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〈論文〉ルーマニア語前置詞prinと英語諸前置詞との概念比較研究--認知言語学と言語文化のインターフェイス

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(1)ルーマニア語前置詞 ρr1η と英語諸前置詞との概念比較研究 一 認 知 言 語 学 と言 語文 化 の イ ンタ ー フ エイ ス ー. 森. 1.は. 山 智. 浩. じめ に. 2010年2月12日. か ら26日. に 渡 っ て 、 英 語 と ル ー マ ニ ア 語 と の 比 較/対. を 目的 に 、 筆 者 は ル ー マ ニ ア 国(以. 下 、 単 に 「ル ー マ ニ ア 」 と して 記 載)現. け る 言 語 研 究 調 査 を 実 施 し た 。 本 稿 で は 、 近 年 に 実 施 し た 計3回 (2008年8月5日 月26日)か. ∼9月4日. 照研 究. 、2009年8月5日. ∼9月4日. 地 にお. に渡 る 当該 調 査. 、2010年2月12日. ∼2. ら得 ら れ た 研 究 成 果 の 一 部 も活 用 し て 、 ル ー マ ニ ア 語 前 置 詞prinと. 語 の 諸 前 置 詞 と の 概 念 的 比 較/対 国 境 の な い 言 語 文 化)の. 英. 照 を行 い 、 そ の 背 後 に 潜 む 「人 間 言 語 文 化 」(=. 一 端 を 明 らか に す る 。 ま た 、 そ の 主 た る 研 究 ア プ ロ ー チ と. して認 知 言 語 学 の諸 理 論 を採 用 す る。. 2.ル. ー マ ニ ア 語 と 英 語 の 概 念 比 較/対. 照研 究 を行 うに 当 た っ て. ル ーマ ニ ア語 と英 語 はそ れ ぞ れ 異 な る語 族 に属 す る。 しか しなが ら、 以 下(1)一(2) の 理 念 に収 束 す る認 知 言 語 学(特 に認 知 意 味 論)の 枠 組 み で は、 そ れ ぞ れ 異 な る体 系 を持 つ 言 語 どう しで あ っ て も、 そ の差 異 自体 は互 い の 概 念 的 比 較/対 照 研 究 を行 う上 で の障 害 とな らない(c£ 上 野 ・森 山(2006))。. (1)認. 知 言 語 学 の 本 来 の ス タ ン ス:. 人 間 の 経 験 主 義 的 立 場 を 重 視 す る 。 身 体 運 動 や 五 感 機 能 を 通 し て 得 られ た 日 常 経 験 が 言 語 に 反 映 さ れ て い る と考 え る ス タ ン ス 。 つ ま り、 以 下 の2つ. の 結 びつ. き を 経 験 主 義 の 観 点 か ら明 らか に す る 。 ・根 源 領 域(sourcedomain) 我 々 の 生 身 の 肉 体 を 通 し て 、 ま た は 自 身 が 属 す る 文 化 ・社 会 的 環 境 と の 相 互 作 用 を 通 し て 得 られ る 物 理 的 「経 験 」。. 一134一. (115).

(2) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. 森山. ・目標 領 域(targetdomain) 人 間 は 無 意 識 で あ りなが ら も、 あ る規 則 に基 づ い て 言 語 の概 念 を捉 え、 運 用 してい る。 この よ うな認 知 的 無 意 識 の 中で 、 上 記 の 基 盤 か ら得 られ る多 様 な物 理 的 経 験 を生 か し、 人 間が 如 何 な る プ ロ セス を通 して 外 界 や 抽 象 世 界 を認 識 して い る のか を明 らか にす る。 これ 以 外 は認 知 意 味 論 の 守 備 範 囲 と しない 。 (2)認 知 言 語 学 の本 来 の 目的: メ タ フ ァー とカ テ ゴ リー化 の2つ の 理 論 を主 幹 とす る認 知 意 味 論 の 根 本 は、 人 間 を 人 間 た ら しめ る 経 験 主 義 に根 ざ した 「大脳 活 動 内 に お け る概 念 メ カ ニ ズ ム」 の 正 体 をそ の結 果 事 象 で あ る 言 語 表 現 と い う側 面 か ら解 明 す る こ と にあ る。. そ れ ど こ ろ か 、 次 の(3)に ま と め ら れ る よ う に 、 自 然 言 語 の 背 後 に は そ れ を 用 い る 人 々 の 社 会 文 化 が 広 が っ て い る こ とか ら、 異 な る 体 系 を 持 つ 言 語 ど う しで あ っ て も 「人 間 」 と い う 同 じ生 物 と して 共 有 す る 言 語 文 化(=国. 境 の な い 言 語 文 化)が. 存在. す る場 合 もあ る。. (3)肉 体 を通 した 日常 経 験(た. とえ ば、 身体 運 動 ・五 感 を通 した 経 験)や 文 化 ・. 社 会 環 境 との相 互 作 用 に よ っ て得 られ る 日常 経 験 が 言 語 表 現 に反 映 され てい る。. こ の 点 で 、 認 知 言 語 学 の 枠 組 み に お け る 研 究 は 言 語 文 化 学 的 色 彩 も帯 び る こ と に な る 。 そ こ で 、 以 下 で は ま ず 、 ル ー マ ニ ア 語 の 言 語 文 化 に 光 を 当 て な が ら、 英 語 前 置 詞 と概 念 的 比 較/対. 照 を行 う意 義 を論 じる こ とにす る。. 今 回 の 渡 航 は 、 ル ー マ ニ ア 国 立 第 六 ジ ェ ネ ラ ル ・ス ク ー ル(ScoalaNr.6"魏coZα BdZcε8cμ")(所 在 地:Str.N.B首lcescu,nr.139,Pite§ti,Romania)か 渡 る 招 待 講 演 の 実 施(実 同 校 のPro£MihaelaMANEA)も 年2月12日. ∼2月26日)の. 施 日:2010年2月23日. らの2度. ε に. 午 前 の 部 お よ び 午 後 の 部 、 司 会:. 主 た る 目的 の 一 つ で あ っ た た め 、 短 期 間(2010 研 究 調 査 と な っ た1。 し か し な が ら、 こ れ ま で 長 期 の.

(3) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. 現 地 調 査 を重 ね る度 に、 ま た 、 長 年 ル ー マ ニ ア 語 との 比 較/対 照 研 究 を深 め る度 に、 言 語 の 基 底 に は文 化 が 存 在 して い る事 実 を改 め て感 じざ る を得 ない 。 そ の最 た る言 語 文 化 の実 例 の一 つ が 以 下(4)であ る。. (4)Trebuie旦. 亘dansezicum璽canta典.2. (You)shouldtodancehowtoyousingothers →. 英 語 訳(直. 訳):Youshoulddancehowotherssingtoyou. →. 英 語 訳(意. 訳):Youshoulddancetoothers'songs. . .. 上 記(4)に 見 ら れ る ル ー マ ニ ア 語 の 諺 は 、 次 の(5a-b)に. お け る2つ. の英語訳の意で. 解 釈 さ れ、. (5)a.Youshouldfollowwhatotherssay. b.Inordertohaveagoodrelationshipwithothers,youshoulddowhat theysay.. (4)に お け る 行 為 者 が 単 に コ ン ト ロ ー ル さ れ る 側 を 指 示 す る と き は(5a)の 逆 に 、 コ ン トロ ー ル し よ う とす る 側 を 指 示 す る と き は(5b)の. 意が、. 意 が前 景化 す る 。. こ の よ う に 、 身 体 活 動 を基 盤 に し た 日常 経 験 と言 語 表 現 と の 密 接 な 結 び つ き は 、 当 該 調 査 期 間 中 も 度 々 実 感 さ れ た 。 た と え ば 、2010年2月13日3、 歌 手Miri磁Bogdanと parents4と. バ レ リ ー ナValentinaMoldovanの. 結 婚 式 に 筆 者 はspiritual. し て 列 席 した が 、 そ のmarriageceremonyparty5で. ず 、 思 い 思 い の 喜 び を 表 現 す る た め に 夕 方6時. 義 弟の オペ ラ. か ら翌 日明 け 方5時. は老 若 男 女 を問 わ まで 一 心 不 乱 に. ダ ン ス に 興 じ る 空 間 を 体 感 し た 。 子 供 か ら お 年 寄 り ま で 多 く の 参 加 者 がHo癒, Sarba,Bra§oveanca,Vals,Mu§celeanca,Maneleな. ど様 々 な ダ ンス ・ス テ ッ プ を. 習 得 し て い た 光 景 も、 日常 生 活 に ダ ンス が 浸 透 し て い る 証 と な ろ う。 ま さ に 、 上 出 (4)に は こ う し た 日常 生 活 が 反 映 さ れ て お り、 言 語 文 化 と も言 うべ き 「身 体 経 験 が 言 語 表 現 に 反 映 さ れ る 」(cfLakoffandJohnson(1980:117-118))と. い う事 象 が こ. こ に も観 察 さ れ る こ と に な る 。. _1Q9_. r117、.

(4) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. ドラ キ ュ ラ の 舞 台 で あ る プ ラ ン城(CastelulBran)を. 森山. 有 し、 中 世 ドイ ッ の 香 り を. 醸 し出 す 「ブ ラ シ ョ フ(Bra§ov)」 、 学 術 文 化 が 集 結 し た 「ヤ シ(la§i)」、 ヨ ー ロ ッパ 最 後 の 秘 境 ドナ ウ ・デ ル タ(DeltaDunarii)を. 臨 む 「コ ン ス タ ン ッ ァ(Constanta)」. 、. ジ プ シ ー の 首 都 と も呼 ば れ る 「ピ テ シ ュ テ ィ(Pite學ti)」、 ル ー マ ニ ア 王 室 の 夏 の 離 宮 「ペ レ シ ュ 城(CastelulPele學)」. を 誇 る 「シ ナ イ ア(Sinaia)」. の 息 遣 い が 感 じ られ る 「ク ン プ ル ン グ(campulung)」 「ブ カ レ ス ト(Bucure§ti)」 る 。2007年. のEU加. 、 古 代 首 都 と して 人 々. 、 そ して東 バ ル カ ンの小 パ リ. 等 々 、 ル ー マ ニ ア は 各 都 市 で 様 々 な 表 情 を 見 せ て くれ. 盟 時 の 条 件 問 題 、 さ ら に は ア メ リ カ と ロ シ ア との 駆 け 引 き に. 見 られ る よ う に 、 近 年 ル ー マ ニ ア は そ の 天 然 資 源 の 争 奪 戦 と 中 継 基 地 と して の 立 地 条 件 ば か りが 脚 光 を 浴 び る よ う に な っ て き た 。 しか し な が ら、 キ リ ル と メ トデ ィ ウ ス の 弟 子 た ち に よ っ て 蒔 か れ た 種 が 息 吹 き、 一 大 キ リス ト教 文 化 国 と し て の 繁 茂 に 至 っ た オ ー ソ ド ッ ク ス の 下 、 他 の ヨ ー ロ ッパ 諸 国 と一 線 を 画 す る 豊 富 な 自 然 と多 様 な 文 化 遺 産 を ル ー マ ニ ア は 有 し て い る 。 中 欧 ・東 欧 唯 一 の ラ テ ン民 族 の 系 統 で あ り な が ら、 そ の 特 異[生 は 、 同 じ ロ マ ンス 語 族 と も一 線 を 画 す る 言 語 面 に も反 映 さ れ て い る。 た とえ ば、 ル ーマ ニ ア正 教 会 の指 導 的 地 位 に あ っ た ガ レ リウ神 父 の言 葉 の 内 容 を 表 し た 下 記(6)に は 、 こ う し た 特 異 性 が ル ー マ ニ ア 人 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ を も支 え て い る こ とが 観 察 さ れ よ う 。. (6)「 … ル ー マ ニ ア が 精 神 世 界 に お い て 正 教 国 家 で あ る と 同 時 に 、 ラ テ ン性 を 引 き継 い で い る こ と に 注 目 し て 、 西 欧 との つ な が り を 求 め る の が 自 然 の 成 り行 き と い う も の だ 。 しか し な が ら、 ラ テ ン性 と は い っ て も、 西 欧 ラ テ ン諸 国 と ル ー マ ニ ア が ま っ た く同 じ と い う こ と で は け っ し て な い 。 言 葉 の 世 界 で も、 た と え ば 『世 界 』 と い う 言 葉 が ラ テ ン 語 で はmundus、 mondo、. フ ラ ン ス 語 がmonde、. イ タ リア 語 が. ス ペ イ ン 語 お よ び ポ ル ト ガ ル 語 がmundo. で あ る の に 、 ル ー マ ニ ア 語 だ け がlumeで. あ る よ うに 、 ル ー マ ニ ア は他 の ラ. テ ン国家 とは異 な る独 自的 な存 在 なの だ。 だか らこそ 、 ル ーマ ニ ア 固有 の 精 神 性 を維 持 しつ つ 、 歴 史 的 必 然 性 に 則 っ て 西 欧 世 界 のNATOに. 入 ってい く. こ と こ そ 肝 要 な の だ 。」 一 六 鹿(編)(2007:33)(下. (118). 一131一. 線 ・一 部 省 略 筆 者).

(5) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. こ の よ う な 独 自性 は ル ー マ ニ ア 語 前 置 詞 に も観 察 さ れ 、 多 様 な 自 然 を 保 有 す る の と 並 行 す る が 如 く、 約70語. に も及 ぶ 多 彩 な 前 置 詞 数 を ル ー マ ニ ア 語 は 保 有 し て い る. と言 わ れ て い る 。 他 の ロ マ ン ス 語 族 の 言 語 、 た と え ば ス ペ イ ン 語 の 主 た る 前 置 詞 数 が40個. 前 後 で あ る こ と を 考 え れ ば 、 こ の 特 異 性 は 顕 著 で あ り、 さ ら に 各 ル ー マ ニ. ア 語 前 置 詞 の 多 くが 多 義 構 造 を 形 成 し て い る 事 実 も 「第 二 言 語 学 習 者 が 習 得 す る の に 最 も難 しい 言 語 の 一 つ 」(c£ 土 屋(2003:89))と しれ な い 。 以 下(7a-b)が. (7)a.prin、. 見 な し て し ま う要 因 の 一 つ か も. そ の一 例 とな る。. ρr啄). bymeansof,旦. 些9旦9h,堕,P璽,via,並 一1)RE(s. b.prin、. .v.prin)(下. 線 筆 者). ρr(蓼).. 1.旦 塑.2.(peZα)about,around.3.(£1τ)血.ll∼z〃. 〃zα%therefbre,then. -RED(s. .v.prin)(下. 線 筆 者). し か し な が ら 、 次 の(8)に 記 さ れ る よ う に 、 言 語 表 現 が 異 な る 民 族 や 国 ど う しで あ っ て も、 自 身 の 生 身 の 肉 体 や 知 覚 器 官 を 通 し て 繰 り返 し得 た 経 験 こ そ が 「人 間 の 本 質 の 産 物 」 に 他 な らず 、 し た が っ て 、 人 間 と い う 同 じ生 物 と して の 「共 通 の モ ノ の 捉 え 方 」 も存 在 して い る 。. (8) Each such domain whole within. [= a basic domain. our experience. that. of experience]. is conceptualized. is a structured as what we have. called an experiential gestalt. Such gestalts are experientially basic because they. characterize. They represent natural. structured. coherent. dimensions. wholes. within. organizations. recurrent. of our experiences. (parts, stages, causes, etc.).. that are organized as gestalts. human. exoeriences.. in terms of. Domains of experience. in terms of such natural. dimensions seem. to us to be natural kinds of experience. They are natural in the following sense: These kinds of experiences.

(6) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. 森山. are a product of Our bodies (perceptual. and motor apparatus,. mental. capacities,. emotional makeup, etc.) Our. interactions. manipulating. with. our. physical. environment. (moving,. objects, eating, etc.). Our interactions. with other people within our culture (in terms of. social, political, economic, and religious institutions) In other words, these "natural" kinds of experience are products of human. nature.. culture. to culture. — Lakoff. Some. and. may. Johnson. be. universal,. (1980. while. others. vary. from. 117-118). こ う した 経 験 主 義 に基 づ く言 語 文 化 は 「人 間 言 語 文 化 」(=「 化 」)と 呼 ん で も よい 。 ま して や 、 「民 族 言 語 文 化 」(=国 「人 間言 語 文 化 」 を基 に分 化 して い る(c£. will. 国境 の ない言語 文. 境 の あ る 言 語 文 化)が. 森 山(2011))と. 考 え る な らば、 そ う し. た多 彩 な前 置 詞 どう しの概 念 的 つ なが りや 多 義 構 造 のか ら く り も、 異 言 語 間 に また が る何 らか の普 遍 的 メ カニ ズ ム に基 づ い て い る に違 い な い。 こ こで、 視 点 を変 え てみ よ う。 わが 国 で は英 語 教 育 が 盛 んで あ る こ とは周 知 の 事 実 で あ るが 、近 年 、 「コア ・ミーニ ン グ」 や 「イ メー ジ」 とい う考 え方 の 下 、 あ くま で も共 時 的 な見 地 に基 づ き、 語 の多 義 性 の 説 明 に数 学 で い う 「最 大 公 約 数 」 とい う 捉 え方 を用 い る方法 を多 数 の発 表 や 書 き もので 見 聞 きす る(c£ 大 西 他(2008))。 そ の 方 法 論 の 是 非 は と もか く、 そ う した捉 え方 を英 語 前 置 詞 の 多 義 性 に も当て はめ て 英 語 学 習 者 の理 解 に貢 献 しよ う とす る教 育 姿 勢 は注 目に値 す る。 しか しなが ら、 こ の 捉 え方 は主 と して一 単 語 内の 意 味 どう しの つ なが りの 解 明 に重 点 が 置 か れ てい る た め、 他 の 前 置 詞 との 概 念 的 関 係 が いか な る ものか を見 つ め る場 合 、 そ れ だ けで は 十 分 条 件 に な らない よ う に感 じ られ る。 言 葉 を変 え れ ば、 連 続 体 で あ る外 界 を人 間 が 如 何 な る認 識 で もっ て非 連 続 体 に捉 えて い る のか 、 とい う言 語 文 化 学 上 の 問 題 を も含 意 す る命 題 に メ ス を入 れ る た め に は、 さ ら な る見 解 が 必 要 とな る と考 え られ る。.

(7) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. ゲ ル マ ン語 族 とい え ど も、1066年. 第1号/2011.9. のNormanConquest以. 降 、 英 語 は多 種 の 前. 置 詞 を ラ テ ン語 由 来 言 語 か ら取 り込 ん で き た 。 こ の よ う な 見 地 に 基 づ く と、 英 語 史 の 流 れ を 鑑 み る こ と な し に 現 代 英 語 の 前 置 詞 一 つ ひ と つ を 別 個 に 取 り扱 う だ け で は、 そ の背 後 に潜 む人 間の 認 識 の全 体 像 が 浮 か び上 が っ て こ ない 。 そ の 解 決 策 の 一 つ と し て 歴 史 言 語 学 の 諸 理 論 、 さ ら に 「メ タ ・プ ロ セ ス 」 理 論6と. い う認 知 言 語 学. 観 点 と通 時 的 観 点 を 交 え た 捉 え 方 の 導 入 が 浮 上 す る が 、 現 存 し て い る 母 語 話 者 の 直 観 も確 認 で き る とい う点 で は 、 ラ テ ン語 を 源 流 とす る 現 代 諸 言 語 との 概 念 的 な 比 較 /対. 照 論 もそ の 重 要 な手 法 と な る。 ロ マ ンス 語 の 中 で もル ー マ ニ ア語 は ギ リ シ ア. 語 ・ス ラ ブ 語 ・ハ ン ガ リ ー 語 ・ トル コ 語 ・フ ラ ン ス 語 な ど借 用 語 彙 が 多 い も の の 、 語 形 成 上 の 形 態 素 や 文 構 造 の 特 徴 が ラ テ ン語 に 由 来 し、 そ の 前 置 詞 数 の 多 さ は 他 の ラ テ ン語 由 来 言 語 の 中 で も群 を 抜 く。 こ れ は 、 そ の 細 分 化 ゆ え 、 連 続 体 で あ る 現 実 世 界 を 人 間 は 如 何 な る メ カ ニ ズ ム で 非 連 続 化 し て 捉 え て い る の か を 明 らか に しや す い 、 とい うこ と も同時 に意 味 す る。 したが って 、 ル ーマ ニ ア語 の 前 置 詞 概 念 の解 明 は 、 そ れ 自 体 に 価 値 が あ る だ け で は な く、 現 代 英 語 の 各 前 置 詞 概 念 問 の 相 互 体 系 に も還 元 さ れ る よ う な メ カ ニ ズ ム が 一 体 如 何 な る モ ノ で あ る の か 、 す な わ ち 、 連 続 体 で あ る 外 界 を 人 間 が 如 何 な る 認 識 で も っ て 非 連 続 体 に 捉 え て い る の か 、 とい う メ カ ニ ズ ム の 一 側 面 に 光 を 当 て る 言 語 文 化 学 上 の 価 値 を も持 つ 。 そ こ で 、 以 下 で は 、 前 出(7a-b)の. 多 義 性 を 主 た る トピ ッ ク と して 採 り上 げ 、 現. 代 の英 語 前 置 詞 で は個 別 に表 され る概 念 が 本 来 は如 何 に して 互 い に密 接 な 関 係 を 持 っ て い る の か 、 とい う 「人 間 の 本 質 の 産 物 」(c£LakoffandJohnson(1980: 118))の. 3.英. 一 端 を 明 らか に す る 。. 語 前 置 詞 αmπ ηd,砂,痂mπgん. こ こ で は、 ル ーマ ニ ア語 前 置 詞prinと 本 稿 §2の(7a-b)で. そ れ ぞ れの 概 念 の概 念 的 差 異 を明確 にす る前 段 階 と して 、. 見 られ た英 語 単 体 前 置 詞 そ れ ぞ れ の 中核 概 念 とそ の 意 味 変. 化 の メ カ ニズ ム を英 語 の言 語 文 化 も交 え なが ら観 察 す る。7.

(8) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. 3.1.英. 語 前 置 詞 αm㏄ πdの. 3.1.1.英. メ タ ・プ ロ セ ス. 語 前 置 詞 αmω πdの. 英 語 前 置 詞aroundも ". 中核 概 念. 様 々 な 日 本 語 訳 が 宛 が わ れ る 語 で あ る 。 し か し な が ら、. ONEFORM,ONEMEANING."(c£Bolinger(1977))と の 語 に は1つ. 森山. い う 見 解 に 基 づ け ば 、1つ. の 中 核 概 念 し か 存 在 し て い な い 。 結 果 か ら 言 え ば 、aroundの. 「周 囲 に 」 で あ り(c£OED(s.v.around))、. 原 義 は. 以 下(1)の 中 核 概 念 を 包 含 す る に 至 っ. てい る。. (1)aroundの. 中 核 概 念:(1周. の)円[※. 例)Sheranallthewayαroμ. イ ギ リ ス 英 語 で はround]. πdtheisland.(彼. 女 はそ の 島 を走 っ て一 周. し た) 例)Heworkedαro召. Aroundの. πdtheclock.(彼. は 時 計 一 周 分 働 い た;丸. 中 核 に 上 記(1)の 概 念 が 据 え ら れ て い る こ と は 、aroundの. 一 日 働 い た). 中 にround(円). と い う形 態 が 含 ま れ て い る こ と か ら も 明 ら か で あ る 。 ち な み に 、 フ ラ ン ス 語 で は 、 次 の(2)に 見 ら れ る`autourde'と. い う語 句 が 英 語 前 置 詞aroundの. 意 に相 当 す る 。. (2)α4zヌauthor;(near)alentour,danslesparages;be∼6tredansles. parages;pr(翠)autourde;(about)environ,apeupr6s 一. フ ラ ン ス 語autourは. 下 記(3)の 構 造 を 持 ち 、 か つ 、tourの. じ 概 念 に 遡 る(c£OED(s.v.turn))。. 躍Z)(s. .v.author). 原 義 が 英 語`turn'と. 同.

(9) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. (3)autour=au-(<a(到. 達 点))+le(定. 第1号/2011.9. こ の 歴 史 的 背 景 を 鑑 み て も、aroundと. 冠 詞:男. 性. ・単 数)+tour(回. 転;周. 囲). 同 じ 「円 」 概 念 が そ こ に 反 映 さ れ て い る こ. とが 導 き 出 さ れ る8。. 3.1.2.英. 語 前 置 詞 αmω πdの 派 生 概 念. た だ 、 次 の(1)に 目 を 転 ず る と、 そ の 様 相 が 一 変 す る よ う に 感 じ られ る か も しれ な いo. (1)Iwentαro召. こ こ で は. 「1周. ηdthecorner.(私. は そ の 角 を 曲 が っ て 行 っ た). の 円 」 は 想 起 さ れ な い に も 拘 わ ら ず 、aroundが. た と え ば 、Leech(ed.)(1989)(s.v.aboutandaround)で ` round∵'と aroundが. し てaroundの. も`且70観. 讃means. 中 核 概 念 に 触 れ ら れ て い る が 、 そ れ だ け で は(1)の. 示 す 概 念 の 全 貌 は 明 ら か に な ら な い 。 こ の 謎 を 解 くの が. の 認 識 で あ る 。 ま ず 、 下 図(2a-b)を. 「全 体 一 部 分 」. 見 て み よ う。. 〈斜 辺 〉. 〈 弧 〉 -c£Langacker(1987:184). (2a-b)は. 用 い られ て い る。. そ れ ぞ れ 「斜 辺 」/「  . ,1」angacker(1988:59). 弧 」 を表 して い るが 、 人 間 の 知 覚 認 識 上 、 い ず れ  .  . も そ れ ら単 独 で 認 識 さ れ て い な い 、 と 言 わ れ て い る 。 つ ま り、 以 下(2'a-b)に か れ る よ う に 、 「斜 辺 」/「. 弧 」 は そ れ ぞ れ 、 「直 角 三 角 形 」/「. 描. 円 」 とい う全 体 を. 背 景 とす る 「一 部 分 」 と し て 捉 え ら れ て い る 。. 一126一. (123).

(10) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. 〈 全 体(直. 角 三 角 形)一. 部 分(斜 -c£c£1. 辺)〉. 〈 全 体(円)一. 森山. 部 分(弧)〉. 、angacker(1987:184),Langacker(1988:59). 実 は 、 こ の よ う な 知 覚 上 の 認 識 がaroundの. 多 義 性 に も 当 て は ま り、 円 が 背 景 と. な っ て 弧 が 焦 点 化 さ れ た 実 例 が 上 出(1)と な る 。 こ の こ と を 、 以 下(3)の メ タ ・プ ロ セ ス と し て ま とめ る 。. (3)aroundの. 派 生 概 念:円. 例)Iwentαroμ. 全 体 一[「. πdthecorner.(私. 全 体 一 部 分 」 の 認 識]→. 円 の 一部. 弧. は そ の 角 を 曲 が っ て 行 っ た). こ う し た 「全 体 一部 分 」 の 関 係 、 つ ま り 「円 全 体 一 一 円 の 一 部 」 の 関 係 を 用 い れ ば 、aroundの. (4)Iwentαr侃. 多 義 性 も 単 一 の 観 点 か ら解 釈 さ れ る 。 次 の(4)一(5)が そ の 実 例 で あ る 。. ηdthetree.(そ. の 木 を ま わ っ て 行 っ た(=避. (5)X:"Whattimeismostconvenientfbryou?"(い Y:"Aroμ. πd12p.m."(12日. け て 行 っ た)). つ 頃 い ち ば ん 都 合 が い い?) 寺あ た り で す). そ し て 、 上 出(3)の 物 理 的 移 動 が 抽 象 的 移 動 に 移 行 し た 比 喩 表 現 が 次 の(6)と な る 。. (6)Springisjustαm隅dthecorner.(春. さ ら に 、 こ の 「円(全. 体)一. 弧(部. は も う す ぐそ こ だ). 分)」 の 認 識 を 活 用 す る 有 用 性 はaroundの.

(11) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. 多 義 性 の メ カ ニ ズ ム に 留 ま ら な い 。 た と え ば 、turnの ま 当 て は ま る 。 た と え ば 、 次 の(7a-b)が. 捉 え 方 に も そ っ く りそ の ま. そ の実 例 で あ る 。. (7)a.He伽rπe(1[around]thecorner.(彼. は そ の 角 を 曲 が っ た). b.Summer如rπ8intofallandfall伽rπsintowinter. (夏. 3.1.3.英. は 秋 に 、 秋 は 冬 に 移. り 変 わ る). 語 前 置 詞 αmω πdに 見 る 言 語 文 化. 以 上 の こ とに光 を当 てれ ば、 それ ぞ れ. 「ア メ リ カ 英 語 」/「. イ ギ リス 英 語 」 と し. て 扱 わ れ る 以 下(1)一(2)の 捉 え 方 の 相 違 も明 らか と な る 。. (1)[米]beatα70瑚4thebush (2)[英]beatα. ∂o〃'thebush 一cfO質. 五D(s. .v.beataboutthebush). 上 記(1)一(2)は い ず れ も、 や ぶ の 周 辺 を 叩 い て 獲 物 を 追 い 出 す た め の 「遠 ま わ し な や り方 」 が 焦 点 化 さ れ 、 そ の 結 果 「遠 ま わ し に 言 う 」 と い う 意 を 表 す 比 喩 表 現 で あ る 。 しか し な が ら、(1)一(2)で は そ れ ぞ れ 、around!aboutと. い う別 々の 語 が 使 われ. て い る の だ か ら、 各 々 の 捉 え 方 は 異 な る に 違 い な い 。 事 実 、(1)のaroundは. 「円 」 と い う概 念 を そ の 中 核 に 据 え て い る こ と は す で に 観. 察 し た 。 し た が っ て 、(1)の 原 義 は 次 の(3)の よ う に 捉 え ら れ る こ と に な る 。. (3)[米]beatαroμ 原 義:(獲. πdthebush 物 を 追 い 出 す た め に)や. ぶ の周 りを複 数 回叩 く.

(12) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. そ れ に 対 し て 、(2)で 用 い ら れ て い るaboutは. (4)aboutの. 中核 概 念. 下 記(4)の 中 核 概 念 を 持 っ て い る 。. 「ま ば ら な 」. 一cf㌔1. た と え ば 、 以 下(5a-b)を. 森山. 、eech(ed.)(1989)(s.v.about). 見 た 英 語 母 語 話 者 は 、 同 じ 「歴 史 の 本 」 で あ っ て も、 そ. れ ぞ れ 異 な っ た捉 え方 を してい る。. (5)a.abooko1τhistory 英 語 母 語 話 者 の 捉 え 方: onの 中核 概 念 は 「接 触 」(cf高 橋 紀 穂 ・森 山 オ ア ナ 他(2010:128-140))。 こ こ で は 、abookとhistoryと. の 「密 着 性 」 で 捉 え られ 、 「歴 史 の 専 門書 」. と し て解 釈 され る 。 b.abookα60厩history 英 語 母 語 話 者 の 捉 え 方: aboutの. 中核 概 念 は 「ま ば ら な 」。 つ ま り、abookはhistoryに. 対 して 、. ま ば ら な 位 置 で 存 在 し て い れ ば よ く、 歴 史 の 専 門 書 の よ う な 「密 着 性 」 は表 され ない 。 こ の よ う な 理 由 か ら、 上 出(2)は 下 記(6)の 原 義 を 持 っ て い た こ と に な る 。. (6)[英]beatα 原 義:(獲. わo磁thebush 物 を 追 い 出 す た め に)や. ぶ を ま ば らに複 数 回叩 く. こ こ で 、 米 国 と英 国 と の 興 味 深 い 言 語 文 化 の 差 が 観 察 さ れ る 。 ま ず 、 次 の(7)を 見 て み よ う。.

(13) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. (7)Arollingstonegathersnomoss.(転. 上 記(7)は. 「転 石(=転. 第1号/2011.9. 石 、 苔. も 生 さ ず). が る 石)、 苔 も生 さ ず 」 と 訳 さ れ る こ と が 多 い 諺 で あ る 。 し. か し な が ら、 米 国 人 と英 国 人 と で は 、 こ こ で の`moss'に れ 異 な っ て い る 。 結 果 か ら言 え ば 、 下 記(8a-b)の. (8)a.米. 対 す る捉 え方 が そ れ ぞ. 認 識 の違 い が存 在 して い る 。. 国 人 の 捉 え 方: 米 国 人 は 移 動 そ の も の を 好 む 。 だ か ら、 こ こ で の 「苔 」 を 悪 い モ ノ と認 識。. b.英 国 人 の 捉 え 方: 英 国 人 は 移 動 そ の も の を 好 ま な い 。 だ か ら、 こ こ で の. 「苔 」 を 良 い モ ノ. と認 識 。. こ の よ う な 認 識 上 の 違 い は 、 そ れ ぞ れ の 国 の 成 り立 ち ・歴 史 の 違 い か ら生 じ て い る と考 え ざ る を 得 な い 。 (ネ イ テ ィ ヴ ・ア メ リ カ ン を 除 く)米 (PilgrimFathers)」. 国人 の先祖. 「ピ ル グ リ ム ・フ ァ ー ザ ー ズ. は 危 険 な 船 旅 を 顧 み ず 英 国 か ら命 が け で 現 在 の バ ー ジ ニ ア 州. に 到 着 し、 そ の 後 、 未 開 の 地 で あ っ た 西 部 目が け て 領 土 を 広 げ て い っ た 。 ネ イ テ ィ ヴ ・ア メ リ カ ンへ の 虐 殺 行 為 も歴 史 的 に 問 わ れ る べ きで あ ろ うが 、 こ こ に 以 下(9)と い う 名 の 下 、 移 動 を 好 む 米 国 人 の ル ー ツ が 存 在 し て い る と考 え られ る(c£. 高橋紀. 穂 ・森 山 オ ア ナ 他(2010:234-241))。. (9)実. 用 主 義(pragmatics): 現 実 世 界 にお け る効 率 性 を重 視 す る一 方 、 それ に貢 献 しない 事 物 は無 駄 と 考 え て 排 除 し よ う とす る 主 義 。. 自然 の脅 威 や 夜 盗 の襲 撃 な ど、 常 に危 険 に 囲 まれ た プ リ ミテ ィ ヴ な生 活 の 中 で は、 一 切 の 無 駄 を省 い た 「 実 用 主 義 」 が な けれ ば生 きてい くこ とが で きなか っ た に違 い な い。 換 言 す れ ば、 西 へ 西 へ と移 動 し続 け た米 国 人 の フ ロ ンテ ィ ア精 神 に基 づ く.

(14) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. 森山. 「行 動 す る こ と は 正 し い 」 と い う動 的 活 動 は 、 必 然 的 に 、 未 知 の 領 域 で 生 き て い く た め の 「実 用 主 義 」 を 伴 う こ と と な る(c£ の(10a-c)の. 上 野 他(2001:56-58))。. 口 語 例 の よ う に 、 ス ペ リ ン グ を(発. 音 上)わ. た とえ ば、 次. か り や す く変 え て い る. の も、 こ う し て 生 ま れ た 「実 用 主 義 」 が 現 代 に 受 け 継 が れ て い る 証 と な ろ う。. qO)a.through(∼. を 通. b.crossing(交 c.socks(靴. し て)→thru. 差 点)→X-ing 下)→sox. こ の よ う な 理 由 か ら、 米 国 人 は 下 記 ⑳ とい う 特 性 を 、. ⑳. 米 国 人 は 「移 動 を 感 じ さ せ る 表 現 」(前 出(7)で はaround)を. 好 む よ うに. な っ た。. そ れ に 対 し、 英 国 人 は 次 の 働 と い う特 性 を 持 つ に 至 っ た と考 え られ る 。. 働1ヶ. 所 に 定 住 し て 伝 統 を こ よ な く愛 す る 英 国 人 は 「移 動 を 感 じ さ せ な い 表 現 」(前 出(7)で はabout)を. 3.2.英. 語 前 置 詞 砂 の メ タ ・プ ロ セ ス. 3.2.1.英 Byは. 好 む よ う に な っ た 。9. 語 前 置 詞 砂 の 原 義 と実 際 の 位 置 関 係 、古 くは. 「あ る 物 体 が 別 の 物 体 の 側 面 に 対 し て 位 置 す る 」 こ と を 表 し て い た. が 、 や が て こ の 意 味 をbythesideo£byone'ssideな. ど の 句 表 現 に 譲 り 、 「あ る 物 体. を 中 心 に し て 、 そ れ を と り ま く領 域 内 に 在 る 比 較 的 近 距 離 の 位 置(≒alittleaway 丘om)」. を 現 代 英 語 の 中 核 概 念 と し て 持 つ よ う に な っ た(cf高. (2010:148))。. し か し な が ら 、Leech(e乱)(1989)(s訊by)の. referringtopositionmeans`near'or`beside'or`nextto'."と は 、byの. よ う に"1か(preposition) 指 摘 す る だ けで. 概 念 の 実像 解 明 に は至 らな い 。. そ こで 、 上 記 の. (128). 橋 紀 穂 ・森 山 オ ア ナ 他. 「あ る 物 体 を 中 心 に し て 、 そ れ を と り ま く 領 域 内 に 在 る 比 較 的 近. 一121一.

(15) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 距 離 の 位 置(≒alittleawayfrom)」. 第1号/2011.9. とは一 体 、 実 際 に如 何 な る位 置 関 係 を表 す か. を 明 ら か に す る た め に 、(日 本 の 高 等 教 育 で 教 鞭 を と る)複. 数の ネイテ ィヴをイ ン. フ ォ ー マ ン ト10に 、 以 下(1)を 尋 ね る 実 験 を行 っ た 。. (1)「"MarysatのJohn."と. 聞 い て 、MaryとJohnと. の 具 体 的 位 置 関係 は、 日. 本 人 の 英 語 学 習 者 に どの よ う に 説 明 で き ま す か?」. そ れ に 対 し、 概 し て 、 次 の(2a-b)の. (2)a.「MaryはJohnの. よ うな 回答 内容 が得 られ た 。. 近 く に 座 っ て い る 。MarysatbesideJohn.が. 表 す 位 置. 関 係 と 非 常 に 類 似 し て い る 。」 b.「`alittleawayfrom'と. い っ て も 、Johnの. 前 や 後 がMaryの. 座 っ た位. 置 と し て 含 ま れ る よ う に は 感 じ ら れ な い 。 そ の 場 合 、 実 際 はnearも はbefore!infrontof,behindな. し く. ど を 使 う の が 通 常 だ ろ う 。」. 続 い て 、 下 記(3)の よ う な 質 問 を 行 っ た 。. (3)「. で は 、 あ な た た ち は 、Marysat6ッJohn.とMarysat6e8`deJohn.を. どの. よ う に 使 い 分 け て い る の で す か?」. こ れ に 対 し、 ネ イ テ ィ ヴ ・イ ン フ ォ ー マ ン トた ち の 回 答 は 、 以 下(4)の よ う な 回 答 内 容 に収 束 した。. (4)「 確 か にbyとbesideと う 。byを. い う2つ. の 語 が 存 在 して い る の だ か ら、 何 か が 違. 使 う と き は、 何 か し らの 目に見 え な い ラ イ ン を設 定 して い る よ う. な 気 が す る 。 そ れ は 円 周 上 の ラ イ ンで も構 わ な い 。 そ の メ ン タ ル な ラ イ ン 上 に 、Johnを. 中 心 に し てMaryが. 位 置 し て い る よ う に 思 え る 。」. こ の ネ イ テ ィ ヴ の 直 観 を 、 よ り形 に す る た め 、 次 の(5)の よ う な 調 査 を 行 っ た 。.

(16) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. (5)「 で は,教. 室 を 思 い 浮 か べ て 下 さ い 。 教 室 に お け る 以 下a-eの. 森山. 位 置 関 係 をby. で 表 せ る か ど うか 率 直 な 意 見 を 述 べ て 下 さ い 。」. [※ 下 図の 囲. はJ・hn・ 詔 はMa埋 ・禽 はそ れ以外 の人 ・昌. M → ネ イ テ ィ ヴ ・イ ン フ ォ ー マ ン トの 回 答 内 容 「byは 使 わ な い 。nearが. 適 当 。」. 一 →. ネ イ テ ィ ヴ ・ イ ン フ ォ ー マ ン トの 回 答 内 容: 「byもbesideも. →. ネ イ テ ィ ヴ ・ イ ン フ ォ ー マ ン トの 回 答 内 容: 「besideも. 130). 使 え る 。」. 使 え な い こ と は な い が 、byが. 一119一. 適 当 。」. は空 席 を示 す].

(17) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. →. 第1号/2011.9. ネ イ テ ィ ヴ ・イ ン フ ォ ー マ ン トの 回 答 内 容 「byもbesideも. 使 え な い 。nearが. 適 当 。」. → ネ イ テ ィ ヴ ・イ ン フ ォ ー マ ン トの 回 答 内 容: 「byを 使 う に は 離 れ す ぎ。 使 う と し て もnear。. 他 に も う少 し席 数 が あ れ. ば よ り 自 然 。」. 上 記(5a-d)の (6a-d)の. 調 査 か ら 、2つ. の 物 理 的 位 置 関 係 を 表 すbyを. 必 要 条件 を設 け て い る こ とが伺 え る。. 使 用 す る と き、 下 記.

(18) ルーマニア語前置詞 ρr1η と英語諸前置詞との概念比較研究 一 認知言語学と言語文化のインターフェイス ー 森山. (6)a.直. 線 で あ れ 円 周 線 で あ れ 、 ま ず 、Johnを. 中心 に 目 に見 え な い ラ イ ン領 域. 1瀧" b.そ の メ ン タ ル な ラ イ ン領 域 上 にMaryが. 存在。. ■. ▼. …1暉. c.JohnとMaryと. の 間 に は 、 誰 も存 在 し て は な ら な い 。. ■. d.JohnとMaryと. の距 離 は離 れ す ぎて は な らな い 。 v9、,⊆. 3.2.2.英 3.2.1.の 代 英 語byの. ≧. 語 前 置 詞bッ の 中 核 概 念 通 時 的 事 実 お よ び ネ イ テ ィ ヴ ・イ ン フ ォ ー マ ン トへ の 調 査 か ら、 現 中核 概 念 は 以 下(1)の よ う に 簡 潔 に 提 示 さ れ る 。.

(19) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. (1)byの. 中 核 概 念:(あ. 第1号/2011.9. る 心 的 線 上 の 領 域 に お け る)近. 距 離 の 位 置;漠. 然 と した. 近 さ 例)Marysat6ッJohn.(メ. ア リ ー は ジ ョ ン の そ ば に 座 っ た). [※. は 心 的 線 を 表 す]. 言 葉 を 変 え れ ば 、 上 記(1)を 次 の(2)の よ う に 捉 え る こ と も可 能 で あ る 。. (2)Johnを. 中 心 と し た 心 的 線 上 に お け る 「漠 然 と し た 近 い 位 置 」 に は 、Mary. 以 外 の人 は存 在 して い な い。. そ の 結 果 、 同 様 の 「近 接 ← → 非 近 接 」 の 対 比 概 念 が 以 下(3a-b)に. 見 ら れ るbyの. 意 味 用 法 に も反 映 さ れ て い る と考 え られ る 。. (3)a.Eachbagiscarefullymadebッhand. (そ れ ぞ れ の バ ッ グ は 注 意 深 く 手 で 作 ら れ て い る) 概 念 的 捉 え 方: ・hand以. 外 は 非 近 接 化;焦. 点 外. 。 つ ま り 、bymachine(機. 械 で)と. の. 対 比 表 現 。 b.Theywentthere6ッcar.(彼. ら は 車 で そ こ に 行 っ た). 概 念 的 捉 え 方: ・car以. 外 は 非 近 接 化;焦. 点 外 。 つ ま り 、byfoot(徒. 物 移 動 の 対 比 表 現 。 ま た 、 ㌔ythecarと つ. 「漠 然 さ 」 とthecarが. 持 つ. な くな る。. し て し ま う と 、theyが. 対 す る乗. は 表 さ れ な い の は 、byが. 持. 「特 定 化 」 と が 一 致 し な い た め 。 具 体. 的 な 車 へ の 乗 り込 み を 表 す に は 、inthecarが thecarと. 歩 で)に. 適 当 。 な お 、bで. 密with. 車 の 内 部 に 必 ず し も存 在 す る 必 要 が.

(20) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. 森山. 同 様 の 捉 え 方 は 、 「近 接 」 概 念 の メ タ ・プ ロ セ ス を 通 し て 、 次 の(4)一(7)そ れ ぞ れ に 見 ら れ る 意 味 用 法 に も生 き て い る 。. (4)「 差 」 の 意 味 用 法: 1cm. 例)Ishotatthetarget,butmisseditbッ?1m. 央1km (標 的 目が け て 撃 っ た が 、lcm!lm!lkm差. .. で 撃 ち 損 じた). 概 念 的 捉 え 方: ・「漠 然 と し た 近 さ;近. い 距 離 」 と して 解 釈 。 近 い距 離 と して 認 識 され. な い 距 離 名 詞 句 は 通 常byに. 後続不可。. (5) 「方 位 」 の 意 味 用 法: 例)northのnorthwest(北. 北 西). *north6ッwest(北. 西)[※northwestが. 正 し い 表 現]. 概 念 的 捉 え 方: ・西 か ら見 た 北 へ の 距 離 は 「近 い 距 離 」 と し て 認 識 さ れ ずbyは. 用 い られ な い 。 右 図 に 描 か. れ る よ う に 、 「北 西 」 か ら 見 て 「近 い 距 離 」 に あ る 「北 」 寄 りの 方 位 が 「北 北 西 」 と し て 捉 え られ て い る 。. (6)「. 期 限/完. 了 」 の意 味 用 法. 例)Iwillfinishmyhomework6ッ120'clock. a.期. 限:12時. ま で に宿 題 を 終 え る つ も りだ 。. b.完. 了:12時. には宿 題 を終 えて い るだ ろ う。. 概 念 的 捉 え 方:.   :野蕪 鷺. ∵ 畜 露1.

(21) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. に 「近 い 距 離 」 に あ る 時 点 で 仕 事 を 終 え る捉 え方 。 b.完 了:と. い う こ と は 、12時. とい う 時 刻 に な れ ば も うす で に 終 え. て し ま っ て い る 状 況 に あ る と い う捉 え 方(つ が 前 提 と な っ て こ の 意 味 用 法 が 成 立)。. ま り、 上 記a. し た が っ て 、`I. willhave(already)finishedmyhomeworkbyl2 0'clock.'と い う 「未 来 完 了 形+by+時 来 、 余 剰 的(cf高. 刻 」 と い う形 は 本. 橋 紀 穂 ・森 山 オ ア ナ 他(2010:157))。. (7)「 動 作 主 導 入 」 の マ ー カ ー と し て の 意 味 用 法: 例)Johnwashit∂. ッMary.(ジ. ョ ン は(近. 接 し て い る)メ. ア リー に殴 ら. れ た) 概 念 的 捉 え 方: ・動 作 主 が 被 動 作 主 に 影 響 を 与 え る に は 、 両 者 は 必 ず 「近 い 位 置 」 に 存 在 す る 必 要 が あ る と い う捉 え 方 。 ・`IraqwasattackedwithballisticmissilesbyU リ カ に よ っ て 弾 道 ミ サ イ ル で 攻 撃 さ れ た)と. .S.'(イ. ラ クは ア メ. い っ た 事 象 で も、 こ. う した 兵 器 が 作 ら れ た の は 近 年 で あ り、 動 作 主 導 入 の マ ー カ ー の byが 現 れ たOE期. に は存 在 し て い な か っ た(cfOEZ)(s.v.by))。. 古 来 の 人 間 の 主 な 武 器 は 、 木 の 棒 や 石 を 尖 らせ た も の で あ り、 さ ら に 原 始 的 な 武 器 は 「手 」 そ の も の で あ っ た こ と は 想 像 に 難 く な い 。 この よ う な時 代 背 景 お よび 認 知 言 語 学 が 重 視 す る 身 体 性 を考 え る と 、 他 者 に 影 響 を与 え る た め に は 「相 手 の 近 くに い る 」 必 要 がある。. 3.3.英. 語 前 置 詞 仇mωgん. の メ タ ・プ ロ セ ス. 以 下(1)の メ タ ・プ ロ セ ス に ま と め ら れ る よ う に 、throughの. 中 核 概 念 は 「貫 通 」. で あ る。. 一114一. (135).

(22) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. (1)throughの. 森山. メ タ ・プ ロ セ ス. 中 核 概 念:貫. 通 一[「. や り 通 し て/一. 貫 し て 」]→. 派 生 概 念:完. 了. 例)Thetrainpassed仇roμgんthemountaintunnel. (列 車 は 山 中 の ト ン ネ ル を 通 り 抜 け た) 例)Haveyougot伽oμgんthework?(仕. ` gothrough'で. 事 を 終 え ま し た か?). 「終 え る 」 の 意 を 表 す の も、 ま さ に 「や り通 す/一. 貫 す る」 と し. て 「初 め か ら 終 わ り ま で 」 の 日 本 語 事 象 と並 行 す る 。 こ う し た 「貫 通 」 概 念 が throughの. 中 核 に 据 え ら れ て い る か ら こ そ 、 次 の(2)で は 、 「次 の 日 曜 日 も含 む 」 形. で 表 さ れ 、thoughの な る(c£. 代 わ り にtill!untilを. 用 い た時 の 曖 昧 さ は解 消 され る こ と と. 高 橋 紀 穂 ・森 山 オ ア ナ 他(2010:382-383))。. [米]伽o㎎ (2)Thisrestaurantisclosed[米]μp'oα. ん πd`ηcZ認`πgnextSunday.. [米. ・英]孟o. (こ の 食 堂 は 次 の 日 曜 日 を 含 む 形 で 開 店 す る) 概 念 的 捉 え 方: ・throughは. 「日 曜 日 を 貫 通(through)」. 曜 日 ま で ず っ と 継 続 し(upto)し る(including)」 nextSundayが. 4.ル. 、toは. 「日 曜 日 に 到 達(to)」. と い う概 念 。 す べ て. の メ タ ・プ ロ セ ス と 人 間 の 認 識 世 界. そ れ ぞ れ 、 以 下(1)として再 掲 す る 。. (1)a.prinprep. bymeansof,旦. 些9旦gh,塑,P璽,塑,壁 一DRE(s. b.prin1)ノ4》.. 「日. か も 日曜 日 もそ の 期 間 内 に 含 ま れ. 「含 ま れ る 」 表 現 。. ー マ ニ ア 語 前 置 詞pr肋. 本 稿 §2の(7a-b)を. 、uptoandincludingは. .v.prin)(下. 線 筆 者).

(23) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 1.through.2.(peZα)about,around.3.(ε. ア τ)in.ll∼z〃 -RED(s. こ こ で 問 題 と な る の が 、3.1.-3.3.で に し てprinと. い う1つ. 第1号/2011.9. ηzαretherefbre,then.. .v.prin)(下. 線 筆 者). 観 察 した複 数 の 英 語 前 置 詞 概 念 が 如 何. の 形 態 に 収 納 さ れ て い る の か 、 と い う メ タ ・プ ロ セ ス の 仕. 組 み で あ ろ う。 言 葉 を 変 え れ ば 、 言 語 体 系 は 異 な れ ど も 「人 間 」 とい う 同 じ生 物 が 如 何 に して連 続 体 で あ る現 実 世 界 を非 連 続 体 の 言 語 世 界 に昇 華 させ てい るの か 、 と い う(言. 語 表 現 の 背 後 に 広 が る)認. ず し も1対1で. 識 世 界 の問 題 で あ る。 異 言 語 間の 対 応 関 係 は必. は な い 。 しか し な が ら、 そ れ は 言 語 表 現 数 の 問 題 で あ っ て 、1対1. で は な い こ と が 即 座 に 「そ の 概 念 が 他 言 語 に は 存 在 しな い 」 と い う こ と を 必 ず し も意 味 す る も の で は な い11。 事 実 、(1a-b)の. ル ー マ ニ ア語 前 置 詞 の 意 味 が 複 数 の 英 語 前 置. 詞 で 表 示 さ れ て い る わ け だ か ら 、 互 い の 母 語 話 者 は 同 様 の 概 念 を共 通 して 保 持 し て い る こ とが 伺 え る 。 循 環 論 め くが 、 自 身 の 生 身 の 肉 体 や 知 覚 器 官 を通 して 繰 り返 し得 た 経 験 こ そ が 「人 間 の 本 質 の 産 物 」(c£LakoffandJohnson(1980:ll7-118))に ず 、(1a-b)で. 他なら. は共 通 した何 らか の概 念 体 系 が 互 い に異 な る前 置 詞 数 で表 され て い る. に 過 ぎ な い 。 つ ま り、 そ の 「共 通 した 何 らか の 概 念 体 系 」 とは 如 何 な る モ ノ か 、 が こ こで の言 語 文化 学 上 の 問題 とな る。 そ こ で 、 本 稿 の 冒 頭 で 述 べ た 現 地 調 査 中 、(英 語 を 運 用 で き る)複 ア 語 母 語 話 者12に 上 記(1a-b)の. 記 載 を 見 せ 、prinの. 数 のルーマニ. 多 義 性 の 解 明 に迫 る研 究 調 査. を 行 っ た 。 そ こ で 彼 らか ら得 ら れ た 回 答 は 、 次 の(2)に 集 約 さ れ る 。. (2)「 こ れ は あ く ま で もprinの. 意 味 用 法 を 英 語 の 観 点 か ら捉 え や す く した だ け の  .  .  .  . も の で あ り、 こ れ だ け 多 く の コ ン セ プ トが 並 列 的 にprinの. 中 に 存 在 して い. る わ け で は な い 。 そ う で は な く、 こ の 記 述 の 中 で も 、 英 語`through'に 当 す る 概 念 がprinの. とす る な ら ば 、prinは. 相. 中 核 に 据 え ら れ て い る 。」. 本 来 、 「貫 通 」 概 念 表 示 語 で あ り、 下 記(3)に 見 ら れ る よ う な. 意 味 用 法 が そ の プ ロ トタ イ プ と な る 。.

(24) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. (3)旦. 旦1雌. 旦. 森山. 迦tune1.. Shewalkedthroughtunnel → 英 語(直. 訳):Shewalkedthroughtunnel. → 英 語(意. 訳):Shewalkedthroughthetunnel. . .. [※ プ ロ フ ァ イ ル さ れ た 関 係 に お け る 参 与 者 の 中 で 最 も 際 立 つ も の をTR(ト タ ー)、TR以 記 載(c£. 外 の 参 与 者 でTRの. 基 準 点 と し て 働 く も の をLM(ラ. ラジェク. ン ドマ ー ク)と. 河 上(編)(1996:22))]. こ こ で 、 上 図(3)を 見 た ル ー マ ニ ア 人 イ ン フ ォ ー マ ン トた ち は 、 実 に 興 味 深 い 直 観 を 述 べ た 。 そ の 内 容 を 以 下(4)に 示 す 。. (4)「 こ の 貫 通 図(=上. 図(3))の. 移 動 経 路 に は 複 数 の ラ ン ドマ ー ク(landmark). を 配 置 す る こ と も可 能 で あ る 。 そ うす る こ と に よ っ て 、 私 た ち は 到 達 点 に 至 る ま での. 「経 由 点 」 を 生 み だ す こ とが で き る 。 こ の 点 で 、 同 じ 『経 由 』 事 象. を 表 す に し て も、 英 語bywayofと. は そ の 捉 え 方 が 異 な る 。」. 上 記(4)を ヴ ィ ジ ュ ア ル 化 す る と、 下 図(5)の イ メ ー ジ ・ス キ ー マ と し て 描 か れ る 。. (5). し た が っ て 、 厳 密 に 言 え ば 、 前 出(1)で 見 られ たbywayofはprinの. 「経 由 」 の 意. 味 用 法 を 表 す 上 で 概 念 的 に 相 応 し く な い 。 ど ち らか と言 え ば 、 次 の(6)に 見 ら れ る 英 語throughの. (138). 概 念 と並 行 し て い る と捉 え る 方 が 論 理 に 合 うで あ ろ う。. 一111一.

(25) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. (6)TheparadestartsatRuc巨randgoes'〃o%g乃BrantoBra§ov. (そ の パ レ ー ド は ル カ ー ル で 始 ま り 、 プ ラ ン を 通 し て(=経. 由 し て)ブ. ラ. シ ョ フ に ま で 続 く). さ ら に 、 英 語aroundで. 解 釈 さ れ 得 るprinの. を 続 け た 。 こ の 「英 語aroundで. メ タ ・プ ロ セ ス の 謎 に 迫 る 研 究 調 査. 解 釈 さ れ 得 るprin」. を 用 い た 実 例 の1つ. が 以 下(7). で あ る。. (7)Suntmultisalbaticicaini迦9塑. Therearemanywilddogsthroughtown →. 英 語(直. 訳):Therearemanywilddogsthroughtown. →. 英 語(意. 訳):Therearealotofwilddogsaroundthetown. . .. こ の 文 が 表 す 事 象 に 対 し、 ル ー マ ニ ア 人 イ ン フ ォ ー マ ン トは 次 の(8)の よ う な 直 観 を 述 べ た。. (8)「 こ の 事 象 は 確 か に. 『町 全 体;町. 中 』 に 言 及 し て い る の は 間 違 い な い 。 しか. し な が ら、 物 理 的 で な い に し ろ 何 か し ら の 『移 動 』 が 感 じ られ る 。 そ れ は や は り 『貫 通 』 に 関 わ る モ ノ だ 。 始 点 と終 点 を も っ た 領 域 が 貫 通 に よ っ て 示 さ れ て い る よ う に 感 じ られ て な ら な い 。」. そ こ で 、(7)が 表 す ラ ン ドマ ー ク の 物 理 的 領 域 を イ ラ ス トで 描 い て も ら っ た と こ ろ 、 下 図(9)が 得 られ た 。.

(26) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイン ターフ ェイ ス ー. 森山. [※ 左 図 の直 方 体 は建 物 を、 黒 点 は観 察 者 の(任 意 の)視 点 を示 してい る。]. こ の(8)と(9)の. 回 答 が も た ら す 「ネ イ テ ィ ヴ の 無 意 識 的 意 識(unconscious. consciousness)」. を 明 らか に す る 上 で 注 目 す べ き は 「何 か し ら の 移 動 が 感 じ ら れ る 」. と 回答 し た こ と で あ る 。 結 果 か ら言 え ば 、 「心 的 走 査(mentalscanning)」. と呼 ばれ. る 認 知 活 動 が 上 出(7)に 反 映 さ れ て い る と考 え ら れ る 。 「心 的 走 査 」 と は 、 簡 潔 に 言 え ば 、 現 実 の 時 間 順 に 沿 っ た 物 理 的 移 動 が 存 在 し な い に も拘 わ らず 、 あ る 状 態 の 展 開 が 心 の 中 で 辿 ら れ る メ ン タ ル な 活 動 を 指 す(c£. 河 上(編)(1996:17-20))。. 次 の(10)一. (1⇒ が そ の英 語 実例 で あ る。. (10)CarlSenior:7'乃. 磁. ル 〃66'o訪. 厩 ノ診〃c6α. sevenacres,isn'tit?Aro拐. π4訪6π40zoπ'o訪670α4.That's π(1孟o孟 ん(3(3(勾20ノ. 孟んe1ηoμ. π孟α`几2. <00:34:08>13 一. 映 画Sκoω. 翫11勿goπC6磁z∫(『. ヒ マ ラ ヤ 杉 に 降 る 雪 』)(イ. (1のKara:Beth,who'sthatguythat伽esαcros8孟 一. (イ. 映 画H鋭oωeeπ'跳eσ. んeILαZZかomッ μr8eo/1協cん. αeZ必er8(「. タ リ ッ ク 筆 者). 侃2<00:24:53>. ハ ロ ウ ィ ン6最. 後 の 戦 い 』). タ リ ッ ク 筆 者)14. こ こ か ら導 き 出 さ れ る こ と は 、 前 出(7)が 表 す 事 象 が 、 上 出(9)に 心 的 走 査 を 加 え た 下 図 働 で 描 か れ る こ とで あ る15。.

(27) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. [※⑰ は観 察 者 の視 点 を, は観 察 者 の視 線 の 動 きを表 す]. つ ま り、 前 出(5)か ら上 図(1功 へ 、 一 次 元 か ら二 次 元 へ の 世 界 と 「イ メ ー ジ ・ス キ ー マ 変 換(image-schematransfbrmation)」. を 引 き起 こ し、 か つ 、 同 じ 「貫 通 」 領 域. で も町 内 が 前 景 化 して い る 反 面 、 町 外 は 背 景 化 す る 「図 地 分 化(且gure!ground segregation)」. の 認 識 で も って 捉 え られ て い る。 こ こに 、 限 られ た領 域 性 が 生 じる. こ と に な り、 前 出(8)で 見 た 「始 点、と終 点 を も っ た 領 域 が 貫 通 に よ っ て 示 さ れ て い る よ う に 感 じ られ て な ら な い 』 とす る ネ イ テ ィ ヴ の 直 観 と合 致 す る こ と に な る の で あ る。 事 実 、 こ の 「心 的 貫 通 」 概 念 に よ っ て 生 じた 「限 ら れ た 領 域 性 」 と い う 認 識 は 、 時 間 世 界 に 置 き換 え た 以 下(13a-b)で. も生 き て い る 。. (1鋤a.Muzicafunkerafbartepopulara辺. 亟ani'8016. Musicfhnkwasverypopularthroughyears'80 →. 英 語(直. 訳):Funkmusicwasverypopularthrough'80years. →. 英 語(意. 訳):Funkmusicwasverypopulararound'80s. b.Pガ. π199717s-adeschisp亘. 皿 旦companie壁. . . 塾str首ine.. through1997itselfopened丘rstcompanyofcarsfbreign →. 英 語(直. 訳):Through1997the丘rstcompanyoffbreigncars. openeditself. →. 英 語(意. 訳):Around1997the丘rstcompanyoffbreigncars. opened.. 〆. 一. 昌 一. \.

(28) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. ま た 、(7)のprinが. 二 次 元 の 平 面(そ. れ も地 面 と 同 じ 「水 平 方 向 」 の 面)を. 森山. その. 対 象 領 域 と し て イ メ ー ジ ・ス キ ー マ 変 換 を 起 こ し て い る こ と は 、 次 の(14a-b)に お け るprinの. 正 否 関係 か ら も明 らか で あ る 。. (14)a.Amlocuit迦acestg塑.18 11ivedthroughthistown →. 英 語(直. 訳):Ilivedthroughthistown. →. 英 語(意. 訳):Ilivedaroundthistown. . .. b.央Amlocuit迦acestbloc. Ilivedthroughthisbuilding →. 英 語(直. 訳):Ilivedthroughthisbuilding. →. 英 語(意. 訳):Ilivedaroundthisbuilding. 以 上 の 理 由 か ら 、 ル ー マ ニ ア 語 前 置 詞prinは. . .. 示す. 「円 」 概 念 と並. 行 せ ず 、 ど ち ら か と言 え ば 、 ル ー マ ニ ア 語 で は(in[the丘)rmof]circleを. 意味す. る)injural19と. 英 語aroundが. い う複 合 前 置 詞 が そ の 類 似 した 役 割 を担 う こ と に な る 。 た だ 、 類 似. し た 役 割 と い っ て もaroundと. 全 てが す べ て 同 一 の 概 念 が 包 含 され て い るわ けで は. な い 。 た と え ば 、 下 記 で は(15c)の. み容 認 可 能 な表 現 と見 な され る。. (15)a.士Amlocuit魍acestuig塑. Ilivedinroundthistown →. 英 語 訳:Ilivedaroundthistown. .. b.央Amlocuit魍acestuibloc. Ilivedinroundthisbuilding →. 英 語 訳:Ilivedaroundthisbuilding. c.Suntl唖. 塾. .. 魍acestuibloc.. aremanytreesinroundthisbuilding →. 英 語 訳(直. 訳):Therearemanytreesaroundthisbuilding. ..

(29) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. →. 英 語 訳(意. d.*旦un⊆. ⊆魍. 第1号/2011.9. 訳):Therearealotoftreesaroundthisbuilding. ⊆. .. 〃τ ノ窃rωZacestuibloc.. isatreeinroundthisbuilding →. 英 語 訳:Thereisatreearoundthisbuilding. .. こ こ か ら得 られ る ネ イ テ ィ ヴ の 直 観 は 、injuralに. はaroundと. 同 様 の 「円 」 概 念. が 包 含 さ れ て い る に せ よ 、 プ ロ フ ァ イ ル さ れ た 参 与 者 の う ち 、 そ の 円 は 「複 数 個 」 の トラジ ェ ク タ ー に よっ て構 成 さ れ な け れ ば な らな い とい う こ とで あ る 。 そ れ 故 、 (14c)の. み 容 認 可 能 と な る の は 、 前 出(10)一(11)で 観 察 した 「心 的 走 査 」 の 認 知 活 動 を. 通 し て 複 数 個 の 参 与 者(こ. こ で はmulticopaciの. 指 示 物)が. 「円 」 の 概 念 で 捉 え. ら れ る こ と に よ っ て い る20。 そ れ に 対 し、 以 下(16a-d)に. 示 さ れ る よ う に 、 英 語 で はaroundを. れ る よ う な 事 象 で あ っ て も、 複 数 個 の 参 与 者 がprinの. 用 いて表 さ. 使 用 条件 の 制 限 に 関 ら ない. こ とが 確 認 さ れ る 。. (16) a.士Amg麺. 旦幽. Ifbundmany. ム. ロ. コ. サ. calnl腿acestl璽 dogsthroughthistree.. → 英 語 訳(直. 訳):. Ifbundmanydogsthroughthistree.. → 英 語 訳(意. 訳):. Ifbundalotofdogsaroundthistree.. b.雲Amg麺un. caine迦acest⊆. Ifbunda. 塑. ⊇.. dogthroughthistree. → 英 語 訳(直. 訳). :Ifbundadogthroughthistree. → 英 語 訳(意. 訳). :Ifbundadogaroundthistree. c.Am迦multi. . .. Caini麺aCeStUi⊆. Ifbundmany. 塑.. dogsinroundthistree.. → 英 語 訳(直. 訳). :Ifbundmanydogsaroundthistree. → 英 語 訳(意. 訳). :Ifbundalotofdogsaroundthistree. d.*Amg亘. 旦⊆.. 旦並un. Ifbunda → 英 語 訳:. Caine拠aCeStUi≦. . . 塑.. doginroundthistree.. Ifbundadogaroundthistree.. 一106一. (143).

(30) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. 森山. こ れ は や は り、 前 出(5)図 お よ び吻 図 の 概 念 を ま とめ た 下 記(1のの メ タ ・プ ロ セ ス の 流 れ の い ず れ で も表 し得 な い こ と に 起 因 して い る 。. [貫通 領 域 内 に複 数 のLMを. 設 定 可]. [心的 走 査 に よる貫 通 認 識]. ↓ 派生概念. [イ メ ー ジ ・ス キ ー マ 変 換+図. 「 経 由」. 地 分 化]. ↓ 限 られ た平 面 的 領 域. な お 、 前 出(1)で 記 載 さ れ て い たbyの. 概 念 につ い て ル ー マ ニ ア人 イ ン フ ォー マ ン. トに 確 認 した と こ ろ 、 以 下(1剖に 見 ら れ る よ う な 意 味 用 法 に しかprinは. 用 い られ な. い との こ と で あ っ た 。. (1鋤"M-aluat辺. 亟surprindere. Me(it)tookthroughsurprise. P迦erausecretemilitareAmericane. forthat;because(they)weresecretsmilitaryAmerican. →. 英 語 訳(直. 訳):Ittookmethroughsurprisebecausetheywere. Americanmilitarysecrets.. こ れ を英 語 表 記 化 す る と、"ltcaughtme〃ysurprise,becausetheywereAmerican militarysecrets."と で のprinが. な る の で あ ろ うが 、 上 出 ㈲ の メ タ ・プ ロ セ ス に 基 づ け ば 、 こ こ. 前 出(6)一(7)の 派 生 概 念 に 相 当 す る こ と は 言 を 侯 た な い21。. 以 上 、 英 語 の 諸 前 置 詞 の 概 念 と 比 較/対 ム を 明 らか に し た 。 本 稿 の §2に. 照 し な が ら、prinの. 多義性 の メカニズ. お け る 論 述 も加 味 す る と、 両 言 語 の 背 後 に は 、 下. 記 働 の 認 識 世 界 が 広 が っ て い る こ とが 導 き 出 さ れ る こ と に な る 。. (144). 一105一.

(31) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. [貫 通 領 域 内 に 複 数 のLMを. 設 定 可]一 レ経 由(prin2). 聴驚 雛 繍聯 儲;認 対比. b.限. 一 一 一 一 一 一 一動 機 づ け1[心. 的 走 査 に よ る 貫 通 認 識]. 一 一 一 一 一 一 一動 機 づ け2[イ. メ ー ジ ・ス キ ー マ 変 換+図. 地 分 化]. ら れ た 平 面 的 領 域 概 念(prin4)<一 レ 円 周 に よ る 領 域 概 念(around) 対比. お わ りに 本 稿 で は 、 英 語 の 諸 前 置 詞 と ル ー マ ニ ア 語 前 置 詞prinと. の 概 念 的 比 較/対. 照を. 通 し て 、 そ の 背 後 に 広 が る 「人 間 の 認 識 世 界 」 の 一 端 を 明 ら か に し た 。 逆 に 言 え ば 、 「人 間 」 と い う 同 じ生 物 が 同 一 の 現 実 事 象 を 如 何 に し て 非 連 続 体 に し て い る の か 、 と い う言 語 文 化 学 上 の 命 題 に 足 を 踏 み 入 れ た 考 察 で も あ っ た 。 英 語 と ル ー マ ニ ア 語 に 代 表 さ れ る よ う に 、 互 い に 異 な る 言 語 体 系 で あ っ て も、 そ の 源 流 に は 人 間 と しての. 「あ りの ま ま の 哲 学(philosophyintheflesh)」. が 反 映 され てい る よ う に感. じ られ て な ら な い 。 こ れ は 同 じ言 語 体 系 を 持 つ 諸 言 語 の 比 較/対. 照 で あ れ ば なお さ. ら浮 き彫 り と な る こ とで あ ろ う。 ル ー マ ニ ア で 言 語 調 査 を 行 う度 に 「な ぜ こ れ ほ ど ま で に 前 置 詞 表 現 が 多 い の か 」 と 問 う て き た 。 ル ー マ ニ ア 人 は 答 え る 、"S-ar puteacaRomanias首aibeonaturabogata,iardeaceeasafienevoiesase foloseasc巨osumedeniedeprepozitiitocmaipentruaexprimaintr-oform首 delicataaceas癒bog首tie."(そ. れ は 私 た ち が 多 様 で 豊 富 な 自 然 を 有 して い る か らか. も しれ な い 、 そ の 美 し さ を 繊 細 に 語 る に は 様 々 な 表 現 が 必 要 な ん だ よ)と. 。. 最 後 に 、 以 下(1)を 引 用 す る こ とで も っ て 、 本 稿 の 結 び と した い 。. (1)ク ー ル な 振 り を し て セ ー ヌ で 接 吻 を か わ す フ ラ ン ス 語 、 す べ て が 恋 の た め に あ る イ タ リ ア 語 、 犯 し た 罪 を マ リ ア に 祈 る ス ペ イ ン 語 、 切 な い 思 い を 多 くの 鼻 母 音 を使 っ て フ ァ ドに 託 す ポ ル トガ ル 語 、 な ど と 異 な っ て 、 ル ー マ ニ ア 語.

(32) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. 森山. は 真 っ 赤 な サ ク ラ ン ボ を 取 り入 れ る 、 美 しい 純 真 な 乙 女 が 口 に す る 、 ラ テ ン 語 の 愛 しい 田 園 形 の 感 じが す る 。 一 六 鹿(編)(2007:141). Notes. 1 ル ー マ ニ ア 国 内 の 新 聞 で も特 集 と して取. り 上 げ ら れ た 。 詳 し く はhttp:〃www.centrul-. cultural-pitesti.ro!index.php?option=com_content&task=view&id=2653&Itemid=99 (2010年2月13日. ア ク セ ス)参. 照 。. 2 本 稿 で 扱 う ル ー マ ニ ア 語 文 に つ い て 、 必 要 な 場 合 に 限 り 、 適 宜 以 下(1a-d)の. 項 目内. 容 を付 す 。 (1)a.ル. ーマ ニ ア語 文. b.当. 該 ル ー マ ニ ア 語 文 に お け る各 ル ー マ ニ ア 語 単 語 に つ い て の 英 語 語 彙 グ ロ ッサ リ. c.当. 該 ル ー マ ニ ア 語 文 の 英 語 訳(直. 訳). d.当. 該 ル ー マ ニ ア 語 文 の 英 語 訳(意. 訳). な お 、 ル ー マ ニ ア語 の 品詞 は 名 詞 詞. ・接 続 詞. ・冠 詞 の10種. ・冠 詞. ・代 名 詞. 類 で あ り 、 名 詞 が 性(gender)を. 形 容 詞 が 語 形 変 化(inflection)を ま た 、 次 の(2)の. ・形 容 詞. ・数 詞. ・動 詞. ・副 詞. ・前 置. 持 ち 、 そ れ に応 じて 冠 詞. ・. 起 こす 。. 方 々 を始 め、 多 数 の ル ー マ ニ ア語 母 語 話 者 には 、 本稿 で 用 い られ て い. る ル ー マ ニ ア 語 実 例 の 容 認 度 に 関 す る ネ イ テ ィ ブ ・チ ェ ッ ク を 受 け て い る 。 (2)NicolaeMirica(電. 気 エ ン ジニ ア. 46歳),OanaMoriyama(心 男性. ・男 性. 理 学 士. ・女 性. ・26歳),Valen廿naMoldovan(バ. (バ レ リ ー ナ ・女 性. ・51歳),EmanuelaMiric臥. (家 政 婦. ・女1生. ジ ニ ア ・男 性 Manea(大. ・26歳),EnacheNicu㎞a(機. Moise(ル. r1バA、. 場 長. 授(地. ・男 性 ・男 性. ・41歳),MirelaMoise(企 ・37歳),RalucaMirica(家. _1∩Q_. ・女 性. ・男 性. ・女 性. ・. ペ ラ歌 手. ・. ・26歳),DanielaMoldovan. ・男 性. ・23歳),GabrielaManea(大. ーマ ニ ア軍 大 佐. MirceaMiri磁(工. 学生. ・45歳),MihaelaManea(教 ・女 性. 織 手 動 産. ・47歳),RaduChingaru(大. 学 生. ・27歳),BogdanMiri磁(オ. レ リ ー ナ ・女 性. (無 職 ・女1生 ・71歳),GheorgheChingaru(不. 小 売 商. ・72歳),VioricaMhic巨. ・50歳),AdrianaChingaru ・27歳),AhnManea(エ. 理 学)・ 学 生. 女性. ン. ・42歳),Evelin. ・女 性 業秘 書 政 婦. ・20歳),Sorin ・女 性 ・女 性. ・38歳), ・35歳),.

(33) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. AdrianMiri磁(学. 第1号/2011.9. 生 ・男 性 ・14歳),AndreeaMarinescu(コ. 女 性 ・28歳),AndreeaDragoteanu(学 ペ ラ 歌 手 ・男 性 ・29歳) Moldoveancu(バ. ン ピ ュー タ技 師 ・. 生 ・女 性 ・18歳),BogdanD癒gan(オ. ,GabrielaSuciu(バ. レ リ ー ナ ・女 性 ・31歳),Miruna. レ リ ー ナ ・女 性 ・25歳),GranceaMarius(ダ. 30歳),IvascuCosmin(写. ン サ ー ・男 性 ・. 真 家 ・男 性 ・29歳),DumitruElenaDaniela(モ. デル ・. 女 性 ・24歳) そ れ ば か り か 、 ル ー マ ニ ア の 言 語 文 化 ・習 慣 ・伝 統 に 関 す る 様 々 な 知 識 を 教 授 し て 頂 き、 ひ い て は 筆 者 の ル ー マ ニ ア 現 地 の 活 動 を常 に 温 か く支 え て 頂 い た 。 こ の 場 を 借 りて 心 か ら 感 謝 の 意 を 申 し上 げ る 。 な お 、 故 森 山 元 嗣 ・故 千 代 田 貫 一 ・故 国 澤 澄 子 ・故 森 山. さ く ら の 諸 氏 に は 、 ル ー マ ニ ア に お け る 筆 者 の 現 地 調 査 を 常 に 温 か く支 え て 頂 い. た 。 こ の 場 を 借 りて 深 くお 礼 申 し上 げ る 。 3.同. 日 は 筆 者 の 実 父 の 命 日 で あ っ た が 、 キ リ ス ト教(オ. ー ソ ド ッ ク ス)と. の 宗教 的相 違 が. 存 在 して い る に も拘 わ らず 、 ル ー マ ニ ア 現 地 で 行 っ た 仏 教 方 式 の 儀 式 に も 筆 者 の ル ー マ ニ ア 人 関 係 者 の す べ て か ら多 大 な 理 解 ・共 感 が 寄 せ ら れ た 。 そ れ ば か りか 、 毎 年 司 祭 が 供 養 を 行 う た め に 、 現 地 の 正 教 会 に も実 父 の 名 が 刻 ま れ る こ と と な っ た 。 こ こ に も 彼 ら の 全 体 論 と し て の 文 化 が 確 認 さ れ 、 統 一 性 よ り も多 様 性 、(ハ ン ガ リ ー や トル コ な ど と の 歴 史 的 背 景 は 別 と し て)排 識 は 、 ツ イ カ(ブ. 除 よ り も迎 合 を美 徳 と す る 認 識 が 観 察 さ れ る 。 こ う した 認. ラ ン デ ー の 一 種)が. 訪 問 者 と の 出 会 い を祝 う 象 徴 と し て 、 ま た ワ イ ン. が 親 交 を 深 め る 象 徴 と して 、 他 者 を 迎 え 入 れ る 彼 ら 特 有 の 文 化 に も観 察 さ れ る 。 4.ル. ー マ ニ ア に お け る キ リ ス ト教 で は 、 結 婚 を生 ま れ 変 わ り と捉 え 、 新 た に 精 神 的 な 両 親 (spiritualparents)を てspiritualparentsが Godparentsと. 5.ル. 設 け る 必 要 が あ る 。 ま た 、 見 方 を 変 え る と 、 神 の 思 し召 し に よ っ 導 か れ 、spiritualparents自. 身 に も神 の 祝 福 が な さ れ る こ と か ら 、. も呼 ば れ る 。. ー マ ニ ア に お け る キ リ ス ト教 徒 が 行 う 結 婚 式 は 、 通 常 、 以 下(la-c)の. 流 れで実施. され る。 (1)a.ま b.次. ず 、 市 役 所 でlega1な. 結 婚 登 録 とラ イ ス シ ャワ ー な どの祝 い を行 う。. に 、 教 会 でspiritualparentsを. 伴 っ てformalな. c.最 後 に 、 レ ス ト ラ ン でmarriageceremonypartyを 昔 は(lc)が. 三 日 三 晩 行 わ れ た も の の 、 現 代 で は(la-c)す. 結 婚 式 を行 う。 行 う。 べ て を 同 一 日 に 行 う場 合 が.

(34) ルーマ ニア語前置詞 ρr1η と英語諸前 置詞 との概 念比較研 究 一 認知言語 学と言語文 化のイ ンターフ ェイ ス ー. 多 い 。 こ れ に つ い て 、 ル ー マ ニ ア 人 イ ン フ ォ ー マ ン トか ら は 一 日 に 行 う 」 と い う 回 答 も得 ら れ た. 森山. 「金 銭 的 余 裕 が な い か ら 同. 。. 6 共 時 的 な 観 点 か ら語 彙 の 意 味 概 念 を 眺 め る 認 知 言 語 学 的 観 点 と 、 通 時 的 観 点 か ら 語 彙 の 意 味 概 念 を 眺 め る 歴 史 意 味 論 的 観 点 と を融 合 させ た 理 論 。 詳 し く は 、 森 山(2008)を. 参. 照 され た い 。 7 なお 、 各 概 念 が 捉 え られや す い よ うに 、本 稿 で は必 要 に応 じて そ れ を表 す イ ラス トを適 宜 提 示 す る。 これ は、 視 覚 に訴 え る こ とで 、我 が 国 の英 語 学 習者 が 各概 念 を学 びや す く す る こ と へ の 一 助 に な ら な い か と の 思 い も込 め て い る 。 8 な お 、 以 下(1)の フ ラ ン ス 語 表 現 は 、 英 語in[theformof]acircle(円. の 形 に な っ て)と. い う概 念 と並 行 す る。 (1)enrond:輪. に な っ て=en(≒in)+rond(≒round). 9 イ ギ リ ス 英 語 で はaroundの. 概 念 に 相 当 す る 語 と し てroundも. (ed.)(1989)(s.v.about))。 でaroundの about))こ 10.近. しか し な が ら 、Theyranα. 代 わ り にaboutが. 用 い ら れ る(c£Leech. ノo観4thepark.と. い った 事 象. 用 い ら れ る の は イ ギ リ ス 英 語 で あ る(c£GEJD(s.v.. と を 考 え る と 、 本 論2.1.3.に. 畿 大 学 准 教 授ToddSquires氏. お け る吻 の 見 解 の 正 し さ が 確 認 さ れ る 。. 、 同 大 学 専 任 講 師PaulJoyce氏. 講 師 ・京 都 外 国 語 専 門 学 校 常 勤 講 師CarlNommensen氏. 、京都産業大学非常勤. に ご協 力 頂 い た 。 この 場 を借. りて お 礼 申 し上 げ る 。 11.本. 稿 の §2で. 論 じ た 「民 族 言 語 文 化 」(=国. し く は 、 上 野 ・森 山 他(2006)を. 境 の あ る 言 語 文 化)は. そ の 限 りで な い 。 詳. 参 照 され た い 。. 12.ル. ー マ ニ ア 人 イ ン フ ォ ー マ ン トの 詳 細 に つ い て は 、 本 稿 の 注 釈2番. を参 照 。. 13.こ. の 数 字 は 、 当 該 セ リ フ が 映 画 内 で 生 起 す る く 時 間 数 ・分 数 ・秒 数 〉 を 指 す 。 以 下 同 様。. 14.Thechurchisα670∬[thestreet]〃o〃ztheschool.(教 た と こ ろ に あ る)の fromが. よ う に 、 ア メ リ カ 英 語 で は[+移. 好 ま れ る 。 他 方 、Thechurchisqρpo謡etheschool.(教. の よ う に 、 イ ギ リ ス 英 語 で は[一 く は 、 本 稿2.1.3.参 15.こ. 会 は 学 校 か ら(通. 移 動]の. 動]の. り を)横. 切 っ. 意 味 素 性 を 持 つacross 会 は 学 校 と逆 側 に あ る). 意 味 素 性 を 持 つoppositeが. 好 ま れ る。 詳 し. 照。. れ は 、 以 下(1)に 見 ら れ る よ う な 日 本 語 表 現 と もそ の 概 念 化 は 並 行 す る 。.

(35) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. (1)こ. 第1号/2011.9. こ もそ う だ が 、 マ ラ ッ カ の 町 全 体 を通 して ま る で ゴ ー ス トタ ウ ンの よ うだ っ た 。 昼 間か らほ とん どの店 は 閉 まっ て る し、夜 に な っ て も開 か ない 。 食 堂 も少 な く、 ペ ナ ン や ク ア ラ ル ン プ ー ル と の 差 の 大 き さ に 驚 い た 。. -http:〃www. .world-scene.com!infomalay.html(2010年4月ll日. ア ク セ ス). (下 線 筆 者) 16.こ. こ で の`prinani'80'は1979年. 17.こ. こ で の`prinl997'は1996年12月31日. 18.こ. こ で の`prinacestora§'はacestora學 言 及 。 こ の 点 で も英 語aroundを. と1991年. を含 まな い 。 と1998年1月1日. を含 ま ない 。. の 指 示 物 に お け る 「内 部 の 位 置 の み 」 に 用 い た 場 合 の 事 象 と部 分 的 に 異 な る こ と に な る 。. 19.本. 稿 の 注 釈8番. で 見 た フ ラ ン ス 語 前 置 詞enrondの. 20.ル. ー マ ニ ア 語 で 、 た と え ば`Thereisatallpinetreearoundthisbuilding.'と た 事 象 を 表 す 正 文 に は 、pelangaと. 概 念 と並 行 す る 。 類似 し. い う 複 合 前 置 詞 を 用 い な け れ ば な ら な い 。 以 下(1). が そ の 実 例 で あ る。 (1)迦acestbloceste旦. 旦bradinalt.. onnearthisbuildingisapinetreetal1 → 英 語 訳:Thereisatallpinetreearoundthisbuilding ル ー マ ニ ア 語peは. 英 語 前 置 詞onと. 同 様 の 「(心 的 基 準 に 基 づ く)近 に 、pelang首. 同様の. .. 「接 触 」 概 念 、lan頭. は 英 語 前 置 詞nearと. 接 」 概 念 を 表 示 す る 。 そ れ 故 、 次 の(2)に 描 か れ る よ う. は 「近 接 し た 領 域 に 接 触 して 」 と い う概 念 を 表 し、 プ ロ フ ァ イ ル さ れ た 参. 与 者 の う ち 、 トラ ジ ェ ク タ ー と ラ ン ドマ ー ク と の 問 に. 「一 定 の 距 離 」 が 存 在 す る こ と に. な る。. した が っ て 、1盒n頭 が 単 独 で 用 い ら れ た 下 記(3)で は 、 結 果 と し て 、 英 語 のnear!nextto に 類 似 した 意 が 表 示 さ れ る こ と に な る 。 (3)工. 塑acestbloceste near!nexttothisbuildingis. 旦旦bradinalt. apinetreetall.

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