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仙台市子どもの貧困対策計画(骨子)
第1章 計画の基本
1 策定の経緯と趣旨
○ 子どもの貧困対策は国を挙げて取り組むべき喫緊の課題 ・ 「子どもの貧困対策に関する法律」(H26.1 施行) ・ 「子供の貧困対策に関する大綱」(H26.8 策定) ○ 本市では、平成 28 年度に「子どもの生活に関する実態調査」を実施し、子どもの貧困の実態 を把握しました。この調査結果等を踏まえ、本市においても、子どもの貧困対策に関する施策 を計画的かつ効果的に推進するため、標記計画を策定します。 ○ 計画策定に当たっては、仙台市子どもの貧困対策計画策定協議会を設置し、各関連分野の有識 者の助言を得るとともに、市民意見募集などを通じ、多くの皆様からご意見をいただきました。2 計画の位置づけ・他計画との関係
○ 国が策定した大綱を踏まえながら、「仙台市すこやか子育てプラン 2015」、「第2期仙台市教 育振興基本計画」の課題や基本的な方向性等を基に、本市の子どもの貧困対策について改めて 整理します。 ○ 「仙台市ひとり親家庭等安心生活プラン(仙台市ひとり親家庭等自立促進計画)」とは相互に 補完し合います。3 計画における「子どもの貧困」
○ 生活に困窮する家庭の問題の背景は、経済的なものの他、保護者・児童に健康上の問題がある、 時間的・精神的余裕がない、社会的に孤立しているなど、複合的なものとなっており、どのよ うな状況をもって「子どもの貧困」にあるのかを定義することも困難です。 ○ しかし、子どもの貧困問題という比較的新しいテーマについて、問題のありかと支援対象を明 確化し、計画の実行性を高めるためには、「子どもの貧困」を改善すべき課題として捉える必 要があるものと考えます。 そこで本市としては、後述する調査結果やその検証内容を踏まえ、「子どもの貧困」を 「主に経済的問題やそれに起因する家庭状況等により、子どもが通常享受できる生活環境、福 祉、医療、教育につながっていない・つながることができない状態」 とし、こういった状態にある子どもを把握するため、以下の3点の視点で捉えていくこととし ます。 ① 経済状況 ② 家庭環境 ③ 生活の質資料2
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4 計画期間
○ 平成 30 年度を初年度とし、平成 34 年度までの 5 年間とします。5 計画の対象
○ 現に生活困窮状態にある、または将来的に生活困窮状態に陥りやすい状況にある母の妊娠期か ら 20 代前半までの子ども及びその家庭3
第2章 子どもの貧困に係る現状と課題
1 現状
○ 各種統計データ ・ 貧困率【全国】 ・ 生活保護世帯【市】 ・ ひとり親世帯【市】 ・ 就学援助【市】 ・ 児童養護施設【市】 ほか ○ H28 仙台市子どもの生活実態調査結果2 仙台市における子どもの貧困対策に係る課題
本市が平成 28 年度に実施した「子どもの生活に関する実態調査」では、各種統計データの分析、 市民へのアンケート調査(調査対象は、子育て家庭の保護者、生活困窮家庭の保護者と中高生、児 童養護施設入所の中高生等)を行いました。また併せて、地域や専門機関で子どもたちを支える支 援者の方々に対するヒアリング調査も行っています。 これらの調査結果を受け、平成 29 年度に「仙台市子どもの貧困対策計画策定協議会」において、 有識者による協議検討を行う中でも、様々な課題認識について委員からご意見をいただきました。 これらのことから、本市における子どもの貧困の実態や問題点となるその背景の一端を知ること ができます。これを解決の糸口とすべく、調査で把握された内容を子ども、家庭、そして地域・行 政の視点から、次の6つの課題にまとめて示します。 なお、それぞれの課題は単独ではなく、複合的に絡み合っている場合が多く見られます。子どもに関する課題
(課題1)貧困と教育・学力・就学の関係
・ 生活困窮家庭では、不安定な家庭環境の影響を受けて子どもの学力や学習意欲が低下する傾向 が見られます。 ・ 生活困窮家庭では、不安定な家庭環境の影響を受けて不登校になる例も見られます。 ・ 生活困窮家庭の子どもに高校中退のリスクが高い傾向が見られます。 ・ 対象者世帯の中高生の大学進学率は一般世帯と比較して低い傾向が見られます。(課題2)貧困による子どもの生活習慣・健康への影響
・ 食事のとり方、夜間の過ごし方等について適切な生活習慣が確立されていない子どもも見られ ます。 ・ 手を掛けられずに育つ中で心身の健康や健全な成長等に支障が生じている例も見られます。4
家庭に関する課題
(課題3)家庭の経済的困窮による影響
・ 生活困窮家庭では、経済的理由による衣料、学用品、食料等の非購入の割合が高い傾向が見ら れます。 ・ 生活困窮家庭では、支援情報不足や諦めの気持ちなどによる進学断念も見られます。 ・ 生活困窮家庭では、家計管理が適切に行われていない状況が多く、その場合、経済的支援が子 ども自身に届きにくい傾向が見られます。(課題4)貧困と家庭環境との関係
・ 保護者自身が虐待、両親の離婚、DV などの過酷な体験をしている割合が高い傾向が見られま す。 ・ 保護者の課題が子どもに連鎖している例も見られます。 ・ 対象者世帯の保護者の最終学歴が「中学校卒業」「高校中退」で約2割を占めています。地域社会・行政に関する課題
(課題5)周囲とのつながりが薄い
・ 周囲とのつながりが薄い家庭が多く見られます。(課題6)支援につながりにくい
・ 支援情報が生活困窮家庭に届かない状況が見られます。5
第3章 計画の基本的な考え方
前章で整理した課題の解決に向け、本計画で目指す基本理念、基本目標、施策推進の基本的方向 性、施策体系は、次のとおりです。1 基本理念
仙台の未来を担う子どもたちが、生まれ育った環境に左右されることなく、夢と希望を持って その将来の可能性を広げることのできる社会の実現を目指します。
2 基本目標
基本理念を踏まえて、これを達成するために3つの具体的な目標を掲げます。 ① 家庭の状況にかかわらず子どもが健やかに育つよう、健康的な生活を守り、学びを支援する。 ② 子どもが将来的な社会的自立(※)を果たすことができるよう、貧困の世代間連鎖を断ち切る。 ③ 現に生活困窮状態にある、または将来的に生活困窮状態に陥りやすい状況にある家庭の子ども を早期に発見し、継続的に支援する仕組みを構築する。 ※ 社会的自立:公共へ参画し、社会の一員として主体的に生活できること3 施策推進の基本的な方向性
本計画における本市の子どもの貧困対策の基本的な方向性を次のとおりとし、この考え方に基づき基 本理念、基本目標の実現に向けた施策の推進を図ります。(1) 子どもの健やかな育ちを応援する
子どもの育ちには、その成長段階に合わせて遊び、学び、多様な体験を積むことが大切です。そし て、その育ちを助けるためには大人の“手”が必要になります。 しかし、貧困問題を抱える子どもの多くは、不安定な家庭環境の影響を受け、近しい人とのコミュ ニケーションが充分に取れない、適切な生活習慣や学習習慣を身につける機会が与えられないなどの 難しい環境の中に身を置いています。 この子どもたちが、安心できる居場所と身近な支援者を得られること、適切な生活習慣や学力を身 につけられること、そして開かれた将来に向けて健やかに成長していけることを目指して、子どもに 寄添う居場所づくり、学習支援・生活支援の充実など、子どもの育ちを助ける“手”となる施策の推 進に取り組みます。(2) 安心して子育てができる環境を整える
子どもの貧困への対策としては、「相対的貧困」と「貧困の連鎖」という2つの大きな課題への対 応が求められます。 いわゆる「相対的貧困」とは、経済的な理由により「皆にはできるが、自分にはできないこと」が 増え、その積み重ねが諦めの気持ちを生み、結果的に子どもの将来を狭めて生活の質を落としていく6 ことにつながるものと言えます。 この経済的課題に対しては、生活困窮家庭の親子が希望をもって暮らしていけるよう、子どもの生 活に直接届く就学援助や医療費助成等の経済的支援と併せ、適切な家計管理への支援を行うなど、経 済的な安定を目指す施策の推進に取り組みます。 一方で、困窮する子育て家庭の問題は、経済的困窮のみならず、世代を超えた家族の人間関係の課 題、心身の不調、DV、虐待など、複数の困難な課題が絡み合うものであることが多く、解決を難し くしています。 この生活困窮の原因にあたる問題へも目を向けて、安定した子育て環境を整えるとともに、予防の 観点から若い世代へ働きかける啓発事業や母子保健事業の充実など、子どもへの貧困の連鎖を未然に 断つことを目指す施策に取り組みます。
(3) 社会とつながる・地域で支える仕組みをつくる
子どもの貧困問題の解決に向けては、深刻な困窮状態にありながら地域で孤立を深め、福祉の窓口 からの接触も困難な子育て家庭を早期に発見して支援を開始することが求められます。しかし、支援 を要する多くの子どもの存在は、地域の中でなかなか表には見えてこない状況です。 また、子どもの貧困対策では、生活困窮状態にある子育て家庭の生活の質の向上から、子どもが貧 困の連鎖から離れ、社会に出て自立するまでという、息の長い寄添い支援が途切れることなく継続さ れることが重要です。 これらの取組みは、行政による対応のみで効果を出すことは困難です。困窮家庭が社会とつながり、 地域に支えられて子どもを育てていけるよう、子どもを支援する施設・団体や様々な場で子どもと関 わる支援者の方々と行政の各種専門機関が協働し、地域社会全体で切れ目ない寄添い支援を実現する ための施策の推進に取り組みます。1 子どもの健やかな育ちを応援する
(1)子どもの生きる力を育む保育・教育の充実
(2)子どもの育ちを支える仕組みと場づくり
(3)困難な環境で育つ子どもへの支援
2 安心して子育てができる環境を整える
(1)子どもに届く経済的支援
(2)子育て支援体制の充実
(3)困難な課題を抱える家庭への支援
3 社会とつながる・地域で支える仕組みをつくる
(1)妊娠期から子どもの社会的自立までの切れ目ない支援
(2)支援する人材・体制づくり
(3)相談支援体制の充実
理念~施策~事業体系 図解
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第4章 施策の展開
1 子どもの健やかな育ちを応援する
(1) 子どもの生きる力を育む保育・教育の充実
家庭や学校外での教育機会を十分に得にくい生活困窮家庭の子どもの学びを支えるため、保 育施設等における養護と幼児教育の中で生きる力の基盤を育てるとともに、確かな学力を身に つけられるよう学校や地域の中で多様な学習支援を実施します。 このことにより、生活困窮家庭の子どもの自己肯定感を醸成して、社会で生きていく力を育 み、生涯にわたる生活の質の向上につなげることを目指します。 <主な事業> ○ 保育事業による養護と教育 ○ 小1生活・学習サポーターの配置 ○ (学習支援関係) ○ 学習・生活サポート事業 ○ 食育の推進(2) 子どもの育ちを支える仕組みと場づくり
保護者や周囲の大人が、生活困窮家庭の子どもに寄添って手をかけ、声をかけて育てるこ とができる環境をつくるため、子どもが支援者に出会える場づくりを進めるとともに、子ど もが安心感をもって身を置ける居場所を地域に増やすことができるよう、子どもの居場所づ くりを行う団体等への支援を実施します。 <主な事業> ○ 放課後児童健全育成事業(児童館児童クラブ等) ○ 【再掲】学習・生活サポート事業 ○ 中途退学未然防止等事業 ○ 子供相談支援センター ○ 各種保育サービス事業(延長保育、休日保育事業等) ○ (子どもの居場所づくり関係)(3) 困難な環境で育つ子どもへの支援
生活困窮家庭の中高生等の若者や保護者からの支援を十分に受けられない児童養護施設等 入所児童が希望をもって社会に巣立っていけるよう、進学支援、中退防止、就労支援等の寄 添い支援を実施します。特に、福祉制度や地域の見守り事業等につながりにくい中高生等が、 家庭と学校以外に居場所を見つけ、支えとなる人間関係を得られるよう、各種のサポート事 業の充実を図ります。 また、生活困窮のみならず、保護者の疾病やDVによる離婚、虐待など、過酷な環境で育8 つ子どもや自身に生きづらさを抱えた子どもに対する継続的な個別支援を行う専門機関の機 能の充実を図るとともに、様々な場で子どもと接する支援者が、児童心理への理解、対応技 術の向上等の研修を受けられる機会を増やします。 <主な事業> ○ 児童養護施設等入所児童の自立支援 ○ ひとり親家庭高等学校卒業程度認定試験合格支援 ○ 【再掲】中途退学未然防止等事業 ○ 【再掲】学習・生活サポート事業 ○ 【再掲】子供相談支援センター ○ 社会的養護 ○ 児童相談所 ○ 研修各種
2 安心して子育てができる環境を整える
(1) 子どもに届く経済的支援
子どもの生活に欠かせない医療や学業に係る費用に直接活用できる現物給付型の経済的支 援として、子ども医療費助成制度や学習・生活サポート事業を推進するとともに、各種施策 の充実を図ります。 また、各種減免や奨学金等の情報が入りにくい困窮家庭にも必要な支援が届く仕組みづく りや家計管理の改善点、将来の見通し等を検討できる相談事業などを実施します。 <主な事業> ○ 子ども医療費助成 ○ 母子・父子家庭医療費助成 ○ 就学援助 ○ 教育扶助における学校長払い ○ 入学援助金等給付 ○ 高等学校等就学援助金 ○ 【再掲】学習・サポート事業 ○ 児童入所施設等措置費等支弁 ○ ひとり親家庭生活支援講習会事業(2) 子育て支援体制の充実
経済的に困窮する中で仕事と子育ての両立に悩む家庭や、保護者の疾病等により安定した 子育てができない家庭等を援助し、可能な限り子どもの育ちを優先した生活を営むことがで きるよう、各種の保育事業や家事援助等の子育て支援、子育てとの両立ができる仕事への転 職等にかかる相談支援などの充実を図ります。9 また、いざという時に利用できる預かり事業や、家庭での生活が難しくなった場合に頼れ る施設を整えることなどで、安心して子育てができる環境づくりを推進します。 <主な事業> ○ 【再掲】各種保育事業(延長保育、休日保育事業等) ○ 病児病後児保育 ○ 子育て支援ショートステイ ○ 地域子育て支援事業 ○ 育児ヘルプ家庭訪問事業 ○ ひとり親家庭等日常生活支援事業(家庭支援員の派遣) ○ 母子生活支援施設 ○ 幼稚園・保育所・認定こども園の利用者負担額の軽減 ○ 市営住宅の抽選優遇及び別枠募集(ひとり親家庭・子育て世帯) ○ 民間住宅入居支援制度 ○ 住宅確保給付金(生活困窮者自立支援法) ○ 保護者への就労支援(⇒『ひとり親家庭等安心生活プラン』について説明・概要挿入)
(3) 困難な課題を抱える家庭への支援
経済的困窮の原因となる家族の問題や疾病、障害などの複雑に絡む課題の解決には困難を伴 いますが、その解決に向けて取り組む家庭を支援するため、医療費の助成や心のケア等の支援 を行います。 また、貧困の連鎖を防ぐ予防の観点から、若い世代に向けたDV防止や母子保健等の知識の 啓発、予期しない妊娠、若年出産への寄添い支援などの施策を推進します。 <主な事業> ○ 【再掲】母子・父子家庭医療費助成 ○ 親子こころの相談室運営 ○ ひとり親家庭相談支援センター ○ 育児ヘルプ家庭訪問事業における専門指導員の派遣 ○ 妊娠等に関する相談事業(せんだい妊娠ほっとライン) ○ 児童虐待対応 ○ 【再掲】社会的養護3 社会とつながる・地域で支える仕組みをつくる
(1)妊娠期から子どもの社会的自立までの切れ目ない支援
支援を必要としながら援助の手が届きにくい家庭を早期に発見し、対応する体制の整備を行 うとともに、進学等によるライフサイクルの変わり目での見守りと寄添い支援が途切れないよ う、支援策を調整する各種のケースワーカーの充実を図ります。10 <主な事業> ○ 妊娠・出産包括支援事業-母子保健事業 ○ 幼児健康診査及び事後指導 ○ 妊娠期からの児童虐待予防支援(特定妊婦への支援) ○ 育児ヘルプ事業専門指導員 ○ 保育所・幼稚園・小学校の連携 ○ (相談支援関係)
(2)支援する人材・体制づくり
子どもの貧困問題は、従来、行政機関や教育機関などの各所の支援者の間で認識さ
れ、それぞれ対応されてきたところですが、児童養護や虐待、いじめ・不登校対策な
どと比べ、比較的新しく形成された施策の枠組みであり、国においても実態研究や体
系だった取り組みは、緒に就いたばかりと言えます。
そのため、既存の福祉・教育施策を含め、改めて子どもの貧困問題の視点を取り入
れた支援者の人材育成を行うとともに、対策の実行を可能にする体制の整備を推進し
ます。
<主な事業> ○ 社会的養護の体制整備 ○ スクールソーシャルワーカー ○ 保育専門技術向上支援事業(スーパーバイズ事業) ○ 特別(保育)支援コーディネーター ○ 小中高等学校生徒指導担当者会(教員への子どもの貧困問題に関する研修) ○ 児童相談所職員の専門性強化のための研修等による相談機能強化 ○ ひとり親家庭相談支援センターによる相談員研修 ○ 生活保護現業職員(ケースワーカー等)研修 ○ 精神保健福祉総合センター「はあとぽーと仙台」による思春期問題研修講座(3)相談支援体制の充実
生活困窮世帯に対する支援は、経済的なもののほか、家庭内の問題や子どもの養育
や教育など多岐にわたることから、これに対応し、多くの専門機関がそれぞれかかわ
っていく必要があり、各機関が相互に連携し、総合的な相談体制の整備を推進します。
<主な事業> ○ 地域子育て支援事業 ○【再掲】子供相談支援センター ○【再掲】スクールカウンセラー ○【再掲】児童相談所 ○【再掲】子供家庭総合相談 ○【再掲】ひとり親家庭相談支援センター11