高齢化対策と地域特性
一離島地域を例にー
目次 はじめにI
人口減少地域としての離島地域H
離島高齢化の趨勢と現状E
ゴールドプランと市町村老人保健福祉計画W
福祉資源の整備状況と課題 まとめにかえて はじめに野上
隆
日本は島国であるといわれるが,北海道,本州,四国,九州,沖縄本島などをのぞくいわゆ る離島について,その全体像はあまり一般には知られていない。小論は,離島の高齢化の推移 と現況を概観し,今後の離島における高齢化対策の手がかりを探ろうとするものである。離島 の高齢化問題を論じる時の最大の困難は,人口その他の基礎データが整備されていないという 点である。高齢化を課題とする以上,対象となる離島は有人島に限られることはいうまでもな いが,この有人島の中でも,各種の基礎データが比較的そろっているのは,現状では離島振興 法指定地域の離島である。それゆえ小論が言及する対象は,離島振興法指定離島に限られる。 次に,離島振興法の指定地域は変化するということである。離島振興法第 1 条にあるように, 離島振興法に指定されるためには, r本土より隔絶」していることが条件である。したがって, 例えば架橋によって本土と結ぼれた時には,指定を解除されるのである。対象のこの様な「変 化」は,時系列的な比較の際などに非常な困難をもたらす。 いまひとつの問題は,人口を始めとする基礎データが,市町村を単位に,市町村によって収 集されるということから生ずる。離島と自治体(市町村〉との関係には,ひとつの島の中に複 数の自治体が存在している, 1 島 1 市町村である,そして島が自治体の一部であるの 3 つのケ ースがある。最後のケース場合には,離島の部分に関する各種のデータが公表されていない場 (1) 離島振興法第 1 条(目的) r この法律は,本土より隔絶せる離島の特殊事情よりくる後進性を除去 するための基礎条件の改善並びに産業振興に関する対策を樹立し,これに基づく事業を迅速且つ強力 に実施することによって,その経済力の培養,島民の生活の安定及び福祉の向上を図り,あわせて国 民経済の発展に寄与することを目的とする」。 1-表 1 年齢区分別人口の推移と将来推計(1) 〈単位:千人,
%)
総数 0 歳-14歳 15歳 -64歳 20歳-64歳 60歳以上 65歳以上 年 次構割成
合
構割成
合
書雲
構割成
合
構割成
合
実数 実数 実数 実数 実数 実数 1920(大正 9) 年 55,963 100.0 20,416 36. 5 32,605 58.3 27,186 48.6 4,597 8.2 2,941 1925 ( 11 14) 年 59, 737 100.0 21, 924 36.7 34,792 58.2 28,906 48.4 4,589 7.7 3,021 1930(昭和 5) 年 64,450 100.0 23,579 36.6 37,807 58.7 31,267 48.5 4, 786 7.4 3,064 1935 ( 11 10) 年 69,254 100.0 25,545 36.9 40,484 58.5 33,843 48.9 5,156 7.4 3,225 1940(11 15) 年①② 73,075 100. 0 26,369 36.1 43,252 59.2 35,842 49.0 5,681 7.8 3, 454 1950 ( 11 25) 年①@ 84,115 100.0 29,786 35.4 50, 168 59.6 41,499 49. 3 6,485 7.7 4,155 1955 ( 11 30) 年①④ 90,077 100.0 30,123 33.4 55, 167 61. 2 46, 458 51. 6 7,304 8.1 4,786 1960 ( 11 35) 年① 94,302 100.0 28,434 30.2 60,469 64. 1 51,090 54.2 8,351 8.9 5,398 1965(11 40) 年① 99,209 100.0 25,529 25.7 67,444 68.0 56,496 56.9 9,604 9.7 6,236 1970(11 45) 年 104,665 100.0 25,153 24.0 72,119 68. 9 62,952 60.1 11, 145 10.6 7,393 1975(11 50) 年① 1ll,940 100.0 27, 221 24.3 75,807 67. 7 67,859 60.6 13, 149 11.7 8, 865 1980 ( 11 55) 年① 117,060 100.0 27,507 23.5 78,835 67.3 70,562 60.3 15,113 12.9 10,647 1985( グ 60) 年① 121,049 100. 0 26,033 21. 5 82,506 68.2 73,526 60. 7 17,874 14.8 12,468 1986(11 61) 年 121, 672 100.0 25,434 20.9 83,368 68.5 73,857 60.7 18,601 15.3 12,870 1987 ( 11 62) 年 122,264 100.0 24, 753 20.2 84, 189 68.9 74,513 60.9 19,359 15.8 13,322 1988(11 63) 年 122,783 100.0 23,985 19.5 85,013 69.2 75, 123 61. 2 20, 108 16.4 13, 785 1989(平成元)年 123,255 100.0 23,201 18.8 85,745 69.6 75,719 61. 4 20,883 16.9 14,309 1990(11 2) 年 124,225 100.0 23, 132 18.6 86,274 69.4 76,238 61. 4 21,559 17.4 14,819 1995(11 7) 年 127,565 100.0 22,387 17.5 87,168 68.3 78,644 6.1 7 25,469 20.0 18,009 2000( グ 12) 年 131, 192 100.0 23,591 18.0 86,263 65.8 78,830 60.1 28,975 22.1 21,338 2005(11 17) 年 134,247 100.0 25,164 18.7 84,888 63.2 77,755 57.9 32,606 24.3 24,195 2010 ( 11 22) 年 135,823 100.0 25,301 18.6 83,418 61. 4 75,636 55.7 36,977 27.2 27,104 2013(11 25) 年 136,030 100.0 24,568 18. 1 82,399 60.6 74,068 54.5 38,510 28.3 29,063 2015(1/ 27) 年 135,938 100.0 23,876 17.6 81, 419 59.9 72,783 53.5 38,940 28.6 30,643 2020(11 32)年 135,304 100.0 22,327 16.5 81,097 59.9 72,390 53.5 39,043 28.9 31,880 2021 ( 11 33)年 135, 160 100.0 22, 153 16.4 81, 141 60.0 72,549 53. 7 38,979 28.8 31,866 2025(11 37)年 134,642 100.0 22,075 16.4 81, 102 60.2 73, 181 54.4 38,958 28.9 31,465 2043(11 55)年 130,645 100.0 23,252 17.8 75,747 58.0 67,744 51. 9 38,723 29.6 31, 646 2050(11 62) 年 128,681 100.0 21,967 17.1 76,433 59.4 68,368 53.1 36,791 28.6 30,281 2075(1/ 87) 年 124,890 100.0 22,466 18.0 73,739 59.0 65,870 52.7 35,269 28.2 28,685 2085(11 97) 年 124,066 100.0 22,277 18.0 74,473 60.0 67,041 54.0 34,317 27.7 27,316 (注) 1 各年10月 1 日現在 2 ①総数には,年齢「不詳」を含む。 ②旧外地人以外の外国人を除く。 ③75歳以上人口では沖縄県の外国人を除く。 (70歳以上の外国人136人〉 ④75歳以上人口では沖縄県人を除く。 (70歳以上の県人23, 328人〉 3 2013 (平成25) 年:総人口数ピーク。 4 2020 (平成32) 年:老年人口 (65歳以上人口〉数ピーク。書雲
5.3 5.1 7.8 4.7 4.7 4. 9 5. 3 5. 7 6. 3 7.1 7. 9 9.1 10.3 10.6 10.9 11. 2 11. 6 11. 9 14. 1 16.3 18.0 20.0 21. 4 22.5 23.6 23.6 23.4 24.2 23.5 23.0 22.0 5 2021(平成33) 年:高齢化度 (65歳以上人口の総数に占める割合〉数ピーク。 6 2043 (平成55) 年:高齢化度 (65歳以上人口の総数に占める割合〉数ピーク。 75歳以上 実数書雲
732 1.3 808 1.4 8811.4 9241.3 904 1.2 1,069 1.3 1,388 1.5 1,642 1.7 1,894 1.9 2,237 2.1 2,841 2. 5 3,660 3.1 4,712 3.9 4,953 4.1 5,227 4.3 5,478 4.5 5,746 4.7 5,917 4.8 6,986 5.5 8,452 6.4 10,472 7.8 12,456 9.2 13,453 9.9 13,894 15,313 11.3 15,239 11. 3 17,367 12.9 15, 691 12.0 17,005 13.21 14,826 11. 91 15,310 12.31 (資料〉昭和60年以前は総務庁統計局「国調勢査J ,昭和61, 62, 63,平成元年は総務庁統計局「推計 人口 J 1990(平成 2) 年以降は厚生省人口問題研究所「日本の将来推計人口(昭和61年12月推 計)J 出所〉厚生省大臣官房政策課編『社会保障入門j] (平成 3 年版) 194ページ合も少なくない。以上の様な資料的制約にも拘らず,離島の高齢化を論じる理由は,高齢化の 進行が地域によってその程度を大きく異にすること,そして対策を要すると思われる課題につ いても,地域ごとの特性を反映ぜざるをえないことである。とりわけ,過疎地域,山村あるい は離島の様な各種のハンディキャップを負っている地域では,高齢化対策に関しでも,通常の 地域のそれとは異なる様々な施策と,それらの施策を実施する上でのキメのこまかい対応が必 要とされると考えられるからである。小論が結果において,離島の高齢化の現況の断片的な紹 介以上の何物かを提起することができれば,望外の幸せである。 離島の高齢化に先立つて,わが国の高齢化の状況を概観してみよう。 1954年の国連による人 口高齢化に関する報告書は,老年人口比率 4%未満を若い人口構成を持つ国,老年人口比率が 4%以上 7%未満を成熟した人口を持つ国,老年人口比率が 7%以上を高齢化した人口を持つ 国と定義している。これに従えば,わが国は 1970年に,高齢化した人口をもっ国になったとい うことになる。以来,わが国の高齢化が,かつてない早さで進行し,かつて世界が経験したこ とのない高さに達することが多くの論者によって指摘されてきた。 表 1 は,平成 3 年版『社会保障入門~ (厚生大臣官房政策課編集)に掲載された, 1年齢区 分別人口の推移と将来推計」であり, 1920年(大正 9 年〉から 2085年(平成97年〉に至るわが 国の人口の推移が示されている。このうち, 1990年以降の数値は厚生省人口問題研究所の 1986 年 12月推計によるものである。これによれば,わが国の総人口は 2013年にピークを迎えること になる。他方,老年人口は 1990年以降さらに上昇し, 2020年に実数のピーグを迎え,翌2021年 に老年人口比率がピークに達する。老年人口比率は,その後20年間やや低下するが, 2043年に ふたたびピークを迎える。この時点においても老年人口比率は 24.2% であり, 25% には達しな い。以後, 2085年までの約 40年間,老年人口比率はなだらかに減少するというシナリオが描か れている。 しかし,昨年 6 月に公表された同研究所の暫定推計で,このシナリオは少なからず,書き換 えられることになった。 1 1. 57 ショック」あるいは 1 1. 53 ショッグ」のキャッチフレーズがマ スコミによって大きく取り上げられたように,最大の要因は,合計特殊出生率の低下であった。 表 2 が示すように, 86年推計による 1990年の合計特殊出生率予測値は,中位値で1. 839 であっ たのに対して, 1990年の合計特殊出生率の実際値は1. 53であり,予測を大きく下回っていた。 のみならず,この値は,人口置換水準をも大きく下回るものであった。阿藤誠民は,人口問題 (2) ある年の年齢別出生率をもとに,生まれた子供の数が女子人口 1 人当たり平均何人になるかを計算 したものが合計特殊出生率である。出生率を表す指標で,もっとも簡単でありかつもっともよく用い られるのは, I普通出生率」である。これは 1 年間の出生数を総人口でわったものであり,通常パー ミノレ(千分比〉で表される。普通出生率は,人口の年齢構成の影響を受けるので,長期的な人口動態 の考察に必ずしも適していない。
(3)
I人口移動のない封鎖人口において純再生産率 =1 を可能にする出生率,すなわち死亡率をも考慮 に入れて 1 人の女子が 1 人の娘に置き換ること(世代の単純再生産〉を可能にする出生率を表す。わ が国の人口置換水準は死亡率の低下とともに3.28 (1925),
2.86 (1940),
2.42 (1950),
2.18 (1960),
3-研究所の今回の推計では「合計特殊出生率は今後かなり長期に渡って低迷(1990年代では中位 推計では, 1.5前後,低位推計では1. 4前後)を続けることになる」として,このような低出生 率の人口構造への影響および社会経済的影響を,以下の 4 点にわたって指摘している。第 1 は, 消費市場・行政需要への影響である。 1974年以来の産婦人科医の需要減少, 90年の高校進学年 齢人口の減少, 93年の大学進学年齢人口の減少などがその具体例である。 第 2 は,出生数減少世代が労働市場に参入する 1990年代半ばから始る,新規学卒労働力の減 少である。経済の状況如何によっては一層の労働力不足が予想され,労働力の高齢化のもとで, 2000年頃からは総労働力の減少の可能性もあるという。第 3 は,人口高齢化の進行であり,第 4 は人口の恒常的減少である。今回の中位推計によれば日本の人口は, 2010年まで増加を続け
た後,長期の減少過程に入札 80年後には 1 億人を下回る可能性もあるとされてい2:
表 2 将来の推定出生,死亡数と率ならびに合計特殊出生率の推移予測 出 生 死 亡 合計特殊出生率 年次(1
実,
000
数人)
I
率 (偽)
(1実
.000
数人)
I
率 (払)
高位|中位|低位
1
9
9
0
1
,482
1
1.9
3
8
4
9
6
.
8
4
1
,911
1
,8
3
9
1
,767
1
9
9
5
1
,658
1
3
.
0
0
9
5
3
7
.
4
7
2
,0
3
9
1
,925
1
,810
2
0
0
0
1,7
8
9
1
3
.
6
4
1
,076
8
.
2
0
2
,089
1
,958
1
,827
2
0
0
5
1
,7
0
1
1
2
.
6
7
1
,208
9
.
0
0
2
,105
1
.
9
6
9
1
,833
2
0
1
0
1
,519
1
1.1
9
1
,353
9
.
9
6
2
,116
1,9
7
7
1
,8
3
7
2
0
1
5
1
,428
1
0
.
5
0
1
,502
1
1.0
5
2
,127
1
,984
1,8
4
2
2
0
2
0
1
.
4
8
0
1
0
.
9
4
1
.
6
2
6
1
2
.
0
2
2
,139
1
,992
1
,8
4
6
2
0
2
5
1
,603
1
1
.
9
1
1,7
2
0
1
2
.
7
7
2
.
1
5
0
2
,000
1
,850
厚生省人口問題研究所の将来人口推計(1986年12月推計,前掲表 1参照〉における仮定された将来名
年次の推定値。合計特殊出生率はこの推計における高・中・低3 種の各推定値を示したが,出生と死
亡については中位推計値である。 (資料〉 厚生省人口問題研究所『日本の将来推計人口一昭和60""'-'100年(昭和101""'-'160年参考推計〉昭
和61年12月推計』 出所)社団法人エイジング総合研究センター編集『高齢化社会総合辞典JI
1990年 561ページ表
3 は, 1991
年
6
月暫定推計が示されている,平成
4 年版『社会保障入門j]
(厚生省大臣官
房政策編集) r
年齢区分別人口の推移と将来推計」の1蜘年以降の部分で、ぁ
2: 高齢化に関し
2
.
1
0
(1975)
,2
.
0
8
(1989) と下がってきた(厚生省人口問題研究所,1
9
9
0
)
o
J
(阿藤誠「人口少産化
の背景とその展望J (W 日本労働研究雑誌JIN
o
.
3
8
1
August 1
9
9
1
11ページ〉。 (4) 向上10ページ。 (5) 同上10ベージ。(6)
平成 3年版『社会保障入門』で、は, 2085 年までの推計値が示され,わが国の老年人口比率は25%
を越えることはないこと, 2043年以降2085年頃までなだらかに低下する様子が一目で見て取れたので あるが,平成 4 年版では, 2020年に老年人口比率が25.2% に達することは明らかにされているものの, それ以降の推計値は掲載されていない。前年版の取扱と較べて一貫性を欠いている。比較の上からも, 2085年までの推計値を記載すべきであったと考えられる。表 3 年齢区分別人口の推移と将来推計 (2) (単位:千人,
%
)
総数 。歳-14歳 15歳-64歳 20歳~4歳 60歳以上 65歳以上 75歳以上 年 次構割成
合
構割成
合
構割成
合
構割成
合
構割成
合
構割成
合
書容
実数 実数 実数 実数 実数 実数 実数 1990(11 2) 年 123.612 100.0 22,484 18.2 86,228 69.8 76,206 61. 7 21,631 17.5 14,899 12.1 5,981 4. 8 1995(11 7) 年 125, 263 100.0 19,993 16.0 87,116 69.6 78,611 62.8 25, 610 20.4 18,154 14.5 7,110 5.7 2000 ( 11 12) 年 126,981 100.0 19,279 15.2 86,191 67.9 78, 782 62.1 29,154 23. 0 21,511 16.9 8,609Q
.
8 2005 ( 11 17) 年 128,663 100.0 20, 120 15.6 84, 166 65. 4 77,673 60.4 32,782 25.5 24,376 19.0 10,630 8.3 2010(μ22) 年 129. 450 100.0 21,247 16.4 80,936 62.5 74,913 57.9 37, 130 28. 7 27,266 21.1 12,606 9.7 2015(11 27) 年 128,852 100.0 21,076 16.4 77,002 59.8 70,307 54.6 39,056 30.3 30,774 23.9 14,030 10.9 2020 ( 1/ 32) 年 126,903 100.0 19, 617 15.5 75,317 59. 4 67,986 53.6 39,120 30.8 31,969 25.2 15,418 12.2 (注) 1 各年10月 1 日現在 2 2010 (平成22) 年:総人口数ピーグ。 3 2020 (平成32) 年:老年人口 (65歳以上人口〉数ピーク。 (資料) 1990(平成 2) 年以降は厚生省人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成 3 年 6 月暫定推 計)J (中位推計〉 出所〉厚生省大臣官房政策課編『社会保障入門~ (平成 4 年版) 186ページ。 て言えば,この暫定推計の意味するところは,より早くより高くである。 1989年 12 月,大蔵, 自治,厚生 3 大臣の申し合わせとしてスタートした高齢者福祉推進 10 ヶ年戦略(ゴールドプラ ン〉も,提起された政治的背景には様々なものがあったと思われるが,客観的には迫り繰る超 高齢社会に対して最低限の供えをかためることを内容とするものであった。この政策の基礎と なるべきデータが 86年推計であり,今回の暫定推計による修正は高齢化対策を,一層早くかっ 一層手厚く推進すべきであるとの含意をもっ。 高齢化は,すべての地域で同じテンポで進行するわけではない。老年人口比率の全国平均は, 1990年(平成 2 年) 10 月現在, 12.0%であるが,都道府県別にみると,もっとも高いのが島根 県の 18.2% ,ついで高知県の 17.2% であり,もっとも低いのが埼玉県の 8.3% ,これに神奈川 県の 8.8%が続いている。都道府県でおよそ 2 倍の格差がある。市町村の場合には, 1985年(昭 和60年〉国勢調査によれば,一番低いのが浦安市(千葉県〉の 4. 1% であり,一番高いのが東 和町(山口県〉の 35.2% である。市町村の場合には 8 倍以上の違いがある。一般に,老年人口 比率は都市部と郡部とを比較すると,前者で低く,後者で高い。若年層の都市部への移動とい う人口の社会的移動の要因が大きく作用するからである。高齢化の進行が,一律ではないので あれば,高齢化対策もまた地域ごとの具体性をもって策定される必要がある。地域特性に注目 した高齢化の研究が必要とされる所以である。I
人口減少地域としての離島地域 1.日本の島,有人島,法指定離島,離島振興法指定離島 (7) 数値は,総務庁「国勢調査」による。 - 5 一表 4 日本の離島 平成
2
年4
月 l 日現在 都道府県 法律指定 市町村数平国成 2 年
調
世帯数 面 積 海岸延長 有人島数市|町|村
(概数人口) (km3) (km) 北 海 道6
6
20
,7
2
8
6
,709
4
1
8
.
9
3
2
2
0
.
9
宮 城 県9
3
2
8
,051
2
,266
2
4
.
8
1
1
0
5
.
6
山 形 県 l l 一5
9
7
1
8
7
2
.
4
9
1
0
.
2
東 尽 都1
3
2
7
32
,300
12
,787
3
5
7
.
6
7
3
9
9
.
6
離張法9
2
6
29
,939
11
,766
2
8
9
.
4
2
2
6
0
.
0
小笠原法4
一 一 l2
,361
1
,021
6
8
.
2
5
1
3
9
.
6
|新
潟 県2
l7
3
78
,541
24
,790
8
6
6
.
3
8
2
6
8
.
8
石 JlI
県 l3
2
1
8
2
1
.
0
3
5
.
0
静 岡 県!1
l 一1
6
3
6
8
0
.
4
4
1
.
6
愛 長日 県3
2
5
,242
1
,507
3
.
2
7
2
3
.
1
重 県6
l2
6
,748
1
,951
1
4
.
6
3
6
0
.
4
兵 庫 県6
l2
11
,360
3
,350
5
3
.
6
6
9
2
.
0
和歌山県 l l 一1
,829
7
2
6
9
.
9
1
2
8
.
0
島 根 県4
3
4
27
,493
9
,785
3
4
8
.
1
5
4
6
7
.
5
間 山 県1
7
4
l 一6
,191
2
,356
3
1
.
5
7
1
2
0
.
0
広 島 県2
2
6
9
一40
,023
14
,516
1
4
6
.
7
9
2
7
6
.
6
山 口 県2
2
7
8
一9
,026
3
,463
7
0
.
2
2
2
1
4
.
6
徳 島 県2
1
l5
1
2
2
2
1
2
.
0
6
1
2
.
6
香J
11 県2
2
4
4
一7
,779
3
,290
5
8
.
0
2
1
5
7
.
7
愛 援 県6
9
4
52
,7
3
2
18
,874
2
1
4
.
3
1
4
7
4
.
7
市I司主・ 知 県2
8
1
1 l6
1
8
2
9
8
1
1
.
8
4
2
1
.
6
福 岡 県2
3
l3
,439
1
,101
1
3
.
7
7
5
6
.
0
佐 賀 県8
1
3
3
,954
1
,062
1
3
.
5
1
5
6
.
5
長 崎 県6
0
4 3
0
l214
,069
73
,048
1
,64
1.
1
9
2
,534.4
費量 本 県6
4
5
,376
1
,749
2
2
.
8
9
6
7
.
8
l 大
分 県7
2
2
I8
,227
2
,551
1
8
.
0
0
6
5
.
0
宮 崎 県3
2
1
1
,702
4
8
8
5
.
2
9
2
7
.
2
鹿児島県2
8
3 1
6
9
207
,096
76
,.
8
2
4
2
,475.95
1
,633.3
|離振法
2
0
2
6
6
64
,257
24
,7
2
2
1
,236.51
7
7
0
.
9
奄振法8
l1
0
3
142
,839
52
,102
1
,239.44
8
6
2
.
4
沖縄県4
0
2
7 1
5
127
,957
41
,420
1
,010.47
9
6
4
.
7
離 島 計3
3
5
5
4
1
2
5
4
5
882
,074
305
,469
7
,837.25
8
,365.4
離振法2
8
3
5
1
1
0
8
2
6
608
,917
210
,926
5
,519.09
6
,398.7
その他の法5
2
3 1
7
1
9
273
,157
94
,543
2
,318.16
1
,966.7
全 国 計 ※ 6, 8526
5
5
2
,5
8
7
123
,611
,5
4
1
41
,016
,255 377
,80
1.
14
34
,277.0
(注) 1.本表は,平成 2 年 4 月 1 日現在の法律指定有人島数等の状況について掲載した。人口・世帯数 については,平成 2 年10月 1 日現在の国勢調査〈概数人口〉である。ただし,次の島については, 表示のとおり措置した。 (1) 離島振興法関係離島 ①岡山県釜島は,平成 2 年園調時には無人島であったが,平成 2 年 4 月 1 日現在の住民基本台 帳では住民登録があったため,有人島とした。②広島県臼島は,平成 2 年 4 月 1 日現在の住民登録人口が零となったため,割愛した。 2.1全国計」の各欄の出典は,次のとおりである。 (1) ※印の島数は, 1海上保安の現況J (昭和63年 9 月,海上保安庁〉による,本州,四国,九州, 北海道,沖縄本島,北方領土,竹島並びに無人島を含む全国の構成島数である。 (2) 市町村数は「全国市町村要覧平成 2 年版J (自省行政局編〉による,全国の市町村数である。 (3) 平成 2 年国調〈概数人口〉並びに世帯数は, 1平成 2 年国勢調査速報全国都道府県市村町村 別人口 J (総務庁統計局編〉による,全国の総人口,世帯数である。 (4) 面積は, 1昭和60年全国都道府県市区町村別面積調J (建設省国土地理院編〉による全国の総 面積である。 (5) 海岸延長は, 1海岸統計61年度版J (建設省河川局編〉による全国の総海岸延長である。 出所〉国土庁地方振興局離島振興課監修 財団法人日本離島センター編集 1991年版『離島統計年報』 表 5 離島地域・過疎地域の人口の推移 昭和 35年 昭和40年 昭和 45年 昭和50年 昭和55年 昭和60年 平成 2 年 過疎地域
12
,370
,061 10
,78
1,8
5
7
9
.
319
,9
5
3
8
,509
,774
8
,155
,649
7
,859
,466
7
,423
,441
離 島1
,037
,188
929
,701
810
,296
737
,267
697
,092
661
,330
604
,424
人口増減率(%)4
0
/
3
5
-
1
2
.
8
-
1
0
.
4
4
5
/
4
0
-
1
3
.
6
-
1
2
.
8
nuηt 一 nu pヘ u-/''一 Ru 一 QU 4 一一5
0
/
5
5
-4.2
-5.4
開一日一引
05 一 6 ぽ U-丘一& 9U 円切一一2
/
3
5
-
4
0
.
0
-
4
1
.
7
(国勢調査〉 増減率は, 40/35を例に取れば, (昭和40年人口一昭和35年人口)/昭和35年人口 x 100。 本州、1.四国,九州,北海道,沖縄本島,北方領土,竹島ならびに無人島を含む全国の構成島数とされるものは, 6, 852で、あな 1991年版『離島統計年報』によれば, 1990年(平成 2 年〉
4 月 1 日現在におけるわが国の有人島数は 335 島,人口 882, 074人,世帯数は 305 , 469 である。 このうち,離島振興法指定島数は 283 島,人口 608, 917人,世帯数は 210 , 926である。これらは, 日本全体の人口である 123 , 611 , 541人の,それぞれ0.71% と, 0.49% にあたる。 離島の人口の推移を,同じ人口減少地域である過疎地域との対比で見てみよう。離島振興法 指定離島の人口は, 1960年(昭和35年〉から 1990年(平成 2 年〉までの聞に約 6 割に減少して いる。これは,同時期における過疎地域とほぼ同様の減少率である。過疎地域では,昭和 50年 代に入って人口の減少に多少歯止めが掛かり,昭和60年代にはまた人口減少が拡大しつつある という時系列的な変化が見られたが,離島においても同様の傾向が見られた。その間両者を比 較してみると, 1970年〈昭和45年〉までは,離島の方が人口減少率が小さいのに対して,それ 以降は一貫して離島の方が過疎地域よりも人口減少率が大きい。 過疎地域の人口の推移に関しては,昭和50年代の人口の地方定着・安定傾向が昭和60年およ び平成 2 年でも見られるものの,平成 2 年以降人口減少率はふたたび悪化し始めるとの推計(8)
r海上保安の現況J (1988年 9 月海上保安庁〉。7
-(昭和62年度推計〉がなされている。同推計によれば,昭和 60年(1985年)'"平成 2 年 (1990年〉 の人口減少率は 3.8% とされていたが,平成 2 年 (1990年〉国勢調査によれば,推計値を上回 る 5.5% の人口減少比率を示しており,過疎地域の人口減少は今後よりいっそう深刻なものと なることが既に予想されている。 離島人口の減少率も, 1970年(昭和45年〉以降は減少の率を過疎地域より大きくとりながら, 同様の時系列的変化を示しており,いっそうの人口減少が懸念される。過疎地域は,社会的な 要因(転入と転出〉が仮になくても,自然的な要因(出生と死亡)によって人口が減少してし まう地域となっている。表 6 は,島の人口動態を社会的変化と自然的変化との組合わせによっ て,捉らえようとする試みである。結果的に人口減少をきたしている A"'C までの中で,
A B
D は,人口の自然減すなわち出生数を死亡数が上回る現象の発生を示しており,この三者で離 島振興法指定離島の 59.5%を占める。社会的流入によって,人口の自然減を食い止めている D のタイプも存在するが,全体として今後の離島の人口減少は一層厳しいものが予想される。 表 6 離島の人口動態 (島数〉 分類 自然 社会 人口 指定離島( )内 % A ム ム ム1
2
8
(
4
5
.
6
)
B ム 。 ム1
4
( 5
.
0
)
C
。 ム ム7
4
(
2
6
.
3
)
D ム 。 。2
5
( 8
.
9
)
E 。 ム 。6
( 2
.
1
)
F
。 。 。9 ( 3
.
2
)
G 一 一2
5
( 8
.
9
)
L合計 L
2
8
1
(
10
0
.
0
)
註〉ムは減少, 0は増加を表す。どちらも O を含むことがある。 資料) W離島統計年報~ 1990年版 (1988年 4 月 "-'1989年 3 月の 1 年聞を取って 分類〉より作製。 2. 人口規模と離島類型 島の人口規模はさまざまであるが,離島振興法指定離島を 1990年国調によって分類すると, 人口 5 万人以上は 1 島, 1 万人以上 10島であり, 5 , 000人以上を取ってみても 21 島にすぎない。 一方, 500人未満が 166 島, 500人以上 1 , 000人未満が 41 島であるから両者を合わせて, 1 , 000 人 未満の島が約 74%を占めていることになる。 表 8 は,先の表 7 に関して,今少し詳細に離島の全体を把握しようとしたものである。人口 I , 000人未満の島が 4 分の 3 近くを占めており,その中でも, 100人未満の島が 4 割近くをなし(9)
国土庁地方振興局過疎対策室監修 平成 2 年度版『過疎対策の現況~ 25ページ。人口〈人〉 。ー 99 100 幽 199 2 自由ー 299 300- 3 守 9 4 自由ー 499 500 幽 599 600 明 699 70 日ー 799 B 自由ー 899 900 司 999 1 , 000 ・ 1 , 999 2 ,自由自- 2 ,守争 9 3 ,自由自由 3 , 9 争守 4 ,曲目白田 4,999 5 ,自由自- 5 , 99 守 6,000- 6 , 99 守 7 , 000 ・守, 999 8 ,自由自- 8 , 9 ヲ 9 9 ,曲目白- 9 , 9 守 9 10 ,曲目白ー 19 , 999 2 白, 000 ・ 2 守, 999 3 由,自由自 -39 , 999 40 , 0 自由・ 4 守, 999 50 ,曲目白 -59 , 999 60 ,由自由 -69 , 999 70 ,由自由・ 7 ヲ, 999 80,000-89,999 90 , 000 ・ 言十 表 7 離島振興法指定離島の人口規模別分布(1) 人 口 規 模 島 数
1 '
"
500人未満1
6
6
5
0
0
'
"
1
,000
4
1
1
,000 '
"
2
,000
2
1
2
,000 '
"
3
,000
1
1
3
,000 '
"
4
,000
1
2
4
,000 '
"
5
,000
8
5
,000 '
"
10
,000
1
1
10
,000 '
"
20
,000
4
20
,000 '
"
30
,000
1
30
,000 '
"
40
,000
2
40
,000 '
"
50
,000
2
50, 000以上 l 計2
8
0
一一一一 (1990年国勢調査による〉 註) w離島統計年報.ß 1991年の概要では,離島振興法指定離島は 283 となって いるが,このうち岡山県釜島は 1990園調では人口 O であり,広島県田島,横 島は,田島本土聞が 1989年に,また田島と横島は 1979年にそれぞれ道路橋で 連結されているため,この集計では以上 3 島が除かれている。 島数 81 1: 31 1: 26 1: 18 1: 10 1: 13 1: 6 1: 6 1: 9 7 1: 21 1: 111: 12 1: 8 1: 4 :1 1 由 z 1 1: 5 4 1: 1 2 2 1: 自: 自 1 1: o 1: 自 280 表 8 離島振興法指定離島の人口規模別分布 (2) =================================================================================) ===============================> ==========================> ==================> ==========> =============> ======> ======> =========) =======> =====================> ===========> ============> ========) ====> => => =====> ====> 三〉 ==> ==> => ている。特異な分布の様子が把握されるであろう。 規模ごとのばらつきが非常に大きく, その中でも小規模離島の数が圧倒的に多い。 この様な 分布を取る対象を把握する時, いくつかの類型に分けることは, 一般的によく用いられる手法 である。離島政策の立案に際しでも,島全体をいくつかの類型に分類し, これらの類型に対す る対策群として,離島全体に対する政策を策定することが試みられたのである。 この場合の政 -9 ー策目標は「地域振興J,類型化の規準は,離島指定の第一の条件である「隔絶性」と人口規模
であった。以下に示す離島類型は,第 3 次離島振興計画(1973'"'-'1982年度〉において離島の性格類型別
政策目標の基準として採用されたものであり, 6 つに性格づけられている。 く内海本土近接型離島>一般に本土中心都市との距離が短く海象も静穏なため,広域交流に よる離島性の軽減・解消が可能で、あり,多便数の確保と対本土架橋の推進を重点政策とする。 <外海本土接近型離島>内海同様本土中心都市との距離は短いものの,海象が不安定で、ある ため,定期航路の整備を図り,学校など日常生活に必要な施設を島内に整備し対本土架橋の 推進を重点とする。 表 9 離島類型別人口の推移 類型 昭和 35年 昭和 40年 昭和 45年 昭和50年 昭和 55年 昭和 60年 平成 2 年H2/S35
内海近接260
,
3
1
6
233
,
1
3
5
208
,
064
192
,
263
177
,
766
165
,
6
2
2
148
,
3
9
8
-
4
3
.
0
外海近接13
1,6
2
1
112
,
1
3
5
89
,
7
2
0
73
,
585
67
,
311
63
,
247
5
1,5
1
0
-
6
0
.
9
群島主島302
,
438
275
,
623
244
,
781
224
,
7
0
3
217
,
252
208
,
005
194
,
386
-
3
5
.
7
群島属島44
,
1
4
5
36
,
679
30
,
621
26
,
6
3
7
24
,
110
22
,
5
9
7
20
,
555
-
5
3
.
4
孤立大型266
,
243
245
,
757
215
,
441
20
1,1
9
6
193
,
012
184
,
981
173
,
765
-
3
4
.
7
孤立小型32
,
4
2
5
26
,
372
21
,
669
18
,
883
17
,
641
16
,
878
15
,
810
-51
.
2
計 1,037
,
1
8
8
~29 ,7
0
1
810
,
296
737
,
267
697
,
092
66
1,3
3
0
604
,
4
2
4
-41
.
7
H2/S35欄は, (平成 2 年人口一昭和35年人口)/昭和35年人口 x1
0
0
(国勢調査) 図 1 離島類型別人口の推移単包・千
ま迎 話担 お畠人
口
a回 1 羽 1 回 ~ 自 、-3、 、 、 、-
.
.
.
-
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ーー~ー}ー.-._-_---一一一一ー『一一~一一一 一一・''--一._ー・・『ー..-..一二.ご一一一一」一一一一』ー一一一一一一一一一一一一・一一一一・ー.._..-..._...ー・一一…一一s
3
5
斜Bs
4
5
寝泊 認5 寝泊 ト世一内近…・ 9ト近.. .群主一群属一部大…盟小
も上昇する。島は長寿の地域であると従来からいわれてきたが,実際はどうであろうか。表 12 校や総合病院などの都市機能を集中させ,群島属島との定期航路を整備するものとし,とくに 航空路の開設やパス交通,離島問架橋の推進ほどにより群島全体に波及させることとする。 く孤立大型離島>本土都市との日常的結合は困難であるものの,島内に都市機能を育成する ことが可能であり,同機能の集積を核として振興し,空路を結ぶこととする。 <孤立小型離島>義務教育施設,水・電気など供給施設,患者輸送艇・ヘリポートなど日常 生活や緊急時において必要な施設を整備することにしている。 表 9 と図 1 は,離島振興法指定離島に関して,人口の時系列的変化を離島類型別に示したも のである。人口減少は,外海本土接近型の 60.9%減(対昭和 35年比での平成 2 年人口),群島 型離島属島の 5 1. 2%減および孤立小型の 53.4% が顕著である。これらの 3 類型において人口減 少が著しいことの原因としては,前者に関しては,本土へのアクセスの悪さ,後者に関しては 島の規模の絶対的な小ささと本土や大型の島へのアクセスの条件の悪さなどが考えられる。 表 10 は,離島類型別に老年人口比率を見たものであるが,内海本土近接型で高く,外海本土 近接型で低い。アクセスの点で困難な外海本土近接型が老年人口比率が低く,もっとも本土へ のアクセスの便がよい内海本土近接型で老年人口比率が顕著に高いことが注目される。アクセ スの比較的良好なところで高齢化が進行している点は,過疎と離島で共通していることのひと つである。 表10 離島類型別老年人口比率 類型 老年人口比率(%) 内海本土近接型
1
9
.
4
外海本土近接型1
4
.
1
群 島 型1
6
.
2
孤立大型1
6
.
3
孤立小型1
6
.
4
離島 言十1
6
.
9
(1985年国勢調査〕 なお,第 4 次離島振興計画 (1983---1992年度〉では,この性格類型別の政策展開方式は引続 き踏襲されてはいるものの,交通体系と生活環境とりわけ義務教育施設及び医療などの日常生 活に極めて密接な施設の整備に関して限定的に用いられている。こうした経過は,必ずしも, この類型が万能でないということを物語っているように思われる。特に高齢化との関係では, 離島規模とアクセスに注目したこの類型化は有効でないように思われる。大きな理由のひとつ は,後述するように,今後の高齢化対策の主体が市町村であるからである。1
1
離島高齢化の趨勢と現状 離島の老齢人口比率は, 1960年の 9.9% から 1970年にはすでに 10.8% に達している。我が国全 -11 ー表11 老年人口比率の推移 (単位%) 1960年 1965年 1970年 1975年 1980年 1985年 高佐 島 9. 9 8. 9 10. 8 12.9 14.8 16.9 過疎地域 7. 0 8.6 10.8 13.0 15.0 17.2 全 国 5.7 6.3 7.1 7. 9 9.1 10.3 〈国勢調査〉 体としては, 1985年になって初めて老年人口比率が 10% を越えており,この点からは離島の高 齢化は 15年前をすすんでいるといえよう。しかし,高齢化が進んでいるにも拘らず,離島全体 として離島対策を重視してきたとは言い難い。離島対策の中心は,あくまでも地域振興であり, その実現の手段としての本土へのアクセスの改善にあったと言えよう。この事は過疎対策にお いても類似しており,ある意味では,日本の地域政策の殆ど全てに共通する特質とも言えよう。 高齢化のもっともわかりやすい目安である老年人口比率は,人口減少と共に長寿化によって 表12 90才以上の長寿者の比率(人口千人当たり 65才以上人口に占める割合〉 男 女 計 離島合計 14.05 22.42 19.10 指定離島 1
1
.
99 17.73 15.44 その他の離島 19.85 34.80 27.83 全 国 10.32 17.52 14.57 (1985年国勢調査〉 図 2 老年人口比率と世帯人員1
0
0
90
80
口主
70
60
50
40
30
20
1
0
ロ 自 自2
4
6
l 世帯平均人員(人〉
(1988年住民基本台帳より作製〉く群島型離島一主島・属島>本土都市との日常的結合は困難であるため,群島主島に高等学 は, 90才以上の長寿者を,離島全体と離島振興法指定離島(指定離島〉その他の離島に関して みたものである。指定離島以外の島に関して,特に女子に関してはその傾向がうかがえるが, 指定離島に関しては全国とさほどかわらないというのが実態である。 図 2 は, 1988年の住民基本台帳データを用いて,島ごとの 1 世帯当たり平均人員と老年人口 比率の相関を見たものである。この緩やかな負の相関は,高齢化の原因が若者を中心とする島 からの社会的流出によって高齢化が進行していることを示すと共に,地域の介護能力の弱体化 傾向を暗示するものである。 要介護老人の発生傾向と地域の介護能力に関して,とくに把握を必要とするのは,一人暮ら 表13 人口規模と老年人口比率(1) 人口 老年人口
y
o
u
n
g
o
l
d
o
l
d
o
l
d
6
5
+
(%)
7
5
+
(%)
島数t
o
t
a
1
666
,074
112
,323
66
,308
46
,015
1
6
.
9
6
.
9
1
1
9
6
1
-
9
9
9
55
,827
12
,252
7
,1
3
0
5
,122
2
1
.
9
9
.
1
7
1
4
1
0
0
0
-
1
9
9
9
36
,336
5
,776
3
,493
2
,283
1
5
.
9
6
.
2
8
7 2
0
0
0
-
2
9
9
9
24
,146
4
,113
2
,371
1
,742
1
7
.
0
7
.
2
1
9 3
0
0
0
-
3
9
9
9
40
,462
8
,181
4
,856
3
,325
2
0
.
2
8
.
2
2
6 4
0
0
0
-
4
9
9
9
32
,895
4
,628
2
,745
1
,883
1
4
.
1
5
.
7
2
3 5
0
0
0
-
5
9
9
9
18
,995
1
,868
1
,100
7
6
8
9
.
8
4
.
0
4
1 6
0
0
0
-
6
9
9
9
7
,407
1
,080
6
9
3
3
8
7
1
4
.
6
5
.
2
2
。7
0
0
0
-
7
9
9
9
l 8
0
0
0
-
8
9
9
9
9
,323
1
,185
7
3
1
4
5
4
1
2
.
7
4
.
8
7
6
9000司999962
,203
11
,527
6
,722
4
,805
1
8
.
5
7
.
7
2
l 1
0
0
0
0
-
1
0
9
9
9
13
,7
6
0
2
,744
1
,638
1
,106
1
9
.
9
8
.
0
4
l
1
3
7
6
0
13
,760
2
,744
1
,638
1
,106
1
9
.
9
8
.
0
4
1
4
8
0
2
14
,802
2
,1
3
7
1
,311
8
2
6
1
4
.
4
5
.
5
8
1
1
9
6
7
5
19
,675
3
,664
2
,0
6
0
1
,604
1
8
.
6
8
.
1
5
l
3
2
3
5
2
32
,3
5
2
3
,925
2
,4
5
0
1
,475
1
2
.
1
4
.
5
6
Il
3
8
8
9
7
38
,897
5
,9
5
9
3
,432
2
,5
2
7
1
5
.
3
6
.
5
0
l
4
2
0
0
7
42
,007
5
,9
9
8
3
,625
2
,373
1
4
.
3
5
.
6
5
Il
4
8
5
7
8
48
,578
5
,849
3
,526
2
,323
1
2
.
0
4
.
7
8
l
5
0
5
4
5
50
,545
7
,660
4
,506
3
,154
1
5
.
2
6
.
2
4
8
1
9
3
9
81
,939
16
,592
9
,812
6
,780
2
0
.
2
8
.
2
7
註)y
o
u
n
g
old は 65 歳以上 75 歳未満,o
l
d
old は 75歳以上人口を示す。 65+(%) と 75+(%) はそ れぞれ総人口に対する前二者の割合(%)を表す。 -13 ーf千人未満〕 表14 人口規模と老年人口比率 (2) 人口 老年人口
young o
l
d
o
l
d
o
l
d
65+ (%)
75+(%)
島数t
o
t
a
l
55
,
827
12
,
252
7
,
130
5
,
122
2
1
.
9
9
.
1
7
6
9
1
-9
9
3
,
595
9
4
9
5
3
8
4
1
1
2
6
.
4
1
1
.
4
3
3
3
1
0
0
-
1
9
9
4
,
610
1,
1
5
0
6
6
7
4
8
3
2
4
.
9
1
0
.
4
8
2
5
2
0
0
-
2
9
9
6
,
424
1
,
421
8
1
2
6
0
9
2
2
.
1
9
.
4
8
1
7
3
0
0
-
3
9
9
5
,
923
1
,
278
7
7
4
5
0
4
2
1
.
6
8
.
5
1
9
4
0
0
-
4
9
9
3
,
961
8
2
3
4
8
6
3
3
7
2
0
.
8
8
.
5
1
1
3
5
0
0
-
5
9
9
7
,
191
1
,
598
9
3
0
6
6
8
2
2
.
2
9
.
2
9
8
6
0
0
-
6
9
9
5
,
113
1
,
156
6
9
7
4
5
9
2
2
.
6
8
.
9
8
6
7
0
0
-
7
9
9
4
,
480
7
8
4
4
9
1
2
9
3
1
7
.
5
6
.
5
4
6
8
0
0
-
8
9
9
5
,
000
9
9
3
5
8
8
4
0
5
1
9
.
9
8
.
1
0
1
0
9
0
0
-
9
9
9
9
,
530
2
,
1
0
0
1
,
147
9
5
3
2
2
.
0
1
0
.
0
0
し老人世帯数と,高齢者のみ夫婦世帯数である。これらの統計は,現状では市町村単位での集 計値しかなく,全域が離島である市町村以外は,その具体数を確定することが出来ない。 表 13は,人口規模ごとに老年人口比率を見たものである。表 14は,このうち特に 1 , 000 人未 満を人口階級別に見たものである。 65才以上の老年人口比率が,これらの島では軒並に 20% 台 に到達している。 75才以上の後期高齢者に関しても 10% を越えているところも見られる。要介 護老人発生率は,今後かなり急速に,高まることが予想されるが,人口が少ないところから, 特に特別養護老人ホームなどの収容型の施設に関しては,なかなか建設が困難で、ある。ヤング オールドなど,地域の福祉人材・資源を有効に活用した,ソフト面での施策が必要とされよう。1
1
1
ゴールドプランと市町村老人保健福祉計画 現状に限って要約的に述べよう。わが国の社会保障が著しく所得保障に傾斜してきたこと, 財政支出の面では年金と医療費に約 90% が占められていること。これに対して,高齢者に対す る対人サービスの体系は余りに貧弱であることは周知の事実である。 今後急速に高齢化を遂げる我が固にとって,高齢者に対する対入社会サービスを急速に整備 ・拡充すること,これは文字どおり緊急の事業である。ゴールドプランはそのための最低限の 目標である。この事業の推進に当たって,①在宅福祉,②民営化,③市町村一元化が,三審議 会合同企画部会の意見具申以来強調されてきた。 ①在宅福祉は,ノーマライゼーションの理念に由来するものであり,本来,住み慣れた地域 での暮し, r畳の上での往生」を志向するものである。これの実現のために,ホームへノレパー, (10
)
r今後の社会福祉のあり方について(意見具申 )J (1989年 3 月 30 日〉。表15 高齢者保護福祉推進十か年戦略 事 項 元年度予算 2 年度予算 3 年度予算
警間
1.在宅福祉対策の緊急整備 (1) ホームへルパー(訪問し介護を行 I31
, 405人 35, 905人 I 40, 905人 I100
, 000人 う者)の充実 (2) ショートスティ(特別養護老人ホ 4, 274床 ーム等に短期滞在する事業)の充実 (+4, 500人)I
(+5, 000人) 7, 674床 I 11 , 674床50
,
000床 (+3, 400床)I
(+4, 000床)(
3
)
デイサービス(日帰りで介護サー I 1 , 080か所 I 1 , 780か所 I 2, 630か所 I 10, 000か所 ビスを受ける事業)の充実 I I (+700か所) I (+850か所) 瓦j 云云テトJ謹支}室長ジ長二ーゐ元美一一一一一一[一一一一一二一一一一γ--iぬーか扇一一「一-ybbーが説---r-ïö-.-ooル説(
+400か所)(
5
)
r住みよい福祉のまちづくり事業J I ",r:=...,,-+-m-.--l--l- I 80市町村 I 100市町村 |新規30市町村 I/ñr:~~I~~~.J-l.'\ の推進 1 ...1If¥./(;VI'...J'S..J1 (新規 50市町村)I (新規 50市町村)2
.
rねたきり老人ゼロ作戦」の展開 (1) 機能訓練の充実 ①機能訓練を行う場の確保 (市町村保健センタ一等の活用) 3, 849か所I
4, 316か所I
4, 783か所(
+467か所)I
(+467か所) ②機能訓練会場への送迎のためのリ I - - I1
, 054台 I 1, 287台 フト付パスの配備 -ih--1南半面;情報亨云子云ゐ霊信一 .一………一一一一-一一---1 一-(い+5 県) (3) 脳卒中,骨折等の予防のための健 I 17, 625百万円 I 17, 779百万円 I18
, 026百万円 康教育等の充実祉の脚立めの関守 163年度)
l議事長)
福祉基金 補正予算 100億円 4. 施設の緊急整備(整備費) (1) 特別養護老人ホームの整備8
, 000床10
, 000床10
, 000床 (+2, 000床) (2) 老人保健施設の整備 150か所 250か所 275か所 I 240, 000床 3, 500か所 (280, 000床)(
3
)
ケアハウスの整備I
200人 1, 500人I
3, 000人I
100
, 000人(+
1, 300人)I
(+
1, 500人) 一戸j一言齢肴亙治福証二面ージ万三雨量掃…|一一ー一二一一一…寸r-一……-一-一.一4詞b弱元芯;説前釘-一一…一…-吋………….日…….“……--….“.日--rγ.“………….日……司目一一--一-一-一一…4山….日4記b元志';3説扉釘長存f咽. . …………'吋…一‘日…….臼一--寸. 5. 高齢者の生きがい対策の推進 (1)r明るい長寿社会づくり推進機構」 の設置 15県 30県 47県(
+15県) (+17県) (2)r高齢者の生きがいと健康づくり推 I 152市町村 I 304市町村 I 304市町村 進モデル事業J I I(新規152市町村)I(新規152市町村) 6. 長寿科学研究の推進I
I
長寿科学総合研究経費 I 508百万円 I 1, 002百万円 I 1, 392百万円 7. 高齢者のための総合的な福祉施設の 整備「ふるさと 21健康長寿のまちづく I 60百万円 60百万円 60百万円 り事業」基本計画策定費 8. ゴールドプラン推進支援方策(平成 3 年度から実施のもの) (1) 福祉マンパワーの確保 ①福祉人材情報センターの設置 I - - I - - I 15か所 ②福祉人材パンク事業の推進 I - - I - - I 95か所 (2) 在宅福祉サービス推進等事業!
ーI -
-
I
1, 000百万円-
-
15 ー表 16 市町村老人保健福祉計画のスケルトン(案〉 老人福祉計画 老人保健計画 〔基本的性格〕
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老人福祉法に基づく福祉の措置の総合的な実施に関する計画0
老人保健法に規定する機能訓練及び訪問指導等の実施に関する l 計画 〔策定内容〕 ①人口構成(総数, 65 歳以上人口, 75 歳以上人口) ,②高齢者のいる世帯の状況(単独世帯,夫婦世帯,同居世帯) 1.現状把握 ③寝たきり,痴呆等の要介護老人の人数,障害の程度,介護の実態(症宅,特養,老健施設,病院等) ,④住居の状況 ⑤高齢者の受診状況・疾病構造,⑥就業構造等 2. サービスの実施 ①ホームへルパー,デイサービス,ショートステイ等の実施状況 ①機能訓練,訪問指導及び健康教育の実施状況 の現況 ②特別養護老人ホーム等への入所措置の実施状況 ②老人保健施設,保健センタ一等の整備状況 ③老人福祉施設の整備状況 ④マンパワーの確保の状況 ⑤シルバーサービス,住民参加型サービス等の実施状況 3. サービスの実施 ①目標年次 の目標 ②目標年次における 65 歳以上人口等の経済・社会状況はの現状把握に対応するもの)の推計 ③サービスの実施の目標 ③サービスの実施の目標 在宅福祉サービス,施設福祉サービスのバランスを考慮し,国の 福祉サービスとのバランスを考慮しつつ,対象者の状況に応じた 定める標準を参酌して,対象者の状況に応じた必要なサービス量を 必要なサービス量を設定 設定 ア.ホームへルパー 総量 00 人・時間分 ア.機能訓練 総量 00 人・日分 イ.デイサービス 総量 00 人・日分 イ.訪問指導 総量 00 人・時間分 ウ.ショートセテイ 総量 00 人・日分 ウ.寝たきり予防,健康教育等 開催回数 00 回 エ.特別養護老人ホーム等への入所措置 総量 00 人 4. サービスの提供 ①特別養護老人ホーム,デイサービスセンタ一等の整備及び体制の ①老人保健施設,事業の実施施設等の整備 体制の確保 確保方法 ②マンパワーの確保 ②マンパワーの確保方策 看護婦,保健婦等 (ホームへルパー,ソーシャルワーカー,寮母等) 5. その他 ①医療施設,医療サービスとの連携に関する事項 ②シルパーサービス,住民参加型サービス等との連携に関する事項 ③社会参加活動等の生きがい対策に関する事項 ④地域福祉活動推進に関する事項デイサービ、ス,ショートステイのいわゆる在宅三本柱の整備が強調されてきた。高齢者が今住 んでいる,住宅の改造が必要であることはいうまでもない。在宅福祉展開のための拠点施設の 整備もまたしかりである。 ②民営化は,公主私縦原則からの脱却,あるいはサービス供給の多元化とも表現されている。 三点指摘しておきたい。ひとつは選別主義から普遍主義への転換で、ある。高齢者福祉が典型で あるが,これからの福祉サーピスはサービスの受給者をあらかじめ限定して,これに行政が集 中的にサービス供給を行うというありかたではなく,いわば住民総体を対象として,ニーズに 応じたサービスを提供することが必要となる。多様なサービスを,大量に供給することがまず 必要になる。この需要を満たすために,サーピス供給も,公的サーピス,民間サービスの双方 が求められる。民間サーピスといっても,企業ベースのシノレバーサーピスから,社会福祉法人 である社会福祉協議会や各種の福祉施設,あるいは有償ボランティアなど多様で、ある。この他 に,公設民営の形態を取る福祉公社などもある。 住民総体に対して,地域でいかにして総合的なサービス供給体制を整備するか,自治体の政 策能力がとわれるところである。なお,過疎地域や離島など市場原理が機能しづらい地域では, 公的部門の役割が高まることはいうまでもなし、。 ③施設福祉,在宅福祉を住民にもっとも近い自治体が一元的に実施する市町村一元化につい ては,法改正も終わり,実践の段階にきている。地方老人保健福祉計画の策定は,その仕事始 めである。地域で何が一番求められているかをまずしっかりと掴むこと,これが計画作りで一 番大事なことである。 地方老人保健福祉計画,とりわけ市町村地方老人福祉計画が基本であることは,上にふれた とおりである。計画策定の実務および策定上の留意点にかんしては,昨年 11 月 18 日「老人保健 福祉計画策定の骨子について」が公表され,策定のためのマニュアノレも「老人保健福祉計画に ついて」の名称で,厚生省老人保健福祉部長通知としてさきごろ全国の自治体にたいしてださ れた。
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福祉資源の整備状況と課題 1.老人福祉施設 (11) 在宅福祉を,市町村必須事務として義務づけることは,福祉関係関連 8 法の改正時に大蔵省と自治 省行政局サイドの反対によって覆され,努力規定に終わった。この点を含め,関連 8 法改正から地方 老人保健福祉計画に至る経過と問題点の包括的検討に関しては,沢井勝「高齢者保健福祉計画の策定 をめぐって J (~自治総研~Vo1
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1991年 12月〉を参照されたい。 (12) 民営化・市町村一元化を語りながら,旧態依然たる中央統制を放棄しようとしない厚生省の矛盾し た政策姿勢については,星野信也 f lOヶ年戦略と市町村一元化J (健康保険組合連合会編『社会保障 年鑑~ 1991年版所収〉の痛烈な批判がある。 (13) 計画実施のための財源問題については,沢井勝前掲および同「地方老人保健福祉計画の実施と福祉 財源J (W月刊福祉~ July1992) を参照されたい。 -17 一老人福祉施設の建設は,離島においては困難な課題のひとつであった。 w離島振興30年史』 は,老人ホームを例に次の様に述べている。 r ここで想定する老人福祉施設は養護老人ホーム と特別養護老人ホームであり,同施設の現行収容定員が 50人ということであれば,それに見合 う母集団人口は少なくみても 1""2 万人以上の規模ということになる。内地離島 286 のうち人 口 1 万人以上の離島はわずかに 15 島にすぎず, 2 万人以上の離島に至っては 6 島にすぎない」。 1986年 5 月時点で,離島(法指定離島以外も含む〉の老人福祉施設の整備状況は,養護老人ホ ーム 23 ケ所(19島),定員 1 , 235人,特別養護老人ホーム 33 ヶ所 (21 島)定員 1 , 925人である。 これを 1985年の全離島の 65才以上人口 153 , 787人で割れば,