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表現活動の発達段階について : 様式化の段階と教育的配慮

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(1)Title. 表現活動の発達段階について : 様式化の段階と教育的配慮. Author(s). 福井, 凱将. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 47(2): 377-386. Issue Date. 1997-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2187. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 平 成 9年2月 February,1997. 7巻 第2号 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 i i i i i fEduca l Journa lo fHokka doUn t t t v er on (Se c onIC) Vo s yo .47 .2 ,No. 表現活動の発達段階について --様式化の段階と教育的配慮-- 福. 凱. 井. 蒋. 北海道教育大学教育学部釧路校美術・工芸科研究室. は じめ に. 本稿は, V・ローエンフェル ドが示した美術教育における様式化の段階の特徴を中心に, 子どもの造形表 現のあるべき視点から, 造形表現の可能性を論求するものである. 特に, 子どもが様式化を体験する必然性と, その脱様式の経緯を子どもの発達の必然性から究明する. 年齢的には, 一般に図式期に相当する, 6~9歳頃は, 自己中心的であるが故に表現様式は個性的であり, 個人的な様式である. そしてすべての子どもがたどる一つの段階である. すべての子どもがたどることを合 わせてこの発達段階の人格的特徴である. こういう人格的特徴を経由する発達段階であるからこそ, その教育的配慮の研究が必要であると考えられ る.. 工 児童画における様式 )日 本 に お い て は 林 V ・ ロ ー エ ンフ ェ ル ドに よ る 様 式 化 の 段 階 で は, 子 どもの 年 齢 は7 ~ 9 歳 で あ る.1 ,. )図式期に当たり S・パートによれば 叙述的な写実の時期に 部伝七が提示している例を参考にすると,2 , , 相 当 す る‐ (図 1) た だ, 林部 はV ・ ロ ーエ ンフ ェ ル ドの様 式化 前 の 段 階 と様式 化 の 段 階を, そ れ ぞれ, 前 )さ ら に H ・ エ ン グ (En e H ) は こ の 時期 を 「錯 画 か ら形 式 的 図式 期 と 図 式 期 と し て名 付 け て い る.3 g, . , ,. ) 描写への過渡期」 (部分排列の時期) (5~8歳) と明示している.4 V・ ロ ー エ ンフ ェ ル ドによ る 様 式化 の 段 階 と他 の数 人 によ る研 究 との 比較 は以 上 の 通り で あ る.. V・ローエンフェル ドは, この発達段階の様式という概念は, 非常に個人的 (個性的) なもので, 似た様 式 は二 つ とな い と い う. つ ま り 子 ども一 人 一 人 の個 人 的な型 を意 味す る という の であ る‐. \ 年齢 研究著 \\. 1. V. Lowenfeld. S.Bun. 3. 5. 4. なぐり描 きの段階. なぐり. がき期. 6. 様式化前の段階. 前図式期. 8. 7. 最初の再現試行. らく がき、 線の時期. 象徴 期. 日本の幼稚園. 2. 9. 1o. ll. 12. 13. 様式化の段階 写実的傾向 疑似写実的 の芽生え 形態概念の ギ ャ ング・ 段階 推理の段階 成立 エイ ジ. 叙述的象 叙述的写 視覚的写 徴の時期 実の時期 実の時期 ・図式期. 図1. 抑圧の時期. 前写実期. 14. 15. 16. 17. 決定の時期 青年期の危機. 芸術的復活 初期青年期 写実期. 発達 区分. 377.

(3) . 福. 1. 井. 凱. 将. 必然的な様式. V・ ローエ ンフ ェ ル ドがいう よ う に, 様式 という 概 念 は個 人 的, 個性 的な もの であ る‐ しか し, こ ども は, この様 式 に至 る前 は どう な の か. そ れ はV・ ロー エ ンフ ェ ル ドが 言う 「様 式化 前 の段 階」 を みる こ と にす る. つ まり, な く り描きの身体的な運動と, 紙の上に残されたその結果の因果関係より, 対象物に対する両現か. らはじまるのである. 具体的にいうと, まず形態の意識的創造である‐ 子どもはこの新しく発見された関係 の中で, 新しい概念をたえず探し求める‐ やがて自己表現を何度かくり返して子ども自身の個人的な型が出 来てくる‐ これが子どもの様式である. この以前の段階では, 描画の中で形態的象徴が, たえず変化してきたことが現実的にいろいろと明らかに さ れ てい る.. それは, な ぐり描き期の終烏を示す象徴的表現, 命名試行のくり返しの表現である‐ (図2, 3) 要するに, 様式化以前の段階であることは, 同一部を表現するのに非常に多くの形態的象徴を用いるとい う こ とであ る.. きL .三 ,謎. 図2 命名 期. 4歳. 図3. 頭足人. ( ) 人間の様式 1 子どもは様式化の段階以前においても, 徐々に形態の出現と経験をなんとなく, 又, 真剣に熱中してあら たな形態と対面する. 例えば, 頭を描くと, まるい線を引き, 足を描くには (胴も含めて) 長い線を引いて, 人間を描くことで ある‐ (図3) 子どもの把握した人間の様式は, 子どもにとって最も身近である人間という姿と, 自己にかかわる人間愛 を具体化したものである. 子どもは自らははっきりした形態をイメージできなくても, 何度も自分のやり方 をくり返すうちに自ら確信するような経験した形態が伴ってくることを発見する. これがこの様式化の段階の人間様式なのである. V・ローエンフェル ドが, 創造活動の事項で指摘したように, 様式は子ども一人一人にとって固有な様式 であり, 自己中心的であることに特徴があると考えられる‐ )人 物 画 の 投 K ・ マ ッ コ ー バ ー (Mach, K) は, 子 どもの絵 にあ らわ れる 特 徴 を 次 のよ う に述 べ て い る.5. 影現象というものは, 正常な無意識的発動をさまたげる要求, 葛藤, 不安が人物を描く際に引きだされてく るのであって, 描くことは一種の創造的な過程であり, 創造的な活動のすべては個人的なものに結びついて いるという‐ 従って, 描かれた姿はその個人の人間であり, 画面は描いた子どもの環境に相応したものであ ると理解できる‐ 378.

(4) . 表現活動の発達段階について. 彼はさらに, 具体的な解釈をしている. たとえば, 頭部は自我の中心とみなし, 身体衝動を統制する身体 の中の唯一の部分である. それゆえ頭部は, 何といっても表情に富んだように, 社会接触の特徴をあらわし ている. 動態の部分は衝動生活体であるから, 感情成熟の発育状態に関係があり, 四角 ばった胴体をかけば 感情未熟な特性を含んでいるとみている. 首は衝動や精神の制約組織体であり, 構造の上から, 頭と体の間 にある鎖であるとみなしている. 次に手や足などは接触のための身体を支えたり, 均衡を保持したり, 身体 を動かすことに責任をもっ ている象徴として, 葛藤や抑圧などが表現されるというのである. 同じ人間の表現につ いて, S・パートは叙述的象徴主義 (5~6歳) の段階において, 次のように述べて ) い る.6. 人間の形はかなり正確に再現されるが, 幼稚な象徴図式としてあらわされる. 容貌は ごく大ざっぱで描か れている. 眼鼻は乱雑に置かれてあっ て, ほとんどきまりきった形をしている. おおよそ図形は子どもによって多少異なった型をとるが, 同一の子どもは, 相当長期間において, 同じ得 意の図柄をかなり綿密に踏襲するという. 次の発達段階である叙述的写実主義においては, こどもは, 「自 分の見るものを描くより, 知っているところを描く. まだ現実の対象よりもむしろ起源的典型を考えてい )と述 べ て い る 彼 が いう 起 源 的典 型 は円形 に近 い もの を指 し てい る と思 わ れ るが 子 どもに と っ て 7 る. 」 , , .. かきやすく, わかりやすい形であると考えられる. K ・ マ ッ コー バ ー とS ・ パ ー トによ る子 どもの 人 間表現 をみ る と, 様 式 化 と共 に個 人 的な 性質 が 表現さ れ. るという主調に共通点がある. しかも, V・ローエンフェル ドが指摘している非常に個人的な形態表現と合 致 し て い る.. ( 2 ) 主観的経験の表現 V ・ ロー エ ンフ ェ ル ドによ る, 主 観 的経 験の表 現 は様 式 か らの 離脱 を 意 味 し てい る. 彼 はそ の様 式 か らの. 離脱について, 三つの形成を示している. ①重要な部分の誇張, ②重要でない部分や抑圧された部分の軽視や省略, ③情緒的に重要な部分の象徴の ) 変化 で あ る.8. 以上, 三点のうち, 誇張と軽視は形の大小に関係し, 象徴の変化は形の特徴に関係しているという. そし て, こういう離脱の起源は, 身体的な自己感情や身体のある部分を重大に価値判断しているか, その部分を 情緒的に重要視しているかの関係である. 図4はスケートが得意な子どもの絵である. 自分の存在を中央に大きく描かれている. 部分的にはスケー ト (足) と手の表現に特徴があり強い興味を抱いていることがわかる. 図5はこいのぼりの大きさを誇張し ていながら, 下部に描かれている自分の長い手は空にさし出して, こいのぼりとの親和感をあらわしている‐ このような絵に限らず, 子どもは固定した様式にこだわるのではなく, 自分自身の個人的経験を用いて, 創作活動中に様式を創造的に変形することを示している. さらに, 不釣り合いになるのは, 子どもの経験に おいて情緒的な重要な部分へのこだわり (変化) を示すが故に生じると考えられる. だから, 不釣り合いな 表現は, この時期の子どもらしさなのである. 個人的な様式の離脱は, 自分の経験に親しく結びついており, 子どもにとって重要であることの主観的な 表現が, 次の新しい再現様式へ向かうのである. K・マッコーバーが述べたように, 描かれた身体の各部分は, 描かれた子どもの環境に相応するものであ るおいう象徴的意味も同じく再現様式へ進展する. V・ローエンフェル ドは, 足, 腕, 頭, 眼, 鼻などの特 徴を, 楕円形, 三角形, 四角形, 円, 矩形, 太い線, 細い線などの身体の様式として, 時には幾何学的な線 ) 描 と してあ らわ れ ると いう.9 379.

(5) . . . 福. 井. 凱. 幣. . . や. 戸塚 議. \. . .-◆ . 、 ▼ . : ー ′. Jも ▲ r ノ ・. 図4. スケ ー トであそ ん だ. 図5. 7歳. こ いの ぼり. 7歳. 2 空間描写 ( 1 ) 基底線 様式化の段階における子どもの空間認識やその描き方は, その時期における心理的発達と最も強いかかわ 0 )そ れ は 人 物 に お ける 再 現様 式 と 同 様 に 「木 が り を も つ こ とを V ・ ロ ー エ ンフ ェ ル ドが 指 摘 し て いる.1 , , あ る」 「人 がい る」 で はなく, 主 観 的経 験によ っ て, 「木 は地面 か らはえ て いる」 「私 は地 面 の上 に いる」. という表現は漠然としたものではなく, 自己経験の主張なのである. 彼は, こういう子どもの変化を 「子どもが環境の一部分であることを知る最初の集合的意識は一つの象徴 )この 方法 により 子 どもたち は 1 によ っ て表 現さ れる‐ こ の象徴 を 〔基底 線〕 (basel ine) と 呼ぶ」 という.1 ,. 物でも人でもあらゆるものをこの重要な空間様式である基底線にのせて表現するようになる.. ー ノ. . ー - . . . ” ” ・▲. F 十十 一 『. ン ′ - . ”. iー.. . ‐ . . . . . ′ .▲ ( -′ 、 ′ ′ -- ′; - ー′}. ▼ た. 図6. 基底線のある絵. 7歳. 図7. おかあさ んとおね いち ゃ んと ぼく と じてん しゃ. 7歳. 2 ) V ・ ロ ー エ ンフ ェ ル ドは, 情 緒 的 な 経 験 の た め の空 間表 現 を, 子 ども の主 観 的 空 間表 現 と 呼ん でい る.1. それは, 複数の基底線 (図7) 上に人や物が立っているという子どもの経験による表現とともに, 新たに子 どもの空間概念が体委譲することを認めている. その一つ は, 基底線が子どもの空間概念の中で, まだ媒介 物としての働きをしているものである. それはまだ使われてはいるが, ただ修正された形で使われている場 380.

(6) . 表現活動の 発達段 階について. 合である. 情緒的経験が強いために自分が環境の一部分であることを忘れて, 子どもは自分の 「基底線の経 験」 を放棄して, 純粋に情緒的経験に基づいた空間関係へ持ち込んでいく. この具体例として, V・ローエ fo ldingo ) をさしていう‐ それは, 物体を基底線に対して垂直に描くこと ンフ ェ ル ドは 「折り 重 ね」 ( ver. により, 空間関係を創り出すために, 事物はさかさまに描かれているように見える場合である. (図8). ノ . .. .. 図8. . ー, ′. 基底線の変化. 著者作図. 図9. す べ り だい. 7歳. もう 一 つ の例 と し て, 図 9 にあ るよ う に, す べり 台と か, 高い と ころ とか, 自分 の立 っ ている ところ が 子. どもの基底線になる場合である. さらにV・ローエンフェル ドは基底線を使わない場合を指摘している‐ つまり情緒的経験が非常に強くて, 放棄する場合であるという.. ”. ・ ・ .. . ・・- ・ ・ ・”: ・. F. 図10. おたん じよ う会. 8歳. 図11. みんなでさ かなとり. 8歳. 図10と11は展開画とも称される描法であるが, V ・ ロー エ ンフ ェ ル ドの 折り 重 ね の 延長 であ る と 考え ら れる. おそ らく, テー ブル ライ ンが基底 線 とな っ て い る と思わ れる.. 381.

(7) . 福. 井. 凱. 縛. ( 2 ) 同時的表現 次に, 空間と時間との関係について子どもが, 単一空間 (画面) の中に異なった時間の継起があらわす場 合 で あ る. V ・ ローエ ンフ ェ ル ドは, 二 つ の 方法 につ い て論 じて い る‐ その 一 つ は, 時空 再現 の一 つ の 方法 と しての. ) 3 意向伝達の必要性から生ずる場合である.1 彼は, お話とか, 遠足などの再現のために, 反復的に描かれることを例 にあげて説明している. それは, いろいろな一つの出来事を, 別々に描いたように, お互いに結び合わせて一つの出来事ではなく, 別々の行 為が, 一つの空間に再現した場合である. これは, 行為の重要さのために時間意識は低下して, 一つの描画 の中に異なっ た時間面を再現していることにあるというのである. ( ) 透明画法 3 様式化の段階における子どもが用いる方法にX線画がある. これは, 子どもにとって, 内部が外部よりも情緒的にいっそう重要である時に内部と外部とを同時に描く 方法である. 絵は描かれたものが透明であるかのように見えるもので, その透視は, 子どもにとっての情緒 的意義に対して, より多く反応することを認識する必要がある. (図1 2, 1 3). . {. 二口. 軽震 鰻 義睡蓮霧襲爵 ・道 翼. ぜ 醗醗酵 麺 . 図12. でん しゃ にの っ た. 8歳. . 図13. たの しいク リスマス. 8歳. ロ 個別的成長. 1. 知的な成長発達. 環境の変化に適応するために, 子どもたちはいるいるな働きをもっ て対応しなければならない. その働き のうち, 認識的側面に関する働きを総称して知的機能といわれている. 一般的に, 外界の状態を認知する知 覚, 認知された環境に働きかける手段を獲得する造形表件や, その経験を保持し, 将来のために用 意する記 憶, さらに記憶された手段を状況に応じ, 変容したり, 結合したり, 時として新しい手段を発見する思考な どをあわせたものである. ふつう 「知的な」 という範時は, この知的機能に加えて獲得された経験の内容と, その発展, すなわち感 覚器官と連係して創造する能力までを含めて考えられる広い概念である‐ さて, 乳幼児の知覚では, 大人のように視覚, 聴覚が優位ではなく, 触覚が上位を占めている‐ 成人では 見ただけで確認できるものが, 幼児はさわってみないと気がすまないことがふつうである. それが成長とと 382.

(8) . 表現 活動の 発達段 階について. もに, 目的追求の活動する構造が複雑化してくると, 知覚的手がかりも間接的になり徐々に抽象的な形など も識 別 でき るよ う に な っ て いく の で あ る. V ・ ロ ーエ ンフ ェ ル ドは, 様 式化 の 段 階 に お ける 子 どもの知 能の 成長 を, 子 どもの 様 式, つ ま り 概 念 にお 4 )彼 に よ る と 一 定 の 概 念 を 表 現 す る場 合 一 つ の 様 式 をく き か え て, 知 的 な 特 徴 をあ き らか に して い る‐1 , , り 返 して用 い る こ とと, 型 に はま っ た 反復 を す る二つ の使 い 方 であ る.. 型にはまった反復が, いつ も同じものばかりくり返しているのに対して, 様式の繰り返しは, 柔軟性があ りどのような離脱や変化も行うことができる. その離脱とは次の成長発達を意味する. この二つの使い方を する子どもの絵は, 両者がよく似ていることが多く, 見分けがつきにくく, 何よりも表現様式に柔軟性があ るかどうかを見分けることが重要である. それは, 様式化の段階の特徴を柔軟に洞察することでもある. 情緒的な成長発達. 2. 一般に, 心理的な動揺, 興奮が身体の外部にあらわれる状態をさしで情緒と理解されている. その心理的 な動揺, 興奮は, 快・不快と喜怒哀楽をさしている. 学者によっ て, 情緒は情動ともいわれているが, J, )同 5 ) は, 基 本 的 生得 的情 動 と して, 恐 怖, 怒り, 愛 情 の三つ をあ げてい る‐1 B. ワ トソ ン (Wat son,J,B.. じ似た言葉に感情があるが, これは情緒の単純なもので, まだ表情にもあらわれない, 快・不快という内面 6 )人はよく怒りをあらわす場合に激昂するとか 感情的になる という言い方と付き合う 的なものである.1 , , ことがあるが, それは感情の表出機能は情動の一部が担うわけで, 飛躍したことばの使い方である. 本来, 感情とは純粋で深遠的なのである‐ 7 ) 高橋省己は日本の小学校一年生について, 情緒の発達的傾向を次のように述べている.1 ( 1 ) 幼児的な特徴をとどめているが, 幼児に比べて情緒は複雑になり, 持続性を増し, はげしさを減じ 激 情 は抑 え 難 い‐ ( 2 ) 6歳 ごろま ではよく泣くが, 7歳以後は少なくなる‐ 泣くところを人に見られるとはずかしく, 抑 制す るよ う に な る. ( 3 ) いろいろな場所, 音に対する恐怖心が強く, 大きな動物や野獣に対し恐怖を示す. 4 ) 6歳を過ぎる頃から, 言語的にも, 行動的にも非常に攻撃的になる. (. ( 5 ) 両親に対する絶対的な信頼と愛情の中に生きている. ( 6 ) 友人に対する愛情はまだうすい. ( ) 作り笑い, 空笑いの傾向があらわれてくる. 7 ( 8 ) けん かの 原 因 は, ぶ っ たり, つ ね っ た り す る という 身体 的原 因 が多 い.. 以上の情緒的傾向は二年生になると, 感受性が少し強くなり, 競争心があらわれる変化が起きてくるとい つ.. 子どもの心理的なはたらきが外部にあらわれるこのような状態は, 子どもが日常生活において絶えず体験 するものである. その中から強い感心や興味が主題となって自己表現にあらわれるのである. m 教育的配慮. 様式化の段階における教育的配慮は, この段階の子どものあらゆる個別的成長発達を理解することからは じま り, 実 践 の 場 におい て如 何 に し て 応 用 す るか が 重 要 であ る. そ して 子 どもたち か ら フィ ー ド・ バ ッ クさ. れた指導の評価が教師の教材となる‐ このような考え方に基づく教育の仕方にある. 383.

(9) . 福. 井. 凱. 将. 自己同一化と表現活動. 1. 自己同一化は, 教育の仕方における重要な概念の一つで2 る. V ・ ロー エ ンフ ェ ル ドは, 『美術 によ る人 間形成』 において, 美術表現は表現された経験 (作品も含めて) と, 表現材料及び主題に自己同一化するこ ) S と によ っ て, そ の表 現が 可能 に なる と いう‐I. 子どもの自己表現は独自な表現形式を用い て自分をあらわす個人的経験である‐ 独自的なものは個人に とっての自分である. そして, 知的, 情緒的, 身体的, 社会的なものの要求と変化が心理的反映する自己自 身 であ る. 同一化 ( ident i f i i cat on) は, 同 一 視 と も訳 さ れ て い る が, 情 緒 的 に 強く 結 び つ い た 他 者の 思 考, 感 情,. 9 )もともと精神分析の概念で 防衛機制の一つ とされてい 行動様式を自分のうちにとり入れることをいう.1 , る. しか し, V・ ロー エ ンフ ェ ル ドは, 適 応のた めの 欲求 充 足 という 水 準 を越え て, 自 己と外界 (環境) の. 適応のため, 個体が主体的にはたらくことを同一化と考えたのである. 彼 は, 表 現 活動 にお い て, 自 己同一 化 の方 式 を明 らか に してい る‐. まず第一に教師と子どもの関係 について, 彼は本質的用件として, 教師は子どもの, 社会的, 知的, 情緒 的などの要求を承知した上で, 自らの同一化を指摘している. 同時に子どもは教師の期待感や自身への配慮 に呼応するように, 題材や教材を通して自己同一化するのである. ) 第二に, 子ども同士の関係であり, 他者の経験への同一化である20 それは, 他者が表現した作品や表現材料及び知識への同一化である‐ このように, 子どもたちの一人一人 の自己表現を通して, 他者に自己同一化することで, 社会的, 情緒的な適応が可能になる. それは, その後 の表現活動の貴重な主題 (経験) を形成していることになると考える‐ 2 自己表現と自己実現 自 己 表 現 (sel f-expression) は 自 己実 現 ( f-ac i i tual t sel za on) の - 過 程 と して 考 え る こ と が でき る.. A,H.マスローは, 成長動機の価値実現を自己実現と定義している. その成長動機につ いては, 人格の統 合性, 自発的な表現性, 完全な個性と統一性, 真実を直視すること, 創造的になること, 善なることなどに 向かう力などをあげている. そしてこれらの価値を実現しようとする プロセスに意義を求め, 実現した人間 ) 1 を 「完 全なる 人 間」 という.2. 従って, 子どもの自己表現は自我形成が不断にとり行われる自己同一化に支えられたり, あるいは表裏- 体となって, 自己実現の可能性を高めていくのである. 子どもの自己表現は自己自身の投影である‐ 他者の投影と比べて他者を知り自分を知る. ここにおいて, 自己及び他者の経験への同一化のはたらきは, 自己表現と共に自己実現をめざす活動なのである. 造形表現と技法. 3. 子どもの造形表現における技法の取り扱いは, きわめて重要である‐ V・ ロー エ ンフ ェ ル ドは, 教 師の 立 場 につ い て次 の よう に述 べ てい る.. 「子どもは自分自身の技法を自然必然的に発達させるものであること. 子どもに正しい技法を示すという 教師の援助は, 単に子どもの個人的努力を束縛するばかりであること. 教師の仕事は, それを用いる最上の 2 2 )様式化の段階にある子どもは 基本的に 準備が子どもにできた時に, 適当な材料を与えることである. 」 , は, 平面にも奥行きの再現にも頓着しないで, 自分に都合のよい形態, 空間, 色彩などの方法をみつけて, そ れを反 復 す るこ とによ っ て 様 式 に発 展さ せ てい る の であ る. V ・ ロー エ ンフ ェ ル ドが いう 教 師の援 助 は必 ず しも 子 どもにと っ て, -協力 に かかわ る と は限 らな いの であ 384.

(10) . 表現活動の 発達段 階について. る. 逆に強要と感受する子どもは自律性がぐらつき, 自己表現はあいまいになってしまう. しか し, 皮 肉 な こと に, 強要 に少 しず つ な じん で しま い, 知識 の つ め こ み, 知 覚 の訓 練 な どの成果 で, 次. 46年以後の民主主義教育の名のもとに, 保護された各種の児童画 の発達水準を先取りする場合がある. 1 9 展において, 子 どもの将来性をつみとる技巧的な児童画を筆者は数多く記憶している. つまり, 子どもらし さに欠けた見せかけの発達水準である. 子どもらしさは, 子どもの自主的・自律的な要求と活動によっての み獲 得 でき る 唯一 の もの であ る と 考え る.. 幼稚園, 小学校においてよく耳にする言葉がある‐ 「上手にかけたね」 「すごく上手だね」 という褒め言 葉であるが, 同時に評価上でも上手, 下手が頻繁に使われている. これは本来的に不適切な使用である. な ぜなら大人が理解しているような, 上手, 下手は子どもには直訳しても分からないのである. 大人の心理的 ・知的性質と, 未発達の子どもの心理は大きな差があるのである. この不適切な使用は, 大人の自己中心的 な 子 どもへ の装 い である.. 上手, 下手は, 客観的な性質をもったある基準みたいなものであって, 子どもの個人的な努力や意欲を消 滅さ せ て しま うの であ る.. おわ り に. 子どもの造形表現 (自己表現) は, 子どもが生活環境を通した自己自身の投影である. 生活環境といって も, 子どもからみれば, 多種多様な人達と情報と, 日常品でいっ ぱいである. 子どもにとって造形表現は, 多様な自己表現の世界である. 子どもは, よく泣いたり, 喜んだり, 恐れた り, 怒ったりする. そしてよく遊ぶ‐ これが子どもの経験 (活動) する生活環境なのである. 子どもはよくテレ ビを見る. おもしろいから見るのであろう. しかし, 見て楽しんでいるなんて, 都合よ く考えてはいけない. 客観的には, 楽しまされているのである, というのも正しいのである. 何ら身動きも せ ず, だま っ てい る だ けで 楽 しめる なん て こん な あり がた い こ と はな い, と子 ども は思 っ ていた り 感 じ て い. るのかも知れない. いずれにしても子どもの立場は受動態なのである. このような受動態は, 子どもの自己 表現や自己同一化とは無縁的な存在である. 教育の現場におけるさまざまな現象の評価は, 一面的に, 一方的に都合よく遂行されてはいけない. それ は, 子どもの数だけ, 多面的な指導と評価が必要であるからである.. 〔註〕 1) V・ローエンフェル ド 9 6 9, p 1 81 , 竹内清, 堀内敏, 武井勝雄訳, 『美術による人間形成』, 繋明書房, 1 2), 3), 4) 林部伝七, 『美術教育の基礎原理』, 学芸図書, 1 2 9 6 3 ~ 2 4 6 , pp 5) 扇田博元, 『絵による児童診断法』, 禁明書房, 19 67, p 165 6) H・リー ド 95 3, pp132 ~ 133 , 植村鷹千代, 水沢孝策訳 『芸術による教育』, 美術出版社, 1 7) 同上, p 133 8) V・ローエンフェル ド , 前掲書, p 184 ) 同上, p 188 9), 1 0 1 1 ) 同上, p 183 1 2 ) 同上, p l96 3 ) 同上, p 201 1 4 ) 同上, p 220 1 ), 1 1 5 6 ) 薗原太郎, 柿崎祐一, 本吉良治, 『 [ 97 1, p 1 87 ・理学辞典』, ミネルヴァ書房, 1 ノ 385.

(11) . 福. 井. 凱. 将. 17 ) 中野佐三, 沢田慶輔, 松村康平, 辰見敏夫編, 高橋省己執筆, 『小学生の心理』, 明治図書, pp5 9 ~ 60 ) V・ローエンフェル ド 1 8 , 前掲書, p 52 ) 下程勇吉監修, 『教育学小事典』, p 276 1 9 20 ) V・ローエンフェル ド , 前掲書, p 153 ) 下程勇吉、 前掲書, p 160 21 22) V ・ ロ ー エ ンフ ェ ル ド , 前 掲 書, p 218. 386.

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