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小児科外来の看護師が実施しているスムーズに診療や看護を進めるための 判断や工夫:参加観察とインタビューによる調査

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Academic year: 2021

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受付日:2019 年 9 月 2 日  受理日:2019 年 12 月 9 日 所 属 1)武庫川女子大学 看護学部看護学科 2)神戸女子大学 看護学部看護学科 3)兵庫医科大学 小児科学 連絡先 *E-mail:[email protected] Ⅰ.はじめに  小児科外来は病気の子どもを診療するだけで はなく、子育てに不安がある母親への育児支援 や児童虐待の早期発見、家庭での看護方法の説 明なども行なっており、小児科外来の役割は非 常に重要といえる。しかし、全国の小児科を標 榜する病院は平成19 年では 3,015 施設であっ た が、 平 成29 年では 2,592 施設と 10 年間で 14%も減少している(厚生労働省 , 2007;厚生 労働省 , 2017)。特に、北海道、中国および九州・ 沖縄では小規模市町村にある病院の小児科の廃 止が多いことが危惧されている(江原 , 2015)。 このように、小児科外来が多くの重要な役割を 担っている一方で、施設数は減少しているとい う現状がある。患者の需要が1 施設に集中し、 限られた時間のなかで子どもや親に充実した医 療や看護を提供するためにも、小児科外来の看 護師が効率よくスムーズに業務を進めることが 望まれる。  小児科外来で勤務する看護師の看護実践に関 する先行研究はいくつか報告されている。女 鹿 , 勝田 , 永島 , 野口(2009)は、小児科の診 療所に勤務している看護師の役割について明ら かにするために質問紙調査をしており、看護師 が通常業務として毎日実施している役割として は、「医師の診察がスムーズに行えるように配慮 する」が最も多く、次いで「診察に必要な物品 の準備・点検をする」「診察時の子どもの恐怖感 や不安感を軽減するように援助する」であった。 飯村(2014)は、地域密着型の中規模病院の小 児科一般外来における看護師の働きについて参 加観察調査をしており、その結果、「気になる子 どもを見つけて診察室へつなぐ」「診察での気が かりを補足し家族の背中を押す」「見過ごしては ならない親子に関わりつなぎとめる」などのテー マが明らかとなった。著者ら(藤田 , 北尾 , 植木 , 藤原 , 2018)は、2016 年 3 月から 4 月に全国 の小児科外来を対象に調査を実施しており、「小 gokyokushougaihokenfukushibu/0000180993.pdf (2019/12/10 検索) 万波早織 , 伊田絵理香 , 川谷みのり . (2019). 重 症心身障害児( 者 ) のショートステイに対す る家族の思い. 中国四国地区国立病院機構・ 国立療養所看護研究学会誌 , 14, 240-243. 松井学洋 , 高田哲 . (2013). 重症心身障害児の睡 眠状況と医療的ケアが母親の介護負担感に与 える影響. 小児保健研究 , 72, (4), 508-513. 大島一良. (1971). 重症心身障害児施設における 実態とあり方. 小児科診療 33,(5).86-92. 下野純平 , 市原 真穂 . (2018). 重症心身障害児 ( 者 ) 通園に勤務する看護師の看護ケアに対す る思い. 日本小児看護学会誌 , 27(59), 171-177. doi: 10.20625/jschn.27_171. 鈴木結美花 , 冨安眞里 . (2017). 中途重症心身障 害児をもつ家族への訪問看護支援の構成素. せいれい看護学会誌 , 8(1), 1-7. 高真喜. (2016). 在宅人工呼吸療法中の重症心身 障害児と家族の在宅生活の現状と支援の検討. 日本小児看護学会誌 , 25(1), 15-21. 竹本潔 , 船戸正久 . (2015). 地域生活と医療的ケ ア 快適に生きるための課題とこれから 医ケア を要する超重症児の短期入所の現状と課題 け入れ施設から見た課題と将来. 日本重症心 身障害学会誌 , 40(1), 83-89. 徳島佐由美 , 藤田優一 , 藤原千惠子 . (2019a). 重 症心身障がい児のレスパイト目的での入院に 対する経験豊富な看護師の認識. 日本看護学 会論文集ヘルスプロモーション , 49, 83-86. 徳島佐由美 , 藤田優一 , 藤原千惠子 . (2019b). レ スパイト入院における重症心身障がい児の家 族から信頼を得るための経験豊富な看護師の かかわり. 日本小児看護学会誌 , 28(60), 35-41. doi:10.20625/jschn.28_35 徳島佐由美. (2018). 経験豊富な看護師による重 症心身障害児の個別性に応じた看護ケア. 日 本重症心身障害学会誌 , 43(3), 531-536. 常国良美 , 松本啓子 . (2018). 学童期から青年期 にある在宅重症心身障害児・者の母親にとっ てのアサーションの意味. 家族看護学研究 , 24(1), 26-40. 和 田 良 , 土田健治 , 大久保暢子 , 佐藤町子 . (2016). 重症児者病棟におけるケア別患者家 族満足度の調査. あきた病院医学雑誌 , 4(2), 13-18. -報

告-小児科外来の看護師が実施しているスムーズに診療や看護を進めるための

判断や工夫:参加観察とインタビューによる調査

Nurses’ Judgments and Practices for Performing Medical Examinations Effectively and

Smoothly in Pediatric Outpatient Departments: Participant Observation and Interview Survey

藤田優一

1)

・吉田陽子

2)

・北尾美香

1)

・植木慎悟

1)

・藤原千惠子

1)

・竹島泰弘

3) 要 旨  小児科外来の診療場面において、スムーズに診療や看護を進めるための看護師の判断や工夫につい て明らかにするために、A 大学病院の小児科外来に勤務する看護師の 5 名を対象に参加観察とインタ ビューを実施した。フィールドノートとインタビューの逐語録から、内容分析により分析した。小児 科外来の看護師が診療や看護をスムーズにするために実施していた判断や工夫は28 コード、4 カテゴ リー『時間を短縮するための判断・工夫』『安全に診療をするための判断・工夫』『関係性を築くため の判断・工夫』『待ち時間に対する不満を軽減させるための判断・工夫』から構成されていた。小児科 外来の看護師は、外来での経験が積み重ねられ、限られたマンパワーと労力で効率よくスムーズに診 療や看護を進めていることが考えられた。 キーワード:小児科外来、看護師、判断、工夫

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武庫川女子大学看護学ジャーナル Vol.05(2020) 小児科外来の看護師が実施しているスムーズに診療や看護を進めるための判断や工夫:参加観察とインタビューによる調査 Ⅳ.方法 1.調査対象者  A 大学病院の小児科外来に勤務する看護師の うち、小児科外来での勤務経験が満1 年以上で 本研究への参加に同意を得た5 名。倉田(2018) の研究で、短期入院が多い小児病棟に勤務する 看護師の専門職としての自律性は、「実践能力」 と「自立的判断能力」において経験年数1 年未 満と5 年以上の看護師の間に有意差がみられた と報告されていることから、小児科外来での勤 務経験の条件を満1 年以上とした。 2.外来の状況  A 大学病院は、外来小児医療センターとして 小児科の診察室4 室(外来担当医 18 名)と小 児外科の診察室1 室(外来担当医 4 名)、処置室 を有する。  調査期間中の外来小児医療センターの受診患 者数は1 日あたり平均 92.8 名であり、全員予約 での受診であった。そのうち初診は6.3 名、再 診は86.5 名であった。調査期間中の採血は 1 日 あたり平均15.5 件であった。そのうち 5 歳未満 の患者は外来小児医療センターの処置室で採血 をしており、1 日あたり平均 6.7 件であった。調 査期間中の尿検査は1 日あたり平均 5.8 件、画 像検査は1 日あたり平均 4.8 件であった。 3.データの収集方法  看護師1 名につき 2 日間、5 名でのべ 10 日間 の参加観察を実施した。研究者は3 名で調査を 実施した。参加観察の時間は、外来が診察を行 う9 時から 12 時と 13 時から 16 時までとした。 インタビューは参加観察後に毎回行い、1 回あ たり30 分程度実施した。 1) 参加観察:研究者が小児科外来で勤務してい る看護師の後を追いながら看護実践の観察を した。参加観察の対象は、外来看護師のみな らず、子どもや家族、医師、看護助手も含め、 その他に環境や物品なども記録に残した。谷 津(2015)の参加観察の視点を参考にして、 「誰が(誰がその場に登場し、その活動に参 加しているか?)」「何を、どのように(その 場に何が起きているのか?その行動にはどの ような行為と規則があるのか?)」「どこで (それはどこで行われているか?)」「いつ(ど のようなタイミングで行われたか?)」「なぜ (なぜそのやり方で行うのか?)」の5 つの視 点で参加観察を行った。具体的な観察のポイ ントとしては、スムーズに診療や看護を進め るために、①看護師が患者や医療者を観察し た内容、②看護師が行動をする際に行った判 断の状況、③看護師の患者や他の医療者への 声かけ、④看護師の行動、とし、これらを研 究者間で共通理解をした上で参加観察を行っ た。観察中に「今どのような判断をしたのか」 と疑問があった際には、勤務の妨げとならな いように配慮をしながら看護師へ質問をし た。観察した内容や質問への回答などの記録 は、対象者および患者家族の目につかないよ うに配慮しながらメモに記録し、調査後速や かにフィールドノートに具体的な詳しいデー タとして記録をまとめた。 2) インタビュー:勤務終了後に対象者へインタ ビューを行った。研究者は、インタビューガ イド等は使用せず、「なぜそのやり方で行う のか」「今どのような判断をしたのか」と勤 務中に質問ができなかった場面について取 り上げて、自由に質問をした。インタビュー は、プライバシーの確保ができる外来の診察 室で行った。インタビュー内容は、対象者の 了解を得てIC レコーダーに記録した。IC レ コーダーに録音された内容から逐語録を作成 した。 4.分析方法  グレッグ , 麻原 , 横山(2016)の質的記述的 研究を参考にして、質的な内容分析により分析 した。 1) フィールドノートとインタビューの逐語録を 熟読した。 2) スムーズに診療や看護を進めるために看護師 が実施している判断や工夫として、看護師が 観察した内容、判断の状況、患者や他の医療 者への声かけ、行動などのデータを意味のあ るまとまりで切片化してコード化した。 3) これらのコードを、相違点、共通点について 比較して分類し、カテゴリー化をした。この 段階で、コードと研究目的を照らし合わせ、 研究目的に合致しないコードは削除して厳選 した。 4) 分類したコードに共通するカテゴリー名をつ けた。 5) 分析結果の妥当性の確保をするために、5 名 の小児看護学を専門とする研究者間で協議を 重ねた。 児科外来の看護師が受付から診察が終わるまで の間に実施している診療や看護をスムーズにす るための技術・工夫」では、看護師が具体的に どのような「診療や看護をスムーズにするため の技術・工夫」を実施しているかについて自記 式の自由回答形式のアンケートで調査を行った。 その結果、「問診を行い情報を得る」「待ち時間 への配慮を行う」「重症患者を優先する」などの 技術や工夫について11 カテゴリー、44 コード を明らかにすることができた。しかし、その調 査で明らかにした技術・工夫は、対象者が文章 で回答できる言語化可能な内容であった。知識 には、特定の状況や個人に依存するため第三者 への伝授が難しい“暗黙知”と、形式的・論理 的で言語によって伝達できる“形式知”がある(村 上 , 2006)。つまり、前回の自記式の調査では、 “形式知”の技術・工夫までしか明らかにするこ とができなかったと考える。  森(2013)は、暗黙知を「表現が困難な判断・ 処理・認識・理解」として4 つの階層を提唱し ている。第1 層は観察可能で見るだけで理解で きる階層、第2 層は見ることは困難だが言語化 できる階層、第3 層は作業者が自覚していない が第3 者により聞き出すことで言語化できる階 層、第4 層は作業者が無意識に行うもので、言 語化も意識化も不可能な階層である。暗黙知を 引き出して表現するためには、観察をして言語 化する方法やインタビューで言語化する方法が あると述べられている。小児科外来での看護実 践について、第1 ~ 3 層の暗黙知を明らかにす るには、実践をしている場面に研究者が行き、 第三者からの視点での参加観察とインタビュー による調査を実施する必要がある。  この暗黙知から形式知への変換の過程とし て、経営学者の野中 , 竹内(1996)は SECI モ デル(Socialization, Externalization, Combination, Internalization)を考案している。この SECI モデ ルは、暗黙知と形式知の両者は互いに作用し合 い成り変わるという前提をもとに、知識変換の 過程として①共同化(メンバー間での共体験、 観察、模倣を通して、個人の暗黙知からグルー プの暗黙知を創造する過程)、②表出化(グルー プでの対話や共同思考によって、暗黙知から形 式知として言語化する過程)、③連結化(表出化 によって言語化された形式知を、統合して新た な知識体系を創造する過程)、④内面化(連結化 された形式知を学習し、個人のノウハウという 形で暗黙知化される過程)の4 つから構成され ている。  日下(2009)は、SECI モデルを参考に看護 師の個人の暗黙知から集団の暗黙知への変換プ ロセスについて調査をしている。経験の浅い看 護師は他人の技術やテクニックを観察して知識 として獲得していた一方で、経験年数が長い看 護師は他者から暗黙知を学ぶ姿勢が少なくなっ ていたことを明らかにしている。また、Benner (2001/2005)の研究では、エキスパートナース は状況全体の深い理解にもとづいて行動してお り、自身の看護実践の状況を他者に説明するこ とが難しくなることがわかっている。このよう に、看護師が経験を積むことで個人の暗黙知は 蓄積されるが、経験を積むほど他者に暗黙知を 伝授しようとしない、またはうまく伝授するこ とができないという傾向がみられる。  これまでに、参加観察によって地域密着型の 中規模病院の小児科一般外来の看護師の働きに ついては調査がされているため(飯村 , 2014)、 本研究では再診患者が多数を占め、継続性がよ り重要視される大学病院の小児科外来をフィー ルドとして調査を行った。これらを明らかにす ることで、外来診察までの待ち時間の減少と子 どもや家族の外来受診に対する満足度向上への 示唆を得られると考えた。 Ⅱ.用語の定義  診療や看護をスムーズにする:藤田ら(2018) を参考として、「限られた時間の中で無駄な時間 や労力を減らし、支障なく必要な診療や看護を 進行すること」と定義した。 判断:「子どもや家族、医療者、外来の状況から、 スムーズに診療や看護を進めるためにどのよう な行動をとるべきかを考え、決定すること」と 定義した。 工夫:「スムーズに診療や看護を進めるために考 えをめぐらせた行動や実践」と定義した。 Ⅲ.目的  小児科外来の診療場面において、スムーズに 診療や看護を進めるための看護師の判断や工夫 について、参加観察とインタビューにより明ら かにする。

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経験年数は13.4 ± 5.9 年、小児看護の経験年数 は7.0 ± 6.3 年、小児科外来の経験年数は 3.8 ± 4.0 年であった。  フィールドノートとインタビューの逐語録を 分析した結果、小児科外来の看護師がスムーズ に診療や看護を進めるために実施していた判断 や工夫は、28 コード(以下、〈 〉で示す)であっ た。これらのコードを、相違点、共通点につい て比較し分類した結果、4 カテゴリー『時間を 短縮するための判断・工夫』『安全に診療をする ための判断・工夫』『関係性を築くための判断・ 工夫』『待ち時間に対する不満を軽減させるため の判断・工夫』となった(表1)。 1.『時間を短縮するための判断・工夫』  〈診察の混み具合や医師の性格を判断して医師 の診察の補助をし、診察が滞らないようにする〉 〈受診患者が多く午前の診察が終わりそうにない と判断した場合は、他に診察できる医師がいな いか連絡をする〉などのコードは、看護師が状 況の判断や工夫をして受付から診療が終わるま での時間そのものを短縮するという共通性から、 カテゴリーを『時間を短縮するための判断・工夫』 とした。 2.『安全に診療をするための判断・工夫』  〈採血を座位で行う幼児期の子どもでは、安全 を確保するために医療者が椅子に座ってその上 に子どもを座らせて後ろから抱っこをして腕を 固定して採血を行う〉〈採血をするため処置室に 呼んだ時に、泣いて受け答えができない場合で は暴れる危険性があるため、臥位で採血をする〉 などのコードは、看護師が安全に支障なく診療 が進められるように判断や工夫をしていたとい う共通性から、カテゴリーを『安全に診療をす るための判断・工夫』とした。 3.『関係性を築くための判断・工夫』  〈看護師に話しかけることを遠慮する母親に は、緊張を解くために看護師側から明るく楽し く話しかけて関係性を築く〉〈医師と看護師が話 しやすいスムーズな関係性を築くために、積極 的に医師とコミュニケーションをとる〉などの コードは、看護師が子どもや家族と関係性を築 き深めることで情報収集がしやすくなり、診療 をスムーズに進められるようにしていた。また、 看護師は医師とも積極的にコミュニケーション をとり、スムーズに診療や看護が進められるよ うに努めていた。これらの共通性から、カテゴ リーを『関係性を築くための判断・工夫』とした。 4.『 待ち時間に対する不満を軽減させるための 判断・工夫』  〈混み合っていて待ち時間が長くなっている時 は、子どもや家族へ診察が遅くなって申し訳な いことを早めに言ってまわる〉〈診察までの待ち 時間が長くなっており、子どもや家族が待ちく たびれている様子をキャッチした時は声をかけ る〉のコードは、待ち時間そのものは短縮しな いが、待ち時間が長いことによる子どもや家族 からの不満を未然に軽減させて、結果的に関係 性をスムーズにするという共通性から『待ち時 間が長いことに対する不満を軽減させるための 判断・工夫』とした。 Ⅵ.考察  カテゴリー『時間を短縮するための判断・工 夫』の〈診察の混み具合や医師の性格を判断 して医師の診察の補助をし、診察が滞らない ようにする〉では、外来の混み具合だけではな く、医療者の状況もみながら診察の補助をして いた。さらに〈子どもが泣くと診察に時間がか かるため、診察室や処置室にはすぐ手の届く場 所におもちゃを置いておき、泣きそうな際には おもちゃを渡す〉〈診察中は子どもと家族の様 子をみながら、次にどのような検査の指示があ るかを予測しつつ準備をして行動する〉のよう に、看護師は状況に合わせてさまざまな準備を しており、必要となった際にはすかさず行動を とっていた。これは、Benner, Hooper & Stannard (2011/2012)の提唱する「臨床における先見性 (clinical forethought)」と同様であり、臨床家が 臨床で起こりうる出来事を予測し、妥当な行動 を起こすといった思考の習慣が行動となって現 れたものと考える。これらは日常の実践の中で 多く見られるにもかかわらず、正式に言葉にさ れることはめったにないと言われており、あえ て言語化されることが少ない看護実践のひとつ であったと考える。  カテゴリー『安全に診療をするための判断・ 工夫』では、〈採血をするため処置室に呼んだ時 に、泣いて受け答えができない場合では暴れる 危険性があるため、臥位で採血をする〉〈受け答 えができる幼児期の子どもが採血をする場合で は、座位または臥位のどちらでしたいかを選択 してもらい安全に採血を行う〉のように、看護 5.調査期間  2017 年 3 ~ 4 月 6.倫理的配慮  研究者が調査依頼書を用いて研究の目的、方 法、倫理的配慮について文書と口頭で対象者へ 説明をして自主的な参加を募った。協力が得ら れた際には同意書に署名をもらい調査を実施し た。調査依頼書には、研究への参加は任意であ り参加の可否にかかわらず不利益を被らないこ と、匿名化による個人情報の保護、学会等への 結果の公表について明記した。調査は、研究者 が所属する大学(承認番号:16-70)と調査施設(承 認番号:2555)の倫理審査委員会の承認を得て 実施した。 Ⅴ.結果  対象者5 名それぞれを 2 日間調査し、調査日 数はのべ10 日間であった。1 回の参加観察時間 は347 ± 25(平均±標準偏差)分、インタビュー 時間は23.8 ± 6.4 分であった。対象者の看護師 カテゴリー コード 診察の混み具合や医師の性格を判断して医師の診察の補助をし、診察が滞らないようにする 受診患者が多く午前の診察が終わりそうにないと判断した場合は、他に診察できる医師が  いないか連絡をする 子どもが泣くと診察に時間がかかるため、診察室や処置室にはすぐ手の届く場所におもちゃを  置いておき、泣きそうな際にはおもちゃを渡す 医師と家族の会話が長くなり過ぎる時は、医師の後ろ側から家族の方へ少しずつ距離をつめて  いき、家族へ時間が迫っていることを暗に伝える 診察中は子どもと家族の様子をみながら、次にどのような検査の指示があるかを予測しつつ  行動する 診察前に検査の指示がある時は、尿検査、採血、画像検査など結果がでるまでの時間を考慮  して検査の順番を決定し、待ち時間を減らす 次回にMRIの検査がある時は寝かせて検査を行うため、母親へ検査前は寝不足ぎみにしておく  ようにと伝え、短時間で検査が終わるようにする 他の看護師が忙しい時は互いにカバーできるように、他の看護師が今どこにいるのか、対応して  いる患者は誰かなどの状況を常に把握し、診察が滞らないようにする 他の看護師とすれ違う際に、短時間で端的に情報交換をする 中待合の廊下を歩く時に、他の看護師の業務が滞っていないか確認を行い、必要時は手伝う 乳児の採血をする際は、翼状針と注射針(滴下法)の両方を用意しておき、準備に手間取らな  いようにする 血管が細く採血が難しい重症心身障害児では、看護師が児の手を温めて血管をわかりやすく  して、短時間で採血ができるようにする 重症心身障害児や肉づきの良い乳幼児、脱水症状のある子どもでは採血が難しいため、採血  の得意な医師へ交代してもらい、短時間で採血ができるようにする 採血を座位で行う幼児期の子どもでは、安全を確保するために医療者が椅子に座ってその上に  子どもを座らせて後ろから抱っこをして腕を固定して採血を行う 採血をするため処置室に呼んだ時に、泣いて受け答えができない場合では暴れる危険性があるため、  臥位で採血をする 受け答えができる幼児期の子どもが採血をする場合では、座位または臥位のどちらでしたいかを選択  してもらい安全に採血を行う 診察室に入ることを嫌がった子どもは採血時に暴れる危険性があるため、処置室担当の看護師に  注意するように情報提供する 採血時に不安が強い子どもや泣いてしまう子どもには、タブレットで動画を見せながら安全に採血を  する 採血を先にするとレントゲン検査時に泣いて暴れて危険と判断した場合には、苦痛の少ないレント  ゲン検査から先に実施する 待合室に行ったときには全体を見渡し、身体状態をアセスメントして診察の順番を早くすべき子ども  がいないかをチェックする 看護師に話しかけることを遠慮する母親には、緊張を解くために看護師側から明るく楽しく話し  かけて関係性を築く 子どもや母親から短時間で必要な情報を収集しやすいように、普段からコミュニケーションを  密にとっておく 子どもや家族と良好な関係を築くために、知っている子どもや家族と会ったら挨拶してひと声かける 受診予定の子どもの電子カルテをみて、学年や年齢などから会話の糸口を探す 診察室に常時いることができない場合は、医師の会話や家族の足音で診察が終わるタイミングを  見計らって終わり際のみ診察室に入り、分からないことがないかなどコミュニケーションをとる 医師と看護師が話しやすいスムーズな関係性を築くために、積極的に医師とコミュニケーションをとる 混み合っていて待ち時間が長くなっている時は、子どもや家族へ診察が遅くなって申し訳ないことを  早めに言ってまわる 診察までの待ち時間が長くなっており、子どもや家族が待ちくたびれている様子をキャッチした時は  声をかける 待ち時間に対する不 満を軽減させるための 判断・工夫 関係性を築くための判 断・工夫 安全に診療をするため の判断・工夫 時間を短縮するための 判断・工夫 表1 小児科外来の看護師がスムーズに診療や看護を進めるために実施していた判断や工夫 表 1 小児科外来の看護師がスムーズに診療や看護を進めるために実施していた判断や工夫

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武庫川女子大学看護学ジャーナル Vol.05(2020) 小児科外来の看護師が実施しているスムーズに診療や看護を進めるための判断や工夫:参加観察とインタビューによる調査 より具体的なタイミングを見計らう内容までは 明らかにされていなかった。これは参加観察と インタビューによって得ることができた具体的 な看護実践のひとつであり、第1 層の暗黙知(森 , 2013)のように観察によって明らかにできる工 夫に加えて、第3 層の暗黙知のように聞き出す ことで言語化できる判断についても明らかにで きたと考える。  暗黙知と形式知の知識変換の4 つの過程を示 したSECI モデル(野中 , 竹内 , 1996)によると、 今回の調査では①共同化と②表出化によって、 看護実践の暗黙知を形式知へと言語化ができた 段階である。看護実践では暗黙知を伝授するた めに形式知への変換が重視される一方で、暗黙 知のままでしか伝授できない部分も存在すると いわれている(村上 , 2006)。今後の調査では、 看護師が判断する決め手となる状況や要因につ いてもより詳細に明らかにしていく必要がある。 さらに、判断の具体的なプロセスや暗黙知を他 者に伝える効果的な方法についても研究を進め、 外来での待ち時間の減少と子どもや家族の満足 度向上へとつなげていきたい。 Ⅶ.結語  小児科外来の診療場面において、看護師がス ムーズに診療や看護を進めるために実施してい た判断や工夫について参加観察とインタビュー で調査した結果、28 コード、4 カテゴリー『時 間を短縮するための判断・工夫』『安全に診療を するための判断・工夫』『関係性を築くための判 断・工夫』『待ち時間に対する不満を軽減させる ための判断・工夫』から構成されていた。小児 科外来の看護師は、外来での経験が積み重ねら れ、限られたマンパワーと労力で効率よくスムー ズに診療や看護を進めていることが考えられた。   謝辞  多忙な中、調査にご協力していただきました 看護師の皆様に心より感謝いたします。本研究 はJSPS 科研費(課題番号 16K12187)を用いて 実施した。本研究において開示すべき利益相反 はない。   文献 Benner, P. (2001/2005). 井部俊子 ( 訳 ), ベナー 看護論新訳版:初心者から達人へ , (pp.11-32), 医学書院.

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受付日:2019 年 9 月 2 日  受理日:2019 年 12 月 9 日 所 属 1)神戸市看護大学 看護学部 2)武庫川女子大学 看護学部 連絡先 *E-mail:[email protected] I.はじめに  近年、在院日数の短縮や患者の高齢化により 看護業務は複雑多様化しており、疾病の発症や 重症化の予防などあらゆる健康段階で切れ目の ない看護の提供などが不可欠であり、医療環境 の変化に対応した高い実践能力が求められてい る。特に中堅看護師は実践の主導的役割を担っ ており、組織の中核的存在であると言える。し たがって看護の質向上のためには、中堅看護師 自らが医療環境の変化に応じて急性期病院から 在宅療養に至るすべての健康段階で求められる 看護実践能力を発揮できるような知識や技術を 獲得するという継続的かつ自律的な能力開発が 必須である。  一方で、中堅看護師の約6 割が求められる 役割の多さに悩みや不満を持っている実態が報 告されており(日本看護協会 , 2010)、また中 堅看護師の8 割が燃え尽き症候群の警戒群で あることが明らかになっている(加藤 , 尾崎 , 2011)。さらに、意欲があっても現状維持に精 一杯という状況であるとも報告されており(辻 ら , 2008)、ライフイベントが多い年代である ことから仕事とのバランスを取りながらキャリ ア発達に苦悩している層であるとの指摘もある (住田 , 坂口 , 森岡 , 鈴木 , 2010)。さらに、民 間病院に勤務する看護職は、厳しい労働環境に 加え満足できない状況下で勤務していることが 予測され心身の負荷が高いとされる(多久島 , 羽田野 , 森塚 , 2014)。しかし、保険診療を行 う急性期病院においては、国の定める診療報酬 により運営されており設置主体の違いによる看 護職の職務満足には大きな差がないことも報告 されている(撫養 , 勝山, 青山, 2009 ; 古谷, 谷, 2008)。したがって、急性期病院においては設 置主体に関わらず厳しい労働環境にあることが 推測される。  以上のような中堅看護師の置かれている状況、 即ち個人要因や環境要因、社会要因は、中堅看 松村明. (2012a). 大辞泉第 2 版下巻 , (p.2982), 小学館. 松村明. (2012b). 大辞泉第 2 版上巻 , (p.1047), 小学館. 女鹿瞳 , 勝田仁美 , 永島美香 , 野口裕子 . (2009). 小児の診療所における看護の現状と役割認 識 , 近大姫路大学看護学部紀要 , 2, 59-64. 森和夫. (2013). 暗黙知の継承をどう進めるか , 特技懇誌 , 268, 43-49. 村上成明. (2006). 看護実践の知識伝授プロセス にみられる暗黙知伝授の有用性の検討 看護 管理者の知識伝授体験より , 日本看護管理学 会誌 , 9(2), 50-57. 永井彩華 , 門谷あゆみ . (2015). 採血を受ける幼 児期後期の患児への熟練看護師の援助 , 日本 看護学会論文集 ヘルスプロモーション , 45, 121-124. 長根綾子. (2005). 小児科外来における母親の ニーズと現状 アンケート調査から見える外来 看護のあり方 , 市立三沢病院医誌 , 12(1), 36-42. 野中郁次郎 , 竹内弘高 . (1996). 知識創造企業 , (pp.83-141), 東洋経済新報社 . 小笠原真織 , 楢木野裕美 . (2013). 採血および点 滴挿入時に看護師が" この子ならできる " と アセスメントしてプレパレーションを実践し ている2 歳児のすがた , 日本小児看護学会誌 , 22(2), 17-24. 高橋貢 , 高橋浄香 , 伊藤香代子 , 久米ひろみ , 森川亜紀 , 曽我部佳代子…一色早恵 . (2004). 小児科外来に対する母親のニーズ , 外来小児 科 , 7(2), 165-167. 谷津裕子. (2015). Start Up 質的看護研究第 2 版 , (pp.49-66), 学研 -資

料-急性期病院に勤務する中堅看護師の自ら学ぶ意欲に関連する要因の検討

Identifying Factors Related to Self-learning Motivation for Mid-level Nurses

in Acute Care Hospital

野寄亜矢子

1)

・清水佐知子

2) 要 旨  本研究は急性期病院に勤務する中堅看護師の自ら学ぶ意欲と個人・環境・社会要因との関連を明ら かにすることを目的とした。公立急性期病院1 施設の経験年数 5 年以上 25 年未満の役職者以外の看護 師201 名を対象に無記名自記式質問紙調査を行った。看護師の自ら学ぶ意欲は野寄 , 清水(2019)が 構築し信頼性、妥当性を確認した22 項目から構成される「看護師の自ら学ぶ意欲の測定尺度」を使用 した。測定尺度の総得点および下位尺度得点を従属変数、個人・環境・社会要因の各項目を独立変数 とし重回帰分析を行った。結果、自ら学ぶ意欲の総得点で環境要因「職場で役割の負担がある」が負 の方向で有意であった(p<0.05)。その他の変数で有意差はなかった。自律的な学習意欲の下位尺度 〔認められたい気持ち〕〔充実感と挑戦〕で環境要因「職場で役割の負担がある」が負の方向で有意であっ た(p<0.01)。中堅看護師の役割負担が自ら学ぶ意欲に関連すると示唆された。 キーワード:自ら学ぶ意欲、中堅看護師、急性期病院

参照

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