在宅での栄養指導
-自立支援に向けた栄養管理-2018年6月20日(水) 13:45~15:15 安佐医師会館 広島県栄養士会 医療法人社団 湧泉会ひまわり歯科 管理栄養士・健康咀嚼指導士 朝日綾子●フレイルとは
フレイルは、適切な介入・支援により
生活機能の維持向上
が可能です。
自立度の変化パターン
全国高齢者20年の追跡調査(N=5715) 全国から無作為抽出約6000名 1987年から3年ごとに加齢に伴う生活の 変化を調査私たちはどのように弱っていくのか
フレイルサイクル
低栄養とは・・・
栄養素の摂取が生体の必要量より少ないとき
に起こる体の状態。健康的に生きるために必要
な量の栄養素が摂れていない状態を指す。
PEM:たんぱく質・エネルギー欠乏(症)
たんぱく質とエネルギーが充分に摂れていない
状態のこと。寝たきり高齢者に多い。
こんな方は要チェック! ●体重が極端に少ない(BMI<18.5) ●体重が減ってきた。 ●アルブミン値などの数値が少ない。東京都健康長寿医療センター研究所HPより
低栄養状態は認知機能低下リスクが高い
地域在住の高齢者調査:群馬県と新潟県に住む 70歳以上の約1,150名の方を対象として今から 約10年前に開始。その後4年間の追跡調査。 調査内容は、栄養状態をみるために血液を調べた 他、認知症と強く関連する認知機能3)や、生活 習慣全般とした。追跡調査を完了したのは682名 であり、追跡調査時点で認知機能が低下(全般的 認知機能の評価尺度MMSEが3点以上低下)して いた人の要因を分析。 鉄分 脂質 たんぱく質●低栄養予防
介護が必要となった主な原因
高齢者に必要な栄養①
・エネルギー(70歳以上) 主として、70~75歳ならびに自由な生活を営んでいる 対象者に基づく報告から算定した • 目標とするBMIの範囲 参照身長cm 参照体重kg 身体活動レ ベルⅠ 身体活動レ ベルⅡ 身体活動レ ベルⅢ 男性 160.8 60.0 1,850 2,200 2,500 女性 148.0 49.5 1,500 1,750 2,000 日本人の食事摂取基準2015年版 年齢(歳) 目標とするBMI(kg/㎡) 18~49 18.5~24.9 50~69 20.0~24.9 70以上 21.5~24.9参照体 重 kg たんぱく質摂 取量 (推奨量)g 男性 60.0 60~72 女性 49.5 50~60
高齢者に必要な栄養②
• たんぱく質 1.0~1.2g/標準体重kg/日 ○高齢者はたんぱく質同化抵抗性がある (成人以上に血中濃度を上げる必要あり) ○少なくとも毎食良質なたんぱく質を25~30 g程度 (10~15gの必須アミノ酸) 摂取しなければ,骨格筋での有効なたんぱく合成が1日を通して 維持できていない可能性がある。 ○レジスタンス運動とアミノ酸補給(運動後1時間程度)で合成 日本人の食事摂取基準2015年版 筋肉量を増やすなら 1.2~1.5g/標準体重/日 ロイシンはたんぱく質 合成刺激あり 肉・魚 60~80g高齢者に必要な栄養③
• ビタミンD 小腸でのカルシウム吸収を促し,血中カルシウム濃度を高める 身体機能や筋力を向上,転倒や骨折のリスクを下げる 紫外線を浴びることにより皮膚でも産生(晴れ10~15 分,曇り30 分程度) • 抗酸化物質 ビタミンC,ビタミンE,カロテン類,ポリフェノール類(フラボノイド類), スーパーオキシドジスムターゼやグルタチオンペルオキシダーゼの補助 因子(亜鉛、セレン、マンガン)などの,抗酸化作用に関連する栄養素の 摂取量が少ないと運動機能が低下し,フレイル状態に陥る可能性がある と報告されている。 魚・きのこ 日本人の食事摂取基準2015年版バランスの良い食事とは?
1日3回主食・主菜・副菜をそろえて 副菜 主に野菜・海藻・芋を使った料理 主菜 主に肉・魚・卵・豆腐等の料理 ひじきの煮物 野菜炒め じゃが芋煮物 野菜サラダ おひたし 鶏肉の照り焼き 目玉焼き 冷や奴 てんぷら 主食 ごはん・パン・めん等 うどん ラーメン ロールパン 食パン1枚 副 菜 けんちん汁 味噌汁 具だくさんの汁 主食・主菜は の中の いずれか1皿、 副菜は1皿以上 が目安です 1食で食品摂取多様性の効果
食品多様性が高いと4年後に身体機能を維持できる Yokoyma Y,et al J Nutr Health Aging.2017 食事の多様性が少ない人は 生活機能の低下率が高い7点以上
「何でもかんで食べることができる」
と回答した者の年次推移
歯の本数別 かんで食べるときの状況の割合
(70歳以上 男女計)
平成25年 国民健康・栄養調査結果
かんで食べる時の状況別 低栄養傾向の者の割合
(70歳以上、男女計)
「歯の本数」と「食べられるもの」の関係
※新庄ほか:老人健康法に基づく歯の健康教育 歯の健康相談の担当者になったら 1989 歯数少ないと・・ 炭水化物↑ イモ類↑ 歯数多いと・・ 種実類↑ 果実類↑ 水産食品↑ 乳類↑ (花田信弘:日本人の長寿を支 える「健康な食事」のあり方に 関する検討会資料)歯を失う原因と関連する食事
・低栄養は歯周病を促進する。 ・歯周病は活性酸素を増加させる ので、抗酸化物質(ビタミンC, β-カロテン,ビタミンE)が必要。 ・ビタミンA,ビタミンD,タンパク質 の不足はエネメル質形成↓と唾液腺 萎縮を伴うため、齲蝕発生の危険 因子。 ・チーズと牛乳は齲蝕症予防因子。 ・ピーナッツ、全粒穀物などの 噛む食材は、齲蝕症の予防因子。噛む、飲み込むなど食べる力の低下サイン
□食事中にむせる
□食べ物が噛みにくい
□痰がでやすい
□食事中や食後に咳が出る
□お口の中やのどに食べ物が残りやすい
□食べ物の嗜好が変わった
□食事の時間が長くなった
□痩せてきた、体重が減ってきた
□食事をすると疲れやすい
□微熱がでやすい、肺炎になったことがある
「高齢者に、いつまでも食べる喜びを!」日本栄養士会まずは、
歯科受診へ
認知症を予防するための5箇条
①良質なたんぱく質(肉、魚、
卵、大豆製品)を適量とる。
②主食(ごはん、パン、めん)
は欠かさずとる。
③油脂を疎遠しすぎない。
④EPA、DHAが多く含まれる
魚を積極的にとる。
⑤野菜や果物を毎日欠かさない。
広島県栄養士会が平成28年度に実施した
在宅訪問栄養ケアモデル事業における事例
在宅訪問栄養ケアモデル事業 目的 診療所及び訪問介護ステーションにおいて、主治医の指示 に基づき、在宅療養者、要介護・要支援者の在宅訪問栄養 食事指導を実施し、その効果を評価するとともに、地域での 効果的な栄養サポート体制を構築するための課題を検討する 実施期間及び訪問回数 平成28年12月~平成29年3月 1人の対象者に対して、継続して3回の訪問を行った 訪問担当者 広島県栄養士会主催研修会を終了した管理栄養士事例1
利用者及び家族の意向 ・美味しい食事をしっかり食べたい ・簡単で美味しい料理を教えてほしい アセスメントから得られた課題 ・飲水の不足 ・食事の量が少ない ・甘いもの(菓子パン等)を好み、たんぱく質不足の状況 ・調理の知識不足と苦手意識から、野菜料理が少ない 年齢 78歳 性別 女性 家族構成 ご本人、娘(二人暮らし) 病名 2型糖尿病、脂質異常症、心臓病 身長 145.1cm 体重 40kg BMI 18.9評 価 ・食事摂取量が安定 (栄養バランスの改善) ・簡単調理法の実践あり ・活動量の増加 ・立位安定 栄養ケア目標 ・食事量を増やし、栄養バランスを整える (たんぱく質量を増やし、筋肉を落とさない) ・手軽な調理の習得 介入状況 ・誤嚥を防止し、飲水を増加するため、ストローを利用 して一口量を調整することを指導 ・食事形態(主食・主菜・副菜)を理解してもらい、野菜 料理を1日に1回は食べることを提案 ・市販品を利用した簡単調理のコツを紹介
モデル事業参加者の声
【対象者】 ・食事診断で、不安が解消された。症状にあったレシピ もたくさん提案してもらったので、これからの食事に 役立てて行きたい ・食べる順序やメニューを教えてもらい、意識して実行 したら血糖値も下がった。 【主治医】 ・入院中は栄養指導の機会があるが、在宅療養中は機会 がないので、訪問して家族へ指導してもらうことはあり がたい。病院と地域で支えていけば、患者も安心して 過ごせる。 ・介護者の心の支援にもなった。 ・在宅訪問栄養指導は大切な取組である。これからも 一緒に患者をサポートできればありがたい。先進事例!
●広島市で始まった
自立支援への取り組み
1.訪問型サービス(全体像) 45 高 ①訪問介護サービス 【身体介護・生活援助】(現行相当) 地域における自立した生活の継続 運 動 機 能 認知機能 高 低 低 点線内:要支援認定、事業対象者 ③住民主体型生活支援訪問サービス 【生活援助等】 (住民主体型) ④短期集中 予防支援 訪問サービス 【指導・助言】 (短期集中) ②生活援助特化型訪問サービス 【生活援助】 (基準緩和型) ・人員基準等を緩和した「生活援助特化型訪問サービス」、住民主体の「住民主体型生活 支援訪問サービス」、専門職による「短期集中予防支援訪問サービス」を新設し、多様な 提供主体による様々なサービス提供を可能にするとともに、機能訓練や栄養改善などの 短期集中的な支援を組み合わせることによって効果的に機能回復を図る。 広島市の総合事業で実施するサービス内容 ※ 各サービスの詳細は次頁以降
短期集中型サービスについて
46 内は短期集中型サービス受託者の業務内容 地域包括支援センターが実施する介護予防ケアマネジメントに基づき、事業対象 者の機能低下の状況に照らし、専門職が短期集中的(原則として概ね3ヶ月)に サービスを提供し、生活機能の改善を図る。 地域包括支援センター (介護予防ケアマネジメント) ★アセスメント ★ケアプラン原案作成 サ -ビ ス 担 当 者 会 議 事 前 ア セ ス メ ン ト の 実 施 個 別 計 画 の 作 成 プ ロ グ ラ ム の 実 施 実施報告・請求(毎月)・委託料支払 事 後 ア セ ス メ ン ト の 実 施 評 価 地域包括支援センター (介護予防ケアマネジメント) ★評価 ★必要に応じ再度ケア プラン作成 サービス提供・利用者負担(1割)の徴収 サービス利用に係る 事前調整 (包括⇔事業所) 利用者 広島市 *広島県栄養士会 は事業所 *広島県栄養士会 と利用者が契約3か月(1クール)
栄 養 食事回数( 3 ) 回/日 食事療法の必要 性 □ あり( ) ■なし ○2 食形態■普通食 □軟食 □刻み食 □その他 ( ) 肉・魚・卵・大豆製品をとっていま すか ■ 1 回/日 □ 回/週 □ほとんどとら ない □その他( ) 牛乳・乳製品をとっていま すか □ 回/日 □ 回/週 ■ ほとんど とらない □ その他( ) 野菜をとっていますか □ 回/日 □ 回/週 □ ほとんど とらない ■ その他( 野菜ジュース 1杯 ) 間食はしますか □ほぼ毎日 □時々 □ しない 【内容: 】 1日にとる水分量について総摂取量 □500cc未満 ■500~1000 cc □1000cc以上 【摂取量の 内訳: 水・お茶 cc 、汁物 cc その他 ( 野菜ジュース1パック) 150cc 】 【参考】 低栄養の事例 ◎食生活について,具体的な質問・提案 ・肉・魚のたんぱく質を何時とっているか →朝ご飯には卵、昼ご飯には納豆や豆腐はどうか ・野菜は野菜ジュースのみか、野菜が嫌いなのか、調理はしないのか →惣菜を購入してもよい、昼の配食サービスの利用をしてみてもいいのではないか ・水分が少ないが、みそ汁などはどうか →具だくさんの味噌汁で、サバの缶詰なども入れるとたんぱく質と野菜が取れる