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<論説>環境法における私法の役割(後篇)(1)--集合的・公共的利益の実現に対する民法と行政法の相互補完の可能性

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(1)環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). 環境法における私法の役割(後篇. 第四章民法的保護と行政法的保護の一致を基礎づける民法理論 第五章民法的保護と行政法的保護の一致を実現するための条件 第六章結語││本稿の結論と今後の課題. 第一章 はじめにーーー前稿の結論と本稿の課題 第一節前稿の結論と本稿の課題. )(1). B g. 割を意識して﹁環境法における私法の役割﹂を考察する論考の後篇である。この論考の前篇である前稿においては、. 本稿は、環境法における﹁民法と行政法との相互補完﹂という観点を意識して、かつ環境法における﹁私人﹂の役. t 角 Z 久. ││集合的・公共的利益の実現に対する民法と行政法の相互補完の可能性. 第一章はじめに││前稿の結論と本稿の課題 第二章現在の議論における民法的保護と行政法的保護の一致ーーー必要となる考察の視角. j 宰. 第三章公法的規制と私法上の制度の同質性の理論的基礎││行政法学の議論の検討から(以上本号). 宮.

(2) ドイツ環境法における公法と私法の関係について分析及び検討を加えた。そして、その検討の結論として、 日本法に. おける民法的保護と行政法的保護の一致に向けた議論の構造を導き出した。この前稿の結論を基礎として、本稿にお. いては、第二章において、民法的保護と行政法的保護の一致に関する日本法における現在の議論に分析を加え、この. 分析から日本法において考察の必要となる法理論を析出する。そのうえで、第三章以降において、この法理論に考察. ないし五. 一.議論の対象としうる問題 日本法において、以下. 一方当事者が私法上の制度に基づいて権利を主. 政法的保護の一致(民法的保護と行政法的保護の一致)が問題とされていること、 である。. 第二の条件が、私法上の制度に基づいて権利を主張している一方当事者に対する民法的保護とその当事者に対する行. 張している場合で、かつ他方当事者に対して公法的規制が義務づけられている場面における問題であること、である。. 題は、次の二つの前提条件を備えている問題である。第一の条件が、. に示す構造をもっ民法的保護と行政法的保護の一致の議論の対象としうる問. 第 二 節 日本法における民法的保護と行政法的保護の一致の議論の構造. の一致に向けた議論の構造を示す。. 本稿の考察に先立ち、本章第二節において、前稿の結論であるところの日本法における民法的保護と行政法的保護. O. を加える。この考察を通じて、上述した本稿における意味での﹁環境法における私法の役割﹂を明らかにしていきた. 、 L. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学. Aせ.

(3) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). 二.議論における問題の分類. 日本法において民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論を行う際には、公法的規制の遵守を私法上適法と評. 価することに関する問題と、公法的規制の不遵守を私法上違法と評価することに関する問題を区別する必要がある。. 三.議論において考慮される点. 日本法において民法的保護と行政法的保護の一致をはかる場合には、次の五つ又は六つの点が示されなければなら. 第一が、民法的保護と行政法的保護の不一致を回避すべきである、という内容の法政策的根拠である。. ﹁も戸、 O 、PU. ι J. 第二が、公法的規制による評価と私法上の制度に基づく評価との同質性である。. 第三が、公法的規制による評価をもって私法上の制度に基づく評価と捉えることによって、従来から存する私法上 の制度の機能が失われないこと、 である。 第四が、民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論の民法学上の位置づけである。. において示した分類に基づく整理に関わらず考慮されなければなら. 第五が、日本法において民法的保護と行政法的保護の一致を根拠づける民法理論である。 以上、第一ないし第五に掲げた点は、本節. この五つに加えて、当該議論が公法的規制の不遵守を私法上違法と評価する問題を対象としている場合には、さら. 、J V. ﹁も戸、 O. ι J. に第六として、この公法的規制の不遵守の是正を私法上の制度の機能によって達成する必要性を示さなければならな.

(4) 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学. 個別の問題における条件の充足. い。この私法上の制度の機能とは、公法的手段の不全を補完する機能である。. ω. ω i ω. ω ). ドイツ環境法における民法と行政法の調和と相互補完 ﹂一橋法学二巻一号二三七頁(二O O三年)(前稿第一章第一節四 参照。なお、本文中にも述べたように、本稿は﹁環境法における私法の役割﹂を考察する論考の後篇である。そのため、本稿 の問題意識は前篇である前稿のそれを引き継いでいる。前稿及び本稿における問題意識については、前稿の序論(宮津・前掲 一二九頁以下(前稿第一章第一節))において行った検討を参照。. ω. これを一部要約したうえで補筆・修正を加えた宮津俊昭﹁環境法における私法の役割(前比8111ドイツ環境法における民法と 行政法の調和と相互補完 ・(完)﹂一橋法学二巻一号一二九頁、同二号二五五頁、同三号一三一頁(二O O三年)を参照。 前稿及び本稿における﹁環境法における私法の役割﹂の意味については、宮津俊昭﹁環境法における私法の役割(前比扇)││l. *本稿は、ニO O二年五月に一橋大学に提出した博士学位論文(﹁環境法における私法の役割!││私人が公法的規制を私法的手段を 通じて実現する可能性﹂)の後半部分を一部要約したうえで補筆・修正を加えたものである。なお同論文の前半部分については、. ︿ 注 ﹀. 私法規範の性質に基づいた考察が必要となる。. 日本法における民法的保護と行政法的保護の一致の実現形態は、本節二.における分類に基づく整理にかかわらず、. 五.実現形態と私法規範の性質. 満たされているか、という点に関する考察も必要となる。. 個別具体的な問題について、 日本の社会状況のもとで、民法的保護と行政法的保護の一致を肯定するための条件が. 四.

(5) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). 注 一二九頁、同﹁環境法における私法の役割(前他局)11ドイツ環境法における民法と行政法の調和と相互補 ω 宮津・前掲ω ω ω ωω ωω ω ω. ωω. 現在の議論における民法的保護と行政法的保護の一致││必要となる考察の視角. ωω. 完 ﹂一橋法学二巻二号二五五頁、同﹁ ・(完)﹂同三号二二一頁(二OO三年)。 ﹁ ・(完)﹂一コ二頁以下(前稿第二章乃 ﹁ ﹂二五五頁以下、同・前掲注 宮津・前掲注 二四O頁以下、同・前掲注 至第四章)参照。 ﹁ ・(完)﹂一八二頁以下(前稿第五章第四節二.)参照。 宮津・前掲注 ﹁ ・(完)﹂ 一八二頁以 以下、日本法における民法的保護と行政法的保護の一致の議論の構造については、宮津・前掲注. ω ω. はじめに. 仲間開ニ且早. 下(前稿第五章第四節二.)参照。. 笹川一時即. 本章においては、第一章第二節に示した民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論の構造に基づいて現在の日. 本法の議論について検討を加え、この検討に基づいて現在の議論において更に考察の必要となる点を導き出す。. 以下では、まず第二節において、民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論の対象となるための前提条件を満. たし、かつ本稿において検討の対象とする具体的問題を示したうえで、それぞれの問題状況を検討して問題を分類す. &。続いて第三節において、民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論で考慮される必要のある点がそれぞれ日. 本の現在の議論において検討対象とされているか、という問題について検討を加える。 そのうえで、第四節で、. 法において民法的保護と行政法的保護の一致を議論するにあたって更に考察の必要となる点を示す。. なお、本章においては、考慮される必要のある点がそれぞれ現在の議論において検討対象とされているかどうか、. 日. 本.

(6) 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学. という問題についてのみ検討を加える。そのため、第一章第二節に示した民法的保護と行政法的保護の一致に関する. 議論の構造のうち、個別具体的な問題における民法的保護と行政法的保護の一致の条件の充足についての考察、及び 民法的保護と行政法的保護の一致の実現形態についての考察は、第五章で改めて行う。. ,.‘、、 a. 相隣関係と建築基準法の関係を検討対象とする理由. 一.相隣関係と建築基準法の関係についてのこつの問題. 第二節検討対象とする具体的問題. , , ,. 4aEA. ). 本稿では、民法的保護と行政法的保護の一致に関する日本法の議論として、民法上の相隣関係(以下﹁相隣関係﹂. と記述)と建築基準法の関係についての議論を取り上げる。前稿において民法的保護と行政法的保護の一致に関する. 議論の構造を導き出すにあたって検討対象としたドイツ法の議論は、相隣法に関する私法上の制度と公法的規制の問 向 山 戸. 題に関する議論である。ドイツ法においては、他人の所有権に対してまたは所有権と関わりあう第三者の利益に対し. て所有権の範囲を明確にするという意味において相隣法が問題となるとされる。また、前稿で検討したドイツ法の議. 論の対象となる私法上の制度は、 B G B一 O O四条に基づく防御請求権を主張する者の受忍義務を規定する B G B九. O六条、及び B G B八二三条二項及び B G B一O O四条類推に基づいた準ネガトリア請求権であった。そのため、相. 隣法といっても、 日本法におけるような所有権の制限としての相隣関係にとどまるものではなく、生活利益に関する. 紛争もその範障に入る。そこで、本稿で検討対象としうる具体的問題としては、例えば公害事件等の生活利益に関す る紛争も考えられる。.

(7) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). にもかかわらず、本稿では相隣関係と建築基準法の関係についての議論を検討対象とする。この理由としては、ま. ず、相隣関係と建築基準法との関係についての議論において問題となる私法上の制度を明確に示しうることが挙げら. れる。例えば、公害事件等の生活利益に関する紛争では、とりわけ差止に関してその根拠について争いが存在してお. り、別個の考察が必要となる。また損害賠償に関しても、民法七O九条の解釈に関する議論について、別個の考察が. 必要となる。これに対して、相隣関係と建築基準法の関係についての議論において問題となる私法上の制度は、条文. 上あるいは判例上明確に示されている規範が対象となっている。以上に加えて、相隣関係と建築基準法との関係につ. いては、民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論が従来から蓄積されていることも、この関係を本稿で検討対 象とする理由の一つである。 検討対象とするこつの具体的問題とその分類. 上までの建築を許容する建基法六五条を遵守している建築物について、民法二三四条一項が建物の建築の際に境界線. 建基法六五条の建物と民法二三四条一項の関係についての議論は、防火建物を持つ建物の建築を行う場合に境界線. 建築基準法六五条の建物と民法二三四条一項の関係. 要件との関係についての議論、をそれぞれ検討対象とする。そして、この二つの議論は次のように分類される。. 道路の位置指定を受けた私道(以下﹁位置指定道路﹂と記述)の幅員と私道通行権の要件としての﹁現実の道路開設﹂. ﹁建基法﹂と記述)六五条の建物と民法二三四条一項の関係についての議論、及び建基法四二条一項五号に基づいて. する議論の対象とするための二つの前提条件をみたす議論として、本稿では、建築基準法(以下条文を示す際には. 相隣関係と建築基準法との関係について議論がなされている事例のなかで、民法的保護と行政法的保護の一致に関. ( 2 ) ( a ).

(8) 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学. から五0 センチメートルの距離をおくことを定めているにもかかわらず、 その建築物を私法上適法と評価しうるか、. という議論である。 そのため、 この議論は、公法的規制の遵守を私法上適法と評価することに関する議論と分類され る 。 ,. .BE. z. h 、 、u 位置指定道路の幅員と﹁現実の道路開設﹂要件 (. この議論において問題となる位置指定道路は幅員を四メートル以上とすることが義務づけられている (建基法四二. 条一項)。他方、この位置指定道路に関しては、最判一九九七(平成九)年十二月十八日民集五一巻一 O号四二四一. 頁(以下﹁平成九年判決﹂)が、次の三つの要件のもとに、人格権的権利に基づいた私法上の妨害排除請求を認めた。. 第一の要件は、位置指定道路が現実に開設されていることである。第二の要件は、この道路を通行する者に日常不可. 欠の利益が認められることである。そして第三の要件は、通行の受忍によって通行者の通行利益を上回る著しい損害. が敷地所有者に生じるなどの特段の事情のないことである。以上のような位置指定道路の幅員と私道通行権の関係に. ついて、位置指定道路において公法的規制である道路の幅員に関する基準が遵守されていない場合、私法上の請求権. の要件である﹁現実の道路開設﹂要件を不要とするどうか、という点が議論されている。 いいかえれば、この議論は、. 現実に開設されている道路の幅員が四メートルに達していない場合に、 その四メートルに達していない部分について. 私法上違法と評価することができるか、という議論である。そのため、この議論は、公法的規制の不遵守を私法上違 法と評価することに関する議論と分類される。.

(9) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). に示した二つの問題に加えて、本稿では、民法的保護と行政法的保護の一致の議論の対象とするための. 二.﹁相隣関係と都市計画との連携﹂に関する議論(秋山靖浩助教授の見解) 本節一. 二つの前提条件をみたす議論として、環境法において﹁私法の役割﹂を積極的に捉える最近の学説のうち、秋山靖浩 ω . ω. 助教授の示す﹁都市計画と相隣関係の連携﹂を検討対象とする。この秋山助教授の見解では、建築主事によって建築. 確認処分が下されている建物の建築について申し立てられた建築工事禁止の仮処分に対する名古屋地方裁判所の決定. ω. を対象として考察が進められている。建築確認とは、﹁当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれ. に基づく命令及び条例の規定に適合する﹂旨を、公の権威を持って確定し宣言する行為である。すなわち、本件事案. は、公法的規制の遵守が確認されている行為を私法上適法と-評価することができるか、という問題である。そこで、. 本件を検討対象とする秋山助教授の見解は、公法的規制の遵守を私法上適法と評価することに関する議論であると分 類しうる。. 一.公法的規制の遵守を私法上適法と評価することに関する議論. 第三節民法的保護と行政法的保護の一致に関する現在の議論の検討. t. 4EEA. ) 考察の視角 , ,、 、 白. 公法的規制の遵守を私法上適法と評価する民法的保護と行政法的保護の一致の議論においては、本稿第一章第二節. 建築基準法六五条の建物と民法二三四条一項の関係. において示した第一ないし第五の点を考慮する必要がある。. ( 2 ).

(10) 、 、. h u r ' ' t. 現在の議論状況. ω. 民法的保護と行政法的保護の一致を要請する法政策的根拠. 議論の検討. 藤正己裁判官による反対意見が付されている。. 師. 五頁(以下﹁平成元年判決﹂と記述)は特則説を採用した。ただし、平成元年判決には、非特則説を基礎においた伊. の一致を主張する立場と捉えられる。この問題について、最判一九八九(平成元)年九月十九日民集四三巻八号九五. 六五条に優先すると解する﹁非特則説﹂が対立している。この議論においては、特則説が民法的保護と行政法的保護. 同WMW. する﹁特則説﹂と、隣地所有者の同意あるいはその地域に接境建築を許す慣習がない限り民法二三四条一項は建基法. 建基法六五条の建物と民法二三四条一項の関係についての議論では、建基法六五条を民法二三四条一項の特別と解. ( a ). ことも特則説の根拠として示されている。これらは、いずれも建基法六五条による評価と民法二三四条一項に基づく. ため今日の状況にふさわしくないこと、及び旧市街地建築物法一三条の立法趣旨が建基法六五条に引き継がれている. とが挙げられている。また、民法二三四条一項は耐火外壁の建築物ではなく日本古来の木造建築に関するものである. 特則説における根拠として、建基法六五条を民法二三四条一項の特則と解さなければ規定の意味を見出しえないこ. 公法的規制による評価と私法上の制度に基づく評価との同質性. いう法政策的な考慮であると捉えられる。. な考慮を推定する見解が存在する。この考慮の内容は、民法的保護と行政法的保護の不一致を回避すべきである、と. 平成元年判決が特則説を採用した背景として、現状において非特則説を採ると混乱するおそれがあるという実質的. ( 7 つ. 付 ). 第5 1巻第 3・4号. 近畿大学法学.

(11) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). 評価の同質性に関する主張と捉えられる。. しかし、 その内容にまで立ち入って検討すると、建基法六五条による評価と民法二三四条一項による評価は同質で. ある、ということを基礎づける理論構成が明確に提示されていない。むしろ、理論的に同質であるかどうかは別とし. ω. て、現在の状況に基づけば同質であるとしか解しょうがないという消極的な根拠づけであると評価せざるをえない。. 他方、この点については、民法二三四条一項が相隣利益の観点から私人間の権利関係を規律しているのに対し、建. 基法六五条は建築行政上の公共的見地から接境建築の許容を規定したものにすぎないことが非特則説において主張さ. ω. れている。この主張も建基法六五条よる評価と民法二三四条一項に基づく評価の同質性に関わる主張である。なぜな. ら、この主張は、公法的規制における評価が私法上の制度に基づく評価と同質でないことを理由として、民法的保護. と行政法的保護の一致を否定していると捉えられるからである。特則説の側から民法的保護と行政法的保護の一致を 主張する場合には、この批判を克服する理論構成を提示する必要があろう。 私法上の評価を行うことにより果たされてきた私法上の制度の機能. ω. の念頭になかったことが示されている。しかし、立法者の意思のみから当該規定の機能が示されるものではない。さ. 州側. 失われることが指摘されていると捉えられよう。他方、この点に関して特則説の側からは、このような機能が立法者. MW. 護と行政法的保護を一致させることによって、私法上の評価を行うことにより果たされてきた私法上の制度の機能が. し効率的な利用をはかるという見地だけから失われるべきではないという根拠が挙げられている。これは、民法的保. して示されたうえで、この民法二三四条一項の機能は建基法六五条を基礎ゃつける防火上の見地及び土地の合理的ない. 非特則説においては、早い者勝ちの防止並びに日照及び採光等の生活環境利益の確保が民法二三四条一項の機能と. 吋 (.

(12) らに、特則説の側においても、火災予防あるいは延焼防止さえできれば他の生活利益を犠牲としても良いのか、とい. う点が特則説の弱点であることを指摘する見解もある。これらの点を踏まえれば、特則説の側から、私法上の評価を. 行うことにより果たされてきた私法上の制度の機能が失われないことは十分に示されていないといえよう。 民法的保護と行政法的保護の一致の民法学上の位置づけと民法上の理論的根拠. 特則説において、建基法六五条を民法二三四条一項の特別と解する際に、建基法六五条をもっぱら民法の規定を修. 正する私法規定であるとする見解と、公法的規制としての性質と私法規定としての性質を兼ね備えているとする見解. が存在している。すなわち、特則説においては、いずれにしろ、建基法六五条が公法的性質だけでなく私法的性質を 備えているとされる。. しかし、非特則説の立場からは、建基法六五条が民法二三四条一項の特則であると明示されていないこと、及び同. 条の前後に公法的性質のみをもっ規定しかないことが指摘されている。また、民法二三四条一項が私人間の権利関係. ω. を律しているのに対し、建基法六五条は建築行政上の公共的見地から接境建築の許容を規定したものにすぎず、相隣. 的生活利益の配慮をしていないという主張もなされている。そして、これら非特則説の立場からの批判に対応する特 則説の側からの主張はなされていない。. このような状況を鑑みれば、建基法六五条を民法二三四条一項の特則であると捉えるためには、上述した非特則説. の主張に対応した民法的保護と行政法的保護の一致の民法上の位置づけ及び民法理論上の根拠づけを提示する必要が 帥. ﹁相隣関係と都市計画との連携﹂(秋山靖浩助教授の見解). 184-. L エ ). あろう。 ( 3 ). 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.

(13) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). ﹁相隣関係と都市計画との連携﹂の概略. 民法的保護と行政法的保護の一致を要請する法政策的根拠. 議論の検討. 付 ). 公法的規制による評価と私法上の制度に基づく評価との同質性. 保護の不一致を回避すべきである、という法政策的な考慮であると捉えうる。. 川胴. こと、及び都市計画で指定された内容を実効的に実現に移す必要性を掲げている。これらは、民法的保護と行政法的. 秋山助教授は﹁相隣関係と都市計画との連携﹂の根拠として、当事者における予測可能性及び法的安定性を高める. 、 ‘. Jt. LU. 、、.,,,. いて都市計画との適合性を理由として民法上の差止請求を排除することはできないと結論づける。. 生ずる騒音等の受忍限度との関係が問題となった事案を例に挙げて検討を加え、この検討の結果として、日本法にお. そして、この条件が日本法において満たされているかどうかについて、秋山助教授は、建築確認を受けた建物から. 精密な制御の仕組みが都市計画の枠組の中でも制度化されていることである。. 体化することによってきめ細かな衡量を行うことである。第二の条件は、相隣私法におけると同程度の個別具体的で. 秋山助教授は、このような連携が成り立っための条件として次の二つを掲げる。その第一の条件は、計画指定を具. 指定された内容を実効的に実現に移す必要性である。. ω. 第一の理由が、当事者における予測可能性及び法的安定性を高めることである。そして、第二の理由が、都市計画で. 差止請求の排除を示している。そして、この連携の必要性を根拠守つける理由として次の二点が挙げられている。その. ω. 秋山助教授は、﹁相隣関係と都市計画との連携﹂の具体的内容として、都市計画との適合性を理由とした民法上の. ( a ). η (.

(14) 秋山助教授は、﹁計画指定を具体化することを通じたきめ細かな衡量﹂という﹁相隣関係と都市計画との連携﹂の. 第一の条件を導き出すにあたって、相隣関係において調整対象とされる私益が都市計画の策定に際していかなる程. 度・範囲で考量されているか、という視点を基礎においている。すなわち、この秋山助教授の示す第一の条件におい. ては、計画指定の具体化によるきめ細かな衡量が行われていれば、相隣関係において調整対象とされる私益が都市計. 画の策定に際して十分な程度・範囲で考量されている、という理解が内在しているといえよう。このことと、都市計. 画との適合性を理由とした民法上の差止請求の排除という意味を持つ﹁相隣関係と都市計画の連携﹂の条件として上. 私法上の評価を行うことにより果たされてきた私法上の制度の機能. 御の仕組みが都市計画の枠組の中でも制度化されていることである。都市計画の枠組の中に相隣私法と同様の仕組み. -186-. 述した第一の条件を提示していることを合わせて鑑みれば、秋山助教授は、計画指定の具体化によるきめ細かな衡量. を通じて相隣関係において調整の対象とされる私益が十分な程度・範囲で考量されていれば、都市計画(公法的規. 制)における評価が私法上の制度に基づく評価と同質と捉えられる、と解していると考えられうる。. しかし、秋山助教授自身、相隣関係と都市計画にはそれぞれ独自の目的と機能領域が存在していることを明確に示. ω. している。この点を踏まえれば、秋山助教授の見解において、相隣関係において調整の対象とされる私益が十分な程. 度・範囲で考量されることをもって都市計画(公法的規制)における評価を私法上の制度に基づく評価と同質である. ( ウ ). と捉えることを基礎づける理論構成が必要となると考えられる。しかし、秋山助教授はこの理論構成を明示していな O. 秋山助教授の掲げる﹁相隣関係と都市計画との連携﹂の第二の条件は、相隣私法と同程度の個別具体的で精密な制. し1. 第5 1巻 第 3・4号 近畿大学法学.

(15) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). が制度化されていないということは、従来私法上の評価を行うことによって果たされてきた私法上の制度の機能が失. われることを意味する。そこで、秋山助教授の掲げる第二の条件は、公法的規制による評価をもって私法上の制度に. 基づく評価と捉えることによって従来から存する私法上の制度の機能の失われないことが示されること、を要求して いると捉えられる。 民法的保護と行政法的保護の一致の議論の民法学上の位置づけ. 排除を根拠づける民法理論は明示されていない。. ﹁都市計画と相隣関係の連携﹂を根拠づける民法理論、すなわち都市計画との適合性を理由とした民法上の差止請求の. 上述仲に示したように、秋山助教授は自らの議論を﹁生活利益秩序﹂に位置づけていると理解されうる。しかし、. w 民法的保護と行政法的保護の一致の民法上の理論的根拠 同. 計画との連携﹂という自らの見解を﹁生活利益秩序﹂における議論と位置づけている、と理解されえよう。. る。すなわち、秋山助教授は、広中教授の提示する市民社会に成立する諸秩序の理解を基礎として、﹁相隣関係と都市. 側. とは、広中俊雄教授の提示した市民社会に成立する諸秩序のうち、﹁人格秩序﹂の外郭秩序として示された秩序であ. 授が、生活利益秩序と法との関係についての議論から示唆を受けたとしている点である。ここでいう﹁生活利益秩序﹂. 関. ての議論、及び生活利益秩序と法の関係についての議論から示唆を受けたとする。ここで重要となるのは、秋山助教. 帥. 秋山助教授は、﹁相隣関係と都市計画との連携﹂に関する自らの見解について、借地借家法と都市法の関係につい. L エj.

(16) 考察の視角. 二.公法的規制の不遵守を私法上違法と評価することに関する議論 l ' ' '. 1i 、 、 〆'at 、 、. 公法的規制の遵守を私法上適法と評価する民法的保護と行政法的保護の一致の議論においては、第一章第二節三.. 現在の議論状況. 位置指定道路の幅員と﹁現実の道路開設﹂要件. において示した第一ないし第六の点を考慮する必要がある。. , ,、 ‘ 巴 ・. aE. h u. 民法的保護と行政法的保護の一致を要請する法政策的根拠. 議論の検討. 必要とする立場をとっている。. ω. する立場が民法的保護と行政法的保護の一致を主張する立場であると捉えられる。判例は﹁現実の道路開設﹂要件を. を必要とする見解と、それを不要とする見解が対立している。この議論においては、﹁道路の現実開設﹂要件を不要と. 同開同州. 建築基準法上の位置指定道路の幅員と﹁現実の道路開設﹂要件の関係についての議論では、﹁現実の道路開設﹂要件. ( a ) ( 2 ). ﹁現実の道路開設﹂要件を必要とする立場においては、現実に開設されていない道路では生活の本拠と外部との交通. 公法的規制による評価と私法上の制度に基づく評価との同質性. 回避すべきである、という法政策的な考慮と捉えられうる。. 状態を容認することになる、という点を疑問視する見解がある。この内容は、民法的保護と行政法的保護の不一致を. ﹁現実の道路開設﹂要件を不要とする見解においては、現実の道路開設を常に必要とすると事実上建築基準法違反の. ケ ) ( イ ). 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.

(17) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). という利益が日常生活上不可欠なものとなりえない、という根拠を示す見解が存在する。これは、建基法四二条一項. 五号における評価と私法上の制度である人格権的権利としての私道通行権における評価が異なる性質を持っている、. ω. という内容を示す主張であると捉えられる。また、﹁現実の道路開設﹂要件を必要とする立場においては、﹁現実の道. ω. 路開設﹂要件を﹁私道所有権に関わる管理処分行為﹂と評価する主張もある。この主張では、﹁現実の道路開設﹂の私. 道所有者による実現が、公法的規制における評価と私法上の制度における評価の同質性の基礎とされている。以上に. 示した主張はいずれも、公法的規制による評価と私法上の制度に基づく評価との同質性に関する主張であるといえよ. ゆっ。. 他方、﹁現実の道路開設﹂要件を不要とする立場から示される根拠としては、建築基準法あるいは道路指定処分の. ω. 目的・保護法益に着目した根拠が示されている。これらの根拠を示す見解は、建築基準法あるいは位置指定処分の目. 的及び保護法益が私法上の制度のそれと重なっていることを理由として、 いずれも建築基準法あるいは位置指定処分. と私法上の制度が同じ性質の評価を行っている、と主張していると捉えられうる。しかし、﹁現実の道路開設﹂要件. を不要とする立場から示されるのは、建築基準法が公共的利益の実現をはかっていること、及び建築基準法又は道路. 位置指定が現実に私的な土地利用の相互的調整も実現していること又は実現すべきであること、 のみである。どのよ. うな理論構成のもとに、建築基準法あるいは位置指定処分と私法上の制度が同じ性質の評価をしていると捉えられる. のか、という点は明示されていない。そして上述した﹁現実の道路開設﹂要件を必要とする見解の示す主張を踏まえ. れば、﹁現実の道路開設﹂要件を不要とする立場においては、両者の同質性を基礎づける理論構成を示す必要がある といわざるをえない。. -189-.

(18) 私法上の評価を行うことにより果たされてきた私法上の制度の機能. 民法的保護と行政法的保護の一致を主張する場合には、私法上の評価を行うことにより果たされてきた私法上の制. 度の機能が失われないことを示す必要がある。しかし、﹁現実の道路開設﹂要件を不要とする立場から、この点に関. する主張はなされていない。この理由として、﹁現実の道路開設﹂要件が公法的規制における評価と私法上の制度の評. 価の異質性から導き出された制約であることが考えられる。﹁現実の道路開設﹂要件を必要とする立場においては、公. 法的規制による評価と私法上の制度に基づく評価との異質性から﹁現実の道路開設﹂要件を必要とする見解、及び公. 法的規制による評価と私法上の制度に基づく評価の同質性を基礎づけるために﹁現実の道路開設﹂要件を必要とする. 見解が示されている。いずれの見解においても、﹁現実の道路開設﹂要件が私法上の制度独自の積極的な機能を果たし. ているというよりは、むしろ公法的規制における評価と私法上の制度の評価の異質性から導き出されているといえ. る。そのため、この議論においては、公法的規制における評価と私法上の制度に基づく評価の同質性が示されれば、. 従来私法上の評価を行うことにより果たされてきた私法上の制度の機能を議論の対象とする必要はなくなるといえよ. ω. ︾つ。. 民法的保護と行政法的保護の一致の民法学上の位置付け. この議論における民法的保護と行政法的保護の一致の民法学上の位置づけは、﹁現実の道路開設﹂要件を不要とする 立場をとる池田恒男教授の見解と吉田克己教授の見解によってそれぞれ示されている。. 池田教授は、建築基準法が、衛生と防災及び良好な都市生活の確保を目的とする法律であり、背後の私人同士の関. 係の設定を含んでいると主張する。そのうえで、適法に成立した建築法規は原則として土地利用に関する地域的公序. 190-. ( ウ ) 件 ). 第5 1巻第 3・4号 近畿大学法学.

(19) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). を形成し、民事法秩序の要素をなすとする。. 他方、吉田教授は、位置指定道路と私道通行権の関係についての議論を、広中俊雄教授が﹁人格秩序﹂の外郭秩序 として示した﹁生活利益秩序﹂に位置づけている。. 同 民法的保護と行政法的保護の一致の民法上の理論的根拠. この議論における民法的保護と行政法的保護の一致の民法理論上の根拠づけに関しても、池田恒男教授の見解と吉 田克己教授の見解が問題となる。. 上述伺に示したように、池田教授は、建築法規が原則として土地利用に関する地域的公序を形成し、民事法秩序の. 要素をなすと主張している。しかし、この池田教授の見解においては、建築基準法を民事法秩序のなかに位置づける. ことによって、なぜ、位置指定道路の幅員と私道通行権に関する議論において﹁現実の道路開設﹂要件が不要となる. のか、という点が明確に示されていない。 いいかえれば、どのような民法理論に基づいて公共的利益を目的とした公. 法的規制(建築法規)による評価が私人間の利益調整を目的とする私法上の制度の要件である﹁現実の道路開設﹂要 件に影響を及ぼすのか、という点は明らかにされていない。. 他方、吉田教授は、上述仲に示したように、位置指定道路と私道通行権の関係についての議論を﹁生活利益秩序﹂. に位置づけている。この生活利益秩序によって確保される利益について、吉田教授は、公共の利益と私的利益という. 二重の性格を帯びており、この二つの利益の聞には相互依存関係が見出されるとする。そして、﹁通行の自由権﹂はこ. の二重の利益のうち個別的私的利益に着目したものであるが、個別的な﹁通行の自由権﹂によって一般的な公衆の通. ω. 行の利益もまた確保され、﹁私人による法の実現﹂がはかられるとされる。この理解を基礎として、吉田教授は、﹁現.

(20) 実の道路開設﹂要件について、建築基準法上の私道における通行権の内容をあるべき通行状態の実現 H法の実現に寄. 与する権利としてより積極的に位置づけるならば、この要件を常に要求する必要はなくなると主張する。しかし、ど. のような民法上の理論的根拠に基づいて建築基準法上の私道における通行権をあるべき通行状態の実現リ法の実現に 寄与する権利として位置づけるか、という点はここでは明らかにされていない。. 以上の検討から、この議論において、民法的保護と行政法的保護の一致を根拠守つける民法理論は明示されていない. 私法上の制度の機能を通じた公法的規制の不遵守の是正. といえよう。. 一 土 A山. め. る現在の議論の中で検討対象とされているか、という問題について検討を加えてきた。. て、それぞれについて、前稿におよび本稿において示した議論の構造に従って考慮される必要のある点が日本におけ. の幅員と﹁現実の道路開設﹂要件に関する議論を公法的規制の不遵守を私法上違法と評価することに関する議論とし. に関する秋山助教授の見解を公法的規制の遵守を私法上適法と評価することに関する議論として、また位置指定道路. 以上、本節においては、建築基準法六五条の建物と民法二三四条一項の関係及び﹁相隣関係と都市計画との連携﹂. と. 上の制度を通じてそれを実現する必要性を指摘していると評価することができる。. 示されている。これらの見解は、建築基準法上の道路の幅員の確保を公法的手段によって実現する困難を示し、私法. 開. ﹁現実の道路開設﹂を不要とする立場からは、建築法規違反行為の是正のための行政的強制が機能していないことが. ( カ ). 一. 一. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.

(21) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). 本節の検討からは、まず、それぞれの議論において考慮されている点として、次の四つの点を挙げることができる。. 第一が、民法的保護と行政法的保護の不一致を回避すべきである、という内容の法政策的根拠である。第二が、公法. 的規制における評価を私法上の制度に基づく評価として捉えることを通じて従来私法上の評価を行うことによって果. たされてきた私法上の制度の機能が失われないか、という点である。第三が、公法的規制の不遵守の是正が私法上の. 制度の機能を通じて達成される必要性である。 そして、第四が、民法的保護と行政法的保護の一致に関わる議論の日 本法における民法上の位置づけである。. 他方、 それぞれの議論において考慮されていない点としては、次の二つの点がある。第一が、公法的規制による評. 価と私法上の制度に基づく評価との同質性を基礎づける理論構成である。第二が、 いかなる民法理論のもとに公法的. 規制における評価を私法上の制度に基づく評価と捉えるか、という民法理論上の根拠づけである。. 考慮されていない二つの点の理論的考察の必要性. 一.本稿における更なる考察の対象. 第四節本稿における考察の視角. E. 4EE. ム , 、 、/, 1 、 ・. 以上本章第三節における検討から示されるように、現在の日本の議論では民法的保護と行政法的保護の一致に関す る議論の構造のもとで考慮される必要があるにもかかわらず考慮されていない点がある。. 現在の議論において考慮されている四つの点のうち、法政策的根拠、従来果たされてきた私法上の制度の機能に関. する問題、 そして公法的規制の不遵守の是正が私法上の制度の機能を通じて達成される必要性は、 それぞれ実際上の.

(22) 機能的な問題である。他方、考慮されていない二つの点は、 いずれも民法的保護と行政法的保護の一致の議論におい. て実際上の機能的な問題を基礎づけるための理論的な問題である。そのため、民法的保護と行政法的保護の一致に関. する議論を行うにあたっては、考慮されていない二つの点について理論的考察を加えることが必要となる。 理論的考察の具体的内容 公法的規制における評価と私法上の制度に基づく評価の同質性の理論的基礎. まず、公法的規制による評価と私法上の制度に基づく評価との同質性の基礎となる理論構成を考察するにあたって. は、公法的規制が実体法的にいかなる性質を備えているのか、という問題を対象として考察を加えなければならない。. この公法的規制の性質が私法上の制度の性質と実体法的に同質である場合には、公法的規制における評価を私法上の. 制度に基づく評価と同質と捉えることができよう。そのため、この理論構成の考察に際しては、行政法学の議論にお. a. 公法的規制の評価を私法上の制度の評価と捉えることを基礎づける民法理論. いて公法的規制がいかなる性質を備えていると捉えられているのか、という問題を考察対象とする必要がある。 省. h u. 、 、 ‘ , , , , ‘ , ,、. 他方、 いかなる民法理論のもとに公法的規制における評価を私法上の制度に基づく評価と捉えるか、という民法理. 論上の根拠を考察するにあたっては、まず、民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論が民法学の対象領域に含. まれるのか、という意味における民法上の位置づけを確認する必要がある。そのうえで、公法的規制の遵守を私法上. 適法と評価することに関する議論及び公法的規制の不遵守を私法上違法と評価することに関する議論について、それ. 公法的規制の遵守を私法上適法と評価することに関する議論. -194-. ( a ) ( 2 ). ぞれ以下の問題を対象として考察を行う必要がある。 ( 7 つ. 第5 1巻第 3・4号 近畿大学法学.

(23) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). 本稿では、. 一方当事者 ( X) が権利を主張し、他方当事者 (Y) に公法的規制が義務づけられているという場面を. 問題としている。この場面において、公法的規制の遵守を私法上適法と-評価するということは、 Yが公法的規制を遵. 守 し て い る 場 合 に 、 私 法 上 の 違 法 性 の 評 価 を 行 わ ず に X のY に対する私法上の権利が排除されることを意味してい. る。そこで、公法的規制における評価を私法上の制度に基づく評価と捉える場合には、 いかなる民法上の理論的根拠 のもとで X の私法上の権利が制限されるのか、という問題が生じる。. 他方、 Yの立場からは、自らの公法的規制に遵守によって、自らの行為が私法上の違法性の評価を経ずに私法上適. 法と扱われることになる。ここで Yは、自らの公法的規制に遵守によって X の私法上の権利に対応した法的拘束であ. るところの義務から解放されることとなる。すなわち、 Y の立場において、﹁公法的規制の遵守を私法上適法と捉え. る﹂という意味は、 X の私法上の権利の制限と同じ意味を持つ。そのため、いかなる民法上の理論的根拠のもとで X. の私法上の権利が制限されるのか、という問題を考察することは、 Y の行為が私法上の評価を経ずに私法上適法と扱. われることになるのはいかなる民法上の理論的根拠に基づくのか、という問題を考察することともなる。. 以上の検討から、公法的規制の遵守を私法上適法と評価することに関する議論については、公法的規制における評. 価を私法上の制度に基づく評価と捉えることによって私法上の権利が制限されるのはいかなる民法上の理論的根拠に 基づくのか、という問題を対象とした考察が必要となる。 公法的規制の不遵守を私法上違法と評価することに関する議論. Y) が公法的規制を 一方当事者 (X) が権利を主張し、他方当事者 (. 義務づけられているという場面を問題としている。この場面において、公法的規制の不遵守を私法上違法と評価する. 上述切においても述べたように、本稿では、. ( イ ).

(24) 、 Y の公法的規制の不遵守によって、公法的制限を私法的制限と捉えることによって生じる Yの私法上の義 こで Xは. 生じる。. ということは、本来公法的手段を通じて実現されることが予定されている Y に対する公法的規制による制限(公法的. 第5 1巻第 3・ 4号. よって私法上の権利が制限されるのは、 いかなる民法上の理論的根拠に基づくのか、という問題を対象とした考察で. 象とした考察を行う必要がある。 その第一が、公法的規制における評価を私法上の制度に基づく評価と捉えることに. 以上の検討から、公法的規制の不遵守を私法上違法と評価することに関する議論については、次の二つの問題を対. のか、という点も問題としなければならない。. 公法的規制の実現主体として予定されていない Xが 、 どのような理論構成のもとで、 その制限を実現する主体となる. ならないといえる。すなわち、 Yに対する公法的制限が私法的制限であると捉えられる場合に、もともと Y に対する. うる場合に、なぜ XがY の公法的制限に対応する私法上の権利を得るのか、という点も問題として取り扱わなければ. じて実現されることが予定されるものであるからである。このことから、 Y に対する公法的制限を私法的制限と捉え. の理論的根拠のみでは説明されえない。なぜならば、 Yに課せられた公法的規制による制限は、本来公法的手段を通. 務に対応した権利を得ることになる。しかし、このことは、 Yの私法上の権利が制限されることを基礎づける民法上. い場合に、 X のY に対する私法上の権利の判断において私法上の違法性の評価が行われないことを意味している。こ. 他方、 Xの立場からみると、公法的規制の不遵守を私法上違法と-評価することは、 Yが公法的規制を遵守していな. 価と捉える場合には、 いかなる民法上の理論的根拠に基づいて、 Yの私法上の権利が制限されるのか、という問題が. 制限)を、私法的制限と捉えることを意味している。そのため、公法的規制における評価を私法上の制度に基づく評. 近畿大学法学.

(25) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). ある。その第二は、公法的規制における評価を私法上の制度に基づく評価と捉える場合にいかなる理論構成に基づい. て私法的制限と捉えられる公法的規制を実現する主体として私人が認められるのか、という問題を対象とした考察で ある。 民法理論上考察の必要となる二つの問題. で示したように、民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論において必要となる理論的考察は、公. 法的規制における評価と私法上の制度に基づく評価の同質性を基礎づける理論構成の考察と、公法的規制における評. ω .. 本節一. 二.本稿における考察ーーー第三章以下の構成. 不遵守を私法上違法と評価することに関する議論において必要となる根拠である。. 限と捉えられる公法的規制を実現する主体として私人が認められるのか、という問題である。これは、公法的規制の. 第二が、公法的規制における評価を私法上の制度に基づく評価と捉える場合にいかなる理論構成のもとで私法的制. る根拠である。. ることに関する議論においても、公法的規制の不遵守を私法上違法と-評価することに関する議論においても必要とな. はいかなる民法上の理論的根拠に基づくのか、という問題である。これは、公法的規制の遵守を私法上適法と評価す. 第一が、公法的規制における評価を私法上の制度に基づく評価と捉えることによって私法上の権利が制限されるの. 次の二つの問題である。. 以上の検討から、民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論について、民法理論上考察が必要とされるのは、. ( ウ ).

(26) 価を私法上の制度に基づく評価と捉える基礎となる民法理論の考察である。. 以下、第三章では、公法的規制における評価と私法上の制度に基づく評価の同質性を基礎づける理論構成について、. 近年の行政法学の議論を基礎として考察を加える。続いて、第四章において、公法的規制における評価を私法上の制. 度に基づく評価と捉えることを基礎守つける民法理論に考察を加える。 そして第五章において、第三章及び第四章の考. 察を踏まえて、公法的規制の遵守を私法上適法と評価することに関する議論と、公法的規制の不遵守を私法上違法と. 評価することに関する議論のそれぞれについて、問題となる民法的保護と行政法的保護の一致を肯定するための条件. を示し、 その条件を本章において検討対象とした相隣関係と建築基準法の関係についての具体的問題にあてはめ、 れぞれの議論における民法的保護と行政法的保護の一致の可能性を検討する。. ︿ 注 ﹀. ωω. 弓場町山. ωω. 噌. o. ︼ S ∞pmNm 出口-H・ 回m E e ¥ n H・﹃・回目凶己円¥∞ g E O mwoFO ロ50FY -kr戸内J ﹁ ・(完)﹂一コ二頁以下(前稿第三章及び第四章)参照。 ﹁ ﹂二五五頁以下、同・前掲注 宮津・前掲注 N ・参照。 ドイツ環境私法における相隣法の位置付けに関しては、百。。1 0円wdロヨ巳可2E N・﹀丘L U -m白河口 - H民 ∞心に﹂法教二五八号六二頁以 差止の根拠に関する現在の議論状況については、大塚直﹁環境訴訟の展開││民事差止訴訟を∞ 中. 下(二OO二年)参照。. ω ω ω ω. ω 民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論の対象とするための前提条件については、本稿第一章第二節一.参照 m 民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論の対象としうる問題の分類については、本稿第一章第二節二.参照。 ω 民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論において考慮される必要のある点については、本稿第一章第二節三.参照。 ﹁ ﹂二五五頁以下、同・前掲注 ﹁ ・(完)﹂一二二頁以下(前稿第二章乃 ωω ω 宮津・前掲注ω二四O頁以下、同・前掲注ωω 至第四章)参照。 コ. そ. 第5 1巻第 3・ 4号 近畿大学法学.

(27) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). ω. ここでは、とりわけ過失と違法性の関係が大きな問題となる。この間題に対する議論の状況については、錦織成史﹁違法性. と過失﹂星野英一編集代表﹃民法講座第六巻事務管理・不当利得・不法行為﹄一七三頁以下(有斐閣、一九八五年三森島. ω 二二九頁(前稿第一章第一節四. 昭夫﹃不法行為法講義﹄二三八頁以下(有斐閣、一九八七年)参照。また、宮津・前掲注. 制約)参照。 民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論の対象とするための前提条件については、本稿第一章第二節一.参照。 なお、現在、位置指定道路における私道通行権の法的構成に関しても議論がなされている。本稿では、私道通行権を人格権的. ω ω MW. 権利として構成した最高裁平成九年判決(最判一九九七年(平成九)年十二月十八日民集五一巻一 O号四二四一頁)を基礎と して検討を進める。この問題に関する議論状況については、和田真一﹁人格権としての私道通行権について﹂立命二七一・二. 七二号下巻一一四五頁以下(二000年)参照。また、位置指定道路と私道通行権の問題においては、本稿で検討対象とする 位置指定道路の幅員と﹁現実の道路開設﹂要件の関係のほかに、﹁日常生活上不可欠の必要性﹂要件と自動車通行の関係、及び ﹁日常生活上不可欠の必要性﹂の要件と権利主体の限定の問題に関しても議論がなされている。本稿においてはこれらの問題に 検討を加えない。これらの問題については、本稿の考察を踏まえた検討を今後の課題としたい。﹁日常生活上不可欠の必要性﹂. 要件と自動車通行の関係に関する議論については、安藤一郎﹃私道の法律問題第四版﹄四九二頁以下(三省堂、二OO二年) 参照。﹁日常生活上不可欠の必要性﹂の要件と権利主体の限定に関する議論については、田中康博﹁判批﹂商討五一巻一号二二. 一頁以下(二000年)参照。 仰なお、現在、これらの問題とともに、民法二一 O条に基づく囲緯地通行権と建築基準法上の接道義務の関係が、相隣関係と 建築基準法の関係の問題として議論されている。しかし本稿ではこの問題を検討対象としない。その理由は、この問題におい て囲緯地通行権を主張する当事者と接道義務の課せられている当事者が一致していることである。すなわち、この問題は、一方 当事者が私法上の制度に基づいて権利を主張している場合で、かつ他方当事者に対して公法的規制が義務づけられている場面 における問題ではないので、議論の対象とするための前提条件(本稿第一章第二節一.参照)を満たしていない。 民法的保護と行政法的保護の一致に関する議論の分類については、本稿第一章第二節二.参照。 このような人格権的権利に基づく妨害排除請求権は、建基法四二条二項の規定による指定を受けたいわゆるみなし道路につ. ω ω. ω. . ω ω ). いても、判例上認められている(最判二000(平成十二)年一月二十七日判時一七O三号二二一頁)。 側秋山靖浩﹁相隣関係における調整の論理と都市計画との関係国・(完)﹂早法七六巻一号三一二頁(二000年)(宮、揮・前掲 において 判)参照。なお、宮津・前掲注 二三一頁(前稿第一章第一節四. . ω ω 注 二三二頁(前稿第一章第一節四 ω.

(28) 示したように、﹁私法の役割﹂を積極的に捉える最近の学説としては、このほかに、鈴木講師の見解がある(鈴木美弥子﹁ドイ. ω. ω ω ). ツ環境法における公法と私法の交錯﹂早法七二巻三号一七三頁(一九九七年))。また、秋山助教授の見解においては﹁都市計 画と相隣関係の接点﹂として検討されていた問題もある(前掲秋山・三一二頁以下)。しかし、鈴木講師の見解は、民法的保護 と行政法的保護の一致に関する議論の対象とするための二つの前提条件を満たしているが、具体的にいかなる点が考慮される のか、という問題について明確な主張はなされておらず、またドイツ法における議論と日本法における議論の関係についての検 参照)。他方、秋山助教授の見解において 討も行われていない(宮津・前掲注 二三五頁以下(前稿第一章第一節四. ﹁都市計画と相隣関係との接点﹂として検討されていた問題については、民法的保護と行政法的保護の一致に向けて積極的に議 論を行っていく必要性が示されている一方で、個別の問題についてはその具体的考察が今後の課題とされており、具体的な事例. ω. . ω ω ). において限界内とされるためにはいかなる条件を満たすことが求められるのか、という点が明らかとされていない(宮津・前 掲注 二三五頁以下(前稿第一章第一節四 参照)。また、秋山助教授がこの視点のもとで示す具体的事例は、私法上の. ω. . ω ω ). 制度に基づいて権利を主張する当事者と公法的規制が課せられている当事者の関係からみると、いずれも異なった事例である と捉えられる(宮津・前掲注 二三五頁以下(前稿第一章第一節四 参照)。そのため、本稿では、この二つの見解を検 討対象としない。. ω ω ω ω ω ω. . ω ω. 名古屋地決一九九七(平成九)年二月二十一日判時一六一一三号七二頁。 秋山・前掲注 三O八頁以下。 建基法六条。荒秀編﹃新建築基準法五O講﹄六九頁︹小高剛執筆︺(有斐閣、一九九四年)参照。 この議論の対象となる問題の概要については、本章第二節一 参照。 建基法六五条の建物と民法二三四条一項の関係について学説は、安藤一郎﹃実務ノ!ト建築基準法││民法との接点﹄(三 省堂、一九八四年)、同﹁判批﹂ NBL四三六号二ニ頁(一九八九年)において整理されている。以下では、この安藤弁護士の 問題整理を基礎において記述を進める。なお、この安藤弁護士の整理に示されていない見解で、特則説を採る見解として、岩城 謙二﹁判批﹂ひろば四三巻二号三四頁(一九九O年)、坂本倫城﹁建築基準法と民法の相隣関係﹂判タ七六七号二六頁(一九九 一年)がある。他方、安藤弁護士の整理に示されていない見解で、非特則説を採るものとして、甲斐道太郎﹁判批﹂判評三七. 七号三八頁(一九九O年)、見上崇洋﹁判批﹂民商一 O 二巻二号九O頁(一九九O年)、原田純孝﹁判批﹂判タ七二二号五二頁 (一九九O年)、長谷川貞之﹁判批﹂ジュリ九六一口言ゴ二頁(一九九O年)、阿部泰隆﹃行政の法システム帥︹新版︺﹄一六二 頁以下(有斐閣、一九九七年)がある。. -200-. 第5 1巻第 3・ 4号. 近畿大学法学.

(29) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). 仰なお、特則説においても非特則説においても立法的解決の必要性を指摘する見解が多数存在しているが、以下では解釈論にお ける議論を検討の対象とする。立法的解決の必要性を指摘する近時の見解として、好美清光﹁建築基準法と相隣関係﹂成田頼. 明編﹃行政法の争点(旧版)﹄二八七頁(一九八O年)、同﹁判批﹂ジュリ九五七号七二頁(一九九O年)、原田・前掲注師五七 頁、見上・前掲注師九七頁以下、滝沢章代﹁判批﹂法教一一三号別冊(判例セレクト羽)一九頁(一九九O年)、吉岡祥充﹁判. 批﹂星野英一他編﹃民法判例百選 I 総則・物権[第五版]﹄一五五頁(有斐閣、二O O一年)などがある。. ω. MW 最判一九八九(平成元)年九月十九日民集四三巻八号九五九頁以下。 側特則説においては、この建基法六五条をもっぱら民法の規定を修正する私法規定であるとする見解が存在している(後掲注 参照)。建基法六五条を私法規定とするならば、この建基法六五条の建物と民法二三四条一項の関係に関する議論は、民法的保. 護と行政法的保護の一致に関する議論ではなく、あるべき民法的保護を考察する議論となる。しかし、非特則説においては、建 基法六五条は公法的性質を備えていることが前提となっており(平成元年判決における伊藤裁判官の反対意見(民集四三巻八. 号九五九頁以下)参照)、また、特則説においても、公法的規制としての性質と私法規定としての性質を兼ね備えているとする. 見解も多数存在する(後掲注 ω参照)。そこで、以下では、建基法六五条は公法的性質を備えていることを前提とした議論の構 造を検討する。 ω三八頁、同四O頁、原田・前掲注ω五六頁、長谷川・前掲注仰二二五頁。 側安藤・前掲注伺﹁判批﹂一八頁、岩城・前掲注 ω ﹁判批﹂二ニ頁、好美・前掲注 側最判一九八九(平成元)年九月十九日民集四三巻八号九五八頁以下。また、安藤・前掲注 ω ﹁建築基準法﹂二八六頁、同・前掲注側﹁判批﹂七一頁以下、岩城・前掲注ω三四頁など参照。 ω 安藤・前掲注仰﹁判批﹂一四頁。この点を主張するものとして、川島武宜編﹃注釈民法的物権ω﹄二六四頁︹野村好弘執筆︺ (有斐閣、一九六八年)。 ω ω. ﹁判批﹂一四頁。この点については、好美・前掲注側﹁建築基準法﹂二八七頁、同・前掲注側﹁判批﹂七二 安藤・前掲注 頁参照。なお、後掲注側参照。 旧市街地建築物法二二条の立法趣旨が建基法六五条に引き継がれている、という根拠に関しては、①そのような立法趣旨の当. MW. 否に疑問が残ること、②実際に建築行政において建築基準法にその立法趣旨に沿った意義付けがなされていないこと、③今日の 都市計画や建築行政では﹁防火﹂の持つ重要性がかつてと大きく異なっていること、という三つの問題点が指摘されている(原. ω. 田・前掲注 五三頁、このほか好美・前掲注側﹁建築基準法﹂二八七頁、梶原茂 H楠本安雄﹃建築紛争処理の法と実務﹄六九 頁(楠本執筆︺(ぎょうせい、一九八一年))。以上の指摘を踏まえると、現在の状況のもとで、公法的規制たる建基法六五条に. -201.

(30) おける評価と、私法上の制度たる民法二三四条一項における評価の同質性を、立法趣旨のみによって基礎守つけることはできない. ω五三頁、好美・前掲注倒﹁建築基準法﹂二八七頁、前掲梶原他・六九頁︹楠本執筆︺、吉岡・前掲. ω(. 平成元年判決における伊藤裁判官の反対意見(民集四三巻八号九五九頁以下)参照。また、この点については、安藤・前掲. といえよう(原田・前掲注 注帥一五五頁参照)。. ω ω. ω. ω. 注 ﹁判批﹂一四頁、柚木馨著(高木多喜男補訂)﹁判例物権法総論︹補訂版︺﹄四九一頁以下注 有斐閣、一九七二年)、広 中 俊 雄 ﹃ 物 権 法 第 二 版 ﹄ 三 九O頁(青林書院新社、一九八二年)、東孝行﹁相隣関係と建築基準法﹂民商九三巻臨増 一四四 頁(一九八六年)、見上・前掲注 九O頁も参照。なお、非特則説の側からも、建築に関する公的・行政的な法規である建築基 準法と私人聞の私的利益の調整に関する民法とは性質を異にするという根拠のみから非特則説を主張することはできないとさ れている(甲斐・前掲注仰四O頁、見上・前掲注仰九八頁)。しかし、本文において述べられた根拠は、公法である建築基準法. と私法である民法という分類のみから導かれているものではなく、建基法六五条と民法二三四条一項のそれぞれの具体的な規 定の内容を比較したうえで主張されているものである。そのため、この根拠は考察対象とされうると考えられる(原田・前掲. 注 五五頁参照)。 ω. ω. 側この点に関しては、見上教授は次のように述べる(見上・前掲注 九九頁以下)。﹁:::、本来建基法の目的と構造、実現し ょうとする公共性・公益と民法の実現しようとする利益は異なる。もちろん利益の観点からいえば、両者が現実に具体化され る形が同じということはありうるが(:::)、だからといって法の規制が同じ性質であり、同一の判断で行われるとはいえない。 建基法六五条は、土地利用に関わる規制であるが、安全確保のための警察的規制を定めるものであり、行政の消極的介入根拠と しての性格を持つ。それが保護の目的とする利益も、民法が利害調整の対象とするものとは異なる﹂。. ω. 側平成元年判決における伊藤裁判官の反対意見(民集四三巻八号九六O頁以下)参照。また、安藤・前掲注旬﹁判批﹂一五頁、 梶原他・前掲注側六七頁以下︹楠本執筆︺、見上・前掲注 一 O O頁以下、原因・前掲注仰五五頁以下も参照。 側吉田克己教授は、﹁特則説によって導かれる日本の接境建築の特異性を明らかにするという観点﹂から建基法六五条の建物と. 民法二三四条一項の関係を検討している(吉田克己﹁民法二三四条と接境建築﹂園井還暦﹃民法学の軌跡と展望﹄二六一頁以 下(日本評論社、二O O二年))。吉田教授は、フランス民法典のもとでの接境建築の法律関係、及び日本における距離保持規 定の成立過程を検討したうえで、接境建築を認めるにあたって前提となる次の二点を指摘する。その第一が、相隣者の利害関係 調整の必要性である。そして、第二が、接境建築が都市の過密化をもたらさないような配慮の必要性である。以上の二つの前提 条件を指摘したうえで、吉田教授は、﹁:::、接境建築を認めるのであれば、接境のあり方について一定のル!ルを持つことが. -202-. 第5 1巻第 3・4号. 近畿大学法学.

(31) 環境法における私法の役割(後篇) ( 1 ). 望ましいことだけは確認しておきたい﹂と述べている(前掲吉田・二八三頁)。この吉田教授の見解は、接境建築を認めている 建基法六五条における評価を私法上の評価として捉える場合には、私法的なル!ルの設定が必要であることを指摘していると. いえよう。 側好美・前掲注側﹁建築基準法﹂ニ八七頁、坂本・前掲注伺二四頁。 側原田・前掲注仰五六頁は、建基法六五条の直接の立法理由が土地の合理的・効率的利用という公益上の要請ではないことを 基礎として、民法二三四条一項の機能として生活環境利益等の保護を否定する特則説の根拠を批判している。建基法六五条の. ω参照。. 岩城・前掲注悶三九頁以下。 安藤・前掲注帥﹁判批﹂一四頁。建基法六五条がもっぱら民法の規定を修正する私法規定であるとする見解として、安藤・. 立法趣旨に関する議論については、前掲注. ω ω ω. . ω ω. ω. ω二三. 前掲注 参照。 秋山・前掲注側三一二頁以下。﹁相隣関係と都市計画との連携﹂に関する秋山助教授の見解については、宮津・前掲注. ω. (例えば、川島編・前掲注 二六四頁︹野村執筆︺など)。 平成元年判決における伊藤裁判官の反対意見(民集四三巻八号九六O頁以下)参照。. ω. 前掲注 ﹁判批﹂二O頁以下、好美・前掲注側﹁建築基準法﹂二八七頁がある。他方、公法的規制としての性質と私法規定と しての性質を兼ね備えているとする見解として、山口和男﹁都市における宅地利用の相隣関係 ・(完)﹂判時四六九号一 O頁 (一九六七年)、荒秀他編著﹃改訂建築基準法﹄五一一頁︹関哲夫執筆︺(第一法規、一九九O年)がある(また、中川善之助 H兼子一監修﹃建築・鑑定・管理不動産法体系第五巻﹄一二三頁︹斉藤博執筆︺(青林書院新社、一九七O年)は、建築基準 法が私法とは異なる観点から別個の規定を設けていることを指摘している)。ただし、この点を明確にしていない見解もある. ω ω ω ω. 刊)参照、及び本章第二節二.参照。 二頁(前稿第一章第一節四 師 秋 山 ・ 前 掲 注 三O五頁参照。 側以下の二つの理由について、秋山・前掲注側三一一頁以下参照。 仰ここでは、ある一つの生活関係について相隣法と都市計画が異なった規律を行う事態はできる限り回避されるべきである、と. いう考えが示される(秋山・前掲注側三一一頁)。 倒ここで秋山助教授は、ドイツ法の議論において、都市計画で実現されるべき目標が後に民法上の請求権によって阻害されるこ とは避けられるべきである、という価値判断を多くの論者が共有していたことを指摘する(秋山・前掲注側三二一頁)。.

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