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食道表在癌の発育進展―逆追跡可能であった食道扁平上皮癌症例の臨床病理学的検討

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(1)昭和医会誌 第72巻 第 6 号〔 637-648 頁,2012 〕. 原  著. 食道表在癌の発育進展―逆追跡可能であった 食道扁平上皮癌症例の臨床病理学的検討 東京都がん検診センター消化器内科. 小. 田. 丈. 二. 昭和大学藤が丘病院消化器内科. 高. 橋. 寛. 要約:病理組織学的に食道 SM 癌と診断された 53 例を対象に,食道表在癌の発育進展につい て検討を行った.はじめに,過去 2 年以内に検査歴を有する食道扁平上皮癌 11 例について, 過去の X 線像または内視鏡像を見直し,粘膜癌から粘膜下層癌への発育進展形式および発育 速度について検討を行い,それらを推定したところ,大きく 3 型(パターン A,B,C)に分 類することが出来た.パターン A は上皮内進展を伴わずに深部浸潤するタイプ,パターン B は上皮内進展を有し,側方への発育を伴うタイプ,パターン C は 0 ︲Ⅱb 型から 0 ︲Ⅰ型の隆起 型 SM 癌となるタイプである.パターン B の中でも,0 ︲Ⅱc 型病変内で深部浸潤よりも側方 発育傾向が強く,発育速度も比較的緩徐であった症例をパターン B︲1,0 ︲Ⅱc 型陥凹内部で SM 浸潤による 0 ︲Ⅰ型隆起を形成した症例をパターン B︲2,0 ︲Ⅱc 型陥凹内部でさらに深い陥 凹を形成しながら SM 浸潤した症例をパターン B︲3 として細分類したところ,パターン B︲2 はより深部浸潤傾向が強く,短期間で SM に塊状浸潤を伴い,深部方向への発育進展速度が速 くなっていた. 発育速度を比較した場合,パターン A,C の発育進展速度は速く,パターン B︲1 は最も遅いと推測され,パターン B︲2 はその中間に位置するものと思われた.パターン B︲3 は概ねパターン B︲2 に準ずるものと推定した.その発育進展形式や速度に影響する要因 として,浸潤部位における中~低分化型扁平上皮癌という組織型が関連している可能性が考え られた.さらに,残りの 42 例の SM 癌をこのパターンに当てはめて検討したところ,パター ン B︲2 が最も多く,次いでパターン A という結果であった. キーワード:食道表在癌,食道扁平上皮癌,発育進展,遡及的検討,組織型. 食道癌の発育進展速度は一般的には胃癌,大腸癌. 研究方法. に比べて速い1,2)と考えられているが,実際にはそ の実態は不明な点が多い.今回,最終病理診断が粘. 1994 年 4 月から 2008 年 3 月までに東京都がん検. 膜下層(pSM)に浸潤していた食道扁平上皮癌 53. 診センターで診断,治療が行われ,病理組織学的検. 例を対象に,食道表在癌の発育進展について検討を. 討 が 十 分 可 能 な 食 道 扁 平 上 皮 癌 の う ち, 深 達 度. 行った.まず,過去 2 年以内に X 線検診や上部消. pSM-MP1 であった 53 例を対象とした.MP1 の 3. 化管内視鏡検査歴を有する症例のうち retrospec-. 例は MP にわずかに浸潤する程度であったため本. tive に推定して粘膜癌であったと思われる症例を抽. 検討に加えた.食道粘膜癌から粘膜下層癌への発育. 出し,食道粘膜癌から粘膜下層癌への発育進展,特. 進展形式,発育速度に関する検討を行うために,過. に発育速度と組織型との関係について検討を行っ. 去 2 年以内に X 線や内視鏡検査歴を有し,retro-. た.さらに対象 53 例の食道 SM 癌を上述の検討結. spective に検討可能であった 11 症例について発育. 果に照らし合わせながら,食道表在癌の発育進展に. 形式および発育速度を推測し,それをもとに計 53. ついて検討を行った.なお,本検討は当施設におけ. 例の食道 SM 癌を検討し,食道表在癌の発育進展に. る倫理委員会で承認を得られたものである.. ついて調べた.逆追跡可能であった 11 例の内訳は, 637.

(2) 小 田 丈 二・ほか. X 線検査で逆追跡可能であった 7 例および内視鏡検. 結. 査で逆追跡可能であった 4 例である.11 例中 10 例. 果. は,過去の検査時点では病変と認識されていなかっ. 食道 SM 癌 53 例の男女比は 11:2,平均年齢は. た.1 例(後述の症例⑧)のみ,治療までの期間が. 69.8 歳(47 ~ 87 歳)であり,食道表在型扁平上皮. あいたために経過観察出来た症例である.発見時の. 癌に対する諸家の報告 7,8)と比較し,やや女性が多. 画像と比較しながら過去画像を見直し,その時の X. い傾向にあったが,年齢分布は同等であった.逆追. 線像および内視鏡像から臨床的深達度を推定. し,. 3︲6). 跡可能であった 11 例の検討から,発育進展形式に. 深達度診断からみた発育進展速度および病理組織学. 関して 3 つのパターンに分類することができた.ま. 的関連性を類推した.X 線検査逆追跡症例 7 例およ. た,最終病理診断結果から,主たる組織型の分布に. び内視鏡検査逆追跡症例 4 例の内訳を Table 1 に示. ついても図内(Fig. 3︲1,5︲1,6︲1,8︲1,9︲1)に. す.発見時の肉眼型から,それぞれの発育パターン. 示した.. を Fig. 1︲1,1︲2,1︲3 に示す.これらの病変の過去. 1)パターン A. 画像から推定される肉眼形態は,いずれも 0 ︲Ⅱb. パターン A(Fig. 3︲1)は症例②③および⑩であ. または 0 ︲Ⅱc 型の粘膜癌と診断した.これら 11 例. るが,形態的には上皮内進展を伴わずに深部浸潤す. の発育パターンを整理すると,Fig. 2 に示すように. るタイプである.12 ~ 16 か月の経過で SM に浸潤. 大きく 3 型に分類することが可能であった.. していた.症例②⑩は陥凹型病変が SM 浸潤したた. パターン A:形態的には上皮内進展を伴わずに深. めに隆起を形成する中~低分化型扁平上皮癌が主体. 部浸潤するタイプ.. の病変であった.症例⑩の 1 年前の内視鏡像と発見. パターン B:形態的には上皮内進展を有し,側方. 時の内視鏡像を比較すると(Fig. 3︲2),1 年前は軽. への発育を伴うタイプ.. 度発赤した陥凹性病変であり,LPM~MM 程度の深. パターン C:0 ︲Ⅱb 型から 0 ︲Ⅰ型の隆起型 SM 癌. 達度と推定される.発見時は発赤調の隆起性病変と. となるタイプ.. して認識され,大きさもわずかに増大していた.切. 対象 53 例の食道 SM 癌をこのパターン分類に当て. 除標本のルーペ像(Fig. 3︲3)では LPM 以深に中. はめ,食道表在癌の発育進展に関する検討を行った.. 分化型扁平上皮癌の塊状浸潤を認め,それにより隆 起を形成し,深達度は SM2 であった.一方症例③. Table 1 Retrospective follow-up 11cases of esophageal carcinomas Case Sex. age. pathological diagnosis. Histology. retrospective data. tumor type. depth. 1. M. 64. 0 ︲Ⅱc +Ⅲ SM1. well. X-ray 10Mo. 0 ︲Ⅱc. LPM-MM. 2. M. 62. 0 ︲Ⅰs SM3. por. X-ray 12Mo. 0 ︲Ⅱa+Ⅱc. MM(-SM1). 3. M. 62. 0 ︲Ⅲ MP1. por >>mod. X-ray 16Mo. 0 ︲Ⅱc. LPM-MM. 4. M. 69. 0 ︲Ⅱc SM1. mod. X-ray 22Mo. 0 ︲Ⅱc. LPM-MM. 5. M. 67. 0 ︲Ⅱc +“0 ︲Ⅰs”SM3. mod, well >>por. X-ray 24Mo. 0 ︲Ⅱc. LPM-MM. 6. M. 70. 0 ︲Ⅱa +Ⅱc +“0 ︲Ⅰs”SM1. well. X-ray 24Mo. 0 ︲Ⅱc. EP-LPM. 7. M. 59. 0 ︲Ⅱc SM3. mod. X-ray 24Mo. 0 ︲Ⅱc. LPM-MM. 8. M. 62. 0 ︲Ⅱc +“0 ︲Ⅰs”SM3. por > mod. Endoscopy 4Mo. 0 ︲Ⅱc. MM(-SM1). 9. M. 55. 0 ︲Ⅱc +“0 ︲Ⅰs”SM2. well > por, mod. Endoscopy 8Mo. 0 ︲Ⅱb+Ⅱc. MM(-SM1). 10. M. 73. 0 ︲Ⅱa +Ⅱc SM2. mod >>por. Endoscopy 12Mo. 0 ︲Ⅱb → 0 ︲Ⅱc. EP → LPM-MM. 11. M. 79. 0 ︲Ⅰs SM2. mod >>well, por. Endoscopy 12Mo. 0 ︲Ⅱb. EP-LPM. 638.

(3) 食道表在癌の発育進展. 1 Growth progression of superficial carcinomas of the esophagus.(case1︲3). 2 Growth progression of superficial carcinomas of the esophagus.(case4︲7). 3 Growth progression of superficial carcinomas of the esophagus.(case8︲11) Fig. 1. Fig. 2 Progression pattern of superficial carcinomas of the esophagus.. 639.

(4) 小 田 丈 二・ほか. 2 Case ⑩ Endoscopic pictures. 1 pattern A. 3 Case ⑩ Microscopic picture Fig. 3. Fig. 4 Case ③ X-ray pictures and resected specimen. は陥凹型のまま発育し SM 浸潤する低分化型扁平上. 相当し,形態的には上皮内進展を有し,側方への発. 皮癌主体の病変であった.症例③の 16 か月前の間. 育を伴うタイプである.症例④⑦のように約 2 年の. 接 X 線写真(Fig. 4 左)では,バリウムが厚目では. 経過で陥凹型病変が側方に発育しながらわずかに一. あるが,明らかな粘膜の凹凸不整を認めず,LPM~. 部で SM に浸潤する病変で,0 ︲Ⅱc 内に明らかな隆. MM 程度の深達度とした.発見時(Fig. 4 中)は 0 ︲. 起成分を認めないものをパターン B︲1(Fig. 5︲1). Ⅲ型の病変として描出されており,深達度は低分化. とした.症例④の発見 22 か月前の直接 X 線像(Fig.. 型扁平上皮癌を主体に SM 浸潤した病変であった.. 5︲2 左)ではわずかに粘膜不整を伴う 0 ︲Ⅱc 型の病. 2)パターン B. 変で,深達度 LPM~MM と診断した.発見時(Fig.. パターン B は最も多く,症例①④⑤⑥⑦⑧⑨が. 5︲2 右)は 22 か月前と比較して著明な変化を認め 640.

(5) 食道表在癌の発育進展. 2 Case ④ X-ray pictures. 1 pattern B(B-1). 3 Case ④ Fig. 5. ておらず,切除標本の構築図(Fig. 5︲3)で示すよ. 0 ︲Ⅰ型の隆起を形成していた.また,症例①のよ. うに SM 浸潤部は数カ所でわずかに浸潤する程度で. うに陥凹の内部でさらに深い陥凹を形成しながら. あった.一方,症例⑤⑥⑧⑨のように陥凹型の内部. SM 浸潤する病変をパターン B︲3(Fig. 8︲1)とした.. で SM 浸潤し,それに伴い 0 ︲Ⅰ型の隆起を形成す. パターン B︲3 は 1 例のみであるが,深達度はわず. る病変をパターン B︲2(Fig. 6︲1)とした.症例⑧. かに SM1 までの浸潤に留まった高分化型扁平上皮. の 4 か月前との内視鏡像の比較(Fig. 6︲2)を見る. 癌であった.. と,4 か月前の内視鏡像では 0 ︲Ⅱc 型の病変であっ. 3)パターン C. たものが,病変の肛門側右壁側で粘膜下腫瘍様の隆. パターン C(Fig. 9︲1)は症例⑪ 1 例のみであるが,. 起を形成していた.切除標本ルーペ像および病理組. 0 ︲Ⅱb 型が 1 年の経過で 0 ︲Ⅰ型の隆起型 SM 癌と. 織像(Fig. 6︲3)では,低分化型扁平上皮癌の浸潤. なった症例である.内視鏡像(Fig. 9︲2)は 2.5 年前,. に伴い 0︲Ⅰ型の隆起を形成していた.また症例⑨. 2 年前,1 年前に施行しており,いずれもヨード染. の発見 8 か月前と発見時の内視鏡を比較(Fig. 7︲1). 色像では明らかな異常として認識困難であり,発見. すると,8 か月前の内視鏡像では明らかな陥凹や隆. 時には中分化型扁平上皮癌主体の 0 ︲Ⅰ型 SM 癌と. 起の形成を認めず 0 ︲Ⅱb(+Ⅱc)型の病変であり,. なっていた.. 発見時には 0 ︲Ⅱc 内部に 0 ︲Ⅰ型の隆起を形成して. これら 3 つのパターンに,残りの 42 例の食道 SM. いた.切除標本ルーペ像,病理組織像(Fig. 7︲2). 癌を照らし合わせたところ,Table 2 に示すように,. を見ると,中~低分化型扁平上皮癌の浸潤を伴う. パターン A は 53 例中 12 例 22.6%,パターン B は 641.

(6) 小 田 丈 二・ほか. 2 Case ⑧ Endoscopic pictures. 1 pattern B(B-2). 3 Microscopic picture Fig. 6. 40 例 75.5%,パターン C は 1 例 1.9%となった.パ. 考. ターン B を細分類すると,パターン B︲1 は 8 例,パ. 察. ターン B︲2 は 29 例,パターン B︲3 は 3 例となり,. 食道癌の発育進展に関し,一般的には胃癌や大腸. パターン B︲2 が最も多いという結果であった.また,. 癌に比べ発育速度が速いと認識されている1,2)が,. パターン A における SM 浸潤部の主たる組織型は低. 実際には病変の発育段階の程度により大きな差があ. 分化型が 75.0%,中分化型 25.0%であり,上皮内進. ることが報告 9)されており,特に粘膜癌の EP から. 展を伴わずに浸潤するのは低~中分化型主体の病変. LPM への発育は緩徐であるとされている.林ら10),. に特徴的と思われた.また,パターン B の組織型で. 細井ら11),長濱ら12)は,数年間は徐々に大きさを増. も中分化型から低分化型の占める割合が多く,粘膜. していくものの,さほど深部浸潤傾向を有さない症. 下層への発育進展に大きく関与している可能性が示. 例を報告している.一方,幕内ら13)は,浸潤が MM. された.. から SM1 に及ぶと悪性度を増して発育が速くなり, 様々な肉眼形態の変化を伴いながら急速に SM2, 642.

(7) 食道表在癌の発育進展. 1 Case ⑨ Endoscopic pictures. 2 Fig. 7. SM3 の 病 変 へ と 進 展 す る も の と 推 測 し て い る.. pective に過去の画像を見直し発育速度を推定したも. Chino ら も癌が粘膜筋板に達する頃から増殖能が. のであり,過去画像で病変が認識されるのは一般的. 増加すると述べており,Kawamura ら15)は血管新. には LPM 以深の病変が主体 18)と思われるため,こ. 生の観点からも粘膜筋板に浸潤するあたりから発育. の段階から 2 年以内に粘膜下層以深への発育を推測. 速度が増加すると述べ,Kumagai ら16),Kitadai ら17). したものである.そこから推定される発育進展パ. 14). は粘膜下層に癌が浸潤して新生血管(いわゆる腫瘍. ターンは発育形式において大きく 3 型に分類され. 血管)が出現する(vascular stage)とし,発育進展. た.それぞれの症例をみてみると,パターン A(症. へ の 影 響 を 述 べ て い る. 今 回 の 検 討 は,retros-. 例②③⑩)は 0 ︲Ⅱb の初期病巣から 0 ︲Ⅱc 型,そ 643.

(8) 小 田 丈 二・ほか. Fig. 8 pattern B(B-3). 1 pattern C. 2 Case ⑪ Endoscopic pictures Fig. 9. 644.

(9) 食道表在癌の発育進展 Table 2 Clinicopathological features of 53 cases with esophageal carcinomas pattern A. Case. pattern B pattern B︲1. pattern B︲2. pattern B︲3. 40(75.5%). 12(22.6%). 8. 29. 3. pattern C. 1(1.9%). Depth SM1. 0. 4(50.0%).  2(6.9%). 1(33.3%). 0. SM2. 3(25.0%). 3(37.5%). 15(51.7%). 2(66.6%). 1. SM3. 7(58.3%). 1(12.5%). 11(37.9%). 0. 0. MP1. 2(16.7%).  1(3.4%). Hisology well. 0. 0.  6(20.8%). 1(33.3%). 0. mod.. 3(25.0%). 6(75.0%). 18(62.1%). 2(66.6%). 1. por.. 9(75.0%). 2(25.0%).  5(17.2%). 0. 0. の後上皮内進展を伴わずに粘膜下層へ浸潤しながら. パターン B(症例①④⑤⑥⑦⑧⑨)のうち,パ. 隆起を形成し,症例②⑩では隆起の形態を保ちなが. ターン B︲1(症例④⑦)は初期病巣から 0 ︲Ⅱc 型,. ら,症例③では表面に陥凹(0 ︲Ⅱa +Ⅱc 型)また. その後側方にも発育しながら陥凹の内部で SM 浸潤. は潰瘍化(0 ︲Ⅲ型または 2 型)したことにより形. していた.これらは約 2 年の経過を有し,組織型は. 態に違いが生じたものと思われる.門馬ら は,0 ︲. 中分化型扁平上皮癌ではあるが SM 浸潤量はパター. Ⅱc 型が 0 ︲Ⅲ型に発育した 2 例を報告しているが,. ン A ほど多くなく,深部浸潤よりも側方発育傾向. 19). これらは小病変の段階から深部浸潤傾向を持ち,. が強く,比較的緩徐に発育するものと思われた.一. SM 癌に発育浸潤する過程で表面が潰瘍化し,0 ︲Ⅲ. 方,パターン B︲2(症例⑤⑥⑧⑨)は陥凹内部で. 型に変化したものと思われる.八尾ら は,垂直方. SM 浸潤による 0 ︲Ⅰ型隆起を形成しており,この. 向に浸潤発育していく中で,癌が潰瘍化するものは. 発育形態の違いは隆起成分の組織型によると思われ. 20). 0 ︲Ⅲ型(あるいは 2 型)に,上皮下主体に増殖する. る.症例⑤⑥は症例④⑦に比べ,より深部浸潤傾向. ものは 0 ︲Ⅰ型になると推測しており,上記のパター. が強く,また症例⑧は 4 か月,症例⑨では 8 か月と. ン A に相当するものと思われた.組織学的にみる. さらに短期間で SM に塊状に浸潤していたことか. と,②③⑩は低分化型から中分化型主体の病変で,. ら,やはり中~低分化型扁平上皮癌の混在で深部方. SM 深部浸潤傾向が強い症例であった.上述の門馬. 向への発育進展が速くなるものと思われた.幕内. ら19)の症例も低分化型扁平上皮癌であり,短期間に. ら21)も 0 ︲Ⅱc 型低分化型扁平上皮癌,MM,INFc. 形態変化しながら深部浸潤していたとし,その発育. の症例で,脈管侵襲やリンパ節転移を伴い急速に深. 速度の速さを述べている.今回の検討からもパター. く進行する可能性を述べている.パターン B︲1 も. ンA の主たる組織型は低分化型が 75%,中分化型. SM 浸潤に伴い,低~中分化型扁平上皮癌の増殖の. が 25%を占め,上皮内進展を伴わずに浸潤する発. 程度によりパターン B︲2 となっていくものと思わ. 育の速い病変であり,SM3︲MP1 の割合も 75%と最. れる.また,安藤ら22),高木ら23)も報告しているよ. も高く,このことからもパターンA はより SM 深部. うに,一般的に遭遇する 0 ︲Ⅱc + 0 ︲Ⅰ型 SM 癌は. 浸潤傾向が強く,発育速度が速いと思われた.. このパターン B︲2 に相当するものであり,今回の 645.

(10) 小 田 丈 二・ほか. 検討からもこの発育形式が最も多いという結果で. 文  献. あった.パターン B︲3(症例①)は高分化型扁平上. 1)尾辻真人,政信太郎,西俣寛人,ほか:Retrospective に観察しえた食道進行癌の 2 例.胃と 腸 23:1264︲1268,1988. 2)長野正裕,池田 卓,豊原時秋,ほか:Retrospective に経過観察可能であった食道癌の 3 例. 胃と腸 23:1243︲1248,1988. 3)細井董三,入口陽介,大浦通久,ほか:食道癌 の深達度診断 二重造影像からみた深達度診断. 胃と腸 36:283︲294,2001. 4)小田丈二,入口陽介,水谷 勝,ほか:食道表 在癌の X 線学的深達度診断 X 線造影像にみら れる側面変形による深達度亜分類診断の試み. 胃と腸 45:1451︲1466,2010. 5)島田英雄,幕内博康,小澤壯治,ほか:食道表 在癌の深達度診断 通常観察の立場から.胃と 腸 45:1467︲1481,2010. 6)門馬久美子,吉田 操,藤原純子,ほか:食道 表在癌の深達度診断 通常観察と色素内視鏡. 胃と腸 46:650︲663,2011. 7)Kanamoto A, Yamaguchi H, Nakanishi Y, et al : Clinicopathological study of multiple superficial oesophageal carcinoma. Br J Surg 87:1712︲ 1715, 2000. 8)Tachibana M, Hirahara N, Kinugasa S, et al : Clinicopathologic features of superficial esophageal cancer : results of consecutive 100 patients. Ann Surg Oncol 15:104︲116,2008. 9)西沢 護,野本一夫,細井董三,ほか:食道癌 の 発 育 ・ 進 展 prospective and retrospective study.胃と腸 23:1229︲1237,1988. 10)林 恒男,武雄康悦,今里雅之,ほか:内視鏡 的に 8 年 4 か月間経過観察しえた食道表在癌の 1 例.胃と腸 30:1357︲1363,1995. 11)細井董三,山村彰彦,岡田利邦,ほか:長期間逆 追 跡 し え た 食 道 表 在 癌 の 2 例. 胃 と 腸 30: 1372︲1378,1995. 12)長浜隆司,北野伸浩,松下郁男,ほか:4 年 10 か月間内視鏡的に経過観察をしえた食道粘膜癌 の 1 例.胃と腸 29:951︲955,1994. 13)幕内博康,神津照雄,吉田 操,ほか:食道表 在癌の発育進展 主題症例をみて.胃と腸 30: 1418︲1432,1995. 14)Chino O, Makuuchi H, Shimada H, et al : Assessment of the proliferative activity of superficial esophageal carcinoma using MIB-1 immunostaining for the Ki-67 antigen. J Surg Oncol 67: 18︲24, 1998. 15)Kawamura T, Goseki N, Koike M, et al : Acceleration of proliferative activity of esophageal squamous cell carcinoma with invasion beyond the mucosa : immunohistochemical analysis of Ki-67 and p53 antigen in relation to histopathlogic findings. Cancer 77:843︲849, 1996.. 皮癌で,SM 浸潤はわずかに SM1 に留まる 1 例の みであり,決して発育が速いとは言えない.SM 癌 53 例中このパターンは 3 例存在し,発育形式とし てもそう多いものとは言えないようである.また深 達度 SM2 の 2 例は中分化型であり,SM 深部浸潤 と組織型との関連性が考えられた. パターン C は 1 例しか経験していないが,0 ︲Ⅱb 型から 1 年の経過で中分化型扁平上皮癌主体の 0 ︲ Ⅰ型 SM 癌となった症例であり,山田ら24)の症例の ように基底層型の 0 ︲Ⅱb 型から 0 ︲Ⅱc 型を経ずに 0 ︲Ⅱa 型または 0 ︲Ⅰ型に発育する経路が少数では あるが存在するものと思われた. 食道癌の発育進展に関して,一般的には,従来か ら指摘されているように13,20,21)その初期病巣は基底 層型の 0 ︲Ⅱb 型であり,その多くは表面に癌が露 出しびらん化するために 0 ︲Ⅱc 型の粘膜癌の形態 となる.一方粘膜下層癌では 0 ︲Ⅰ型を含む混合型 が多くなり,加藤ら25)は 51 例の SM 癌のうち 30 例, 約 60%が 0 ︲Ⅰ型であったと述べている.胃癌や大 腸癌と異なり,粘膜癌から粘膜下層癌になると著し く形態変化するのは食道癌の特徴と思われ,さらに は粘膜下層への浸潤が中~低分化型扁平上皮癌であ る場合,発育速度も増し,その傾向はより著しくな るものと推測された.今回の検討から考えられる発 育進展速度は,パターン A,C は速く,パターン B︲1 (症例④⑦)は最も遅く,パターン B︲2(症例⑤⑥⑧ ⑨)はその中程に位置するものと思われ,最も多く見 られる発育形式であった.パターン B︲3(症例①)は 10 か月の経過ではあるが,SM 浸潤も SM1 とわずか であり,決して発育が速いとは言えず,概ねパターン B︲2 に準ずるものと思われた. 今回の発育速度に関する検討は,2 年以内の経過 で pSM 以深に浸潤した食道癌を対象としたもので あり,症例数も決して多いとは言えず,また過去画 像の見直し診断であるため信頼度も高いとは言えな い.しかしこれは食道扁平上皮癌の症例数からする とやむを得ないものと考える.今後は,治療拒否例 の経過観察など,より信頼度の高い prospective に 検討した症例も蓄積し解析する必要がある.. 646.

(11) 食道表在癌の発育進展 16)Kumagai Y, Toi M, Kawada K, et al : Angiogenesis in superficial esophageal squamous cell carcinoma : magnifying endoscopic observation and molecular analysis. Dig Endosc 22:259︲267, 2010. 17)Kitadai Y, Onogawa S, Kuwai T, et al : Angiogenic switch occurs during the precancerous stage of human esophageal squamous cell carcinoma. Oncol Rep 11:315︲319, 2004. 18)細井董三,中橋英太,入口陽介,ほか:X 線診 断の立場からみた食道癌の発育進展 初期病巣 から粘膜下層癌へ.胃と腸 35:511︲525,2000. 19)門馬久美子,吉田 操,山田義也,ほか:短期 間に 0 ︲Ⅱc 型から 0 ︲Ⅲ型に発育した食道表在癌 の 2 例.胃と腸 30:1397︲1402,1995. 20)八尾隆史,平川克哉,大屋正文,ほか:食道癌の 組織構築と発育進展様式の関連 upward,downward,lateral growth を 中 心 に. 胃 と 腸 35:. 495︲502,2000. 21)幕内博康,島田英雄,千野 修,ほか:食道癌 の初期病巣と発育進展 内視鏡の立場から.胃 と腸 35:527︲539,2000. 22)安藤伸浩,丹羽康正,後藤秀実,ほか:粘膜内 癌から進行癌への発育進展が内視鏡的に観察さ れた食道癌の 1 例.胃と腸 35:579︲582,2000. 23)高木靖寛,松井敏幸,八尾恒良,ほか:遡及的 検討を含む 5 年 6 か月の内視鏡的経過観察で表 在癌から進行癌に進展した食道扁平上皮癌の 1 例.胃と腸 35:597︲600,2000. 24)山田義也,吉田 操,門馬久美子,ほか:長期 間にわたり経過観察しえた陥凹を伴う隆起型食 道表在癌の 2 例.胃と腸 30:1391︲1396,1995. 25)加 藤 久 人,斉 藤 彰 一,浜 本 順 博,ほか:0 ︲Ⅱc (sm)型から急速に形の変化した 0 ︲Ⅰ+Ⅱc 型食 道表在癌の 1 例.胃と腸 30:1403︲1407,1995.. 647.

(12) 小 田 丈 二・ほか. GROWTH PROGRESSION OF SUPERFICIAL CARCINOMAS OF THE ESOPHAGUS FROM MUCOSAL CARCINOMA TO SUBMUCOSAL CARCINOMA, CLINICOPATHOLOGICAL STUDY OF RETROSPECTIVE FOLLOW-UP CASES OF SQUAMOUS CELL CARCINOMAS OF THE ESOPHAGUS JOHJI ODA Department of Gastroenterology, Tokyo Metropolitan Cancer Detection Center. HIROSHI TAKAHASHI Department of Medicine, Division of Gastroenterology, Showa University Fujigaoka Hospital. Abstract   Few reports discuss the growth progress of superficial carcinomas of the esophagus and numerous questions remain, thus we evaluated the carcinoma growth progression in 53 cases of submucosal carcinomas of the esophagus. Regarding growth form and speed, we examined 11 cases with an inspection history within the past two years. The growth form could be roughly classified into 3 types : patterns A, B(B-1, B-2, B-3), and C. The 53 cases of submucosal carcinomas of the esophagus were classified into these 3 types; most patterns were B-2 and, then pattern A. As for growth speed, it was surmised that patterns A and C were fast, and pattern B-1 was the slowest, and patterns B-2 and B-3 in the middle. In connection with histological type, there were many cases from which poorly differentiated type of squamous cell carcinoma permeates deeply into submucosal layer in pattern A. Pattern B was also to have a high rate of poorly to moderately differentiated type of squamous cell carcinoma, and it participates in growth progression into the submucosal layer. Key words : superficial carcinomas of the esophagus, squamous cell carcinomas of the esophagus, growth progression, retrospective study, histological type 〔受付:9 月 26 日,受理:11 月 22 日,2012〕. 648.

(13)

Table 1 Retrospective follow-up 11cases of esophageal carcinomas
Fig. 2 Progression pattern of superficial carcinomas of the esophagus.
Fig. 4 Case ③ X-ray pictures and resected specimen
Fig. 8 pattern B(B-3)

参照

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