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日本語教育-問題点と課題-: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

日本語教育−問題点と課題−

Author(s)

仲村, 芳信

Citation

沖縄大学紀要 = OKINAWA DAIGAKU KIYO(6): 31-38

Issue Date

1989-03-31

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/5728

(2)

〔資科〕

日本語教育一問題点と課題一

仲村芳信

現在、日本国内で日本語を学習している外国人は130カ国から35,335人(文 化庁調査、1985年10月現在)、海外の学習者数は75カ国で580,943人(外務 省、国際交流基金調査、1984年)-(日本語教師読本、アルク、1986年6月 1日)調査から漏れた企業内研修、ラジオ・テレビによる独習者、個人指導な どを含めろと3,000,000人にもなるだろうといわれている。このように確実に 増加しつつある日本語学習者にどのように日本語教育を施していけばよいか、 真剣に考えなければならない時にさしかかっていろ。ここで、日本語教育の問 題点とその課題について述べてみることにする。 日本語教授法の諸問題(文化庁、1984)の中における小出詞子氏の「日本 語について」(ことばシリーズ10、文化庁、1983)は、日本語教師にとって 外国人に日本語を教える場合、参考になる点が多い。ここでその内容について 大まかにみてみよう。 日本語は、「内」から見る時、「国語」といい、「外」から見る時、「日本 語」という。また、「国語教育:日本語教育」、「国語学:日本語学」と各々二 つの言い方がある。国語教育は日本語を母国語とする者を対象とし、日本語教 育は日本語を母国語としない者を対象とする。それで、「日本語教育」は、一応 次のように定義されている。つまり、「日本語以外の言語を母国語として持ち、 その言語と日本語と日本語とを対照にしながら問題を取り出して行なうMdである。 日本語学と日本語教育の歴史をふり返ってみろと、戦前、戦争中、戦後の三 時代に分けることができる。 1370年代に明朝廷は、日本やその外の国々から外交使節を受け入れた為、通 訳の必要を感じ、1469年には、日本語の通訳4人も含めて60人の通訳を養成 したといわれていろ。日本語に関する書籍も「助詞」抜きではあったが、多数 出版されたという。朝鮮でも、「日本行録」(宋希景、1420)や「提解新語」 -31-

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沖縄大学紀要第6号(1989年) (康過聖、1676)などが出版された。16世紀には、ポルトガル人によって日

本語の研究が始められた。これは、「切支丹物」として伝えられた。切支丹物

は、ポルトガル式のローマ字で発音を表わしてあり、短音節、長音節、勧音長 音節、特殊音などが収録されていて、当時の音韻研究の貴重な資料となってい

ろ。鎖国中、欧米諸国の中では、オランダのみが通商を許されていたが、Re-cordsonJapanese(Kaempfer,1727)や「日本語用略」(シーボルト、1826)

など日本語関係の書物が出版された。18世紀に入ると、欧米人による日本研究 が、盛んになってきた。明治維新後、欧米との国交が開け、日本語および日本 語研究が、訪日した外交官、宣教師、学者などの間に盛んになっていった。 1872年に、日本アジア学会が設立され、多くの学者が日本研究に貢献した。ヘ

プパーン博士はヘポン式ローマ字の制定に資し、チャンバレン博士はSimpli-fiedGrammaroftheJapaneseLanguage(1887)など日本語関係の書物

を多数出版していろ。その他の英米の学者も、言語の比較、歴史的研究、方言 学などの新しい知識を伝え、日本の学会に大きな影響を与えた。明治時代には、 「言語改革運動」が起こり、(1)言文一致、(2)漢字簡略化、(3)口語文法の研究及 び教育、(4)日本語のローマ字化などは、注目すべき点である。また、フンポル

ト(1836)、Jespersen(1925)、ソシュール(1931)、トムソン(1927)

などの言語学者たちの著書が和訳された。これは日本における言語研究を活発 にさせるひきがねとなった。1886年には東京大学に今日で言う言語学科が創設 され、日本語系統論が論ぜられた゜日本語は、ウラル語には関係なく、アルタ イ語族のみに関係があると改められた。1930年にはプラーグ派の音韻論が紹 介され、日本語の歴史的研究に貢献した。万葉の古代日本語の母音は、おそら く8つあったと橋本進吉氏は説いた。また、山田美妙氏の研究により、東京ア クセントは、「強さ」(stress)のアクセントではなく、「高さ」(pitch)の それであることがわかった。 1931年の満洲事変、1937年の日華事変、1941年の太平洋戦争中に、日本軍 は、アジアに進駐し、日本語教育にも力を入れた。1943年に文部省は、日本語 教師を選考して、フィリピンやその他の占領国へ送った。米国政府は、第二次

世界大戦が始まると、語学将校の養成を始めた。1930年頃、Boas,Sapir,

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Bloomfiedなどによって提唱された構造言語学の理論を応用して、陸海軍の語 学校を発足させた。教授法として、米国人の言語学者が文法の説明を受け持ち、 日本人のインフォーマントが練習(ドリル)を受け持つという分担作業であっ た。語学だけではなく、日本学(歴史、政治など)も教えられた。これは、陸 軍方式といわれるものであった。海軍では、インフォーマントを使わず、日本 人教師を訓練して説明も彼らにさせた。教材は、長沼直兄の「標準日本語読本」 を用い、「読み」、「書き」にも力を入れた。 戦後は、1946年以来、日本語の改革が、いろいろと実施された。国語審議会 が国語改革に大きな貢献をした。1950年代には、チョムスキーやHalleなど の唱える生成文法の影響を受けた。戦後の日本語教育をみてみろと、1948年 に神田三崎町に東京日本語学校が始められ、後に、渋谷に移った。キリスト教 宣教師が多く、約二年修業して各地へ赴任している。1953年、国際キリスト教 大学(ICU.)に留学生のための日本語集中教育が実施され、大学の講座と しては、日本で初めて文部省に認められた。その後、早稲田大学、東京外語大 学、千葉大学などの学生課で日本語を教え始めた。最近では、琉球大学、沖縄 大学、沖縄国際大学などの地方の大学でも留学生のための日本語教育がなされ ていろ。戦後、在日米軍基地内にメリーランド大学の分校がおかれ、軍人、軍 属に対して日本語も教えていろ。 日本の経済力が強くなり、影響力が大きくなるにつれて海外での日本語教育 も盛んになってきた。1964年に海外技術協力という名目で第一陣の若手技術者 を東南アジアに送った。そのなかに日本語教育者が七人含まれ、マレーシア、 インド、インドネシアでそれぞれ日本語教育に従事した。この試みは成功し、 各国で歓迎された結果、正式に日本青年海外技術協力隊(通称平和部隊)が発 足し、だんだん拡大されている。また、コロンボ計画で、「日本語教育専門家」 が、東南アジア各地の大学、日本語学校、大使館の文化センターなどで日本語 を教えていろ。それからヨーロッパ、オーストラリアなどで、日本語を教える 者に対する旅費などの一部援助もある。 戦前、米国で日本語を教えていた大学は、わずか五、六校にすぎず、1960 年には、10の大学で、1970年には、約40の大学で日本語が教えられた。また、 II6QⅡU7 -33-

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沖縄大学紀要第6号(1989年) アーラム大学を中心として10の大学が集まり、共同で東洋研究講座を設けて、 日本語はそのうち三校で教えている。 イギリス、ドイツ、フランス、ソビエトなどでも日本語教育が行なわれてい

ろ。近年、オーストラリア、ニュージーランドでも日本語を教えている所があ

る。ちなみに、日本語教育を行なっている国別のベスト10(日本国内を除く)

を1970年と1985年を比較してみろと次の表の示す通りとなる。 (外務省、国際交流基金の調査) 上の表からわかることは、1970年の日本語学習者が上位10位以内に入ってい たアジアの国がわずか中国、韓国、タイ国の三カ国にすぎなかった。しかし、1985 年になると、それが六カ国となり、1970年には6位であった韓国が1985年には海 外で第一位になり、二位のアメリカ合衆国を大なく引き離している。環太平洋地 域諸国における日本語学習者の人口が急速に増加してきていることがわかる。 次に、日本語教育の動向を見てみよう。米国では、1930年頃から応用ざれ始 -34- 11項位 国名 1970 国名 1985 123456789m アメリカ合衆国 中国 西ドイツ ベトナム フフ ンス 韓国 イギリス タイ カナダ オーストラリア 2,321 846 337 254 250 198 179 121 109 101 人 韓国 アメリカ合衆国 、、 ̄ フフ ジノレ インドネシア 中国 オーストラリア タイ 香港 台港 一 一-ジランド 人 6138253754 0407741849 4457517024 9、,917,999 6717435494 53322211 3

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めたオーラルアプローチをもとにして日本語教育をおこなった。これは、対象 とすることばを機械的にくり返して覚える方法で読み書きの言語技能は、ほと んど無視された。最近の傾向としては、読み書きをなるべく早く取り上げると いう方向に行っていろ。つまり、言語の4技能をバランスよく教えることが望 まれていろ。LCU・の場合には、初めの二日で発音練習、ひらがなと簡単な 会話をおこない、三日目からテキストに入り、漢字を教え始める。利用されて いる教材もいろいろあり、ローマ字だけを使ったもの、日本字だけを使ったも の、ローマ字と日本字を混ぜたものなど多種多様である。Koide&Othersによ

るJapaneseforUniversityStudents,1-2の各課の構成を見てみろと、(1)文

型およびその文法的説明、(2)語彙、(3)文型練習、(4)会話、(5)読み書き、の五部 から成り、練習帳、付録がついていろ。 日本語の特長を、音韻、表記、文法、語彙の側面からみてみよう。音韻の単 位として各種の音素があり、音素は結合して、あるいは単独で、「モーラ」(拍) という単位を作る。現代日本語には、五つの母音があり、子音の数もそう多くはない。 音節も大体CVの開音節で、スペイン語やイタリア語に近い。/N/や/Q/のよう な特殊な音素もある。一拍の長さがほぼ同じで、拍は子音十母音だけでなく、母音だ けで成り立っている場合もある。アクセントは、強弱ではなく高低アクセントである。 表記法では、漢字かなまじりを原則とする。片仮名は、外来国・外国の国名・地名・ 人名、擬声語・擬態誤の表記、また電報文(1988年9月1日から平仮名やアルファベ ットも使えろ)などに多く使われる。ローマ字も部分的に用いられ、ヘポン式、訓令式 などいくつかの方式がある。一つの言語で4種類もの文字をつかっている国は日本 以外にあるだろうか。数字の表記には、漢数字、アラビア数字、ローマ数字が「時」 と「場合」に応じて用いられろ。句読点の使い方には、文の切れ目に句点「。」 が使われ、文中の切れ目には読点「、」が使われろ。横書きの場合にはピリオ ド「.」やコンマ「,」もしばしば使われていろ。文を構成している単語を見 てみろと、自立語、付属語、接辞などがあり、動詞、形容詞、形容動詞は活用 するが、助詞は活用しない。文には、間投詞や呼びかけなどから成る独立語文 と述語文がある。語順は、述語が文末に位置するが、成分の現われの順序には 大体の傾向が決まっている。客観点な事柄を表わす部分が文の中心にあり、「時」 -35-

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沖縄大学紀要第6号(1989年) や「場所」など、それについての付属的状況に関する要素がその外側、さらに 話し手の主観に関する内容の程度が大きい要素ほど外側におかれろ。また、或 る文に新情報を付け加える場合、英文では普通その文の右の方向に追加される が、和文では文の左の方向に追加されろ。語彙には、和語、漢語、外来語、混

種語などがある。同音語や類義語が多いのも日本語の特徴である。阪倉篤義が

現代雑誌に使われている用語(約4,000語)を分類した結果(日本語と日本語

教育、語彙編、1972、文化庁、P・10)によると異なり語数で一番多いのが漢

語(47.5%)、二番目に多いのが和語(36.7%)、三番目が外来語(9.8%)、 一番少ないのが混種語(6.0%)となっていろ。

学習者にとって日本語のどんなところが問題になるのであろうか。下の表は

日本語を学習している中国人、韓国人、米国人が直面する問題を発音、文法、

文字、待遇表現、文化とことばの側面から比較したものである。勿論、言語習

得には個人差があるので必ずしも個々の学習者に当てはまるとは限らない。難

易度の大体の傾向を示したに過ぎない。 +むずかしい△まあまあ.-やさしい 中国人韓国人米国人

--ロー

ーーロー

ー ̄

■■■■■■■■■■■■■■■

 ̄ロ■■■■■■■■■

 ̄■■■■■-

-■ ̄

-36- 項目 中国人 韓国人 米国人 発音 (1)語頭濁音 (2)長音 (3)促音 (4)勘音 (5)ラ行 (6)漢字の音.訓 + + とユ △ △ + + + ごユ ごユ △ + + + △ + + 文法 (7)語順 (8)主語の省略 (9)格助詞一てにをは ⑩活用変化 + △ + △ △ + + + 竺迅 文字 (、)漢⑫ひらが 字な ⑬か たかな △ユ こき △ とユ △ + △1 △ 文化とことば ⑭侍遇表現 ⑮贈物のやり取り 061とYOUの色々な使い分け ⑰ハイとイイエの色々な使い方 ⑬家族用語 ⑲建て前と本音の使い分け と△ こ△ △ △ と△ △ + + + + + +

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日本語教師は、学習者の文化・地理・歴史・言語などの特徴を自ら学ぶと同 時に、日本語と日本文化を広く深く理解し、論理的に説明することができるよ うにつとめなければならない。

日本語教師読本(N03.アルク、1987、ppl50-151)は、日本語教師に

本当に向いているかどうかの適性や資質をチェックする問を25項目リストアッ

プし答えが「ハイ」の場合は各4点、「イイエ」は0点として、総得点が80

点以上であれば教師としての資質も適性も備わっていて申し分ないとの判断を

下している。79点以下の得点者に対しても率直なアドバイスをあたえていろ。 そのなかのいくつかの問を抜き出してみよう。 1.飛・成・必・発などの字の書き順には自身がある。

2話し言葉・書き言葉、男言葉・女言葉、俗語・敬語の使い分けが、きち

んとできろ。 3.日本の人口・地形を初め、日本に関することを広く深くしっていろ。 4.お茶。お花・墨絵など、日本文化には-通りの知識がある。 5.日本の年中行事・習慣・諺について簡単に説明できろ。 6.国籍や肌の色が違っても、同じ人間として見、特別視したことはない。

7.他国の文化・歴史・習慣などについて、強い興味を持っている。

8.日本語以外の言語を、できるだけ多く習得しようと思っている。 9.日本の貿易摩擦など、政治や経済、世界情勢に関心がある。 10.どちらかといえば、人の好き嫌いは激しくない。 このような資質と適性を備え持った理想的日本語教師をできるだけ多く養成 していくことが日本語教育の直面している当面の課題であろう。もちろ、言語

学・言語教授法などの専門分野の研究を前提とすることは言うまでもない。

参考文献 1.日本語と日本語教育、国語シリーズ別冊1(語彙編)文化庁1972 2音声と音声教育、日本語教育指導参考書1、文化庁、1984 3.日本語の特色、「ことば」シリーズ10、文化庁、1983 4.話し言葉、「ことば」シリーズ12、文化庁、1984 -37-

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5.田口孝雄、海外日本語教員になる法、三国紙業株式会社、1978 6.日本語教師読本、別冊日本語ジャーナル、アルク、1986 7.日本語教師読本、別冊日本語ジャーナル、NO3、アルク、1987 8.日本語教授法の諸問題、日本語教育指導参考書3、文化庁、1984 9.待遇表現、日本語教育指導参考書2、文化庁、1984 10.文法I、教師用日本語教育ハンドブック3,国際交流基金、1978 11.「平仮名も使えます」電報、思いきった大改革。琉球新報。1988年9月2日(R21)

l2MaKino,Seiichi,⑪SOB皿ASPECTSJAPANESENOMINALIZATIONSv

13TokaiUnivcrsityPress,1968 14.McCLAnJM・YOKO,(《HANDBOOKOFMODERNJAPANESEGRMUIAR, nTheH⑥kuseidUPress,1984

15.0no,Hideki,《《JAPANESEGRAMVIAR,',TheHukuseid⑨Press,1975

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