Linuxで廃棄PCを再生
するためのマニュアル
Windowsと互換性のあるオフィスと
Webブラウザー等を利用できるように
2019年6月
作成者:福田卓夫(
fukuda@cup.com
)
※この資料は、どなたでもご自由にご利用ください。
背景と目的
• Windowsは、2014年のXP、2017年のVistaに続き、2020年には7のサポートが
終わろうとしている中で、大量のパソコンが廃棄されようとしているが、中には
まだ十分使えるものもあります。そこで、廃棄されるようなパソコンを、費用をか
けずに再生して活用できないか考えてみました。
• オープンソースのOSであるLinuxを使って、費用はかけず、アプリはインター
ネットの情報を閲覧するWebブラウザーとワード・エクセルと同等のオフィスソフ
トをWindowsユーザーが違和感なく使えるようにすることを目指しました。
• 手持ちのWindowsXP世代の今となっては超低スペックのパソコン(CPUは
PentiumM,メモリーは1GB)を実験台としていろいろ試した結果、すべて無料で
使えるソフトを使って、実用になるものができたので、その構築方法をマニュア
ル化し公開するものです。
構築の方針と全体の流れ
• 廃棄されるような古いパソコンを費用をかけずに再生し、マイクロソフトオフィスと互換性 の高いオフィスソフトやWebブラウザーなどのアプリがWindowsと同じ操作で利用できるよ うにします。 • 今回使ったパソコンはWindowsXP世代の次のような仕様のものです。 CPUはPentiumM 1.4GHz(Pentium4,Celeron等でも可)、メモリーは1GBまで増設(512MB 以上あれば可)、ハードディスクは40GB(10GB以上あれば可)、ネット接続(有線又はWi-Fi) ※Windows7世代のものであれば更に快適に使えるでしょう。 • OSは、無償で利用できるLinuxを数種類試した結果、このような用途でよく利用されてい るUbuntu(ウブントゥ)を軽量化したLubuntu(ルブントゥ)を選択しました。メジャーなUbuntu をベースにしているので、様々なアプリを容易に利用できます。 • オフィスソフトは、マイクロソフトオフィスと互換性の高いWPS Officeを使います。 (WPS OfficeのWindows版(旧:KINGSOFT Office)は販売されており、販売されている中古パソ コンに添付されていることがある。) Linux版は無償で利用できますが、メニューの表示が英語なので、これを日本語化する作 業が必要となります。 • Webブラウザーは、Windowsで馴染みのあるGoogle Chromeのベースとなっている、オー プンソースのChromiumを利用します。操作方法は、 Google Chromeとほぼ同じです。 • プリンタードライバーなども導入し、Windowsパソコンと同等に使えるようにします。• 作業の流れは、Windows10パソコンでOSインストールメディア作成→OSのインストール →OSアップデート→WPS Office等各種アプリのインストール、となります。
OSインストール準備
(Windows10パソコン上で行う)
• OSをインストールするために、OSのイメージファイルをダウンロードし、インス
トールメディア(USBメモリーかDVD-R)に書き込みます。
• まず、OSのイメージファイル(iso形式)を次のところからダウンロードします。
【32bit版】
http://cdimage.ubuntu.com/lubuntu/releases/18.04/release/lubuntu-18.04-alternate-i386.iso
【64bit版】
http://cdimage.ubuntu.com/lubuntu/releases/18.04/release/lubuntu-18.04-alternate-amd64.iso
パソコンに搭載されているCPUにより、32bitか64bitかを選択します。
(概ね、WindowsXP世代のPCは32bit、Vista以降は64bitを選択す
ればいい。どちらかわからない場合は32bitを選択。)
インストールメディア作成(1)
• ダウンロードしたisoファイル(「ダウンロード」フォルダ内にある)をインストール
用のメディアに書き込みます。
• USBメモリーから起動できるパソコンであれば、USBメモリーに書き込んで利用
することもできますが、ここでは一般的なDVD-R(又はCD-R)に書き込む方法を
紹介します。
※ USBメモリーに書き込む場合は、そのためのアプリが必要
• Windows10にある書き込みツールを利用します。
DVD-Rをドライブに入れて、エクスプローラでisoファイルを選択し、右
クリックし、「プログラムから
開く」→「Windowsディスク
イメージ書き込みツール」
を選択
(もしこのツールがメニュ
ーに出てこない場合は
次ページの操作を行う。)
※Windowsディスクイメージ書き込みツール
がメニューにない場合の対応
• 「別のプログラムを選択」
• ここにもない場合は、「その他のアプリ」
• これでもない場合は、
「このPCで別なアプリを探す」
• C:¥Windows¥System32の中
にある「isoburn.exe」を選択
インストールメディア作成(2)
• ツールが起動したら「書き込み」をクリックして開始する。
正常に終われば
閉じて終了
※以上でWindows10パソコンでの作業は終了。
この後は、対象となるパソコンでの作業に移ります。
【参考】USBメモリーにOSのisoファイルを書き込む方法
• 書き込み用アプリのインストール
ここから「Rufus」というアプリをダウンロードします。(インストール不要)
https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/rufus/
• OSを書き込むUSBメモリーを挿入。
• 「ダウンロード」というフォルダーにダウンロードされた「rufus-*.exe」(*はバー
ジョン)というファイルを右クリック→管理者として実行。
• 「デバイス」にUSBメモリーが選択されて
いることを確認し、「選択」をクリックして
isoファイルを設定し、「スタート」する。
• 書き込みが終わったらUSBメモリーを挿して
電源を投入する。
もしUSBメモリーから起動しない場合は、こ
こを参考にBIOS設定を行う。
https://jp.answers.acer.com/app/answers/d
etail/a_id/45294/~/usb
もし、それでもUSBメモリーから起動しない
場合は、次のように、USBから起動させるソ
フトをCDに焼いて対応する。
https://report.hot-cafe.net/old-pc-usb-live-2190
OSのインストール1
(ここから再生するパソコンでの作業)
• OSが入っているDVDをドライブに入れてパソコンを起動する と、しばらくして次のような「言語選択」の画面が出るので、 「日本語」を選択して、Enterキーを押す。言語の選択
インストールオプションの設定
• しばらくするとメニューが出るので、↓キーで2行目の 「Lubuntuをインストール(I)」を選択。(まだEnterキーは押さな い。)• Pentium MやCeleron MなどPAE(物理アドレス拡張)に対応していないCPUを使っている場 合は、下のオプション設定が必要。それ以外は、オプションは不要で、Enterキーを押して インストールを開始。(どちらかわからない場合は、オプションなしでやってみて、うまく行 かなければ、オプション設定してやり直す。) ●PAE非対応の場合のオプション設定 • F6キーを押す。「エキスパートモード」などと書いたウィンドウ をEscキーを押して閉じる。 • 「起動オプション・・・・splash」の後に「△forcepae△---△forcepae」(△は半角スペース)と記入する。 • Enterキーを押しインストール開始。
OSのインストール2
• 「日本語」になっていることを確認し「続ける」言語の設定
• 日本語キーボードが選択されているので「続ける」キーボードの設定
• Wi-Fiが利用できる場合は、ここで接続する。 (ここで接続せず、OSのインストールが終わっ たのちに接続してもいい。) • 「このネットワークに接続する」にチェックを入れ てSSIDを選択し「接続」をクリック。 • 暗号化キー(パスワード)を入力し接続。接続で きたら「続ける」無線(Wi-Fi)の設定
• 通常のインストール、インストール中にアップデー トをダウンロード、サードパーティ製ソフトウェアを インストールする、の3つにチェックを入れて「続け る」(Wi-Fi接続しなかった場合は、アップデートの ダウンロードはなし)アップデート等
OSのインストール3
• 「ディスクを削除してLubuntuをインストール」を選択 • すべてのデータが削除されるという警告メッセージ が出るが「続ける」インストールの種類
• 日本が選択されているので「続ける」住んでいる場所
• ユーザー名とパスワード等を入力し「続ける」 • DVDからファイルのコピーが始まる。ユーザー名、パスワード
• インストールが終わると「今すぐ再起動する」 • しばらくすると、右のような指示が出るので、DVDを 取り出して、Enterキーを押すと再起動が始まる。インストール終了→再起動
OSインストール後の設定
• 再起動後はこのような画面が立ち上がる。デスクトップ
• スタート(Windowsと同じく、画面左下のアイコン)→設 定→言語サポートを開くと、次のように追加インス トールするよう促されるので「インストール」言語サポート
• 各種アプリをインストールする前に、OS等のアップデートを しておく必要がある。 • インストール時にネット接続し、アップデートをダウンロード するを選択した場合は、すぐに「更新がある」という表示が 出るので「今すぐインストール」アップデート
• 初期設定では、スクリーンセイバーが起動した らロックされ、解除するためにパスワードを入 力する必要があり面倒なので解除する。 • スタート→設定→電源管理を開き、セキュリ ティの自動的にロック「しない」に設定画面ロック解除
※手動で更新をかける場合は、スタート→システムツール→ソフトウェアの更新 このページの操作の途中 でパスワードを求められ たら、OSのインストール の際に設定したパスワー ドを入力する。アプリのインストール1
Webブラウザー Chromiumの追加
• Windowsでおなじみの「Google Chrome」
と同じ「Chromium」をインストールする。
• スタート→システムツール→ソフトウェア
を開く。
• 検索窓に「Chromium」と入力すると検索
が始まり、しばらくして出てくるので、
Chromiumをクリックし「インストール」。
• パスワードを求められるので、インストー
ル時に設定したものを入力し「OK」。
• インストールが終わると、スタートメニュー
に追加されている。
同じ手順で、Windowsのペイントと同等な
「Pinta」や高機能な画像編集・処理ソフトの
「Gimp」等をインストールする。
Chromiumを使う
• インストールした Chromium が正常に動くかテ
ストする。
• スタート→インターネット→Chromium で開く。
• 「Chromiumへようこそ」という画面が出る。
Googleアカウントを持っていて「ログイン」すれ
ば、他のパソコンで使っているブックマークや
拡張機能等が同期して使えるようになる。
ログインしない場合は「いいえ」を選択。
• 既定のブラウザーになっていないという表示
が出たら、「既定にする」
• WindowsのGoogle Chrome と同じトップ画面が
出るので、検索などして動作確認する。
アプリのインストール2
WPS Office をダウンロード
• ブラウザーで次のURLを開く。 http://wps-community.org/downloads • 最も新しいバージョンから 32bitは「wps-office_***_i386.deb」 64bitは「wps-office_***_amd64.deb」 をダウンロードし保存する。 ※32bitか64bitかはOSに合わせる。 • ダウンロードしたインストール用ファイ ルは、「ダウンロード」フォルダに保存 されている。アプリのインストール3
必要な機能を追加
• ダウンロードした WPS Office等アプリをインストールす るのに必要な機能を追加する。(make) • スタート→システムツール→LXTerminalを開く。 • 「sudo△apt△install△make」(△は半角スペース)と入 力しEnterキーを押す。 パスワードを求められるので入力する。 始まると、途中経過が表示されるが、途中で停止し、 続けるために[Y/n]と聞かれた場合は、「y」「Enter」と入 力する。 ※既にインストールされている場合は、右のように、 その旨表示される。 ここから入力アプリのインストール4
WPS Office のインストール
ダウンロードした WPS Officeをインストールする。 • ダウンロードした WPS Office のインストールファイルを 右クリックして、「GDebiパッケージインストーラー」を起 動する。 • しばらくすると、「パッケージをインストール」が有効に なるのでクリックする。 パスワードを求められるの で入力すると、インストール が始まる。 • インストールが終了したら パッケージインストーラーを 閉じる。アプリのインストール5
WPS Office の日本語化
• スタート→システムツール→LXTerminalを開いて、次のコマ ンドを1行ずつ実行する。
(1行ずつコピーして貼り付ける。) sudo apt install git
git clone git://github.com/wps-community/wps_i18n.git sudo apt-get install libqt4-dev
cd wps_i18n cd ja_JP
sudo make install
WPS Officeのメニュー表示等を日本語にする。
パスワードを求められたら入力する。
始まると、途中経過が表示されるが、途中で 停止し、続けるために[Y/n]と聞かれた場合は、 「y」「Enter」と入力する。
アプリのインストール6
WPS Office の設定
• スタート→WPS Office→WPS Writer(Wordに相当)を起動 • 英文でライセンス同意を求められるので「I Accept」
• 何かの注意表示が出るので次からは表示されないよう、 「Do not report again」にチェックを入れて「Close」
• Wordと同様スタートページ(ここは日本語にできない)が 表示されるので、New Document で新規作成
• 文書編集画面が出るが、メニューが英語なので日本語 に変更する。
WPS Office の設定(続き)
• 画面右上の言語設定ボタンをクリック • Follow system locale のチェックを外す • 「日本語」を選択し「OK」 • 設定は再立ち上げしてから有効になる・・・という表示が 出る。 • WPS Writerを閉じて、再度起動すると日本語になる。 言語設定を日本語に変更する。 この言語設定の変更は、Spreadsheets(Excelに相当)や Presentation(PowerPointに相当)でも有効になっている。
WPS Office の設定(続き)
• WPS Writer 編集画面から、Menu→オプション • 「全般と保存」の「測定単位」を「mm」に変更し「OK」 単位がインチになっているのをmmに変更する。 この設定変更は、Spreadsheets (Excelに相当)とPresentation (PowerPointに相当)に自動的に反映 されないので、同じ作業をそれぞれで 行わないといけない。アプリケーション・ランチャーの設定
• 画面左下のタスクバーを右クリックし アプリケーション・ランチャーおよびタスクバーの 設定を起動 • ランチャに登録されている不要なものを「削除」し、 右側にある必要なアプリを「追加」し、「上へ」「下 へ」でランチャの並びを整え、「閉じる」。 使いやすくするために、アプリのクイック起動を設定する。 このあたりで右クリックUSBメモリーの使い方
Windowsで使っているUSBメモリーはそのまま使えるので、パソコン間での
データ交換などに使える。
• USBメモリーを挿すと右のようなウィンドウが 開くので、「OK」 • Windowsと同様にファイルのコピー・移動等が 可能 • USBメモリーを取り外すときは、取り外し操作 を行う。 (USBドライブ右の▲をクリック)【参考】プリンタードライバーのインストール
一例として、エプソンのプリンター「EW-M571T」のドライバーをインストールする手順を 紹介します。(エプソンはこの手順で行けるが、他のメーカーはこれとは違う。) • エプソンのLinuxプリンタードライバーのダウンロー ドはこのページから行う。 http://download.ebz.epson.net/dsc/search/01/sea rch/?LG2=JA&OSC=LX • 型番を入れて検索すると出てくる。 • この中から、32bitの場合「***_i386.deb」、64bitは「***_amd64.deb」をダウンロードする。 (「ESC/P-R Driver (generic driver)」と「Epson Printer Utility」の二つ)• この資料15ページの手順で「lsb」をインストール。(LXTerminalを開き、 「sudo△apt△install△lsb」(△は半角スペース)と入力しEnterキーを押す。) • この資料16ページと同じ手順で、ダウンロードしたプリンタードライバー二つをインス トールする。(ファイルを右クリックして、「GDebiパッケージインストーラー」) • プリンターをパソコンにUSBで接続し、スタート→システムツール→プリンターでプリ ンターを追加する。