershocks lay on a plane with strike of N10°E. The depth of the mainshock based on the standard three-dimensional seismic velocity structure was resolved to be at 34 km. The average depth of aftershocks was approximately 4 km shallower than the Hi-net routine hypocenters where the P-wave velocity is lower than 7.5 km/s. Large accelerations were observed around the epicenter and northern region. The maximum acceleration was 1,796 gal recorded at HKD127 station, and accelerations larger than 500 gal were recorded at 11 stations. NIED deployed one temporary seismic station in Atsuma town for approximately two months. These data were used in the Hi-net routine procedure and in the analysis of urgent aftershock observations collected by Hokkaido University.
Key words: The 2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake, The NIED MOWLAS, Aftershock Hypocenter
1. はじめに 2018 年 9 月 6 日夜明け前の 3 時 07 分に MJMA6.7 の北海道胆振東部地震が発生し,厚真町で震度7 を 観測した.北海道は日高山脈付近を境に東部の北米 プレートと西部のユーラシアプレートの衝突域に存 在している.さらに,これらの陸側プレートの下に は南東から海洋プレートである太平洋プレートが沈 み込んでいる.沈み込む海洋プレートにより陸側プ レートが押され,北海道東部から南の日本列島は東 西方向に圧縮場となっている. この地震により,2019 年 1 月 28 日 17 時現在で は死者42 人,重軽傷者 762 人,住家では全壊 462 棟, 半 壊1,570 棟等の多くの被害が発生した.ま た,厚真町,日高町,札幌市,苫小牧市等では液状 化の被害が発生すると共に,震央付近の厚真町では 多くの土砂災害も引き起こした.地震発生後しばら く経過してからは北海道全域が停電したこと等によ り農水産業や工業等の経済的な被害も広範囲にわた ることになった.この停電は,防災科学技術研究所 (防災科研)が運用する陸海統合地震津波火山観測網 (MOWLAS)にも観測データが即時に送られてこな い等の大きな影響を及ぼした. ここでは,MOWLAS が捉えたこの地震や余震活 動,その後の解析結果など紹介する.また本震後に 防災科研が震央近傍に設置した臨時観測点について も述べる.なお,解析にはMOWLAS で観測された 記録に加えて,気象庁や北海道大学の観測点で得ら れた波形も用いている. 2. 北海道胆振東部地震前の地震活動 MOWLAS の 1 つである高感度地震観測網(Hi-net) で決められた2000 年 10 月 1 日~ 2018 年 9 月 5 日 までの震源分布を図1 に示す.今回の本震の震源 から北東に約15 km,深さ 27 km の地点で 2017 年 7 月に M5.1 の地震が発生した.しかし,本震の周 囲± 約 10 km の領域では深さ 25 km より深いところ では最大M2.3 の地震を含めて約 18 年間に 14 個と, 地震活動は低調であった.陸域で通常発生する地殻 内の地震は,深さ15 km よりも浅いところで発生す ることが多いが,今回の地震の震源より少し南に位 置する日高地方から浦河沖にかけての地域では,深 さ15 km よりも深い場所で地震が多く発生していた. 3. 観測記録(地震波形) Hi-net の北海道から九州にかけての観測点の中か ら100 観測点を選び,リアルタイムで届いたデータ を北から順に並べた波形を図2 に示す.黒い部分が 大きな振幅の揺れが観測された時間・地域を示す. 9 月 6 日の午前 3 時過ぎに本震の波形が記録されて おり,北海道から九州まで振動が伝わっている様子 が分かる.しかし,その直後からブラックアウトの 影響などにより北海道地方の観測点からの記録が途 図1 北海道胆振東部地震周辺の防災科研 Hi-net による 2000 年 10 月 1 日~ 2018 年9 月 5 日までの震源分布.右上の地 図の破線はプレート境界を示す.青枠 は三次元地震波速度構造により再解析 した領域を示し,破線は図8 の断面図 の位置を示す.
Fig. 1 Hypocenter distribution determined by NIED Hi-net from October 1st, 2000 to September 5th, 2018. Broken lines on upper right panel show the boundary of the plate. Blue square shows the area of analysis with 3D seismic velocity structure and broken lines show the location of the cross section in Fig. 8.
141.0˚ 141.5˚ 142.0˚ 142.5˚ 143.0˚ 42.0˚ 42.5˚ 43.0˚ 43.5˚ 0 50
A
B
C
D
A’
B’
C’
D’
M4
M6
M2
太平洋プレート ユーラシア プレート 北米 プレート 震源の深さ [km] 0 10 20 30 40 50 観測点 活断層防災科学技術研究所陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)が捉えた平成 30 年北海道胆振東部地震-松原ほか
図2 2018 年 9 月 6 日 3 時~ 9 月 9 日 21 時の防災科研 Hi-net の 100 観測点の連続波形画像 Fig. 2 Waveforms recorded at 100 stations of NIED Hi-net from September 6th 3 a.m. to 9th 9 p.m.
図2 2018 年 9 月 6 日 3 時~ 9 月 9 日 21 時の防災科研 Hi-net の 100 観測点の連続波形画像(つづき) Fig. 2 Waveforms recorded at 100 stations of NIED Hi-net from September 6th 3 a.m. to 9th 9 p.m. (continued)
防災科学技術研究所陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)が捉えた平成 30 年北海道胆振東部地震-松原ほか
図2 2018 年 9 月 6 日 3 時~ 9 月 9 日 21 時の防災科研 Hi-net の 100 観測点の連続波形画像(つづき) Fig. 2 Waveforms recorded at 100 stations of NIED Hi-net from September 6th 3 a.m. to 9th 9 p.m. (continued)
図2 2018 年 9 月 6 日 3 時~ 9 月 9 日 21 時の防災科研 Hi-net の 100 観測点の連続波形画像(つづき) Fig. 2 Waveforms recorded at 100 stations of NIED Hi-net from September 6th 3 a.m. to 9th 9 p.m. (continued)
防災科学技術研究所陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)が捉えた平成 30 年北海道胆振東部地震-松原ほか
図2 2018 年 9 月 6 日 3 時~ 9 月 9 日 21 時の防災科研 Hi-net の 100 観測点の連続波形画像(つづき) Fig. 2 Waveforms recorded at 100 stations of NIED Hi-net from September 6th 3 a.m. to 9th 9 p.m. (continued)
切れたため,白くなっている領域が多くなっている. 時間の経過と共に徐々に波形記録が復旧し始め,9 月9 日の 15 時過ぎに,ほぼ復旧したことが分かる. この間にも,多くの余震が発生し,波が伝わる様子 が表示されている.なお,大規模停電期間中の地震 観測データは,後日回収済みである. ○:本震前の震源分布 ○:本震 ○:本震後2019年2月21日の余震前までの震源分布 ○:2019年2月21日の余震 ○:2019年2月21日の余震後の震源分布 0 20 40 60 Depth (km) 0 20 40 60 Distance along Line XX’ (km)
X X′ 0 20 40 60 Depth (km) 0 20 40 60 Distance along Line YY’ (km)
Y Y′
141˚E 141.5˚E 142˚E 142.5˚E 143˚E 42.5˚N
43˚N
20 km
X X′Y
Y′
141˚E 141.5˚E 142˚E 142.5˚E 143˚E 42.5˚N 43˚N M 2.0 4.0 6.0 02/21 21:22:40 M 6.1, H 32km Mw 5.5, h 29km 09/06 03:07:59 M 6.6, H 36km Mw 6.6, h 35km (134, 30, 59) (349, 65, 107)
(strike, dip, rake)
(12, 70, 175) (104, 86, 21) (167, 57, 131) (290, 51, 45)
観測点
活断層
図3 2000 年 10 月 1 日 0 時~ 2019 年 2 月 22 日 8 時の深さ 60 km 以浅の地震の手動検測による震源分布. (上)震央分布.(下)X-X’,Y-Y’の矩形内の震源の深さ分布Fig. 3 Hypocenter distribution manually determined by NIED Hi-net at depths of 0-60 km from October 1st 12 a.m. 2000 to February 22nd 8 a.m. 2019. Upper panel shows the epicenter distribution and lower panels show vertical cross section within the square of the upper panel.
4. 解析結果 4.1 発震機構解 防災科研Hi-net により本震の深さは 36 km に決 められた(図3).また,その後の地震活動は,南北 方向約40 km にわたる高角度の東傾斜の面上に分布 し,深さ30 ~ 45 km 程度のやや深い地震が多いが, 深さ10 ~ 20 km 程度の浅い地震も発生している.
防災科学技術研究所陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)が捉えた平成 30 年北海道胆振東部地震-松原ほか
図4 (上)防災科研 Hi-net による初動解(2018 年 9 月 6 日 3 時~ 11 月 21 日).スコア(岡田,1988)20 以上の 初動解について発震機構解の三角ダイヤグラム(Frohlich,1992)に従い,断層の型毎に色分けして示す. (下)防災科研Hi-net の手動検測による M ≧ 1.5 の地震の初動解に基づく P(左)T(右)軸の分布
Fig. 4 Upper panel shows focal mechanism determined by NIED Hi-net with score larger than or equal to 20 (Okada, 1988) from September 6th 3 a.m. to November 21st, 2018 according to the triangle diagram (Frohlich, 1992). Lower left and right panels show the P and T axis of events with magnitude of 1.5 or larger manually determined by NIED Hi-net, respectively.
09/06 06:11:29 M 5.8
H 45km Mw 5.4h 38km
141.0˚E 141.5˚E 142.0˚E 142.5˚E 143.0˚E 42.5˚N 43.0˚N 20 km
M 2 4 6
N=454 09/30 17:54:04 M 5.5 H 38km Mw 4.9h 26km 10/05 08:58:49 M 5.5 H 32km Mw 5.1h 20km観測点
活断層
42.9˚N 142.0˚E 141.7˚E 42.5˚N 142.0˚E 141.7˚EP
T
Mw 6.6, h 35km (134, 30, 59) (349, 65, 107) (strike, dip, rake)09/06 03:07:59 (12, 70, 175) (104, 86, 21) M 6.6, H 36km (167, 57, 131) (290, 51, 45) Mainshock Hi-net により求められた本震の初動解は,北東- 南西方向に圧縮軸をもつ逆断層型もしくは横ずれ断 層型であり,どちらが適切であるかを決定すること はできなかったが,全体的にP 軸と T 軸はそれぞれ 東西と南北方向に分布している(図4).MOWLAS の1 つである広帯域観測網(F-net)による本震のモー メントテンソル解は東北東-西南西方向に圧縮軸を もつ逆断層型である.また,その後の地震活動は, 逆断層型と横ずれ断層型が混在しており,いずれの タイプの地震も活動域全域にわたって発生している (防災科学技術研究所,2019b). 2019 年 2 月 21 日には,MJMA5.8 の地震が活動域 北部で発生した(図3).この地震の Hi-net による初 動解およびF-net によるモーメントテンソル解は, ともに逆断層型である.この地震直後の約半日間の 地震活動は,水平方向約3 km の範囲内に分布し, 逆断層型と横ずれ断層型が混在している.
4.2 強震動観測 MOWLAS の一部である全国強震観測網(K-NET) および基盤強震観測網(KiK-net)により取得された 三成分合成の最大加速度分布(K-NET 286 点,KiK-net 205 点)を図5 に示す.加速度の大きい領域は震 央周辺から北部にかけて広がっている.震央の北北 西約25 km に位置する K-NET 追分観測点(HKD127) でK-NET,KiK-net 全観測点での最大となる加速度 1,796 gal を記録したほか,11 観測点で 500 gal 以上 の記録が得られた.リアルタイム震度(功刀ほか, 2008,2013)の時間変化を見ると,K-NET 追分観測 点ではP 波到達後約 3.7 秒で 2.5 以上(震度 3 相当) となり,その後約11.4 秒で 4.5 以上(震度 5 弱相当) の強い揺れを示した後,約13.9 秒後に最大値 6.4 に 達した.最大のリアルタイム震度を記録した KiK-net 追分観測点(IBUH01)では,P 波到達の約 3.4 秒 後に2.5 以上,約 9.2 秒後に 4.5 以上となり,約 12.3 秒後に最大値6.7 を記録した.これらの観測点は震 央距離が20 km 以上と震央からやや離れており,P 波到達や震度3 相当の揺れに至ってから激しい揺れ に成長するまでに若干の時間差があったことが分か る. 4.3 Double-Difference 法(DD 法)により再決定した 震源分布 本震周辺の地震活動についてHi-net ルーチン震源 を初期震源とし,ルーチン震源決定に使用されてい る速度構造(鵜川ほか,1984)を用いて波形相関デー タを用いたDD 法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)に よる精密震源再決定を行った.余震活動は主として 東傾斜の面状に分布し,本震を含む10 km 以内の領 域で活発である(図6).防災科研 Hi-net 初動解のう ち横ずれ断層型の走向(12.2º)と地震活動からみた走 向(10º)は概ね一致している(図7)(防災科学技術研 究所,2019a).2019 年 2 月 21 日 21 時 22 分頃に発 生した胆振地方中東部の地震は本震の余震域北部に 位置する.本震は余震域北部の比較的余震活動が低 調な領域で発生した.その後,22 日 8 時までの地震 活動は水平方向約3 km の範囲内に分布し,本震の 走向と概ね一致する.メカニズム解は逆断層型と横 ずれ断層型が混在している. 4.4 三次元地震波速度構造を用いて再決定した震源分布 震源の深さは気象庁では37 km,防災科研 Hi-net では36 km と決められ,内陸の地震としては深い ところで発生した.その後も多くの余震が観測され た.2018 年 10 月 17 日までに防災科研の Hi-net に より検出された手動検測された地震を,防災科研の 日本列島下の三次元地震波速度標準モデルの構造 (Matsubara et al., 2017)を用いて再決定した(図 8). 三次元地震波速度構造を用いることにより,本震の 深さは約2 km 浅くなり,余震の深さは平均で深さ は4 km 程度浅く再決定され,余震は概ね P 波速度 が7.5 km/s よりも遅い領域で発生していることが分 かった(防災科学技術研究所,2019c). 5. 臨時観測 北海道胆振東部地震の余震記録から,震源域の南 端にはHi-net 観測点が設置されているが震源域の 中心付近には観測点がないことが分かっていた.ま た,大規模停電のため,Hi-net 観測点の電源確保が 困難になり余震の記録が途絶える可能性もあった. そこで,震源域周辺の地震データを確実に取得する ため,震源域の中心付近に地震観測点を設置するこ とにした.新千歳空港の被災による航空機の欠航の ため,つくば市から八戸市まで電車を利用し,八戸 市でレンタカーを借りて八戸-苫小牧間のフェリー 140˚ 145˚ 35˚ 40˚ 45˚ 140˚ 145˚ 35˚ 40˚ 45˚ 100 101 102 103 0.2 0.5 1.0 2.0 5.0 10.0 20.0 50.0 100.0 200.0 500.0 1000.0 2000.0 PGA [gal]
K−NET KiK−net Epicenter(JMA)
図5 防災科研 K-NET,KiK-net で観測された最大 加速度分布(三成分合成)
Fig. 5 Distribution of peak ground acceleration observed by NIED K-NET and KiK-net.
防災科学技術研究所陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)が捉えた平成 30 年北海道胆振東部地震-松原ほか を利用して震源域へ到達した.また,途中の八戸市 では電車への持ち込みが難しい観測機材類(バッテ リや大きな観測箱など)や被災地での食料を調達し た.現地到達後,震源域周辺のHi-net 観測点の被災 状況を確認し,その後,臨時観測点の設置を行った. 臨時観測点は,震源域中央よりやや西側の厚真町内 にある私有地に設置させていただいた(表1).なお, 土地所有者に本震時や被災後の生活状況を聞き取り し,臨時観測点の設営が土地所有者の生活に大きな 影響を与えないと判断してから土地借用を依頼し た.使用した地震計は固有周期が2 Hz のサーセル 社製L22D-3DL(3 成分速度型地震計)である(表2). 設置には50 cm 程度の穴を掘り,その底面に地震計 を埋設した.その際,地震計の水平成分が約16º 反 時計回りに回転して設置してしまったため,水平動 の地震波形の使用には注意が必要である.得られ た地震波形は,計測技研製HKS-9700 ユビキタスモ ジュール仕様のデータロガーで収録されている.こ のデータロガーは時刻情報をGPS 衛星からの時刻 情報と同期して精度を保つ.今回の観測では100 Hz サンプリング間隔で地震波形をA/D 変換して収録 した.また,このロガーの特徴である無線データ送 信機能を用いて,特定の受信サーバにデータを準リ アルタイムで送信した.被災地では商用の電源確保 が困難であることが多いため,80 Ah の容量を持つ DC12V のカーバッテリ(充電車用)と 30 W の発電 が可能なソーラパネルを用いた電源を使用した.臨 時観測の期間は地震計を設置した2018 年 9 月 10 日 昼頃から約2 カ月後の 11 月 6 日の昼頃までである. この臨時観測点で得られた地震データはHi-net の震 源決定処理や北海道大学がとりまとめる緊急余震観 測のデータの1 つとして役立てられた. 5 km 141.4˚E 142˚E 42.2˚N 42.6˚N 43.0˚N 20000101 ~ 20180905 20180906 ~ 20190220 20190221 ~ 20190225 20180906 mainshock 20190221 aftershock 波形相関も用いた観測点 到着時刻のみ用いた観測点
X
X’
Y’
Y
−10 0 10Y
Y’
Distance along YY’ [km] 0 10 20 30 40 50 Depth [km]
X
X’
Distance along XX’ [km] −10 0 10 M6 M5 M4 M3 M2 図6 矩形領域内(左図右上)の深さ 50 km 以浅の地震について波形相関を用いた DD 法により再決定した北海道 胆振東部地震とその余震の震央分布とX-X’および Y-Y’(N10ºE)に沿った震源の深さ分布Fig. 6 Epicentral distribution of events with depths shallower than 50 km redetermined using Double-Difference method with waveform correlation and depth cross section of X-X’ and Y-Y’ (N10ºE).
観測点コード 緯度 (度) 経度 (度) 標高 (m) (V/m/s)感度 N.HK1R 42.73829 141.91104 25 88 表1 観測点座標
Table 1 Location of temporal seismic station.
地震計 ロガー バッテリー ソーラパネル
L22D 3DL HKS-9700-15a N-80D23L/CL GT234S
表2 観測点機器仕様
0˚ 90˚ 42.2˚N 42.6˚N 43.0˚N A 5 km 0˚ 90˚ 100˚ 170˚ 141.4˚E 142˚E 42.2˚N 42.6˚N 43.0˚N A 5 km 100˚ 170˚ 40˚ 90˚ 20˚ 70˚ 120˚ 170˚ 0˚ 50˚ 100˚ 150˚ −10 0 10 110˚ 60˚ 10˚ 160˚ 140˚ 30˚ 80˚ 130˚ −10 0 10 −10 0 10 −10 0 10 −10 0 10 0 10 20 30 40 50 深さ [km] 0 10 20 30 40 50 深さ [km] 0 10 20 30 40 50 深さ [km] 0 10 20 30 40 50 深さ [km] 距離[km] 距離[km] M6 M3 M5 M2 M4 M1 ○:本震前の震源分布 ○:本震 ○:本震後2019年2月21日の余震前までの震源分布 ○:2019年2月21日の余震 ○:2019年2月21日の余震後の2月25日までの震源分布 図7 走向 10º 毎の震源分布の鉛直断面図.走向 N10ºE の断層に直交する 100º の断面図において震源が線状に並ぶ Fig. 7 Vertical cross section of hypocenter distribution with strike per 10º. Hypocenters line up at the cross section with 100º
防災科学技術研究所陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)が捉えた平成 30 年北海道胆振東部地震-松原ほか
図8 図 1 の青四角内における 2000 年 10 月 1 日~ 2019 年 2 月 25 日の(左)一次元地震波速度構造(鵜川ほか, 1984)により決められた防災科研 Hi-net 震源と(右)Matsubara et al. (2017)による三次元地震波速度構造により
再決定された震源分布.それぞれの断面の±10 km の震源を示す.
Fig. 8 Hypocenter distribution determined by (left) NIED Hi-net with one-dimensional seismic velocity structure (Ukawa, et
al., 1984) and (right) with three dimentional seismic velocity structure (Matsubara et al., 2017) from October 1st 2000
to February 25th, 2019, within the blue square in Fig. 1.
’
D
D
’
C
C
’
A
A
A
A
’
’
D
D
源
震
造
構
元
次
三
源
震
t
e
n
-i
H
’
B
B
’
C
C
’
B
B
141.5 142 142.5 141.5 142 142.56. まとめ 2018 年 9 月 6 日に発生した北海道胆振東部地震で は厚真町で震度7 を観測し,北海道全域が停電する 等大きな被害が発生し,地震観測においても大きな 影響を受けた.本震の震源域の深さ25 km より深い ところでは,本震前の地震活動は低調であった.防 災科研Hi-net により本震の深さは 36 km に決められ, 余震は南北方向約40 km にわたる高角度の東傾斜の 面上に分布した.初動解は,北東-南西方向に圧縮 軸をもつ逆断層型もしくは横ずれ断層型であり,防 災科研F-net によるモーメントテンソル解は東北東 -西南西方向に圧縮軸をもつ逆断層型であった.ま た,その後の地震活動は,逆断層型と横ずれ断層型 が混在しており,いずれのタイプの地震も活動域全 域にわたって発生している.本震周辺の地震活動に ついて波形相関データを用いたDD 法による精密震 源再決定により,余震活動は走向N10ºE の東傾斜の 面状に分布することが分かった.防災科研の日本列 島下の三次元地震波速度標準モデルの構造を用いて 再決定すると,本震の深さは約2 km 浅くなり,余 震の深さは平均で4 km 程度浅く再決定され,余震 は概ねP 波速度が 7.5 km/s よりも遅い領域で発生 していることが分かった.防災科研K-NET および KiK-net による大きな加速度が観測された領域は震 央周辺から北部にかけて広がっている.震央の北北 西約25 km に位置する K-NET 追分観測点(HKD127) でK-NET,KiK-net 全観測点での最大となる加速度 1,796 gal を記録したほか,11 観測点で 500 gal 以上 の記録が得られた. 震源域周辺の地震データを確実に取得するため, 震源域中央よりやや西側の厚真町内に臨時地震観測 点を設置した.観測期間は2018 年 9 月 10 日昼頃か ら11 月 6 日の昼頃までの約 2 カ月間である.この 臨時観測点で得られた地震データはHi-net の震源決 定処理や北海道大学がとりまとめる緊急余震観測の データの1 つとして役立てられた. 謝辞 本稿をまとめるに当たり,気象庁一元化震源情報 を用いた.気象庁,北海道大学の観測点の波形デー タを用いた.英文予稿を添削してくださった南カリ フォルニア大学のDavid Okaya 教授,アメリカ地質 調査所のJustin Rubinstein 博士に感謝する. 参考文献 1) 防災科学技術研究所(2019a):Double-Difference 法による2018 年 9 月 6 日胆振東部地震の震源分 布.地震予知連絡会報,101,印刷中. 2) 防災科学技術研究所(2019b):平成 30 年北海道 胆振東部地震:震源分布と初動解.地震予知連 絡会報,101,印刷中. 3) 防災科学技術研究所(2019c):三次元地震波速度 構造により再決定した平成30 年胆振東部地震周 辺の震源分布.地震予知連絡会報,101,印刷中.
4) Frohlich, C. (1992): Triangle diagrams: ternary graphs to display similarity and diversity of earthquake focal mechanisms, Phys. Earth Planet. Inter., 75, 193-198. 5) 功刀卓・青井真・中村洋光・藤原広行・森川信 之(2008):震度のリアルタイム演算法.地震第 2 輯,60,243-252. 6) 功刀卓・青井真・中村洋光・鈴木亘・森川信之・ 藤原広行(2013):震度のリアルタイム演算に用 いられる近似フィルタの改良.地震第2 輯,65, 223-230.
7) Matsubara, M., Sato H., Uehira, K., Mochizuki, M., and Kanazawa, T. (2017): Three-dimensional seismic velocity structure beneath Japanese Islands and surroundings based on NIED seismic networks using both inland and offshore events. Journal of Disaster Research, 12, 844-857, doi:10.20965/jdr.2017.p0844. 8) 岡田義光(1988):震源計算・発震機構解計算プ ログラムの改良.国立防災科学技術センター研 究報告,No.41,153-162. 9) 鵜川元雄・石田瑞穂・松村正三・笠原敬司(1984): 関東・東海地域地震観測網による震源決定法に ついて.国立防災科学技術センター研究速報, No.53,1-88.
10) Waldhauser, F. and Ellsworth, W. L. (2000): A Double-difference Earthquake location algorithm: Method and application to the Northern Hayward Fault, California. Bull. Seism. Soc. Am., 90, 1353-1368.
(2019 年 7 月 16 日原稿受付, 2019 年 8 月 29 日改稿受付, 2019 年 8 月 30 日原稿受理)
防災科学技術研究所陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)が捉えた平成 30 年北海道胆振東部地震-松原ほか 要 旨 防災科学技術研究所の陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)は北海道胆振東部地震やその後の余 震などの地震波形を記録し,余震分布や発震機構解,強震動分布等の災害の低減に役立つデータを収 集してきた.本稿では,防災科研MOWLAS により観測された震源分布や発震機構解,強震動等の観測 結果,および震源再決定による解析結果について紹介する.また,本震後に実施した臨時地震観測に ついても紹介する. キーワード: 平成 30 年北海道胆振東部地震,防災科研 MOWLAS,余震分布,発震機構解,強震動, 臨時観測