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「地方」をめぐる現状と課題―自治基本条例と議会基本条例―

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(1)【シンポジウム】非「都会」としての《地方》の諸相. 「地方」をめぐる現状と課題 ――自治基本条例と議会基本条例――. 浅 野 一 弘 Ⅰ はじめに 日本では、地方分権一括法の施行(2000年4月1日)を受けて、国と地方自治 体の関係は、法律上、“ 上下の関係 ” から “ 対等な関係 ” へと変容した。その象 4. 4. 4. 徴ともいえるのが、機関委任事務の廃止であろう。かつては、「自治体の首長 は明らかに国家の下部機関とみなされている」こともあって、機関委任事務の「執 行にあたっては都道府県知事は主務大臣の、市町村長は知事の指揮監督を受け るものとされ、地方議会には検閲・検査権と監査請求権は認められているもの の、議決権は与えられていない」という状態がつづいた⑴。だが、機関委任事 務の廃止によって、この異常な状態が解消されたわけだ。 4. 4. 4. こうした地方分権改革の潮流を受けて、地方自治体の存在が大きくクローズ アップされることとなった。なかでも、北海道ニセコ町では、2001年4月1日に、 「ニセコ町まちづくり基本条例」を施行し、住民自治の充実をめざした。ここ でいう住民自治とは、「その地方の住民に関わる事務が、住民の意思にもとづ いて処理されること」をさしている⑵。 さらに、機関委任事務の廃止とともに、地方議会の役割がよりいっそう増大 したことは、周知のとおりである。そこで、北海道栗山町の「栗山町議会基本 条例」 (2006年5月18日施行)を端緒として、多くの議会が、議会基本条例の制 定をめざした。こうした自治基本条例や議会基本条例の制定によって、ほんと うに、「地方」は活力をとりもどしつつあるのであろうか。 このような問題意識をもとに、まずはじめに、地方分権改革の動向と自治基 本条例との関連について論じる。つぎに、自治基本条例において必要不可欠と されるガバナンスの構成要素 =“TAPE” に注目しつつ、議会基本条例の内容につ いて、みてみたい。そして最後に、投票率という観点から、住民自治の動きが ─ 181 ─.

(2) ひろがっているのかどうかについて簡単な私見を述べる。なぜなら、住民参加 のさかんな地方自治体は、投票率もたかく、活力がみなぎっているといえるか らだ。 Ⅱ 自治基本条例とガバナンス 1993年6月に可決された、「地方分権の推進に関する決議」(衆議院 :3日、参 議院 :4日)を契機として、地方分権改革は劇的にすすんだといっても過言では なかろう。その流れが最高潮にたっしたのが、1999年7月8日の地方分権一括法 の成立であろう。同法は、2000年4月1日に施行されたが、これによって、機関 委任事務は廃止されることとなった。かくして、意識面はともかく、法律上、 4. 4. 4. 国と地方自治体との関係は、“ 上下の関係 ” から “ 対等な関係 ” へと変貌をとげた。 換言すれば、国と地方自治体の関係が、ガバメント(Government)からガバナ ンス(Governance)へと転換したわけである⑶。 周知のように、日本国憲法・第92条には、「地方公共団体の組織及び運営に 関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」と記されてい るが、この「地方自治の本旨」は、「具体的には団体自治と住民自治とを指す ものと解されている」。ここでいう団体自治とは、 「地方自治体に団体としての 独立性を与え、国家もこの独立性を認めて団体内部の問題の自主的解決を自治 体に委ねること」をさす⑷。要するに、地方分権改革とは、この団体自治の充 実化をめざしたものといえる。 その証左に、地方分権推進委員会のメンバーであった、西尾勝・東京大学名 誉教授は、「分権を推進するというのはもっぱら団体の自治を強化するという 問題です」としている。ただ、同時に、西尾は、「それと別にそれを住民の意 思で決めていくという、住民自治の側面がある」とも語っている⑸。この住民 自治の精神を具現化していくために登場したのが、自治基本条例といってよか ろう⑹。 はじめての自治基本条例は、ニセコ町まちづくり基本条例とされるが⑺、同 条例は、2000年12月27日に成立し、2001年4月1日に施行されている。ある識者 によると、「ニセコ町は、基本条例を制定する以前から町の活動に際して、情 ─ 182 ─.

(3) 報共有や住民参加を積極的に取り入れてきた実績があったが、これらの基本原 則を継続的、安定的に遵守することを徹底するために条例にした」とのことだ が⑻、当時、ニセコ町長をつとめていた逢坂誠二は、当時をふりかえり、「ま ちづくりでは、情報共有を前提とした参加が必須だ」としたうえで、ニセコ町 まちづくり基本条例において、 「森歩き(まちづくり)の理念や基本的な考え方、 そして具体的な手法を定めることをめざした。この作業で自分たちの大まかな 姿勢やめざすべき方向だけでも分かれば、今よりも自治の精度が高まるだろう」 と語っている⑼。ニセコ町のある職員によると、この条例ができたことで、 「近 年は、役場の中でどこか会議室を覗けば、町民が何かの委員会で誰かが自由に 議論している」 「誰かがどこかで、四六時中、オフィシャルに基本条例の精神 に則ってまちづくりを議論している」という⑽。 このように、住民自治の柱ともなる自治基本条例であるが、 『政策法務事典』 によれば、その「定義については定まったものがない」そうだ⑾。しかし、 『地 方自治の現代用語』〔第二次改訂版〕では、自治基本条例は、「自治体の基本的 な姿勢(組織、選挙、活動など)を定めた条例」とされ、「自治体の憲法とも いわれるもの」と定義されている⑿。このほか、 「住民が自治体の主権者である ことを宣言し、それをベースとして首長、議会、職員機構などの責務を条例と して定めようとするもの」との見解もある⒀。 また、自治基本条例には、「その時々の権力者が間違えたり暴走したりする ことを防ぐ」という目的もあり、「具体的な事件や事象が発生する前に、あら かじめ冷静なときに、権力者が従うべきルールを決めておく」という側面もあ る。この背景には、「《民主主義体制のなかの非民主主義的な主体》を前提に、 どのようにして、自治体に対する住民による民主的統制に有効な道具立てを構 築できるか、という観点」=「『住民自治』あるいは『住民主体』『住民本位』 という観点」こそが、「《実質的意味での自治基本条例》に含まれる内容の要 素」との認識があることはいうまでもない⒁。このことからも、自治基本条例 とは、地方自治の本旨の1つの柱である、住民自治の充実をはかるものと断言 して、まちがいなかろう⒂。 先述したように、地方分権改革の潮流を受けて、国と地方自治体のあいだの 上下の関係は、対等な関係となった。これは、国と地方自治体の関係が、ガバ ─ 183 ─.

(4) メントからガバナンスへとシフトしたことを意味する。このガバナンスを構成 する要素が “TAPE” であり、自治基本条例には、この TAPE がすべてもりこま れているといっても過言ではない。ここでいう TAPE とは、透明性をあらわす Transparency、説明責任を意味する Accountability、住民参加の Participation、そ して、公平性・公正性を示す Equity という4つの単語の頭文字をとったもので ある⒃。 たとえば、自治基本条例の制定を熱心に説く神原勝・北海道大学名誉教授が 作成した、「神原私案〔札幌市自治基本条例案〕」をみると、第3条の「市政の 基本理念」のなかで、「市民の知る権利を保障するとともに、十分な説明責任 を果たすことによって、透明な市政を築き、かつ市民参加を効果的に推進す るための条件を整えること(情報の公開と共有)」 (1号)と記されている。こ こ に は、「 透 明 」=Transparency、「 説 明 責 任 」=Accountability、「 市 民 参 加 」 =Participation の用語がもられている。また、Equity については、同条7号のなかに、 「市政における公正及び市政に対する市民の信頼を確保するため、不正行為の 防止、公正で無駄のない行政運営のための外部監査、迅速な市民の苦情処理及 び適正な行政手続の確保等のための体制を確立すること(公正と信頼の確保) 」 と記されている。そして、これらの要素を担保するため、第5条 :「行政の説明 責任」 (=A) 、第7条 :「市民参加の権利」 (=P) 、第8章 :「公正と信頼の確保」 (=E) が規定されている。なお、T については、「市は、市民から信託された市政を 効果的かつ効率的に運営するため、政策の立案、決定及び評価という政策の循 環過程を確立し、市政の透明性を高めるとともに、限りある財源や人員等の政 策資源を効果的に活用し、政策の合理的な選択と質の向上を図る」 (第19条1項) や「行政組織を不断に点検し、簡潔で効率的かつ透明性の高い組織を編成する こと」(第21条1号)といった具合に、章のタイトルとしてはあらわれていない ものの、私案のなかで散見されることを付言しておく⒄。 では、ニセコ町まちづくり基本条例ではどうであろうか。改正まえの最初の 条文をみてみよう。透明性ということばこそないものの、 「意思決定の明確化」 を記した第6条の「町は、町政に関する意思決定の過程を明らかにすることに より、町の仕事の内容が町民に理解されるよう努めなければならない」という 文言からは、透明性 =T を重視していることがわかる。つぎに、説明責任 =A で ─ 184 ─.

(5) あるが、第4条において、 「町は、町の仕事の企画立案、実施及び評価のそれぞ れの過程において、その経過、内容、効果及び手続を町民に明らかにし、分か りやすく説明する責務を有する」と明記されている。住民参加 =P については、 「町は、町の仕事の企画立案、実施及び評価のそれぞれの過程において、町民 の参加を保障する」とした第5条で、 「参加原則」がうたわれている。最後の公 平性・公正性(=E)は、「町長は、町民の信託に応え、町政の代表者としてこ の条例の理念を実現するため、公正かつ誠実に町政の執行に当たり、まちづく りの推進に努めなければならない」(第17条)、「町の執行機関は、その権限と 責任において、公正かつ誠実に職務の執行に当たらなければならない」(第19 条1項)という具合に、「公正」の文字がみられる⒅。くわえて、第10条2項の 「わたしたち町民は、それぞれの町民が、国籍、民族、年齢、性別、心身の状況、 社会的又は経済的環境等の違いによりまちづくりに固有の関心、期待等を有し ていることに配慮し、まちづくりへの参加についてお互いが平等であることを 認識しなければならない」という条文は、公平性・公正性そのものを示してい るといえる。 Ⅲ 議会基本条例とガバナンス つぎに、TAPE という観点から、議会基本条例について注目してみよう⒆。 まずはじめに、「要綱試案だが内容は条例案に近く、現在からふり返えれば議 会基本条例の原型といえる」 、北海道自治体学会議会研究会によってつくられた、 「議会基本条例要綱(試案)」の内容を検討する⒇。なぜなら、日本ではじめて の議会基本条例を策定した栗山町議会の橋場利勝・議長が、「北海道自治体学 会で議会基本条例の試案をまとめられた渡辺三省さんがきておられますが、私 どもの事務局長が栗山町議会基本条例の原々案を持って、直接渡辺さんにお会 いしたのは昨年(2005年)の六月でした」 (カッコ内、引用者補足)と㉑、さら には、議会事務局長の任にあった中尾修が、「議会基本条例要綱(試案)が北 海道自治研究(二〇〇四年一一月号)に掲載され、これを参考にしながら栗山 町議会の活動にあわせた条例をつくっていった」とも認めているように㉒、こ の議会基本条例要綱(試案)が、栗山町議会基本条例に大きな影響をおよぼし ─ 185 ─.

(6) たことが明白であるからだ。 議会基本条例要綱(試案)のなかの「第3 議会・議員の使命」の「2 議会 の活動原則」には、「(1)議会は、市民の信託を受けて活動し、市民主権を基 礎とする市民の代表機関であることを十分意識するとともに、公正性、透明性 等、市民に開かれた議会及び市民参加を推進する議会を目指して活動を行わな ければならない」と明記されている。ここでは、 「公正性」 (=E) 、 「透明性」 (=T) 、 「市民参加」(=P)の文字がみられる。A については、たとえば、「第4 市民と 議会の関係」の「2 議会への市民参加、市民と議会の連携」の「(1)議会は、 市民本位の議会運営に努めるため、別に定める条例に基づき、委員会の完全公 開を含む情報公開を徹底するとともに、市民に対する説明責任を十分果たさな ければならない」というかたちでもられている㉓。こうしたことから、議会基 本条例も、自治基本条例同様、住民参加の実現をめざすものであることがわかる。 「議会改革の起点になっている」㉔、栗山町議会基本条例をみても、この事実 はあてはまる。「議会の活動原則」を記した同条例・第2条1項には、「議会は、 町民主権を基礎とする町民の代表機関であることを常に自覚し、公正性、透明 性、信頼性を重んじた町民に開かれた議会及び町民参加を不断に推進する議会 を目指して活動する」とあり、 「町民参加及び町民との連携」をうたった第4条 1項では、 「議会は、議会の活動に関する情報公開を徹底するとともに、町民に 対する説明責任を十分に果たさなければならない」との文言がもられている㉕。 ここにも、 「公正性」 (=E) 、 「透明性」 (=T) 、 「町民参加」 (=P) 、 「説明責任」 (=A) の文字がみられる。 こうした栗山町議会基本条例については、「新しい議会像の提示とともにそ れを具体化するための諸事項のほとんどは四年にわたる先行改革の内容を条例 化するものであったから、二元代表制の理念と現実が融合し、それゆえに議会 改革の象徴となりえた」との評価もあるほどだ㉖。このことに関しては、中尾も、 「基本条例の内容の八割は条例制定前にすでに実施してきたこと」と断言して いる㉗。おなじことが、ニセコ町の事例でもいえる。「ニセコ町条例の当初の制 定期にたまたま立ち会うことができた」㉘、木佐茂男・九州大学教授によると、 「基 本条例自体が、逢坂誠二元町長が就任して以来、住民の中で実行し実践してき たことをまとめたものに過ぎない」とのことだ㉙。 ─ 186 ─.

(7) では、議会基本条例の定義は、どのようなものとなるのであろうか。前出の 神原は、「議会基本条例は、議会の行動規範を定めたもので、ここには、①積 極的に市民と交流して市民の意思を自治体の政策に反映させる、②首長と行政 をしっかり監視し自ら積極的に政策を提案する、③これらの実効をあげるため に議員間で闊達に政策を議論する、という三本の大きな柱がある」㉚、あるいは、 「自治体の政府制度である二元代表民主制を首長と対等に担う議会が、主権者 市民の負託に応えて優れたまちをつくるために、議会運営の理念、理念を具体 化する制度、その制度を作動させる原則などを定めた条例で、当該自治体レベ ルの議会運営に関する最高規範として位置づけたもの」㉛としている。 じつは、議会基本条例の必要性は、すでに20年ほどまえから指摘されており、 たとえば、法政大学教授をつとめた松下圭一は、 「〈市民の議会〉となるには、 これまでと逆の考え方をすべきです。それには、まず従来の『議会会議規則』 ではなく、自治体の《基本条例》あるいは『議会基本条例』のなかで招集、組織、 会期、公開、参加などを規定することを考えるべきです。さしあたり、新『地 方自治法』は機関委任事務を廃止したのですから、いずれかの基本条例を制定 し、審議・調査・立法をめぐる権限をひろげる改革もできます」と述べている㉜。 さらに、松下は、「今後、日本の自治体は『日本国憲法』第八章地方自治をふ まえて、独自の〈基本条例〉を自治体レベルの基本法として策定していくよう になるでしょう」と語っていたが㉝、こうした視点は、住民自治の充実をめざ すものにほかならない。 前出の議会基本条例要綱(試案)や栗山町議会基本条例は、こうした精神を 体現したものである。換言すると、自治基本条例と同様に、住民自治の実現を はかることが、議会基本条例の大きな柱となっている。その証左に、前出の中 尾は、「議会は住民の代表機関ですから、議員を選んだ住民の側も議会との関 わりを十分認識するようにならないと、議会制度自体が健全に本来の目的を果 たせない」としているし㉞、橋場も、 「今日まで議会の活性化を進めてきました ので、この条例の定めによってさらに住民参加に力を入れた議会運営になるの ではないかと大いに期待し、その方向で行きたい」との思いを吐露している㉟。. ─ 187 ─.

(8) Ⅳ 結び─住民自治と投票率─ 以上みてきたように、自治基本条例や議会基本条例は、地方自治の本旨の1 つの柱である住民自治の充実をめざすものといってよい。現に、中学校の教科 書でも、自治基本条例については、「住民の自治意識の高まりから、地方公共 団体の憲法ともいうべき、住民と行政との対等で協力的な関係を定める条例( 「自 治基本条例」)がつくられています」としたうえで、「住民も、地域社会全体の 利益を守る視点から、地域づくりに参加することが求められています」と明記 されているし㊱、議会基本条例については、「地方議会での議論を活性化させ、 住民にとってより身近な存在にするために、議会基本条例を定める地方公共団 体が増えています」とし、「議員が地域に出向いて住民に説明したり住民の質 問を受け付けたりする議会報告会を毎年開くなど」している、栗山町議会の事 例が紹介されている㊲。 ということは、自治基本条例や議会基本条例が定着していけば、究極の住 民参加ともいうべき選挙の投票率が上昇することはまちがいない㊳。もっとも、 そのときどきの争点や候補者の知名度などによって、投票率が上下することは 事実である。しかしながら、自治基本条例や議会基本条例の理念が十分認識さ れ、 「誰かがどこかで、四六時中、オフィシャルに基本条例の精神に則ってま ちづくりを議論している」ニセコ町や「基本条例の内容の八割は条例制定前に すでに実施してきたこと」とされる栗山町など、住民自治が実現している自治 体であるならば、選挙の投票率がひくいはずはなかろう。 ところが、自治基本条例や議会基本条例ができてからのニセコ町と栗山町の 投票率(町長選挙および町議会議員選挙)に着目しても、けっしてたかい数字 とはいえない㊴。しかも、無投票がつづいている状態は、選択をするという選 挙本来の趣旨から、大いに逸脱しているといってよい。まさに、“ デモクラシー の危機 ” が両町においておこっているのだ。両町の住民は、こうした事態を深 刻にとらえるべきであろう㊵。. ─ 188 ─.

(9) 図表 ニセコ町と栗山町での投票率 【ニセコ町長選挙】. 【ニセコ町議会議員選挙】. 投票年月 投票率 1958年10月 93.90% 1962年10月 無投票 1966年10月 無投票 1970年10月 94.83% 1974年10月 無投票 1978年10月 無投票 1982年10月 無投票 1986年10月 無投票 1990年10月 93.09% 1994年10月 90.12% 1998年10月 無投票 2001年4月1日 まちづくり基本条例施行 2002年10月 無投票 2005年10月 89.12% 2009年 9月 88.46% 2013年9月 無投票 2017年10月 無投票. 投票年月 投票率 1999年4月 91.79% ※1 2001年4月1日 まちづくり基本条例施行 2003年4月 89.50% 2007年4月 無投票 2011年4月 78.77% 2015年4月 79.72% 2019年4月 74.42%. 【栗山町長選挙】. 【栗山町議会議員選挙】. 投票年月 投票率 1955年4月 92.14% 94.25%・無投票 ※2 1959年4月 1963年4月 94.88% 1966年12月 89.49% 1970年11月 88.08% 1974年11月 74.85% 1978年11月 無投票 1982年11月 92.76% 1986年11月 78.19% 1990年11月 無投票 1994年11月 無投票 1998年4月 無投票 2002年4月 無投票 2006年4月 80.63% 2006年5月18日 議会基本条例施行 2010年4月 無投票 2014年4月 無投票 2018年4月 無投票. 投票年月 投票率 備考 1955年4月 92.14% 1959年4月 94.25% 1963年4月 94.88% 1966年12月 89.44% 1967年4月 93.80% (補欠選挙) 1971年4月 91.45% 1975年4月 90.95% 1979年4月 93.69% 1983年4月 92.74% 1987年4月 89.97% 1991年4月 88.10% 1995年4月 無投票 1999年4月 83.49% 2002年4月 無投票 2003年4月 80.60% (補欠選挙) 2006年5月18日 議会基本条例施行 2007年4月 76.98% 2011年4月 71.77% 2014年4月 31.56% (補欠選挙) 2015年4月 無投票 2019年4月 無投票. (出典) 各町選挙管理委員会提供資料をもとに作成。 ※1 ただし、ニセコ町議会議員選挙の1999年4月分のみ、 『北海道新聞』〔地方版〕1999年4月26日(夕)、10面。 ※2 1959年4月の栗山町長選挙については、栗山町 選挙管理委員会の資料では94.25%、 北海道選挙管理委員会の資料では無投票。. ─ 189 ─.

(10) ところで、前出の神原と松下は、おのおの、「最高規範の根拠は、法的には 条例中に最高規範性を明記することによって与えられますが、それだけでなく 政治的な意味合いとしては、市民投票による承認手続きによって強化すべきだ と考えます。自治基本条例は自治体の基本法ですから、やがては主権者市民に よる批准投票を考えるべきでしょう」㊶、「各自治体にはその〈基本法〉として、 住民投票にもとづく《基本条例》の策定が問われています」㊷と指摘している。 もし、これらの発言のとおりであるとすれば、住民投票という過程をへて成立 した自治基本条例と議会基本条例こそが、生ける条例とよべるのである㊸。要 するに、住民の意思を問わないまま成立した自治基本条例と議会基本条例をつ くったとしても、「仏つくって魂入れず」の状態でしかないというわけだ㊹。 さらに、神原は、「選挙と納税を基本に参加と批判という緊張で成り立って いるのが、市民と自治体の基本的な関係です」と断じているが㊺、自治の最先 端をいく両町で、投票率が低下していたり、無投票の状態が出現していたりす ることは、どのように説明すればよいのであろうか㊻。「住民参加による地方自 治を意味」し、「民主政治と密接に結びついている」㊼、真の住民自治の実現は、 まださきのことのようである。. 註. ⑴ 阿部齊『新訂 現代日本の地方自治』 (放送大学教育振興会、1999年) 、25頁。. ⑵ 大久保皓生「住民自治」阿部齊・今村都南雄・岩崎恭典・大久保皓生・澤井勝・. 辻山幸宣・山本英治・寄本勝美『地方自治の現代用語』 〔第二次改訂版〕 (学陽書房、 2005年)、61頁。. ⑶ 地方分権改革の流れについては、たとえば、浅野一弘『現代地方自治の現状と課 題』(同文舘出版、2004年)、1-42頁を参照されたい。. ⑷ 阿部、前掲書『新訂 現代日本の地方自治』 、152頁。. ⑸ 西尾勝『未完の分権改革』 (岩波書店、1999年)、68頁。. なお、「西尾は機関委任事務の廃止に全力を傾けており、この問題が改革の取り. 組みの焦点であり続けるように、さまざまな場における討論や、地方分権推進委員. 会に先立つ勧告において、常に議論をリードしてきた」とされている(中野晃一著、. 中野真紀子訳『野党が政権に就くとき - 地方分権と民主主義 -』 〔人文書院、2019年〕 、 155-156頁)。. ─ 190 ─.

(11) ⑹ 「北海道大学公共政策大学院で学んだ公共政策の専門家として、 『公共政策を市民. の手に』 『地域社会と大学との懸け橋となる』ことを目的」として設立された(http:// koukyou-seisaku.com/profile.html〔2019年11月7日〕)、NPO 法人公共政策研究所の調 査では、自治基本条例を制定している団体数は、2019年8月1日現在、377であるよ うだ(http://koukyou-seisaku.com/policy3.html〔2019年11月7日〕 ) 。. ⑺ ただし、 「ニセコ町の条例は議会に関する規定を欠いているので『自治体の憲法』. としては十分でないという見解もある」ことを紹介しておこう(辻山幸宣「自治基 本条例と住民自治」 『都市問題研究』2006年8月号、3頁) 。. ⑻ 山崎幹根「市役所と地方議会に行ってみよう - 地方自治の理念と現実 -」永井史男・. 水島治郎・品田裕編『学問へのファーストステップ① 政治学入門』 (ミネルヴァ書房、 2019年)、222頁。. ⑼ 逢坂誠二「はしがき」木佐茂男・逢坂誠二編『わたしたちのまちの憲法』 (日本 経済評論社、2003年) 、ⅳ - ⅴ頁。. ただし、逢坂が、 「日本では初めての『まちづくり基本条例』を制定した」折り、 「16人いる議員のうち1人が議長で、15人の議員のうち10人しか賛成してくれなかっ た」と回想しているように、同町議会において、当初、当該条例に賛意を示す声ば. かりでなかったことを付言しておく( 「対談 坂本龍一 vs. 逢坂誠二 -〈9・11以降〉 の世界の危機と希望 -」スローなセイジをつくる会編『逢坂誠二の決断』 〔共同文化 社、2003年〕、27頁)。. ⑽ 木佐茂男・加藤紀孝「 [対談]自治基本条例のその後と展望」木佐茂男・片山健也・ 名塚昭編『自治基本条例は活きているか !?- ニセコ町まちづくり基本条例の10年 -』. (公人の友社、2012年)、28頁。. ⑾ 松下啓一「自治基本条例づくり」兼子仁・北村喜宣・出石稔編『政策法務事典』 (ぎょうせい、2008年)、96頁。. ⑿ 大久保皓生「自治基本条例」阿部・今村・岩崎・大久保・澤井・辻山・山本・寄 本、前掲書『地方自治の現代用語』 〔第二次改訂版〕 、47頁。. ⒀ 新藤宗幸・阿部斉『概説 日本の地方自治』 〔第2版〕 (東京大学出版会、2006年) 、 41頁。 ⒁ 金井利之『実践自治体行政学 - 自治基本条例・総合計画・行政改革・行政評価 -』 (第一法規、2010年)、18-19頁および21頁。. ⒂ もっとも、「自治基本条例も住民投票も、本来は団体自治にも影響があり得る課. 題である」との指摘があることもふれておきたい(金井利之『行政学叢書3 自治 制度』〔東京大学出版会、2007年〕、232頁)。. ⒃ 自治基本条例と TAPE との関係については、浅野一弘『地方自治をめぐる争点』 (同 文舘出版、2010年)、67-99頁を参照されたい。. ⒄ 神原勝『自治・議会基本条例論 - 自治体運営の先端を拓く -』 (公人の友社、2008年) 、. ─ 191 ─.

(12) 192-213頁。 ⒅ なお、現行のニセコ町まちづくり基本条例では、第17条は第25条に、第19条1項 は第27条1項になっている。. ⒆ 「自治体議会を、市民、議員、長等の自由な討論による『民主主義の広場』へと. 変えるため、市民活動や自治・分権、自治体改革、条例づくりなどに取り組んでき. た、市民や研究者らの呼びかけで、2007年1月25日に発足」した(http://www.gikaikaikaku.net/forum.html〔2019年11月7日〕) 、自治体議会改革フォーラムの調査による. と、2017年4月1日時点で、議会議本条例を制定している議会は、797団体あるとい う(http://www.gikai-kaikaku.net/gikaikaikaku_kihonjourei.html〔2019年11月7日〕 ) 。. ⒇ 神原勝『議会が変われば自治体が変わる - 神原勝・議会改革論集 -』 (公人の友社、 2019年)、116頁。. ㉑ 橋場利勝・神原勝『地方自治土曜講座ブックレット No.113 栗山町発・議会基本 条例』(公人の友社、2006年)、11頁。. ㉒ 神原勝・中尾修・江藤俊昭・廣瀬克哉『北海道自治研ブックレット No.4 議会. 改革はどこまですすんだか - 改革8年の検証と展望 -』 (公人の友社、2015年) 、9頁。. ㉓ 渡辺三省「議会基本条例の制定を契機としたこれからの議会の姿 - 議会基本条例 要綱研究会試案 -」 『北海道自治研究』2004年11月号、31-32頁。. ㉔ 神原・中尾・江藤・廣瀬、前掲書『議会改革はどこまですすんだか』 、9頁。. ㉕ 「 栗 山 町 議 会 基 本 条 例 」(http://www.town.kuriyama.hokkaido.jp/gikai/activity/file/ a_001.pdf〔2019年11月7日〕)。. ㉖ 神原、前掲書『議会が変われば自治体が変わる』 、108頁。. ㉗ 橋場利勝・中尾修・神原勝『北海道自治研ブックレット No.2 議会基本条例の 展開 - その後の栗山町議会を検証する -』 (公人の友社、2008年) 、5頁。. ㉘ 木佐茂男「はしがき」木佐・片山・名塚編、前掲書『自治基本条例は活きている か !?』、9頁。. ㉙ 木佐・加藤、前掲「[対談]自治基本条例のその後と展望」木佐・片山・名塚編、 前掲書『自治基本条例は活きているか !?』、13頁。. ㉚ 神原、前掲書『議会が変われば自治体が変わる』 、110頁。 ㉛ 橋場・神原、前掲書『栗山町発・議会基本条例』 、54頁。. ㉜ 松下圭一『自治体は変わるか』 (岩波書店、1999年) 、69頁。. ㉝ 松下圭一『日本の自治・分権』 (岩波書店、1996年) 、107頁。. ㉞ 神原・中尾・江藤・廣瀬、前掲書『議会改革はどこまですすんだか』 、12頁。 ㉟ 橋場・神原、前掲書『栗山町発・議会基本条例』 、7頁。. ㊱ 阿部齊・竹内啓一・笹山晴生ほか『中学社会 公民 ともに生きる』 (教育出版、 2010年)、77頁。なお、この教科書は、2005年3月30日検定済のものである。. ㊲ 坂上康俊・戸波江二・矢ケ﨑典隆ほか『新編 新しい社会 公民』 (東京書籍、. ─ 192 ─.

(13) 2016年)、104頁。なお、この教科書は、2015年3月31日検定済のものである。. ㊳ たとえば、西宮市議会基本条例のケースでは、「基本理念」をもった第2条3号で、. 「市民の関心や信頼を向上させること 質の高い議会活動と質の高い広報活動を行い、 そのことによって高まる関心や信頼がさらに議会や議員の質を高めるという相乗効 果を生み、その結果、投票基準の変化や投票率の向上につながることをいう」と. しているのが、きわめて興味深い( 「西宮市議会基本条例」 〔https://www.nishi.or.jp/ nishinomiyashigikai/inspection/gikaikihon.files/2019gikaikihonjyourei.pdf(2019 年 11 月 7 日)〕)。. ㊴ 第30次地方制度調査会の委員をつとめた江藤俊昭は、 「住民自治を進めるには選. 挙を活性化させること、つまり議会からの政策サイクルを選挙に連動させることも. 必要である」とし(江藤俊昭「地方議会改革と議会基本条例 - 到達点を踏まえてそ. の相互関係を探る -」 『自治体法務研究』2018年夏号、9頁) 、さらに、「地方議会は、 地域民主主義を醸成し住民参加を組み込んだ議会をさらに発展させることが必要で ある」と語っている(江藤俊昭『図解 地方議会改革 - 実践のポイント100-』 〔学陽 書房、2008年〕、35頁)。. ㊵ ちなみに、前出の北海道自治体学会議会研究会の関係者によれば、 「条例と投票. 率の関係については、研究会では、つよく意識していたわけではなかった」とのこ とである(関係者の電子メールによる回答〔2019年10月8日〕 ) 。. ㊶ 神原、前掲書『自治・議会基本条例論』 、108頁。 ㊷ 松下、前掲書『自治体は変わるか』 、79頁。. ㊸ この点については、たとえば、「自治基本条例と住民投票とのかかわりで、不思 議に思うのは、当該条例のなかで、住民投票に関する項目をおいておきながら、自. 治基本条例を制定する折りに、住民投票をおこなう自治体がみられないという点で. ある。これでは、自治基本条例そのものの精神の1つである住民参加の視点が、は じめから欠如してしまっているとの批判をまぬがれない」との指摘がなされている. (浅野、前掲書『地方自治をめぐる争点』 、93頁)。. ㊹ ちなみに、「自分たちのみが住民の代表であるとし、首長が住民から直接に声を. 聞くのをいやがる」地方議員たちは、 「一般住民の声を議会で聴くことにも消極 的である」し、「さらに、住民投票には総じて敵対的である」そうだ(金井利之 ト. リ. セ. ツ. 『自治体議会の取 扱説明書 - 住民の代表として議会に向き合うために -』 〔第一法規、 2019年〕、7頁)。. ㊺ 神原、前掲書『自治・議会基本条例論』 、76頁。. ㊻ 神原は、「いろいろなことが行われ、そこに意義がありそうに見えても、民主主 義の視点を欠いた営為は、長い目で見ると、結局は定着しない」と述べていること も紹介しておこう(同上、12頁)。. ㊼ 阿部、前掲書『新訂 現代日本の地方自治』 、153頁。. ─ 193 ─.

(14) Current Situation and Challenges of Local Autonomy: Basic Local Government and Assembly Ordinances Kazuhiro Asano The Omnibus Decentralization Act transformed the “top-down” relationship between central and local governments into an “equal” one, as symbolized by the abolition of administrative functions imposed by the central government on local governments to eliminate abnormality in their relations. Decentralization reform has encouraged local governments to emphasize their presence. Niseko Town of Hokkaido Prefecture enforced the Niseko Town Machizukuri (district enhancement) Basic Ordinance on April 1, 2001, to enhance residents’ autonomy. In response to the abolition of administrative functions imposed on local governments, local assemblies’ roles have increased further. The enforcement of a basic assembly ordinance in Hokkaido’s Kuriyama Town on May 18, 2006, prompted many local assemblies to enact their respective basic ordinances. Are local governments really revitalizing themselves by enacting basic local government or assembly ordinances? Based on this question, this paper first discusses decentralization reform’s relations with basic local government ordinances. Next, it analyzes basic assembly ordinances, paying attention to transparency, accountability, participation and equity, all of which are known as indispensable governance components in a basic local government ordinance. Lastly, this paper provides a personal view based on voter turnouts to check whether residents’ autonomy has been enhanced. This is because local communities in which there is greater participation in government by residents are generally viewed as being full of vitality.. ─ 194 ─.

(15)

図表 ニセコ町と栗山町での投票率 投票年月 投票率 投票年月 投票率 1958年10月 93.90% 1999年4月 91.79% ※1 1962年10月 無投票 1966年10月 無投票 2003年4月 89.50% 1970年10月 94.83% 2007年4月 無投票 1974年10月 無投票 2011年4月 78.77% 1978年10月 無投票 2015年4月 79.72% 1982年10月 無投票 2019年4月 74.42% 1986年10月 無投票 1990年10月 93.09% 1994年

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