平成のメディアと LGBT 瀧澤萌乃 飯塚佳純 佐藤春名 平成は差別が改善された時代だと言える 女性蔑視や外国人差別など 今まで目に見えなかった差別が可視化された またこれまで取り上げられなかった発達障害や精神障害な等 障害であると伝わりにくい障害が認知されるようになった 今回は特に平成において格段

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平成のメディアと LGBT 瀧澤萌乃・飯塚佳純・佐藤春名 平成は差別が改善された時代だと言える。女性蔑視や外国人差別など、今まで目に見えな かった差別が可視化された。またこれまで取り上げられなかった発達障害や精神障害な等、 障害であると伝わりにくい障害が認知されるようになった。 今回は特に平成において格段とその存在が注目され、差別意識が解消されていった LGBT の人々に焦点を当てたい。平成の間で LGBT の人々に対するメディアの扱いはどう変わっ たのか、また彼らに対して社会はどう変化したのか、MX テレビプロデューサーへのインタ ビューを通じて探る。 MX テレビとは 正式名称は東京メトロポリタンテレビジョン。東京都でテレビ東京に次いで 6 番目の地上 波民間放送テレビ局として設立された。開局当初は東京都のローカル局として東京に密着 したニュース番組がタイムテーブルの半分を占めた。またビデオジャーナリスト制を採用 し記者に編集権を与えることでよりジャーナリズムに迫る試みがなされた。しかし程なく して経営難に陥り、トップ交代により方向を大きく転換。独立 UFH 放送局のように、アニ メの大量放送や、独特の雰囲気を持った情報番組を数多く放送するようになった。キー局で 流すことは厳しいようなきわどい内容を流す「隠れ家」的な番組が多いのが特徴である。 『5時に夢中!』とマツコ・デラックスさん MX テレビの看板番組であり、局の名を一躍有名にしたのが平日夕方 5 時から生放送され ている情報番組『5時に夢中!』である。「言論の自由」を大テーマとしており、下ネタ・ タブーを厭わない過激なトークを特徴として、他の民法キー局のワイドショーとは全く異 なる情報を提供している。 この番組内でコメンテーターとしてマツコ・デラックスさんを起用たことが彼女のブレイ クのきっかけとなった。彼女は、LGBT の芸能人がテレビで求められる役割を変え、日本の LGBT の地位向上に大きく寄与した人物だと言える。それまでは性的マイノリティである ことを笑いのネタにする芸能人が多かったのに対し、彼女のブレイク以降は LGBT の人々 がその経験から説得力と温かみのあるコメンテーターとしてテレビに出演することが多く

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なった。 中嶋雄介プロデューサーへのインタビュー 今回インタビューさせていただいたのは、『5時に夢中!』でディレクターを務め、現在『バ ラいろダンディ』でプロデューサーを務める中嶋雄介氏だ。『バラいろダンディ』は平日夜 9 時から放送中のワイドショーで、『5時に夢中!』に主婦目線なのに対してその男性版と して作られた。この番組内でもダイアナ・エクストラバガンザさんやナジャ・グランディー バさんといった LGBT の人々をコメンテーターとして起用している。今回のインタビュー では、LGBT の芸能人を起用しようと思ったきっかけや、反響の変化から見る平成におけ る社会の変化について伺った。 — — まず『5 時に夢中!』や『バラいろダンディ』は「オネエ」タレントが出ているという ことが印象的ですが、どのような理由で起用したか教えてください。 中嶋氏:一つは単純に言うと一般の人が思ってもないような切り口で物事を話して頂ける っていうこと。そして厳しいことや、強い言葉を言っても見ている人にあまり不快感を与え ないんだよね。やっぱり LGBT の方々って奥底にすごいあったかさがあるんだよね。 — — あったかさとは具体的にどのような? 中嶋氏:やっぱり LGBT って最近では地位とか権利が持てるようになってきたけど、昔は 虐げられてきた存在だったりするわけじゃない。彼らは実際にそういうことを経験してる からこそ、しゃべる言葉にもマイノリティ目線に立った言葉とか思いが奥底にあるんだよ ね。それに僕らが仕事してきた方々っていうのは権利を主張することはないんだよね。 — — たしかにそうですね。あまり自分たちの地位を主張するところを見たことがないで す。 中嶋氏:そう。強く立ち上がって、「権利を」みたいな感じじゃない。LGBT のみなさんは

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番組でも「私達所詮オカマだから」とか言う。だから言葉に優しさもあるし、常にマイノリ ティの目線がスタートにあるから共感を得る。 あとは自虐ができるかどうかっていうところだと思う。面白い番組作りをしたいからね。自 虐って笑いにできるんだよね。なぜなら人を傷つけないで、自分を貶めて笑いを取るってい うとこじゃない。だからそういう方々のほうが僕は懐が広いと思うし、社会に受け入れられ る。権利ばかり主張する意見は、多様性が重要視される世の中だから全然あっていいと思う けど、5 時に夢中!だったりバラいろダンディみたいな番組では、そういった方を呼んでも 面白くならないかなって思う。 — — なるほど。しかし起用当初は視聴者から反感はありましたか。 中嶋氏:こういう人を出すなっていうことだよね。それはもちろんある。どうしても特に上 の世代になればなるほどそういう(LGBT に対してネガティヴな印象の)文化で生きてき たわけだからそう思う人がいるかもしれない。けど番組として悪いことをしてるわけじゃ ない。僕らも、彼ら彼女らの言葉とか言動か存在とかが素敵だと思うから出してるだけであ って、そこに視聴者の方からクレームがあったとしても、全然気にしたことが無い。 — — では、平成が終わるにつれて上の世代の方々からも受け入れられるようになったと思 いますか。 中嶋氏:それはすごくあるんじゃないんですか。LGBT じゃないけど梅沢富美男さんや坂 上忍さんなども同じように、今の世の中のここがおかしいよねっていう正論を言って、本気 で怒ったりして視聴者の代弁をしてくれる人が受けてる。それはよく考えると上の世代の 人が共感することが多いんだよね。加えてオネエの方々は奥底にやさしさがあるから嫌味 に聞こえない。そういうところが段々幅広い世代の層に受け入れられてきたっていうのは あると思う。 — — 何が LGBT に対して偏見がなくなる過程で大きな影響になったと思いますか。

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中嶋氏:一番大きいのはマツコ・デラックスさんかなあ。 — — ではマツコ・デラックスさんを早い段階で起用したという意味で、自分たちの番組が LGBT への偏見をなくすパイオニアになったと思いますか。 中嶋氏:いわゆる世の中で話題になっているような時事問題や社会問題を話してもらうっ ていうところは、もしかしたらうちが最初に近いのかなと思う。でも今後のLGBTへの世 の中の目線を変えてやろうといった大義があったわけじゃないよね。単純に、たまたま出て もらってたら、面白くて言葉にパワーがあって見た目にもインパクトがあってすごくテレ ビ向きの方々だなって思ってレギュラーになったっていう形ではある。 — —つまりもしそれがLGBTの方じゃなくて例えば普通の男性タレントでも、同じ要素 があれば起用していたということですか。 中嶋氏:基本的には同じ。でも繰り返しになっちゃうけど、同じことを言っても一般の男性 タレントとか女性タレントが言うよりも LGBT の方々が言った方が言葉にパワーがあるし、 どんなことを言っても嫌さを感じない。なぜならそこに愛があるから。マイノリティ目線に 立った、共感を呼ぶ何かしらがあるから起用してきたという理由はあるよね。 — — 中嶋さん自身に当初 LGBT の方々への偏見はありましたか。また見方は変わりまし たか。 中嶋氏:ない。むしろそういう人たちが好きなタイプだったから。だから僕自身も番組とし てもオネエとかじゃなくていわゆる一個人という風に扱ってる。 — — ではあまりご自身の中で変化はなかったと。 中嶋氏:そうなんだよ。ただ社内でも特に上層部の方々は賛否があったと思うんだよね。で

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もマツコさんの人気や活躍に伴って上層部からの理解も少しずつ得られたかな。 — — では最後に、今回の私たちの課題内容でありますが、平成という時代でメディアはど う変わってきたか、平成はどういう時代だったと思いますか。 中嶋氏:MX がメディアを語るなんておこがましい(笑)。テレビ局の中ではまだまだ若手 なので。でも昭和よりもコンプライアンスがどんどん厳しくなって、いろいろ制限が強まる 中で、もがいてもがいて、いろいろなチャレンジをして新しいものが生まれた時代なんじゃ ないかな。YouTube とか。だからいろんなメディアがすごい面白くてクオリティの高いこ とをやり始めてきている中で僕らも今後戦っていかなきゃいけないとき、やっぱり少ない 予算で勝てる可能性っていうのは生放送っていう。だから今後個人的には、生放送で勝負し ていきたいですね。 取材を終えて 平成という時代において LGBT への社会の見方は大きく変化した。それは彼・彼女ら自 身が自らの権利を主張し、それをメディアが発信した影響もある。しかし、LGBT の人々が 主張をしたことそのものに加え、彼・彼女らが発する言葉の魅力が社会に広く理解され、社 会の見方が変わったことが大きな影響となったのではないだろうか。メディアの役割とし て差別を可視化することが挙げられるが、LGBT については本当の意味での社会への理解 に MX テレビを筆頭としてテレビメディアは役割を担う必要がある。綺麗事だけではなく、 長い時間をかけて心から偏見をなくす過程は、他の偏見を是正する上で有効な手段になり うるのではないだろうか。

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