Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
マ
ル
チ
メ
デ
ィ
ア
環
境
に お
け
る
デ ザ
イ
ン
教育
The
DesignEducation
based
onMultimedia
Environment
源田悦夫 九 州 芸術工科 大 学
1
メディ ア テ クノ ロ ジー
の進 展に伴 うデザイン の概 念の 変 質 デ ザ インは 目的に したがっ て、
概 念を具 現 化 す る ための プロセ ス とそれ に基づい て生 成 さ れ る具 体的 な対象
物や環 境である と考 えてい る。
従 来 デ ザ インが、
イ ンダス トリ ア ル デザ イン、
ビ ジユ ァ ル コ ミュ ニ ケー
シ ョン デザ イン とい っ た 対象に分 類され、
デザイン の対 象と な る形状 や視 覚的な 要 素の追 及な ら びにその記 号 的な意 味づ け などが そ の中心 的な問 題であっ た 。し か し、 デジタ ル環 境を前 提とした デザイン に おい ては
、
人 間 対 人 間 に おける情 報 伝 達の過 程や、 人 間が 「もの」を形成 してい く過程の中に、 人 間対コ ン ピュ
ー
タ(
HumanComputer
lnteraction)
及び コ ン ピュー
タ対コ ン ピュー
タとの コ ミュ ニ ケー
シ ョン の過 程 が介 在し、
従 来の デザイン領 域で は概 して取 り扱わ れ な かっ た、
こ れ らの伝 達 過程にお ける 問 題 が 顕在 化して きてい る。 こ こで はマ ルチ メ ディ アの 進 展 を背 景と し た デザ イン の状況を 踏 まえ、
あ らたな教 育 環 境 確立のた めの諸 条 件につ い てのべ る。 2 デジタ ル 環境に お ける制作のプロセ スデ ジタ ル環 境における制作過 程につ い て考 えた と きに
、
デザ イ ナー (
設 計者)
は漠
然と し た ア イ デ アやコ ン セプトな ど をメン タル(
心 的)
な イ メー
ジ と して明 確 化 し 、 その考 え方の流れや 造形 要 素を整理 し、
計 算 機に とっ て理解できる ような手 順に組み立て直 す 必 要がある。 この時デ ザ イ ナー
は、 設計 要 因の検 討と ともに、 情 報の収集・
選 択、
情 報の体 系 化・
構 造化 行 う。 そ して この 手 順に し た が っ て、
プロ グラ ミ ング や デー
タの作 成を行い、
処理の結果 を、
映 像や 具体 的 な 形 態と して出 力 す る。
こ こ で生 成 さ れ た イメー
ジ が ア イ デ アや心 的 な イメー
ジ と対 応しない 場合には、
デー
タやプロGENDA
Etsuo
Kyushu lnstitute of Design
グラ ミング
、
造形 プロ セ スな どの変 更を行ない、
よ り設計 意図に近い イメー
ジ を求め てい く。
3
情報の一
元化 そ して再 編 マ ルチメディ アを 前 提 と した デザインに おい て は、
文 章、
画像(
動 画、 静止画な ど)
、
サ ウンド (音 声、 音 楽、 警 告 音な ど)、2D ・3D
の形状 デー
タ、
環境 条 件 (位 置、 温度、 重 量 な ど)
、
時系 列変化 要 素な ど さ まざま な 情 報 を デ ジ タル デー
タと して一
一
元的に取 り扱 うこ とがで き、 こ れ らの要 素を、 設 計要 件に応じ て 処 理、
再編し、 新た な情 報と して 表現 する こ と が可能となっ た。 こ こ で は 最終的 な 表出方法
は異 なっ てい ても、
デー
タ の取 扱におい ては、
同一
の次元で考
える ことが行な わ れ る。4
マ ルチメディ ア に対 応し た教 育環 境の提 案 メディア テク ノロ ジー
の進 展に よっ て我々 は、
多
様 な 情報 伝 達の 手段を獲 得 し た。 し か しそこに は、
情 報獲 得の手 法や設 計 意 図のコ ン ピュー
タへ の 的確な伝達など メディ ァ環境を柔軟に使い こな す 能 力が要 求さ れ る。 メ デ ィア に対 する読み書 き 能 力 な しに は、
もは や情 報の弱 者と な る。
4−1
コ ミュ ニ ケー
ショ ン の共 通基 盤 に対す
る知 識コ ンテン ツ の設 計に当たっ て は
、
コ ン ピュー
タ、
人 間 を 問わず、
情 報の送 り手、受
け手 相互の コ ミ ュ ニ ケー
シ ョ ンの背 景と な る共通 基 盤(
common ground )につ い て考慮 すること が 重要で あ る。 コ ミ ュ ニ ケー
シ ョ ンにおける社 会 的な背 景、
文化的 な背
景、
教 育 的な背景な どへ の配 慮と と もに、
コ ン ピュー
タ相互 における性 能 (処理 速 度、
表 示 能力 な ど)や通 信 環 境(
通信速度、
情報 量、
通信 規約 (protOcol)な ど)
もコ ミュ ニ ケー
ション の基 盤と し て考 えなければ な ら ない 。 クリエー
テ ィブ な領
域におい て も、
コ ミュ ニ ケー
46 sPEcIAL IssuEoF JSSD vol
.
5 NQ.
3 1998 デ ザ イ ン学 研究特 集 号N工 工
一
Eleotronio Library ServioeJapanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
ショ ンデ ザ イン (設 計 方 法論
、
記号論、
認知 科 学 な ど)、
マ ル チ メ デ ィ ア関連要 素技
術(
シス テム 、 プロ グ ラミ ング、
画像処 理、
計 算 機 幾 何 学、
情 報 の 可視 化な ど)な どの 関 連分野 と と もに社 会 論、 知 的所 有 権なども含め た広範な領域に対 する理 解 能 力 が必 要である。42
知の共有・
知の ネッ トワー
ク設 計の 意図の具 体 化を支援 するために
、
惰 報資
源の 共 有体 制 を確立する こ とが求められ る。 教 育 組織や産 学を越 えてデ ザ イン関 連 情 報 を収 集し デー
タベー
ス化 し、
その知の資 源をそれぞれ のデ ザ イン教 育 場で自由に シェ ァー
で きる ような条 件の 整 備 や体 制を確立 しな ければ な ら ない。
従来の グ ラフ ィッ ク デ ザ インや 工 業デザイン、
アー
トな ど の関連分 野における画 像 情 報の収 集やCG 、
CAD
、 エ ン ター
テイメ ン ト、 メ ディ ア アー
トな ど に おけ る、
デー
タ やプロ グラム、 デザイ ン教 育教
材、 な どがその対 象と な る。 過 去か ら将 来にわたっ てデ ザインに 関する情 報の継 続 的 な情 報 集積は膨 大な 文 化 的 財産と な り、
この シェ アー
シス テムを 実 現 させる た めに も、
知 的所 有権 に関する問題を含め、
各デ ザ イン 団体や学会、
教 育 機関等が 組織 的に検 討 してい か なければな らない 。 こう
し た知の基 盤 の もと に、 ネッ ト ワー
ク を 充実さ せ、 コ ラボレー
シ ョンを実 現させ 、 情 報の集 中に よる格差を是正 する こ とにより、
独 自の教 育 方 法 論の展 開 を全 地 球にむ け て行う
こと が 可能となる。4−3
論理的な 思考と観 察・
表現 能力の 重要 性現 在デザイン支 援ソ フ トは
、
エ キス パー
ト化が 進み、 パ ッケー
ジ化さ れ、 容 易に一
般の人々 に も 専 門 家に近い 技の獲 得ができる ようになっ た。 こう
した状況の 中で専 門的なデザイナー、
ク リエー
タ と して必 要 な 要 素 は、
各自の創 作 概念 を論 理 的にコ ン ピュー
タ に伝達 す ることがで きる能力で ある。た とえば
、
Photoshop という
画 像 処理ソ フ ト は、
内蔵さ れ てい るフィル ター
を適 当に使用 す るこ と である種の高度 なCG
画 像が入 手で きる。
しか しこ れ では、 誰が やっ ても類似 し た画像 しかえ られ な い 。 本 質 的な創造 に係わる部分は、 他 人の作っ た 画像処 理フィル ター
に委ねら れてブラッ クボッ ク ス化さ れてし まっ てい おり、
利 用 者 は わずかな 可 能性の部 分だけで制 作 して い る に すぎない 。 こ れ は3D グラフ ィックス やCAD
ソ フ トな どで も同様の ことが言 える。
多 くの コ ンピュ
ー
タによ るデザイン教 育では、
表 現 能力の欠如 を補 うもの と して、 既 存ソ フ トの 使用法のみを教 育してい る 例 があまりに多い 。 し か し論理的思考
の 基 盤 は数 学や物 理 学であ り、
そ れ を実 現 する もの はプロ グラ ミン グ能力である。 ま た一
方で創 造 能力 を支 援す る ものは、
デザイン の制 作 過程を通し た経 験や実
体の観
察、
分 析、 表 現 能 力、
美 的評 価 能力である。 理数 系、
文化系、 美術 系とい っ た ジャ ンルを前 提とした教 育で はな く、 それぞれの要 素 を 総 合的に取 り扱 うこ とが、
デ ジタ ル環 境に おける創 作 行 為につ ながっ てい る こと を教 育者 側 が認 識 することが、 必要 なの では ない だろうか。
5
おわりにマ ル チメ デ ィア環 境に おけるデ ザ イン教 育には、 これ を支 援 する機 材の 整備 も重 要である。 情報 資 源獲 得の た めのネッ トワ
ー
ク や サー
バー、
作業を 行 うた めの計 算 機・
支援ソ フ トの充実が 前提と な る。 また こ れ らの 環境を継 続 して維 持す る た めの 十分 な保 守体制 も不 可避である。 情 報 環 境 整備に 係わ る負
担 を軽 減さ せ、
日々伸 展 する情報化社会 に対 応してい くた めには、 産 学 協同 に よ る研 究 支 援 体制が求められ る。 もは や教 育者は単に知識 や 手 法 を教 えるの で は ない 。 十分 な環 境の も とに、 情 報 獲得の手 段を与 えれ ば む しろ時 間と柔軟 な頭 脳を持つ 学 生の側の 方が、 エ キスパー
トとなるこ とすら珍し くはない。
教 育者 側は、 専門性とと も に、
充実し た人 的 環 境 や 作業 環 境を提供 する こと がで き る能力や総 合 的に研
究をマ ネー
ジし てい く 能力が必 要である。デ ザ イ ン学 研 究 特 集 号 SPECtAL ISSVE OF JSSD voL 5 No