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水資源に関する研究 I. 農業用水の転用について-香川大学学術情報リポジトリ

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水資源に.関する研究 Ⅰ

農業用水の転用について

井筒勝彦,山本康之*

STUDYON WATER−RESOURCES I

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KatsuhikoIzuTSUandYasuyukiYAMAMOTO

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農業用水の転用ほ4段階を経て発展するものと思われる。 第一段階,渇水期における都市の上水道への人道上的且つ緊急の農業用水の転用。 第二段階;都市用水の日常的水不足に対する転用。 第三段階;郡市用水は農業用水の事業費に投資を始める。 第四段階,新規ダム建設費を最高限度とする水市場が形成される。 第二段階までを譲水とし,第三段階から売水とする。 は じ め に 我国では,河川の基底流出の水資源は,農業用水として,旧河川法制定(1896年)以前に,ほは開発し尽された(こ の権利をいわゆる慣行水利権として認めらゎた)。 そのため,後発の都市用水(上水道,工業用水)ほ,ダムによって,基準点の流量を開発しなければならなかった。 初期のうちは,ダム開発も低廉であったが,近年では,々γdγ曙γ砂ゐと開発方式の特性から,非常に高額となり,ダム 開発の方法も困難と成ってきた(1)。そのため,地域の事情に応じて,農業用水から都市用水に水資源の転用が成されて きた。しかしながら,これに関してほ,多くの精力的な研究や報告があるが,未だ法的にも,社会的にも,技術的に も,多くの問題を包含している。 *地域振興整備公団

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農業用水合理化対策事業について 現代日本の社会においてほ,利権の譲渡に対して,それ相応の経済的な代償を求められる。水資源開発が多額な事 業費を必要とするなら,それの代替水資源である農業用水の水利権に対して,経済的な価格形成がされ得る。事実, それの譲渡に対し,管理費等の負担の名目で,金銭の授受が成されてきた。 −・方,河川管理者である建設大臣は,河川法の解釈として,「公水理念」の立場を堅持し,これを認めようとはしな い。すなわち,不用となった水利権(−・部または全部)は,河川管理者へ返還し,河川管理者ほ,申請のあった新し い利水者に水利権を許可するという方法を取り,当事者間で使接話し合い,合意により譲渡することを,認めてほい ないのである。 しかし,このような考えでほ,現実と遊離するばかりか,逼迫する水資源の有効利用を妨げることにもなる。 これに対し,農林省の農業水利問題研究会ほ,農業水利の合理化による都市用水に対する転用に関して,適格な分 析と提言を行い,「農業用水合理化対策事業」を発足させるに至った。 その実施要綱の第1,目的にほ,「近年の著しい経済の発展及び都市化の進展に対し,都市近郊の農業地帯において, 虚業水利施設等の整備を行うことにより,地域農業の近代化を図るとともに,この結果生み出される余剰水の確保を し,都市用水等に転用することを目的とする」と明記されている。 この事業に対する建設省の考えほ,河川水ほ公共の資産であり,私的取引きの対象とほされないこと,河川水の配 分ほ.,河川管理老が公共の利益を基準として決定するものであること,水利権は権利設定の目的に応じて−現に必要と される量の取水が権利として,保護されるものであることの現行河川法の一・般原則の観点から,河川管理老として転 用に関して指導,調整を行う必要がある(2)と相変わらずの姿勢である。 現実に.は,都市用水と,農業の多目的事業という性格をもち,したがって費用もそれぞれの効用に応じて分担する という形をとる。だが興味深いことほ,農業側の負担のうら,補助金を除いた地元負担分については,事実上都市用 水側が肩代りするという場合が多い。これは,制度がそうさせるのでほなく,制度の外側で行われる,いわば市民レ ベルの契約である(8)。 しかしながら,農業用水合理化対策事業ほ1972年から,1982年までの10年間で,津山東部(岡山県),蔦西用水(埼 玉県),権現堂(埼玉県),幸手領(埼玉県),泉佐野(大阪府),芝原用水(福井県),四時(福島県)の7件,合理イヒ 水量6819,が/Sβ(に留まった。期待が大きかった割にほ,件数,合理化水量共に少なかったのほ,河川法の範囲で実 施され,水利権の経済財の評価において,公共財としてのウェイトが,私財より勝った結果であろう。この事業ほ, 今後の水資源の転用にとって大きな契機となることは,間違いのない点であろう。 次の段階として,法的な課題を現実に即応したものに変改するべきであろう。 転用について従来の研究 需要量の増大を前にして,都市用水としては,供給量とのアンバランスを早急に解決せねばならない課題である。 ダム等の既存水利との直接的競合を避ける方法ほ,非常に高価な代償と,政治的社会的な多大な努力を必要とする上 に,調査から竣工までの長大な期間を要する。 一・方,都市の発達ほ,農地の宅地等への転用や,農地の潰廃を促し,その結果として,農業用水の余剰水を塵み出 している。そこに水資源の需要と供給の背景が設定され,転用となる訳であるが,華山・布施等は,個々の事例は, 金銭の授受の形態,およびその配分の形態によって特徴づけられ,過去における転用事例で,あからさまな水利権の 売買という形式をとっているものではなく,それは,法制度がそれを認めていないからであり,農業用水と都市用水 との交渉の過程を,つぶさにみると明らかに商取引,あるいは擬制資本の取引の性格をみることができる(4),としてい る。 志村は,開発コストの傾向を開発コストゼロ期,開発コスト微増期,開発コスト上昇期の三段階に分け, の開発コスト上昇期は,幾何級的な開発費の増加を示し,新規開発地区と旧開発地区との間に新しい差額原水コスト という概念を提案し,農業用水と都市用水問に水市場の形成を予測した(5)。 水谷は,詳細な調査をもとに学説の検討を加え,転用水価には,上下のバラツキがみられ,一・物一・価の法則が認め られないとし,水利転用では水が自由に売買さわる市場は展開せず需要者と供給老の相対づくの個別的契約によって 水の交換が行われ,施設システムの不備によって,水の移動が制約されるような技術的な理由によるのではなく,水

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利転用に地域的同一・性への指向があるからであり,地域的同一・性は,転用水を生み出す需要発生地区が接近ないしは 重複することをいうとしている。また,地域的同…・性によって農業用水が,共同管理と共同利用の対象として,地域 資源を利用され続けたとしている(6)。 ここで,水利転用において,地域的同一L性を総てを否定する訳でほないが,農業水利の歴史において,他水利との 水争いの歴史の結果として今日までの近代の水利慣行が形成されてきた事実もあり,水不足の情況ではなく余剰水の 転用としては,農業水利合理化対策事業が進展しないことの説明が不十分となる。 水の不足地域と水の余剰地域,即ち正と負が,接する点に存在すれば,水に関して強力に結びつくことは必然であ る。離れた所に,それらが存在した場合,社会的,経済的,技術的条件を満たすことが不可能ではないが更にこれだ けの事業をするには法的条件も満たさなければならない。 今日,農家並びにその集団ほ,他職業と比して,経済的感覚や経済的行動が決して劣るものではないことは,土地 改良区と構成員が重複する農業協同組合の存在を見れば明らかである。農産物ほ少しでも高値を付ける市場へ即刻入 る情報をもとに,全国各市場に送り出されていることほよく知られている事実であり,水が取り引きの対象となるこ とも,よく知られていることである。しかし,水の商品市場が未発達の様相を呈しているように見えるのも事実であ る。 それは第一Lに,水の売買が法的に認められていないために,その行為が抑圧されているためである。その結果水の 売買の交渉の場が公開されることが少なく,1対1でなされる為である。そして,その違法性のため,社会的に容認 される程度の価格(水価)に抑えられていると考える。 第二に,農業用水の開発事業の国と地方公共団体の合せた補助率が,90−79%で,地元受益団体の負担が,21−10% である。一方,都市用水の上水道事業ほ国の補助率が,%−%まであり,工業用水は企業名確定の場合国の補助率が 40%以内,企業名未定の場合30・−35%と県負担30%である。残りは,起債を発行して補填され,各料金を徴収して返 済される。このように他水利に比べ,農業用水の高補助率が,一・般の農業用水の水価を低く抑える働きをしている。 第三に,年々,土地改良区の事業費,維持管理費ほ高騰して−いるが,組合員や水田面積の減少のため,組合員1人 当り,又は,水田単位面積当りの賦課金額ほ.更に高騰している。それを少しでも軽減することが,組合員の願いでも ある。そのため,初期には転用急に対する料金制が多かったが,近年は,過去の実検を踏まえ最大値を契約水量とし て,その水量に対する定額制にするところが多くなっているようだ。転用畳の年変化に対しても,組合の予算が立て 安くなる訳である。都市側にとっては,水量以外に,水質や位置関係(高低差や取付水路の長さなど)利水の安定度 など,とても見かけの一・物一価の法則では対応できない。それ故に,即,水市場否定とはならないのではないか。つ まり,同一都市の複数の転用件数に対し,それぞれの水価を取り得るのである。 香川県(こおける転用の概要 1972年の香川県の調査によると農業用ため池(多目的ダムの農業用水を含む)からの上水道への転用は,41個のた め池に及び,計画1日最大取水量は,高松市上水道の内場池3,200〝Z3,四ケ池土地改良関係(春日川北取水口)10,000 ∽S,丸亀市上水道の上池(満浪池係)15,000∽3,など,合計135,800∽3に昇るぐ7)。この値は,1日最大億の合計で, 常時この水畳を取水する訳ではないが,1人1日当り,415月(1978年水道統計による都道府県営水道の平均値)とす れば,327,000人に給水可能な水量である。香川県の人口999,968人(1980年国勢調査)の33%に相当する。 これらの転用例は,異常渇水時の緊急避難的なものから,通常的取水のものまであり,香川用水通水前でもあるの で変更したのもある。しかし,香川用水通水後も,はぼこれらほ継続され,新たに加わったものもある。 香川用水においても,工業用水から上水道に転用されていた例もある。 香川用水の工業用水は,25刑3/SβCであるが坂出(番の州),宇多津,丸亀,多度津の臨海埋立地への工場誘致がス ムースに進まず,オイルショックもあり,更に,瀬戸内法による排水の総量規制によって,進出企業も非用水型であっ たり,節水の企業努力により回収率は81%に達して余剰水が生ずるようになった。−・方,県水道は1979年に日長大給 水量154,000桝3に達し,計画日供給水量156,800∽3に迫る量となった。このため,工業用水の余剰水112,循ソSβC (97,000研3/勿γ)を県上水道に転用を行う手続きを取られた。最初に水資源開発促進法に基づく「吉野川水系におけ る水資源開発基本計画」の−‥部変更と,河川法(建設省)の水利権の一部変更,四国4県知事の協議,通産省(工業 用水),厚生省(上水道)の了解を得て,閣議決定後1983年に主務大臣から水資源公団総裁に,施設管理規程の−∴部変 更が認可された(る〉。

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この件に関しては,再コストアロケ、・・・・ショソなされ,手続きの点(4県知事協議等)で少々時間が掛ったが,大き な問題もなく,スム1−スに進んだのは,エ業用水と上水道利水目的と関係省庁は異なっても,双方を香川水道局が所 轄していたことと,双方とも水資源公団の香川用水に属していたことなどによるものと考えられる。 水田面積40,300如(1965年)から,壊廃により,32,700血7(1980年)に減少し,減反(政策)に6,240血7(1980年) が充当されるなど余剰水が生ずる要因があり,今後は,香川用水においても,農業用水からの転用がなされるものと 推定される。上水道が香川用水の水を要求する理由には,ため池の水に比べ水質の良い点が上げられる。今の技術で は,原水が良質でなければ良質の処理水が得られないためである。 農業用水の転用の発展段階 以上述べたように,農業用水の転用水価が低く抑制され 水市場の形成に関しても不明確である。その点をもう少 し考察してみよう。 転用には次の段階を経て発展するものと考える。 第一・段階 転用ほ,必ずしも余剰水があったから始まる訳ではない。異常渇水年の農業用水が一番水に苦しんでいるときに, 都市側もやはり,節水とか断水に悩まされ,このような人道上の緊急事態のとき,非常手段として農業用水を上水道 の水源として,臨時的な処置が取られる。 第二段階 その後,都市の人口増加に伴って,都市用水は水不足が日常的となり,農業用水は,農地の転用,減反も相まって, 渇水時においても余剰水が存在する場合あり,都市用水の日常的水不足に促され,転用される。豊水年や平水年の余 剰水が対象になると問題がある。そのような場合,渇水時のとき都市用水優先することが可能かどうか,十分検討を 要する。 第三段階 ダムやため池の嵩上げや波藻,その他の改良工事などの事業費の一部並びに全額を都市側が肩香りするようになる。 これは,農業用水合理化対策事業で行えは合法的だが,補助率の葡利な土地改良事業などで行えば,問題(再コスト ァロケーショソ)はあるが,この段階では,差額原水コストを考慮に入れた都市用水側の農業用水に対する投資と考 えられる。この段階に相当する実例は,例えば水谷の論文(9)などがある。 第4段階 新規ダム開発費(差額原水コストが生ずる)を上限して,水市場が形成される。 転用はこの順序通りの段階を経るとほ限らない。第二段階から始まったり,第一段階から第三段階に跳んだり,色々 なケ・−スが考えられる。工業用水への転用は一・般的にほ第二段階から始まるものと考えられる。 そして,第二段階までは少々の金銭の授受があっても人道上の範疇に入るものとして,転用水を売水と言うより譲 水とした方が適当であろう。第三段階からは,療極的な経済的行為と見なし,転用水ほ胡らかに売水と呼ばれてもや む得ない。この第三段階は,1対1の取り引きであろうとも,都市側の水価の決定のべ−・スに差額原水コストの概念 が存在し,たとえ新規ダム開発コストの何割かの水価に決定しても,新規ダム開発コストという擬似の売手の存在が 考えられ,このような状態は水市場の萌芽形態と見なし得る。 お わ り に 農業用水の転用が,都市用水に対する貢献であることに間違いはないが,農業用水の存続にもプラスに働いている。 それは経済的理由による訳であるが,専業農家の減少,兼業農家,それも第二種兼業農家の増加という社会現象の投 影とも考えられる。今後は,このような社会の実情に即応した法秩序の変革が必至であろう。 引 用 文 献 372,pp,8∼14,(1977). (4)筆山謙,布施微志:都市と水資源,鹿島出版会, pp126∼127,(1977) (5)志村博康 現代農業水利と水資源,東京大学出版 会,pp90∼101,(1977) (1)志村博康現代農業水利と水資源,東京大学出版 会,pp。61∼70,(1977). (2)建設省河川局水政課水利調整室∴農業用水の合理 化 河川,No378,p58,(1978) (3)志村博康 農業用水合理化と河川管理,河川,No

(5)

(6)水谷正一 農業用水の転用に関する研究,水利年 て,香川用水,No141,pp2−3,(1983). 報,pp119−′120,(1983). (9)水谷正一・農業用水の転用に関する研究,水利年 (7)佐戸政直ほか讃岐のため池,美巧社,pp 報,pp109∼118,(1983.).

454∼455,(1975). (1987年5月30日受理)

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