ベストロジー研究会誌 (PestControl Res.) 4 (1): 25-27(1989)
短
幸
匠
ヤブカ幼虫に対する鍋の致死作用
秋 元 俊 男
日 本 消 毒 脚L
e
t
h
a
l
e
f
f
e
c
t
o
f
c
o
p
p
e
r
on
Aedes
l
a
r
v
a
e
Toshio AKn.!O'roNihon Shodoku Co., Ltd., 6・9 Miyamatsu・cho,Hiratsuka 254, Japan
屋外に雨水のたまったまま放置された数種類の小容器 のうちの,銅製容器には蚊の発生しな い こ と に 気 づ い た.そこで,銅容器には蚊幼虫が発生しないか,もしそ うならそれは銅の作用で,幼虫が死亡するためなのか, それとも産卵が抑制されるためなのかを確かめたいと小 実験を試みた, さらに, 実際に銅片を投入した場合に, 幼虫の発生をどの程度抑制するか観察した. 試 験 方 法 試験は神奈川県中郡大磯町の人家の裏庭で, )寄り を林 と竹やぶで固まれた屋外条件下で行った.水を入れた人 工容器を樹木下に置き,人為的な飼料は加えず,ごみや 木の葉は自然混入のままに放置した. まず次の試験で鋼による幼虫の致死効果を観察した. 外側に黒色塗料を塗った容量200mEの広円ガラスピン
2
個に,各々 100mf!の水を入れ,これにヤブカ類 (Aedes sPP.)の幼虫と銅片を入れた.銅片は大きさ 5cmX 5 cm, 厚さO.25mmのものである.これを屋外に配置し, 2令の ヤブカ類幼虫を3
個体ずつ計6
個体供試して,その成育 状態を観察した.供試したヤブカ類幼虫は屋外で採集し たものである.また対照として,銅片を入れない容器に ついても同様の観察を行ヮた. 銅片と対比するために,銀と滞 水用活性炭混合粒と, はんだく鉛と錫の合金〕についても,それぞれ別の容器 で試験を行った.銀と活性炭の混合粒は約2
gを,はん だは約20gを各容器に入れた.供試した幼虫数はそれぞ れ3個体ずつである.銅片の効果については対照とEも に,試験を2回繰り返した.これらの試験は, 4月下旬 から5月中旬にかけて行ったものである. 次に,銅による産卵抑制効果の有無を判定するため, 銅片を入れた容器と入れない容器(対照)におりる,産 卵 数の差を観察した.外側に黒色塗料を塗った 口 荏1
5
cm,容量1.3
o
のポリエチレン容器に, 1. 0o
の水と産卵 板(大きさ9cmX 2 cm,厚さ 4mmの 三 井 高 圧 ボ ー め を 入れ,一方には銅片 (llcmX9
cm,厚さO.25mm)を沈め ,対照はそのままにして,これらを屋外に並べて設置し た.銅片投入容器と対照は1組ずつ,合わせて3組設置 した.観察は5月上旬に行い,産卵板を毎日取り替え, 産下された卵数を1
1
日間,毎日数えた. 最後に,上記の産卵抑制効果の試験に用いた蒋掃と産 卵板を引き続き使用し,蚊幼虫と踊の発生消長を比較観 察した.すなわち水に銅片を入れた容器3伺と,水のみ を入れた容器3個を屋外に並置し,それぞれの容器中の 蚊幼虫数の変化を,5
月中旬より7
月末までの約2
か月 半の問,毎円調べた. これらの容器に発生した蚊幼虫や,試験に供した蚊幼 虫の同定は行わなかった.しかし,試験地周囲で採集さ れ た 成 虫 は , 実 験 の 初期 に は ヤ マトヤブカ (Aedes jaρ
onicuゆ が 最 も 多 く3 次 い で オ オ ク ロ ヤ ブカ (Armigeres subαlbαtus)が 採 集 さ れ , ヒ トスジシマカ (Ae.alb.
o
ρ
ictus)は少なかヮた.しかし実験の中期 (5 月下旬頃)からはヒ トスジシマカが大多数を占めた. 結 果 と 考 察 投 入金属の種類による蚊幼虫の成育をみると,銅片投 入容器ーでは, 2回の実験に供した合計6個体中, 5個体 が供試時と同じ 2令のままで死亡し, 1個体のみ4令で 死亡した.早いものでは1日目で,遅いものでは17日目 で死亡した.銀とはんだの場合は,それぞれ蛸または 4 令で1
個体死亡したものの,対照とほとんど変わらずに - 25-成長し, 13日から25日担に羽化した.他の容器内の幼虫 が
3
令以上に成長した段階でも,鋼片投入容器内の幼虫 はほとんどが2令のままにとどまる傾向を示した.銅は 幼虫を死亡させるだけでなく,その脱皮と成長を阻害す るようである. Fig.1は銅片を投入した容器と対照容器を並ベて屋外 に放置した場合の,蚊の産卵状況を示したものである. 産卵数は日により,また容器によってまちまちであった が,両者に差があるとは認め難い. 250 _ C O P P E RE
二
コ
CONτROL 回8
同200 r.<. C 凶 同 国 宮 口 zFig. 1 Daily changes in number (mean+1 SD)
ofAedes eggs on a hardboard paddle, for each three ovitraps with and without a copper plate on the bottom. Fig.2は 屋外に放置した容器内の,蚊幼虫と踊の総数 の消長を示したものである.
2
日分の平均値で表した. n u n o 伺 ︿ 内 H P 弘 COPPER Q Z <>:20 国 〈 〉 p;: 吋 凶 比 060 回 同 国 賓 20 MA Y JU:.>rE JUL YFig. 2 Changes of immatures ofAedes spp. in containers with and without a copper plate on the hottom. One more plate was added in a container (arrow). 銅片投入容器では,個体数の一時的増加もあったが,
6
月上旬から末までに消滅した.ただし,ほぼ同じ時期に 対照容器でも個体数が減少したので,この時期の減少に は季節的な影響が加わったかもしれない.しかし対照容 器と異なり,その後の発生は全くなかった.一方, 対 照 容器では,いずれも70個 体を超えるほど発生数 が 多く,6
月中旬に個体数の低下が見られたものの,その後ふた たび増加して, 7月下旬まで終始幼虫と踊が見られた. すなわち,銅片投入容器と対照容器とでは,蚊の発生状 況に明らかな差があった.銅片投入容器のうち,6月 上 旬に70個体を超える発生が1例あったが, これは銅片を1
枚 追加することで消滅させることができた. 今回の一連の観察から,銅は蚊幼虫に対して,産卵抑 制効果を持たないが, 死亡させる効果を持っと言えるで あろう.これらの幼虫のうち, 4月中旬から 5月上旬に かけての致死効果試験に供した幼虫と,産卵抑制効果の 観 察 時に産卵したものの大部分はヤマト ヤ ブ カで あ ろ う.また5月中旬から7月にかけて設置した,発生消長 観察用容器に発生したものの大部分は, ヒトスジシマカ であろう. こ れらはどのような作用によって死亡 するの であろうか.秋葉・富岡(1984)は鋼板に藻類の付着抑制 作用のあることを見いだし,さらに,橋本・砦堀(1988) は銅よ り溶出するイオンに殺藻効果のあることを実証し た.したがって,鋼による藻類の減少が,幼虫の餌不足 をもたらしたのではなかろうか.すなわち銅イオンが間 接的に幼虫に作用した可能性が強v
'
.
試験の際は,ろくしよう (塩基性炭酸銅)の発生 は 認 められなかった.したがって幼虫の致死作用には,ろく しょうが閣与しているのではないようである.アセト亜 ヒ酸銅がパリスグリーン (Parisgreen)として,ハマダ ラカ類やイエカ類の駆除に効果的であることが知られて おり,この毒作用は幼虫の中腸細胞を破壊する結果によ る (Pratt& Litting, 1967).銅の毒作用もアセト亜ヒ 酸銅と同じように,消化管に対する直接的なものである 可能性も残る. 銅のヤブカ類幼虫に対する作用機構については,今 後 さらに詳細な検討が必要である. 銅の形態、や使用量によ る効果の差についても調べる必要がある.銅のヤブカ類 に対する作用は速効性的ではなく,また完全な駆除には まだ工夫を要するが,使用条件によって有効な応用が期 待できる.今回はヤブカ類に対する観察であったが, イ エカ類などの,他種の蚊や,水生昆虫類に対する効果も 確 認する価値がある. なお,試験を実施するに当たり助言をいただき,ある いは文献を紹介していただいた神奈川県衛生研究所の綿 一一 26貫知彦博士と森谷清樹博土,および,論文の取りまとめ に協力していただいた矢部辰男博士に感謝する.また校 聞の労をとられた帝京大学の栗原毅教授には心から拝謝 する. 文 献 秋 葉 誠 ・ 富 田 雅 昭 .1984.最終沈殿池越流樋部への銅 板張付による防護対策について.第21回下水道研究発 表会講演 集,19. 橋 木 奨 ・ 岩 堀 恵 祐 .1988.銅材料の殺藻効果とその応 用に関する研究. 日本水処理会誌, 24: 74-83. Pratt