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文脈としての自己/脱フュージョンは加齢ステレオタイプへの行動的同化を緩和する

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-35 190

-文脈としての自己/脱フュージョンは加齢ステレオタイプへの行動的同化を緩和する

○橋本 光平1)、武藤 崇2) 1 )同志社大学大学院心理学研究科、 2 )同志社大学心理学部 【目的】 加齢に関するネガティブなステレオタイプを提示す ることで,課題における高齢者のパフォーマンスが低 下する。この現象は加齢ステレオタイプへの行動的同 化(Behavioral assimilation to age stereotype; 以下,BAASとする)と呼ばれる。過去の研究によって, 記憶課題,認知課題,身体課題,スキル獲得など広範 な領域でBAASが起こることが示されてきた(Lamount, Swift, & Abrams, 2015)。このようにBAASは,様々な 課題における高齢者のパフォーマンスに影響する。し かし,これまでにBAASの効果を緩和するような介入は 提出されていない。橋本・武藤(2017)では,自己に 関する言語的内容との認知的フュージョンの傾向が高 い個人において,BAASの効果が強くなることが示され た。そこで本研究では,自己に関する言語的内容がも つ,行動に対する影響力を弱める介入,すなわち「文 脈としての自己」と「脱フュージョン」が,BAASの効 果を緩和することができるかどうかを検討した。さら に,ベースラインの自己の状態,すなわち心理的柔軟 性モデルにおける三つの自己の体験の個人差が介入の 効果をどのように調整するかも検討した。 【方法】 参加者 全国シルバー人材センター事業協会の会員59 名(男性30名,女性29名,平均年齢=72.92歳,標準偏 差=3.67,範囲=65-80)が実験に参加した。 実験デザイン 実験デザインは, 1 要因被験者間計画 であった。参加者は介入を受ける条件と統制条件の 2 つの条件のうちいずれかにランダムに割り当てられ た。 従属変数の測定 WAIS-3の下位検査である積木模様に よって,空間認知能力のパフォーマンスを測定した。 得点範囲は 0 から68点である。 調整変数の測定 三つの自己体験尺度(Three Senses of the Selves Questionnaire; 以下,TSSQとする) の 4 つの下位尺度を使用した。( a )「TSSQ-概念化」 は,自己に関する言語的内容との認知的フュージョン の傾向を測定する。( b )「TSSQ-今この瞬間」は,今, この瞬間の体験を記述できるかどうかを測定する。 ( c )「TSSQ-視点取り」は,思考を含む私的出来事と 距離を取ることができるかどうかを測定する。( d ) 「TSSQ-アクティブ」は,今この瞬間への気づきと視点 取りによって可能となる,外的環境に柔軟に適応でき る程度を測定する。 交絡変数の測定 従属変数に影響すると考えられる個 人のベースラインの認知機能と教育歴を測定した。個 人のベースラインの認知機能は,認知症の簡易スク リーニング検査であるMMSEによって測定した。 手続き まず初めに参加者に対して実験の内容と目的 を説明した。実験は,「知能の年齢差に関する研究」 として説明された。次に,MMSEを実施した。その後, 年齢,教育歴,TSSQを含む調査票に回答を求めた。続 いて実験的操作を導入した。介入条件の参加者に対し て,文脈としての自己と脱フュージョンから構成され る介入を実施した。「リラックスして知能課題に取り 組んでもらうための体験的エクササイズ」として介入 を紹介した。統制条件の参加者に対しては一般的な項 目に関するインタビューを行った。質問項目は,実験 室までの交通手段,現在,過去の仕事,趣味などで あった。実験的操作を終えた後に,加齢に関するステ レオタイプ情報を提示した。ステレオタイプ情報は, 課題の説明という枠組みのなかで行った。その後,積 木模様を実施した。 倫理的配慮 本研究は第一著者の所属する大学に設置 されている倫理審査委員会による承認を受けた。参加 者に対しては研究の内容を書面と口頭によって説明 し,参加への同意を得た。さらに,ディセプションが あった部分に関しては,実験の最後に説明し,同意の 撤回が可能であることを説明した。 【結果】 BAAS場面での積木模様のパフォーマンス 積木模様の 平均得点は,統制条件において31.03(95%CI =2.37) 点,介入条件において38.77(95%CI =3.37)点であっ た(図 1 )。t 検定の結果,介入条件における得点が 有意に高いことが示された(t(57)=3.66, p =.001, d =0.95)。 調整分析 BAASに対する介入の効果を調整する変数を 調べるために,階層的重回帰分析分析を行った。積木 模様の得点を目的変数として,まず第 1 段階ではMMSE 得点と教育歴,実験条件(0,1の 2 値変数にダミーコー ディング),各調整変数を説明変数として投入した。 次に第 2 段階において実験条件と各調整変数の交互作 用項を説明変数として投入した。第 2 段階における各 調整変数の交互作用項の係数と各調整モデルのR2,そ して交互作用項投入によるR2の変化量を表 1 に示し た。調整分析の結果,有意な調整効果は見られなかっ た。ただし,TSSQ-概念化の調整効果は有意傾向で

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-35 191 -あった(b =-1.01, t =-1.94, p =.058)。 【考察】 本研究では,自己に関する言語的内容とのフュー ジョンを弱めるような介入がBAASの効果を緩和するか どうかを検討した。その結果,介入条件と比較して, 統制条件におけるBAAS場面での積木模様のパフォーマ ンスが,有意に低いことが示された。この結果から, 本研究で使用された介入がBAASの効果を緩和したと考 えられる。さらに,ベースラインの自己の感覚の個人 差が介入の効果を調整するかどうかを検討した。調整 分析の結果,すべての変数において有意な調整効果は 見られなかった。ベースラインにおける個人のどのよ うな行動特性がBAASに対する介入の効果を促進,ある いは抑制するのかについて,今後,検討が必要である。 【文献】

Lamount, R. A., Swift, H.J., & Abrams, D. (2015). A review and meta-analysis of age-based stereotype threat: Negative stereotypes, not facts, do the damage. Psychology and Aging, 30, 180-193.

橋本 光平・武藤 崇 加齢ステレオタイプへの行動的 同化における認知的フュージョンの調整効果 (日本 老年行動科学会,東京,口頭発表,2017年11月26日)

参照

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