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1. はじめに

テレビを中心にビデオ,テレビゲームなど, 子ども達の日常生活に深く入り込んでいる映 像メディアが,子ども達の心身の発達にどの ような影響を与えているのか。このテーマに ついては関心が高く,さまざまな議論がある。 NHK 放送文化研究所では,研究者と共同 して,メディアへの接触と子ども達の発達の 関係を探り,豊かな情報環境の構築を目指す ために“子どもに良い放送”プロジェクト1) 2001年11月に発足させた。 このプロジェクトの特色としては, 1. 放送に携わる者が専門家(教育,心理, 医学など)と連携し,子どもの心や知性 の発達との関係を調査する 2. 0歳児から継続して,同じ子どもの成長 を追跡する形で長期間調査する ということがあげられる。 調査設計においては, 1. 映像メディア接触の内容と量が子どもの発 達,行動,社会認識に影響を与えている 2. 映像メディア接触の子どもに与える影響 は,接触の仕方によって,プラス・マイ ナスの方向や強さなどが変化する 3. 生活環境や家庭環境は子どもの発達,行 動,社会認識に影響を与えているが,映 像メディア接触がこれを媒介している場 合がある。つまり,生活環境,家庭環境 が直接与える影響を映像メディアが強め たり,弱めたりする場合がある 以上 1 ∼ 3 の仮説を立て,それに基づき,子 どものメディア接触の実態などを継続的に調 査し,子どもの発達や行動に関する映像メ ディアの影響について,分析することを目的 としている(図 1)。 調査対象は 2002年に川崎市で生まれた子 ども約1,200名で,0歳時より調査を開始し, これまでに 0,1,2歳の 3時点の調査を実施 した。乳児達の日常生活に深く入り込んでい る映像メディアに,いつ頃から,どのように 接し始め,成長と共にどのように変わってい くのか,その変遷を追跡した。 本調査は,0,1,2歳の 3時点で,テレビ 視聴実態調査(15分単位の時刻目盛り日記 式・以下「テレビ視聴日誌」とする)と「家族 の生活とメディア接触に関する質問紙調査」 を実施し,1,2歳の 2時点のみで「言語発達

乳児はテレビにどのように接しているか

∼ 0,1,2 歳のメディア接触実態の変遷∼

西村規子

図 1 調査設計のための仮説 子どもの メディア接触 家庭環境 生活環境 発達 身体・認知 社会性 行動 個人の属性 性・年齢・気質 ・性格・認知

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調査」を実施した。本稿では,テレビ視聴日 誌と家族の生活とメディア接触に関する質問 紙調査の結果を元に分析を行い,0歳から 2 歳までの「乳児の視聴実態の変遷」について の報告を行いたい。 テレビ視聴日誌では,子どものテレビ視聴・ 接触について,時間・内容・視聴形態を保護 者に 1週間分記録してもらった。ビデオ・テ レビゲームについても併せて記録してもらっ た。 家族の生活とメディア接触に関する質問紙 調査では,乳児のテレビに接する態度や,テ レビ接触に関する保護者の関わり方につい て,回答記入してもらった。 調査の概要は(表1)の通りである。

2. 乳児のテレビ接触

(1)テレビ視聴・接触時間の変化

本調査の開始にあたり,乳児のテレビ視聴 については,①「他のことはせず専念して見 ていた(以下「専念視聴」とする)」,②「他の ことをしながら見ていた(以下「ながら視聴」 とする)」,③「画面がついていただけだった (以下「ついているだけ」とする)」の 3 タイプ に分けて記入してもらうことにした。視聴時 間は 15分刻みで局別に測定し,視聴内容(番 組名など)の記入も依頼した。 NHK 放送文化研究所が 2003年に行った 「幼児生活時間調査」では,視聴形態区分と して,①「専念視聴」,②「ながら視聴」を調 第 1 回 第 2 回 第 3 回 調査対象者 2002 年 2 月∼ 7 月に神奈川県川崎市で生まれた乳児 6,000 人の中から居住地域 による層化を行い,無作為に選んだ 1,600 人の乳児の保護者のうち,研究参加 の同意が得られた 1,368 世帯が“子どもに良い放送プロジェクト”に登録された。 0 歳児 1,368 人の保護者 1 歳児 1,250 人の保護者 2 歳児 1,244 人の保護者 調査実施時期 2003 年 1 月 14 日∼ 20 日 2004 年 1 月 13 日∼ 19 日 2005 年 1 月 13 日∼ 19 日 【有効回答数】 テレビ視聴実態調査(日記記入方式) 1,160 票(関東圏 1,160 票) 1,070 票(関東圏 1,051 票) 1,060 票(関東圏 1,028 票) 家族の生活とメディア接触に関する 質問紙調査 1,224 票 1,147 票 1,105 票 言語発達調査 ― 1,062 票 1,098 票 【有効回答率】 テレビ視聴実態調査(日記記入方式) 84.8% 85.6% 85.2% 家族の生活とメディア接触に関する 質問紙調査 89.5% 91.8% 88.8% 言語発達調査 ― 85.0% 88.3% 【第 1 回からの有効回答率】 テレビ視聴実態調査(日記記入方式) 78.2% 77.5% 家族の生活とメディア接触に関する 質問紙調査 83.8% 80.8% 言語発達調査 77.6% 80.3% 表 1 調査の概要

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査しているが,これに加え,本調査では,③「つ いているだけ」という概念を導入し,①②③ の 3視聴形態を併せて「テレビ接触」と位置 づけた。乳児の居る部屋のテレビのスイッチ が入っているだけといった,「テレビの音声 が子どもに聞こえていると考えられる状態」 の時間も把握したいと考えたからである。 「ついているだけ」の時間を把握すること には 2 つの意味がある。1 つは「ついているだ け」の時間の経年変化を追うこと。もう 1 つは, 「ついているだけ」の時間と区別した①「専念」 と②「ながら」を合わせた「テレビ視聴」時間 を,明確に把握できるようにすることである。 こうして得られた 1週間のテレビ視聴日誌 のデータによれば,テレビに少しでも接した 乳児の割合(= 接触者率)は,0歳で 97%,1 歳で 99%,2歳で 97% である。それぞれの時 点での接触者率が 100% に近いので,本稿に おいては,テレビ接触・視聴時間を,接触者 平均時間ではなく,全員を分母とした平均時 間(調査期間中にテレビに接していない乳児 も含めた平均時間)で分析する。 テレビ接触時間(図2)は,0歳時点(3時間 13分)と 1歳時点(3時間23分)ではほとんど 違いがみられないが,2歳時点では,2時間 44分と大幅に減っている。その主要因は,1 歳から 2歳にかけての「ついているだけ」の 時 間 の 減 少 に あ る(1時 間40分 →1時 間12 分)。実は,「ついているだけ」の時間は,0 歳から 1歳にかけても,同様に減少している (2時間8分→1時間40分)。つまり,「ついて いるだけ」の時間は,0,1,2歳と年齢が上 がるにつれて,毎年減少し続けていることに なる。年齢が上がるにつれ,乳児の運動能力 が発達し行動半径が広がるために,テレビの スイッチの入っている部屋にただ居るだけの 時間が減っていると考えられる。 また,テレビ視聴時間(=「専念視聴」+「な がら視聴」)は,0歳から 1歳にかけて,1時 間5分から 1時間44分に増えるが,2歳にな ると 1時間31分になり,やや減っている。 図 2 テレビ視聴・接触時間の推移 0 歳時点 (n=1,160) 1 歳時点 (n=1,070) 2 歳時点 (n=1,060) ついているだけ ながら視聴 専念視聴 0 50 100 150 200 250 53分 12分 2 時間8分 1 時間40 分 1 時間12分 1 時間20分 1 時間7分 テレビ視聴時間 1 時間 5 分 (週平均) テレビ視聴時間 1 時間 44分 (週平均) テレビ視聴時間 1 時間 31分 (週平均) テレビ接触時間 3 時間13分 (全員・1日平均) あわせて テレビ接触時間 3 時間23分 (全員・1日平均) あわせて テレビ接触時間 2 時間 44分 (全員・1日平均) あわせて 24 分 24 分 (テレビ視聴日誌)

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(2)テレビを見せ始める時期と関わり方

第1回調査(0歳時点)の「家族の生活とメ ディア接触に関する質問紙」の中で,母親に, 生後何ヶ月からテレビを見せ始めたかを尋ね た結果をみると(図3),生後3 ヶ月で半数以 上(57%),生後8 ヶ月で 9割を超えている。 このように,ほとんどの乳児が 0歳の時点で すでにテレビに接し始めている。 では,0,1,2歳それぞれの時点で乳児は テレビとどのように関わっているのだろう か。その関わり方について,現状に最も近い 段階を質問したところ(図4),0歳時点では 「画面にも関心を持ち始めている」と答えた 母親が, 75%,およそ 4分の 3 に上った。1 歳になると,41% の母親が「内容もいくぶん 理解し始めている」と答え,38% の母親が「見 たい番組がだいたい決まっている」と答えて いる。この 2 つを併せると,“乳児はある程 度内容を理解した上でテレビを見ている”と 考えている母親が 8割近くに上ると解釈でき る。さらに 2歳になると,「見たい番組がだ いたい決まっている」と答える母親が半数を 超える(55%)。 また,(図5)は,乳児がテレビを見ながら どのような反応を示すか,母親に答えても らった結果である(複数回答)。0歳時点では 6割の乳児の母親が「テレビは見るがまねは しない」と答えているが,1歳になると 9割の 乳児が「拍手のまね」と「体操のまね」をし,1 歳では 6割,2歳では 9割の乳児が「歌のまね」 と「短い言葉のまね」をすると答えている2) 図 3 テレビを見せ始めた時期 図 4 テレビとの関わり方の変化 図 5 テレビへの反応 生後 0ヶ月頃 15% 生後 6ヶ月頃 9% 生後 1ヶ月頃11% 無回答 7% 生後 2ヶ月頃 13% 生後 3ヶ月頃 18% 生後4ヶ月頃 10% 生後 5ヶ月頃 9% 生後 7ヶ月頃 4% 生後 8ヶ月頃 3% 生後 9ヶ月頃 1% 生後 10ヶ月頃0% 生後 12ヶ月頃 0% 0 歳 まったく テレビには 関心を示さない テレビの音だけ に関心を持ち 始めている テレビの画面 にも関心を持ち 始めている テレビの内容も いくぶん理解し 始めている 見たい番組が だいたい 決まっている 無回答 (%) 1 歳 2 歳 0 20 40 60 80 100 120 5 11 0 1 0 0 4 40 55 2 20 41 38 1 75 3 5 0 0 20 40 60 80 100 (%) 10 30 50 70 90 10 0 0 18 91 79 8 92 92 3 61 90 0 61 86 60 1 1 0 歳 1 歳 2 歳 (質問紙調査) (質問紙調査) (質問紙調査)

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ところで,1979年の「幼児の生活とテレビ」 調査3)では保護者に同じ質問をしているが, 当時は,2歳前半の時点でテレビの内容を理 解し始めている(「内容をいくぶん理解し始 めている」+「見たい番組がだいたい決まっ ている」)と考えている保護者が 6割である。 また,わが子がテレビを見ながら「歌のまね」 をすると答えたのは, 2歳後半の乳児の母親 でも 8割に満たなかった。 このことから,テレビの内容を理解する, 歌や言葉のまねをするといった“乳児のテレ ビとの関わり方のプロセス”は,26年の時代 変化の中で前倒し的に変化してきたといえ る。

(3)テレビの視聴内容

1歳,2歳時点での,1日のテレビ視聴の内 容(局別)は(表2)の通りで,1歳,2歳時点 ともに最も多く視聴している局は NHK 教育 である。ただし両時点を比較すると,2歳に なると 1歳の時ほど,NHK 教育に集中する 傾向はみられない。 (図 6)は,母親に,乳児がふだんよく接 している番組ジャンルにいくつでも○をつ けてもらった結果である。0∼2歳を通して, どの時点でも最もよく接しているのは幼児向 け番組であるが,年齢が上がるにつれ,アニ メ・マンガによく接している乳児も増えてい る。また,乳児の接する番組は,上記の 2 ジャ ンルに集中しており,他ジャンルの番組への 接触は,0,1,2歳を通してほとんどみられ ない。 表 2 局別 テレビ視聴時間(週平均 単位:分) 図 6 ふだんよく接しているテレビ番組ジャンル N H K 総 合 N H K 教 育 日 本 テ レ ビ T B S フ ジ テ レ ビ テ レ ビ 朝 日 テ レ ビ 東 京 そ の 他 の テ レ ビ テ レ ビ 計 1 歳 時 点 4 62 7 8 11 5 4 3 103 2 歳 時 点 3 44 7 7 13 6 7 4 93 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) ニュース 1620 16 8 8 13 3 2 7 6 9 14 5 7 6 3 3 4 2 3 5 2 2 2 3 2 2 3 4 7 4 5 5 6 3 2 12 26 40 68 69 96 92 15 13 ドラマ 映画 笑いやコント などのバラエティー 見て役に立つ バラエティー そのほかの バラエティー クイズ・ゲーム トーク番組 歌番組・ 音楽番組 アニメ・マンガ スポーツ番組 歴史・科学・ 自然などの番組 英会話など 勉強の番組 ワイドショー 幼児向け 番組 0 歳 1 歳 2 歳 (テレビ視聴日誌より) (質問紙調査)

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3. 保護者の関わり方

(1)大人の随伴

本調査では,乳児がテレビを誰と見ている かについても,①子ども(たち)だけで見て いた,②保護者と一緒に見ていた,③保護者 以外の大人と一緒に見ていた,の 3 つに分類 し,テレビ視聴日誌に記入してもらった。分 析においては,①を「子どもだけ」視聴,② ③を併せて「大人と一緒」視聴と位置づけた。 0歳,1歳,2歳それぞれの時点での,< 子 どもだけ / 大人と一緒 > 別の,1日の平均テ レビ接触時間は(図7)の通りで,大人と一緒 にテレビに接する時間は,0歳時点と 1歳時 点では変わらないが,1歳から 2歳にかけて, 1日平均で,2時間23分から1時間52分に減っ ている。

(2)テレビ視聴時の会話・見る時の決まり

母親に対して,ふだん「一緒に見ているテ レビの内容について子どもと話すか」を尋ね たところ,年齢が上がるにつれて,子どもと 見ている番組の内容について話す母親の割合 が増えている。 2歳時点では 8割近く(79%) の母親にそうした行動がみられる(図8)。 また「子どもが見てよい番組を決めている か」について母親にきいたところ,決めてい る母親は,0歳時点で 26%(あてはまる + や やあてはまる),1歳時点で 51%,2歳時点で 56% と,乳児の年齢が上がるにつれて増え 図 7 〈子どもだけ・大人と一緒〉別 テレビ接触時間(1 日平均) 図 8 見ているテレビの内容について子どもと話すか 図 9 子どもが見てよい番組を決めているか 図 10 子どもがテレビを見てよい時間を決めているか 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 0 歳 子ども だけ 大人と 一緒 1 歳 2 歳 45 分 2 時間 19 分 60 分 52 分 2 時間 23 分 1 時間 52 分 0 歳 あてはまる あてはまるやや どちらでもない あてはまらないやや あてはまらない 無回答 (%) 1 歳 2 歳 0 20 40 60 80 100 120 8 19 14 6 32 47 11 5 3 2 25 40 16 7 12 1 53 1 0 歳 あてはまる あてはまるやや どちらでもない あてはまらないやや あてはまらない(%)無回答 1 歳 2 歳 0 20 40 60 80 100 120 10 16 23 5 25 31 23 7 13 1 23 28 23 7 19 1 45 1 0 歳 あてはまる あてはまるやや どちらでもない あてはまらないやや あてはまらない 無回答 (%) 1 歳 2 歳 0 20 40 60 80 100 120 7 10 25 6 18 27 26 10 18 2 14 26 27 10 23 1 51 1

3. 保護者の関わり方

(テレビ視聴日誌より) (質問紙調査) (質問紙調査) (質問紙調査)

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72  MAY 2006 ている(図9)。「子どもがテレビを見てよい 時間を決めているか」については,決めてい る母親は,0歳時点で 17%(あてはまる + や やあてはまる),1歳時点で 40%,2歳時点で 45% と,やはり,乳児の年齢が上がるにつ れて増えている(図10)。 以上の結果から,年齢が上がると,乳児が 大人と一緒にテレビに接する時間は減少する が,一方で,テレビの内容について子どもと 話したり,見る番組や時間を制限するなど,「わ が子がどのようにテレビを見るか」について の母親の関心は高まっていくといえるだろう。

(3)テレビの乳児への影響に対する評価

次に,テレビに接することによる乳児への 影響について,母親がどのように考えている のか,みていきたい。 「テレビが子どもに対し,良い影響を与え ることの方が多いと思うか,悪い影響を与 えることの方が多いと思うか」を尋ねたとこ ろ,2歳時点で,「良い影響の方が多い」(「ど ちらかといえばよい影響の方が多い」を含む) と答えた母親が 34%,「どちらとも言えない」 と答えた母親が 45%,「悪い影響の方が多い」 (「どちらかといえば悪い影響の方が多い」を 含む)と答えた母親が 20% で,評価の仕方に はばらつきがみられた。こうした傾向は 0歳, 1歳時点でも同様である(図11)。 テレビの乳児への影響について具体的にど のような内容を考えているのかについて複 数回答できいたところ,2歳時点では,「知 識を豊かにする」と答えた母親が 73% で最も 多く,この傾向は 0歳,1歳時点でも変わら ない(図12)。以下「行動や言葉づかいを乱暴 にする」(44%),「友だちとの親しさが増す」 (38%),「言葉の表現を豊かにする」(38%) と続くが,1歳時点で 32% だった言葉づかい 図 12 テレビは子どもにどのような影響を与えるか (複数回答・2 歳時点) 図 11 子どもに対するテレビの影響 0 歳 よい影響の ほうが多い どちらかと いえばよい 影響が多い どちらとも言えない どちらかと いえば悪い 影響が多い 悪い影響のほうが多い 無回答 (%) 1 歳 2 歳 0 20 40 60 80 100 120 3 33 44 19 1 33 45 17 3 1 3 39 40 16 2 1 2 0 知識を豊かにする 73 44 38 38 37 31 29 25 23 14 行動や言葉づかいを 乱暴にする 友だちとの 親しさが増す 言葉の表現を 豊かにする 必要以上に色々 なことを教えすぎる 日本語を乱す 生活の区切りを つけるのに役立つ 豊かな情操を養う 生活のリズムを乱す 子どもの考え方が 型にはまる 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 (%) (質問紙調査) (質問紙調査より)

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への悪影響の評価の割合が 2歳になると 44% と,やや増えている。 1歳,2歳と年齢が上がるにつれ,番組の 内容を理解し始め,習慣的視聴が始まるなど テレビへの関わり方が進化すると,テレビが 乳児に与える,特にマイナスの側面を母親が 気にし始めるようになると考えられる。この ことが前項でみた,見てよい時間や番組の制 限など,母親の対応や考え方にも影響を与え ていると考えられる。

4. 生活・家庭環境とテレビ視聴の関係

本調査では,乳児を取り巻く生活環境,家 庭環境が子どもに与える影響を,映像メディ ア接触が媒介して,強めたり弱めたりする場 合がある,という仮説を立てている。前節ま での結果から,テレビの内容を理解した上で 自ら視聴し始めたといえる 2歳時点の乳児に ついて,生活環境・家庭環境とテレビ視聴の 関係についてみていきたい。

(1)きょうだいの有無とテレビ視聴内容

関東圏在住の 2歳児について,1週間の調 査期間中の番組別「視聴」率(「専念」+「な がら」率)を算出し,上位20番組を示したも のが(表3)である。先に 2節(3)で述べた通り, 2歳児全体の視聴番組の大半を NHK 教育の 幼児向け番組が占めるが,民放各チャンネル のアニメ・マンガといったジャンルのいくつ かの番組が上位に位置している。 ここでは,対象児のきょうだい(兄弟姉妹) の有無に注目して,一人っ子の場合(n=379), 年上のきょうだいがいる場合(n=485),年下 のきょうだいがいる場合(n=175)別に,視聴 上位10番組を比較してみた(表4)。一人っ 子の場合では上位10番組中8番組を,年下の きょうだいがいる場合では上位10番組中9番 組を NHK 教育が占めているが,年上のきょ うだいがいると,上位5番組は全て民放のア ニメ・マンガ番組となっている。 以上の結果から,一人っ子の場合と年下の きょうだいのいる場合は,NHK 教育の幼児 向け番組を保護者と一緒に視聴する傾向が強 いと思われる。年上のきょうだいがいる場合 は,子ども達だけで民放のアニメ・マンガ番 組を視聴していると考えられる。 局 番組名 視聴率 1 フジテレビ サザエさん 28% 2 NHK 教育 おかあさんといっしょ 25% 3 フジテレビ ちびまる子ちゃん 24% 4 テレビ朝日 ドラえもん 23% 5 NHK 教育 プチプチ・アニメ 23% 6 NHK 教育 にほんごであそぼ 22% 7 NHK 教育 いないいないばあっ ! 22% 8 NHK 教育 つくってワクワク 19% 9 NHK 教育 チャレンジタイム 18% 10 NHK 教育 ブルーナの絵本 18% 11 NHK 教育 ピタゴラスイッチ 18% 12 NHK 教育 クインテット 18% 13 テレビ朝日 クレヨンしんちゃん 17% 14 テレビ朝日 ミニステ 17% 15 NHK 教育 ざわざわ森のがんこちゃん 16% 16 NHK 教育 ぴりっと Q 16% 17 NHK 教育 それゆけこどもたい 15% 18 NHK 教育 ドレミノテレビ 14% 19 NHK 教育 バケルノ小学校ヒュードロ組 14% 20 テレビ朝日 ふたりはプリキュア 14% 表 3 視聴率高位 20 番組

4. 生活・家庭環境とテレビ視聴の関係

(テレビ視聴日誌) (順位は小数点以下第 1 位までから算出)

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(2)母親の視聴時間と乳児の視聴時間

母親自身のテレビ視聴時間と乳児のテレ ビ視聴時間の関係もみていきたい。(図13) は,母親自身のふだんの 1日あたりのテレビ 視聴時間別に,その子どもである 2歳児のテ レビ視聴時間別の割合を示したものである。 母親の 1日の視聴時間が「4時間以上」であ る 2歳児では,過半数(56%)が 1日に「約3 時間以上」テレビを視聴している。一方,母 親の 1日の視聴時間が「1時間以内」である 2 歳児では,約4分の 3(73%)の 1日の視聴時 間が「約1時間以内」であった。このように, 母親のテレビ視聴時間の長さと,その子ども である乳児のテレビ視聴時間の長さには,関 連がみられた。また,母親に「子どもと一緒 にテレビをよく見るか」を尋ねたところ,長 時間視聴傾向の母親の方が,短時間視聴傾向 の母親に比べて,より子どもと一緒にテレビ を見る割合が多いことがわかった。 2003年の「幼児生活時間調査・2003」4) も,同様に母親と子ども双方の視聴時間を調 査し,次のように分析している。「母親の視 聴時間別にみると,母親が長時間視聴である ほど,子どもの視聴時間も長い。(中略)そ して視聴時間の内訳をみると,単独視聴時間 図 13 母と子のテレビ視聴の関係 4時間以上 3 時間以内 2 時間以内 1 時間以内 視聴時 間(親) テレビ視聴時間(子)30分以内 テレビ視聴時間(子)1 時間以内 テレビ視聴時間(子)2 時間以内 テレビ視聴時間(子)3 時間以内 テレビ視聴時間(子)4 時間以上 13 24 16 36 40 21 36 36 45 19 28 30 27 2 6 6 10 5 1 時間以内 約 2 時間 約 3 時間 4 時間以上 テレビ視聴時間(子)約 30分 テレビ視聴時間(子)約 1 時間 テレビ視聴時間(子)約 2 時間 テレビ視聴時間(子)約 3 時間 テレビ視聴時間(子)4 時間以上 0 20 40 60 80 100 36% 16 6 13 28 29 24 44 36 36 5 37 21 1 2 2 10 19 6 27 表 4 視聴率高位 10 番組 一人っ子 視聴率高位 10 番組 年上きょうだい 視聴率高位 10 番組 年下きょうだい 視聴率高位 10 番組 局 番組名 視聴率 1 NHK 教育 おかあさんといっしょ 23% 2 NHK 教育 プチプチ・アニメ 19% 3 NHK 教育 つくってワクワク 19% 4 フジテレビ サザエさん 18% 5 NHK 教育 チャレンジタイム 18% 6 NHK 教育 ブルーナの絵本 18% 7 NHK 教育 いないいないばあっ ! 18% 8 NHK 教育 にほんごであそぼ 17% 9 フジテレビ ちびまる子ちゃん 17% 10 NHK 教育 ぴりっと Q 17% 局 番組名 視聴率 1 フジテレビ サザエさん 36% 2 テレビ朝日 ドラえもん 34% 3 フジテレビ ちびまる子ちゃん 29% 4 テレビ朝日 クレヨンしんちゃん 26% 5 テレビ朝日 ミニステ 26% 6 NHK 教育 にほんごであそぼ 24% 7 NHK 教育 おかあさんといっしょ 24% 8 NHK 教育 プチプチ・アニメ 24% 9 テレビ東京 ポケットモンスター AG 24% 10 NHK 教育 いないいないばあっ ! 23% 局 番組名 視聴率 1 NHK 教育 おかあさんといっしょ 31% 2 NHK 教育 にほんごであそぼ 28% 3 NHK 教育 プチプチ・アニメ 28% 4 NHK 教育 いないいないばあっ ! 27% 5 フジテレビ サザエさん 25% 6 NHK 教育 ピタゴラスイッチ 23% 7 NHK 教育 つくってワクワク 23% 8 NHK 教育 ニャンちゅうといっしょ 22% 9 NHK 教育 クインテット 22% 10 NHK 教育 バケルノ小学校ヒュードロ組 22% (テレビ視聴日誌) (質問紙調査より) (順位は小数点以下第 1 位までから算出) (順位は小数点以下第 1 位までから算出) (順位は小数点以下第 1 位までから算出)

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75 MAY 2006 よりむしろ母子一緒視聴時間に大きな差があ ることがわかる。つまり母親が長時間視聴の 場合,母親と一緒に見ている分,子どもの視 聴時間が長くなっているわけである。」 2 つの調査の結果から,母親のテレビ視聴 行動が,乳児のテレビ視聴行動に与える影響 が大きいことが,はっきりと浮かび上がって くる。

5. ビデオ・テレビゲーム

本調査の視聴日誌ではビデオ視聴,テレビ ゲーム使用についての記入も保護者に依頼し ている。

(1)ビデオ接触率・視聴時間の変化

ビデオ接触者率は,0歳時点で 59%,1歳 時点で 78%,2歳時点で 85% であった。また, 接触者平均時間は 0歳時点で 1日平均34分, 1歳時点で 47分,2歳時点で 50分。全員平均 時間は,0歳,1歳,2歳時点それぞれ 20分, 37分,43分であった(表5)。 国民生活時間調査(2005年)5)の結果で, 10歳以上の国民全体のビデオの行為者率が 8%,全員平均時間が 1日平均8分であるのと 比べると,乳児のビデオ視聴時間が大変長い ことがわかる。

(2)ビデオ視聴の変化

「自分の子どもがビデオを見るのが好き だ」と答えた母親は,0歳で 30%(あてはま る + ややあてはまる),1歳で 76%,2歳で 90% と,乳児の年齢が上がるにつれ増えてい る(図14)。また,自分の子どものビデオの 視聴の仕方について,2歳時点の母親の 90% が,「あのビデオを見たいとせがむ」と答え, 約8割(78%)の母親が,子どもが「ビデオの 内容をほとんど覚えている」と答えている。

(3)お気に入りのビデオ・DVD の本数

「お気に入りのビデオ・DVD ソフトの数」 を尋ねたところ,自宅にビデオ・DVD のデッ キを所有する 2歳児の母親(98%)のうち,「10 本以上」お気に入りのビデオ・DVD ソフト があると答えた母親の割合は,合計で 42% に上っている。一方,お気に入りのソフト を「持っていない」と答えたのはわずかに 4% だった(図15)。 メディア機器の操作については,2歳児の 母親の 30% が,自分の子どもが「ビデオの操 作ができる」と答えている。2歳になると乳 児が 1人でお気に入りのビデオをセットして 見ている姿が想像される。 0 歳 1 歳 2 歳 接触者率 (%) 59 78 85 接触者平均時間 (分) 34 47 50 全員平均時間 (分) 20 37 43 表 5 ビデオの接触者率と時間量(1 日平均) 図 14 ○○ちゃんはビデオを見るのが好きか (%) 0 歳 あてはまる あてはまるやや どちらでもない あてはまらないやや あてはまらない 無回答 (%) 1 歳 2 歳 10 20 35 7 61 29 5 3 1 1 44 32 12 5 7 1 27 0

5. ビデオ・テレビゲーム

(テレビ視聴日誌より) (質問紙調査)

(11)

ビデオは乳児の生活に急速に浸透し,毎日 の暮らしになくてはならない存在となってい ると考えられる。

(4)テレビゲーム

テレビゲームは,2歳時点で,まだ使用経 験のない乳児が約9割(87%)に上っている。 しかし,2003年の「幼児生活時間調査」では, 6歳児の 4人に 1人が 1日平均1時間程度テ レビゲームをしているという結果も出てい る6)。現代の子どもの生活の中で大きな位置 を占めているといわれるテレビゲームの使用 が,いつ頃から顕著になるのか,次回以降の 調査において引き続き注目していきたい。

6. おわりに

乳児のテレビ接触実態(まとめ)

0,1,2歳の乳児について,「テレビ視聴 日誌」と「家族の生活とメディア接触に関す る質問紙調査」から明らかになったのは,以 下の点である。 ①乳児の年齢が上がるにつれて,「テレビの 音声が子どもに聞こえていると考えられ ている状態」である「ついているだけ」 の時間が減っていく。 ② 1 歳で 8 割近い乳児の母親が,わが子が「番 組の内容を理解し始めている」と感じ,2 歳で過半数の母親が,乳児の「見たい番 組がだいたい決まっている」と答えてい る。このことから,2 歳時点で多くの乳 児が内容をある程度理解した上でテレビ を見ていると考えられる。 ③ 2 歳になると,大人と一緒の視聴の割合 が減る一方で,テレビの内容について子 どもと話したり,見る番組や時間を制限 するなど,わが子のテレビの見方につい ての母親の関心は高まる。 ④ 2 歳になると,それまで NHK 教育の幼 児向け番組がほとんどだった高位視聴番 組に,民放のアニメ・マンガ番組が入っ てくる。この傾向は,年上のきょうだい がいる場合には,より強くみられる。 ⑤母親が長時間視聴である子どもには長時 間視聴傾向がみられ,母親が短時間視聴 である子どもには短時間視聴傾向がみら れる。このように,母親のテレビ視聴行 動が,乳児のテレビ視聴行動に与える影 響は大きい。

多メディア時代の子どもと向き合うために

本調査では,出生後間もなくの大変早期か ら乳児の生活にテレビが深く浸透している データが得られた。また,ビデオも 1歳から 2歳にかけて急速に乳児の生活に入り込み, なくてはならないものとなっている実態が垣 間みえた。今後,乳児から幼児へと成長して いく過程で,子ども達の生活には,親やきょ うだい,友達との付き合いを通じて,テレビ ゲーム,パソコン,インターネット,携帯電 話など,さまざまな電子メディアが次々と入 り込んでくるであろう。こうしたメディアと 図 15 お気に入りのビデオ・DVD ソフト 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 20 40 60 80 100 1∼3 4∼6本 7∼9本 10∼12本 13∼15本 16∼18本 19本以上 いない持って 16 24 14 17 3 4 42 7 15 (%) (n=1081)

6. おわりに

(質問紙調査)

(12)

子ども達がどのように付き合い,またどのよ うな影響を受けるのか,非常に興味深い。 “子どもに良い放送”プロジェクトでは, 今回明らかになった,0,1,2歳という乳児 期の,メディア接触実態の変遷を踏まえた上 で,さまざまな研究分野からのアプローチに より,映像メディアがどのような仕組みで子 ども達に影響を与えていくのか,今後も調査 研究を続けていきたい。 (にしむら のりこ) 注 1) “子どもに良い放送”プロジェクトは,NHK 放 送文化研究所と以下の 8 名の共同研究者によっ て構成される。 共同研究者委員長・小林登(国立小児病院名誉 院長),同副委員長・飽戸弘(東洋英和女学院 大学学長),子安増生(京都大学教授),小西行 郎(東京女子医科大学教授),坂元章(お茶の 水女子大学教授),榊原洋一(お茶の水女子大 学教授),菅原ますみ(お茶の水女子大学助教 授),箕浦康子(お茶の水女子大学名誉教授) 2) スイスの心理学者 J・ピアジェは,子どもの認 知能力の発達について,出生後,1.5 ∼ 2 歳頃 までを「感覚運動期」と位置づけ,感覚や運動 を通して環境に適応する時期としている。2 歳 以降はイメージを使った思考が徐々に出来るよ うになり,言語の発達が著しいとしている(内 田信子『幼児心理学への招待 子どもの世界づく り』サイエンス社 1989 年)。こうした発達の過 程にそって,テレビを見ながら,拍手,体操,歌, 言葉のまねが,順次発生するといえるだろう。 3) NHK 放送世論調査所編『幼児生活とテレビ─ 0 歳から 6 歳まで─』日本放送出版協会 1981 年 4) 中野佐知子『多様化する幼児のメディア利用 幼 児生活時間調査 2003・報告』「放送研究と調査」 2003 年 8 月号 5) 吉田理恵・中野佐知子・渡辺洋子『「現代人の生 活時間」∼ 2005 年国民生活時間調査結果より』 「放送研究と調査」2006 年 4 月号 6) 前掲の『多様化する幼児のメディア利用 幼児生 活時間調査 2003・報告』より 2 歳児全体 男 女 2 歳 6 ヵ月未満 2 歳 6 ∼ 7 ヵ月 2 歳 8 ∼ 9 ヵ月 2 歳 10 ∼ 11 ヵ月 実数(人) 1,105 582 523 106 350 341 308 構成比(%) 100 52.7 47.3 9.6 31.7 30.9 27.9 表 6 サンプル構成 保育施設(幼稚園・保育所) 兄弟構成 利用 非利用 無回答 1 人っ子 兄・姉あり 弟・妹あり 無回答 実数(人) 247 840 18 409 530 190 6 構成比(%) 22.4 76 1.6 37 48 17.2 0.5

参照

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