日本建築学会技術報告集 第 22 巻 第 51 号,453-458,2016 年 6 月 AIJ J. Technol. Des. Vol. 22, No.51, 453-458, Jun., 2016 DOI http://doi.org/10.3130/aijt.22.453
U 字型コースターの地震時挙動
に関する基礎的研究
−台車の移動が地震応答性状に及ぼす
影響について−
BASIC STUDY ON SEISMIC BEHAVIOR
OF U-SHAPED COASTER
− Effect of movement of bogie on seismic
response characteristics −
岡田 章— ———— * 1 宮里直也— ———— * 2 秦 一平— ———— * 2 廣石秀造— ———— * 3 前田浩靖— ———— * 4 キーワード : 遊戯施設,振動実験,自由落下実験,モーションキャプチャ, 時刻歴応答解析 Keywords:Amusement rides and devices, Vibration test, Freely falling bogie, Motion capture, Time history response analysis
Akira OKADA— —————— * 1 Naoya MIYASATO— ーー * 2
Ippei HATA————————— * 2 Shuzo HIROISHI—ーーー * 3
Hiroyasu MAEDA————— * 4
As for the structural design of the frame for roller coasters, the effect of the movement of bogie on the frame has not been cleared. Against this backgrounds, in this paper, the influence of movement of bogie on the main frame was evaluated based on results from the vibration test using U-shaped small-scale model and numerical analysis. In numerical analysis, an analytical method for calculating the acceleration due to the movement of the bogie was proposed and verified. Lastly, the safety factor for the structural design in confirming the seismic safety was proposed. *1 日本大学理工学部 教授・博士(工学) (〒 101-8308 東京都千代田区神田駿河台 1-8-14) *2 日本大学理工学部 准教授・博士(工学) *3 日本大学短期大学部 助教・博士(工学) *4 JFE エンジニアリング㈱ 修士(工学)
*1 Prof., Nihon Univ., Dr. Eng. *2 Assoc. Prof., Nihon Univ., Dr. Eng. *3 Assist. Prof., Nihon Univ., Dr. Eng. *4 JFE Engineering Co., M. Eng.
は遠心力の作用する半円部分のみとし、摩擦等による台車の減衰は 考慮しないものとする。 図14に台車荷重のモデル化概要を示す。実際の台車の移動は速度 の変化を伴う非等速円運動であるため、解析では台車の移動時間を 考慮した。まず、台車位置ごとの台車荷重Pを理論式により算出す る。理論式は以下の手順で導出される。 台車がハーフパイプに与える法線方向成分の力Pは、①自重の法線 方向成分、②遠心力とすると、(1)式で表される。また、摩擦を無視 力変位は4.0mmで一定とし、加振周期は0.5秒から2.5秒の範囲で適宜 調整を行った。なお、本実験は、台車の移動が架構に及ぼす影響を 把握することを目的としているため、台車の荷重が作用するX方向 (面内方向)のみに加振を行った。 図7に実験より得られた応答倍率曲線を示す。応答倍率曲線より、 卓越周期が1.3秒となることが確認された。また、共振時の応答倍率 よりモデル全体の減衰定数hは約9.2%と求められるが、これはU字架 構の部材減衰に加えて、上部リニアガイド部分の摩擦減衰が寄与し たものと考えられる。 3-2.数値解析モデルの構築 小規模模型振動実験を行った試験体に対し、固有値解析及び時刻 歴応答解析を行った。また、解析結果と実験結果を比較することに よって、解析モデルの検証及び振動特性の把握を試みた。 3-2-1.固有値解析 図8に解析モデルの概要を示す。モデルはU字型の架構と支柱(鋼 管)から構成されており、規模・材料等は試験体と同様とした。頂 部の付加質量は質点でモデル化し、鉛直方向をローラーで支持する ことで、水平方向のみに慣性力が作用するものとした。また、リニ アガイドにより付荷質量と架構間に生じる摩擦力を考慮するため、 質点とU字架構頂部の節点を仮想材で繋ぎ、水平方向の変位が同一と なるように設定した。なお、U字架構はレール部分も含めた断面性能 を持つ様に1本の線材(Beam要素)に置換し、モデル化を行った。 図9に固有値解析の結果を示す。1次モードではY方向(面外方向) が卓越し、2次モードではX方向(面内方向)が卓越することが把握 された。今回対象としたX方向に注目すると、固有周期は実験値の 1.3秒に対し、解析値は1.19秒となった。固有周期の誤差は10%程度 であり、本解析モデルは概ね妥当性を有していると考えられる。 3-2-2.時刻歴応答解析及び正弦波加振実験結果の比較 動的荷重下の解析モデルの妥当性の検証を目的として、時刻歴応 答解析を行った。図10に解析概要を示す。入力波は正弦波加振実験 (入力周期:T=1.3s)時に計測した振動台応答変位とした。モデル境 ②北側支柱軸力は、①北側頂部応答変位の結果と比較すると位相 差が大きいものの、こちらも実験値と解析値は概ね一致する結果を 示した。なお、実験値では北東側・北西側2種類の結果を示すが、解 析値はどちらも同じ値のため、1種類のみの結果を示している。 実験値と解析値で誤差が生じた理由としては、加振実験時に試験 体頂部において付加質量部分が回転運動を生じていたこと等が考え られる。しかし、前述の通り誤差は小さいため、本解析モデルによ り、試験体の動的性状を概ね評価できることが確認された。 4.台車の移動荷重の評価(自由落下時) 台車から架構に及ぼされる加速度を考慮した荷重の評価方法を検 討するため、台車の自由落下を対象として、実験及び数値解析的に 検討を行う。なお、本章で得られた実験結果には適宜フーリエ変換 によるフィルター処理を行っている。 4-1.台車の自由落下実験 小規模模型を加振しない状態で、台車の自由落下実験を行った。 実験概要を図12に示す。なお、試験体及び台車は前章と同じものを 用いた。台車落下高さは振動台から1600mmと2700mmの2ケースと し、実験回数は各10回とした。電磁リフティングマグネットを用いた遠 隔操作による自由落下を行い、架構水平反力と支柱軸力の時刻歴応 答を計測した。また、台車の軌跡を時刻歴で把握するため、3次元動 画計測ソフトを用いたモーションキャプチャ(以下「MC」と称す)に よって台車の絶対座標を計測した(図12-b)。なお、MCのキャリブ レーション法には、既知の3次元座標を入力するDLT法[3]を用いた。 図13に高さ2700mmから自由落下した際の実験結果を示す。図中に は、MCより求めた台車位置を並記する。MCと荷重計の計測結果(図 13-a)より、架構水平反力は台車の落下に伴って徐々に増大し、台車 が45°付近に差し掛かった時に最大となることが把握された。また、 台車の移動に伴う荷重は、直線部分では台車の進行方向に作用する ため、架構水平反力の値は生じていない。 図13-bに全実験における南西側支柱の最大軸力を示す。軸力は各 支柱3箇所で計測しているため、3箇所の平均値とした。また、本実験 では台車の移動に伴う荷重の変化を把握するため、台車と架構の自重を差 し引いた値を示している。ここで、現在の遊戯施設の設計[1]では、台車 が与える荷重は、台車の固定荷重と積載荷重の和から遠心力を考慮 して算出した値に、割増係数をかけることで求められている。割増 係数は、移動する台車車輪の材種により異なり、一般的な鉄車輪を 使用する場合は、2.0と定められている。このため、本論文では台車 自重の法線方向成分と遠心力により算出した荷重P(図15)を用い て、静的解析により支柱軸力の理論値を算定し、理論値に安全率と してαを乗じた値を併せて示す。なお、荷重Pの算出方法は次節にて 説明する。 台車落下側のうち、特に軸力の大きい南西側支柱では、最大軸力 が全ての実験でα=1.0の結果を上回ることが確認された。α=2.0の結果 と比較すると、全実験において安全側の評価となるため、当該荷重 を静的に長期荷重として評価する場合には、α=2.0を乗じることで十 分安全性が確保できると考える。 4-2.台車移動解析 台車の自由落下が架構に与える影響を定量的に把握するため、台 車の移動を模擬した数値解析手法の構築を試みる。なお、解析対象 1.はじめに 近年、ローラーコースター(図1)に代表される遊戯施設の大型化・ 高速化が進んでいる。遊戯施設は、建築基準法で工作物として規定 されており、規模によっては建築物と同様の構造安全性の確認が求 められている[1]。特に、主要な支持部分(客席部分を支える構造上主 要な部分)の構造については、平成19年の告示改正によって、高さ が60mを超える場合には時刻歴応答解析による安全性の確認が求めら れることとなった。このことから、告示改正以降は高さが60mを超え る遊戯施設の新規建設がほとんど行われていないのが現状である。 一方、告示(平成12年建告1419号他)では客席部分(以下「台 車」と称す)の荷重について加速度の評価方法等が明確にされてお らず、特に大規模施設における安全性の検証において課題が残され ている。現在明らかとなっていない事項は、主に以下の2点である。 ①台車から主要な支持部分に及ぼされる荷重の評価方法(長期荷重) ②地震荷重と台車荷重による2つの加速度応答の組合せに対する考え方 (短期荷重) なお、遊戯施設においては、長期とは通常の運行時を指すため、①を 長期荷重、②を短期荷重として取り扱う。 以上のような背景のもと、本研究では高さが60mを超える遊戯施設 の設計手法を確立するための基礎的データの蓄積を目的とし、基本 となるU字型コースターに対して台車の移動が地震時の主架構の応答 性状に及ぼす影響を検討した。本論では、最初に高さ65mの実規模コー スターの試設計を通じて基本検討モデルを設定し、正弦波加振実験に よりモデルの振動特性を把握した。次に実験で得られた固有周期と正 弦波加振時の応答を用いて、数値解析手法の妥当性の検証を行った。 続いて、台車の移動に伴う荷重変化が架構に及ぼす影響について、実 験的に検討を行うと共に、非等速円運動を考慮した数値解析結果と 比較することで、本解析手法の妥当性を検証した。最後に正弦波加振 と台車荷重の2つの加速度応答の組合せに関して実験的検討を行い、構 造設計時に安全性を確保するために必要な安全率を提案した。 2.基本検討モデルの設定及び試験体の設計 検討対象モデルは、一般に「ハーフパイプ」と呼ばれるU字型コー スターを取り上げた。本モデルは、直線部分と半円部分から構成さ れた比較的単純な形状を有していながらも、台車の自由落下と非等 速円運動を評価でき、検討結果を一般的なローラーコースターの設 計に反映できると考える。 試験体の設計にあたっては、まず初めに高さ65mのU字型コース ターを許容応力度計算により設計した。図2に実規模モデルの概要を 示す。次に、台車の移動時間の関係から、地震波の時間軸を実規模 と同様とするため、固有周波数特性同調解析型手法[2]による相似則 計算を採用し、振動装置の性能を考慮した上で、縮尺が約1/20の小 規模模型を制作した。 試験体の架構概要を図3に示す。なお、実際に台車が走行可能な試 験体とするため、架構と台車を別々に製作し、架構にはレールを設 置した(図3-b)。 図4に台車の概要を示す。台車は相似則の関係より、450mm角・厚 さ22mmの鉄板を4枚積層させ、M24ボルトにて一体化している。車
Basic Study on Seismic Behavior
of U-shaped Coaster
- Effect of Movement of Bogie on Seismic
Response Characteristics
-U字型コースターの
地震時挙動に関する基礎的研究
台車の移動が地震応答性状に及ぼす影響について
-した定常往復振動数状態では、エネルギー保存則が成立するため、 (2)、(3)式を導くことができる。ここでH0は台車の落下高さとする。 以上より、台車位置ごとの台車荷重P は (1) 式に (3) 式を代入する ことで、(4) 式で表される。 数値解析においては、(4) 式より求めた台車荷重 P を集中荷重として、 半円を40 分割した各節点に作用させた。 次に、台車の移動を模擬するため、節点間の移動時間の理論式(5) 式より各節点の荷重到達時間を算出し、各節点間の台車移動時間を 岡田 章 --- *1 宮里直也 --- *2 秦 一平 --- *2 廣石秀造 --- *3 前田浩靖 --- *4Akira OKADA --- *1 Naoya MIYASATO --- *2
Ippei HATA --- *2 Shuzo HIROISHI --- *3
Hiroyasu MAEDA --- *4
キーワード:
遊戯施設、振動実験、自由落下実験、モーションキャプチャ、時刻歴応答 解析
KeyWords:
Amusement rides and devices, Vibration test, Freely falling bogie, Motion Captur, History response analysis
界条件をローラー支持とし、強制変位させることで荷重を与えた。 モデル全体の減衰定数はRayleigh減衰を用いて1.0%とした。なお、 実験時には付加質量を支持する上部リニアガイド部分において、ガ イド間の摩擦等による減衰が働いたと考えられる。このことから、 解析モデルの頂点部にはダンパーを設定し、速度に応じた減衰効果 を持たせた。 図11に時刻歴応答解析結果と正弦波加振実験結果を併せて示す。 付加質量の影響が生じる試験体北側のみに着目し、頂部応答変位と 支柱軸力の時刻歴応答を比較した。なお、図では応答が確認された 時間の前後、計30秒間を示している。 ①北側頂部応答変位は、実験結果と解析結果がほぼ同様の波形を 示している。最大変位の差異もほとんど生じておらず、実験値と解 析値は良好に対応していると考えられる。 変化させた。 これにより、簡易的に各荷重の荷重倍率‐時間関係を設定するこ とで、各節点に順次荷重が作用するものとした。なお、解析モデル は前章(図7)と同様とした。 落下高さ1600mmとした場合の支柱軸力の時刻歴応答を図16-a,b に、架構水平反力の時刻歴応答を図16-cにそれぞれ示す。いずれも落 下から2.5秒間分を取り出した。支柱軸力は、南側・北側共に実験値 と解析値が良い対応を示した。架構水平反力も実験値と解析値が同 様の傾向を示し、角度45°付近で最大値を示した。また、実験値は台 車の減衰により徐々に値が低下するが、解析値は定常とみなしてい るため、その影響は見られない。 本解析手法を用いることで、支柱軸力と架構水平反力の最大値、 及び台車荷重の移動を概ね把握できることが示唆された。 5.正弦波加振時の台車自由落下実験 5-1.実験概要 台車落下と地震の2つの加速度応答の組合せによる影響を把握する ため、正弦波加振時の台車自由落下実験を行った。3章より得られた 共振時の正弦波を入力した状態で、台車の自由落下を行い、北側支 柱軸力の変動を計測した。落下高さは2700mmとし、落下のタイミン グを変化させて計10回の実験を行った。 5-2.実験結果及び考察 実験結果では、特に値の大きい北西側支柱に着目し、3章の実験結 果(台車落下-無)との比較を行う。図17-aに軸力の比較を示し、そ *1日本大学理工学部 教授・博士(工学) (〒101-8308 東京都千代田区神田駿河台 1-8-14) *2日本大学理工学部 准教授・博士(工学) *3日本大学短期大学部 助手・博士(工学) *4 JFE エンジニアリング(株) 修士(工学)
*1 Nihon Univ., Prof., Dr.Eng.
*2 Nihon Univ., Associate Prof., Dr.Eng. *3 Nihon Univ., Assist., Dr.Eng. *4 JFE Engineering Co., M.Eng.
の中でも特に変動の大きい2カ所を拡大した波形を図17-b,cに示す。 図17-aより、落下無と比べて落下有では、台車の移動による波形の 乱れが見られる。また、波形の乱れ度合は、台車が支柱に到達する 時間と、外力(正弦波)の作用する時間によって変化していること が把握された。 5-2-1.軸力変動量ΔN 落下無と落下有の波形を重ね合わせた際の、同時刻における両者 の軸力の差を「軸力変動量ΔN」と称する。図17-bに着目すると、台 車落下の直後に波形が大きく乱れており、1回目の台車到達に伴った 軸力変動であると考えられる。北西側支柱の軸力変動量ΔN①は、 4.85[kN]であり、4章で求めた静的な理論値及び、実験時に記録した 北西側支柱軸力の最大値(2.95[kN])の結果と比べ1.64倍となり、 無視できない大きさとなっている。これより、地震荷重と台車荷重 の2つの加速度応答の組合せは、単純な線形和では評価できない可能 性が示唆された。また、軸力変動は台車落下直後だけでなく、ある 程度時間が経過した後でも発生しており(図17-c)、両者の値にほぼ 差が見られなかった。台車の減衰による影響があるにも関わらず、 値の増減が見られなかったことから、台車の移動周期と架構の応答 が重なった場合等に、応力の増大が発生する可能性が考えられる。 5-2-2.安全率αによる評価 図18に台車荷重Pに安全率αを乗じた値と、全実験で得られた北西 側支柱の最大軸力変動を示す。ここで、理論値の算出には、図13-b と同様に静的解析を用いた。4-1で示した遊戯施設の設計基準によ る、安全率α=2.0とした場合には、計10回中2回の実験値が上回る が、α=3.0とすることで全ての実験において安全側となった。これよ り、当該荷重を短期荷重として静的に評価する場合には、α=3.0を乗 じることで安全側の評価が可能と考えられる。 6.まとめと今後の検討 本論文ではU字型コースターを対象とし、小規模模型振動実験と、 当該試験体を対象とした数値解析的検討を行った。本論で得られた 知見を以下に示す。 ・遊戯施設の構造設計において、長期荷重(運行時)を想定する場 合は台車荷重に安全率2.0を乗じ、短期荷重(地震時)を想定す る場合は台車荷重に安全率3.0を乗じることで、安全側の評価とな ることが示唆された。 ・台車移動解析では、本解析手法で台車荷重の移動を概ね模擬でき る可能性が示唆された。 今後の検討としては、主に下記の3点が挙げられる。 ・架構と台車の重量比をパラメータとした実験的検討 ・架構と台車の固有周期が一致したモデルによる検討 ・実大規模モデルによる数値解析的検 【謝辞】本研究の一部は平成25年度建築基準整備促進事業により行っ た。また、本論文の作成に当たり、日本大学大学院生の菅野貴行君、 清田久智君にご助力頂きました。ここに記して感謝の意を表します。 輪部分には溝形鋼を用い、上下二箇所にベアリングを設置し、走行 時の緩衝効果のために皿ばねを設けた。 3.正弦波加振実験及び数値解析モデルの構築 試験体の基本的振動特性の把握を目的として、正弦波加振実験を 行った。また、数値解析モデルの構築を行い、実験結果と比較する ことで、解析モデルの妥当性の検証を行った。なお、数値解析には 汎用解析プログラムADINA(ver.9.0)を用いた。 3-1.正弦波加振実験 図5に小規模模型振動実験の概要を示す。振動台には高速載荷アク チュエータ装置を用いた。試験体には相似則の関係により、北側頂 部に付加質量として錘を約5.8ton設置し、実規模モデルの固有周期に 近いモデルとした。なお、本モデルはU字型の直線部分が独立して振 動すること、及び台車を頂部からクレーンで落下させる関係上、錘 は北側にのみ設置した。また、柱治具と上部リニアガイド(図6)を設 置し、試験体には水平方向にのみ錘の慣性力が働くものとした。入 As for the structural design of the frame for roller coasters, the effect of the
movement of bogie on the frame has not been cleared. Against this backgrounds, in this paper, the influence of movement of bogie on the main frame was evaluated based on results from the vibration test using U-shaped small-scale model and numerical analysis. In numerical analysis, an analytical method for calculating the acceleration due to the movement of the bogie was proposed and verified. Lastly, the safety factor for the structural design in confirming the seismic safety was proposed.
φ114.3×4.5(主管) P -12@350(束材)L φ42.7×2.3(支柱) φ34×2.3@350(枕木) φ34×2.3(レール) 材料:STK490 材料:STK490 材料:STK490 材料:SS400 φ406.4×12( 主管 ) 主管 支管 φ267.4×9( 支管 ) φ711.2×22( 支柱 ) A A’ b) A-A’ 断面図 ( レール詳細 ) a) 架構立面図 a) 台車立面図 b) A-A’ 断面図 65000 108599 61765 23417 23417 3222 2500 1300 200 40 50 単位:[mm] ,材料:STK490 単位:[mm] A A’ 拡大 450 238 車輪部分拡大 単位:[mm] レール 溝形鋼 M24ボルト 板錘 (計140kg) 46° 44° 450 皿ばね レール ベアリング 図4 試験体 - 台車概要 図1 ローラーコースターの事例 図2 実規模モデルの概要 図3 試験体 - 架構概要
は遠心力の作用する半円部分のみとし、摩擦等による台車の減衰は 考慮しないものとする。 図14に台車荷重のモデル化概要を示す。実際の台車の移動は速度 の変化を伴う非等速円運動であるため、解析では台車の移動時間を 考慮した。まず、台車位置ごとの台車荷重Pを理論式により算出す る。理論式は以下の手順で導出される。 力変位は4.0mmで一定とし、加振周期は0.5秒から2.5秒の範囲で適宜 調整を行った。なお、本実験は、台車の移動が架構に及ぼす影響を 把握することを目的としているため、台車の荷重が作用するX方向 (面内方向)のみに加振を行った。 図7に実験より得られた応答倍率曲線を示す。応答倍率曲線より、 卓越周期が1.3秒となることが確認された。また、共振時の応答倍率 よりモデル全体の減衰定数hは約9.2%と求められるが、これはU字架 構の部材減衰に加えて、上部リニアガイド部分の摩擦減衰が寄与し たものと考えられる。 3-2.数値解析モデルの構築 小規模模型振動実験を行った試験体に対し、固有値解析及び時刻 歴応答解析を行った。また、解析結果と実験結果を比較することに よって、解析モデルの検証及び振動特性の把握を試みた。 3-2-1.固有値解析 図8に解析モデルの概要を示す。モデルはU字型の架構と支柱(鋼 管)から構成されており、規模・材料等は試験体と同様とした。頂 部の付加質量は質点でモデル化し、鉛直方向をローラーで支持する ことで、水平方向のみに慣性力が作用するものとした。また、リニ アガイドにより付荷質量と架構間に生じる摩擦力を考慮するため、 質点とU字架構頂部の節点を仮想材で繋ぎ、水平方向の変位が同一と なるように設定した。なお、U字架構はレール部分も含めた断面性能 を持つ様に1本の線材(Beam要素)に置換し、モデル化を行った。 図9に固有値解析の結果を示す。1次モードではY方向(面外方向) が卓越し、2次モードではX方向(面内方向)が卓越することが把握 された。今回対象としたX方向に注目すると、固有周期は実験値の 1.3秒に対し、解析値は1.19秒となった。固有周期の誤差は10%程度 であり、本解析モデルは概ね妥当性を有していると考えられる。 3-2-2.時刻歴応答解析及び正弦波加振実験結果の比較 ②北側支柱軸力は、①北側頂部応答変位の結果と比較すると位相 差が大きいものの、こちらも実験値と解析値は概ね一致する結果を 示した。なお、実験値では北東側・北西側2種類の結果を示すが、解 析値はどちらも同じ値のため、1種類のみの結果を示している。 実験値と解析値で誤差が生じた理由としては、加振実験時に試験 体頂部において付加質量部分が回転運動を生じていたこと等が考え られる。しかし、前述の通り誤差は小さいため、本解析モデルによ り、試験体の動的性状を概ね評価できることが確認された。 4.台車の移動荷重の評価(自由落下時) 台車から架構に及ぼされる加速度を考慮した荷重の評価方法を検 討するため、台車の自由落下を対象として、実験及び数値解析的に 検討を行う。なお、本章で得られた実験結果には適宜フーリエ変換 によるフィルター処理を行っている。 4-1.台車の自由落下実験 小規模模型を加振しない状態で、台車の自由落下実験を行った。 実験概要を図12に示す。なお、試験体及び台車は前章と同じものを 用いた。台車落下高さは振動台から1600mmと2700mmの2ケースと し、実験回数は各10回とした。電磁リフティングマグネットを用いた遠 隔操作による自由落下を行い、架構水平反力と支柱軸力の時刻歴応 答を計測した。また、台車の軌跡を時刻歴で把握するため、3次元動 画計測ソフトを用いたモーションキャプチャ(以下「MC」と称す)に よって台車の絶対座標を計測した(図12-b)。なお、MCのキャリブ レーション法には、既知の3次元座標を入力するDLT法[3]を用いた。 図13に高さ2700mmから自由落下した際の実験結果を示す。図中に は、MCより求めた台車位置を並記する。MCと荷重計の計測結果(図 13-a)より、架構水平反力は台車の落下に伴って徐々に増大し、台車 が45°付近に差し掛かった時に最大となることが把握された。また、 台車の移動に伴う荷重は、直線部分では台車の進行方向に作用する ため、架構水平反力の値は生じていない。 図13-bに全実験における南西側支柱の最大軸力を示す。軸力は各 支柱3箇所で計測しているため、3箇所の平均値とした。また、本実験 では台車の移動に伴う荷重の変化を把握するため、台車と架構の自重を差 し引いた値を示している。ここで、現在の遊戯施設の設計[1]では、台車 が与える荷重は、台車の固定荷重と積載荷重の和から遠心力を考慮 して算出した値に、割増係数をかけることで求められている。割増 係数は、移動する台車車輪の材種により異なり、一般的な鉄車輪を 使用する場合は、2.0と定められている。このため、本論文では台車 自重の法線方向成分と遠心力により算出した荷重P(図15)を用い て、静的解析により支柱軸力の理論値を算定し、理論値に安全率と してαを乗じた値を併せて示す。なお、荷重Pの算出方法は次節にて 説明する。 台車落下側のうち、特に軸力の大きい南西側支柱では、最大軸力 が全ての実験でα=1.0の結果を上回ることが確認された。α=2.0の結果 と比較すると、全実験において安全側の評価となるため、当該荷重 を静的に長期荷重として評価する場合には、α=2.0を乗じることで十 分安全性が確保できると考える。 1.はじめに 近年、ローラーコースター(図1)に代表される遊戯施設の大型化・ 高速化が進んでいる。遊戯施設は、建築基準法で工作物として規定 されており、規模によっては建築物と同様の構造安全性の確認が求 められている[1]。特に、主要な支持部分(客席部分を支える構造上主 要な部分)の構造については、平成19年の告示改正によって、高さ が60mを超える場合には時刻歴応答解析による安全性の確認が求めら れることとなった。このことから、告示改正以降は高さが60mを超え る遊戯施設の新規建設がほとんど行われていないのが現状である。 一方、告示(平成12年建告1419号他)では客席部分(以下「台 車」と称す)の荷重について加速度の評価方法等が明確にされてお らず、特に大規模施設における安全性の検証において課題が残され ている。現在明らかとなっていない事項は、主に以下の2点である。 ①台車から主要な支持部分に及ぼされる荷重の評価方法(長期荷重) ②地震荷重と台車荷重による2つの加速度応答の組合せに対する考え方 (短期荷重) なお、遊戯施設においては、長期とは通常の運行時を指すため、①を 長期荷重、②を短期荷重として取り扱う。 以上のような背景のもと、本研究では高さが60mを超える遊戯施設 の設計手法を確立するための基礎的データの蓄積を目的とし、基本 となるU字型コースターに対して台車の移動が地震時の主架構の応答 性状に及ぼす影響を検討した。本論では、最初に高さ65mの実規模コー スターの試設計を通じて基本検討モデルを設定し、正弦波加振実験に よりモデルの振動特性を把握した。次に実験で得られた固有周期と正 弦波加振時の応答を用いて、数値解析手法の妥当性の検証を行った。 続いて、台車の移動に伴う荷重変化が架構に及ぼす影響について、実 験的に検討を行うと共に、非等速円運動を考慮した数値解析結果と 比較することで、本解析手法の妥当性を検証した。最後に正弦波加振 と台車荷重の2つの加速度応答の組合せに関して実験的検討を行い、構 造設計時に安全性を確保するために必要な安全率を提案した。 2.基本検討モデルの設定及び試験体の設計 検討対象モデルは、一般に「ハーフパイプ」と呼ばれるU字型コー スターを取り上げた。本モデルは、直線部分と半円部分から構成さ れた比較的単純な形状を有していながらも、台車の自由落下と非等 速円運動を評価でき、検討結果を一般的なローラーコースターの設 計に反映できると考える。 試験体の設計にあたっては、まず初めに高さ65mのU字型コース ターを許容応力度計算により設計した。図2に実規模モデルの概要を 示す。次に、台車の移動時間の関係から、地震波の時間軸を実規模 と同様とするため、固有周波数特性同調解析型手法[2]による相似則 計算を採用し、振動装置の性能を考慮した上で、縮尺が約1/20の小 規模模型を制作した。 試験体の架構概要を図3に示す。なお、実際に台車が走行可能な試 験体とするため、架構と台車を別々に製作し、架構にはレールを設 置した(図3-b)。 図4に台車の概要を示す。台車は相似則の関係より、450mm角・厚 さ22mmの鉄板を4枚積層させ、M24ボルトにて一体化している。車 した定常往復振動数状態では、エネルギー保存則が成立するため、 (2)、(3)式を導くことができる。ここでH0は台車の落下高さとする。 以上より、台車位置ごとの台車荷重P は (1) 式に (3) 式を代入する ことで、(4) 式で表される。 数値解析においては、(4) 式より求めた台車荷重 P を集中荷重として、 界条件をローラー支持とし、強制変位させることで荷重を与えた。 モデル全体の減衰定数はRayleigh減衰を用いて1.0%とした。なお、 実験時には付加質量を支持する上部リニアガイド部分において、ガ イド間の摩擦等による減衰が働いたと考えられる。このことから、 解析モデルの頂点部にはダンパーを設定し、速度に応じた減衰効果 を持たせた。 図11に時刻歴応答解析結果と正弦波加振実験結果を併せて示す。 付加質量の影響が生じる試験体北側のみに着目し、頂部応答変位と 支柱軸力の時刻歴応答を比較した。なお、図では応答が確認された 時間の前後、計30秒間を示している。 変化させた。 これにより、簡易的に各荷重の荷重倍率‐時間関係を設定するこ とで、各節点に順次荷重が作用するものとした。なお、解析モデル は前章(図7)と同様とした。 落下高さ1600mmとした場合の支柱軸力の時刻歴応答を図16-a,b に、架構水平反力の時刻歴応答を図16-cにそれぞれ示す。いずれも落 下から2.5秒間分を取り出した。支柱軸力は、南側・北側共に実験値 と解析値が良い対応を示した。架構水平反力も実験値と解析値が同 様の傾向を示し、角度45°付近で最大値を示した。また、実験値は台 車の減衰により徐々に値が低下するが、解析値は定常とみなしてい るため、その影響は見られない。 本解析手法を用いることで、支柱軸力と架構水平反力の最大値、 及び台車荷重の移動を概ね把握できることが示唆された。 5.正弦波加振時の台車自由落下実験 5-1.実験概要 台車落下と地震の2つの加速度応答の組合せによる影響を把握する ため、正弦波加振時の台車自由落下実験を行った。3章より得られた 共振時の正弦波を入力した状態で、台車の自由落下を行い、北側支 柱軸力の変動を計測した。落下高さは2700mmとし、落下のタイミン グを変化させて計10回の実験を行った。 の中でも特に変動の大きい2カ所を拡大した波形を図17-b,cに示す。 図17-aより、落下無と比べて落下有では、台車の移動による波形の 乱れが見られる。また、波形の乱れ度合は、台車が支柱に到達する 時間と、外力(正弦波)の作用する時間によって変化していること が把握された。 5-2-1.軸力変動量ΔN 落下無と落下有の波形を重ね合わせた際の、同時刻における両者 の軸力の差を「軸力変動量ΔN」と称する。図17-bに着目すると、台 車落下の直後に波形が大きく乱れており、1回目の台車到達に伴った 軸力変動であると考えられる。北西側支柱の軸力変動量ΔN①は、 4.85[kN]であり、4章で求めた静的な理論値及び、実験時に記録した 北西側支柱軸力の最大値(2.95[kN])の結果と比べ1.64倍となり、 無視できない大きさとなっている。これより、地震荷重と台車荷重 の2つの加速度応答の組合せは、単純な線形和では評価できない可能 性が示唆された。また、軸力変動は台車落下直後だけでなく、ある 程度時間が経過した後でも発生しており(図17-c)、両者の値にほぼ 差が見られなかった。台車の減衰による影響があるにも関わらず、 値の増減が見られなかったことから、台車の移動周期と架構の応答 が重なった場合等に、応力の増大が発生する可能性が考えられる。 5-2-2.安全率αによる評価 図18に台車荷重Pに安全率αを乗じた値と、全実験で得られた北西 側支柱の最大軸力変動を示す。ここで、理論値の算出には、図13-b と同様に静的解析を用いた。4-1で示した遊戯施設の設計基準によ る、安全率α=2.0とした場合には、計10回中2回の実験値が上回る が、α=3.0とすることで全ての実験において安全側となった。これよ り、当該荷重を短期荷重として静的に評価する場合には、α=3.0を乗 じることで安全側の評価が可能と考えられる。 6.まとめと今後の検討 本論文ではU字型コースターを対象とし、小規模模型振動実験と、 当該試験体を対象とした数値解析的検討を行った。本論で得られた 知見を以下に示す。 ・遊戯施設の構造設計において、長期荷重(運行時)を想定する場 合は台車荷重に安全率2.0を乗じ、短期荷重(地震時)を想定す る場合は台車荷重に安全率3.0を乗じることで、安全側の評価とな ることが示唆された。 ・台車移動解析では、本解析手法で台車荷重の移動を概ね模擬でき る可能性が示唆された。 今後の検討としては、主に下記の3点が挙げられる。 ・架構と台車の重量比をパラメータとした実験的検討 ・架構と台車の固有周期が一致したモデルによる検討 ・実大規模モデルによる数値解析的検 【謝辞】本研究の一部は平成25年度建築基準整備促進事業により行っ た。また、本論文の作成に当たり、日本大学大学院生の菅野貴行君、 清田久智君にご助力頂きました。ここに記して感謝の意を表します。 輪部分には溝形鋼を用い、上下二箇所にベアリングを設置し、走行 時の緩衝効果のために皿ばねを設けた。 3.正弦波加振実験及び数値解析モデルの構築 試験体の基本的振動特性の把握を目的として、正弦波加振実験を 行った。また、数値解析モデルの構築を行い、実験結果と比較する ことで、解析モデルの妥当性の検証を行った。なお、数値解析には 汎用解析プログラムADINA(ver.9.0)を用いた。 3-1.正弦波加振実験 図5に小規模模型振動実験の概要を示す。振動台には高速載荷アク チュエータ装置を用いた。試験体には相似則の関係により、北側頂 部に付加質量として錘を約5.8ton設置し、実規模モデルの固有周期に 近いモデルとした。なお、本モデルはU字型の直線部分が独立して振 動すること、及び台車を頂部からクレーンで落下させる関係上、錘 は北側にのみ設置した。また、柱治具と上部リニアガイド(図6)を設 置し、試験体には水平方向にのみ錘の慣性力が働くものとした。入 レーザー変位計 (X ・ Y 方向変位測定 ) 付加質量( 約 5.8[ton] ) 荷重計( 水平反力測定 ) 変位計(X 方向測定 ) アクチュエータ 加速度計 X Y Z 上部リニアガイド 柱治具 単位:[mm] 南側 北側 200 ■解析モデル ■部材諸元 ■付加質量部分詳細 ■U 字架構の断面形状 質点 (付加質量) 弾性係数 ポアソン比 密度 : 1個2.9 [ton] (X・Y方向のみ作用) : 205,000 [N/mm2] : 0.3 : 7.5 [g/cm3] 断面積 断面2次モーメントIy 断面2次モーメントIx 断面2次極モーメントIp 20.10 [cm2] 701.00 [cm4] 698.21 [cm4] 1399.21 [cm4] : : : : 質点(付加質量) 仮想材〈Spring〉 バネ定数 k≒∞ 仮想材 A A’ A’ 質点(2.9 [ton]) U字架構 ローラー (X・Y方向Free) 支柱〈Beam〉 φ42.7×2.3 固定端 ※U字架構 (下記参照)〈Beam〉 φ114.3×4.5 + φ34.0×2.3(2本) Y X X Y Z 図心 (0,83.1) レールの剛性を考慮し、 左図の断面 性能を持つようにモデル化を行った A 点と A’ 点は同一変位設定 φ34.0×2.3 φ114.3×4.5 X Y Z X Y Z 単位:[mm] 114.3 40 34 【全実験の種類】 ①正弦波加振 ②地震波加振 ③台車の自由落下 ④正弦波加振+台車の自由落下 ⑤地震波加振+台車の自由落下 【正弦波加振概要】 加振方向 :X 方向 ( 面内方向 ) 入力周期 :0.5 ~ 2.5[s] ( 適宜調整 ) 入力変位 :4.0[mm] ( 一定 ) 計測時間 :60[s] ※本論では①③④の実験結果を示す ひずみゲージ ( 軸力測定 ) 入力周期[S] ※共振時の応答倍率 : 1/2h ≒ 5.42 h ≒ 1/(2 ×5.42) = 0.092 ∴ h ≒ 9.2[%] 変位 応 答 倍 率 4 6 2 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 Tx ≒ 1.3[s] 変形前 モード図(20倍) 1 次モード 2 次モード (Y 方向) (X 方向) 5.42 図8 数値解析モデルの概要 図5 小規模模型振動実験の概要 は遠心力の作用する半円部分のみとし、摩擦等による台車の減衰は 考慮しないものとする。 図14に台車荷重のモデル化概要を示す。実際の台車の移動は速度 の変化を伴う非等速円運動であるため、解析では台車の移動時間を 考慮した。まず、台車位置ごとの台車荷重Pを理論式により算出す る。理論式は以下の手順で導出される。 力変位は4.0mmで一定とし、加振周期は0.5秒から2.5秒の範囲で適宜 調整を行った。なお、本実験は、台車の移動が架構に及ぼす影響を 把握することを目的としているため、台車の荷重が作用するX方向 (面内方向)のみに加振を行った。 図7に実験より得られた応答倍率曲線を示す。応答倍率曲線より、 卓越周期が1.3秒となることが確認された。また、共振時の応答倍率 よりモデル全体の減衰定数hは約9.2%と求められるが、これはU字架 構の部材減衰に加えて、上部リニアガイド部分の摩擦減衰が寄与し たものと考えられる。 3-2.数値解析モデルの構築 小規模模型振動実験を行った試験体に対し、固有値解析及び時刻 歴応答解析を行った。また、解析結果と実験結果を比較することに よって、解析モデルの検証及び振動特性の把握を試みた。 3-2-1.固有値解析 図8に解析モデルの概要を示す。モデルはU字型の架構と支柱(鋼 管)から構成されており、規模・材料等は試験体と同様とした。頂 部の付加質量は質点でモデル化し、鉛直方向をローラーで支持する ことで、水平方向のみに慣性力が作用するものとした。また、リニ アガイドにより付荷質量と架構間に生じる摩擦力を考慮するため、 質点とU字架構頂部の節点を仮想材で繋ぎ、水平方向の変位が同一と なるように設定した。なお、U字架構はレール部分も含めた断面性能 を持つ様に1本の線材(Beam要素)に置換し、モデル化を行った。 図9に固有値解析の結果を示す。1次モードではY方向(面外方向) が卓越し、2次モードではX方向(面内方向)が卓越することが把握 された。今回対象としたX方向に注目すると、固有周期は実験値の 1.3秒に対し、解析値は1.19秒となった。固有周期の誤差は10%程度 であり、本解析モデルは概ね妥当性を有していると考えられる。 3-2-2.時刻歴応答解析及び正弦波加振実験結果の比較 ②北側支柱軸力は、①北側頂部応答変位の結果と比較すると位相 差が大きいものの、こちらも実験値と解析値は概ね一致する結果を 示した。なお、実験値では北東側・北西側2種類の結果を示すが、解 析値はどちらも同じ値のため、1種類のみの結果を示している。 実験値と解析値で誤差が生じた理由としては、加振実験時に試験 体頂部において付加質量部分が回転運動を生じていたこと等が考え られる。しかし、前述の通り誤差は小さいため、本解析モデルによ り、試験体の動的性状を概ね評価できることが確認された。 4.台車の移動荷重の評価(自由落下時) 台車から架構に及ぼされる加速度を考慮した荷重の評価方法を検 討するため、台車の自由落下を対象として、実験及び数値解析的に 検討を行う。なお、本章で得られた実験結果には適宜フーリエ変換 によるフィルター処理を行っている。 4-1.台車の自由落下実験 小規模模型を加振しない状態で、台車の自由落下実験を行った。 実験概要を図12に示す。なお、試験体及び台車は前章と同じものを 用いた。台車落下高さは振動台から1600mmと2700mmの2ケースと し、実験回数は各10回とした。電磁リフティングマグネットを用いた遠 隔操作による自由落下を行い、架構水平反力と支柱軸力の時刻歴応 答を計測した。また、台車の軌跡を時刻歴で把握するため、3次元動 画計測ソフトを用いたモーションキャプチャ(以下「MC」と称す)に よって台車の絶対座標を計測した(図12-b)。なお、MCのキャリブ レーション法には、既知の3次元座標を入力するDLT法[3]を用いた。 図13に高さ2700mmから自由落下した際の実験結果を示す。図中に は、MCより求めた台車位置を並記する。MCと荷重計の計測結果(図 13-a)より、架構水平反力は台車の落下に伴って徐々に増大し、台車 が45°付近に差し掛かった時に最大となることが把握された。また、 台車の移動に伴う荷重は、直線部分では台車の進行方向に作用する ため、架構水平反力の値は生じていない。 図13-bに全実験における南西側支柱の最大軸力を示す。軸力は各 支柱3箇所で計測しているため、3箇所の平均値とした。また、本実験 では台車の移動に伴う荷重の変化を把握するため、台車と架構の自重を差 し引いた値を示している。ここで、現在の遊戯施設の設計[1]では、台車 が与える荷重は、台車の固定荷重と積載荷重の和から遠心力を考慮 して算出した値に、割増係数をかけることで求められている。割増 係数は、移動する台車車輪の材種により異なり、一般的な鉄車輪を 使用する場合は、2.0と定められている。このため、本論文では台車 自重の法線方向成分と遠心力により算出した荷重P(図15)を用い て、静的解析により支柱軸力の理論値を算定し、理論値に安全率と してαを乗じた値を併せて示す。なお、荷重Pの算出方法は次節にて 説明する。 台車落下側のうち、特に軸力の大きい南西側支柱では、最大軸力 が全ての実験でα=1.0の結果を上回ることが確認された。α=2.0の結果 と比較すると、全実験において安全側の評価となるため、当該荷重 を静的に長期荷重として評価する場合には、α=2.0を乗じることで十 分安全性が確保できると考える。 1.はじめに 近年、ローラーコースター(図1)に代表される遊戯施設の大型化・ 高速化が進んでいる。遊戯施設は、建築基準法で工作物として規定 されており、規模によっては建築物と同様の構造安全性の確認が求 められている[1]。特に、主要な支持部分(客席部分を支える構造上主 要な部分)の構造については、平成19年の告示改正によって、高さ が60mを超える場合には時刻歴応答解析による安全性の確認が求めら れることとなった。このことから、告示改正以降は高さが60mを超え る遊戯施設の新規建設がほとんど行われていないのが現状である。 一方、告示(平成12年建告1419号他)では客席部分(以下「台 車」と称す)の荷重について加速度の評価方法等が明確にされてお らず、特に大規模施設における安全性の検証において課題が残され ている。現在明らかとなっていない事項は、主に以下の2点である。 ①台車から主要な支持部分に及ぼされる荷重の評価方法(長期荷重) ②地震荷重と台車荷重による2つの加速度応答の組合せに対する考え方 (短期荷重) なお、遊戯施設においては、長期とは通常の運行時を指すため、①を 長期荷重、②を短期荷重として取り扱う。 以上のような背景のもと、本研究では高さが60mを超える遊戯施設 の設計手法を確立するための基礎的データの蓄積を目的とし、基本 となるU字型コースターに対して台車の移動が地震時の主架構の応答 性状に及ぼす影響を検討した。本論では、最初に高さ65mの実規模コー スターの試設計を通じて基本検討モデルを設定し、正弦波加振実験に よりモデルの振動特性を把握した。次に実験で得られた固有周期と正 弦波加振時の応答を用いて、数値解析手法の妥当性の検証を行った。 続いて、台車の移動に伴う荷重変化が架構に及ぼす影響について、実 験的に検討を行うと共に、非等速円運動を考慮した数値解析結果と 比較することで、本解析手法の妥当性を検証した。最後に正弦波加振 と台車荷重の2つの加速度応答の組合せに関して実験的検討を行い、構 造設計時に安全性を確保するために必要な安全率を提案した。 2.基本検討モデルの設定及び試験体の設計 検討対象モデルは、一般に「ハーフパイプ」と呼ばれるU字型コー スターを取り上げた。本モデルは、直線部分と半円部分から構成さ れた比較的単純な形状を有していながらも、台車の自由落下と非等 速円運動を評価でき、検討結果を一般的なローラーコースターの設 計に反映できると考える。 試験体の設計にあたっては、まず初めに高さ65mのU字型コース ターを許容応力度計算により設計した。図2に実規模モデルの概要を 示す。次に、台車の移動時間の関係から、地震波の時間軸を実規模 と同様とするため、固有周波数特性同調解析型手法[2]による相似則 計算を採用し、振動装置の性能を考慮した上で、縮尺が約1/20の小 規模模型を制作した。 試験体の架構概要を図3に示す。なお、実際に台車が走行可能な試 験体とするため、架構と台車を別々に製作し、架構にはレールを設 置した(図3-b)。 図4に台車の概要を示す。台車は相似則の関係より、450mm角・厚 さ22mmの鉄板を4枚積層させ、M24ボルトにて一体化している。車 した定常往復振動数状態では、エネルギー保存則が成立するため、 (2)、(3)式を導くことができる。ここでH0は台車の落下高さとする。 以上より、台車位置ごとの台車荷重P は (1) 式に (3) 式を代入する ことで、(4) 式で表される。 数値解析においては、(4) 式より求めた台車荷重 P を集中荷重として、 界条件をローラー支持とし、強制変位させることで荷重を与えた。 モデル全体の減衰定数はRayleigh減衰を用いて1.0%とした。なお、 実験時には付加質量を支持する上部リニアガイド部分において、ガ イド間の摩擦等による減衰が働いたと考えられる。このことから、 解析モデルの頂点部にはダンパーを設定し、速度に応じた減衰効果 を持たせた。 図11に時刻歴応答解析結果と正弦波加振実験結果を併せて示す。 付加質量の影響が生じる試験体北側のみに着目し、頂部応答変位と 支柱軸力の時刻歴応答を比較した。なお、図では応答が確認された 時間の前後、計30秒間を示している。 変化させた。 これにより、簡易的に各荷重の荷重倍率‐時間関係を設定するこ とで、各節点に順次荷重が作用するものとした。なお、解析モデル は前章(図7)と同様とした。 落下高さ1600mmとした場合の支柱軸力の時刻歴応答を図16-a,b に、架構水平反力の時刻歴応答を図16-cにそれぞれ示す。いずれも落 下から2.5秒間分を取り出した。支柱軸力は、南側・北側共に実験値 と解析値が良い対応を示した。架構水平反力も実験値と解析値が同 様の傾向を示し、角度45°付近で最大値を示した。また、実験値は台 車の減衰により徐々に値が低下するが、解析値は定常とみなしてい るため、その影響は見られない。 本解析手法を用いることで、支柱軸力と架構水平反力の最大値、 及び台車荷重の移動を概ね把握できることが示唆された。 5.正弦波加振時の台車自由落下実験 5-1.実験概要 台車落下と地震の2つの加速度応答の組合せによる影響を把握する ため、正弦波加振時の台車自由落下実験を行った。3章より得られた 共振時の正弦波を入力した状態で、台車の自由落下を行い、北側支 柱軸力の変動を計測した。落下高さは2700mmとし、落下のタイミン グを変化させて計10回の実験を行った。 の中でも特に変動の大きい2カ所を拡大した波形を図17-b,cに示す。 図17-aより、落下無と比べて落下有では、台車の移動による波形の 乱れが見られる。また、波形の乱れ度合は、台車が支柱に到達する 時間と、外力(正弦波)の作用する時間によって変化していること が把握された。 5-2-1.軸力変動量ΔN 落下無と落下有の波形を重ね合わせた際の、同時刻における両者 の軸力の差を「軸力変動量ΔN」と称する。図17-bに着目すると、台 車落下の直後に波形が大きく乱れており、1回目の台車到達に伴った 軸力変動であると考えられる。北西側支柱の軸力変動量ΔN①は、 4.85[kN]であり、4章で求めた静的な理論値及び、実験時に記録した 北西側支柱軸力の最大値(2.95[kN])の結果と比べ1.64倍となり、 無視できない大きさとなっている。これより、地震荷重と台車荷重 の2つの加速度応答の組合せは、単純な線形和では評価できない可能 性が示唆された。また、軸力変動は台車落下直後だけでなく、ある 程度時間が経過した後でも発生しており(図17-c)、両者の値にほぼ 差が見られなかった。台車の減衰による影響があるにも関わらず、 値の増減が見られなかったことから、台車の移動周期と架構の応答 が重なった場合等に、応力の増大が発生する可能性が考えられる。 5-2-2.安全率αによる評価 図18に台車荷重Pに安全率αを乗じた値と、全実験で得られた北西 側支柱の最大軸力変動を示す。ここで、理論値の算出には、図13-b と同様に静的解析を用いた。4-1で示した遊戯施設の設計基準によ る、安全率α=2.0とした場合には、計10回中2回の実験値が上回る が、α=3.0とすることで全ての実験において安全側となった。これよ り、当該荷重を短期荷重として静的に評価する場合には、α=3.0を乗 じることで安全側の評価が可能と考えられる。 6.まとめと今後の検討 本論文ではU字型コースターを対象とし、小規模模型振動実験と、 当該試験体を対象とした数値解析的検討を行った。本論で得られた 知見を以下に示す。 ・遊戯施設の構造設計において、長期荷重(運行時)を想定する場 合は台車荷重に安全率2.0を乗じ、短期荷重(地震時)を想定す る場合は台車荷重に安全率3.0を乗じることで、安全側の評価とな ることが示唆された。 ・台車移動解析では、本解析手法で台車荷重の移動を概ね模擬でき る可能性が示唆された。 今後の検討としては、主に下記の3点が挙げられる。 ・架構と台車の重量比をパラメータとした実験的検討 ・架構と台車の固有周期が一致したモデルによる検討 ・実大規模モデルによる数値解析的検 【謝辞】本研究の一部は平成25年度建築基準整備促進事業により行っ た。また、本論文の作成に当たり、日本大学大学院生の菅野貴行君、 清田久智君にご助力頂きました。ここに記して感謝の意を表します。 輪部分には溝形鋼を用い、上下二箇所にベアリングを設置し、走行 時の緩衝効果のために皿ばねを設けた。 3.正弦波加振実験及び数値解析モデルの構築 試験体の基本的振動特性の把握を目的として、正弦波加振実験を 行った。また、数値解析モデルの構築を行い、実験結果と比較する ことで、解析モデルの妥当性の検証を行った。なお、数値解析には 汎用解析プログラムADINA(ver.9.0)を用いた。 3-1.正弦波加振実験 図5に小規模模型振動実験の概要を示す。振動台には高速載荷アク チュエータ装置を用いた。試験体には相似則の関係により、北側頂 部に付加質量として錘を約5.8ton設置し、実規模モデルの固有周期に 近いモデルとした。なお、本モデルはU字型の直線部分が独立して振 動すること、及び台車を頂部からクレーンで落下させる関係上、錘 は北側にのみ設置した。また、柱治具と上部リニアガイド(図6)を設 置し、試験体には水平方向にのみ錘の慣性力が働くものとした。入 X 基点名称 Y Z 0 P1 0 0 3435 P2 0 0 3435 P3 3130 0 0 P4 3150 0 0 P5 -222 1835 3435 P6 0 2590 3435 P7 3130 2590 0 P8 3370 1835 1600 2700 単位:[mm] 南 北 試験体全体 MC 計測状況 台車初期状態 支柱軸力 既知の3 次元座標 ( 基点 ) 位置 ※3 階から撮影を行い、 振動台の 4 隅には 基点貼付用の柱を設置した b) MC 計測概要 a) 自由落下実験概要 ①カメラ ②試験体 カメラ詳細 P5 P1 P2 P6 P3 P7 P4 P8 原点 電磁リフティングマグネット -6 -3 0 3 6 0 10 20 30 40 50 60 [mm] [N] [s] [mm/s] 減 衰 力 FD 速度U FD = C × UN ・ ・ 200 400 0 0 50 100 C=300 , N=0.05 時間 振 動 台応 答 変 位 ■境界条件 ■入力波形:SIN 波 ( 共振時振動台変位 ) ■減衰定数h 北側支柱 北 南 Rayleigh 減衰を用いて h1 = h2 = 1.0% と仮定 強制変位入力点 非線形ダンパー 設定点 北側頂部 ローラー 解析値 実験値 変位[mm] 0 0 -20 -40 20 40 5 10 15 20 25 30 時間[s] 北東側 北西側 解析値 支柱軸力[kN] 0 0 -10 -20 10 20 5 10 15 20 25 30 時間[s] ①北側頂部応答変位 ②北側支柱軸力 架構水平反力 X Y Z [mm] 図11 時刻歴応答解析結果と実験結果の比較 図10 時刻歴応答解析概要 図12 自由落下実験概要