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中学校進学前後の女子生徒の心理状態と対処行動に関する質的調査 ―3か月後に実施した半構造化インタビューの分析―

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Ⅰ はじめに 小学校から中学校への進学に伴って、部活動参加や新 たな友人関係、教科担任制や、学習難易度の増加、部活 動や勉強の増加による睡眠時間の減少、思春期の生理的 変化等など、様々な生活環境や身体的な変容が生じる。 この年代は、児童期から青年期への移行期でもあり、自 我の目覚めなど精神発達の変化も加わる。中学進学後 に、こうした環境や心身の変化がストレッサーとなり、 ストレス反応が起こりやすいと指摘されている。例えば 松原ら1) は、小学6年生から中学1年生にかけて抑うつ 症状が強まると報告している。不登校状態には、こうし たストレス反応も関係しており2)、不登校の生徒数が中 学校進学後に増加することも示されている3) 。小泉4) は、 この時期を我が国ほとんどすべての子どもが経験する重 大な環境移行事態と位置づけ、教育上重要な問題である と指摘している。 一方で子供たちは小学校から中学校の移行状況を、肯 定的に認識していたという都筑ら5) の報告がある。この 意識調査によると、中学校への不安と期待を同時に抱く ことは、中学校生活を積極的・意欲的に過ごす原動力の 一部分になっていたという。Berndtら6) の調査結果で も、中学校への移行は肯定的にとらえられている。事 実、国立教育政策研究所7) の小学校6年生への中学進学 に関する不安感、およびその後中学校1年生3月までの 欠席状況との関連調査では、中学校進学の不安感が原因 で不登校にいたるとは結論づけられなかった。以上よ り、中学校進学には様々なストレスはあるものの、それ を肯定的に受けとめている生徒も多く存在する可能性が ある。 これらの先行研究から、中学校進学の前後に子供たち が大きな環境や心身の変化を体験することは確かであ る。こうした体験に伴う心理状態を子供たちの語りから

中学校進学前後の女子生徒の心理状態と対処行動に関する質的調査

―3か月後に実施した半構造化インタビューの分析―

北村恵美子

高崎健康福祉大学大学院健康福祉学研究科保健福祉学専攻博士後期課程

Qualitative study on psychological conditions and coping behaviors of

first grade female students in junior high school

-Analysis of semi-structured interviews conducted at a three-months follow up

Emiko Kitamura

抄録

本研究では、中学校進学前後で環境や心身の変化を体験する子供の心理状態とストレス対処行動を明らかにするた め、中学校進学3か月後の女子生徒に個別面接を行い、進学前後の心理状態およびプレッシャーや問題への対処につ いて質的記述的に検討した。進学前の心理状態として、【中学校生活への関心や期待】、【新しい関係性への期待と不 安の混在】、【中学校進学にむけた不安や心配】、【期待のもてない中学校への進学】がカテゴリー化された。進学後の 対処行動として、【他者へ相談やかかわることで対処する】、【自分なりに対処する】が示され、3か月後の心理状態は 【中学校生活の楽しさ、充実感、安心感】、【中学校進学に伴う不安、プレッシャー、苛立ちの実感】、【消極的な所属 感】に変容した。進学後3か月間で、期待と不安の入り混じった心理状態は、肯定的な楽しさや充実感と、否定的な プレッシャーや苛立ちに変化した可能性が示唆された。生徒達は進学後のストレスに対して他者とのかかわりや自己 完結的な方法で対処していることも示され、こうした対処により心理状態が肯定的に変化する可能性も示唆された。 キーワード:心理状態、対処行動、半構造化面接、中学校1年女子生徒

Key words:psychological condition, coping, semi-structured interview, first grade female students in junior high school

資料

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具体的に描写し、この時期の心理ストレスを明らかにす ることは、子供の心理発達支援に大変重要なテーマであ ると考える。南ら8) は、中学校進学時期の子供たちに対 して、予期不安の受け止め方の違いに応じた心理援助が 必要であると述べている。この時期の学校適応感に関し て、環境や心身の変化を子供たちがどのように意識して いるか、期待・不安尺度4) や中学校生活予期不安尺度9) 等 を用いた横断的研究はあるが、小学校卒業間近から中学 校進学間もない時期の子供の心理状態について個別に実 際の語りをもとに分析した調査研究は少ない。こうした 子供たちの心理状態とその変容、また生徒達のストレス 対処行動を明らかにすることで中学校生活をスムーズに 適応していくための具体的な援助方法を知る一助となる と考える。 そこで、本調査では中学校進学前後で環境や心身の変 化を体験する子供の心理状態の変容とストレス対処行動 を明らかにするため、中学校進学3か月後の生徒に個別 面接を行い、進学前後の心理状態およびプレッシャーや 問題への対処について質的記述的に検討した。 Ⅱ 方法 1 面接対象者 関東地方にある人口約11万のA市中心地のB中学校1 年女子生徒7名を面接対象とした。なおこの中学校の全 校生徒は、260名であり、全国的には中規模校である。 著者が、上記学校長と中学校1年生担当教諭に調査の 説明と協力依頼を行ったうえで、担任教諭が中学1年生 各クラスで本調査の詳しい案内を行った。調査協力の意 思を示した生徒本人に対して、研究者があらためて直接 面談し、文書で説明を行った。その保護者からも文書で 調査協力への同意が得られた生徒を、面接調査対象と した。 2 調査内容 中学校進学前後の心理状態とプレッシャーや問題への 対処について、子供たちの語りを質的記述的に分析する ため、2019年7月にインタビューガイドを用いた半構造 化面接を実施した。 インタビュー内容は、①「中学校進学前に中学校へ 行ったら、『こういうことに期待している』『こういうこ とが楽しみ』と思うようなことはありましたか。あれば どんなことでしたか」、②「中学校進学前に中学校へ行っ たら、『こういうことが不安』『こういうことが心配』と 思うようなことはありましたか。あればどんなことでし たか」、③「中学校に進学にして、進学前に『期待して いる』『楽しみ』と思っていたことは、期待していた通 りでしたか、それとも違いましたか。その時どのように 感じましたか」、④「中学校に進学して、進学前に『不 安』『心配』と思っていたことは、心配していた通りで したか、それとも違いましたか。その時どのように感じ ましたか」、⑤「中学に進学して、問題を感じたり、プ レッシャーを感じたりした時の対処はありましたか。あ ればどんなことでしたか」の5項目について尋ねた。 3 分析方法 面接内容を逐語録にし、調査参加者が語った言葉を質 的記述的に分析した。逐語録を意味のまとまりでコード 化し、生徒の心理状態及びプレッシャーへの対処行動に ついて、類似するコードを集めてサブカテゴリーを生成 した。さらに抽象 度 を 上 げ、心 理 状 態 お よ び プ レ ッ シャーへの対処行動のカテゴリーを生成した。その際に 時間的経過に従って、〈中学校進学前の心理状態〉、〈中 学校進学後のプレッシャーへの対処行動〉、〈中学校進学 3か月後の心理状態〉、の3つのテーマに分けて、質的 記述的に検討した。そして、質的分析で得られた各カテ ゴリー間の関連を視覚的に整理するために図式化した。 分析の過程の中では常にデータにもどり、解釈が正し いものであるか見直し、質的研究に精通した研究者1名 と討論をくり返し、分析の一貫性や確証性を高める努力 を行った。 4 倫理的配慮 本調査研究は、高崎健康福祉大学研究倫理審査委員会 の承認を得て実施した(高崎健康第倫3060号)。また、 調査研究参加者には、文書と口頭、その保護者には文書 にて、調査研究の趣旨、参加は自由意思によること、参 加の拒否や取り消しが可能であり、学業や部活動の評 価、学校生活に不利益がないこと、心身の状態への配 慮、守秘義務とプライバシーの保護、匿名性を保持した 結果の公表について説明し、書面による同意を得た。 Ⅲ 結果 1 面接対象者の概要 調査参加者は7名、全員女子であった。面接時間は、 15分29秒∼17分2秒で、平均時間は16分19秒であった。 面接中にトラブルはなかったが、1名若干涙ぐむ生徒が いたため、傾聴と支持にて対応し、その後は特に心理的 問題は生じなかった。 2 分析結果 1)中学校進学前後の心理状態 データを質的記述的に分析した結果、まず〈中学校進 学前の心理状態〉を構成する要素として、4つのカテゴ リー、8つのサブカテゴリーが抽出された(表1)。次 に〈中学校進学3か月後の心理状態〉を構成する要素と して、3つのカテゴリー、7つのサブカテゴリーが抽出 された(表2)。カテゴリ―は【 】、サブカテゴリーは 『 』、コードは「 」、補足説明は( )で示し報告する。 ⑴ 〈中学校進学前の心理状態〉 進学前は、「新しい所での勉強だから、ちょっとわく わくした気持ち」「古文、英語が楽しみ」「学年で順位が でるから楽しみ、自分の実力が知りたい」という『中学 校の学習、評価に期待や楽しみ』があった。また、「学 校行事どういうのがあるのだろう」「どんな部活動があ 154

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るのか、何をしているのか、どんな部活に入るのか楽し み」という『中学校の部活動や学校行事に関心と期待』 や、「違う学校の人と仲良くなれたらいいな」という『新 しい友人関係に期待』もあった。これらをまとめて【中 学校生活への関心や期待】とカテゴリー化した。 また、不安はあるが期待もあるという「上下関係あっ たらこわいな、でも先輩と仲良くしていきたいな」「お もしろい先生やこわい先生もいるのだろうけど楽しんで 学校生活送れたらいいな」という『先輩や先生との関係 に不安と期待』があり、これらを【新しい関係性への期 待と不安の混在】とカテゴリー化した。 一方、「授業の仕方も先生によって変わるから不安」 「授業の速さどのくらいかな、勉強が難しくなって追い つけるかどうか心配」「勉強の順位が上位でないといけ ないって、自分で勝手に思っていた」という『小学校と は違う学習、成績重視への不安』があった。また、「他 の小学校と合併するから、人間関係が不安」「人数がす ごい増えるから今までの友達と一緒に遊べるか心配」「病 気のこと先生に伝わっているか心配」「初心者で部活に なじめるか心配」という『人間関係づくりへの心配』や、 「お姉ちゃんの寝る時間が遅くなっているので、自分も そうなるのか心配」という『睡眠不足への心配』もあっ た。これらをまとめて【中学校進学にむけた不安や心配】 とカテゴリー化した。 この他に、「他の中学校を受験していて、期待とか全 然なかった」「期待や楽しみを中学校生活に感じない」 という『期待がもてない気持ち』について、【期待のも てない中学校への進学】とカテゴリー化した。 ⑵ 〈中学校進学3か月後の心理状態〉 中学校進学3か月後は、「初めてだったがみんな色々 教えてくれて、部活が決まってよかった」「(授業のス ピードは)速かったけど、楽しく授業ができてよかった」 「勉強の努力は報われることが、身にしみてわかった」 「部活動はきつさと楽しさ両方があっていいな」という 『新たな体験である部活動や学習の楽しさや充実感を実 感』した。また、「先輩達は優しく対応してくれた」「怖 い先生もいるけど、思っていたよりおもしろい先生ばか りで、授業も楽しくできている」「違う学校の子も仲良 くしてくれてよかった」という『安心した新たな人間関 係』もあり、これらをまとめて【中学校生活の楽しさ、 充実感、安心感】とカテゴリー化した。 一方、「苦手な(科目の)学習の仕方を工夫した」「い い成績をキープし続けられるか、(周囲からの)プレッ シャーを感じる」「宿題が多くて大変」「先生が教科ごと に違うから難しいところもあって、(授業に)ついてい けないところとかも出てきた」「中間試験と比べて期末 試験の成績が落ちちゃって、塾に行ってないので(その ためかもしれない)」といった『学習、成績の不安やプ 表1 中学校進学前の心理状態 カテゴリー サブカテゴリー コード 中学校生活への関心や 期待 中学校の学習、評価に 期待や楽しみ 新しい所での勉強だから、ちょっとわくわくした気持ち 古文、英語が楽しみ 学年で順位がでるから楽しみ、自分の実力が知りたい 中学校の部活動や学校 行事に関心と期待 学校行事どういうのがあるんだろう どんな部活動があるのか、何をしているのか、どんな部活に入るのか楽しみ 新しい友人関係に期待 違う学校の人と仲良くなれたらいいな 新しい関係性への期待 と不安の混在 先輩や先生との関係に 不安と期待 上下関係あったらこわいな、でも先輩と仲良くしていきたいな おもしろい先生やこわい先生もいるのだろうけど楽しんで学校生活送れた らいいな 中学校進学にむけた不 安や心配 小学校とは違う学習、 成績重視への不安 授業の仕方も先生によって変わるから不安 授業の速さどのくらいかな、勉強が難しくなって追いつけるかどうか心配 勉強の順位が上位でないといけないって、自分で勝手に思っていた 人間関係づくりへの心 配 他の小学校と合併するから、人間関係が不安 人数がすごい増えるから今までの友達と一緒に遊べるか心配 病気のこと先生に伝わっているか心配 初心者で部活になじめるか心配 睡眠不足への心配 お姉ちゃんの寝る時間が遅くなっているので、自分もそうなるのか心配 期待のもてない中学校 への進学 期待がもてない気持ち 他の中学校を受験していて、期待とか全然なかった 期待や楽しみを中学校生活に感じない 155

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レッシャーを実感』した。「お母さんに言われて(部活 に)入部したが、(これまで)経験がなかったので(そ の競技が)本当にできなくて(うまくできないことを) 批判されるのが嫌だ」という『不本意入部の苛立ち』も あった。「自分のポジションがうまくこなせないと、先 輩に怒られる雰囲気がある」「先輩が厳しい、先輩との 兼ね合い(うまくつきあうこと)も大変」「小学校入学 の時に友達を作るよりも難しくなってきている、多少め んどくさい」「人の心って読み取るのが難しいから、思 春期って一番(何を思っているのか)わからない」「ク ラス替えで今の仲の良い子と違うクラスになって、話す 人がいなくなる(のではないか)不安」という『困難な 人間関係づくりの認識と不安』もあった。「小学生の時 より学習や部活動などやることが増えて寝る時間が遅く なり、からだのことが心配」という『睡眠不足による健 康不安』もあった。これらをまとめて【中学校進学に伴 う不安、プレッシャー、苛立ちの実感】とカテゴリー化 した。 この他に、「とりあえずお姉ちゃんと一緒の部活動に 入った」という『とりあえず所属した部活動』を、【消 極的な所属感】とカテゴリー化した。 2)〈中学校進学後のプレッシャーへの対処行動〉 中学校進学後のプレッシャーへの対処行動は2つのカ テゴリー、6つのサブカテゴリーが抽出された(表3)。 表2 中学校進学3か月後の心理状態 カテゴリー サブカテゴリー コード 中学校生活の楽しさ、 充実感、安心感 新たな体験である部活 動や学習の楽しさや充 実感を実感 初めてだったがみんな色々教えてくれて、部活が決まってよかった (授業のスピードは)速かったけど、楽しく授業ができてよかった 勉強の努力は報われることが、身にしみてわかった 部活動はきつさと楽しさ両方があっていいな 安心した新たな人間関 係 先輩達は優しく対応してくれた 怖い先生もいるけど、思っていたよりおもしろい先生ばかりで、授業も楽 しくできている 違う学校の子も仲良くしてくれてよかった 中 学 校 進 学 に 伴 う 不 安、プレッシャー、苛 立ちの実感 学習、成績の不安やプ レッシャーを実感 苦手な(科目の)学習の仕方を工夫をした いい成績をキープし続けていられるかとか、(周囲からの)プレッシャー を感じる 宿題が多くて大変 先生が教科ごとに違うから難しいところもあって、(授業に)ついていけ ないところとかも出てきた 中間試験と比べて期末試験の成績が落ちちゃって、塾に行ってないので (そのためかもしれない) 不本意入部の苛立ち お母さんに言われて(部活に)入部したが、(これまで)経験がなかった ので(その競技が)本当にできなくて(うまくできないことを)批判され るのが嫌だ 困難な人間関係づくり の認識と不安 自分のポジションががうまくこなせないと、先輩に怒られる雰囲気がある 先輩が厳しい、先輩との兼ね合い(うまくつきあうこと)も大変 小学校入学の時に友達を作るよりも難しくなってきている、多少めんどく さい 人の心って読み取るのが難しいから、思春期って一番(何を思っているの か)わからない クラス替えで今の仲の良い子と違うクラスになって、話す人がいなくなる (のではないか)不安 睡眠不足による健康不 安 小学生の時より学習や部活動などやることが増えて寝る時間が遅くなり、 からだのことが心配 消極的な所属感 とりあえず所属した部 活動 とりあえずお姉ちゃんと一緒の部活動に入った 156

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まず、「親に話したり、アドバイスをもらう」「友達関 係がうまくいってないから、一番信じられる身内のお母 さんに話す」「友達に意見をもらって、こういう考え方 もあると理解する」「お姉ちゃんに相談する」「学校では ちょっと先生に相談する」「アドバイスを先輩から聞い たり」「誰かに話して自分の思いを伝える」という『身 近な人に相談する』対処行動が示された。また、「自分 から積極的なかかわりをもつ」「親しみやすいかかわり をする」「人の話を最後まで聞く」という『他者とかか わる』対処行動もあった。これらをまとめて【他者へ相 談やかかわることで対処する】とカテゴリー化した。 一方、他者を介してではなく自己完結的な対処様式で ある「自分なりに頑張ろうとする」「自分に自信をつけ る」という『自己肯定感の促進する』や、「考え方を変 える」「失敗したとき教訓みつける」という『捉え方を 変える』があった。また、「難しいが早く忘れようとす る」という『忘れる』や、「自然体でいる」という『自 然にまかせる』対処行動もあった。これらをまとめて【自 分なりに対処する】とカテゴリー化した。 3)中学校進学前後の心理状態の変容と中学校進学後の 対処行動の図式化 中学校進学前後の心理状態の変容と中学校進学後の対 処行動について、今回の質的分析で得られた各カテゴ リー間の関連を視覚的に整理するために図式化し、図1 に示した。 中学校進学前の【中学校生活への関心や期待】、【新し い関係性への期待と不安の混在】、【中学校進学にむけた 不安や心配】、【期待のもてない中学校への進学】という 心理状態は、進学後プレッシャーに対する【他者へ相談 やかかわることで対処する】、【自分なりに対処する】と いった対処行動も関与し、3か月後に【中学校生活の楽 しさ、充実感、安心感】、【中学校進学に伴う不安、プ レッシャー、苛立ちの実感】、【消極的な所属感】という 心理状態に変容した。 Ⅳ 考察 本分析によれば、中学校進学前の心理状態は、【中学 校生活への関心や期待】、【新しい関係性への期待と不安 の混在】、【中学校進学にむけた不安や心配】、【期待のも てない中学校への進学】と進学に対して様々な期待と不 安を持ち合わせていた。この結果は先行研究4)5)10)−12) の知 見と一致していた。進学後は、プレッシャーに対して 【他者へ相談やかかわることで対処する】や【自分なり に対処する】という対処行動により、進学3か月後の心 理状態は、【中学校生活の楽しさ、充実感、安心感】、 【中学校進学に伴う不安、プレッシャー、苛立ちの実 感】、【消極的な所属感】という3つのカテゴリーに変容 した。3か月の中で、中学校生活に対する心理状態が揺 れ動いていたことが示唆され、期待と不安の入り混じっ た気持ちが進学後は肯定的な楽しみや充実感と否定的な プレッシャーや苛立ちに変化した可能性がある。 進学前後の期待や不安のサブカテゴリーでは、学習や 人間関係に関する語りが認められた。学習では、進学前 に『中学校の学習、評価に期待や楽しみ』はあるが、『小 表3 中学校進学後のプレッシャーへの対処行動 カテゴリー サブカテゴリー コード 他者へ相談やかかわる ことで対処する 身近な人に相談する 親に話したり、アドバイスをもらう 友達関係がうまくいってないから、一番信じられる身内のお母さんに話す 友達に意見をもらって、こういう考え方もあると理解する お姉ちゃんに相談する 学校ではちょっと先生に相談する アドバイス先輩から聞いたり 誰かに話して思いを伝える 他者とかかわる 自分から積極的なかかわりをもつ 親しみやすいかかわりをする 人の話を最後まで聞く 自分なりに対処する 自己肯定感の促進する 自分なりに頑張ろうとする 自分に自信をつける 捉え方を変える 考え方を変える 失敗したとき教訓みつける 忘れる 難しいが早く忘れようとする 自然にまかせる 自然体でいる 157

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学校とは違う学習、成績重視への不安』もあり、進学3 か月後『新たな体験である部活動や学習の楽しさや充実 感を実感』することもあるが、『学習、成績の不安やプ レッシャーを実感』することもある。中学校と小学校と は学習への取り組み環境が違うことや難易度が増す上 に、学習成績が高校進学に直結しているため成績向上へ のプレッシャーが大きい。 人間関係では、進学前に『新しい友人関係に期待』、 『先輩や先生との関係に不安と期待』、『人間関係づくり への心配』があり、進学3か月後は『安心した新たな人 間関係』と『困難な人間関係づくりの認識と不安』があっ た。以下に示す「小学校入学の時に友達を作るよりも難 しくなってきている、多少めんどくさい」や「人の心っ て読み取るのが難しいから、思春期って一番(何を思っ ているのか)わからない」といった個別の語りを参照す るならば、小学生とは違う自分たちの心の変化に気づ き、友人作りの困難さを感じていたのかもしれない。女 子中学生は仲間への親密さと同調圧力がともに強く表れ るため、これに関係するストレスが生じやすいと言う調 査報告13) がある。この時期の友人関係においては、同調 圧力や関係づくりへのプレッシャーが重要な因子である と考える。また、前思春期女子に特徴的にみられる仲間 関係(チャム・グループともよばれる)は生徒にとって 必ずしも本意でなく、表面的な適応行動である可能性が あり14) 、本調査の個別の語りにも「友達関係がうまく いってないから、一番信じられる身内のお母さんに話 す」といった『身近な人に相談する』という対処が認め られている。一方で、「友達に意見をもらって、こうい う考え方もあると理解する」といった友人を頼りにして いる語りもあった。これらから、女子中学生の友人関係 づくりに関する複雑な心理状態を理解した支援の工夫が 必要と考える。 一方で、生活習慣の変化による不安を感じている語り もあった。都筑15) の調査では、中学1年生2学期に入っ てから変わったこととして、!暇な日がほとんどなく なった"!小学校のときより疲れる"との指摘がある。 本調査でも進学前に「お姉ちゃんの寝る時間が遅くなっ ているので、自分もそうなるのか心配」という語りがあ り、進学後は「小学生の時より学習や部活動などやるこ とが増えて寝る時間が遅くなり、からだのことが心配」 と『睡眠不足による健康不安』が語られた。中学校生活 に慣れていないこの時期の子供たちは、学習や人間関係 等でプレッシャーがある中、小学校より多忙になること で就寝時刻が遅くなると、心身を休める役割を持つ睡眠 を十分にとれない可能性がある。こうした不安の緩和に は、心身を休める睡眠の健康教育が必要であると考える。 進学後のプレッシャーに対する対処行動は、【他者へ 相談やかかわることで対処する】と【自分なりに対処す る】にカテゴリー化された。永井ら16) の中学生のコーピ ング調査では、多い順に逃避・回避対処、積極的対処、 サポート希求の順であり、あまり誰かに対処は求めず、 自分で対処する生徒が多いという結果が示されており、 女子の方が男子よりサポートを多く得ており、多様な コーピングを活用していたとある。本調査では、サポー ト希求につながる対処様式である『身近な人に相談する』 がカテゴリー化され、相談相手として親、兄弟姉妹、友 人など身近な対象が示された。相談することにより問題 解決力や学習意欲が高まり17) 、相談相手がさらにソー シャルサポートを導き、結果としてストレッサーが軽減 し16)、孤立感も低下させる18)、といった好循環が推測さ 図1 中学校進学前から中学校進学3か月後の心理状態の変容と中学校進学後のプレッシャーへの対処行動 158

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れる。中学生にとって『身近な人に相談する』ことは、 基本的ではあるが有効な対処行動と考えられる。個別の 語りでも、対処行動が役に立った可能性がいくつか認め られている。「親に話したり、アドバイスをもらう」こ とで「苦手な(科目の)学習の工夫をした」という語り は、対処行動により学習意欲が高まったととらえられ る。「誰かに話して、思いを伝える」対処行動は、孤立 感を低下させた可能性がある。「友達に意見をもらって、 こういう考え方もあると理解」することは、広く物事を 捉えられるようになった可能性がある。また、『身近な 人に相談する』に加え『自分なりに対処する』行動もとっ ていた語りもあった。これは、コーピングの柔軟性に富 む者は、精神的健康であるという報告19) や、複数のコー ピングの組み合わせをストレス反応の種類に応じて変化 させると効果的である20) といった知見につながる。他に も進学前の学習不安が、「自分なりに頑張ろうとする」 対処行動により「勉強の努力は報われるというのが身に しみてわかった」といった充実感に変化した語りがあり、 対処行動による心理状態への影響が示唆された。 今回の分析結果を踏まえ、中学校進学前後の子ども達 へのプレッシャー緩和に、学習で充実感を得られるよう な支援の工夫、友人関係づくりの困難さを理解した支援 の工夫、睡眠や対処行動の有効性の健康教育、相談しや すい環境整備等が望まれる。 なお本調査は女子生徒数名の語りであり、面接時間が 15分前後のためかならずしも十分な情報が得られたとは 言えない。このため、この結果を単純に一般化はできな い。今後は、多数例で中学生の心理状態や対処行動を評 価し、この調査結果を検証したい。 Ⅴ 結論 本調査では、中学校進学前後で環境や心身の変化を体 験する子供の心理状態の変容とストレス対処行動を明ら かにするため、中学校進学3か月後の女子生徒に個別面 接を行い、進学前後の心理状態およびプレッシャーや問 題への対処について質的記述的に検討した。中学校進学 前は、【中学校生活への関心や期待】、【新しい関係性へ の期待と不安の混在】、【中学校進学にむけた不安や心 配】、【期待のもてない中学校への進学】という心理状態 にあった。進学後プレッシャーに対しては、【他者へ相 談やかかわることで対処する】、【自分なりに対処する】 という対処行動が認められた。進学3か月後は【中学校 生活の楽しさ、充実感、安心感】という肯定的カテゴ リーと、【中学校進学に伴う不安、プレッシャー、苛立 ちの実感】、【消極的な所属感】という否定的カテゴリー に変容し、3か月という短期間で心理状態が揺れ動いて いたことが示唆された。また、進学後のプレッシャーに 対する対処行動により、心理状態が肯定的に変化する可 能性が示唆された。 謝辞 稿を終えるにあたり、的確な査読を通じて懇切丁寧な ご助言やご指摘をいただいた査読者の先生方に、心より 感謝申し上げます。また、研究調査実施にご協力いただ きました中学生の皆様に深く感謝いたします。そして、 ご指導を賜りました高崎健康福祉大学大学院保健福祉学 専攻上原徹教授に心より御礼申し上げます。 引用文献 1)松原耕平、佐藤寛、髙橋高人 他:小学校から中学校への移 行期における子どもの抑うつ症状の発達的変化、行動医学研究、 22⑴、3―8、2016 2)岡安孝弘、嶋田洋徳、丹羽洋子 他:中学生の学校ストレッ サーの評価とストレス反応との関係、心理学研究、63⑸、310― 318、1992 3)文部科学省:平成30年度 児童生徒の問題行動・不登校等生 徒指導上の諸課題に関する調査結果について、https://www. mext.go.jp/content/1410392.pdf(2020年3月14日にアクセス) 4)小泉令三:小学校高学年から中学校における学校適応感の横 断的検討、福岡教育大学紀 要 第4分 冊 教 職 科 編、 、295― 303、1995 5)都筑学:思春期の子どもの生活現実と彼らが抱えている発達 的困難さ、心理科学、24⑵、14―30、2004

6)Berndt TJ, Mekos D: Adolescents’perceptions of the stress-ful and desirable aspects of the transition to junior high school, Journal of Research on Adolescence, 5(1),123―142, 1995 7)文部科学省:国立教育研究所 生徒指導・進路指導研究セン ター 生徒指導リーフ「中1ギャップ」の真実Leaf、15、2014 http://www.nier.go.jp/shido/leaf/leaf15.pdf(2020年3月14日 に アクセス) 8)南雅則、浅川潔司、秋光恵子 他:小学生の予期不安と中学 校入学後の学校適応感との関係に関する学校心理学的研究、教 育心理学研究、59⑵、144―154、2011 9)南雅則、浅川潔司、福本理恵 他:中学校に対する予期不安 と入学後の学校適応感に関する研究、兵庫教育大学大学院連合 学校教育学研究科教育実践学論集、13、103―111、2012 10)臼井博:小学校から中学校への学校間移行の学校適応と学習 動機に対する影響⑵―第1波調査の結果 小学校3年生から中 学校3年生までの横断的分析―、札幌学院大学人文学会紀要、 93、17―36、2013 11)小野寺汐美:小中移行期における学校適応過程に関する一研 究、岩手大学大学院人文社会科学研究科紀要、18、19―40、2009 12)三宅幹子:小学校6年生における中学校生活に対する期待と 不安、岡山大学大学院教育学研究科研究集録、166、13―19、2017 13)黒沢幸子、有本和晃、森俊夫:女子中学生の仲間関係のプロ フィールとストレスとの関連について、目白大学心理学研究、 1、13―21、2005 14)赤川果奈、下田芳幸、石津憲一郎:中学生の友人関係、自尊 感情及び学校適応感の相互影響性、富山大学人間発達科学部紀 要、10⑵、1―10、2016 15)都筑学:小・中学校移行調査報告書⑶―中学1年生は学校生 活で何を感じたか―、2000 c-faculty.chuo-u. ac. jp /∼ manabu / onlinebook/transit99/transit_report3.pdf(2020年3月14日 に ア クセス) 159

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16)永井勇樹、深田博己:中学生のストレス反応に及ぼすスト レッサーとサポートの効果、広島文教女子大学心理臨床研究、 4、1―12、2013 17)神藤貴昭:中学生の学業ストレッサーと対処方略がストレス 反応および自己成長感・学習意欲に与える影響、教育心理学研 究、46⑷、442―451、1998 18)加藤司:対人ストレス過程における社会的相互作用の役割、 実験社会心理学研究、41⑵、147―154、2002 19)加藤司:コーピングの柔軟性と抑うつ傾向との関係、心理学 研究、72⑴、57―63、2001 20)三浦正江、坂野雄二、上里一郎:中学生が学校ストレッサー に対して行うコーピングパ タ ー ン と ス ト レ ス 反 応 の 関 連、 ヒューマンサイエンスリサーチ、7、177―189、1998 160

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