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大学教育においてルーブリックを自己評価に活用した影響と課題

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1.問題と目的 近年,大学教育においてルーブリック1)を用いることが求 められている。契機となったのは,中央教育審議会(2008) による「学士力」の提示である。この学士課程修了段階での 質保証を目的とした資質・能力の提示により,学生の達成状 況についての評価がより明確に求められることになったの である。これに加えて中央教育審議会(2012)は,学習成果 を把握する具体的な方策の 1 つとしてルーブリックを取り 上げ,その研究・開発の重要性を指摘してきた。また,中央 教育審議会(2018)は,期末試験の評価だけではなく,学生 個々人の学習の達成状況をより可視化することを求めてお り,ルーブリックの活用が期待されている。 一方,大学教育におけるルーブリックの普及率はそれほど 高いとはいえない状況である。文部科学省高等教育局大学振 興課大学改革推進室(2017)によって示された成績評価の状 況をみると,全ての科目をルーブリックにより明示している 大学は,平成 23 年の 5 大学(0.7%)から平成 27 年の 19 大 学(2.5%),一部の科目をルーブリックにより明示している 大学は,平成 23 年の 5 大学(0.7%)から平成 27 年で 95 大 学(12.7%)に留まっており,増加の傾向はみられるものの, 決してルーブリックが大学教育全体に積極的に導入されて いるとはいえない。 ルーブリックが大学教育全体に積極的に導入されていな いことについて,濱名(2012)は,ルーブリック評価の課題 として次の 4 点を挙げている。 ①テスト等の定量的評価に比べると手間がかかる。 ②ルーブリックを作成するだけでは評価者間の誤差が完全 には無くならず,継続的にワークショップなどで評価者間 の誤差を調整し続けることが必要である。 ③共通ルーブリックの作成は基準間のレベル設定などが難 しく,誰もが作成できるわけではない。 ④アセスメントプランの中で,多元的なアセスメントの 1 方 法として組み込んでいく。 このうち,定性的なコメントと比較して容易ではあるもの のテスト等の定量的評価よりは手間がかかることや共通ル ーブリックに限らず作成が困難に感じられること,継続した 改善が必要となることなどが,ルーブリックが積極的に導入 されていない理由として考えられるだろう。つまり,導入に 手間や苦労が掛かるのではないかと考えられていることに 原因があるといえよう。 一方で,スティーブンスら(2014)は,ルーブリックを用 いる理由として以下の 6 点を挙げている。 ①タイミングの良いフィードバック ②学生による詳細なフィードバックの活用 ③批評的思考力のトレーニング ④他者とのコミュニケーションの活性化 ⑤教員の教育技法の向上 ⑥平等な学習環境づくり これらはいずれもルーブリックを授業実践に取り入れて いく良さについて触れた視点である。また,「抜き打ち」ル ーブリックは避けるべきである(スティーブンスら 2014) との指摘もある。これは,学生が見たこともないルーブリッ クで教員が評価を行うことを指しており,学生が課題に取り 組む前にルーブリックを提示する必要性が指摘されている。

大学教育においてルーブリックを自己評価に活用した影響と課題

星 裕,越川 茂樹(北海道教育大学) 本研究は,大学教育における学生による自己評価へのルーブリックの活用に関する研究動向を概観し,その活 用状況と活用した結果にみられた影響と課題について明らかにすることを目的とした。 その結果,ルーブリックを自己評価に用いた影響については,「授業の目標を理解する」,「学習へと動機づける」, 「資質・能力の向上」,「教員が学生を理解する」の 4 点,課題については,「ルーブリックの改善」,「ルーブリッ クの活用」,「対象の拡大」の 3 点に整理することができた。また,それらを先行研究と比較して検討した結果,ル ーブリックを評価の道具としてだけではなく,学習をより効果的なものとするための学習材として活用していく 必要性が示唆された。そのためには日々の授業においてルーブリックを活用し,それ自体とその用い方を検討し ていくことが,学習材としてのルーブリックの可能性を広げていくことにつながると考えられる。 キーワード: 学習材,授業,目標理解,動機づけ,資質・能力,学生理解 教師学研究23(1).21-31,2020 資料

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これらは,ルーブリックが単に学生の評価に教員が用いる道 具というだけではなく,授業の中で学生に提示して活用させ る学ぶ内容としての価値をもつ可能性を示しているといえ るだろう。 特に,③批評的思考力のトレーニングの項目の中で,ステ ィーブンスらは次のように指摘している。 自らの学習について批評的に振り返ることを学生に促 すことで,確実に「自己評価と自己改善」を習慣化する よう,学生を奮い立たせることができる。教員が授業で 望んでいるような,動機が高く創造的な学生を育成する ために,これらは本当に重要なものである。(スティー ブンスら 2014) これは,学生自身がルーブリックを視点として自己評価を 行うことの重要性を指摘している。中央教育審議会(2008) も「学習意欲や目的意識の希薄な学生に対し,どのような刺 激を与え,主体的に学ぼうとする姿勢や態度を持たせるかは, 極めて重要な課題である」と,学生を学習に関与させていく 重要性について触れている。これらのことから,ルーブリッ クへの自己評価が,批評的思考力を鍛え,それを原動力とし て,積極的に学ぶ姿勢を養っていくことに貢献する可能性が 認められる。つまり,学生がルーブリックを用いて自らの学 習を批評的に振り返り,自己評価と自己改善を習慣化してい くことにより,学習への目的意識をもち,主体的に学ぶこと が期待できる。 そこで本研究は,大学教育における学生による自己評価へ のルーブリックの活用に関する研究動向を概観し,その活用 状況と活用した結果にみられた影響と課題について明らか にすることを目的とした。 2.方法 2-1.論文の選定条件 本研究で対象とする論文は,次の①から④の全ての条件に 該当するものとした。 ①2013 年から 2018 年の 5 年間に発表された論文とした。理 由は,2012 年の中央教育審議会答申において,ルーブリッ クの研究・開発の重要性が指摘されたことにある。そこで, その後に発表された論文を選定対象とした。 ②研究論文(原著・短報・資料・実践報告)である。総説, 解説,特集は除外した。これは本研究が研究動向を概観す るものであることから,研究・実践を対象としたものとし たためである。 ③大学教育を対象とした。2012 年の中央教育審議会答申は, 大学教育における教育の質の転換を意図したものである。 この答申以降の大学教育におけるルーブリックの自己評 価への活用状況を概観するという点から,本研究において も大学教育を対象とした。 ④ルーブリックを用いた学生の自己評価に関する研究であ る。学生がルーブリックを用いて,学生自身の取り組みを 自己評価していくことで,どのような影響と課題がみられ たのかについて検討するためである。 2-2.論文の選定方法 データベース検索によって論文を抽出した。本研究では, データベース検索には CiNii(NII 学術情報ナビゲータ)を 用いた。まず Key Words(ルーブリック,自己評価,学生) の検索式で得られた論文のうち,対象年が 2013 年から 2018 年までで本文が含まれている論文に限定し,43 件を抽出し た。最終検索日時は,2019 年 2 月 19 日であった。 次に,1 次スクリーニングでは表題と抄録の情報から,2 次 スクリーニングとして本文の情報から,選定条件に 1 つでも 該当しない論文は除外していき,最終的な分析対象論文を選 定した。最終的に対象となったのは,26 件であった。これら の選定は筆者である星が一人で行った。 分析対象として選定された各論文は,「発表年」,「対象学 生の所属」,「授業の形態」,「影響」,「課題」の視点で分類・ 整理した。 3.結果と考察 3-1.発表年と対象学生の所属,授業の形態 選定された論文の発表年について整理した。2014 年が 1 編,2016 年が 4 編,2017 年が 11 編,2018 年が 10 編であっ た。全体的に該当する研究は多くないものの,2016 年以降, 表 1 論文選定の整理手順 キーワード・条件 論文数 1 ルーブリック 952 2 ルーブリック&自己評価 123 3 ルーブリック&自己評価&学生 55 4 ルーブリック&自己評価&学生,本文あり 45 5 ルーブリック&自己評価&学生,本文あり, 2013 年以降 43 6 ルーブリック&自己評価&学生,本文あり, 2013 年以降,研究論文 32 7 ルーブリック&自己評価&学生,本文あり, 2013 年以降,研究論文,大学教育 29 8 ルーブリック&自己評価&学生,本文あり, 2013 年以降,研究論文,大学教育,自己評価 26

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特に 2017 年,2018 年になって該当する研究が行われるよう になってきたと考えることができる。 次に,対象学生の所属について整理した。論文によって, 所属の書き方が異なるため,表 2 のように整理した。大きく 分けると,医療・福祉系とその他の 2 つに分けることができ る。医療・福祉系としては,看護学部に関する論文が 10 編, 薬学部が 4 編,歯学部が 2 編,介護福祉養成課程が 1 編,健 康医療スポーツ学部が 1 編であった。全 26 編中 18 編が医 療・福祉系であり,全体の 7 割程度を占めている。その他は, 複数の学部の混在型や初年次教育等の共通型が 5 編,残りは それぞれ 1 編ずつであった。これらから,医療・福祉系の学 部において積極的に研究が進められていることがわかる。こ れらの学部は,国家資格である歯科医師免許や看護師免許等 をはじめとして免許を取得することを目的としており,その 資格の取得に必要な経験,資質・能力が明確にされている。 一方で,同様に免許の取得を目的としている教育学部におけ る論文は本研究における選定方法ではみられなかった。教育 学部では,ルーブリック等による多様な評価が大学で求めら れていること(中央教育審議会 2012)に加え,将来の教師 としての資質・能力の向上という観点から教員養成課程にお ける授業そのものを,アクティブ・ラーニングの視点から改 善していくことが求められている。それらを考慮すると,今 回,教育学部における研究がみられなかったのは,今後,検 討すべき課題の 1 つといえる。 表 2 対象学生の所属 所属 論文数 看護学部 10(深山ら 2018;生田ら 2016;伊 藤ら 2016;貝谷ら 2017;長井ら 2017;長峰ら 2018;岡山ら 2014; 鈴木ら 2018;鶴間ら 2016;横井ら 2017) 薬学部 4(栗尾ら 2018;松野ら 2018;宮崎 ら 2017a;宮崎ら 2017b) 歯学部 2(斎藤ら 2017;高崎ら 2017) 介護福祉養成課程 1(宮本ら 2017) 健康医療スポーツ学部 1(林 2018) 混在型・共通型 5(安達ら 2018;碇山ら 2017;西谷 2017;大塚ら 2018;湯川ら 2016) 現代社会学部 1(本田 2017) 工学部 1(山岡ら 2018) 国際コミュニケーショ ン科 1(片瀬ら 2018) また,論文に示された授業の形態は,表 3 のように整理で きた。実習が 11 編,演習が 8 編,PBL が 2 編,反転授業が 2 編,教育課程全体や複数時間の授業を含むものが 3 編であっ た。実習や PBL が 13 編であり,何らかの形での実習・活動 を対象としたものが多かった。また,演習は,レポート作成 が 4 編,PC を用いた演習が 2 編,ピア・レビューが 1 編,ピ ア・サポートが 1 編,ピア・インストラクションが 1 編であ った(重複が 1 編有り)。これらも何らかの形での活動を含 むものであった。したがって,授業の中で活動を通したパフ ォーマンスを評価する場合にルーブリックが用いられてい るといえる。これは,活動あって学びなしといった事態を避 けるべく,活動の意義や目的を理解し,活動を通して学びの 深まりを意図してのことと考えられる。 以上の結果からは,2017 年以降に多くの研究が行われる ようになってきており,医療・福祉系の学部に多くみられ たことがわかる。また,実習・演習を対象としたルーブリ ックが多くみられた。これは,実習や演習では,学生が中 心となって活動することが多く,学生自身で思考・判断す る場面が多くあることと関連していると考えられる。つま り,スティーブンスら(2014)が示したルーブリックを用 いる 6 つの理由のうち,③批評的思考力のトレーニングに ある「自己評価と自己改善」が学生自身で考え,判断する という点から必要になるためである。また,④他者とのコ ミュニケーションの活性化という視点も深く関わっている と考えられる。特に実習では,複数の教員で学生の指導を 行うことが多く,ルーブリックを用いることで学生に育て たい資質・能力について共有することができるようになる と考えられる。したがって,学生自身が自己評価を通して 自己改善を図っていく必要性と複数教員による学生に育て たい資質・能力の共有化という点から,医療・福祉系の学 部においてルーブリックが用いられていると考えられる。 表 3 授業の形態 授業の形態 論文数 実習 11(安達 2018;深山ら 2018;生田ら 2016;伊藤ら 2016;宮本ら 2017;長井ら 2017;岡山ら 2014;鈴木ら 2018;高崎ら 2017;鶴間ら 2016;横井ら 2017) 演習 8(林 2018;本田ら 2017;貝谷ら 2017; 栗尾ら 2018;松野ら 2018;西谷 2017; 斎藤ら 2017;山岡ら 2018) 教育課程全体・ 複数時間 3(片瀬ら 2018;長峰ら 2018;大塚ら 2018) PBL 2(碇山ら 2017;湯川ら 2016) 反転授業 2(宮崎ら 2017a;宮崎ら 2017b)

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3-2.ルーブリックを自己評価に活用した影響 選定された論文において学生がルーブリックを自己評価 に活用した影響として報告された内容を表 4 に整理した。ル ーブリック活用の影響について複数報告している論文も含 まれていたため,総数は 29 になった。 まず,目標の理解や共有化について報告した論文が 5 編み られた。例えば,宮本ら(2017)は,介護実習記録を課題と するルーブリックを作成し,学生に自己評価させた結果,達 成目標を学生に明確に示すことができ,学生が評価観点を意 識して記録に取り組めたことを示した。同様に,横井ら(2017) も,成人看護学実習にルーブリックを自己評価に活用したこ とで,評価観点の目標達成に対して学生と教員が認識を共有 できることを示唆している。これらは,ルーブリックが単に 質的に評価結果を示すだけではなく,学生が何をできるとよ いのかという学習の目標について理解し,教員と認識をすり 合わせていく学習材となり得る可能性を示しているといえ る。 次に,学生の学習への関与の促進について報告した論文が 5 編みられた。湯川ら(2016)は, PBL 型授業において学生 自身によるルーブリックの作成を導入したことにより,活動 へのコミットメントを引き出す上で一定の効果があったこ とを報告している。また,長峰ら(2018)は,養護教諭とし て必要な資質・能力が身についているかどうかを確認するた めの評価方法としてルーブリックを自己評価に用いること で,自らの課題を明らかにして学び続ける姿勢をもたせる効 果があったことを示唆している。これらは,ルーブリックが 学生自身の課題を明確にし,学生の学習への関与を促進する ことを示している。 また,教員と学生の評価のズレについて報告していた論文 も 5 編みられた。伊藤ら(2016)は,エンドオブライフケア 実習の評価にルーブリックを活用した結果,学生評価と教員 評価にズレがみられたことを示している。一方で,斎藤ら (2017)は,学生評価と教員評価に関しては,確かにズレが みられるものの,教員との振り返りの時間を確保することで, 一致率が高くなったことを報告した。これらは,学生と教員 のルーブリックの評価基準に関する認識にはズレがみられ るものの効果的にフィードバック等を行うことで,認識をす り合わせていくことが可能であることを示していると考え られる。 他者との相互作用を活性化する働きがあることについて 報告している論文も 3 編みられた。深山ら(2018)は,在宅 看護学実習においてルーブリック自己評価表を活用した結 果,ひとりで学習するだけでなく,グループメンバーと共に 学ぶ姿勢をもつことができ,学習活動が高まったことを報告 している。また,碇山ら(2017)は,PBL 型授業においてル ーブリックへの自己評価を取り入れたことにより,グループ 活動の際に異質な他者との相互作用が促進される傾向が確 認されたことを示した。これらは,学習活動の目標の共有が 図られたことで,相互作用が促進されたことを示している。 つまり,学生がお互いに何ができればよいのか,何をすれば よいのかを明確にして活動に取り組むことで,このような影 響がみられたと考えられる。 自己評価能力の向上について報告している論文が 3 編み られた。生田ら(2016)は,成人クリティカルケア実習の学 生の自己評価と教員の総合評価を分析し,ルーブリックの導 入後,学生が客観的に自己評価をできるようになったことを 示している。また,西谷(2017)は,文章力養成に向けてル ーブリックを活用した結果,学生の自己分析や能力把握に効 果が期待できることを示唆している。ルーブリックを自己評 価に活用していくことで,学生が評価基準に基づいて客観的 に自身を分析することができるようになったと考えられる。 さらに,学習成果の可視化についても触れられている。片 表 4 ルーブリックを自己評価に活用した影響 結果 論文数 目標理解や教員との認識の 共有化 5(碇山ら 2017;生田ら 2016;宮本ら 2017;横井ら 2017;湯川ら 2016) 学生の学習への関与の促進 5(本田 2017;碇山ら 2017; 長峰ら 2018;西谷 2017;湯 川ら 2016) 教員と学生の評価のズレ 5(伊藤ら 2016;貝谷ら 2017;長井ら 2017;斎藤ら 2017;横井ら 2017) 他者との相互作用の促進 3(碇山ら 2017;深山ら 2018;湯川ら 2016) 自己評価能力の向上 3(安達ら 2018;生田ら 2016;西谷 2017) 自己学習の促進 2(貝谷ら 2017;高崎ら 2017) 学習成果の可視化 2(片瀬ら 2018;大塚ら 2018) モチベーション・学習進捗状 況の測定 2(松野ら 2018;栗尾ら 2018) ライティングスキルの向上 1(本田 2017) 学生によるルーブリック活 用状況の分類と支援方法 1(鈴木ら 2018)

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瀬ら(2018)は,2 年間を 8 期に分けて学科の教育目標に関 する成長度を定期的に自己評価させた結果,学習成果の可視 化という点で有効であったことを報告している。大塚ら (2018)は,授業の初回と最終回に自己評価ルーブリックを 実施することで,学生は自らの自己成長を,教員は学生の理 解度や成長を可視化して把握することができたことを示し ている。これらは,ルーブリックへの自己評価を定期的,も しくは授業の前後等に行うことで,その変化から成長した部 分が明確になることを示唆している。したがって,ルーブリ ックへの自己評価は,学生にとって自身の成長を実感できる 機会であるとともに,教員にとって学生の学習状況を理解し, 授業や教育課程の有効性を検討する機会ともなっていたと 考えられる。 他にも,自己学習を促進する効果がみられたこと(貝谷ら 2017;高崎ら 2017),学生のモチベーションや学習の進捗 状況を測定する材料となったこと(松野ら 2018;栗尾ら 2018)が示されており,学生を学習へと動機づけたことや学 生の学習状況の測定方法となる可能性が示されていた。また, ライティングスキルの向上につながったこと(本田 2017), 学生によるルーブリックの活用状況の分類と活用に向けた 支援の必要性が示唆されたこと(鈴木 2018)も報告されて いた。これらは,ルーブリックを用いることで学生がスキル を身に付けることや学生によるルーブリックの活用状況を 分類し,その結果に応じた教員の関わりが重要になることを 示しているといえる。 以上,選定された論文から得られた知見を整理すると,ル ーブリックを自己評価に用いた結果にみられた影響は,次の 4 点に整理される。 1 点目は,学生が目標を理解することにつながるというこ とである。これは,表 4 の「目標理解や教員との認識の共有 化」にみられた内容である。ルーブリックを用いることで, 何ができるといいのかという目標といかに評価されるのか という評価の基準や方法が提示されることによって,学生が それを意識しながら学習に取り組むことになる。 2 点目は,学生を学習へと動機づけることにつながるとい うことである。これは,表 4 の「学生の学習への関与の促進」 や「他者との相互作用の促進」,「自己学習の促進」にみられ た。これらには,学生が自らの課題を明らかにして学び続け る姿勢をもつことにつながったこと(長峰ら 2018),グル ープメンバーと共に学ぶ姿勢をもち,学習活動が高まったこ と(深山ら 2018),自己学習を促進し,学習へと動機づけ たこと(貝谷ら 2017)が示されていた。 3 点目は,自己評価能力やライティングスキルといった学 生の資質・能力の向上につながるということである。これら は,表 4 の「自己評価能力の向上」や「学習成果の可視化」, 「ライティングスキルの向上」にみられ,学生がルーブリッ クにより自らの自己成長を可視化することができた(大塚ら 2018),客観的に自己評価をできるようになった(生田ら 2016),ライティングスキルが向上した(本田 2018)とい う点が示されていた。つまり,可視化することが,自己評価 能力やライティングスキルといった学生に求める資質・能力 の向上につながったと考えられる。 4 点目は,教員が学生を理解することにつながるというこ とである。この点は,表 4 の「教員と学生の評価のズレ」や 「学習成果の可視化」,「モチベーション・学習進捗状況の測 定」,「学生によるルーブリック活用状況の分類と支援方法」 にみられた。例えば,斎藤ら(2017)は,ルーブリックを用 いたとしても教員の評価と学生の自己評価にズレがあると し,このズレの度合いから学生の自己評価能力をとらえるこ とが可能であると指摘している。また,「学習成果の可視化」 は,学生の資質・能力の向上のみならず,教員が学生を理解 することにも関わっていると考えられる。大塚(2018)は, ルーブリックを自己評価に用いることで,教員が学生の理解 度や成長を可視化して把握することができたとしている。他 にも,学生のモチベーションや学習の進捗状況を測定できた こと(松野ら 2018),学生のルーブリックの活用状況が分 類できたこと(鈴木ら 2018)も示されていた。 ところで,1~3 点目は,ルーブリックを自己評価に活用し た結果,学生への影響という側面であったが,4 点目は,教 員への影響という側面であり,1~3 点目とは,異なる側面で あった。ルーブリックを自己評価に用いることは,学生への 影響のみならず,教員による学生の理解につながる影響がみ られたことが示唆された。 3-3.選定された論文にみられた課題 選定された論文の中でルーブリックを授業で活用した結 果,課題として挙げられていた内容について表 5 に整理した。 課題が示されていた論文のみを対象としているため,対象の 論文数よりも少なくなっている。 最も多く挙げられていたのは,「評価基準の妥当性と信頼 性の向上」である。「個人差に左右されずに正当な自己評価 が行える評価基準の追求や達成度を計測しやすい表現の工 夫を始めとして,ルーブリックの仕様には課題が残る」(大 塚ら 2018)の意見にみられるように,設定した評価基準が 育てたい資質・能力を評価する上で適切であるかという妥当 性に関する部分と,評価基準の主観性への対処や評価尺度の 段階の差を適切に表現しているかという信頼性に関する部 分に関わる課題である。そもそもルーブリック活用の大前提 となる部分でもあり,ルーブリックの妥当性や信頼性が低い

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ままでは,適切な評価を行うことができない。このことに関 しては,栗田ら(2017)が,「はじめから完璧なルーブリック を用意することは難しく,実際に使ってみながら精度を高め ていく」と示しているように,活用しながら改善を図ってい く必要がある部分であろう。 次に,「ルーブリックの教育効果を高める活用方法」も課 題として挙げられていた。具体的には,学生がルーブリック について理解し,どのように活用していくかを学ぶ必要性が 示されていた(西谷 2017)。加えて,実施の時期や回数を どうするかといった部分についても挙げられていた。これら は,学習材としてのルーブリックを授業の中でどのように活 用していくかという課題である。 また,「効果的なフィードバック」についても課題とされ ていた。伊藤ら(2016)は,実習の中で自己評価をより客観 的に行えるように学生へのフィードバックをどのように行 うかということを課題として挙げていた。さらに,斎藤ら (2017)は,フィードバックを継続して行うことで,学生の 自己評価能力が高まり,教員の評価と学生の自己評価のズレ が小さくなる可能性についても言及している。これらは,評 価した結果を学生の成長につなげるためにどのようにフィ ードバックするか,そしてそれを1つの授業だけではなく, いかに教育課程全体で取り組んでいくかという 2 点につい て検討する必要性を指摘しているといえる。 他に,対象とする授業や学生をどのように拡大していくか (深山ら 2018;栗尾ら 2018),ルーブリック自体に教員 の負担軽減といった効果があるものの,集計をより効率化し ていくにはどうするか(大塚ら 2018),個々の学生の特質 に応じた目標設定が可能かどうか(湯川ら 2016)といった ことが課題として挙げられていた。 これらの課題として挙げられていた内容は,大きく次の 3 点に分けられる。 1 点目は,ルーブリック自体をどのようによりよいものに していくかという課題である。これは,表 5 に最も多く課題 として挙げられていた「評価基準の妥当性と信頼性の向上」 に示されていた。ルーブリックを活用する前提として,そも そもルーブリックが適切かという部分に検討すべき点があ ることが示されているといえる。 2 点目は,ルーブリックをどのように活用するかという課 題である。この点は,表 5 の「ルーブリックの教育効果を高 める活用方法」や「効果的なフィードバック」,「個に応じた ルーブリックの活用」にみられた。例えば,学生がルーブリ ックをより理解し活用するためにどのように活用していく か(西谷 2017),学生への効果的なフィードバックをどの ように行うか(伊藤ら 2016),個々の学生の特質を目標設 定にいかに反映させるか(湯川ら 2016)などが報告されて いた。学生がルーブリックについての理解を深め,活用でき るようにどのように提示するか,学生へのフィードバックを どのように行うか,また,場合によっては個に応じた目標設 定をどのように行うかといった点に関するルーブリック活 用の課題がうかがわれる。 3 点目は,対象とする授業や学生をいかに拡大していくか という点に関する課題である。これは,表 5 の「対象授業・ 学生の拡大」,「集計の効率化」にみられた。栗尾ら(2018) は,ルーブリックを使用した自己評価を他の学年に適用する ことを挙げており,ルーブリックを活用する場を広げていく ことを示している。今後,ルーブリックを活用する場を広げ ていく上では,ルーブリックをより簡便に用いることができ るようにする必要もあり,その点で,大塚ら(2018)が示し たように,集計を効率化する方法について検討していくこと も重要であるといえる。 4.全体的考察 本研究では,大学教育における学生による自己評価へのル ーブリックの活用状況と活用した結果にみられた影響と課 題について明らかにすることを目的とした。 まず,活用状況について次の 3 点が示された。 ①2016 年以降,特に 2017 年,2018 年における該当論文の増 加傾向。 ②医療・福祉系の学部での報告が多い。 ③実習や演習等の授業の中でのパフォーマンスを評価する 報告が多い。 表 5 ルーブリックを自己評価に活用する課題 課題 論文数 評価基準の妥当性・信頼 性の向上 11(安達ら 2018;深山ら 2018; 林 2018;伊藤ら 2016;貝谷ら 2017;宮本ら 2017;長峰ら 2018;岡山ら 2014;大塚ら 2018;鈴木ら 2018;横井ら 2018) ルーブリックの教育効 果を高める活用方法 4(長井ら 2017;西谷 2017;鈴 木ら 2018) 効果的なフィードバッ ク 3(伊藤ら 2016;斎藤ら 2017; 高崎ら 2017) 対象授業・学生の拡大 2(深山ら 2018;栗尾ら 2018) 個に応じたルーブリッ クの活用 1(湯川ら 2016) 集計の効率化 1(大塚ら 2018)

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これは,文部科学省高等教育局大学振興課大学改革推進室 (2017)が示したように,積極的に導入されているとはいえ ないものの,少しずつルーブリックが大学教育に導入されつ つあるという状況が示唆されているといえる。特に,学生に 何らかのパフォーマンスを求める医療・福祉系の学部にみら れる実習や演習において導入されていた。 次に,ルーブリックを自己評価に活用した結果にみられた 影響は,4 点に整理された。得られたこれらの 4 点に関して, スティーブンスら(2014)がルーブリックを用いる理由とし て示した 6 点と比較を行った。 まず,1 点目として挙げた「学生が目標を理解する」は, 理由として示された 6 点のうち「⑥平等な学習環境づくり」 と関連していると考えられる。スティーブンスら(2014)は, 学生の多様な背景にも関わらず,ルーブリックを用いること で,教員の期待や必要な学習内容を学生に示すことができる ことを挙げていた。これは,目標や評価について学生が理解 することであり,「学生が目標を理解する」ことに関わって いるといえるだろう。 次に,2 点目として挙げた「学生を学習へと動機づける」 は,「①タイミングの良いフィードバック」と関連している と考えられる。この点に関して,スティーブンスら(2014) は,タイミングの良いフィードバックは学習を促すとしてお り,学習へと動機づけることと関わっているといえる。とこ ろで,本研究で整理された動機づけは,ルーブリックを提示 したことによって,学生が見通しをもてたことやグループメ ンバーと共に学ぶ姿勢をもてたことによるものであった。一 方で,スティーブンスら(2014)は,教員からのフィードバ ックによる結果として学習への動機づけが促進されたこと を示しており,活用する場面が異なっていた。 また,3 点目として挙げた「自己評価能力やライティング スキルといった資質・能力の向上」は,「②学生による詳細 なフィードバックの活用」や「③批評的思考力のトレーニン グ」と関連していると考えられる。スティーブンスら(2014) は,できるだけ多くの情報を含んだフィードバックが効果的 であること,どのような場合に最高の評価がなされるかを記 載しておくことが学生にとって有益であることを挙げてい る。これらのことから,ルーブリックに詳細な情報,特に最 高の評価を得ることにつながる基準を記載しておくことで, 学生が自己評価能力やライティングスキルといった求めら れる資質・能力を身に付けることにつながると考えられる。 また,ルーブリックを自己評価に使うことで,自己評価と自 己改善を習慣化するように学生を奮い立たせ,良い助言と組 み合わせることで学生の批評的思考力を伸ばすことができ るという点も示している(スティーブンスら 2014)。この 批評的思考力は,「自立的に,正確なデータを蓄積し,偏見 をもたずに,思考し,推論し,判断する力」とされており, 自己評価能力やライティングスキルといった資質・能力の向 上につながるものといえる。 最後に,4 点目として挙げた「教員が学生を理解する」は, 「⑤教員の教育技法の向上」と関連していると考えられる。 スティーブンスら(2014)は,ルーブリックが教員に学生の 成長と改善点を示し,そこから授業の盲点,欠けている点, 強みについても指摘してくれるとしている。このことは,自 己評価ルーブリックを実施することで,教員は学生の理解度 や成長を可視化して把握することができる(大塚ら 2018), 教員の評価と学生の自己評価のズレから学生の自己評価能 力をとらえ,フィードバックしていくことも可能(齊藤ら 2017)などと関連している。これらは,教員が授業や教育課 程の有効性を捉え,改善していく必要性を示唆しており,教 員の教育技法の向上と密接に関連していると考えられる。 ここまで,本研究で選定した論文にみられたルーブリック を自己評価に活用した影響と,スティーブンスら(2014)が, ルーブリックを用いる理由として示した 6 点を比較した。そ の結果,多くの部分で関連している部分がみられた。これら のうち,1~3 点目からは,ルーブリックが単に評価の道具と してではなく,学生が学ぶ内容である学習材となる可能性を 改めてとらえることができる。これは,4 点目として示した 「教員が学生を理解する」ことは学生の学習状況を理解する 評価の道具としての役割を示していることに対して,「学生 が目標を理解する」,「学生を学習へと動機づける」,「自己評 価能力やライティングスキルといった資質・能力の向上」の 3 点は学生の学習をより効果的なものとする学習材としての 役割を示していると考えられる。もともとルーブリックは学 習成果の把握の具体的な方策の 1 つとして示されたもので はあるが(中央教育審議会 2012),今後,大学教育にルーブ リックを用いていく上では,学ぶ内容である学習材としてい かに活用していくかという視点が重要になってくると考え られる。 ところで,自己評価の影響としては,スティーブンスらが 指摘してきた 6 点のうち,「④他者とのコミュニケーション の活性化」に関する内容はみられなかった。これは,ルーブ リックを用いることで大学教員が TA をはじめとする学生の 教育に関わるスタッフとの間で,教育目標と意図を共有でき ることについて示すものである。本研究では,学生がルーブ リックを自己評価に活用した影響について検討を行ったた め,該当する論文が見当たらなかったためと考えられる。一 方,実習や演習では,複数の教員で指導に当たることも多く, 学生の自己評価をどのようにとらえるかといったスタッフ

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間の連携も重要な視点として挙げられる。実際に,本研究に おいてもルーブリックの活用状況を検討していく中で,複数 の教員で学生の指導を行う実習や演習での活用が多くみら れた。これは,ルーブリックを活用することで学生に育てた い資質・能力についての共有化を図っていたと考えられる。 最後に,ルーブリックを授業で活用した結果,課題は 3 点 に整理された。得られたこれらの 3 点に関して,濱名(2012) がルーブリック評価の課題として示した 4 点と比較を行っ た。 1 点目として挙げた「ルーブリック自体をどのようにより よいものにしていくか」は,「②ルーブリックを作成するだ けでは評価者間の誤差が完全には無くならず,継続的にワー クショップなどで評価者間の誤差を調整し続けることが必 要」と関わる内容である。ルーブリックの妥当性や信頼性を 高め,よりよいルーブリックを作成していくことに向けた課 題といえる。 2 点目として挙げた「ルーブリックをどのように活用する か」に関わる内容はみられなかった。これは,学習活動前に 学生がルーブリックについての理解を深め,活用できるよう にするためにどのように活用するか,学習後に学生へのフィ ードバックをどのように行うか,また,場合によっては個に 応じた目標設定をどのように行うかというルーブリックを 学習材としてどのように活用することが効果的かという視 点に関する課題であった。 3 点目として挙げた「対象とする授業や学生をいかに拡大 していくか」は,「①テスト等の定量的評価に比べると手間 がかかる」や「③共通ルーブリックの作成は基準間のレベル 設定などが難しく,誰もが作成できるわけではない」と関わ る内容である。大塚ら(2018)は,ルーブリックの結果の集 計の効率化を課題として示しており,それと合致するといえ る。それに加えて,ルーブリック作成の難しさが対象とする 授業を増やす上で,課題であるといえる。 本研究で選定した論文にみられたルーブリック活用の課 題と,濱名(2012)が示した 4 つの課題を比較した結果,「ど のようにルーブリック自体をよりよいものにしていくか」, 「対象とする授業や学生をいかに拡大していくか」の 2 点に ついては,関連している課題がみられた。一方で,本研究で 2 点目として挙げた「ルーブリックをどのように活用するか」 に関わる内容は濱名(2012)が示した 4 つの課題の中にはみ られず,本研究を通して示された課題と考えられる。これは, 授業実践を通して,ルーブリックを学習材としてどのように 活用するかという課題意識が表れたものであり,今後,大学 教育へのルーブリックの導入を進めていく上で,検討が必要 な課題と考えられる。 ところで,濱名(2012)が指摘した「④アセスメントプラ ンの中で,多元的なアセスメントの 1 方法として組み込んで いく」に関わる内容は,本研究で整理した中にはみられなか った。これは,本研究が自己評価を対象としたものであり, 学生を評価する道具としての視点からは触れられていなか ったためと考えられる。しかし,本来,ルーブリックは教員 による学生の学習状況を評価するための道具としての性質 をもつものである。また,本研究の中で,ルーブリックの自 己評価を通して,「教員が学生を理解する」ことにつながる ことも示唆されている。それらの点から,評価の道具として のルーブリックを考えた時に,他の評価方法との関連という 視点も大切なものといえる。 5.まとめと今後の展望 本研究を通じて,これまでの大学教育における学生による 自己評価へのルーブリックの活用に関する研究動向を概観 し,その活用状況と活用した結果にみられた影響や課題につ いて明らかにしてきた。本研究から得られた知見をもとに, 今後ますます大学教育で用いられることが予想されるルー ブリックを効果的に活用していくことが期待される。特に, ルーブリック活用の影響と課題を整理した結果,ルーブリッ クを評価の道具としてだけではなく,学習をより効果的なも のとする学習材として活用していくことへの必要性が示唆 された。提示の仕方,学生自身の評価への用い方,フィード バックの仕方など,ルーブリックの活用について検討してい くことが,学習材としてのルーブリックの可能性を広げてい くことにつながると考えられる。 一方,本研究の限界として次の 2 点があげられる。1 点目 は,本研究で対象とした論文は,CiNii で本文が表示される ものに限定したことである。本研究における選定条件では, 教育学部における研究がみられなかったが,対象とする範囲 を広げていくことで,ルーブリックの活用事例がみられる可 能性もある。 2 点目は,本研究で用いた Key Words(ルーブリック,自 己評価,学生)は,他の表現も可能な用語であることである。 例えば,ルーブリックは「評価」,自己評価は「学生による評 価」等として示されていることも考えられる。今回は,「ル ーブリック」,「自己評価」,「学生」という限定した Key Words の範囲における検索であった。以上の点を踏まえて,今後は, 選定の対象とする論文の条件を広げ,より広く検討していく ことが求められる。そして,得られた知見をもとに,ルーブ リックが大学教育のより多くの場面で活用されるための一 助となるよう,ルーブリックをより効果的に活用する方法に ついて整理していきたい。

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注 1) ルーブリック(rublic)という言葉には,元々「朱書き 題目」,「規定」,「《古》赤い,赤みがかった」,「朱書きす る」などの意味がある(小西ら 2001)。現在の教育現場 での採点には今でも赤ペンが用いられていることを考え ると,学習の評価方法の 1 つとされていることに何らかの 特別な意味合いも認められる。 教育現場で用いられているルーブリックについて,ステ ィーブンスら(2014)は「ある課題について,できるよう になってもらいたい特定の事柄を配置するための道具」, 松下ら(2016)は「学習者のパフォーマンスの質を評価す るために用いられる評価基準のこと」と定義している。ま た,中央教育審議会(2012)は「米国で開発された学修評 価の基準の作成方法であり,評価水準である『尺度』と, 尺度を満たした場合の『特徴の記述』で構成される」と定 義している。本研究では,スティーブンスらの定義に依拠 している。 引用・参考文献 安達一寿・星野祐子 2018 自主社会活動における評価方法の 検討と学生のコンピテンシー伸長の分析, 『十文字学園 女子大学紀要』, 48, 203-212. 中央教育審議会 2008 『学士課程教育の構築に向けて(答 申)』 中央教育審議会 2012 『新たな未来を築くための大学教育の 質的転換に向けて-生涯学び続け,主体的に考える力を 育成する大学へ-(答申)』 中央教育審議会 2018 『2040 年に向けた高等教育のグラン ドデザイン(答申)』 ダネル・スティーブンス,アントニア・レビ(佐藤浩章監訳, 井上敏憲,俣野秀典訳) 2014 『大学教員のためのルー ブリック評価入門』, 玉川大学出版部. 深山華織・岡本双美子・中村裕美子・松下由美子 2018 在宅 看護学実習における学生のルーブリック自己評価表を 用いた学習活動の効果, 『大阪府立大学看護学雑誌』, 24(1), 49-56. 濱名篤 2012 ルーブリックを活用したアセスメント, 『文 部科学省中央教育審議会高等学校教育学部会資料 6』 林康弘 2018 コンピュータ演習Ⅰにおける ICT 活用による 授業改善,『帝京平成大学紀要』, 29, 223-230. 本田直也 2017 ルーブリックを用いたピアレビュー方式に よるレポート指導法の設計, 『大手前大学論集』, 17, 149-168. 碇山恵子・木村尚仁 2017 学生の協働意識を引きだす学習者 主体のルーブリック作成と自己評価の試み, 『北海道科 学大学研究紀要』, 43, 35-41. 生田宴里・荒川千登世・山根加奈子・伊藤あゆみ・中川美和・ 横井和美・糸島陽子 2016 本学の成人クリティカルケア 実習における教育的介入のてがかりについての検討- ルーブリックを用いた学生と教員の評価の分析から, 『人間看護学研究』, 14, 47-52. 伊藤あゆみ・糸島陽子・中川美和・生田宴里・横井和美・荒 川千登世 2016 ルーブリックを活用したエンドライフ ケア実習評価と課題-学生評価と教員評価からの検討 -, 『人間看護学研究』, 14, 41-45. 貝谷敏子・菅原美樹・川村三希子・神島滋子・藤井瑞恵・工 藤京子・柏倉大作・村松真澄・小田和美・中村惠子 2017 看護演習科目へのルーブリック導入の効果・ルーブリッ ク評価の信頼性と妥当性の検討, 『札幌市立大学研究論 文集』, 11(1), 3-11. 片瀬拓弥・薮田由己子 2018 教育目標に対する学習成果の可 視化手法の提案,『清泉女学院短期大学研究紀要』, 36, 24-33. 小西友七・南出康世 2001 『ジーニアス英和大辞典』, 大修 館書店. 栗尾和佐子・河本順平・一色夏衣・村上大希・門脇弘季・西 川智絵・串畑太郎・安原智久・曽根知道 2018 屋根瓦式 教育を取り入れたピアサポート(先輩学生による実習支 援)プログラムの構築とその効果, 『薬学教育』, 2, 1-9. 栗田佳代子・日本教育研究イノベーションセンター 2017『イ ンタラクティブ・ティーチング―アクティブ・ラーニン グを促す授業づくり』, 河合出版. 松野純男・八軒浩子 2018 「薬学統計学」講義における Learning Management System を用いた自己評価ルーブ リックの有用性について, 『薬学教育』, 2, 1-8. 松下佳代・石井英真 2016 『アクティブラーニングの評価』, 東信堂. 宮本佳子・楠永敏惠・吉賀成子・重松義成・柊崎京子 2017 初学習段階における「介護実習記録」を課題とするルー ブリック評価の試作と活用, 『帝京科学大学紀要』, 13, 77-86. 宮崎誠・佐藤卓史・山田剛司・大桃善朗 2017a ルーブリッ クを用いた反転型授業による「化学・化学演習」-授業 効果に関する後ろ向き分析-, 『薬学教育』, 1, 1-5. 宮崎誠・佐藤卓史・山田剛司・大桃善朗 2017b ルーブリッ クを用いた反転型授業による「化学・化学演習」-学習 方略の評価-, 『薬学教育』, 1, 1-7.

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文部科学省高等教育局大学振興課大学改革推進室 2017『平 成 27 年度の大学における教育内容等の改革状況につい て(概要)』 長井栄子・髙木初子・木村峰子 2017 健康障害のある高齢者 対象の看護学実習における学生の自己評価-ルーブリ ック評価尺度使用の有無による自己評価の比較-, 『聖 徳大学』, 28, 127-133. 長峰伸治・成松美枝・髙橋佐和子 2018 本学養護教諭課程履 修学生のルーブリックによる自己評価-ルーブリック の作成と実施について-, 『聖隷クリストファー大学看 護学部紀要』, 26, 7-17. 西谷尚徳 2017 文章力養成のためのルーブリックの活用の 教育的意義の検討-授業実践から見る教育手法-, 『京 都大学高等教育研究』, 23, 25-35. 岡山加奈・荻あや子・高林範子・山口三重子・荻野哲也 2014 既存の基礎看護学実習評価表の課題とルーブリックを 用いた評価表の提案, 『岡山県立大学保健福祉学部紀 要』, 21, 9-16. 大塚みさ・三田薫・白尾美佳 2018 自己省察を促すための自 己評価ルーブリック導入の試み, 『実践女子大学短期大 学部紀要』, 39, 1-21. 斎藤有吾・小野和宏・松下佳代 2017 パフォーマンス評価に おける教員の評価と学生の自己評価・学生調査との関連, 『日本教育工学会論文誌』, 40(suppl.), 157-160. 鈴木香苗・中信利恵子・松本由恵・横山奈未・山下彰子・岡 田淳子・植田喜久子 2018 成人看護学実習における学生 のルーブリックの活用状況, 『日本赤十字広島看護大学 紀要』, 18, 11-17. 高崎千尋・佐藤嘉晃・岩寺信喜・種市梨紗・八若保孝 2017 小児歯科学臨床基礎実習に試行導入したルーブリック と振り返りに対する有効性の検討, 『小児歯科学雑誌』, 55(3), 364-374. 鶴間百合子・吉田幸子 2016 ポートフォリオを用いた看護統 合実習における学生の実習目的達成への影響, 『東都医 療大学紀要』, 6(1), 41-48. 山岡英孝・谷口進一・西誠・工藤知草・谷口哲也 2018 概念 問題を活用した深い学習の授業効果-ピア・インストラ クションを導入した微分積分学講義の実践-, 『工学教 育研究』, 26, 119-128. 横井和美・伊藤あゆみ・生田宴里・中川美和・糸島陽子・荒 川千登世・大門裕子 2017 成人看護学実習にルーブリッ ク評価を活用したことの有用性-学生自己評価と教員 評価との関連からの検討-, 『日本看護学教育学会誌』, 26(3), 13-24. 湯川恵子・木村尚仁・碇山恵子 2016 学びへのコミットメン トを引きだす学習者主体のルーブリック作成と自己評 価, 『国際経営フォーラム』, 27, 217-236.

Effects and Challenges of Using Rubrics for Self-Assessment in University Education

Yutaka HOSHI (Hokkaido University of Education)

Shigeki KOSHIKAWA (Hokkaido University of Education)

This study investigates the trend of using rubrics for self-assessment among students at the university level and sheds light on the effects and challenges in their implementation, both in terms of current status and outcomes.

We examined the effects of using rubrics in self-assessment, dividing them into the following groups: understanding objectives, motivation toward learning, improvement of qualities and abilities, and understanding students. We sorted the challenges into the following groups: rubric improvement, rubric utilization, and target expansion. Comparison with previous studies suggests the need to implement rubrics as both tools for assessment and as effective learning materials. For this reason, we believe that the use of rubrics in daily classwork and the study of rubrics themselves and their methods of use will help expand their potential as learning materials.

Keywords : learning materials, lessons, understanding objectives, motivation, qualities and abilities, understanding students

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