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チーム 医 療 徳 育 : 守 礼 敬 人 産 官 学 地 域 連 携 研 究 医 学 部 の 基 本 理 念 人 間 性 豊 かで 優 れた 医 師 の 養 成 学 際 領 域 を 含 む 医 学 研 究 の 推 進 国 際 貢 献 の 推 進 と 地 域 医 療 への 協 力 予 防 医 学 の

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北里大学医学部ニューズ

2009.4

No.302

CONTENTS

■新入生への歓迎の言葉  恵まれた環境で生涯学習のスタートを………2 ■入学式報告………3 ■第103回医師国家試験報告 ………4 ■第3学年・第5学年主任挨拶………5 ■第6学年主任・副主任を終えて………6,7,8,9 ■平成21年度学年主任・クラス主任(副主任)一覧 ………9 ■准教授就任・医学教育研究部門長挨拶  医学教育の発展をめざして………10 ■講師就任挨拶 回ってみたら病理医になっていた…………11 ■第3回医学部ニューズ編集委員会主催写真コンテスト……12 北里写真クラブ 前田 仁 氏 撮影

(2)

 新入生の皆様、ご父母の皆様、この度は本学医学部への 入学おめでとうございます。難関を突破して入学されたご 努力とその成果に、心よりお喜び申し上げます。教職員一 同、皆様を歓迎し、立派な医師になられるよう教育に努め るつもりでおります。  昨年4月、学校法人北里学園は社団法人北里研究所と統 合し「学校法人北里研究所」となりました。1914年(大正 3年)に北里研究所は設立されていますので、今年は95周 年を迎えることになります。学校法人北里学園は1962年(昭 和37年)に設立され、現在では生命科学系7学部(設立順 に:衛生学部(後に理学部、医療衛生学部に改組)、薬学部、 獣医学部、医学部、海洋生命科学部、看護学部)を擁して います。また病院は、大学病院、大学東病院の他に、統合 により港区白金の北里研究所病院と埼玉県北本市の北里研 究所メディカルセンター病院が加わり、4病院のいずれで も臨床実習や卒後研修を受ける機会が得られます。本学医 学部は、1970年に創設された学部で、来年は40周年事業を 予定しています。  医学教育は医学部6年間で修了するのではなく、生涯学 習の出発点と捉えるべきだと思います。共用試験や医師国 家試験合格は、その通過地点の評価であり目標ではありま せん。立派な医師に求められる学習習慣、科学的思考、一 般教養、人格を6年間で身に着けて頂きたいと思います。 教育委員長の岡本牧人教授(医学科長)は、今年度「復習」 と「予習」を学習態度の優先目標に挙げています。患者さ んは医師を選べますが、医師は患者さんを選べ ません。「授業に出ていなかったので、勉強し ていませんので、あなたの病気はわかりません」 と、患者さんに謝ることはできないのです。学 力をつけるため、出席を厳しく取って、授業に は少なくとも3分の2以上出席しないと進級で きないのはそのためですので、ご理解ください。  現在、北里大学は活動目標としてチーム医療 教育、農医連携、感染症学の3つを掲げており ます。チーム医療教育では、5月のゴールデン ウイークに第5学年生が、他の医療系学部生と 共に、定められたテーマに沿って議論をする機 会があります。農医連携教育については、2年 前から第1学年の医学原論演習で、希望者が夏 休みに北海道八雲牧場で環境保全型畜産の実体 験をしています。また今年度から、獣医学部動 物資源科学科の3、4年生の「食品」、「生殖医 療」、「実験動物管理」、「アニマルセラピー」のコース希望 者を医学部で教育することになります。  医学部では、知育、体育は勿論、技育、徳育、食育を進 めています。技育の面では、人形や機器を使った医療技術 の修得のためのスキルズ・OSCEラボが昨年4月から大学 病院に設置され、内容の充実を図っています。徳育につい ては、今年度も「守礼敬人」、すなわち「礼を重んじ、人 を敬う」を強化してゆきます。チーム医療を行う上でも、 医師として患者さんに向かう場合でも、「守礼敬人」は基 本的なことであると考えます。具体的な「守礼敬人」学習 として、第1学年のオリエンテーションでJALアカデミー から専門家を招聘してマナー教育を行います。図書館の横 の廊下を「守礼の路」としています。教職員、友人と会っ たときは、会釈や挨拶をすることにより、心が和むことを 体験してください。教室では講義の前後に自然に起立して 挨拶をすると、学生と教員の一体感ができて、教員の気持 ちが引き締まり、より良い講義が期待できます。食育につ いては、第5学年臨床実習で、栄養指導の実際を体験しま す。栄養指導は、運動指導と並んで重要な保健医療技法と なります。また医療の国際化を見据え、第6学年の選択実 習では、欧米の大学病院に滞在して臨床実習ができるよう 援助しています。  紙面が限られていますので、以下に大学、医学部の基本 理念と目標を図示します。生涯学習を緑にあふれた素晴ら しい環境でスタートされることを祈っています。

新入生への歓迎の言葉

恵まれた環境で生涯学習のスタートを

医学部長 

相 澤 好 治

(教授 衛生学・公衆衛生学)

医学部の基本理念

人間性豊かで、優れた医師の養成 学際領域を含む医学研究の推進 国際貢献の推進と地域医療への協力 予防医学の推進 知育・技育・食育 産・官・学・地域 連携研究 快適な 教育・職場環境 徳育:守礼敬人

北里大学建学の精神

開拓 報恩 叡智と実践・ 不撓不屈 農医連携 チーム医療 感染症学 復習・予習の 励行 国際的素養

(3)

 満開の桜のなか、4月6日(月)に パシフィコ横浜国立大ホールにて、医 学部119名を含む7学部大学生と大学 院生総数2,019名の新入生に対する入 学式が執り行われました。はじめに柴 忠義学長が、後進国であった明治時代 に日本の研究者として生命科学の研究領域で世界的な研究 業績をあげられた学祖北里柴三郎先生の生涯とその一貫し た生き方から導かれた本学の建学の精神である「開拓」「報 恩」「叡智と実践」「不撓不屈」の意味を新入生に丁寧に説 明されました。さらに、新入生に対してこれからはじまる 大学生活において、(1)眼に見えないものを大切にする こと (2)正しいことを身につけることという2つのテー マを提示されました。すなわち、見えないものとして最た るものである「生命の大切さ」を学びとり、“生命科学の フロンティア”を目指す北里大学の学生として21世紀社会 が直面する様々な課題に積極的に応え実践してほしいこと、 さらに、現在社会は不正を食い止める行動規範が欠落しつ つあるが、生命科学の真理を追究する北里大学の校風のな かで正しい行動規範を身につけてほしいと新入生への希望 を述べられました。また、来賓祝辞として川瀬恵史北里大 学PPA会長が、祝辞のなかで、社会環境の大きな変換期 にあたり世相の喧騒に惑わされることなく勉学に励んでほ しいと述べられました。その後、在学生の新入生への歓迎 の挨拶、成績優秀な在学生に対する北島賞の授与が執り行 われ、最後に北里大学学生歌が斉唱され、入学式が閉会と なりました。 学年主任としての新入生の皆さんへ  新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これか

入学式報告

第一学年主任 

阪 上 洋 行

(教授・解剖学)      ら2年間、学年主任として、4名のクラス主任の先生と一 緒に、皆さんの学生生活全般にわたり相談指導することに なりました解剖学教室の阪上洋行です。私は、平成19年9 月より東北大学から北里大学に赴任し、初めての学年主任 となります。皆さんと一緒に北里大学の一員として成長し たいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。 この機会に、新入生の皆さんに大学時代にぜひ身につけて 頂きたい2つのことをお話しさせて頂きます。1つ目は、 主体的な学習態度を習得してほしいことです。最近、学生 から「何を、どこまで、どのように勉強すればいいの?」 という質問をされることがよくあります。大学での勉強法 は、これまでのテストの点数をあげるためのテクニックを 講義や問題集で勉強するものとは大きく異なり、主体的な 興味に基づく勉強が要求されます。もちろん、医師国家試 験の合格は最低条件ですが、高い合格率を誇る本学の学生 は、さらに高いレベルで将来医師として活躍できるよう好 奇心に裏打ちされた自主学習の態度を身につけていただき たいと思います。まずは学問をつまらないと始めから切り 捨てずに、面白いことを見出す努力をしてください。2つ 目は、「人間力」を身につけてほしいことです。これまで は試験の成績だけの順位に一喜一憂していたと思います が、これから徐々に点数化できない総合的な能力、すなわ ち、人間的な魅力が必要になってきます。これには、勉強 以外の趣味なども大切ですが、なかでも、よい人間関係を 構築する能力がとても大切です。相澤好治医学部長の掲げ ておられる「守礼敬人」の精神励行の大切さも同じような 意味を含んでいます。将来、医師として最大限の成果をあ げるためには、様々な考えを持った患者や医療関係者との 良き人間関係を構築することが必要となります。ぜひ、実 習やクラブ活動を通して一生涯にわたってつき合うことの できる仲間を作る努力をしてください。以上の2つは、皆 さんの大きく成長のために「You must change」なのです が、皆さんの才能を持ってすれば「Yes. We can!」である ものと信じております。まずは受験戦争で張りつめた心の 弦を緩めて、大学生活に徐々に慣れて、北里大学での有意 義な学生生活を送られることを切に希望しています。

(4)

第103回医師国家試験報告

教育委員長 

岡 本 牧 人

(教授・耳鼻咽喉科学)     本年の医師国家試験は平成21年2月14日∼ 16日の3日 間行われた。多くの学生が試験会場である大正大学に地下 鉄1本で行ける水道橋のホテルに泊まって試験に臨んだ。 費用の面で学生の負担は大きいが、不測の事態(天候、交 通マヒなど)への対処や毎日行われる試験結果への臨機応 変・迅速な対応ができるなど良い面もある。  さる3月27日に合格発表があり、北里大学は現役111名 中108名が合格した。現役合格率は97.3%であり、これは北 里大学始まって以来の好成績で昨年に続いての記録更新で ある。全国順位は22位、私立大学では7位であった。既卒 を合わせた合格率は91.1%で全国平均をわずかに上回った ものの、全国順位は48位、私立大学では15位であった。特 筆すべきは合格者数が112名と全国4位であり、医師不足 といわれる現在、社会に大いに貢献できたことである。  合格された諸君はすでに各病院での研修が始まっている と思うが、北里大学病院以外の病院において研修されてい る人も、北里大学卒業生として誇りを持って研修に臨んで ほしい。いずれ北里大学に戻られる人もいるだろうし、地 域医療に邁進される人もいるだろうが、それぞれの場所で 良い医療を提供してほしい。  ご両親にも心よりお祝いを申し上げるとともに、これま でのご援助に深く感謝申し上げます。  教員の皆さんにもあらためてお礼申し上げたい。とくに 国試・CBT対策委員長の川上 先生、そして一番には医 学教育開発センター学習支援部門小川元之先生には感謝し てもしきれないくらいである。川上先生は、外見からはわ からないかもしれないが、毎年相当のストレスで痩せ細る 心持で過ごしておられる。また、教務課を中心とした事務 職のみなさんにもこの場を借りてお礼申し上げる。  とはいえ、今年の卒業生のここに至るまでの道のりは決 して平坦ではなかった。それだけに喜びもひとしおである が、彼らの努力と執念に敬意を表する。傍から見ると簡単 に達成できたように見えるかもしれないが、6年間をかけ た実に大変な努力の成果である。医師国家試験合格は医学 部教育の一応の到達点・成果であるが、学部としては一大 事業として捉えてその遂行に学生・教員・事務職全員が参 加しているという認識である。その成果として今日がある。 油断すると下位に落ちるのはいとも簡単で、しかもそれに 気づいたときは手遅れなのはオリンピックなどのスポーツ 競技と同様である。WBCで勝とうが負けようが、われわ れの生活に何の関係もないが、優勝してみるとやっぱり気 分が良いものである。在学生の皆さんも先輩の成績に油断 することなく、気を引き締めて来年以降に臨んでもらいた い。今年の成績は皆さんと共有して喜ぶことはできるけれ ども皆さんの成績ではないので、慢心することなく、それ ぞれの学年の目標達成に努めてもらいたい。医学部では達 成のためのカリキュラムやサポート体制がかなり整ってい ることは証明されたと思われるので、あとは皆さんがやる だけである。

(5)

 第3学年の皆さん、進級おめでとうござ います。昨年度は、医学部に入学されて解 剖学実習に触れた時、自分が医者になるん だという事を強く自覚された印象深い年で あったと思います。そうした大きなイベン トを超えた後の2年間はある意味で刺激も少なく、何とな く過ごしてしまいそうになる期間でもあります。しかし実 はこの2年間は医者になるために必要な知識の殆どを勉強 する極めて重要な期間であることを是非認識しておいて頂 きたいと思います。この2年間で基礎医学と臨床医学のす べての分野の知識を身につけて、CBTに臨むことになり ます。こうして身につけた知識を、5年生の臨床実習でさ らに確実なものにしてゆくことになります。  「まだ4年もあるのだからのんびりやればいいよ」など と思っている人もいるかもしれません。確かに学生時代 には勉学だけでなく、豊かな人間性を身につけるために サークル活動などの課外活動を積極的に行うことは重要で す。しかし、学生の本分である勉学を決しておろそかにし てはいけません。20年以上も昔、私が医学生であった時は、 「実習だけ出席していれば、面白くない講義には出なくて も、あとで教科書で勉強すればいいんだよ。」などという ことが通っていた観もあります。ただ、このような事は現 在では決して通りません。20年前と比べて勉強しなくては ならない知識量は数倍以上に増えているのです。それなの に勉強する期間は殆ど変わっていません。つまり、勉強の 方法を工夫しなくては追いつかないということなのです。 最も効率のいい勉強方法は講義に出席して知識を身につけ るということは今も昔も変わっていませんが、知識量が増 えた今日においては、講義をないがしろにしては試験に合 格する事は到底おぼつかなくなってきています。講義の出 席についてのいわゆる「1/3ルール」というのは決して 皆さんの事を束縛するためにできたものではなく、皆さん を「ガード」するためにあるのだということを認識して頂 きたいと思います。  近年の医学教育においては、講義する側にも絶えず工夫 が求められています。これは、前述したように、医学部で 教えなくてはいけない知識は絶えず増え続けており、決し て減ることがないことから、効果的な教育が求められてい るのです。同時に学生である皆さんにも勉強する上での工 夫が求められています。とにかく、毎回の講義について不 明な点は必ずその日のうちに解決して、ノートを整理して おく「その日の復習」を励行してみて下さい。そんなに多 くの時間はかからないと思います。その日の講義の内容を、 夜少しの時間をかけて復習するという習慣をつけることで 記憶の定着にはかなりの効果があるのです。  最後になりますが、最近の学生はとてもシャイなのか、 皆の前で手を上げて質問するのではなく、後で教員のとこ ろへ来て個人的に質問する傾向があるようです。クラス全 体で、各人が手を上げて皆の聞いている前で質問するとい う雰囲気ができると、講義も活気づくのではないでしょう か。それから、医師になるためには自分の健康管理も重要 です。皆さんが健康に気をつけて、無事これからの2年間 を実りあるものにして頂くよう心より願っております。  新5年生に進級された皆さんおめでとう ございます。これからの2年間を学年主任 として担当することになりました呼吸器外 科の佐藤之俊です。ここ北里大学医学部に 着任してからわずか1年半ですが、皆さん と一緒に新しい伝統を築いていきたいと思いますので、宜 しくお願いします。さて、5年生になってもっとも大きな イベントは、臨床実習が始まることです。これまで、主に 講義や、スライドあるいは本の中の話だった病気が、実際 の患者さんとともに目の前に現れます。元気になっていく 方、あるいは病を克服できなかった方など、様々な場面を 体験していくことでしょう。こうした実習・体験を通じて、 臨床医学の知識を学ぶとともに良き医療人たる人間形成を 進めなければなりません。さらに、医師国家試験対策も平 行して勉強していく必要があります。このように、これか らの2年間は、患者さんや病気と接し、多くの知識を吸収 し、医師として育って行く基礎を形成する大変重要な期間 なのです。  ところで、皆さんはこの北里大学医学部に入学した頃を 覚えていますか。医師をめざして、希望と不安と、さまざ まな思いを胸に抱いていたことと思います。その時の夢を 思い出してみて下さい。これから記憶しなければならない 膨大な知識の量、実際の患者さんとのコミュニケーション、 医師国家試験、等々皆さんの「夢」をかなえる道のりには 多くの障害が立ちはだかって来ます。この障害という壁が 立ちはだかるのにはきっと理由があると思います。それは、 皆さんの行く手を阻むためではありません。その壁の向こ うに皆さんの望んでいる「何か(医師や研究者)」があり、 どれ程までに真剣にそれを望んでいるか証明する機会が与 えられているのではないでしょうか。  皆さん1人1人が、北里大学というカラーを持つ、素晴 らしい人材として成長し育っていくことを心から願ってお ります。最後に、北里大学とこれからの医療を担う医師の 卵として、新5年生の皆さんに望むことは次の3つです。 誠実であれ、思いやりを持て、そして決してあきらめるな。

第3学年主任挨拶

廣 畑 俊 成

(教授 膠原病・感染内科学)

第5学年主任挨拶

− 夢をかなえるために −

佐 藤 之 俊

(教授・呼吸器外科学)

(6)

第6学年主任・副主任を終えて

第6学年副主任を終えて

副主任(Aクラス) 

宮 地   艦

(准教授・心臓血管外科学)  第34期生の皆さん、卒業おめでとうございます。学年主 任として皆さんの卒業をお祝いするとともに、これからの 皆さんの医師としての発展を心より祈念しています。  さて、皆さんが医学部に入学してから、卒業するまでの 6年間は、楽しいこともあり、辛いこともあった月日であっ たことと推察します。長いようで短い医学生としての期間 が終了し、これからは医師としての長い人生が始まります。 この人生の節目において、皆さんには医学部6年間の学生 生活を振り返り、お世話になった医学部や病院の諸先生方、 職員の皆さん、病院実習で診察させて頂いた患者さん、そ して何よりもこれまで皆さんを物心両面から支えて下さっ たご両親・ご家族に感謝の気持ちを持っていただきたいと 希望します。今更言うことでもありませんが、人は一人で は生きて行けません。人の存在・在り様を認識し、人とし ての患者さんを全人的に受け入れることが医療の出発点で す。卒業生の皆さんには、医学生としての6年間を振り返 り、お世話になった皆さんへの感謝の気持ちを素直に実感 しながら、医療人としての出発点である研修医になって頂 きたいと思います。先日の卒業式と謝恩会に参加して、皆 さんの晴れやかな笑顔と輝く眼差しに接し、またご家族の 皆さんの嬉しさと誇らしさ、安堵感の混じった笑顔を拝見 しながら、感謝の重要性を痛感した次第です。  皆さんはこれから研修医になる訳ですが、研修医は医師 でありながらも、「見習い医」的な特殊な立場に置かれて いること、定められた2年間の研修期間に多くの診療科を ローテーションしなければならないこと、そしてこれまで の医学生とは全く異なった環境下で医師としての研修を受 けることなどから、精神的にも肉体的にも多くのストレス が加わることが予想されます。毎年、この環境の変化に適 応できずに悩んだり、落ち込んだりする研修医が少なくあ りません。卒業生の皆さんは、この環境の変化にも適応出 来るように、気力・体力を充実させ、いかなる事態にも柔 軟に、しなやかに対応するように希望したいと思います。 そして、悩みや思いがあれば躊躇せずに、指導医の先生に 相談して下さい。必ず、適切で有益なアドバイスが返って くると思います。  皆さんの医師としての人生はこれから始まります。皆さ んの将来には、それぞれの目指す医師像があり、夢と希望 がひろがっています。我が国の医療環境は悪化の一途を 辿っていますが、どのような環境下においても医師として の志を忘れることなく、明るく前向きに、医師としての人 生を歩みたいものです。医師にとって最も大切なことは、 医師で在り続けることです。継続は力です。そのためには、 医師としての責任を常に果たし、医師としての勉学を継続 しなければなりません。学祖北里柴三郎先生の「終始一貫」 の意義はそこにあります。  医学部を卒業し、医師としての人生を始める卒業生の皆 さんに、北里柴三郎の「終始一貫」とともに、後藤新平 の自治三訣、「人のお世話にならぬよう、人にお世話をす るよう、そして酬いを求めぬよう」、を送ります。後藤新 平は北里柴三郎と親交のあった医師であり、政治家として も活躍した異色の人物です。この自治三訣は、人としての、 また医師としての生き方の規範かもしれません。難しい規 範ですが、これから医師となって行く皆さんに贈りたいと 思います。卒業生の皆さんが人としても医師としても大成 されることを心より願っています。  第34回生の皆さん、そしてAクラスの皆さん、ご卒業お めでとうございます。幾多の試練を乗り越えて、無事、卒 業という大きな区切りを迎えられたことを本当に心からお 祝い申し上げます。皆さんは私が平成13年9月に北里大学 に赴任して、受け持った初めてのクラスでした。大学卒業 以来、今まで、学生教育には比較的縁の薄かった私として

第6学年主任を終えて

赤 星   透

(教授・総合診療医学) 

(7)

第6学年副主任を終えて

担任の先生って、なにやってんの?

副主任(Bクラス) 

成 瀬 康 治

(講師・整形外科学)    思えば2年前の3月に入ったころ、栗原教授に「お前、 4年生の担任やれ。いいな、断るなよ。ご快諾でいいな。」と、 半ば強制的ご指名を賜りました。勢いにおされ、つい、は いと言ってしまいました。1年間だけで良いものかと思っ ておりましたが、2年間でワンセットと後に聞かされまし た。早いもので、あっという間の2年間でした。5年生時 代は臨床実習のために、夜遅くまで残っているみなさんと 廊下ですれ違ったものです。その度に元気良くあいさつを してくれました。夏を過ぎた頃より、みなさんが廊下のど 真ん中を大勢でがやがや歩く姿から、患者さんを気遣うよ うに変化していく姿をみてとることができました。整形外 科臨床実習では、私の顔を見つけては話しかけてこられ「試 験はどっからでるんっすか?」って、聞くことはそれだけ かい。クラス会では、「担任の先生って、なにやってんの?」 と聞かれ、「いろいろです。」と答えると「先生って飲み会 ぐらいしか会いませんよねー。」と言われました。この頃 から、自分の中で学生のみなさんとの関係が変化してきた と感じるようになりました。この感覚は、自分の子供が自 分を親にしてくれた時に似ていました。学生の皆さんに「担 任の先生」にしていただいてるのだなー、と自覚するよう になりました。  6年生では夏を過ぎてクリニカルクラークシップも終わ ると、皆さんとお会いする機会もぐっと減り、実習室近く の廊下やエレベータ内で対面することが多くなりました。 肌寒くなる季節になると笑顔が減り、顔色もなんとなく優 れないかなと感じるようになりました。これ以上元気が無 くなったら積極的に少し声をかけるようにしようと思って いると、次の週には妙にふっきれていたりして、ころころ 変わる皆さんがいらっしゃいました。  ついに国家試験も終了し、先日みなさんの卒業式に参加、 謝恩会にお招きいただきましたが、実に充実した表情をさ れておりました。多くの期待を胸に、立派な臨床医として 研修に入ってください。  最後に、謝恩会の二次会に誘っていただきありがとうご ざいました。帰りがけに二次会会場の階段から転落してし まいました。翌日、周りの先生方には絶対に酔っ払って落 ちたと言われましたが、実はそんなに酔ってはいませんで した。単純X線検査と、緊急MRI検査を行いましたが、骨 折はなく肩腱板部分断裂疑いと診断されました。まだ肩は 上がりません。アームスリング固定中です。皆さんのすば らしい国家試験合格率とは対照的に、私の方が学年副主任 を卒業できていないようです。 は、皆さんに身近に接することは極めて新鮮で、大いに啓 発されることもありました。また、けやき会を通じて、ご 父兄の方々ともお話させていただく機会にもめぐまれまし た。皆さんがご両親やご家族からの深い愛情に支えられて、 幾多のハードルを乗り越えて、卒業・医師国家試験合格、 そして同じ医師としてのスタート地点に立たれることを心 から歓迎いたします。  皆さんはこれから2年間の臨床研修医として医療の第一 線に立つことになります。私が卒業した20年前に比べて、 世の中は急激な変化をとげ、医療を取り巻く環境も大きく 変わりました。昔から日本では、社会全体が医師に対して 一種の尊敬と敬愛の情を持っており、医師の側もたとえ自 らの生活を犠牲にしても、病いに苦しむ人々のために頑張 ろうという気概がありました。産科・小児科・救急医療を はじめとする医師不足による医療崩壊、国民に広がる医療 不信、それに反して高まるより高度な医療に対する国民の 要求などから、まじめで勤勉な医師の多くが疲弊し、燃え 尽きつつあります。このような現状をみれば、多くの若い 医師たちが大きなリスクを避けて、自らのQOLの向上に 目をむけることもやむを得ないでしょう。ただ、医師とし てどのような人生を選択したとしても、一つだけ心に留め ておいてほしいことがあります。それは患者さんが自分の 家族だったら、父親、母親、兄弟であったらどのような治 療をしてほしいか、どのように接してほしいかをいつも考 えて行動してほしいと思います。単純にみえて実はとても 難しいことですが、このことをいつも頭に入れて、日々診 療に当たってくださることを期待しております。医療の最 前線で、皆さんと一緒に仕事のできる日を楽しみにしてい ます。

(8)

 ご卒業おめでとうございます。私は第5、6学年の2年 間クラス担任を致しましたが、皆さんが卒業したことを自 分の卒業時よりも嬉しく思います。また、担任に就任した 2年前のことがつい先日のように思い出され、改めて月日 の流れの早さに驚いております。  さて、これからは我々と同じ医師として、皆さんも第一 線の臨床現場で働くことになります。北里大学病院で研修 する先生達もいれば、都内や地元の病院で研修する先生達 も多いと思います。環境が大きく変わりますので、慣れな いこと、大変なことも多いと予想されますが、自分の選択 した道ですので大いに頑張ってください。期待しています。  自分がクラス担任として責務を十分に果たせたか否かは わかりませんが、最後に贈る言葉として、自分が考えてい る医者の心構えを皆さんに伝えたいと思います。働く場所 は各々で異なりますが、医師としての心構えがしっかり確 立していれば、どの場所に行っても通じるはずです。以下 に4つのポイントを示します。参考にしていただければ幸 いです。 (1)患者さんには自分の両親に接するような態度を心が けよう!(患者さんから教えて頂くことはたくさんありま  いささか古い書物ですが、哲学者と数学者の兄弟の

HubertとStuart Dreyfusは、その著書Mind Over Machine (訳書は『純粋人工知能批判』)の中で、ドライバーやチェ スの名手など、どんな分野の専門家にも共通してみられる 技能獲得を5段階に分けて説明しました。第1段階(ビギ ナー)は、指導を受け新しい技能を習得する最初の段階で、 さまざまな事実を識別することを学び、これに基づいてど う行動すべきか判断する規則を覚えます。ビギナー向けに は、全体像をつかまなくてもいい「文脈不要」の情報が与 えられます。しかし、こうしたビギナー向けの規則は子ど も用自転車の補助輪と同様でいつかは取り外すものです。 第2段階(中級者)の者は文脈不要の事実をたくさん把握 し、もっと高級な規則を当てはめたいという気になります。 そして、学んだ技能をもっと広い文脈の中で捉えられるよ うになります。「状況依存」の要素です。第3段階(上級 者)では、現実の状況下で認識しうる「文脈不要」の要素 や「状況依存」の要素の数が増し、ついには圧倒され、ど れが重要かも見分けられなくなります。そこで、段階的に 意思決定をし、この問題に対処することを学ぶことになり ます。まず、状況を整理して計画を立て、これに照らして もっとも重要な要素だけを選び出し行動を単純化して効果 を高めることができます。目的を明確に意識し、状況を事 実の集まりとして捉えられるようになります。第4段階(プ ロ)に達すると、作業をかなり主観的に捉え、最近の経験 に応じてある特定の視点から物事を判断するようになりま す。視点の取り方によって、状況を構成する要素のいずれ かが際立ち、それ以外の要素は背景に退いて目に入らなく なります。経験に応じて視点が変われば目立つ特徴も変わ り、それにつれて計画や予測や要素相互の目立ち加減まで が徐々に変化します。過去に似たような経験をしたことが あり、その記憶が引き金になって、過去に成功したのと似 たような計画が浮かび、経験に照らして予測が立てられま す。しかし、どうするかを考えるときは依然として分析的 になるため、作業への没入に一瞬切れ目が生じます。第5 段階(エキスパート)になると、経験に裏打ちされた円熟 した理解力に基づいて、何をすべきかが判断できるように なります。刻々と変わる状況に対処することに没頭し、問 題を客観的に見て解決しようなどとは思わないし、先の心 配をしたり計画を立てたりもしません。技能がからだの一 部のように身について、ほとんど意識にのぼらなくなりま す。ベテランのパイロットになると飛行機が自分で飛んで いくように感じるといいます。  この度ご卒業された皆さんは、これから医師としての研 鑽を積んでいかれると思いますので、Dreyfus兄弟による 技能習得の5段階がご参考になれば幸いです。しかし、こ こで私なりに付け加えたいことが1つあります。それは、 本当は、私も含めみんないつでも初心者であり続けるとい うことです。  益々のご発展をお祈り申し上げます。

第6学年副主任を終えて

副主任(Cクラス) 

井 上 勝 夫

(講師・精神科学)   

第6学年副主任を終えて

贈る言葉(医師の心構え:4つのポイント)

副主任(Dクラス) 

新 井   達

(講師・皮膚科学)   

(9)

す。教えて頂くのに横柄な態度はいけません。相手の立場 を理解し、尊重すること、そして患者さんに誠意をもって 診察していれば、先生達の経験不足を十分補うほどの信頼 が得られるはずです。) (2)わからないことは積極的に質問しよう!ただし、教 わったことは鵜呑みにするな!(自分がわからないこと、 疑問に感じたことを教えてくれる先輩はたくさんいます。 良い臨床医になるためには訊くことを躊躇してはいけませ ん。しかし、優秀な先輩も人の子です。知識を確実にする ために自分でもしっかりと調べましょう。) (3)先輩の失敗談を聞こう!(優秀な先輩が失敗したこ とは、将来自分も失敗する可能性が高いと考えるべきです。 臨床の世界には、教科書に書いていない注意点がたくさん あります。先輩の機嫌が良さそうなときに積極的に教えて 貰いましょう!ただし、自慢話は大体役に立ちませんので、 話題を変えてしまいましょう。) (4)仕事は翌日に持ち越さないようにしよう!(日々の 診療に加えて、診断書、サマリー、抄読会、そして論文作 成など、やらなければいけないことはたくさんあります。 翌日に持ち越すと、雪ダルマ式に仕事が増えていくので、 自転車操業に陥ります。できる限りその日のうちに仕事を 片付けましょう。)  以上です。この4点を確実に実行するのは結構難しいと 思います。しかし、北里出身の医者は やるときはやる 人間が多いと思っています。大変だと思いますが、はじめ の10年間は特に精一杯働いてください。その努力は絶対に 報われるはずです。先生達の評価が北里の評価です。お互 いに頑張りましょう!

(10)

平成21年度学年主任・クラス主任(副主任)一覧

学  年

学 年 主 任

クラス主任(副主任)

第1学年

阪上 洋行 教授

(解剖学)

A

三上 哲夫 准教授

(病理学)

B

吉田  功 講 師

(病理学)

C

岡本 了一 講 師

(微生物・寄生虫学)

D

玉木 英明 講 師

(解剖学)

第2学年

松下  治 教授

(微生物・寄生虫学)

A

角田 正史 准教授

(衛生学・公衆衛生学)

B

中村  健 講 師

(微生物・寄生虫学)

C

江島 耕二 講 師

(免疫学)

D

五艘 行信 講 師

(生化学)

第3学年

廣畑 俊成 教授

(膠原病・感染内科学)

A

占部  憲 准教授

(整形外科学)

B

田中 住明 講 師

(膠原病・感染内科学)

C

市邊 義章 講 師

(眼科学)

D

鈴木 立俊 講 師

(耳鼻咽喉科学)

第4学年

黒川 信悟 教授

(医療技術教育研究部門)

A

佐野  肇 准教授

(耳鼻咽喉科学)

B

宮崎 浩二 講 師

(血液内科学)

C

平田 光博 講 師

(外科学)

D

石川  章 講 師

(膠原病・感染内科学)

第5学年

佐藤 之俊 教授

(呼吸器外科学)

A

庭野 慎一 診療教授

(循環器内科学)

B

岩村 正嗣 診療准教授 (泌尿器科学)

C

荻野美恵子 講 師

(神経内科学)

D

瀬崎晃一郎 講 師

(形成外科・美容外科学)

第6学年

勝岡 憲生 教授

(皮膚科学)

A

濱田 潤一 准教授

(神経内科学)

B

斉藤 典充 講 師

(皮膚科学)

C

西巻  博 講 師

(放射線科学)

D

久保田 勝 講 師

(呼吸器内科学)

(11)

 平成20年7月に東海大学に異動された阿部直教授の後を 継ぎ、10月1日付けで医学部准教授及び医学部附属医学教 育研究開発センター医学教育研究部門長を拝命致しました。 センター長の糸満盛憲教授はじめ諸先生方には日頃よりご 指導を賜り、厚く御礼申し上げます。  医学教育研究部門は、激しく変革する日本の医学教育に 対応すべく平成15年度に設置されました。平成19年度より、 医学教育研究開発センターが設置され、他の4部門(医学 原論研究部門、医療安全・管理学部門、医療技術教育研究 部門、学習支援研究部門)と協力して医学教育向上のため に活動をしています。  現在の医学教育現場では、従前の詰め込み型学習から、 「自ら問題を抽出し、解決方法を探る」という問題解決型 学習に重点が置かれるようになりました。講義によって一 方的に詰め込むだけでは知識は定着しません。学習者が自 己学習能力を身につければ、自ら学習すべき事柄を選択し、 文献を調べ、理解でき、得た知識は血となり肉となります。 そのため、小グループによる問題発見・解決型学習のPBL (Problem Based Learning)テュートリアル学習、チーム

型学習であるTBL(Team Based Learning)、医学生とし てのモチベーションを引き出すため、低学年から臨床の現 場に触れるEarly Exposure(早期体験学習)を行うなど 様々な教育手法が導入されてきました。  試験にも変化がみられます。5・6年生の臨床実習で は、実際に患者さんの診察を行ないますが、「医行為」を 行なうには、それにふさわしい知識、技能、態度が必要 です。臨床実習開始前に行なわれる共用試験では、CBT (Computer Based Testing:コンピューターを用いた多肢 選択式試験)で知識や臨床推論能力(患者さんの話や症状 から、病気を理論的に推測する)を測り、OSCE(Objective Structured Clinical Examination:客観的臨床能力試験)で、 十分な診察技能や医師を目指すものとしてふさわしい態度 を備えているかを判断します。さらに、国家試験も知識を 問う問題から、問題解決を求める問題、臨床現場を知らな ければ解けない問題にシフトしてきています。このような 国内外の医学教育に関わる調査や分析を行い、先進的な医 学教育の研究開発を行うのがこの部門の役割です。さらに 学内外でFD(Faculty Development:教員の教育能力開 発)を行なったり、他大学と連携して教育に関する研究を 行なったりしています。現場のレベルでは、試験関係の管 理、臨床実習入門などでの学生指導、Early Exposureの プログラム開発、SP(Simulated Patients:模擬患者さん) の会の立ち上げや卒後教育との連携、医学教育全般に関す るツールやセミナー情報などのご案内など、まさに“教育 何でも屋”といったところでしょうか。このような医学教 育を専門にする部署は近年増え、全国80の大学医学部、医 科大学の中で61校に及びます。  ここで自己紹介を少し。私は1987年に北里大学を卒業し、 北里大学病院及び横浜市立市民病院などで内科医としての 研修を行ないました。Subspecialtyとして腎臓内科を学び、 1994年に夫の留学に便乗して渡米。ミネソタ州立大学小児 腎臓病教室でフェローとして糖尿病性腎症の研究に従事し ました。教室の主宰者であるMauer 教授が非常に教育的 で、いかに研究者の能力を伸ばすかを考えて接している姿 に触れたこと、腎臓内科長の鎌田貢壽教授がやはり教育に 造詣が深く、熱心に教えて下さったことが、私を教育の道 に導いたのだと思います。1998年に帰国後7年間腎臓内科 スタッフとして、教育、診療、研究に従事しておりました が、学生や研修医・病棟医の指導にあたるうち、現場での 教育に関する要望や試みをもっと大きなスケールで考えた いとの思いから当部門に移籍しました。現在、臨床に関し ては、外来診療と学生実習、患者教育のみに関わっており、 “2足のわらじ”、ならぬ“1.2足のわらじ”といった状態です。 医学教育は、高校卒業後の学生から生涯教育まで幅広い世 代を対象としますので、縦には初等・中等教育から卒後の 研修制度や政府の方針まで、横には他職種や海外の教育な どかなり広い範囲をカバーしており、多元的にものを見る 必要があります。医師としての経験のみならず、留学生活 や親としての経験など全てが役に立つ分野です。増加する 女性医師のキャリアプランニングなども企画したいと考え ております。  教育は結果がすぐには現れず、評価も困難で、敬遠され がちな分野ではありますが、大学としての第一の使命でも あります。私の役割は、個々の単位での教育が有機的に統 合して効果的に作用することで学生が「人間性豊かで優れ た医師」となれるよう、システムを整備し、情報を提供す ることだと心得ております。北里大学の医学教育の発展を めざして、浅学非才の身ではありますが、多忙な中で教育 の現場に立つ先生方のお役に立てるよう一層努力する所存 です。今後とも何卒よろしくご指導を賜りますようお願い 申し上げます。

准教授就任・医学教育研究部門長挨拶

医学教育の発展をめざして

守 屋 利 佳

(准教授・医学教育研究部門)

(12)

 この度医学部ニューズより、講師就任挨拶のテーマにて エッセーの執筆依頼が迷い込んで参りました。たしかに本 誌に、挨拶文が掲載されていますが、まさか私自身がこの 様な立場になるとは全く予期しておらず、光栄ではありま すが何を書いて良いものか悩みました。月並みであります が、私が病理に進むまでの経緯とそれからの生活について 綴ってみたいと思います。  私は、東京都新宿区出身で、浪人生活を経て平成5年に 北里大学医学部に入学しています。趣味は、登山・カヌー・ 焚き火・美味しい物の食べ歩きです。私が病理に興味を持 ち始めたのは、医学部5年次の病院実習期間中で、様々な 科の患者さんの診療録に、よく病理報告書が貼り付けられ ており、診断方法を知りたいと思うようになったのがきっ かけでした。たまたま3−4年次クラス担任の先生が病理 学所属であった為、早速連絡を取り、空いている時間に病 院病理部にて検体を検鏡する機会を得ました。最初に検鏡 させて頂いた検体は、前立腺生検であったことを今も記憶 しています。さらに何回か検鏡する経験をさせていただき、 病理医は組織を介して臨床医とは異なる視点で患者さんを 見(診)ていることが分かり、非常に新鮮な印象を受けま した。  この様な経緯を基に、私の病理学への興味は沸々とわき 上がり、病理学を進路の1つに考えるようになりました。 当時は消化器内科・耳鼻咽喉科も進路として考えていまし たが、共に病理検体が多数提出される科でありますので、 まず大学院にて病理学を学ぶことで、将来的に自ら組織診 断が出来る臨床医にもなれるのではないかと6年次には考 えるようになりました。若干回り道的な発想であり、実習 班の仲間では、「医学部で6年間も勉強しているのに、ま だ学生をするの?」という意見もありました。ある意味もっ ともな意見ですが、一生医師を続けるに当たって4年とい う時間は、長いようで短く、例え臨床医に転向するにして も、そこで得られる知識・技術は、早期であればあるほど 吸収できることも多く、今後の人生に役立つと考え進路を 決定しました。さらに私以外に病理学に進む同級生がいた ことも、進路に全く躊躇がなかった理由の1つでした。  かくして北里大学医療系大学院の門を叩き、岡安勲教授 指導下に、細胞・組織病理学を専攻することになりました。 大学院時代は、病院関連の仕事として組織診・病理解剖・ 迅速診断を主に学び、研究室では、胃癌に関する研究を主 に行いました。1−2年次は、学部時代の不勉強も手伝い、 分からないことだらけで、毎日が苦労の連続でした。  3年次になると、ある程度の要領も覚え、診断技術も多 少向上し、研究も進むようになり、主論文もなんとか完成 しました。丁度この時期より、病院病理部も病院実習の一 環として取り込まれ、実習中の第5学年の学生からも学ぶ ことが出てくるようになりました。  最終学年になりますと、まだ十分病理学を堪能できてい ないことが分かり、卒後も病理医として仕事をしていきた いと思うようになりました。幸いスタッフ枠に空きがあり、 大学院修了後そのまま北里大学医学部病理学単位の助手と して入職することが出来ました。結局、登山では良くある ことですが、回り道と思った進路が、実は近道に通じてい たようで、第一印象の重要性を感じます。  その後、クリニカルクラークシップや新臨床研修制度が 導入され、医学部教育や病院に関する仕事が増え、研究に 割ける時間が中々取れなくなりました。しかしながら、あ せらず・少しずつでありますが、周囲の皆様の御協力を基 に研究を継続することで、徐々に成果を発表することも出 来るようになりました。  2008年4月1日の医療法一部改正により、病理診断が医 業として明文化されたことで、今後ますます院内で我々に 求められる仕事が多くなることが予想され、ますます病理 医の必要性が高まります。しかし、医師不足は病理医も同 様であり、全国でも2,000人に満たない数です。もし病理 に興味がある方がいれば、一報いただけると幸いです。  この様な経緯で私は病理学に進み現在に至ります。まだ 至らない点があり、周りの先生にお世話になる事も多々あ りますが(特に三上哲夫先生にはいつも大変お世話になっ ています)、今の自分に出来る仕事を確実にこなし、出来 る仕事を増やしてゆきたいと思います。今後ともご指導ご 鞭撻のほどをよろしくお願い申し上げます。

講師就任挨拶

回ってみたら病理医になっていた

一 戸 昌 明

(講師・病理学)     

2009.4 No.302

(13)

毎年の黄金週間、北里では各学部の学生による「チーム医療演習」を実践している。これは、 患者を中心にした良質の医療を実践するためには,多種類の医療専門職の協働が不可欠で あることから、他職種の知識・技術、患者接遇を理解させ、連携・協働のできる能力や患 者を総合的にケアーする能力を身につけさせるもので、医療系総合大学である北里の特性 を活かした試みである。しかしこれに加えてさらに医学部にあっては、チームワーク、リー ダーシップ、交渉能力、自己管理、問題解決力など、社会にあっては基本的かつ実践的な スキルの教育が必要ではないか。必修化された臨床研修制度のなかで次々とローテーショ ンしている若い研修医をみていて感じることである。(A・S)

集 後

 4月といえば桜という人も多いと思う。相模原キャンパスは、 そこかしこに桜の木があり、隠れた花見の名所と言っても良い。 S号館と L3号館横の土手の桜は見事だし、M4/M7号館の北側に ある枝垂れ桜や、時期は少し遅れるが、病院の出口、郵便局横の 八重桜も捨てがたい。さらに上級のスポットとしてM1号館の上 層から見る、大山を背景にした貯水池の桜も綺麗である。近年は 異常気象で3月中に咲ききってしまうこともあるが、今年は良い 時期に咲いた。めでたく国家試験をクリアーした110余名の卒業 生が、美しい花の下でそれぞれの道に進むことになったし、また、 学士入学を含めると120余名の新入生をほぼ満開の時期に迎える ことになった。  本号には卒業生へのはなむけの言葉が掲載されているが、巣立 ちの陰には、先生方を始め多くの人の支えがあった事を忘れない で欲しいと思う。医学教育研究部門長・守屋先生が書いているよ うに、教育は評価が困難で、敬遠されがちな分野でもある。研究 の時間や、時にはプライベートの時間をも割いて、学業や生活な どの相談にのっても、それが評価されることはあまり無いし、評 価するシステムも存在しない。それでも多くの教職員が、教育は 大学の使命であると考え日夜努力をしている。大学の評価はさま ざまになされるが、詰まるところは、どのような卒業生を育てたか によって決まるであろう。卒業生の諸君には、「私を見て北里の医 学部を評価して」という自信をもって活躍していただきたいと思う。  本号にはまた、新入生への歓迎の言葉が掲載されている。みん なが応援している。素晴らしい先輩のさらに上を行く医師となる ことをめざしてがんばってほしいと思う。(Y.G)

医学部ニューズ

〔第302号〕 http://www.med.kitasato-u.ac.jp/ ●発行責任者 相 澤 好 治 ●編集責任者 高 橋 正 身 〒228-8555 神奈川県相模原市北里1-15-1 北里大学医学部内 医学部ニューズ編集委員会 TEL.042-778-8704(直通) FAX.042-778-9262 E-mail m-news@kitasato-u.ac.jp ●発 行 日 平成21年4月30日発行

第3回医学部ニューズ編集委員会主催写真コンテスト

 医学部ニューズは昭和49年9月の第1号から、3月1日発行の301号と歴史を重ねてきました。平成18年7月31日発行の 278号からは編集委員会における“もっと興味深いニューズにしよう”という掛け声のもとに、改革に取り組み新しいスタイ ルに移行しました。トップページの写真は医学部関係の写真、季節にあった写真を載せていく予定ですが、よりよい写真を 一般から公募するため今回写真コンテストを企画しました。古き良き時代から現在まで、あなたが撮った写真をご応募下さい。  一杉正治名誉教授(衛生学・公衆衛生学) は病気療養中のところ、去る4月2日にご逝 去されました。ここに謹んでご冥福をお祈 り申し上げます。  一杉先生は昭和37年に慶應義塾大学医学 部をご卒業された後、同大学医学部研究科、 国立公衆衛生院疫学部、国立がんセンター 疫学部を経て、昭和48年11月に本学に助教授として就任され、 昭和58年7月に教授に昇任されました。本学在職中は医学部 教育委員会、研究委員会委員等を歴任し医学部の教育、研究 の発展にご尽力され、平成13年3月に定年退職後は産業医と して各企業の健康管理に貢献されました。  ここに先生の偉大な功績を偲びつつ合掌致します。  なお、通夜・告別式は下記の通り執り行われました。   通   夜 平成21年4月4日(土)   告 別 式 平成21年4月5日(日)   会   場 公益社用賀会館 テ ー マ: 四季・風景・草花の写真、キャンパス内の四季・ 各イベント・クラブ活動写真など      (冬から春へ、春の花、桜の写真など) 応募資格: 北里大学医学部、大学病院、大学東病院の教職員、 医学部、大学院医療系研究科の学生 応募締切:平成21年6月19日(金) 各  賞: 最優秀賞1点(30,000円)、優秀賞2点(15,000円)、 入選5点(5,000円)(金額相当の図書カード) 応 募 先:〒228-8555 相模原市北里1-15-1       北里大学医学部ニューズ編集委員会       (医学部総務課庶務係)       TEL 042-778-8704       メールでの応募は m-news@kitasato-u.ac.jp 主  催: 北里大学医学部ニューズ編集委員会・北里大学医学部 詳細は下記の専用頁をご参照下さい。 http://www.med.kitasato-u.ac.jp/photo.html

一杉正治名誉教授ご逝去

参照

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