1 イスラーム経済論:講義の進め方と評価について ◆講義の概要(シラバスより抜粋) 【現代イスラーム世界(研究)の最前線を知るための応用講座】 21 世紀に入り、イスラーム世界のプレゼンスはますます高まっています。日本では、しばしば戦争 とテロの文脈でイスラーム世界の動態が語られますが、それとは異なる多様で新しいダイナミズム が 21 世紀のイスラーム世界で展開され始めています。本講義では、そのような新しい展開の中でも とりわけ近年著しい成長が見られる「イスラーム経済」に注目し、その実態を学びます。イスラーム経 済は、単にイスラームの理念にもとづいた経済生活を実践するというイスラーム教徒のためだけの ものではなく、グローバル化に伴って生じてきた様々な課題(金融危機、格差拡大、地球環境悪化 など)に対してオルタナティブを提供しようとする普遍的志向性を持っています。講義の中では、持 続可能なあるべき地球社会の未来において、そのようなイスラーム経済が持つ可能性や人類史的 意義についても考えてみたいと思います。 ◆参考情報 ・この講義は、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科グローバル地域研究専攻イスラー ム世界論講座によって提供されている科目で、毎年開講予定です。 ・本講義は、全学共通科目「イスラーム学の基礎」(前期水曜 2 限)の上級科目です。既に履修済 みであるか同時履修を推奨します。 ・本講義の発展科目として ILAS セミナー「イスラーム経済研究入門」(前期火曜 5 限、来年度も同じ 時間帯で開講予定)が開講されています。 ◆一般的な注意事項 ・私語、通話、弁当は禁止。 ・出席はとらないので(=期末試験一発勝負なので)、自習で単位を取る自信があれば出席しなく てよい。 ・開始時刻に遅れてきた場合には静かに入室すること。 ◆講義の進め方 ・原則、プロジェクターを使って講義を進める(レジュメ配布なし)。スマホ等による撮影は禁止。 ・講義の中で使用する資料や図表、および当該回の参考文献については、下記ウェブサイトで公 開(原則当該講義日の前々日 17 時までにアップ)するので、必要な者は適宜ダウンロードして持参 すること。 http://nagaoka.world.coocan.jp/ →[日本語]をクリック→講義関連→京都大学全学共通科目(学部生対象)「後期:イスラーム経 済論」→(受講者用サイト)の文字の上をクリック→パスワード(iecon)を入力 ※講義に関連する各種情報も上記のウェブサイトに掲載する。 ※第 1 回講義のレジュメも上記のサイトで公開する。
2 ◆スケジュール(シラバスと一部変更あり) 回数 実施日 内容タイトル 第 1 回 10 月 4 日(火) オリエンテーション (台頭するイスラーム経済) 第 2 回 10 月 11 日(火) イスラーム経済の理念と思想(1) (イスラームは禁欲的な宗教か?) 第 3 回 10 月 18 日(火) イスラーム経済の理念と思想(2) (なぜ利子が禁じられるのか?) 10 月 25 日(火) 休講 第 4 回 11 月 1 日(火) イスラーム経済の近代 (なぜ今、イスラーム経済なのか?) 第 5 回 11 月 8 日(火) イスラーム金融(1) (利子のない金融とは何か?) 第 6 回 11 月 15 日(火) イスラーム金融(2) (理念と現実のダイナミズム) 11 月 22 日(火) 11 月祭のため授業なし 第 7 回 11 月 29 日(火) イスラーム金融(3) (急成長の光と影) 第 8 回 12 月 6 日(火) ハラール・ブーム(1) (豚・酒抜き製品はなぜ台頭してきたのか?) 第 9 回 12 月 13 日(火) ハラール・ブーム(2) (多様化するハラール製品と日本) 第 10 回 12 月 20 日(火) 中東産油国の成長とイスラーム経済 (ドバイ・モデルはイスラーム経済なのか?) 12 月 27 日(火) 休講 1 月 3 日(火) 冬休みのため授業なし 1 月 10 日(火) 他曜日授業日のため授業なし 第 11 回 1 月 17 日(火) トルコとイスラーム経済 (イスラーム型資本主義の挑戦) 第 12 回 1 月 24 日(火) 資本主義の未来とイスラーム経済 (新たな普遍システムとしてのイスラーム経済の可能性)
3 ◆成績評価方法 ・原則として期末試験のみ(100 点満点)で評価する ・出席はとらない。 ◆期末試験について ・大学で定められた期末試験期間の間に実施する。 ・設問構成は以下のとおり。 【設問 1】講義内容の理解度を測るための正誤問題 10 問(全問解答、50 点) 【設問 2】講義内容に関連した論述問題 10 問(3 問選択、50 点) ・試験へ持込可能なもの 自筆ノート(他人のノートのコピーは不可、ワープロ打ちしたプリントも不可) 講義ウェブサイトで公開されたもの(第 1 回講義レジュメ、毎回の資料・参考文献リスト) ※追試が実施される場合は、すべて持ち込み不可とする ◆教科書・参考書の紹介 ※講義の各回のトピックに関わるものについては、外国語文献も含めて各回で随時紹介 ①イスラーム一般に関する基本的な入門書 ○小杉泰『イスラームとは何か―その宗教・社会・文化』講談社現代新書、1994 年. (→日本のイスラーム研究の第一人者による簡潔かつ包括的な概説書) ○東長靖『イスラームのとらえ方』山川出版社、1996 年. (→基礎的なことがらにしぼって書かれた入門書、写真も豊富) ○小杉泰・江川ひかり編『イスラーム―社会生活・思想・歴史』新曜社、2006 年. (→イスラームに関するさまざまなキーワードについての読み切りの解説書) ②講義全体に関わる教科書・参考書 ○長岡慎介『現代イスラーム金融論』名古屋大学出版会、2011 年. (イスラーム金融をめぐる諸論点の分析を通じてのイスラーム経済の独創性を探究した研究書) ←第 2 回~第 7 回、第 12 回はこの本の内容に即した講義を行います(参照箇所は随時提示)。 ○小杉泰・長岡慎介『イスラーム銀行―金融と国際経済』山川出版社、2010 年. (イスラーム金融の思想、実践に関する入門書) ○加藤博『イスラム世界の経済史』NTT 出版、 2005 年. (イスラーム世界の経済史を経済学的な枠組みで論じたもの) ○加藤博『文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み』東京大学出版会、1995 年. (イスラーム文明の特徴を生態系、貨幣、市、権力、法、宗教、文明の 7 つのキーワードを手がか りに論じたもの) ○イスラムビジネス法研究会・西村あさひ法律事務所編『イスラーム圏ビジネスの法と実務』経済産 業調査会、2014 年. (近年勃興するイスラーム経済の最新実態を紹介・分析したもの)
4 第 1 回 オリエンテーション (台頭するイスラーム経済) 1.著しいイスラーム世界の経済成長と高い将来性 ・21 世紀に入り、経済成長が加速 (出典)『日経ビジネス』2013 年 9 月 23 日号(31 頁).
・G20(Summit on Financial Markets and the World Economy、2008 年~)への参加 →インドネシア、サウジアラビア、トルコ ・これから経済成長が進んでいくフロンティアにもイスラーム世界は広がる (例)西アフリカ、中央アジア、南アジア ・イスラーム世界の高い人口増加率+高い若年層のシェア →2050 年にはイスラーム教徒が世界人口の 30%を占める(=キリスト教徒と伯仲) =日本もイスラーム世界との密な交流がますます不可避に
(出典)Pew Research Center “The Future of World Religions: Population Growth Projections, 2010-2050” (http://www.pewforum.org/2015/04/02/religious-projections-2010-2050/)
5 2.「イスラーム経済」の台頭 ・これまでの「近代資本主義」とは異なる独自の経済システムを追求する動きが顕在化 =イスラームの理念に適った経済システムの現代的再構築 →「欧米型グローバリズムへのアンチテーゼ」+「よりよい地球社会の実現へのイスラーム経済知 の活用」 ・具体例として ①イスラーム金融 ②ハラール食品 ③イスラーム・ファッション ④ハラール・ツーリズム ⑤伝統的なイスラーム経済制度の再活用 ■第1回の講義の参考文献(○は概説書レベル、◎は専門書レベル)
○Pew Research Center “The Future of World Religions: Population Growth Projections, 2010-2050” (http://www.pewforum.org/2015/04/02/religious-projections-2010-2050/)
○Vali Nasr The Rise of Islamic Capitalism: Why the New Muslim Middle Class is the Key to
Defeating Extremism. Free Press, 2010.
◎Charles Tripp Islam and the Moral Economy: The Challenge of Capitalism. Cambridge University Press, 2006.