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Microsoft Word - 02_H23年度成果報告書120330_ver3

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平成23年度経済産業省委託事業

平成23年度産業技術研究開発

(有害化学物質代替技術開発)

報告書

平成24年3月

大阪大学大学院工学研究科

(2)

1

目 次

まえがき(研究概要) ・・・・・・・・・・・・・・2 和文要約 ・・・・・・・・・・・・・・5 英文要約 ・・・・・・・・・・・・・・6 本 編 ・・・・・・・・・・・・・・7 結び(総括及び結論) ・・・・・・・・・・・・・・28 研究成果の発表状況 ・・・・・・・・・・・・・・29

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2

まえがき(研究概要)

我々の生活を演出する色材には、無機顔料と有機顔料がある。このうち工業的規模で製造され ている無機顔料としては、カドミウム赤(CdS)、ベンガラ(Fe2O3)、黄鉛(PbCrO4)等が古くから知ら れている。しかしながら、これらの既存の顔料の多くは、強い毒性を示す金属(特にカドミウム、 クロムはPRTR 特定第 1 種化学物質、鉛、バナジウム、及びコバルトは PRTR 第 1 種指定化学物 質)を含んでいる。このため、欧州の RoHS 指令や REACH 規制など、我が国を含めた世界各国 において、人体や環境に対する悪影響を懸念し、既存の顔料にとって代わるような環境に優しい 新しい顔料の開発が強く求められている。事実、子供用玩具の塗料中に鉛が含まれていたために、 メーカーが自主回収を行った例もある。有機顔料の使用も検討されているが、紫外線や熱に対す る耐久性が無機顔料より劣るため、本質的にその用途が制限されてしまう。 本研究開発事業では、色の三原色である、黄色、赤色、及び青色それぞれに対する、人体に有 害な元素及び環境に対する負荷の大きい元素を含まない無機顔料の開発、並びに環境への負荷を 可能な限り低減できる合成方法を開発することを目的とし、これによって、当該物質による環境 リスクを低減するだけでなく、厳格化する化学物質規制によって必要不可欠な物質が使用できな くなる企業経営上のリスクを低減し、さらに、諸外国に先駆けて代替化を行うことによって、我 が国産業界の国際競争力強化に貢献することを目指している。 本研究開発事業では、以下の3点を顔料の基本設計指針として、研究開発を行った。 ① 人体や環境に無害な元素のみ(例えばナトリウム、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、ジ ルコニウム、チタン、鉄、リン、ビスマス、タングステン、ニオブ及び希土類元素等)を選 択する。 ② 顔料を構成する母体材料としては、鉱物や生体材料として存在することがすでに知られてい る、酸化物、リン酸塩、ケイ酸塩、タングステン酸塩など、化学的に安定な物質を選択する。 ③ これらの母体結晶に、アルカリ土類金属やアルミニウム、ジルコニウム、鉄、チタンなどを 固溶させて発色を制御する。 酸化物、リン酸塩、ケイ酸塩、タングステン酸塩は、天然に存在する鉱物の主成分であり、化 学的・物理的に安定である。さらに、リン酸塩は、骨や歯の成分としても知られているように、 人体に対して無害であることが期待される。 さらに、本研究開発事業では、開発した環境調和型の赤色、青色、黄色の各3原色無機顔料の それぞれについて、結晶構造、電子物性、及び発色機構を明らかにし、色純度(原色性)を向上 させることを目指す。発色の主たる原因としては、遷移金属イオンの電子軌道間の遷移(d→d 遷 移、f→f 遷移、f→d 遷移など)や、酸化物イオンから金属イオンに電子が移動する電荷移動遷移 が考えられる。そこで、本研究開発事業では、これらの電子の移動に関与する価電子帯や伝導帯 のエネルギー状態を意図的に変化させ、顔料を構成する物質の電子構造(バンドギャップエネル

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3 ギー)を制御することにより、発色させる。具体的には、酸化数の異なる複数の金属元素を組み 合わせて固溶体を形成させ、ある元素の電子軌道に他の元素の電子軌道を混成させたり、格子欠 陥や格子歪みを生じさせたりすることにより、価電子帯や伝導帯に変化を与える。従って、組み 合わせる元素の種類、酸化数、配合量を様々に変えることにより、価電子帯と伝導帯の電子構造 を自在に制御することにより、顔料の色合いや発色力を自在に制御し、最適化することができる。 以上のように、顔料の結晶構造、顔料を構成する元素の選択と組成、及び顔料の電子物性を意 図的に制御することにより、赤色、青色、黄色の各3原色無機顔料の色純度(原色性)を向上さ せ、鮮やかな色彩を有する優れた環境調和型顔料の創成を行う。 さらに、本研究開発事業により開発された新規無機顔料について、その実用性を検証するため に、試験用試料を作製し、企業等の協力機関に提供した。その評価等を随時、本研究開発事業に フィードバックすることなどにより、さらなる特性の向上を目指す。 具体的な開発項目としては、 ①新規無機顔料の創成 ②結晶構造の精密解析と発色機構の解明 ③実用化のための試験用試料の作製と提供 である。 開発項目①「新規無機顔料の創成」では、黄色、赤色、及び青色それぞれに対する、人体に有 害な元素及び環境に対する負荷の大きい元素を含まない新しい無機顔料を創成する。顔料を構成 する母体材料としては、鉱物や生体材料として存在することがすでに知られている、酸化物、リ ン酸塩、ケイ酸塩、タングステン酸塩など、化学的に安定な物質を選択する。これらの母体結晶 に、人体や環境に無害な元素(例えばナトリウム、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、ジルコ ニウム、チタン、鉄、リン、ビスマス、タングステン、ニオブ及び希土類元素など)を固溶させ て発色を制御することにより、人体・環境に優しい新しい無機顔料の創成を目指す。また、これ ら新規顔料の合成は、酸化物や炭酸塩、リン酸塩などを混合して焼成する固相反応法や、各金属 塩の水溶液から生成させた沈殿を焼成する液相反応法により行われるが、環境へ一切負荷をかけ ない方法を適用するという観点から、焼成は単に大気中で行い、地球環境を一切汚染しない条件 で合成する。 平成23 年度は、BiVO4系複合酸化物を基材とし、これに希土類元素あるいはアルカリ土類元素 等を固溶させることなどによって、現時点における環境調和型の黄色顔料であるプラセオジム黄

(ZrSiO4:Pr)、及びこれまでに本事業で開発した CeO2-ZrO2-Bi2O3系複合酸化物の黄色度を超える

新しい顔料を探索した。また、Bi2O3系複合酸化物を基材とし、これに遷移金属元素を固溶させる

ことによって、現時点における環境調和型の赤色顔料であるべんがら(Fe2O3)の赤色度を超える

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4 開発項目②「結晶構造の精密解析と発色機構の解明」では、開発項目①で得られた色純度が向 上した新しい黄色、赤色、青色の無機顔料それぞれについて、粉末X線回折測定を行い、その結 果をリートベルト法により結晶構造を精密解析することによって、結晶構造及び各構成元素の配 位環境を明らかにするとともに、精密解析された結晶構造に対してバンド構造計算を行うことに よって、顔料の結晶構造、顔料を構成する元素の選択と組成及び顔料の電子構造と発色の関連性 を明らかにする。さらに、これらの結果を、開発項目①の新規無機顔料の合成にフィードバック し、黄、赤、青の各3原色無機顔料の色純度(原色性)を向上させ、より鮮やかな色彩を有する 環境調和型無機顔料を創成する。

平成 23 年度は、CeO2-ZrO2-Bi2O3系複合酸化物黄色顔料について粉末X線回折測定を行い、リ

ートベルト法によって結晶構造を精密解析した。

開発項目③「実用化のための試験用試料の作製と提供」では、本研究開発によって得られた新 規無機顔料の実用性を評価するために、試験用試料を作製し、企業等の協力機関に提供する。協 力機関において実施されたそれぞれの用途に応じた機能や特性等に係る評価等の結果を、新規無 機顔料の設計や合成にフィードバックする。

平成 23 年度は、CeO2-ZrO2-Bi2O3系複合酸化物黄色顔料、及びBiVO4系複合酸化物黄色顔料を

各協力機関に提供し、生体安全性の評価、及び材料としての評価をそれぞれ行った。評価結果か ら抽出された課題は、開発項目①にフィードバックするなどして解決策を講じた。

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和文要約

本研究開発事業では、色の三原色である、黄、赤、青、それぞれに対する、人体に有害な元素 及び環境に対する負荷の大きい元素を含まない無機顔料の開発、並びに環境への負荷を可能な限 り低減できる合成方法を開発することを目的とし、これによって、当該物質による環境リスクを 低減するだけでなく、厳格化する化学物質規制によって必要不可欠な物質が使用できなくなる企 業経営上のリスクを低減し、さらに、諸外国に先駆けて代替化を行うことによって、我が国産業 界の国際競争力強化に貢献することを目指した。 黄色顔料については、BiVO4系複合酸化物を基材とし、これにカルシウム(Ca)と亜鉛(Zn) を固溶させることによって、優環境型黄色顔料において、世界で初めてL*a*b*表色系における黄 色度(b*)が 90 を越える新しい顔料を開発した。赤色顔料については、酸化ビスマス(Bi2O3) を基材とし、これに酸化エルビウム(Er2O3)と酸化鉄(Fe2O3)を固溶させ、組成を最適化する ことによって、現時点における優環境型の赤色顔料であるべんがら(Fe2O3)の赤色度を超える新 しい顔料を開発した。また、青色顔料については、アモルファスオキシリン酸タングステン (WOP2O7)を基材とし、これにユウロピウム(Eu)を添加した顔料が鮮やかな青色を呈するこ とを見いだした。 また、Ce0.43Zr0.37Bi0.20O1.90複合酸化物黄色顔料について粉末 X 線回折測定を行い、リートベル ト法によって結晶構造を精密解析した。その結果、強い黄色の発色には均一な固溶体の生成が必 須であることが分かった。 さらに、Ce0.44Zr0.36Bi0.20O1.90複合酸化物黄色顔料、及びBi0.90Ca0.08Zn0.02VO3.950複合酸化物黄色顔 料を各協力機関に提供し、生体安全性の評価を行うとともに、材料としての評価を行った。

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英文要約

This project is designed to develop novel environment-friendly inorganic pigments without any toxic and hazardous elements for three primary colors; yellow, red, and blue, and to find novel synthesis processes, which can reduce the effects on the environment as possible. The results will allow us to reduce not only the risk of environment pollution by the corresponding substances but also the management risk that the absolutely essential materials become unavailable by the control of harmful chemical substances. Furthermore, leading the world in alternative materials will contribute to increase the international competitiveness of the industrial world in our country.

Calcium and zinc were co-doped into the BiVO4 lattice to synthesize novel environment-friendly

yellow pigments. The pigments show brilliant yellow colors, and the most effective yellow hue was obtained for Bi0.90Ca0.08Zn0.02VO3.950. The yellowness value (b*) above +90 was realized for the first time

in environment-friendly yellow pigments in the world, although it falls just one step short of that of the toxic chrome yellow (b* = +96.5). For a novel red pigment, Er2O3 and Fe2O3 were dissolved in to the Bi2O3

lattice and the composition was optimized. As a result, the redness value (a*) became higher than that of the conventional Fe2O3 red pigment. In addition, novel blue pigments were synthesized by doping

europium into amorphous WOP2O7.

The structure of the Ce0.43Zr0.37Bi0.20O1.90 pigment, which was developed in this project, was

analyzed by powder X-ray diffraction (XRD). Rietveld refinement of the XRD pattern revealed that the Ce0.43Zr0.37Bi0.20O1.90 pigment exists as a single phase fluorite structure with cubic symmetry (Fm-3m). This

indicates that solid solution formation is significant for generating the brilliant yellow hue.

Finally, Ce0.44Zr0.36Bi0.20O1.90 and Bi0.90Ca0.08Zn0.02VO3.950 yellow pigments were supplied to

cooperative companies and the usefulness of them were evaluated. Evaluation of the assessment of safety of the pigments was also examined by a collaborator.

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本 編

1. 新規無機顔料の創成 1.1 バナジン酸ビスマスを母体とする新規な環境調和型黄色顔料 黄色無機顔料はプラスチックの色味の調整や、道路のセンターラインなどのトラフィック用顔 料として用いられるため、特に需要が大きいことで知られている。しかしながら、現在、工業的 規模で用いられている黄色無機顔料である黄鉛(PbCrO4)、カドミウムイエロー(CdS)、ニッケルチ タンイエロー(TiO2-NiO-Sb2O3)などには、有害な元素(Pb, Cr, Cd, Ni 及び Sb)が含まれており、これ らの顔料を使用することによる有害元素の環境中への流出や、人体への悪影響が懸念されている。 そのため、構成元素として有害な元素を含まない無害な代替顔料の開発が求められている。 環境調和型の黄色顔料としては、これまでにプラセオジム黄が実用化されているが、黄色の着 色力が弱く、明るさの不足するところでは黄色と認識されづらいことが問題となっている。これ に対し本委託事業では、これまでに有害な元素を一切含まない無害な新規黄色無機顔料として、 Bi6s 軌道と O2p軌道の混成軌道を形成させることでバンドギャップエネルギーを収縮させた

CeO2-ZrO2-Bi2O3複合酸化物1, 2)やCeO2-SiO2-Bi2O3複合酸化物3) 、及びCeO2-SiO2-Bi2O3-Al2O3複合

酸化物黄色顔料を開発し、既存の環境調和型顔料を上回る黄色度を実現してきた。 構成元素として有害な元素を含まない無害な黄色顔料としては、上記のプラセオジム黄のほか に、バナジン酸ビスマス(BiVO4)も開発されている。この顔料は、O2p軌道と Bi6s軌道との混成軌 道からなる価電子帯から、V3d軌道からなる伝導帯へのバンド間遷移に基づき黄色を呈する4)。し かしながら、この顔料も黄色の着色力が不十分であるという課題を有していた。これに対し、本 委託事業では、BiVO4にBi3+(0.117 nm5))よりわずかにイオン半径の小さいLa3+(0.116 nm5))を 固溶させ、格子を収縮させれば、Bi の 6s 軌道と O の 2p 軌道の混成軌道の効果4)が大きくなるこ とでBi6s-V3d軌道間のバンドギャップエネルギーが低減し、黄色度の向上が期待できると考えた。 そこで、鮮やかな黄色を呈する新しい環境調和型の黄色無機顔料の開発を目指し、BiVO4にLa を 固溶させたBi1-xLaxVO4を合成し、合成条件及び組成の最適化を行うことにより、市販のバナジン 酸ビスマス系黄色顔料を超える黄色度を示すことを明らかにした6)。 しかしながら、上記で開発した各黄色顔料は、既存の環境調和型顔料であるプラセオジム黄、 及びバナジン酸ビスマスよりは鮮やかな黄色を呈するものの、有害な顔料である黄鉛には遠く及 ばないことが課題となっていた。そこで平成23 年度は、さらに高い黄色度(b*値)を示す無機顔 料の開発を目指し、BiVO4のBi3+サイトを無害な元素であり、かつBi3+(0.117 nm5))よりもイオ ン半径が小さい Ca2+(0.112 nm5))及び Zn2+(0.090 nm5))で部分置換し、格子を収縮させた

Bi1−xCaxVO4−x/2及びBi1-yZnyVO4−y/2の合成を行い、その色彩を評価した。さらに、BiVO4の Bi3+サ

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8 その色彩も評価した。

試料の合成及び評価は以下のようにして行った。3.0 mol dm−3 の硝酸水溶液30 cm3にNH4VO3

1.08 g を溶解させた後、0.5 mol dm−3のBi(NO3)3水溶液、0.1 mol dm−3のCa(NO3)2水溶液、及び0.1

mol dm−3のZn(NO3)2水溶液を化学量論比で混合し、室温で1 時間撹拌した。撹拌後、5 倍希釈の アンモニア水を加えてpH を 6.5 に調整し、180 °C で溶媒を留去した。得られた粉末を 290 °C で 仮焼後、メノウ乳鉢で粉砕し、大気中650 °C で 6 時間焼成した。合成した各試料について粉末 X 線回折(XRD)測定により結晶構造を同定し、蛍光 X 線分析により組成を分析した。また、紫外 可視反射スペクトル測定により光学特性を、色彩色差計によりL*a*b*表色系における色度座標を 求め、L*(明度)、a*(正方向:赤色、負方向:緑色)、b*(正方向:黄色、負方向:青色)をそれぞれ 評価した。 1.1.1 Bi1−xCaxVO4−x/2x = 0, 0.03, 0.05, 0.08, 0.10) 図1 に、合成した各 Bi1−xCaxVO4−x/2x = 0, 0.03, 0.05, 0.08, 0.10)試料の XRD パターンを示す。 いずれの試料においても単斜晶のBiVO4相に帰属されるピークのみが観測され、単相が得られた。 図2 に XRD パターンより算出した各試料の格子体積の組成依存性を示す。Ca2+量の増加に伴い、 Bi1−xCaxVO4−x/2試料の格子体積は単調に減少することが確認された。これは、BiVO4のBi3+サイト が、Bi3+(0.117 nm5))よりもイオン半径が小さいCa2+(0.112 nm5))で部分置換されたためである と考えられる。以上のことから、Bi1−xCaxVO4−x/2x = 0, 0.03, 0.05, 0.08, 0.10)は、固溶体を形成し ていると考えられる。 図3 に各試料の紫外可視反射スペクトルを示す。Ca2+を固溶させることにより、試料の435 ~ 480 nm の波長領域における反射率が小さくなり、青色の光をより効率的に吸収することがわかった。

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9 これは、Ca2+の固溶により格子が縮小し、Bi3+O2−の結合距離が縮まり、Bi 6s準位とO2p準位の重 なりが強くなることで、混成軌道効果がより大きくなり、その結果、バンドギャップエネルギー が低減したためであると考えられる。また、合成した試料の中で、Bi0.92Ca0.08VO3.960の435 ~ 480 nm の波長領域における反射率が最も小さくなり、青色光を最も効率よく吸収することが明らかとな った。 表1 に各試料の L*a*b*表色系における色度座標を示す。比較例として、市販の黄色無機顔料で ある黄鉛、及び二種類のバナジン酸ビスマス(製造メーカーが異なる)の色度座標も併せて示す。 図 3 の紫外可視反射スペクトルの結果と同様、Ca2+を固溶させることにより、試料の黄色度(b* 値)が向上し、合成した試料の中でもBi0.92Ca0.08VO3.960が最大の黄色度(b*値 = +88.7)を示した。

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10 1.1.2 Bi1−xZnxVO4−x/2x = 0, 0.01, 0.02, 0.04, 0.07) 図4 に、合成した各 Bi1−xZnxVO4−x/2x = 0, 0.01, 0.02, 0.04, 0.07)試料の XRD パターンを示す。 いずれの試料においても単斜晶のBiVO4相に帰属されるピークのみが観測され、単相が得られた。 表 2 に各試料の色度座標を示す。Zn2+を添加することにより、試料の黄色度(b*値)が向上し、 合成した試料の中でもBi0.98Zn0.02VO3.990が最大の黄色度(b*値 = +85.7)を示した。 1.1.3 Bi1−x−yCaxZnyVO4-(x+y)/2(0 ≤ x ≤ 0.10, 0 ≤ y ≤ 0.05)

図5 に、Zn2+量を2 mol%に固定し、Ca2+量を変化させた各Bi1−x−yCaxZnyVO4-(x+y)/2(0 ≤ x ≤ 0.10, 0

≤ y ≤ 0.05)試料の XRD パターンを示す。いずれの試料においても単斜晶の BiVO4相に帰属され

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11 の組成依存性を示す。Ca2+量の増加に伴い、Bi 0.98−xCaxZn0.02VO3.99−x/2試料の格子体積は単調に減少 した。これは、Bi3+サイトがBi3+(0.117 nm5))よりもイオン半径が小さいCa2+(0.112 nm5))で部 分置換されたためであると考えられる。以上のことから、いずれの試料も固溶体を形成している ことがわかった。

図7 に、Ca2+量を約9 mol%に固定し、Zn2+量を変化させた各Bi1−x−yCaxZnyVO4-(x+y)/2(0 ≤ x ≤ 0.10,

0 ≤ y ≤ 0.05)試料の XRD パターンを示す。いずれの試料においても単斜晶の BiVO4相に帰属され るピークのみが観測され、単相が得られた。図8 に XRD パターンより算出した各試料の格子体積 の組成依存性を示す。Zn2+添加量の増加に伴い、Bi0.91−yCa0.09ZnyVO3.955−y/2試料の格子体積は単調に 減少することが確認された。これは、Bi3+サイトが、Bi3+(0.117 nm5))よりもイオン半径が小さい Zn2+(0.090 nm5))で部分置換されたためである と考えられる。以上のことから、いずれの試料 も固溶体を形成していると考えられる。 図9、10 に Zn2+量を2 mol%に固定し、Ca2+ 量を変化させた各試料、及びCa2+量を約9 mol% に固定し、Zn2+量を変化させた各試料の紫外可 視反射スペクトルをそれぞれ示す。Ca2+及び Zn2+を固溶させることにより、試料の435 ~ 480 nm 波長領域における反射率が小さくなり、青 色の光をより効率的に吸収することがわかっ た。これはCa2+及びZn2+の固溶により格子が縮 小し、Bi3+と O2−の結合距離が縮まって Bi6s準

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12 位と O2p準位の重なりが強くなると、これらの 混成効果がより大きくなり、バンドギャップエ ネルギーが低減したためであると考えられる。 ま た 、 合 成 し た 試 料 の 中 で 、 Bi0.90Ca0.08Zn0.02VO3.950の435 ~ 480 nm の波長領 域における反射率が最も小さくなったことから、 Bi0.90Ca0.08Zn0.02VO3.950が青色の光を最も効率よ く吸収することが明らかとなった。 表3 に各試料の L*a*b*表色系における色度座 標を示す。紫外可視反射スペクトルの結果と同 様、Ca2+とZn2+を同時に固溶させることにより、 試料の黄色度(b*値)が向上し、合成した試料 の中で、Bi0.90Ca0.08Zn0.02VO3.950が最大の黄色度(b*値 = +91.6)を示した。この値は有害顔料であ る黄鉛の黄色度(b*値 = +96.5)には及ばないものの、環境調和型顔料で b*値が+90 を越える黄 色顔料を世界で初めて実現した。

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13 1.2 酸化ビスマスを母体とする新規な環境調和型赤色顔料 赤は警戒色であるため、赤色無機顔料は道路標識などのトラフィック用顔料として用いられて おり、需要が多い材料である。現在、工業的規模で多く使用されている赤色無機顔料としては、 カドミウムレッド(CdS·CdSe)や弁柄(Fe2O3)が知られている。しかしながら、前者は、構成元 素としてCd や Se という環境や人体に対して有害な元素を含んでいること、一方後者はその赤色 度(a*値)が小さいことがそれぞれ問題となっているため、高い赤色度を有する新たな環境調和 型の赤色無機顔料の開発が必要とされている。 本委託事業では、より高い赤色度を示す新規な環境調和型赤色無機顔料の開発を目指し、無毒 であることが報告されている酸化ビスマス(Bi2O3)に着目した7,8)。Bi2O3は、常温において単斜 晶構造(α 相)を有するが、730 °C まで加熱すると立方晶構造(δ 相)へ相転移し、橙色を呈する ことが知られている。しかしながら、このδ 相とよばれる立方晶相は 730 ~ 820 °C の温度範囲で のみ安定であり、常温においては淡黄色の単斜晶相(α 相)となる。Bi2O3のBi3+イオンサイトを 希土類イオンで部分置換することにより、立方晶の Bi2O3 相を常温でも安定化できることが知ら れているが9)、詳しい色彩の評価はなされていない。そこで本委託事業では、(Bi1-xRx)2O3±δ (R = 希 土類) を合成し、その色彩を評価した。加えて、最大の赤色度(L*a*b*表色系における a*値)を 示した試料について、その赤色度のさらなる増大を目指し、さらにFe3+を添加した試料を合成し、 色彩の評価を行った。 試料の合成及び評価は以下のようにして行った。Bi2O3及び希土類酸化物の粉末を化学量論比で 混合し、ボールミル処理を3 時間行った後、白金るつぼに入れ、大気中、800 °C で 10 時間焼成し た。酸化エルビウムと複合化した試料については、得られた試料にさらに酸化鉄粉末を化学量論 比で混合し、大気中、500 °C で 10 時間焼成した。合成した各試料について粉末 X 線回折(XRD) 測定により結晶構造を同定し、蛍光X 線分析により組成を分析した。また、紫外可視反射スペク トル測定により光学特性を、色彩色差計によりL*a*b*表色系における色度座標を求め、L*(明度)、 a*(正方向:赤色、負方向:緑色)、b*(正方向:黄色、負方向:青色)をそれぞれ評価した。 1.2.1 (Bi0.7R0.3)2O3±δ (R = La3+, Ce4+/3+, Pr4+/3+, Nd3+, Sm3+/2+, Eu3+/2+, Gd3+, Tb4+/3+, Dy3+, Y3+, Ho3+, Er3+, Tm3+/2+, Yb3+/2+, Lu3+) 図11、12 に合成した各試料の XRD パターンを示す。Bi2O3のBi3+イオンサイトを、Gd3+ (0.1193 nm) 5)よりイオン半径の大きい希土類イオンで部分置換した(Bi0.73La0.27)2O3、(Bi0.74Ce0.26)2O3+δ、

(Bi0.74Pr0.26)2O3+δ、(Bi0.73Nd0.27)2O3、(Bi0.72Sm0.28)2O3-δ、(Bi0.72Eu0.28)2O3-δ及び(Bi0.73Gd0.27)2O3では、い

ずれも立方晶のBi2O3相の単相試料が得られず、目的の立方晶のBi2O3相を常温において、安定化

させることができなかった。一方、Bi2O3のBi3+イオンサイトを、Gd3+ (0.1193 nm) 5)よりイオン半

径 の 小 さ い 希 土 類 イ オ ン で 部 分 置 換 し た(Bi0.72Tb0.28)2O3+δ、(Bi0.73Dy0.27)2O3、(Bi0.72Y0.28)2O3、

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14

いずれも目的とした立方晶のBi2O3相の単相試料であった。立方晶のBi2O3単相となった試料にお

いては、加えた希土類イオンのイオン半径が小さくなるに伴い、高角度側へのピークシフトが確 認された。以上の結果より、(Bi0.72Tb0.28)2O3+δ、(Bi0.73Dy0.27)2O3、(Bi0.72Y0.28)2O3、(Bi0.70Ho0.30)2O3、

(Bi0.72Er0.28)2O3、(Bi0.73Tm0.27)2O3-δ、(Bi0.70Yb0.30)2O3-δ及び(Bi0.71Lu0.29)2O3では、Tb4+/3+、Dy3+、Y3+、

Ho3+、Er3+、Tm3+/2+、Yb3+/2+、Lu3+イオンがBi2O3の格子内に固溶していることがわかった。

図 13、14 に合成した各試料の紫外可視反射スペクトルを示す。図 13 より、(Bi0.73La0.27)2O3、

(Bi0.74Ce0.26)2O3+δ、(Bi0.74Pr0.26)2O3+δ、(Bi0.73Nd0.27)2O3、(Bi0.72Sm0.28)2O3-δ、(Bi0.72Eu0.28)2O3-δ 及 び

(Bi0.73Gd0.27)2O3では、Bi2O3と比べてスペクトルの長波長シフトがほとんど観測されなかった。さ

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15

ンの f-f 遷移に基づく吸収が観測された。一方、(Bi0.74Ce0.26)2O3+δ及び(Bi0.73Gd0.27)2O3では、Bi2O3

に比べてスペクトルが長波長側にシフトした。前述の図11 において、この二つの試料には単斜晶

や菱面体晶に加え、立方晶の Bi2O3相に帰属されるピークも観測されたことから、この長波長シ

フ ト は 試 料 中 に 存 在 す る 立 方 晶 Bi2O3 相 に 起 因 す る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 図 14 よ り 、

(Bi0.72Tb0.28)2O3+δ、(Bi0.73Dy0.27)2O3、(Bi0.72Y0.28)2O3、(Bi0.70Ho0.30)2O3、(Bi0.72Er0.28)2O3、(Bi0.73Tm0.27)2O3-δ、

(Bi0.70Yb0.30)2O3-δ及び(Bi0.71Lu0.29)2O3では、いずれもBi2O3に比べてスペクトルが長波長側にシフト

した。さらに、(Bi0.73Dy0.27)2O3-δ、(Bi0.70Ho0.30)2O3、(Bi0.72Er0.28)2O3、(Bi0.73Tm0.27)2O3-δでは、Dy3+、

Ho3+、Er3+、Tm3+/2+イオンのf-f 遷移に基づく吸収が観測された。

4、5 に L*a*b*表色系で表した各試料の色度座標を示す。Bi2O3のBi3+イオンサイトを、Gd3+

よ り イ オ ン 半 径 の 大 き い 希 土 類 イ オ ン で 部 分 置 換 し た(Bi0.73La0.27)2O3、(Bi0.74Ce0.26)2O3+δ、

(Bi0.74Pr0.26)2O3+δ、(Bi0.73Nd0.27)2O3、(Bi0.72Sm0.28)2O3-δ、(Bi0.72Eu0.28)2O3-δ及び(Bi0.73Gd0.27)2O3 では、

Bi2O3と比べて赤色度(a*値)の増大はほとんど見られなかった(表 4)。一方、Bi2O3のBi3+イオ

ンサイトを、Gd3+よりイオン半径の小さい希土類イオンで部分置換した(Bi0.72Tb0.28)2O3+δ、

(Bi0.73Dy0.27)2O3、(Bi0.72Y0.28)2O3、(Bi0.70Ho0.30)2O3、(Bi0.72Er0.28)2O3、(Bi0.73Tm0.27)2O3-δ、(Bi0.70Yb0.30)2O3-δ

及び(Bi0.71Lu0.29)2O3 では、Bi2O3 と比べて赤色度(a*値)がプラス方向に大きくなり、中でも、

(Bi0.72Er0.28)2O3において赤色度(a*値)が最大となった(a* = +15.5)(表 5)。また、XRD パター ンにおいて、立方晶のBi2O3相が観測された試料では、全体的に赤色度(a*値)が Bi2O3より増大 することがわかった。 1.2.2 ((Bi1-xErx)2O3 (0.14 ≤ x ≤ 0.49) 最大の赤色度を示した(Bi0.72Er0.28)2O3について、Er3+添加量の最適化を行うために、Bi2O3に対す るEr3+の添加量を変化させた((Bi1-xErx)2O3 (0.14 ≤ x ≤ 0.49)を合成し、色彩を評価した。表 6 に各試 料の L*a*b*表色系における色度座標を示す。Bi2O3に対する Er3+の添加量が増大するに従い、試 料の赤色度(a*値)が大きくなり、(Bi0.72Er0.28)2O3において最大となった(a* = +15.5)。

(17)

16 1.2.3 ((Bi0.72Er0.28)1-yFey)2O3 (0 ≤ y ≤ 0.51) (Bi0.72Er0.28)2O3の赤色度(a*値)をさらに増大 させるため、第三成分として可視光領域におい て d-d 遷 移 を 示 す Fe3+ を 添 加 し た ((Bi0.72Er0.28)1-yFey)2O3 (0 ≤ y ≤ 0.51)を合成し、キ ャラクタリゼーションを行った。図15、16 に各 試 料 の XRD パ タ ー ン を 示 す 。 ((Bi0.71Er0.29)0.90Fe0.10)2O3、((Bi0.72Er0.28)0.86Fe0.14)2O3、 及び((Bi0.72Er0.28)0.80Fe0.20)2O3においては、いずれ も立方晶の Bi2O3相に帰属されるピークのみが観測され、単相であった(図 15)。しかしながら、

((Bi0.71Er0.29)0.74Fe0.26)2O3 、 ((Bi0.72Er0.28)0.69Fe0.31)2O3 、 ((Bi0.74Er0.26)0.57Fe0.43)2O3 及 び

((Bi0.72Er0.28)0.49Fe0.51)2O3においては、いずれも立方晶のBi2O3相に帰属されるピークに加え、ヘマ タイト型のFe2O3相に帰属されるピークも観測され、混相であった(図16)。 また、図17 に合成した各試料の格子定数の組成依存性を 示す。 試料の格子定数は、単相となった試料 (y ≤ 0.20) で は、Fe3+添加量y の増大に伴って減少したが、混相となった 試料 (y > 0.20) では、y の増大に伴う格子定数のさらなる減 少 が 見 ら れ な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 、 ((Bi0.71Er0.29)0.90Fe0.10)2O3 、 ((Bi0.72Er0.28)0.86Fe0.14)2O3 及 び ((Bi0.72Er0.28)0.80Fe0.20)2O3は、固溶体を形成していることがわ

(18)

17 かった。

図18 に((Bi0.70Er0.30)1-yFey)2O3の紫外可視反射スペクトルを示す。 (Bi0.72Er0.28)2O3にFe3+を添加す

ることによって、400 nm 以上の可視域における反射率が全体的に低下するものの、単相領域 (0 < y ≤ 0.20) では、波長 605 ~ 750 nm の赤色領域において比較的高い反射率を保持した。また、鉄の 固溶量の増大に伴い、赤色の補色である波長490 ~ 570 nm の緑色の光に対する反射率が徐々に減 少し、緑色領域における吸収が増加した。中でも、((Bi0.72Er0.28)0.80Fe0.20)2O3が、緑色の光を最も効 率的に吸収することがわかった。一方、混相領域 (y > 0.20) では、緑色領域における吸収は単相 試料とほぼ同じであるが、波長605 ~ 750 nm の赤色光に対する反射率が大幅に減少した。 表 7 に L*a*b*表色系における((Bi0.70Er0.30)1-yFey)2O3 の 色 度座 標 を示 す。 比 較例 とし て 、 (Bi0.72Er0.28)2O3、二種類の酸化鉄(Fe2O3)試薬(製造メーカーが異なる)、及び市販の赤色顔料で ある弁柄の色度座標も併せて示す。混相となった試料は、網掛けで表示した。(Bi0.72Er0.28)2O3 に Fe3+を加えることによって、試料の赤色度(a*値)が大きく増大することがわかる。中でも、Fe3+ の固溶量が最も大きい((Bi0.72Er0.28)0.80Fe0.20)2O3において、赤色度(a*値)が最大となり(a* = +30.9)、 市販の赤色無機顔料である弁柄の赤色度(a* = +28.9)を凌ぐことがわかった。 1.3 アモルファスオキシリン酸タングステンを母体とする新規な環境調和型青色顔料 青色の無機顔料は、インキ用や画材用に利用されることに加え、白色度と黒色度を向上させる

効果があるため、需要が高い材料である。現在、青色無機顔料としては、Co2SiO4, CoAl2O4, Co2SnO4,

Co(Al, Cr)2O4が工業的規模で広く使用されている。しかし、これらは青色発色源として、高価か

つ毒性を有するCo2+を含んでいることが問題として挙げられている。そのため、コバルト(Co)

(19)

18

名:ウルトラマリン、Na6(Al6Si6O24)·2NaSx)や紺青(フェロシアン化第二鉄、Fe(III)4[Fe(II)(CN)6]3)

等が知られているが、前者は耐酸性が低く、希酸(硝酸、硫酸、塩酸)と反応して硫化水素を発 生する。また後者は耐アルカリ性に劣り、還元されると白色になり退色することに加え、耐熱性 も低く、140 °C 以上に加熱すると分解し茶褐色に変色するという問題点がある。 そこで本委託事業では、人体や環境に対して無害である新規な青色顔料の開発を目指し、無害 なタングステン、リン及び酸素から構成される WOP2O7に着目した。WOP2O7は、結晶になると 白色を呈するが、アモルファスの時は青色を呈することが報告されている10)。本事業では、WOP2O7 アモルファスの青色度の向上を目指し、W6+サイトを、W6+(0.0600 nm5))よりイオン半径が大き く、生体に吸収されにくい上に、毒性が極めて低いことが知られている Y3+(0.0900 nm5))、La3+ (0.1032 nm5))、Eu3+(0.0947 nm5))、Gd3+(0.0938 nm5))、Lu3+(0.0861 nm5))及びAl3+(0.0535 nm5)

で部分置換した(W1-xMx)OP2O7-δ(M = Y, La, Eu, Gd, Lu, Al)を合成し、色彩を評価した。

試料の合成及び評価は以下のようにして行った。WO3、希土類酸化物あるいは Al2O3、及び (NH4)2HPO4 粉末を化学量論比で混合した後、空気流通下、650 °C で 48 時間焼成した。焼成後の 固体を粉砕し、得られた粉末を脱イオン水及び特級エタノールでそれぞれ 2 回ずつ洗浄、吸引ろ 過で回収し、目的の試料を得た。合成した各試料について粉末X 線回折(XRD)測定により結晶 構造を同定し、蛍光X 線分析により組成を分析した。また、紫外可視反射スペクトル測定により 光学特性を、色彩色差計によりL*a*b*表色系における色度座標を求め、L*(明度)、a*(正方向:赤 色、負方向:緑色)、b*(正方向:黄色、負方向:青色)をそれぞれ評価した。

1.3.1 (W1-xMx)OP2O7-δ (M = Y, La, Eu, Gd, Lu, Al ; x = 0.10, 0.20)

図 19 に (W1-xMx)OP2O7-δ (M = Y, La, Eu, Gd, Lu, x = 0.10)の XRD パターンを、図 20 に

(W1-xMx)OP2O7-δ (M = Y, La, Eu, Gd, Lu, Al ; x = 0.20)の XRD パターンをそれぞれ示す。W6+サイトを

よりイオン半径が大きいY3+、La3+、Gd3+、Eu3+及び Lu3+で部分置換した試料においては、いずれ も明確な結晶のピークが確認されず、ハローパターンのみが確認されたことからアモルファスで あることがわかった。一方、W6+サイトをよりイオン半径が小さいAl3+で部分置換した試料におい ては、ハローパターンに加え、x = 0.10 の試料で WP2O7相に帰属されるピークが、x = 0.20 の試料 で AlPO4相に帰属されるピークがそれぞれ確認された。以上のことより、WOP2O7の W6+サイト をよりイオン半径が大きいイオンで部分置換すると、結晶が生じにくくなることが示唆された。

図21 に (W1-xMx)OP2O7-δ (M = Y, La, Eu, Gd, Lu, Al ; x = 0.10)の紫外可視反射スペクトルを、図 22

に (W1-xMx)OP2O7-δ (M = Y, La, Eu, Gd, Lu, Al ; x = 0.20)の紫外可視反射スペクトルをそれぞれ示す。

x = 0.10 の試料では、WOP2O7のW6+サイトをY3+、La3+、Eu3+、Gd3+、Lu3+及びAl3+で部分置換す

ることにより、波長領域 380 ~ 470 nm における紫~青色光に対する反射率が増大し、特に

(20)

19 領域430 ~ 480 nm における青色光に対する反射率は Gd3+またはEu3+で部分置換した試料に比べ小 さかったが、反射ピークが長波長側へシフトしていることが確認された。x = 0.20 の試料では、 WOP2O7のW6+サイトをY3+、La3+、Eu3+、Gd3+、Lu3+及びAl3+で部分置換することにより、波長領 域380 ~ 470 nm における紫~青色光に対する反射率が大きく増大し、特に Y3+、La3+、Eu3+、Gd3+ 及びLu3+で部分置換した試料で顕著であった。また、550 nm より長波長領域における可視光に対 する反射率も増大し、青系統の色の補色である黄緑~赤紫色の光に対する吸収率が小さくなった。

母体の W6+サイトを Y3+、La3+、Eu3+、Gd3+、Lu3+及び Al3+で部分置換した試料の中では、

(W0.80Eu0.20)OP2O7-δにおいて、青系統の色の補色である黄緑~赤紫色の光に対する吸収率が最も大

(21)

20 表8 に(W1-xMx)OP2O7-δ (M = Y, La, Eu, Gd, Lu, Al ;

x = 0.10, 0.20)の L*a*b*表色系における色度座標を

示す。x = 0.10 の試料では、WOP2O7のW6+サイト

を Y3+、La3+、Eu3+、Gd3+、Lu3+及び Al3+で部分置

換することにより、青色度(-b*)が向上し、Gd3+

または Eu3+で部分置換した試料において最大の青

色度(b* = -21.0)を示した。x = 0.20 の試料では、

WOP2O7 の W6+サイトを、Y3+、La3+、Eu3+、Gd3+

及びLu3+で部分置換することにより青色度(-b*) が向上し、中でも(W0.80Eu0.20)OP2O7-δにおいて最大 の青色度(b* = -22.8)を示した。一方、W6+サイト をAl3+で部分置換した試料は、青色度(b* = -2.25)、 赤色度(a* = +0.16)とともに低く、灰色を呈した。 1.3.2 (W1-xEux)OP2O7-δ (x = 0.15, 0.20, 0.22, 0.24, 0.26, 0.29) 得られた試料の中で最大の青色度を示した(W0.80Eu0.20)OP2O7-δb* = -22.8)について、更なる青 色度の向上を目指し、Eu3+の添加量を調節した(W1-xEux)OP2O7-δ (x = 0.15, 0.20, 0.22, 0.25, 0.27, 0.30) の合成を行い、キャラクタリゼーションを行った。 図23 に各(W1-xEux)OP2O7-δ試料のXRD パターンを示す。いずれの試料においても明確なピーク が確認されず、ハローパターンのみが確認されたことから、アモルファスであることがわかった。 図 24 に各(W1-xEux)OP2O7-δ試料の紫外可視反射スペクトルを示す。いずれの試料においても、波

(22)

21 長領域380-470 nm における紫~青色光に対する反射率が大きく、青系統の色の補色である黄緑~ 赤紫色の光に対する反射率が小さい、すなわち、この領域の光に対する吸収率が大きかった。ま た、Eu3+の添加量 x に依存して、青系統の色の補色である黄緑~赤紫色光に対する吸収率が変化 し、x = 0.22, 0.24 の試料において特に大きかった。しかしながら、x = 0.22 の試料においては、波 長領域380 ~ 470 nm における紫~青 色光に対する反射率が、他の試料に 比べて著しく小さかった。 表 9 に(W1-xEux)OP2O7-δx = 0.15, 0.20, 0.22, 0.24, 0.26, 0.29)の L*a*b* 表色系における色度座標を示す。青 色度(-b*)は Eu3+添加量x に依存し、 x = 0.24 の試料において b* = -25.2 と なり、最大の青色度(-b*)を示した。 これは市販の紺青の青色度(b* = -15.6)を凌ぐ値であった。 2. 結晶構造の精密解析と発色機構の解明

これまでに当研究室で得られたCeO2-ZrO2-Bi2O3系複合酸化物黄色顔料は、有田焼の上絵具の一

つである、有鉛の「中黄」に近い色合いを無鉛で再現できることが明らかになっている 11)。この

顔料は、高温でも非常に安定な酸化物である CeO2-ZrO2複合酸化物の格子内にビスマスを固溶さ

せた立方晶蛍石型構造を基盤とする複合酸化物であり、O2p軌道とBi6s軌道との混成軌道からなる

価電子帯からCe4f軌道からなる伝導帯へのバンド間遷移に基づき発色すると考えられている。し

かしながら、各イオン間の結合距離など、精密な結晶構造については明らかにされていない。そ

こで、CeO2-ZrO2-Bi2O3系複合酸化物黄色顔料のなかで最も黄色度の高い Ce0.43Zr0.37Bi0.20O1.90試料

について粉末X 線回折測定を行い、その結果をリートベルト法により精密解析することによって、

結晶構造及び各構成元素の配位環境を明らかにすることを目指した。

Ce0.43Zr0.37Bi0.20O1.90複合酸化物はクエン酸錯体法により合成した。1 mol dm-3のCe(NO3)3、1 mol

dm-3のZrO(NO3)2、0.5 mol dm-3のBi(NO3)3を化学量論比で混合後、1 mol dm-3のクエン酸溶液を

加えて80°C で 5 時間加熱し、溶媒を減圧留去した。得られた粉末を大気中 1000°C で 1 時間焼成

して試料とした。粉末X 線回折データは、Cu-Kα 線を用い、2θ レンジで 10~150°のデータを 0.01°

刻みで収集し、RIETAN-FP プログラム12)を用いてリートベルト解析を行った。

図25 に Ce0.43Zr0.37Bi0.20O1.90の粉末X 線回折図を示す。点で表されているのが実測プロファイル

(23)

22 測強度から計算強度を差し引いた差プロフ ァイルである。解析の信頼度因子は、Rwp = 9.19%、Rp=6.30%、S = 1.30(これらの値は 小さければ小さいほどよい)であり、信頼 できる解析結果が得られている。結晶系は 立方晶、空間群 Fm-3m、格子定数は a = 0.532208 (esd 0.013289) nm、格子体積は V = 0.1507455 (esd 0.0065197) nm3であった。こ の解析結果から、Ce0.43Zr0.37Bi0.20O1.90顔料は 立方晶蛍石型構造の単相であり、不純物相 は生成していないことが明らかとなった。 すなわち、固溶体の生成が強い黄色を呈色 する必須条件であることがわかった。 3. 実用化のための試験用試料の作製と提供 昨年度に開発した Ce0.44Zr0.36Bi0.20O1.90黄色顔料を関連企業に提供し、材料としての評価を行っ た。その結果、以下のような指摘を受けた。 ① セラミックス用黄色顔料としての評価 Ce0.44Zr0.36Bi0.20O1.90を白磁及びボーンチャイナに応用した ・ プラセオジム黄よりも発色が強いが、Cd 黄には及ばない ・ 本顔料はフラックスと反応してしまうため、フラックスと反応しない顔料が必要 ② プラスチック用黄色顔料としての評価 Ce0.44Zr0.36Bi0.20O1.90をニッケルチタンイエロー(Ti-Sb-Ni-O, Ti-Sb-Cr-O)と比較した ・ 隠蔽力、着色力、色合い、ともに不十分 ・ 凝集により、微細粒子中に粗大粒子が混在している 今後は上記課題を解決すべく、合成法の改良や焼成温度の最適化、分散剤の添加等の解決策を 講じる。 また、本委託事業にて開発された優環境型の新規な黄、赤、青顔料に関し、それぞれに対する 生体安全性の評価を行った。これによって、開発顔料による環境リスクを低減するだけでなく、 厳格化する化学物質規制によって、開発顔料が使用できなくなる企業経営上のリスクを低減し、 さらに、諸外国に先駆けて安全性評価を行うことによって、我が国産業界の国際競争力強化に貢 献することを目指している。 具体的には、粉塵、水、または食物を介して、吸入または経口的に開発顔料が人体に取込まれ 図25 Ce0.43Zr0.37Bi0.20O1.90の粉末X線回折図(点は実測 値、実線は計算値をそれぞれ表す)

(24)

23 る可能性が考えられることから、本再委託研究では、図26 に示すように、ICR 系雄性マウスを用 い、開発顔料そのものを飼料中に混入させ、経口投与による毒性評価を行った。 図26 生体安全性の評価実験の様子(マウスへの経口投与) 平成23 年度は、Ce0.44Zr0.36Bi0.20O1.90黄色顔料、及びBi0.90Ca0.08Zn0.02VO3.950黄色顔料について、 経口投与実験を行った。AIN93 の組成に 2 種類の化合物を、0.02%または 0.2%含有する精製飼料 を作成し、これを28 日間自由摂取させた。7 日、または 28 日間摂食させた翌日に、1 群につき 5 匹ずつを、吸入麻酔下で下大静脈から採血し、頚椎脱臼後、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、心臓、肺、 胸腺、顎下腺、精嚢、精巣、精巣上体、脳、大腿部筋肉および骨、を採取した。摂食期間中、マ ウスの外観に変化は認められず、対照群に比較しての体重増加の抑制も認められなかった(図27)。 図27 化合物含有餌摂食期間中のマウスの体重変化 4. 学会参加等における技術動向調査 本研究開発事業に関連した最新の技術動向を把握するため国内外の学会等へ参加し、調査した。

(25)

24 4.1 第 28 回希土類討論会 開催日 2011 年 5 月 13 日(木)~14 日(金) 開催場所 タワーホール船堀(東京) 用務概要 第28 回希土類討論会に参加し、バナジン酸塩を母体とする新しい環境調和型黄色顔 料に関する研究成果発表を行った。また、聴講者からの質問を通じ、顔料の着色機 構や着色種に関し、参考となる情報を得た。

4.2 18th International Conference on Solid State Ionics

開催日 2011 年 7 月 3 日(日)~8 日(金)

開催場所 Warsaw Marriott Hotel(ポーランド)

用務概要 18th International Conference on Solid State Ionics に参加し、新規固体電解質材料に関

する情報を得ることにより、顔料設計に関し、固体結晶からの指針を得ることがで きた。

4.3 The 9th International Meeting of Pacific Rim Ceramic Societies (PacRim 9)

開催日 2011 年 7 月 10 日(日)~14 日(木)

開催場所 Cairns Convention Centre(オーストラリア)

用務概要 The 9th International Meeting of Pacific Rim Ceramic Societies に参加、優環境型のバナ

ジン酸ビスマスを母体とした新規黄色顔料に関する講演を行った。また、様々なセ ラミックスのセッションにも参加し、結晶構造と色との関係について考察すること ができた。 4.4 日本セラミックス協会第 45 回基礎科学部会セミナー 開催日 2011 年 8 月 4 日(木)~5 日(金) 開催場所 鹿児島大学稲盛会館(鹿児島) 用務概要 日本セラミックス協会第45 回基礎科学部会セミナーに参加し、熱電材料の主材料で ある酸化物の熱電材料に関する講演を聞き、構成元素と酸化物材料の着色に関する 知見を得た。また、燃料電池に関する講演も聴く機会に恵まれ、構成材のうち、正 極材料となる酸化物導電材料の有色性と導電性、電極特性に関する情報も得ること ができた。

4.5 Composites at Lake Louise 2011

(26)

25

開催場所 Fairmont Chateau Lake Louise(カナダ)

用務概要 Composites at Lake Louise 2011 に参加し、鉛イオンとスズイオンを陽イオンとして用

いたペロブスカイト型の新種の複合酸化物の講演を聞き、新たな結晶構造からの機 能性発現の指針を得た。さらに、酸化チタンなどの半導体酸化物に金を担持した材 料のガスの酸化特性、ならびに有機酸化反応への適用に関する講演も聞き、電子伝 導、吸着と結晶構造に関する知見も得ることができた。また、無機顔料の母体構成 材料の一つである酸化セリウムを薄膜にした場合の特性変化に関する講演も聞き、 今後の材料設計の方向性もつかむことができた。 4.6 2011 年度色材研究発表会 開催日 2011 年 11 月 15 日(火)~16 日(水) 開催場所 タワーホール船堀(東京) 用務概要 2011 年度色材研究発表会に参加し、環境調和型の新規黄色顔料に関する研究発表を 行うとともに、顔料や色材に関する情報収集を行った。その結果、顔料を合成する 出発物質や合成時の焼成温度に関し、参考となる知見が得られた。 4.7 第 37 回固体イオニクス討論会 開催日 2011 年 12 月 7 日(水)~9 日(金) 開催場所 白兎会館(鳥取) 用務概要 第37 回固体イオニクス討論会に参加し、結晶構造と着色の関係、構成元素と着色の 関係、及び電気伝導性と着色の関係に関し、最新の情報を得た。 4.8 セラミックス基礎科学討論会第 50 回記念大会 開催日 2012 年 1 月 12 日(火)~13 日(水) 開催場所 国際ファッションセンター(東京) 用務概要 セラミックス基礎科学討論会第50 回記念大会に参加し、酸化ビスマスを母体とする 優環境型の赤色無機顔料に関する研究成果発表を行った。質疑応答を通じて、顔料 を構成する構成イオンの酸化数、顔料の結晶構造と着色力の相関に関して情報交換 を行った。また、他の研究者の発表を聴講することにより、隠蔽力を増大させる方 法として、多孔質化や中空化に関する合成法について参考となる情報を得ることが できた。 4.9 日本化学会第 92 春季年会 開催日 2012 年 3 月 25 日(日)~28 日(水)

(27)

26 開催場所 慶應義塾大学日吉・矢上キャンパス(横浜) 用務概要 セラミックス基礎科学討論会第50 回記念大会に参加し、バナジン酸ビスマスを母体 とする新規な優環境型の黄色無機顔料に関する研究成果発表を行った。 5. 開発推進委員会の開催 外部有識者によって構成される開発推進委員会を設置して進捗状況及び成果について評価を受 け、適切な助言と指導を受けた。本委員会は、平成23 年度は 2 回(9 月、2 月)開催した。 5.1 第 3 回開発推進委員会 開催日時 2011 年 9 月 27 日(火) 14:00~16:10 開催場所 大阪大学 吹田キャンパス 銀杏会館 会議室C 【開発推進委員会委員】 伊藤征司郎(近畿大学 教授) 指宿堯嗣(社団法人産業環境管理協会 常務理事) 八尋秀典(愛媛大学 教授) 宮脇律郎(独立行政法人 国立科学博物館 研究主幹) 【陪席員】 太田 聡(経済産業省 化学物質管理課 課長補佐) 半澤大介(経済産業省 化学物質管理課 技術係長) 議題 1. 開会挨拶(今中) 2. 研究進捗状況報告 その一 『バナジン酸ビスマスを母体とする環境調和型の黄色無機顔料』 その二 『酸化ビスマスを母体とする環境調和型の赤色無機顔料』 その三 アドバイザーとの連携状況について サンプル評価状況、生体安全性の評価 3. 講評 4. 第4 回開発推進委員会の日程調整 5. 経済産業省挨拶(太田課長補佐) 5.2 第 4 回開発推進委員会 開催日時 2012 年 2 月 15 日(水)14:00~16:30 開催場所 大阪大学 吹田キャンパス 銀杏会館 会議室C 参加者 【プロジェクトメンバー】 今中信人、増井敏行、田村真治 【開発推進委員会委員】 伊藤征司郎(近畿大学 教授)

(28)

27 染宮昭義(神鋼リサーチ㈱ 主席研究員) 指宿堯嗣(社団法人産業環境管理協会 常務理事) 八尋秀典(愛媛大学 教授) 宮脇律郎(独立行政法人 国立科学博物館 研究主幹) 【陪席員】 太田 聡(経済産業省 化学物質管理課 課長補佐) 半澤大介(経済産業省 化学物質管理課 技術係長) 議題 1. 開会挨拶(今中) 2. 研究進捗状況報告 その一 『バナジン酸ビスマスを母体とする環境調和型の黄色無機顔料』 その二 『酸化ビスマスを母体とする環境調和型の赤色無機顔料』 その三 『アモルファスオキシリン酸タングステンを母体とする環境調和型の 青色無機顔料』 その四 『開発黄色顔料の生体安全性の評価』 3. 講評 4. 第5 回開発推進委員会の日程調整 5. 経済産業省挨拶(太田課長補佐) (引用文献)

1) T. Masui, S. Furukawa, N. Imanaka, Chem. Lett., 35, 1032 (2006). 2) S. Furukawa, T. Masui, N. Imanaka, J. Alloys Compd., 451, 640 (2008). 3) N. Imanaka, T. Masui, S. Furukawa, Chem. Lett., 37, 104 (2008). 4) A. Kudo, K. Omori, H. Kato, J. Am. Chem. Soc., 121, 11459 (1999). 5) R.D. Shannon, Acta Cryst., A32, 751 (1976).

6) Wendusu, K. Ikawa, T. Masui, and N. Imanaka, Chem. Lett., 40, 792 (2011). 7) B. Bradley, M. Singleton, A. Li Wan Po, J. Clin. Pharm. Ther., 14, 423 (1989). 8) K. A. Winship, Adv. Drug. React. Ac. Pois. Rev., 2, 103 (1983).

9) H. Iwahara, T. Esaka, T. Sato, and T. Takahashi, J. Solid State Chem., 39, 173 (1981).

10) Z. S. Teweldemedhin, K. V. Ramanujachary, and M. Greenblatt, Mater. Res. Bull., 28, 429 (1993). 11) T. Masui, A. Shiraishi, S. Furukawa, Wendusu, N. Nunotani, and N. Imanaka, J. Jpn. Soc. Colour

Mater., 85, 9 (2012).

(29)

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結 び(総括及び結論)

平成23 年度の研究成果として、以下の知見が得られた。 ① 環境調和型の黄色顔料のひとつとして知られているバナジン酸ビスマス(BiVO4)の黄色度を向 上させるために、BiVO4のBi3+サイトを、Bi3+(0.131 nm)よりもイオン半径が小さい Ca2+(0.112 nm)及び Zn2+(0.090 nm)で部分置換し、格子を収縮させた試料を合成した。その結果、試料の 黄色度(b*値)が向上し、合成した試料の中で、Bi0.90Ca0.08Zn0.02VO3.950が最大の黄色度(b*値 = +91.6)を示した。この値は有害顔料である黄鉛の黄色度(b*値 = +96.5)には及ばないものの、 環境調和型顔料でb*値が+90 を越える黄色顔料を世界で初めて実現した。 ② 高い赤色度を示す新規な無機顔料の開発を目指し、Bi2O3の Bi3+イオンサイトを希土類イオン で部分置換し、高温相である立方晶の Bi2O3相を常温において安定化させた試料を合成した。合 成した試料の中で最大の赤色度を示した(Bi0.72Er0.28)2O3について、その赤色度(a*値)のさらなる 増 大 を 目 指 し 、 さ ら に Fe3+を 添 加 し た 試 料 を 合 成 し 、 色 彩 の 評 価 を 行 っ た 結 果 、

((Bi0.72Er0.28)0.80Fe0.20)2O3において、赤色度(a*値)が最大となり(a* = +30.9)、市販の弁柄(a* = +28.9)

を凌ぐ赤色度を実現した。 ③ 新規な環境調和型の青色顔料の開発を目指し、無害なタングステン、リン及び酸素から構成さ れる WOP2O7のW6+サイトの一部を、生体に吸収されにくい上に、毒性が極めて低いことが知ら れている希土類元素及びアルミニウムで部分置換した試料を合成し、色彩を評価した。その結果、 (W0.76Eu0.24)OP2O7-δにおいて最大の青色度(b* = -25.2)が得られ、市販の紺青の青色度(b* = -15.6) を凌ぐ青色度を実現した。

④ CeO2-ZrO2-Bi2O3系複合酸化物黄色顔料のなかで、最も黄色度の高いCe0.43Zr0.37Bi0.20O1.90試料に

ついて粉末 X 線回折測定を行い、その結果をリートベルト法により精密解析した結果、 Ce0.43Zr0.37Bi0.20O1.90顔料は立方晶蛍石型構造の単相であり、固溶体の生成が強い黄色を呈する必須 条件であることが明らかとなった。 ⑤ 本事業で開発したCe0.44Zr0.36Bi0.20O1.90顔料をアドバイザー企業に提供し、材料としての評価を 行った結果、着色力やフラックスとの反応性、及び凝集による粗大粒子の混在など、課題が指摘 された。今後は合成法の改良や焼成温度の最適化、分散剤の添加等の解決策を講じる必要がある ことがわかった。また、生体安全性の評価として、本事業で開発した Ce0.44Zr0.36Bi0.20O1.90黄色顔 料、及びBi0.90Ca0.08Zn0.02VO3.950黄色顔料について、マウスへの経口投与実験を行った。

(30)

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研究成果の発表状況

1. 誌上発表

<論文(査読あり)>

1) Novel Lead-free CeO2–ZrO2–Bi2O3 Yellow Pigments for Arita Ware, T. Masui, A. Shiraishi, S.

Furukawa, Wendusu, N. Nunotani, and N. Imanaka, J. Jpn. Soc. Colour Mater., 2012, 85, 9-13.

2) Novel Environment-friendly Yellow Pigments Based on (Bi,La)VO4, Wendusu, K. Ikawa, T. Masui,

and N. Imanaka, Chem. Lett, 2011, 40, 792-794. <その他誌上発表(査読なし)>

1) 優環境型酸化物顔料の現状, 増井敏行, 温 都蘇, 今中信人, 色材, 2011, 84, 439-443.

2. 招待講演

1) Environmentally Friendly Yellow Pigments Based on Bismuth Vanadate, Nobuhito Imanaka, The 9th International Meeting of Pacific Rim Ceramic Societies (PacRim 9), Cairns Convention Centre, Australia, July 13, 2011. 3. 依頼講演 1) 人体・環境に優しい新しい無機顔料の開発、増井敏行、色材講演会、大阪、2011 年 10 月 12 日。 4. 口頭発表(学会等) 1) バナジン酸塩を母体とする新しい環境調和型黄色顔料、温 都蘇・井川健一・増井敏行・今 中信人、第28 回希土類討論会、東京、2011 年 5 月 13 日。 2) バナジン酸ビスマスを母体とする環境調和型の新規な黄色無機顔料の開発、温 都蘇・本田 泰平・増井敏行・今中信人、2011 年度色材研究発表会、東京、2011 年 11 月 15 日。 3) 酸化ビスマスを母体とする優環境型の赤色無機顔料、温 都蘇・増井敏行・今中信人、セラ ミックス基礎科学討論会第50 回記念大会、東京、2012 年 1 月 12 日。 4) バナジン酸ビスマスを母体とする新規な優環境型の黄色無機顔料、温 都蘇・本田泰平・増 井敏行・今中信人、日本化学会第92 春季年会、横浜、2012 年 3 月 26 日。 5. 出願特許 特に記載すべき事項はない 6. マスコミ等への公表・報道等

(31)

30 特に記載すべき事項はない

7. 受賞実績等

図 5 に、Zn 2+ 量を 2 mol%に固定し、Ca 2+ 量を変化させた各 Bi 1−x−y Ca x Zn y VO 4-(x+y)/2 (0 ≤ x ≤ 0.10, 0
図 7 に、Ca 2+ 量を約 9 mol%に固定し、Zn 2+ 量を変化させた各 Bi 1−x−y Ca x Zn y VO 4-(x+y)/2 (0 ≤ x ≤ 0.10,  0 ≤ y ≤ 0.05)試料の XRD パターンを示す。いずれの試料においても単斜晶の BiVO 4 相に帰属され るピークのみが観測され、単相が得られた。図 8 に XRD パターンより算出した各試料の格子体積 の組成依存性を示す。 Zn 2+ 添加量の増加に伴い、 Bi 0.91−y Ca 0.09 Zn y VO 3.95
図 25 に Ce 0.43 Zr 0.37 Bi 0.20 O 1.90 の粉末 X 線回折図を示す。点で表されているのが実測プロファイル で、実線で表されているのが計算値である。また、プロファイルの下部に示されているのは、実

参照

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