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Microsoft Word - 九大物理集中講義テキスト'13.doc

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(1)

液体の統計力学と密度汎関数理論

豊橋技術科学大学

情報知能工学系

墨 智成

[email protected]

2013 年 1 月 21 日(月) 1 月 23 日(水)

(2)

1. 本講義での密度汎関数理論の位置付け 密度汎関数理論(DFT)は,一般性・汎用性の高い不均一系の多体理論である.不均一 系とは,密度分布が一様でない系をさし,例えば,均一な液体に外場がかかった系や, 気–液界面,液–液界面なども典型的な不均一系である.外場と言われても,ピンと来 ないかもしれないが,例えば,電極表面付近の溶液,狭い空間に閉じ込められた液体, 大きな溶質分子周りの溶媒などは,外場の下での不均一系と考えられる. DFT の一般論としてどこかで耳にした事があると思うが,任意の外場に一対一対 応した平衡状態(基底状態)の密度分布の汎関数として,系に固有な自由エネルギーが 存在する.これをホーヘンベルグ・コーン(Hohenberg–Kohn)定理という.この定理が 意味する所は,具体的な自由エネルギー密度汎関数が与えられれば,変分法に基づい て外場の下での真の密度分布が原理的に得られるという事である.従って,DFT を使 った不均一系の研究は,大きな可能性を秘めている.しかしながら,自由エネルギー 汎関数の具体的な形は一般に知られておらず,結局の所,何らかの多体論的手法(ま たは統計力学的手法)に基づく近似的汎関数を導入する必要がある.すなわち,DFT は非常に有力な手法ではあるが,単なる形式的な枠組みを与えるだけで,具体的な自 由エネルギー汎関数を与える理論的枠組みを持たない. 学位取得後の1999 年頃から,DFT の可能性(参照系を上手く選びさえすれば,古 典系,量子系を問わず様々な系を統一的に扱う事が出来る点)に魅力を感じ,様々な 系への適用を目指して DFT に関する研究を開始した.問題点が良くわからないまま 一年が過ぎ,結局,自由エネルギー汎関数を如何にして決定するかと言う DFT の根 本的な問題に直面した.電子系の交換相関汎関数の開発などを見ていても,最後はパ ラメターで合わせ込むといった手段が取られている現状を見て,まずは自由エネルギ ー汎関数を決定する方法を構築する以外に前には進めないと感じた. そこでヒントに成ったのが,1964 年に J. P. Percus が導入した関係式[1,2]である. この段階で長々と説明してもピンと来ないと思うので,要点だけを説明するが,DFT の理論的枠組みとPercus の関係式を上手く組み合せることにより,自由エネルギー汎 関数の決定において利用可能な等方均一液体の対分布関数に対する積分方程式を構 築する道筋が,単純液体に対して示されていた.この方法は,クラスター展開による グラフの足し合わせによって導かれたHyper-netted chain (HNC)近似[2,3]と等価な積分 方程式を与えるという優れた特徴を持つ.この様な背景から,Percus の関係式の様々 な系への一般化に着目し,DFT に基づく積分方程式の開発を進めるに至った. 本講義では,DFT を外場の下での一体の密度分布を求める多体論的手法と位置付

(3)

け,様々な液体・溶液系に適用可能な積分方程式の開発手法の一つを紹介する. 以上で説明したDFT の適用法について,簡単にまとめると,以下の様になる. 1. DFT + Percus の関係式 → 等方均一系の対分布関数に関する積分方程式 → 任意の外場の下での自由エネルギー汎関数の決定 2. 得られた自由エネルギー汎関数による DFT の,任意の外場の下での不均一系 への適用 2. DFT に基づく液体論の定式化の概要 冒頭からいきなり結論を言うようであるが,本講義で説明する DFT に基づく液体論 の定式化において,全てに含まれる共通の手順を以下に示す. 1. グランドポテンシャルの外場に関する汎関数微分と,一体および二体分布関 数との関係を,統計力学を用いて調べる. 2. グランドポテンシャルのルジャンドル変換から,DFT の基礎方程式であるオ イラー・ラグランジュ方程式を導く. 3. 等方均一系の対相関関数と一体の密度分布関数との間で厳密に成り立つ関 係式(Percus の関係式)が存在するかどうかを調べ,その具体的な式を導く. この他に重要な手続きとして,任意の外場の下での一体の密度分布を計算するために 必要な 参照系の導入 が挙げられる.参照系が系の記述に適切であるかどうかは, 自由エネルギー汎関数の精度に強く影響を及ぼす.もう一つの重要な点としては,オ イラー・ラグランジュ方程式の中で現れる自由エネルギー汎関数に対する近似法が挙 げられる. 手続き1 では,手続き 2 の準備のために,大分配関数によって与えられる一体およ び二体分布関数と,グランドポテンシャルの外場に関する汎関数微分との関係を調べ る. 手続き2 によって最終的に得られるオイラー・ラグランジュ方程式は,量子系,古 典系を問わず,系に依存しない普遍的な形式を持つ.また,多成分混合系および非等 方的な分子間(粒子間)相互作用を持つ系,ならびに内部自由度を持つ系に関しても, 基本的に同一の形式を持つ.この点がまさに,一般性・汎用性の高い不均一系の多体 理論である由縁である. 手続き3 では,再び統計力学に戻って,系の大分配関数から,等方均一系の分子

(4)

間(粒子間)対相関関数と,ある外場の下での一体の密度分布関数との間に存在する一 般化されたPercus の関係式を導出する.繰り返しに成るが,この関係式が存在する場 合には,不均一系に対する一体の密度分布を与える DFT の枠組みを,等方均一系の 対相関関数に対する積分方程式の導出に利用可能と成る. 以下では,古典的単純球状液体を例に,上述の手順に従って,DFT に基づく液体 論の基礎を丁寧に解説する. 3. 古典的単純球状液体の DFT 3.1. 古典的単純球状液体の分布関数 同種 ! N 粒子系のハミルトニアンは, ! H r

(

N,pN

)

= 1 2m pi 2 i N

"

+ v r

(

i# rj

)

i< j N

"

+ U r

( )

i i N

"

, (3.1) ここで ! mは粒子の質量, ! v r

( )

は粒子間相互作用, ! U r

( )

は粒子にかかる外場とする.こ の系の大分配関数は次の様に与えられる: ! " U

[ ]

= z N N! N #0

$

dri i N

%

& ' ( ) * +

,

exp -.U r

(

( )

i

)

i N

%

& ' ( ) * + i<iexp -.v r

(

(

i- rj

)

)

N

%

& ' ( ) * + . (3.2) ここで, ! "= 1 kBTであり, ! T は温度, ! kBはボルツマン定数である.また, ! z はフガシ ティー ! z = "#3exp $µ

( )

(3.3) であり, ! µ は化学ポテンシャル, ! "は式(3.1)の運動量 ! pに関するガウス積分から得ら れるド・ブロイ波長 ! " = 2#$!2 m

(

)

1 2 (3.4) である.ここで ! ! = h 2" , ! hはプランク定数である.系のグランドポテンシャルは式 (3.2)の大分配関数を用いて, ! " U

[ ]

= #1 $log% U

[ ]

, (3.5) と与えられる.ここまでで準備が整ったので,これ以降はグランドポテンシャルの外 場に関する汎関数微分と一体および二体の密度分布関数との関係を調べる.外場に関 する一回の汎関数微分から,一体の密度分布関数が得られる.

(5)

! "# U

[ ]

"

[

U r

( )

]

T ,V = 1 % U

[ ]

"% U

[ ]

"

[

$&

(

U r

( )

)

]

T ,V = 1 % U

[ ]

zN N! N '0

(

dri i N

)

* + , - . / "U r

( )

k "U r

( )

k N

(

* + , - . /

0

exp $

(

&U r

( )

i

)

i N

)

* + , - .

/ i<iexp $

(

&v r

(

i$ rj

)

)

N

)

* + , - . / = 1 % U

[ ]

zN N! N '0

(

dri i N

)

* + , - . / k "

(

r $ rk

)

N

(

* + , - . /

0

exp $

(

&U r

( )

i

)

i N

)

* + , - .

/ i<iexp $

(

&v r

(

i$ rj

)

)

N

)

* + , - . / = "

(

r $ rk

)

k N

(

U ! " n r U

( )

. (3.6) ここでは,Dirac のデルタ関数の性質から, ! "U r

( )

k "U r

( )

=" r # r

(

k

)

と書き換えた.また, ! f U は外場 ! U の下での物理量 ! f の統計平均を表す.ここでもう一度,外場で ! n r U

( )

を汎関 数微分すると, ! "n r U

( )

" #$U %

[

( )

r

]

T ,V = " r # r

(

k

)

k N

&

" %

(

r # rl

)

l N

&

U # n r U

( )

n %

(

r U

)

(3.7) となる.これは密度–密度相関関数(密度揺らぎ)である. 外場が存在しない等方均一系の場合,式(3.6)は ! n r U = 0

(

)

= 1 " 0

[ ]

zN N! N #0

$

dri i N

%

& ' ( ) * + k , r - r

(

k

)

N

$

& ' ( ) * +

.

exp -/v r

(

(

i- rj

)

)

i<i N

%

& ' ( ) * + ! " n0 (3.8) となり, ! n r U = 0

(

)

は空間で一様な定数となる.すなわち,これは等方均一液体の数密 度 ! n0に対応する.同様に外場が存在しない場合,式(3.7)は ! "n r U

( )

"

[

#$U %

( )

r

]

T ,V ,U = 0 = "

(

r # rk

)

k N

&

"

(

r # r% k

)

U = 0 + "

(

r # rk

)

"

(

r # r% l

)

l'k N

&

k N

&

U = 0 # n r U = 0

(

)

n %

(

r U = 0

)

! " n0# r $ %

(

r

)

+ n

( )

0 2g r $ %

(

r

)

$ n

( )

0 2 ! " n0# r $ %

(

r

)

+ n

( )

0 2h r $ %

(

r

)

(3.9) となる.ここで,右辺第一項には,式(3.8)を用いた.右辺第二項は,液体構造を表現

(6)

す る 動 径 分 布 関 数 と ! n0

( )

2g r " #

(

r

)

の 関 係 で 結 ば れ て い る . 式(3.9) の 右 辺第 一 項 ! " r # $

(

r

)

は自己相関関数,第二項 ! h r " #

(

r

)

は対相関関数または Ornstein-Zernike(OZ)方 程式(式(3.32))の観点から,全相関関数と呼ばれている.対相関関数は動径分布関数と ! h r

( )

= g r

( )

"1の関係にある. 分子間相互作用が存在しない理想気体の一体の密度分布は, ! nid r Uid

(

)

= 1 "id Uid

[ ]

zN N! i dri N

#

$ % & ' ( ) k * r + r

(

k

)

N

,

$ % & ' ( )

-N .0

,

exp +/Uid r i

( )

(

)

i N

#

$ % & ' ( ) ! = n0exp "#Uid r

( )

(

)

(3.10) と得られる.ここで, ! nid r Uid = 0

(

)

= 1 "id

[ ]

0 zN N! i dri N

#

$ % & ' ( ) k * r + r

(

k

)

N

,

$ % & ' ( )

-N .0

,

! = z " n0 (3.11) を使った.また,理想気体の密度応答関数は, ! "nid r Uid

(

)

" #$U

[

id

( )

r %

]

T ,V ,Uid= 0 = n0" r # %

(

r

)

(3.12) となり,自己応答のみである.以上で,古典的単純球状液体の DFT において必要な 一体及び二体の分布関数の準備は整ったので,これらの汎関数微分の結果を用いて, DFT の基本的方程式であるオイラー・ラグランジュ方程式の導出へ進む. コメント) 式(3.8)や(3.11)の n0の大分配関数による表式が重要であるであるように思 う. 3.2. 一成分系単純球状液体の DFT 統計力学の結果である式(3.6)から,グランドポテンシャル ! " U

[ ]

は, ! U r

( )

"µ を変数と する熱力学関数と見なす事が出来る. ! " U

[ ]

のルジャンドル変換から, ! n r U

( )

を変数と するいわゆる密度汎関数 ! F n

[ ]

を生成する. F n

[ ]

" # U

[ ]

$

%

dr1 &# U

[ ]

& U r

[

( )

1

]

T ,V U r

( )

1

[

]

= " U

[ ]

#

$

dr1n r

(

1U

)

[

U r

( )

1 #µ

]

(3.13)

(7)

ここで,式(3.6)を使った. ! T, V 一定の下での ! F n

[ ]

の変分は, ! "F n

[ ]

="# U

[ ]

$

%

dr1"n r

(

1U

)

[

U r

( )

1

]

$

%

dr1 "# U

[ ]

" U r

[

( )

1

]

T ,V " U r

[

( )

1

]

! = " dr

$

1#n r

(

1U

)

[

U r

( )

1 "µ

]

(3.14) と得られる.上式では,式(3.6)および ! T, V 一定の下での ! " U

[ ]

の変分 ! "# U

[ ]

=

$

dr1 "# U

[ ]

" U r

[

( )

1 %µ

]

T ,V " U r

[

( )

1

]

(3.15) を使った.式(3.14)から最終的に,次式を得る. ! "F n

[ ]

"n r U

( )

T ,V =µ # U r

( )

(3.16) これがDFT によって与えられる基礎方程式,オイラー・ラグランジュ方程式であり, この式を満たす ! F n

[ ]

が,系に固有な自由エネルギー密度汎関数である. ! F n

[ ]

が式(3.16) を満たすとき,式(3.13)の密度に関する汎関数微分から, ! "F n

[ ]

"n r U

( )

T ,V = "# U

[ ]

"n r U

( )

T ,V $

%

dr1"n r

(

1U

)

"n r U

( )

T ,V

[

U r

( )

1 $µ

]

! = "# U

[ ]

"n r U

( )

T ,V +µ $ U r

( )

(3.17) となり,グランドポテンシャルの変分原理として知られている,停留点の条件 ! "# U

[ ]

"n r U

( )

T ,V = 0 (3.18) を満たしている事が確認出来る. 次の段階として,式(3.16)を使って,任意の外場 ! U r

( )

の下での密度分布関数 ! n r U

( )

に関する積分方程式を導出する.一般に液体の DFT では参照系を導入する.DFT の 参照系としては,系の特徴を十分反映し,かつ実用的な計算コストで算出可能な解析 的式が分かっている事が必要条件として求められる.もう一つの条件として,参照系 は低密度極限において実在系に一致する事が望まれる.一般に,この二つの条件を満 たす参照系の最も有力な候補として,粒子間相互作用がない系が挙げられる.従って,

(8)

古典的単純球状液体の参照系としては,古典的理想気体が第一の候補として考えられ る.以降では,粒子間相互作用が存在しない系を参照系として設定して定式化を進め る. 参照系のオイラー・ラグランジュ方程式は同様に,次式によって与えられる. ! "Fref

[ ]

nref "nref

(

r Uref

)

T ,Vref # Uref

( )

r (3.19) ! Uref

( )

r は参照系に対する外場であり,上付き ref は参照系を意味する.また,参照系 の密度応答関数は,自己相関関数 ! " r # $

(

r

)

との間に次の関係を持つ. ! "nref r Uref

(

)

" #$U

[

ref

( )

r %

]

T ,V ,Uref= 0 = n0& ref r # % r

(

)

(3.20) これは式(3.12)の一般化に対応する.ここで,参照系の密度分布 ! nref

(

r Uref

)

が実在系の 密度分布 ! n r U

( )

と等しくなる,すなわち, ! nref

(

r Uref

)

= n r U

( )

(3.21) の条件を満たす様に,参照系の外場を定義すると, ! Uref

( )

r は式(3.16)および(3.19)を用 いて,次の様に与えられる. ! Uref r

( )

= U r

( )

+ "F n

[ ]

"n r U

( )

T ,V #"F ref n

[ ]

"n r U

( )

T ,V #

(

µ # µref

)

(3.22) ここで,表示の簡略化のため,過剰自由エネルギー汎関数 ! Fex

[ ]

n および過剰化学ポテ ンシャル ! µexを導入する. ! Fex

[ ]

n " F n

[ ]

# Fref

[ ]

n (3.23) ! µex =µ " µref (3.24) これらを用いて,式(3.22)を書き直すと, ! Uref r

( )

= U r

( )

+"F ex n

[ ]

"n r U

( )

ex (3.25) となる.ここで,汎関数微分における ! T, V 一定という表示を省略した.式(3.25)右辺 第二項の過剰固有化学ポテンシャルは密度汎関数なので,数密度 ! n0周りでの密度汎関 数テーラー展開の一次で近似すると,次式が得られる.

(9)

! Uref

( )

r " U r

( )

+#F ex n

[ ]

#n r U

( )

n= n0 +

$

dr1 #F ex n

[ ]

#n r U

( )

#n r

(

1U

)

n= n0 n r

(

1U

)

% n0

[

]

ex ! = U r

( )

+

"

dr1 #F ex n

[ ]

#n r U

( )

#n r

(

1U

)

n= n0 n r

(

1U

)

$ n0

[

]

, (3.26) ここで,式(3.25)において, ! U r

( )

= Uref

( )

r = 0によって得られる, ! "Fex

[ ]

n "n r U

( )

n= n0 =µex (3.27) を用いた.一般に,式(3.26)の展開を高次まで考慮する事により,高い精度の近似を 得る事が出来るが,三体以上の多体の展開係数を何らかの方法で決定しなければ閉じ た方程式には成らない.一般に,三体の展開係数の決定ですらそれほど容易ではない (しかしながら,全く方法が存在しない訳でもない).ここでは,まず,二体の展開係 数について調べてみる.式(3.25)両辺の密度に関する汎関数微分から, ! C r " #

(

r

)

$ "% &F ex n

[ ]

&n r U

( )

&n #

(

r U

)

n= n0 =& "%U ref r

( )

[

]

&nref r U# ref

(

)

nref= n0 "& "%U r

[

( )

]

&n #

(

r U

)

n= n0 (3.28) が得られる.右辺第一項は,式(3.20)から,自己相関関数 ! "ref

(

r # $ r

)

の逆数として得ら れる.右辺第二項は,密度応答関数 ! "n r U

( )

" #$U %

[

( )

r

]

U = 0 = n0& r # %

(

r

)

+ n

( )

0 2h r # %

(

r

)

(3.29) の逆数と関係づける事が出来る.これは式(3.9)の一般化に対応する.式(3.20),(3.28), (3.29)および次の鎖則 ! dr1

"

# $%U r#n r U

( )

1

( )

[

]

U = 0 # $%U r

[

( )

1

]

#n &

(

r U

)

n= n0 =# r $ &

(

r

)

(3.30) を用いて,次式の一般化されたOrnstein-Zernike(OZ)方程式を得る. ! h r " #

(

r

)

=

(

$ref

(

r " # r

)

"$ r " #

(

r

)

)

n0 +$ref * C *$ r " #

(

r

)

+$ref* C * n0h r " # r

(

)

(3.31) ここで ! "は畳み込み積分 ! F r

( )

" f # g r

( )

=

$

dr1f r

( )

1 # g r

(

1% r

)

を表し,関数 ! F r

( )

のフーリ エ変換は ! f r

( )

および ! g r

( )

のフーリエ変換 ! ˆ f k

( )

および ! ˆ g k

( )

の単純な積 ! ˆ F k

( )

= ˆ f k

( )

g kˆ

( )

として表現出来る.畳み込み積分は高速フーリエ変換を使って効率的に計算可能な特

(10)

殊な多重積分であり,これ以外の多重積分を含む場合は爆発的に計算コストが増大す る. 一般に粒子間相互作用のある系の ! " r

( )

と相互作用の無い参照系の ! "ref

( )

r は異な るので,式(3.31)はやや複雑な方程式に成っている.量子液体や高分子液体の様に, 内部自由度を持つ系では,式(3.31)の一般化された OZ 方程式と同様な形式を持つ OZ 方程式を解くことになる.時間があれば,多成分混合系の一例である電子と核から構 成される液体金属を扱うための量子–古典混合系の DFT において,一般化された OZ 方程式が導入される事を示す.一方,古典的単純球状液体の場合, ! " r

( )

="ref

( )

r =# r

( )

であるので,式(3.31)は簡単になり,一般に良く知られた OZ 方程式が得られる [2]. ! h r " #

(

r

)

= C r " #

(

r

)

+ C * n0h r " #

(

r

)

(3.32) 式(3.31)右辺第一項は低密度極限で発散しそうであるが,粒子間相互作用が存在する 系の自己相関関数は低密度極限において,相互作用の存在しない参照系に一致するの で,その問題は通常考えない. ! " r

( )

#"ref

( )

r ! n0 " 0

(

)

(3.33) 以上から,DFT における自由エネルギー汎関数の密度汎関数テーラー展開の二次の展 開係数 ! C r

( )

は,OZ 方程式における直接相関関数に対応する事が分かる. 式(3.32)を逐次代入すれば分かる様に,対相関関数 ! h r

( )

は,直接相関および間接 相関(畳み込み積分によって繋がれた ! C r

( )

による無限級数)によって構成されている. ! h r

( )

= C r

( )

←直接相関 ! +C * n0C r

( )

←密度の一次の間接相関 ! +C * n0C * n0C r

( )

←密度の二次の間接相関 ! ! この式から, ! C r

( )

が直接相関関数と呼ばれる理由が想像出来ると思う.また,3.1 で 定義した液体構造を表す対相関関数 ! h r

( )

は,直接相関および全ての間接相関の和であ る事から,全相関関数とも呼ばれる.OZ 方程式は ! h r

( )

と ! C r

( )

の関係を与える方程式 であり, ! C r

( )

の定義式と見なす事ができる.また,OZ 方程式には二つの未知関数 ! h r

( )

と ! C r

( )

が存在するため,これを実際に解くには,何らかのクロージャー(閉包)関係式 が必要となる.そして,OZ 方程式とクロージャー関係式を組み合せて,自己無撞着 に解くことにより, ! C r

( )

の無限級数によって表現される間接相関を近似的に考慮する ことが出来る. ここで, ! C r

( )

の物理的描像を得るために,低密度極限を考えてみる.低密度極限 では,OZ 方程式はh r

( )

= C r

( )

となる.一方,h r

( )

はメイヤーの f関数に一致するので, h r

( )

= exp "#v r

(

( )

)

"1である.長距離では一般に相互作用ポテンシャルはv r

( )

" 0とな

(11)

る の で , 長 距 離 の 漸 近 的 振 舞 い だ け に 着 目 す れ ば , テ ー ラ ー 展 開 か ら ! C r

( )

= h r

( )

" #$v r

( )

となる事が分かる.従って,低密度極限における ! C r

( )

の漸近型は, 相互作用ポテンシャルと一致する事が分かる. まとめの意味で, ! C r " #

(

r

)

を用いて式(3.26)を書き直せば, ! Uref

( )

r = U r

( )

" 1 #

$

dr1C r " r

(

1

)

[

n r

(

1U

)

" n0

]

(3.34) となる.古典的単純球状液体の場合,参照系として理想気体を採用すると,式(3.10) および(3.21)を用いて,任意の外場 ! U r

( )

の下での密度分布関数は, ! n r U

( )

= n0exp "#Uref r

( )

(

)

(3.35) から計算される.式(3.34)は低密度極限において厳密な一体分布関数 ! n r U

( )

= n0exp "#U r

(

( )

)

(3.36) を与える.式(3.34)の右辺第二項は,他の粒子による多体効果を表現しており,過剰 化学ポテンシャル汎関数に関する密度汎関数テーラー展開の一次(過剰自由エネルギ ー汎関数 ! F n

[ ]

で言えば二次)まで正しい展開となっている.これらの事から,粒子間 相互作用が存在しない系を参照系に選び,かつ自由エネルギー汎関数の密度展開に基 づく近似を採用する場合,低密度領域では,ほぼ厳密な結果を与え,密度が高くなる につれ,徐々に近似精度が劣化する傾向が予想される.また,等方均一系のバルクの 数密度周りでの密度汎関数テーラー展開を行っている事から,バルクの数密度からの ズレが小さい場合は比較的精度の良い結果を与えるが,不均一性が強くなるに伴い, 近似精度の劣化が予想される. 等方均一系の ! C r " #

(

r

)

が与えられれば,式(3.34)および(3.35)から構成される密度 分布関数 ! n r U

( )

に関する積分方程式を使って, ! n r U

( )

を自己無撞着に解く事が出来る. この積分方程式が,不均一系の問題に対して,どの程度有効なのかを確かめるには, 実際に適用してみる以外,調べる方法はない.しかしながら,その前に,等方均一系 の ! C r " #

(

r

)

を,何らかの方法で求めておく必要がある.もちろん,古典的単純球状液 体 の 場 合 は , ク ラ ス タ ー 展 開 に 基 づ く グ ラ フ の 解 析 か ら 導 か れ る Hyper-netted chain(HNC)近似や Percus-Yevick(PY)近似(クロージャー関係式)による OZ 積分方程式 [2,3]を解くことにより, ! C r " #

(

r

)

を求める事が出来るので,これらの液体論を使えば この問題は解決する.しかしながら,我々が対象とする複雑な系では,必ずしもクロ ージャー関係式が与えられているとは限らない.その場合,対象とする系の ! C r " #

(

r

)

を自力で用意しなければならない.この問題に対して,上述の DFT に基づく外場の 下での密度分布の積分方程式を上手く応用する方法を以下で説明する.

(12)

3.3. 等方均一系の対相関関数と外場の下での密度分布:Percus の関係式 1960 年前後の液体論の研究では,クラスター展開に基づくグラフの数学的な解析に主 流があり,導かれた方程式に対する物理的描像を得るのが困難な状況にあった.Percus も 1958 年に有名な Percus-Yevick(PY)方程式[2,3]を発表したわけだが,彼はそのよう な状況を少しでも改善しようという思いで(Percus 談),等方均一系の対相関関数と“あ る外場”の下での不均一系の密度分布関数との間に成立する厳密な関係式をエレガン トに示した(Percus’ idea と呼ばれている)[1].ここで言う 外場 とは,系のある粒子 を空間中のある点に固定した時にその粒子がその他の粒子に対して作るポテンシャ ルに対応し,すなわち,粒子間相互作用に相当する.従って,固定された粒子周りの 一体の密度分布関数と,外場が存在しない等方均一系での,動き回る二粒子間の対相 関関数が事実上等価である事を意味する.言われてみれば,確かにそんな気にも成る が,統計力学的には,一方は外場の下でのアンサンブルであり,もう一方は外場が存 在しない等方均一系のアンサンブルであるので,それほど自明ではない. このPercus の関係式の存在により,等方均一系の対相関関数を問題とする積分方 程式理論と,不均一系の一体の密度分布関数を扱う DFT との間に,密接な関係が生 まれた.動き回る二粒子間の相関の問題を,一方の粒子を固定して,それが作る外場 の下での一体問題に帰着出来れば,物理的描像も捉えやすく,理論の構築にも多いに 貢献する事が予想される.実際に,上述の式(3.34)と(3.35)による DFT に基づく密度分 布の積分方程式とPercus の関係式の組み合せによって与えられる方程式は,グラフの 解析によって導かれた HNC 積分方程式と等価である事が良く知られている.古典的 単純球状液体に対する HNC 方程式は,近似精度の信頼性やクーロン系への適用など から,液体論の分野で確固たる地位を築いている.グラフの解析が困難なより複雑な 系に対する液体論の構築において,DFT の大いなる可能性を予感する事が出来る. Percus は,ハミルトニアンが二体加法ポテンシャルによって与えられる古典的単 純球状液体に対して,Percus の関係式を導出した.一方,その他の系,例えば,量子 系や,古典系でも非球状分子の場合,もしくは,分子が構造の内部自由度を持つ場合 などに対して,Percus の関係式と同等な厳密な関係が存在するのかどうかを確かめる 事は,DFT をこれらの系へ適用する際,避けては通れない.古典的単純球状液体以外 の系に対するPercus の関係式の導出は,系の大分配関数を書き下し,単純液体の場合 に習って計算を進めれば,特に問題なく出来るはずである.以下ではまず,古典的単 純球状液体に対するPercus の関係式の導出を説明する. 式(3.9)を参考にして,異なる粒子間の密度–密度分布関数は,次式の様に書き下

(13)

す事が出来る. ! n0

( )

2

(

h r " #

(

r

)

+ 1

)

= $

(

r " rk

)

$

(

r " r# l

)

l%k N

&

k N

&

U = 0 = 1 ' 0

[ ]

zN N! i dri N

(

) * + , - . l%k$

(

r " rk

)

$

(

r " r# l

)

N

&

k N

&

) * + , - .

/

N 00

&

exp "

(

1v r

(

i" rj

)

)

i< j N

(

) * 2 + 2 , - 2 . 2 = z ' 0

[ ]

zN "1 N "1

(

)

! i dri N "1

(

) * + , - . k $

(

r " rk

)

N "1

&

) * + , - .

/

N 00

&

exp "

(

1v r

(

i" # r

)

)

i N "1

(

) * + , - . i< jexp "

(

1v r

(

i" rj

)

)

N "1

(

) * 2 + 2 , - 2 . 2 (3.37) ここで,空間中の点 ! " r に固定された粒子がある点 r に作る外場, ! UPR r " r

( )

# v r $ "

(

r

)

(3.38) を導入すると,式(3.37)は次式の様に書き換えられる. ! n0

( )

2

(

h r " #

(

r

)

+ 1

)

= z $ 0

[ ]

zN "1 N "1

(

)

! i dri N "1

%

& ' ( ) * + k , r " r

(

k

)

N "1

-& ' ( ) * +

.

N /0

-0 exp "1U

(

PR

(

rir #

)

)

i N "1

%

& ' ( ) * + i< jexp "1v r

(

(

i" rj

)

)

N "1

%

& ' 2 ( 2 ) * 2 + 2 ! = z " 0

[ ]

" U PR

[

]

#

(

r $ rk

)

k N $1

%

UPR (3.39) 式(3.38)の上付き PR は Percus’ relation を意味する.ところで,式(3.8)から, ! n0 = 1 " 0

[ ]

zN N! i dri N

#

$ % & ' ( ) k * r + r

(

k

)

N

,

$ % & ' ( )

-N .0

,

exp +/v r

(

(

i+ rj

)

)

i< j N

#

$ % 0 & 0 ' ( 0 ) 0 = z " 0

[ ]

zN +1 N +1

(

)

! i dri N +1

#

$ % & ' ( ) i exp +/v r + r

(

(

i

)

)

N +1

#

$ % & ' ( )

-N .0

,

exp +/v r

(

(

i+ rj

)

)

i< j N +1

#

$ % 0 & 0 ' ( 0 ) 0 = z " 0

[ ]

zN +1 N +1

(

)

! i dri N +1

#

$ % & ' ( ) exp +/U PR r ir

( )

(

)

i N +1

#

$ % & ' ( )

-N .0

,

exp +/v r

(

(

i+ rj

)

)

i< j N +1

#

$ % 0 & 0 ' ( 0 ) 0 ! = z " 0

[ ]

" U PR

[

]

(3.40) であるので,式(3.39)は最終的に, ! h r " #

(

r

)

= n r U

(

PR

)

n0 "1 (3.41) となる.従って,等方均一系の対相関関数 ! h r " #

(

r

)

は,式(3.38)によって与えられる外 場 ! UPR r " r

( )

# v r $ "

(

r

)

,すなわち,空間中の点 ! " r に固定された粒子が ! rに存在する粒子

(14)

に対して作るポテンシャルの下での一体の密度分布関数 ! n r U

(

PE

)

と関係付けられてい る事がわかる.これをPercus の関係式と呼ぶ. まとめの意味で,式(3.41)を用いて,式(3.34),(3.35)を書き直すと, ! "Uref

( )

r ="v r

( )

# C $ n0h r

( )

="v r

( )

# h r

( )

+ C r

( )

(3.42) ! h r

( )

= exp "#Uref r

( )

(

)

" 1 (3.43) となり,HNC 近似[2,3]に対応する事が分かる.古典的単純球状液体では,DFT にお ける密度展開+Percus の関係式は,偶然にも液体論の分野で提案された HNC 積分方程 式を与えたが,この DFT に基づく方法は,Percus の関係式に相当する厳密な関係式 が分かっていれば,どのような系に対しても原理的には適用可能であるので,クロー ジャー関係式が存在しない複雑な系に対して,バルクの相関関数を決定し,それを用 いて,DFT 本来の使い方である,不均一系の研究に応用することが出来る.

3.4. Weighted-density approximation (WDA)

3.2 では,どのような系にも適用可能な式(3.25)によって定義される過剰自由エネルギ ー汎関数の数密度周りでの密度汎関数テーラー展開による近似法を紹介したが,液体 のDFT のコミュニティーでは,古くから Weighted-density approximation (WDA)が主流 で あ っ た . 過 剰 自 由 エ ネ ル ギ ー 汎 関 数 に 対 す る 局 所 密 度 近 似(Local density approximation, LDA)では, ! Fex

[ ]

n を ! Fex n

[ ]

=

"

dr1n r

(

1U

)

f0

(

n r

(

1U

)

)

(3.44) のように近似する.ここで ! f0

( )

n は一粒子当たりの過剰ヘルムホルツ自由エネルギー ! Aex N である.一方,Tarazona によって最初に提案された WDA では,粗視化された 密度 ! n r

( )

=

"

dr1w r # r

(

1

)

n r

(

1U

)

(3.45) を導入し,式(3.44)を ! Fex n

[ ]

=

"

dr1n r

(

1U

)

f0

(

n r

( )

1

)

(3.46) として近似する方法である[4].式(3.45)の ! w r

( )

は,weight function と呼ばれている. WDA では ! n r

( )

および ! w r

( )

を何に関する汎関数と見なすかで, ! w r

( )

の決め方が異なり, 様々なバージョンが存在する[4]. 粗視化密度を weight function を使って式(3.45)の形としてトップダウン的に導入 するのではなく,もう少し一般的なやり方でWDA を定式化することを考える[5].そ のヒントになるのが,effective density approximation (EDA)という考え方である[6].

(15)

EDA にも様々なやり方が考えられるが,ここでは,WDA と同様な標準的な汎関数の 形式を用いて, ! Fex n

[ ]

=

"

dr1n r

(

1U

)

f0 n eff r n

( )

(

)

(3.47) を厳密に満たす様な有効密度 ! neff r n

( )

を定義する. ! Fex n

[ ]

は密度の汎関数であるので, ! neff r n

( )

も密度汎関数と見なす事が出来る. ! neff r n

( )

は,原理的には,無限に続く密度 汎関数テーラー展開によって再現可能である. ! neff r n

( )

= n0+

"

dr1 #neff r n

( )

#n r

(

1U

)

n0 n r

(

1U

)

$ n 0

[

]

+1 2!

"

dr1dr2 #2neff r n

( )

#n r

(

1U

)

#n r

(

2U

)

n0 n r

(

1U

)

$ n 0

[

]

n r

(

2U

)

$ n 0

[

]

+! (3.48) 式(3.47)の密度に関する汎関数微分から過剰固有化学ポテンシャルが得られる. ! "Fex

[ ]

n "n r U

( )

= f0 n eff r n

( )

(

)

+

#

dr1n r

(

1U

)

f0$ n eff r1n

( )

(

)

"n eff r1n

( )

"n r U

( )

(3.49) ここで, ! f0" n

( )

は ! f0

( )

n の一階微分である.一方,過剰固有化学ポテンシャルの密度に 関する汎関数微分は,式(3.28)にあるように,直接相関関数と関係付けられるので, 式(3.49)の両辺を密度で汎関数微分すると, ! "C r " #

(

r

)

= 2$f0# n 0

( )

%n eff r n

( )

%n #

(

r U

)

n0 +n0$f0## n 0

( )

&

dr1%n eff r 1n

( )

%n r U

( )

n0 %neff

( )

r1n %n #

(

r U

)

n0 +n0$f0# n

( )

0

&

dr1 % 2 neff

( )

r1n %n r U

( )

%n #

(

r U

)

n0 (3.50) が得られる.ここで, ! f0"" n

( )

は ! f0

( )

n の二階微分である.式(3.48)の展開において,よ り高次の項まで考慮すれば,式(3.47)により,正確な ! Fex

[ ]

n を得る事が出来るのだが, そこで現れる未知の展開係数を決める事が出来なくなるため,実際には有限次数で展 開 を 打 ち 切 る こ と に な る . 仮 に 密 度 の 二 次 で 展 開 を 打 ち 切 る と す る と , 二 体 ! "neff

( )

r1n "n r U

( )

n0および三体 ! "2neff r 1n

( )

"n r U

( )

"n #

(

r U

)

n0の未知関数を何らかの形で 決定しなければならず,もう一つ別の方程式が必要と成る.一方,一次で展開を打ち

(16)

切る場合を考えてみると,式(3.49)での ! "neff

( )

r1n "n r U

( )

は不均一系の密度分布 ! n r U

( )

の 汎 関 数 で あ る が , こ れ が 均 一 系 の 数 密 度 周 り の 汎 関 数 微 分 ! "neff

( )

r1n "n r U

( )

n0へ帰着し,式(3.50)右辺の ! "2neff r 1n

( )

"n r U

( )

"n #

(

r U

)

n0に関する最終 項は存在しなくなる.結果として,式(3.48), (3.49), および(3.50)は次式の様になる: ! "Fex

[ ]

n "n r U

( )

= f0 n eff r n

( )

(

)

+

#

dr1W r $ r

(

1

)

n r

(

1U

)

f0% n eff r1n

( )

(

)

, (3.51) ! neff r n

( )

= n0+

"

dr1W r # r

(

1

)

n r

(

1U

)

# n 0

[

]

, (3.52) ! "C r " #

(

r

)

= 2$f0# n

( )

0 W r " #

(

r

)

+ n0$f0## n

( )

0

%

dr1W r " r

(

1

)

W r

(

1" # r

)

. (3.53) 等方均一系,すなわち ! U r

( )

= 0 かつ ! n r U = 0

(

)

= n0の場合,式(3.25)および(3.51)から, ! µex は次式の様になる: ! µex = f0 n0

( )

+ n0f0" n0

( )

#

dr1W r $ r

(

1

)

. (3.54) 式(3.51)–(3.54)は, !

W r

( )

の規格化および式(3.54)を除き,Patra と Ghosh による WDA[7] と同一の形式である.ここで示した導出では,weight function の考え方は使っておら ず, ! W r

( )

はむしろ有効密度 ! neff r n

( )

の密度展開によって自然に導入される.式(3.48) における密度展開の一次での打ち切りは,この導出で用いた唯一の近似であるが,そ の結果は次の様にまとめられる. 1. 式(3.49)に現れる二点関数 ! "neff

( )

r1n "n r U

( )

を二点間の距離にのみ依存する 等方関数 ! W r

( )

によって置き換える. 2. 式(3.50)において,三点関数 ! "2neff

( )

r1n "n r U

( )

"n #

(

r U

)

n0を無視する. ! W r

( )

を決定するための方法の一つとして,Percus の関係式と式(3.51)–(3.54)を組 み合せて,等方均一系の相関関数とOZ 方程式を使って自己無撞着に決定する方法が 考えられる.そうして得られた ! W r

( )

を用いて任意の外場の下での密度分布を計算す る.EDA 方程式によって得られる剛体球系のバルクの状態方程式や相関関数は HNC 近似やPY 近似よりも大幅に改善された.また,外場の下での不均一系の密度分布に 関しても,式(3.34)すなわち HNC 近似よりは,いくらか改善されたようであるが,本 質的な改善であるかどうか,はっきりした事は分からない.数値計算の結果について は,Ref. 5 を見ていただきたい. 有効密度の定義は,式(3.47)によって導入したが,様々な WDA が存在する様に, EDA に関しても幾つか導入の仕方が考えられる.例えば,式(3.24)を出発点にすると, ! W r

( )

を決定する方程式はどのように与えられるのか,興味がある人は,計算の練習 として導出してみるとよい. 3.5. 一成分系単純球状液体のグランドポテンシャルの近似式 一成分系古典的単純球状液体の DFT のまとめとして,グランドポテンシャルの近似 式を導いておく.式(3.13)および(3.23)から,

(17)

! " U

[ ]

= Fid

[ ]

n + Fex

[ ]

n +

#

dr1n r

(

1U

)

[

U r

( )

1 $µ

]

(3.55) ここで, ! Fid

[ ]

n は理想気体の固有自由エネルギー汎関数であるとする.まずはじめに, ! Fid

[ ]

n の表式を求める.式(3.3), (3.10), および(3.11)から, ! Uid

( )

rid" 1 #ln $ 3 nid

(

r Uid

)

(

)

(3.56) が 得 ら れ る . 外 場 が 存 在 し な い 場 合 , 式(3.56)は理想気体の化学ポテンシャル ! "µid = ln #3n0と一致する.式(3.19)から,理想気体の場合,式(3.56)を用いて, ! "Fid

[ ]

nid "nid r Uid

(

)

T ,V = 1 #ln $ 3nid r Uid

(

)

(

)

(3.57) が得られる.従って, !Fid nid !" #$= dr1 !Fid nid !" #$ !nid r1U id

(

)

%

T ,V !nid r1U id

(

)

= 1 !

%

dr1ln & 3 nid r1U id

(

)

! " #$!n id r1U id

(

)

= 1 !

!

dr1 n id r1Uid

(

)

(

)

"ln #3 nid r1Uid

(

)

(

)

!nid r1Uid

(

)

= 1 !

!

dr1n id r1U id

(

)

ln #3 nid r1U id

(

)

(

)

$1 !

!

dr1!n id r1U id

(

)

= dr

!

1n id r1U id

(

)

#$µid"Uid

( )

r1 %&" 1 !

!

dr1!n id r1U id

(

)

(3.58) となり,両辺の変分をはずせば,Ref.2 の P188 の Fid nid !" #$が,最終的に得られる.最 後の移行では,式(3.56)を用いた.一方, ! Fex n

[ ]

は,二次の密度汎関数テーラー展開か ら, ! Fex n

[ ]

= Fex n0

[ ]

ex

"

dr1 n r

(

1U

)

# n 0

[

]

# 1 2$

"

dr1dr2C r

(

1# r2

)

n r

(

1U

)

# n 0

[

]

n r

(

2U

)

# n 0

[

]

(3.59) と得られる.ここで,展開係数に式(3.27),(3.28)を使って書き直した.この近似は, 式(3.26)または(3.34)と等価な近似である事が,式(3.25)と両辺の密度汎関数微分から確 認できる.式(3.34),(3.55),(3.58),(3.59)を使ってまとめると,最終的に, ! U

[ ]

= ! 0

[ ]

" 1 !

#

dr1 n r

(

1U

)

" n 0 $ % &'+n 0 !

#

dr1dr2C r

(

1" r2

)

n r

(

2U

)

" n 0 $ % &' + 1 2!

#

dr1dr2C r

(

1" r2

)

n r

(

1U

)

" n 0 $ % &' n r

(

2U

)

" n 0 $ % &' (3.60) が得られる.ここで, ! 0

[ ]

= Fex n0 "# $%&!1 N & µex N (3.61) を用いた.また, ! U r

( )

= v r

( )

とすると,式(3.41)の Percus の関係式および式(3.32)の

(18)

OZ 方程式などを用いると,HNC 近似によるバルクの過剰化学ポテンシャルが導かれ る[8]. ! µex = " U = v

[

]

# " 0

[ ]

= #n 0 $

%

dr1C r

( )

1 + n0 2$

%

dr1h r

( )

1

[

h r

( )

1 # C r

( )

1

]

(3.62) EDA による ! " U

[ ]

も同様にして求められるので,興味がある人は,計算の練習として, 導出してみると良い. 4. 構造の内部自由度を持たない分子性液体の DFT 4.1. 分子性液体のモデルと分子分布関数 分子性液体の液体論は,大きく分けて二つの定式化が存在する.これらは,採用 する分子モデルに依存する.一つは分子配置を分子の重心座標 ! Riと配向 ! "iの組み ! Xi" R

(

i,#i

)

を用いて表現する剛体分子に対する定式化であり,この場合,分子間相互 作用および分子への外場は通常 ! Xi" R

(

i,#i

)

を変数として持つ ! v X

(

i,Xj

)

および ! U X

( )

i と して表現される.それに対応して,分子分布関数も ! Xi" R

(

i,#i

)

を変数として持つこと になる.このような分子性液体の定式化は,前章で説明した単純球状液体の定式化に 配向変数 ! " を追加した形式を持つので,非球状分子を含めた一般化に相当する.式 (3.32)に対応した配向変数 ! " を含む分子 Ornstein–Zernike(MOZ)方程式(変数を ! Xへ置き 換えたOZ 方程式)と式(3.42)に対応した変数 ! Xを持つ HNC 方程式よる MOZ/HNC 理論 が,分子性液体の代表的な積分方程式理論として知られている[2]. 一方,多原子分子間の分子間相互作用を,原子間相互作用の和として表現する相 互作用点モデルでは,分子間対相関関数を距離と配向の関数として扱う代わりに,サ イト間の距離のみに依存するサイト間対相関関数を用いて表現する相互作用点表示 による定式化が提案されている[2].この相互作用点表示に基づく定式化は,形式的に は多成分単純球状液体をベースとした多原子分子への拡張と考える事も出来る.この 発想に基づく分子性液体の液体論の代表として,RISM 理論が挙げられる[2].二分子 間の相対的な配置情報から,サイト間対相関関数へと縮約するのが,統計力学に基づ く通常の手続きであるが,RISM 理論の最大の特徴は,その手続きを経由する事なく, 適当な単純液体様クロージャー関係式を流用して,サイト間対相関関数を直接導く点 にある.しかしながら,その妥当性を統計力学から示す事は,現状では出来ていない. 以下では,上記の二つの定式化による分子性液体のDFT について考えてみる.1 章でも述べたが,ホーヘンベルグ・コーン(Hohenberg–Kohn)定理によれば,任意の外

(19)

場に対応した平衡状態の密度分布の汎関数として,系に固有な自由エネルギー汎関数 が存在する.これがDFT における最も重要な定理であり,未開拓な系に DFT を適用 する場合,自由エネルギーが如何なる関数の汎関数として表現出来るのかを,この定 理までさかのぼって,良く考えなければならない. 分子配置を ! Xi" R

(

i,#i

)

を用いて表現する剛体分子に対する定式化の場合,大分配 関数は式(3.2)の一般化として,次式の様に与えられる: ! " U

[ ]

= z N N! i dXi N

#

$ % & ' ( )

*

N +0

,

exp -.U X

(

( )

i

)

i N

#

$ % & ' ( ) i<iexp -.v X

(

(

i,Xj

)

)

N

#

$ % & ' ( ) . (4.1) この様な分子配置 ! Xを用いた分子モデルの場合, 任意 の外場は ! Xを変数として持 つ ! U X

( )

によって 一意的 に指定され,これに対応した密度分布は,グランドポテ ンシャルの ! U X

( )

に関する汎関数微分 ! "# U

[ ]

" U X

[

( )

]

T ,V = n XU

(

)

(4.2) によって与えられる.この結果から,任意の外場 ! U X

( )

に対応した密度分布は, ! Xを変 数とする密度分布関数 ! n XU

(

)

である事が分かる.従って,この系に固有な自由エネル ギーは ! n XU

(

)

の汎関数として存在する.では仮に,分子配向には依存しない重心座標 ! Rのみを変数と持つ 特定 の外場 ! U R

( )

を導入して,同じ事を行ったらどうなるだろ うか? ! U R

( )

に一対一対応した密度分布は ! Rを変数として持つ ! n RU

(

)

となり, ! U R

( )

の下での系に固有な自由エネルギーは ! n RU

(

)

の汎関数として存在する.しかしながら, 自由エネルギーを ! n RU

(

)

の汎関数として扱う事が出来るのは,例えば剛体球溶質を分 子性液体へ挿入した場合などのように,分子配向に影響を与えない外場 ! U R

( )

が加え られた場合に限られ,厳密には,一般的な非球状溶質分子が作る外場 ! U X

( )

に対する 自由エネルギーは,重心座標 ! Rのみを変数に持つ ! n RU

(

)

の汎関数ではない.具体的に 言えば,水中に溶質一分子を浸した分子シミュレーションを行い,水分子の重心座標 を三次元空間に射影した溶質分子周りの三次元密度分布 ! n RU

(

)

を正確に計算したと しても,系の自由エネルギーは重心の密度分布 ! n RU

(

)

の汎関数として存在しない.従 って,本来 ! n XU

(

)

の汎関数である自由エネルギーを, ! n RU

(

)

を使って表現する 近似 が含まれる事になる.同様に溶質–溶媒間相互作用によって定義されるエネルギー軸 へ射影したエネルギー表示の密度分布関数 ! n " U

( )

(Appendix 参照)を導入したとして も,同じ様な粗視化による近似を導入した事になるであろう.また,電子系の DFT の場合でも,これと同様な状況が考えられる.外部電場と外部磁場が存在する場合は, 単なる電子密度ではなく,スピン密度を用いてエネルギー密度汎関数を記述しなけれ ばならない.このように,様々な系に DFT を適用する場合,上記の点を踏まえた上

(20)

で,自由エネルギー汎関数の妥当な取り扱いを考える必要がある. 一方, ! P 個の原子から構成される多原子分子系の大分配関数は,相互作用点モデ ルによって次式の様に与えられる[9]: ! " U

[

{ }

#

]

= 1 N! dri a a P

$

i N

$

% & ' ( ) * + ,1 za a=1 P

$

i N

$

% & ' ( ) *

-N .0

/

exp ,0Ua ri a

( )

(

)

a=1 P

$

i N

$

% & ' ( ) * 1 sab

(

ria, rib

)

a<b P

$

i N

$

% & ' ( ) * exp ,0vab ri a , rjb

(

)

(

)

a,b P

$

i<i N

$

% & ' ( ) * (4.3) ここで, ! " は多原子分子の対称数, ! zaはサイト ! aに対するフガシティー ! za = "a #3exp $µ a

(

)

であり, ! "aおよび ! µaはそれぞれ,サイト ! aに関する化学ポテンシャルおよびド・ブロ イ波長である. ! Ua

( )

r は多原子分子のサイト ! aにかかる外場, ! vab ria " rj b

(

)

は分子 ! i のサ イト ! aと分子 ! jのサイト ! bの間の分子間相互作用である.また, ! sab ria " ri b

(

)

は分子 ! i の サイト ! aとサイト ! bの間の結合を表すための分子内分布関数であり,例えば,分子内 のサイト間結合が長さ ! Labの剛体結合の場合, ! sab

( )

r =" r # L

(

ab

)

4$Lab 2 (4.4) となる.ここで, ! " r

( )

はDirac のデルタ関数であり, ! sab

( )

r は規格化されている.これ 以降では,分子内構造の変形も考慮するために, ! sab

( )

r を任意の関数として話を進め ていく. 相互作用点モデルの場合,分子にかかる 任意 の外場は,各サイトにかかる外 場の和,すなわち外場の組み ! U"

( )

r

{

}

によって表現する事が出来,これに対応した密 度分布は,グランドポテンシャルの外場に関する汎関数微分 ! "# U

[

{ }$

]

" U

[

%

( )

r &µ%

]

T ,V = n%

(

r U{ }$

)

(4.5) によって与えられるサイト密度分布の組み ! n"

(

r U

{ }

"

)

{

}

となる.従って,この系に固 有な自由エネルギーは,サイト密度分布の組み ! n"

(

r U

{ }

"

)

{

}

の汎関数と見なす事が出 来る. 分子配置 ! Xに基づく分子モデルの場合,外場と密度分布の関係は単純球状液体の 非球状分子性液体への素直な拡張と見なす事が出来る.一方,相互作用点モデルの場 合は,むしろ多成分単純球状液体からの多原子分子液体への拡張の様に見える.何れ のモデルでも,上記の任意の外場に対応する密度の解析から,ホーヘンベルグ・コー

参照

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