戦略的な施設マネジメント
~大学経営に求められる施設戦略~
平成29年10月
文部科学省大臣官房文教施設企画部
参事官付
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1.国立大学法人等施設の現状と課題
国立大学法人等にとっての施設とは
施設
は、国立大学等の使命を果たすための基盤であり、将来を担う人材の育成、
独創的・先端的な学術研究の推進等の教育研究活動を支える重要な役割を担う
施設の基本的役割・機能
外に向けて開かれたキャンパス 多様なコミュニケーションの場の整備 先端的な研究設備等の充実質の高い教育研究活動と
高度な学術研究を行う場
多様な活動や交流を行う
人格形成を促すための場
社会に開かれた
公共性のある場
国
立
大
学
等
の
使
命
・
役
割
を
果
た
す
教育研究の場 思索の場 産学連携拠点 地域再生拠点 能動的学修の場 学生生活を支援する場 ディスカッションの場 コミュニケーション・リフレッシュの場 地域防災拠点 並木道、目抜き通り、シンボル樹木3
国立大学法人等の規模
国立大学法人等が保有する施設面積は約2,843万㎡
⇒東京ドーム(約4万7千㎡) 約600個分
(参考)国立大学法人等全体の土地の面積は約1,326k㎡
⇒東京23区の面積(約621k㎡)の2倍超
⇒沖縄本島の面積(約1,208k㎡)より大きい
国立大学法人等全体の保有面積(平成29年5月1日現在)
大学 共同利用機関等 高等専門学校4
高等専門学校 6.0% 共同利用機関等 2.7% 大学 91.4% (教育・研究施設) (52.4%) (図書館) (3.2%) (体育施設) (1.7%) (支援施設) (3.4%) (宿泊施設) (4.6%) (附属学校) (4.8%) (附属病院) (12.3%) (管理施設) (4.3%) (設備室等) (4.5%) 保有面積 2,843万㎡0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 1980 (昭和55) 1990 (平成2) 1.たこ足大学の解消 → 新制大学において各所に分散する敷地・施設を集約化 2.学生定員増への対応 → 理工系学生の入学定員増などに伴う施設の量的整備 4.新設医科大学の整備 → 医療需要の増大など社会的要請により医大がない道県に医科大学を整備 国立大学法人化 (2004) 5.新構想大学の整備 → 新しい構想による技術科学大学、教育大学、体育大学を整備 6.移転統合整備 → 教育研究上支障がある分散したキャンパスの統合整備 3.大学共同利用機関の整備 → 研究者に研究の場を提供し、先端的な共同研究を行う研究拠点の整備 国立学校特別 会計法制定 (1939) 7.大学院重点化への対応 → 大学院学生の増加等による施設の狭隘化解消 1965 (昭和40) 1975 (昭和50) 1985 (昭和60) 1995 (平成7) 2015 (平成27) 2005 (平成17) 1970 (昭和45) 2000 (平成12) 2010 (平成22) 9.第2次5か年計画 → 安全・安心な教育研究環境の確保 (耐震改修を中心とした施設整備へ) 8.第1次5か年計画 → 世界水準の教育研究成果の確保 (総合的・複合的な研究棟の整備) 10.第3次5か年計画 → 教育研究活動の基盤としての質の確保 (安全性のみならず機能面の改善を図る施設整備へ) 11.第4次5か年計画 → 老朽改善整備の推進 (インフラ長寿命化計画を踏まえた施設整備へ) 東日本大震災 (2011) 阪神・淡路大震災 (1995) 建物保有面積の推移 (平成29年5月現在 2,843万㎡)
施設整備の社会的背景
戦後の国立大学等施設整備の主な経緯(1964~2016)
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0 100 200 300 400 500
施設の経年別保有面積
内壁クラック 庇裏の劣化 外壁クラック 耐震性の低い施設の外観 今にも落下しそうな外壁[未改修の老朽施設(例)]
・国立大学法人等施設の全保有面積は2,843万㎡
・経年25年以上の老朽施設は1,685万㎡(全保有面積の約59%)
うち、改修を要する老朽施設は874万㎡(全保有面積の約31%)
(平成29年5月1日現在) 経年別建物保有面積経年25年以上
1,685万㎡(59%)
面積(万㎡) 出典:平成29年度国立大学法人等施設の実態に関する報告を基に作成(文部科学省)経年25年未満
1,158万㎡(41%)
改修を要する
老朽施設
874万㎡(31%)
経年経年25年以上
改修済
810万㎡(28%)
6
50年以上 45-49年 40-44年 35-39年 30-34年 25-29年 20-24年 15-19年 10-14年 5-9年 0-4年国立大学法人等施設整備費予算額の推移
523 520 524 513 502 499 493 486 481 477 466 469 477 477
350
400
450
500
550
600
H16
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
H27
H28
H29
運営費交付金(教育等施設基盤経費)と維持管理実績額の推移
(大学、大学共同利用機関) ※附属病院、高専機構を除く 576 586 593 維持管理費の実績額(億円)
教育等施設基盤経費 (予算額)運営費交付金(教育等施設基盤経費)等の推移
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○政府の「インフラ長寿命化基本計画」(平成25年11月インフラ老朽化対策の推進に
関する関係省庁連絡会議)に基づき、文部科学省の所管施設等の長寿命化に向けた各設
置者における取組を推進するため、文部科学省としての行動計画を平成27年3月に策
定。
インフラ長寿命化基本計画(抜粋)
的確に維持管理・更新等を行うことで中長期的なトータルコストの縮減や予算の平準化を
図る必要がある。
○本行動計画において、国立大学法人等における施設管理の計画的な修繕・改修等を図る
ため、各国立大学法人等は平成32年度末までに個別施設計画を策定することとしてい
る。
※行動計画については、平成28年度中に各法人で概ね策定を完了
インフラ長寿命化計画(個別施設計画)の策定について
策定済み 策定予定時期 合計 平成29年度 平成30年度 平成31年度 平成32年度4
8
8
12
59
91
※個別施設計画の策定状況
(平成29年4月1日現在)9
2.戦略的な施設マネジメントの推進
第4次国立大学法人等施設整備5か年計画
第4次国立大学法人等施設整備5か年計画
(平成28~32年度) 平成28年3月29日 文部科学大臣決定 重 点 整 備 推 進 方 策 安全・安心な教育研究環境の基盤の整備 ○耐震対策(非構造部材を含む)や防災機能強化に配慮 しつつ,長寿命化改修を推進 ○老朽化した基幹設備(ライフライン)を更新 国立大学等の機能強化等変化への対応 ○大学等の機能強化に伴い必要となる新たなスペースを 確保 ○長寿命化改修に合わせ,機能強化に資する整備を実施 ・ラーニング・コモンズやアクティブ・ラーニング・ スペースの導入を推進 ・地域産業を担う地域人材の育成など,地域と大学の 連携強化のための施設整備を実施 等 ○大学附属病院の再開発整備の着実な実施 サステイナブル・キャンパスの形成 ○今後5年間でエネルギー消費原単位を5%以上削減 ○社会の先導モデルとなる取組を推進所要経費 : 約1兆3,000億円
質の高い,安全な教育研究環境の確保
戦略的な施設マネジメントの取組の推進 ①施設マネジメントの推進のための仕組みの構築 ○経営者層のリーダーシップによる全学的体制で 実施 ②施設の有効活用 ○経営的な視点での戦略的な施設マネジメントの 下,施設の有効活用を積極的に行う ○保有面積の増大は,施設管理コストの増大につ ながるため,保有建物の総面積抑制を図る ③適切な維持管理 ○予防保全により良好な教育研究環境を確保 ○光熱水費の可視化等による維持管理費等の縮減 や必要な財源の確保のための取組を進める 多様な財源を活用した施設整備の推進 大学等は,国が施設整備費の確保に努める一方, 資産の有効活用を含め,多様な財源を活用した施設 整備を一層推進 老朽改善整備 約475万㎡ 整備目標 狭隘解消整備 約40万㎡ 大学附属病院の再生 約70万㎡11
・改修によるエネルギーコスト等の削減 ・施設の集約化による維持管理コストの削減 ・土地・スペースの活用による収入増加