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〈論説〉所有権留保と譲渡担保の関係に関する覚書

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1 問題の所在 2 所有権留保の機能と法的構成   所有権留保の法的構成に関する学説   所有権留保の法的構成に関する判例   所有権留保の法的構成の有する意味 3 所有権留保の対抗要件   従前の見解   近時の判例及び裁判例の動向   近時の学説 4 所有権留保と譲渡担保の競合   学説   従前の判例及び裁判例の概要   所有権留保と集合動産譲渡担保の関係に関する近時の判例    (最二小判平成30年12月7日)   若干の検討 5 終わりに

所有権留保と譲渡担保の関係に関する覚書

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1 問題の所在

動産の売買契約において,売買代金の完済前に売買目的物が買主に引き渡さ れる契約である場合には,売主が代金の完済まで所有権を留保する旨の特約が されることが多いといわれる1)。これが所有権留保であり,未払いの売買代金 債権を担保するためにこのような特約がされる。買主が代金を支払わないとき には,売主は所有権を有していることを理由に,買主から売買目的物を引き揚 げて換価することによって残代金債権に充当することにより債権の回収を図る というものである。 債権担保の目的で所有権を利用するという点において,所有権留保は,譲渡 担保と共通しているが,所有権留保では債権者が所有権を留保し,譲渡担保で は債権者に所有権を譲渡する点で異なっている。所有権留保も譲渡担保も非典 型担保として整理されているが,譲渡担保の法的構成や法律関係に関しては, 学説の議論も多く,また,判例の蓄積により法律関係が明らかになってきてい る2)。他方,所有権留保に関しては,法的性質については,動産譲渡担保とパ ラレルに解されており3),また, 従前は, 譲渡担保と比較すると判例も少な かったと思われる。しかし,近時は,後述のとおり,所有権留保についても, 複数の最高裁判例が現れ,対抗要件や法律関係について,多くの検討がされる ようになってきている。所有権留保が担保としての機能を果たすものであるこ とに異論はないと思われるが,具体的に問題となる局面において,所有権留保 1) 不動産の売買においても所有権留保はありうるが,宅地建物取引業者が売主として割賦販売を行 う場合には,原則として所有権留保が禁じられていることもあり,不動産の所有権留保が利用され ることは少ないと思われることから,本稿では,動産の譲渡担保を検討の対象とする。この点につ いては,安永正昭『講義 物権・担保物権法(第2版)』(有斐閣,2014年)434頁を参照。 2) 譲渡担保における法的構成と判例の到達点については,田 寛貴「譲渡担保と所有権留保」法教 424号81頁以下(2016年)を参照。 3) 道垣内弘人『担保物権法(第4版)』(有斐閣,2017年)367,368頁。

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にどのような効力を認めるべきであるのかについては,未だに多くの問題が残 されていると言ってよいだろう。そのような問題の一つとして,所有権留保と 譲渡担保との競合がある。この問題については,すでに優れた先行研究に恵ま れているが4),本稿でも,改めて,この問題について検討を加える。それは, 所有権留保と集合動産譲渡担保の関係を争点とする高裁判決及び最高裁判決が 現れたことを契機とするものであるが,近時の所有権留保に関する判例法理及 び学説の理論状況を確認し,改めて,所有権留保の機能について考察すること にも意味があるように思われるからである。そこで,以下では,所有権留保の 法的構成,対抗要件に関する判例及び学説をみたのち,所有権留保と譲渡担保 の競合について検討していきたい。

2 所有権留保の機能と法的構成

 所有権留保の法的構成に関する学説 所有権留保は,法形式的には,売主に所有権を留保し,買主には代金を完済 することにより所有権を取得できるという権利(条件付き権利)を与える特約 によってされる5)。売買契約に,買主が代金を完済されるまでは売主が売買目 的物の所有権を留保する旨の条項が入れられるのは,売主の売買代金債権を担 保することを目的とするものである。そこで,多くの学説においては,売主に 4) 所有権留保と譲渡担保の関係を検討するものとして,鈴木禄弥「最近担保法判例雑考所有権留 保と譲渡担保の競合」判タ524号45頁(1984年),半田吉信「所有権留保と譲渡担保の競合関係」千 葉大学法学論集1巻1号79頁以下(1986年),古積健三郎「『流動動産譲渡担保』と他の担保権の関 係(2・完)」彦根論叢287・288号379頁以下,289号113頁以下(1994年),稲田和也「所有権留 保と動産譲渡担保との利益調整に関する一試論」NBL 931号42頁以下(2010年),清水裕一郎「所有 権留保の法的性質に関する一考察―所有権留保と譲渡担保の競合の場合の解決を目的として―」 法学研究論集37号373頁以下(2012年),清水裕一郎「所有権留保の法的性質に関する一考察―所有 権留保と譲渡担保の競合の場合の解決を目的として―(二・完)」法学研究論集38号251頁以下(2013 年),田 寛貴「譲渡担保と所有権留保」法教424号81頁以下(2016年)がある。 5) 柚木馨=高木多喜男『新版 注釈民法物権〔改訂版〕』(有斐閣,2015年)〈安永正昭〉738頁。

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所有権があると考えることをせず,担保としての実体を認め,買主にも何らか の権利を認める方向で,法的構成が検討されてきている6)。学説は,多様であ るが,所有権の移転をいかに考えるかという点からみていくことにする7) まず,買主は代金完済前は売買目的物の占有者に過ぎず,代金完済により所 有権を取得すると解するという見解がある8)。この見解によれば,買主は,代 金完済という停止条件が成就することにより所有権を取得することになる。 また,担保の実質を重視し,売買目的物の所有権は売主に帰属するが,担保 目的に制限され,買主にも物権的な権利(物権的期待権)が帰属するという見 解がある9) 売主の権利を担保権として構成する立場をとるものとして,売買契約(代金 一部支払と目的物の引渡)によって目的物の所有権は買主に移転し,所有権留 保特約(留保所有権の設定契約)によって,売主は一種の担保物権である留保 所有権を取得するという見解がある10) さらに,売買目的物の所有権は買主に帰属し,売主には,売買代金債権を被 6) 所有権留保の法的構成をめぐる学説の展開については,田村耕一『所有権留保の法理』(信山社, 2012年)374頁以下に詳しい。 7) 所有権留保の法的構成については,譲渡担保における法的構成と同様に,所有権的構成と担保権 的構成に大別して説明されることが多い(例えば,松岡久和『担保物権法』(日本評論社,2017年) 377頁,生熊長幸『担保物権法(第2版)』(三省堂,2018年)364頁を参照。)。所有権が買主に移転 することなく売主に留まることを重視する立場を所有権的構成,所有権留保を実質に即して担保権 であると理解する立場を担保権的構成であるとされているが,担保権的構成の中には,売主が担保 目的に制約された所有権を有するとする見解もある。そこで,本稿では,便宜上,所有権(留保所 有権)の帰属の点から整理をしている。 8) 石口修『所有権留保の現代的課題』(成文堂,2006年)174頁。 9) 平野裕之『担保物権法〔第2版〕』(信山社,2009年)326,327頁, 内田貴『民法Ⅲ[第3版]』 (東京大学出版会,2005)557頁, 橋眞『担保物権法[第2版]』(成文堂,2010年)316頁,角紀 代恵『はじめての担保物権法』(有斐閣,2013年)201頁,道垣内・前掲注3)369,370頁等。 また,物権的期待権の機能について検討するものとして,松田佳久「所有権留保における物権的期 待権概念の必要性(3・完)」創価法学42巻3号47頁以下,43巻1号75頁以下,43巻2号233頁 以下(2013年)がある。 10) 高木多喜男『担保物権法〔第4版〕』(有斐閣,2005年)379,380頁,松井宏興『担保物権法(補 訂版)』(成文堂,2008年)226頁等。

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担保債権とする抵当権が帰属するとする見解がある11)。近時は,買主が売主の ために売買目的物上に譲渡担保権を設定したものと考える見解もある12)  所有権留保の法的構成に関する判例 従来,判例13)は,所有権留保売買は,所有権の移転のみを買主の代金債務の 完済という停止条件に依存させ,売買契約自体は無条件に成立して効力を生じ ている売買であって,売主には所有権,買主には条件成就による所有権取得に ついて法的保護が与えられる期待権(民法128条,129条)が帰属するという見 解に立つとされている14)。最一小判昭和49年7月18日民集28巻5号73頁15)は, 動産の割賦払約款付売買契約において,代金完済に至るまで目的物の所有権が 売主に留保され,買主に対する所有権の移転は代金完済を停止条件とする旨の 合意がなされているときは,代金完済に至るまでの間に買主の債権者が目的物 に対して強制執行に及んだとしても,売主あるいは売主から目的物を買受けた 第三者は,所有権に基づいて第三者異議の訴を提起し,その執行の排除を求め ることができるとしたが,売主に所有権が留保され,買主には,代金完済まで 所有権は移転しないことを前提としていると考えられる。そして,その後,最 三小判昭和57年3月30日民集36巻3号484頁16)もこのような見解を前提として いると考えられている。 11) 米倉明『所有権留保の実証的研究』(商事法務研究会,1977年)300頁以下,近江幸治『民法講義 Ⅲ 担保物権〔第2版補訂〕』(成文堂,2007年)324頁。 12) 加賀山茂『債権担保法講義』(日本評論社,2011年)555頁。石田穣『民法大系担保物権法』(信 山社,2010年)766頁は,「返還義務を伴って売主に所有権が移転される場合」は「売主のために譲 渡担保権を設定することに外ならない」とする。 13) 所有権留保に関する判例については, 林良平=岡部崇明=田原睦夫=安永正昭『注解 判例民 法 物権法』(青林書院,1999年)712頁以下〈小山泰史〉に詳しい。 14) 加藤紀久男「判例解説(最判昭和57年3月30日)」『昭和57年度最高裁判所判例解説民事篇』284頁。 15) 本件解説として,東條敬・最高裁判所判例解説民事篇昭和49年度75頁以下がある。 16) 本件は,留保買主につき会社更生手続の申立てがあり,弁済禁止の保全処分が命じられたのちに, 留保売主が売買契約を解除し,更生手続開始決定後に,管財人に対して,取戻権の行使として,売 買目的物(未登録のトラック・クレーン)の引渡しを求めた事案に関するものである。

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最三小判平成21年3月10日民集63巻3号385頁17)(以下,「平成21年最高裁判 決」という。)は,購入代金立替金債務の担保として債権者に所有権が留保さ れた売買の目的動産(車両)が第三者の土地上に放置されている場合に,留保 所有権者の目的動産の撤去義務が問題となった事案である。平成21年最高裁判 決は,本件立替払契約では,売主(留保所有権者)は,買主が本件立替金債務 について期限の利益を喪失しない限り,目的動産を占有,使用する権原を有し ないが,買主が期限の利益を喪失して残債務全額の弁済期が経過したときは, 買主から目的動産の引渡しを受け,これを売却してその代金を残債務の弁済に 充当することができることになっていることから,次のように判示する。「留 保所有権者は,残債務弁済期が到来するまでは,当該動産が第三者の土地上に 存在して第三者の土地所有権の行使を妨害しているとしても,特段の事情がな い限り,当該動産の撤去義務や不法行為責任を負うことはないが,残債務弁済 期が経過した後は,留保所有権が担保権の性質を有するからといって上記撤去 義務や不法行為責任を免れることはないと解するのが相当である。なぜなら, 上記のような留保所有権者が有する留保所有権は,原則として,残債務弁済期 が到来するまでは,当該動産の交換価値を把握するにとどまるが,残債務弁済 期の経過後は,当該動産を占有し,処分することができる権能を有するものと 解されるからである」。 平成21年最高裁判決は,残債務の弁済期到来の前後で所有権留保の法律関係 17) 本判決の解説として,柴田義明・最高裁判所判例解説民事篇平成21年度201頁以下がある。また, 本判決の評釈等として,藤澤治奈・NBL909号9頁,遠藤元一・金判1325号2頁,片山直也・金法 1905号37頁,安永正昭・金法1890号12頁,占部洋之・民商142巻6号553頁,石田剛・速報判例解説 7号91頁,渡邊博己・NBL 947号54頁以下,印藤弘二・金判1873号4頁,中村肇・法セミ658号号 116頁, 遠藤元一・金判1325号2頁, 清水元・中央ロー・ジャーナル6巻2号77頁,田高寛貴・判 タ305号48頁,今尾真・判例セレクト353号17頁, 塩崎勤・民事法情報280号53頁,安永正昭・平成 21年度重要判例解説(ジュリスト臨時増刊1398号)89頁, 岡林伸幸・判時2072号(判評616号)178 頁,高橋寿一・金判1343号7頁,小山泰史・法時82巻9号116頁,石田剛・速報判例解説7号91頁, 真鍋美穂子・平成21年度主要民事判例解説(別冊判例タイムズ29号)106頁,古積健三郎・私法判 例リマークス40号18頁,和田勝行・民法判例百選Ⅰ(第8版)204頁等がある。

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を区別して論じるが,この判断枠組みについては,所有権移転型担保である譲 渡担保,特に,不動産譲渡担保に関する判例法理18)の影響を受けていることが 指摘されている19)。そうすると,平成21年最高裁判決は,所有権留保を担保権 として捉えていると思われるが,留保売主が留保している所有権が担保目的で 制限されていると考えることも可能であると解される。  所有権留保の法的構成の有する意味 ところで,これらの法的構成についていかなる見解に立つかによって,具体 的問題に関する結論が演繹的に定まるものではないという指摘がされている20) しかし,所有権留保の対抗要件や所有権留保と譲渡担保の関係について,い ずれの構成を採るかによって結論あるいは説明が異なってくるように思われる ので,以下では,所有権留保の対抗要件に関する判例及び学説の状況を確認し, 次いで,所有権留保と譲渡担保の関係について検討することにしたい。

3 所有権留保の対抗要件

 従前の見解 所有権留保について,契約のとおり,売主に所有権が帰属すると考える見解 によれば,所有権の移転(物権変動)がないので,所有権留保に関しては,対 抗要件を観念することができないことになる。しかし,先にみたように,売主 18) 最判昭和62年2月12日民集41巻1号67頁。特に,強い影響を及ぼしていると考えられる最判平成 18年10月20日民集60巻8号3098頁は,被担保債権の弁済期後,譲渡担保権者は,目的不動産を処分 する権能を取得するため,設定者は,譲渡担保権者の差押債権者に対しても,差押え後の受戻権行 使による目的不動産の所有権の回復を主張することができないと判示し,弁済期到来後の法律関係 と弁済期到来前の法律関係とは異なることを示している。 19) たとえば,片山・前掲注17)38,39頁,安永・前掲注17)金法1890号17頁,小山泰史「譲渡担保 等における『被担保債権の弁済期の先後』ルールの帰趨―所有権留保等への拡張を素材として―」 立命館法学327・328号318頁以下(2009年)等を参照。 20) 山野目章夫『物権法(第5版)』(日本評論社,2012年)379頁,松岡・前掲注7)377頁,

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の留保する所有権を担保権として考える場合には対抗要件を具備する必要があ ることになり,所有権留保の対抗要件(公示)が問題となる21) 売買目的物の所有権は売主に帰属するが,担保目的に制限され,買主には物 権的期待権が帰属するという見解では,物権変動がないから売主は対抗要件具 備の必要がないが,他方,買主の物権的期待権は対抗要件具備の必要があるこ とになる。この場合には,目的物件の引渡により具備されたと考えればよいと されている22) 担保権として構成する立場のうち,売主が一種の担保物権である留保所有権 を取得するという立場では,一種の担保権が設定されることになるので,担保 権としての対抗要件を考えることが可能となるが,対抗要件具備を占有改定に よるとする見解23),あるいは,公示方法なくして対抗力を有する担保権とする 見解がある24) 売買目的物の所有権は買主に帰属し,売主には,売買代金債権を被担保債権 とする抵当権が帰属するとする見解では,公示なくして第三者に対抗できると される25)。買主が売主のために譲渡担保権を設定したと考える見解では,所有 権留保の対抗要件は,譲渡担保権と同様に解することになろう。  近時の判例及び裁判例の動向 所有権留保は,譲渡担保と異なり,所有権の移転がないので,対抗要件は不 要であるとするのが通説的見解であったと思われる26)。動産債権譲渡特例法の 21) この問題については,下村信江「所有権留保における担保としての機能と限界に関する一考察」 近畿大学法科大学院論集11号123頁以下(2015年)において,若干の検討を行ったことがある。 22) 道垣内・前掲注3)368頁(ただし,実際には公示機能がないに等しいとされる),高橋・前掲注 8)317頁。 23) 高木・前掲注10)381頁,松井・前掲注9)227頁。 24) 近江・前掲注11)324頁。 25) 米倉明『所有権留保の実証的研究』(商事法務研究会,1977年)300頁以下。 26) 松岡・前掲注7)379頁等。

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定める動産譲渡登記が利用できないとされている27)ことも,従来の通説的見解 に基づくものであると思われる。 しかし,所有権留保の対抗要件につき通説とは異なる考え方を採ると思われ る判例が現れた。最二小判平成22年6月4日民集64巻4号1107頁28)(以下,「平 成22年最高裁判決」という。)は, 自動車の売買代金の立替払いをした信販会 社が,当該自動車につき留保した所有権を別除権として行使するためには,再 生手続開始時点で所有者としての登録が必要であるとの判断を下した。平成22 年最高裁判決の事案は,信販会社が留保所有権を有しており,売主ではない第 三者による所有権留保(このような所有権留保を「第三者所有権留保」とい う。)であり,売主が所有権を留保する所有権留保(このような所有権留保を 「売主所有権留保」という。)とは異なる側面を有すると言えるものであった29) しかし,東京地判平成22年9月8日判タ1350号246頁,金判1368号58頁30)は, 動産(家庭用雑貨等の商品)の売主の所有権留保が問題となった事案において, 27) 植垣勝裕・小川秀樹『一問一答 動産・債権譲渡特例法(三訂版補訂)』(商事法務,2009年)15 頁。 28) 本判決の解説として,山田真紀・法曹時報65巻10号147頁以下がある。また,本判決の評釈等と して, 小山泰史・判例セレクト2010[Ⅰ]16頁,印藤弘二・金法1928号80頁, 佐藤鉄男・民商143 巻4・5号489頁,小林明彦・金法1910号11頁, 野村秀敏・金判1353号13頁,小林久起・別冊判タ 32号284頁,田頭章一・私法判例リマークス43号134頁,山本和彦・金判1361号68頁,上江洲純子・ ジュリ1420号175頁, 直井義典・香川法学31巻1・2号132頁以下, 和田勝行・民商法雑誌170巻1 号120頁,杉本和士・法学研究86巻10号90頁,加毛明・倒産判例百選(第5版)118頁,伊藤眞・金 法2063号36頁等がある。 29) 第三者所有権留保と売主所有権留保の差異に着目するものとして,石口修「留保所有権の譲渡と 譲受人の法的地位―最(二小)判平成22年6月4日の再検討・日独比較法の観点から―」千葉大学 法学論集28巻1=2号39頁以下(2013年),関武志「民事再生手続におけるクレジット会社の法的 地位(上)(下)―最判平22・6・4民集六四巻四号一一〇七頁の事件を素材にして」判時2173号3頁 以下,2174号3頁以下(2013年),鈴木尊明「所有権留保特約の解釈とその実行―民事再生手続に おける別除権行使が問題となった近時の判決を素材にして―」早稲田方学会雑誌64巻2号441頁以 下(2014年)がある。また,いわゆるオートローンについては,田 寛貴「多当事者間契約による 自動車の所有権留保―最二小判平22・6・4の評価と射程―」金法1950号48頁以下(2012年)に詳 しい。 30) 本判決の評釈等として,印藤弘二・金法1932号4頁, 野村剛司・速報判例解説10号189頁,田村 耕一・みんけん656号2頁以下(以上,2011年),下村信江・法時84巻12号84頁(2012年)がある。

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所有権留保の法律構成を論じ,動産の所有権留保につき,民事再生手続におい て売主が留保所有権を行使するためには, 対抗要件としての引渡し(民法178 条)が必要であると判示し31),本件において占有改定がされたとは認められな い32)として,売主が民事再生手続において別除権を行使することを否定した。 上記東京地判平成22年9月8日の控訴審判決(東京高判平成23年6月7日判例 誌未登載)は,売主の控訴を棄却し,これに対する売主の上告及び上告受理申 立てに対し,最高裁は,上告棄却・上告不受理の決定を下した(最一小判平成 24年2月2日判例誌未登載)33)。 また, 東京地判平成27年3月4日判時228号 61頁34)は,動産(登録制度のない建設機械)の売主の所有権留保が問題となっ た事案で,破産手続において留保所有権に基づく別除権の行使には対抗要件の 具備が必要であるとしたうえ,本件事案においては売主が,買主への建設機械 の引渡時に,占有改定による引渡しを受けて対抗要件を具備したといえる35) 判示した。 これらの判決は,倒産手続における所有権留保が問題とされた事例であり, これらの判決によって,所有権留保には対抗要件は観念できないとされてきた 民法における通説的見解が改められる必要が生じたといえるのかが問題として 強く意識されるようになった。 31) ただし,平成22年最高裁判決が「対抗要件」を必要としたものであるかは議論の余地がある。権 利資格保護要件として必要とされるとする見解もみられる。 32) 東京地判平成22年9月8日は,占有改定を否定する理由として,売主が買主に転売を許容してい たことや買主のもとで売主の売却した商品が他の仕入れ先から仕入れた商品と分別して保管されて おらず,他の仕入れ先から仕入れた商品と判別することができない状況にあったことをあげる。 33) これらの判決については,遠藤元一「動産担保の『見える化』はどこまで本格化するのか」NBL 980号1頁(2012年),同「所有権留保はどこまで活用できるのか―東京高判平成23・6・7判例誌 未登載の照会と分析」NBL 998号40頁以下(2013年)を参照。 34) 本件評釈等として,水野信次・銀法794号65頁(798号54頁),NBL 1066号67頁,相沢祐太・新・ 判例解説 Watch 20号231頁,鈴木尊明・立正法学論集49巻2号123頁等がある。 35) 東京地判平成27年3月4日は,契約書上に「占有改定」という文言が明示されているかによって 判断するのではなく,建設機械の取引の実情や所有権留保物件であることを示すステッカーにより 識別が可能であったという管理態様等から占有改定がされたものと判断している。

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平成22年最高裁判決ののち,自動車の割賦売買に関する実務において,信販 会社,販売会社,買主の三者の間の契約につき約款の変更がされ,新約款にお いては,販売会社が留保所有権を取得し,これを信販会社が弁済による代位に よって承継取得するという構成が明らかにされている36)。最一小判平成29年1 月7日民集71巻10号1925頁37)(以下,「平成29年最高裁判決」という。)は,こ の新約款のもとで,「自動車の購入者と販売会社との間で当該自動車の所有権 が売買代金債権を担保するため販売会社に留保される旨の合意がされ,売買代 金債務の保証人が販売会社に対し保証債務の履行として売買代金残額を支払っ た後,購入者の破産手続が開始した場合において,その開始の時点で当該自動 車につき販売会社を所有者とする登録がされているときは,保証人は,上記合 意に基づき留保された所有権を別除権として行使することができる」と判示し た。平成29年最高裁判決は,平成22年最高裁判決と異なり,信販会社の別除権 行使を肯定したが,その理由として, 次のように述べる。「保証人は,主債務 である売買代金債務の弁済をするについて正当な利益を有しており,代位弁済 によって購入者に対して取得する求償権を確保するために,弁済によって消滅 するはずの販売会社の購入者に対する売買代金債権及びこれを担保するため留 保された所有権(以下「留保所有権」という。)を法律上当然に取得し, 求償 権の範囲内で売買代金債権及び留保所有権を行使することが認められている (民法500条,501条)。そして,購入者の破産手続開始の時点において販売会社 を所有者とする登録がされている自動車については,所有権が留保されている 36) 旧約款と新約款の相違点等については,田村耕一「信販会社による所有権留保に関する最判平22 年6月4日と最判平29年12月7日に基づく三者関係の構造に関する考察」広島法科大学院論集14号 95頁以下(2018年)を参照。また,平成22年最高裁判決及び平成29年最高裁判決に関する論稿とし て,伊藤和規「最二小判平22・6・4に起因する所有権留保と倒産手続の混沌―所有権留保自動車 に係る倒産事件処理の回顧と試案―」金法201号28頁以下(2018年)がある。 37) 本判決の判例評釈等として,福谷賢典・金法2081号6頁,杉本和士・法教449号128頁,田高寛貴・ 金法2085号24頁,鈴木尊明・新・判例解説 Watch 22号97頁,木村真也・新・判例解説 Watch 22号 213頁,印藤弘二・金法2086号36頁,松下祐記・私法判例リマークス57号132頁,森田修・金法2097 号(金融判例研究28号)33頁,小山泰史・金判1548号8頁等がある。

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ことは予測し得るというべきであるから,留保所有権の存在を前提として破産 財団が構成されることによって,破産債権者に対する不測の影響が生ずること はない。そうすると,保証人は,自動車につき保証人を所有者とする登録なく して,販売会社から法定代位により取得した留保所有権を別除権として行使す ることができるものというべきである」。  近時の学説 倒産手続における所有権留保の扱いではなく,所有権留保の目的動産の転得 者や差押債権者との関係においても,所有権留保を主張するために対抗要件を 具備する必要があるのか,上記の裁判例の射程を見極める必要があることが指 摘されている38) 平成22年最高裁判決が留保所有権者に登録を要求するのは,再生債務者に対 して対抗要件を求めるものであるとすると,所有権留保については公示が問題 とならないする通説的見解と整合的に理解することが難しくなる。この困難を 回避するためには,民事再生手続において実体法的にも物権変動があると擬制 するか,民事再生法45条の登記・登録を権利保護要件と理解する必要が生じる ことになる39) 平成22年最高裁判決を前提として,「売主の権利が所有権から担保権として の留保所有権に変動することにつき,対抗要件の具備を観念すべき」40)とする 見解がある。 また,平成22年最高裁判決は,倒産手続において,第三者所有権留保におい て,売主から信販会社への物権変動があると考えられた事案に関するものであ 38) 後藤巻則=滝沢昌彦=片山直也編『プロセス講義民法Ⅲ 担保物権』(信山社,2015年)204頁 〈小山泰史〉。 39) 柚木馨=高木多喜男『新版 注釈民法物権〔改訂版〕』(有斐閣,2015年)746,747頁〈安永 正昭〉。 40) 田 寛貴=白石大=鳥山泰志『担保物権法』(日本評論社,2015年)150頁〈田 寛貴〉。

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り,このような三者間の契約の解釈は多様であることから,平成22年最高裁判 決によって,対抗要件を不要とする一般的な理解を変更するものではないとの 見解が示されている41) いずれにせよ,平成22年最高裁判決及び平成29年最高裁判決により,倒産手 続において所有権留保が担保権として扱われることが明確となったが,平時実 体法において,所有権留保の公示をどのように解するかという問題は残されて いる。民法学においては,先にみたとおり,所有権留保においては物権変動が ないため留保売主は対抗要件を備える必要がないという見解が多数説であった と考えられるが,このような見解からは,例えば,平成22年最高裁判決及び平 成29年最高裁判決の事案は倒産手続に関するものであり,別除権行使のための 要件として対抗要件具備が必要であると解することが考えられる42)。この場合 には,両判決は第三者(信販会社)が関与する所有権留保に関するものである が,売主による所有権留保が問題となる事例については,上記東京地判平成22 年9月8日及び上記東京地判平成27年3月4日のように,売主が占有改定によ り対抗要件を具備することになると考えることが可能となろう。 また,両判決の事案が売主と買主という二当事者間の所有権留保ではなく, 信販会社が関与する所有権留保である点を重視して,売主から信販会社への権 利移転を観念することが可能であるため,対抗要件が必要であると解すること も考えられる43) 他方,平成29年最高裁判決を平時実体法の問題についても影響を与えるもの 41) 和田・前掲注28)135頁, 松岡・前掲注7)380頁,道垣内・前掲注3)369頁。筆者もこの見解 を支持したい。なお,田 ・前掲注37)32頁は,このように解することは倒産法秩序を乱すことに なり,二当事者間の所有権留保においても登記登録は必要と解さざるを得ないことを指摘される。 42) 印藤弘二「所有権留保と倒産手続」金法1951号62頁以下(2012年)を参照。 43) 小山泰史「自動車の売買代金の立替払いをした者が販売会社に留保されていた自動車の所有権の 移転を受けたが,購入者に係る再生手続が開始した時点で上記自動車につき所有者としての登録を 受けていないときに,留保した所有権を別除権として行使することの可否」金融判例研究21号(金 法1929号)56頁以下を参照。

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と理解し,かつ,平成29年最高裁判決が所有権留保の公示を必要とする見解を 前提としているとする見解がある44)

4 所有権留保と譲渡担保の競合

 学 説 同一の動産が所有権留保の目的物であり,かつ,動産譲渡担保権の目的物で もあるという状態になりうるのかは一個の問題であろう。 動産の売主が完全な所有権を有すると解する場合45)には,買主は所有者であ ることを前提とした処分行為はできないと解することになる。同様に,(代金 の完済までは)担保目的に制限された所有権を有する46)と解する場合にも,買 主は,代金完済までは目的物の完全な所有者ではないから,所有者であること を前提とした処分行為はできないと考えられることになり,そうすると,買主 が目的物を担保のために譲渡することはできないことになろう47)。このときに は,買主から譲渡担保の設定を受けた第三者が,譲渡担保権を即時取得できる か否かが問題となるが,判例によると,占有改定による即時取得は認められな いことになるため48),譲渡担保権の即時取得は認められないことになりそうで ある。 しかし,買主には物権的権利が帰属していると考えると49),かかる物権的権 利に譲渡担保権を設定することは可能であると解することができるようにも思 44) 森田・前掲注37)32頁。 45) 石口修『民法要論Ⅲ担保物権法』(成文堂,2016年)290頁。 46) 安永・前掲注5)750頁等。 47) 安永・前掲注5)750頁,河上正二『担保物権法講義』(日本評論社,2015年)408頁など。 48) 最判昭和35年2月11日民集14巻2号168頁。 49) 売主には担保目的に制限された所有権を有すると考える見解では,買主は物権的期待権を有する と解することになる(前掲注9)を参照)。 また, 代金完済までは売主が完全な所有者であるとの 見解を主張される見解(石口・前掲注45)参照)も,留保買主は第三者との関係では物権的期待権 を有するとされる。

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われる。 他方,売主の権利(留保所有権)を担保権であると構成し,かつ,対抗要件 具備が必要であると解する場合50)には,留保所有権と譲渡担保権の優劣は対抗 要件具備の先後によると考えることになる。 ところで,最三小判昭和62年11月10日民集41巻8号1559頁51)(以下,「昭和6 年最高裁判決」という。)は,流動集合動産譲渡担保が動産売買先取特権に優 先することを明らかにした。昭和62年最高裁判決は,「構成部分の変動する集 合動産であっても,その種類,所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法に よって目的物の範囲が特定される場合には,一個の集合物として譲渡担保の目 的とすることができる」とし,「そして,債権者と債務者との間に, 右のよう な集合物を目的とする譲渡担保権設定契約が締結され,債務者がその構成部分 である動産の占有を取得したときは債権者が占有改定の方法によってその占有 権を取得する旨の合意に基づき,債務者が右集合物の構成部分として現に存在 する動産の占有を取得した場合には,債権者は,当該集合物を目的とする譲渡 担保権につき対抗要件を具備するに至り,この対抗要件具備の効力は,その後 構成部分が変動したとしても,集合物としての同一性が損なわれない限り,新 たにその構成部分となった動産を包含する集合物について及ぶ」とする。その うえで,「動産売買の先取特権の存在する動産が右譲渡担保権の目的である集 合物の構成部分となった場合においては,債権者は,右動産についても引渡を 受けたものとして譲渡担保権を主張することができ,当該先取特権者が右先取 特権に基づいて動産競売の申立をしたときは,特段の事情のない限り,民法三 50) この場合の対抗要件としては,占有改定が考えられることになろう。なお,植垣勝裕=小川秀樹 『一問一答 動産・債権譲渡特例法(三訂版補訂)』(商事法務,2009年)15頁によれば,動産を目 的とする所有権留保は「取引当事者間において,所有権の移転等の物権変動を伴わないため,基本 的に物権変動を公示させることによって当該物権変動に対抗力を付与するという仕組みを採ってい る我が国の公示制度になじ」まないことを理由として,動産譲渡登記の対象とされていない。また, 半田・前掲注4)は,明認方法や認識可能性を対抗要件とされる。 51) 本件解説として,田中壯太・最高裁判所判例解説民事篇昭和62年度661頁以下がある。

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三三条所定の第三取得者に該当する」と判示して,流動集合動産譲渡担保を優 先させた。 そこで,昭和62年最高裁判決以降は,所有権留保は,動産の売主にとって売 買代金債権を確保する確実な手段として捉えられるようになっている52)。昭和 62年最高裁判決のように解すると,流動集合動産譲渡担保が設定されると,譲 渡担保権者は,譲渡担保権設定者に将来搬入される動産の全てを支配すること が可能となると考えられるが53),そのように強力な地位を譲渡担保権者に認め るべきかが問われることになる。このような問題意識からは,所有権留保は流 動集合動産譲渡担保に対抗できる手段となることが必要であるとの判断が働い ているように思われる。 そこで,集合動産譲渡担保と所有権留保の関係を論じる学説をみると,次の ようなものがある。まず,集合動産譲渡担保の成立には設定者が処分権限を有 することが必要であることから,動産の所有権が留保されている場合には,集 合動産譲渡担保の効力が当該動産には及ばず,また,譲渡担保権者は動産につ き占有改定による引渡ししか受けていないから,所有権または譲渡担保権の即 時取得も認められないとする見解がある54) 次に,所有権留保と譲渡担保という同種の二つの非典型担保の優劣が問題と なると捉えるときには,先に成立し,同時に目的物の間接占有という公示によ り対抗力を備えている所有権留保が優先するとの見解55)がある。それから,集 52) たとえば, 内田貴『民法Ⅲ(第3版)』(東京大学出版会,2005年)544頁は,債権者は「所有権 留保で自衛する」しかないという。後藤巻則=滝沢昌彦=片山直也編『プロセス講義民法Ⅲ 担保 物権』(信山社,2015年)176頁〈小山泰史〉は「信用売買の売主は所有権留保の約定を債務者と交 わすべき」とされる。 また,平野・前掲注9)351頁は,「売主は, 先取特権については333条によ り譲渡担保権者に劣後するが,所有権留保をしておけば譲渡担保を排除できることになる」とされ る。 53) 角紀代恵「判批」法教93号106頁等。 54) 生熊・前掲注7)344頁, 松岡・前掲注7)360頁, 高橋・前掲注9)308頁,森田修『債権回収 法講義(第2版)』(有斐閣,2011年)181頁。 55) 古積健三郎「『流動動産譲渡担保』と他の担保権の関係(2・完)」彦根論叢289号113頁以下(1994 年)122頁。

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合動産譲渡担保について,集合物の内容が固定する以前は,個々の動産は譲渡 担保の直接の目的物ではないと考えることを前提として,第三者の所有権は失 われないとし,(占有改定による即時取得を否定する)判例法理によれば, 固 定化以降も譲渡担保権は第三者が所有権を留保した物には譲渡担保権が及ばな いとする見解56)がある。 以上にみた見解のほかに,所有権留保を担保権として扱い,動産譲渡担保と の競合を認め,両者の優劣を検討する立場としては,次のような見解がある。 いわゆる黙示の質権として第1順位の先取特権(民法330条1項1号)とみな される動産譲渡担保と,第3順位の動産売主の先取特権との競合問題として, 民法330条1項および2項によって解決されるとする見解がある57)。この見解 とは異なり,所有権留保と動産譲渡担保のいずれも動産の約定担保である動産 質権と類似しているとして,民法355条が類推適用されるとする見解58)もある。 また,動産上に第1順位の担保権として留保所有権,第2順位の担保権として 譲渡担保権が設定されることになると解し,留保所有権者には仮登記担保法6 条の類推適用によって清算義務が生じ,譲渡担保権者がこの清算金請求権に物 上代位することができるとする見解もある59)  従前の判例および裁判例の概要 所有権留保売買における留保買主が,売買目的物に譲渡担保権を設定した場 合に,そもそも留保買主が譲渡担保権を設定する権原を有するのかが問題とさ れる。 最二小判昭和58年3月18日判時1095号104頁・判タ512号112頁・金法1042号 56) 道垣内・前掲注3)341,342頁。 57) 加賀山・前掲注12)556頁。 58) 稲田和也「所有権留保と動産譲渡担保との利益調整に関する一試論」NBL931号42頁以下(2010 年),44頁, 清水裕一郎「所有権留保の法的性質に関する一考察―所有権留保と譲渡担保の競合の 場合の解決を目的として―(二・完)」法学研究論集38号251頁以下(2013年)272頁。 59) 鈴木・前掲注4)48,49頁。

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127頁・金判684号3頁60)(以下,「昭和58年最高裁判決」という。)の事案は, 売主が,代金の分割払完了まで所有権を留保して動産61)を売買したところ,買 主が代金を完済していなかったにもかかわらず,債権者に当該動産を譲渡担保 に供していたところ(占有改定により債権者に引渡し),代金を支払えなかっ たために,売主が留保所有権を行使して当該動産を売却しようとしたところ, 債権者(譲渡担保権者)から売却処分を待つように要請され,売主がこれに応 じるかのような態度を示したのに,譲渡担保権者に断りなく売却処分したとい うことで,売主が譲渡担保権者から損害賠償請求をされたというものである。 昭和58年最高裁判決は,売主は,買主の債務不履行により本件動産をいつでも 他に処分できる権利を有していたのに対し,譲渡担保権者は,売主の処分前に 残代金を提供しなければ譲渡担保権を主張できない立場にあったこと,売主が 他への処分を猶予する旨を約束するまでに至っていないことから,譲渡担保権 について侵害があったとはいえないとして,譲渡担保権者による損害賠償請求 を否定した。昭和58年最高裁判決は,代金の完済前には,留保買主は,売主が 所有権を留保した売買目的物について,処分する権限を有しないことを前提と していると考えられる。 東京地判平成5年9月16日判タ845号251頁・金判955号35頁は,次のような 事案に関するものである。所有権留保特約付で購入した自動車を,留保買主が 譲渡担保に供して,譲渡担保権者に引渡したが(自動車の登録名義人は,自動 車の売主である),その後,譲渡担保設定者(留保買主)が元利金の提供をし, 受領を拒絶されたために供託したが, 譲渡担保権者からの清算金の提供がな かった。そこで,譲渡担保設定者(留保買主)が,譲渡担保権の消滅による受 戻権に基づき,自動車の引渡し及び引渡しが履行不能となった場合について自 60) 本件評釈として,松本恒雄・民商法雑誌90巻4号110頁(1984年)がある。 61) 本件の売買契約の目的は,店舗の賃借権,敷金返還請求権,電話加入権,営業権及び店舗内に備 え置かれていた動産である。

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動車の価格相当額の損害賠償を請求した。上記東京地判平成5年9月16日は, 本件自動車には売主の所有権が留保されているのであるから,この留保されて いる所有権について留保買主(譲渡担保権設定者)が処分権を有するものでは ないから,本件自動車の所有権を対象とする譲渡担保権が成立するものではな いとし,また,譲渡担保権者が譲渡担保権の対象として利用権を主張したこと については,その利用権のその実体は留保買主と留保売主との間の契約により 生じる使用権能であって,この使用権能は所有権留保特約付売買の買主たる地 位に基づくものであり,この契約上の地位と「利用権」とは一体のものとみる べきであるから,この契約上の地位の移転なくして利用権のみを譲渡可能とは 解されないとして,留保買主の請求を認めた。 大阪高判平成8年10月8日判時1598号101頁は, 所有権留保付売買契約に基 づく自動車購入者が,自動車を譲渡担保として,金融業者から金員を借り受け たが,これを期限に返済しなかったため,金融業者が自動車を売却し,貸付金 の回収をしたところ,自動車の購入代金を立替払いした業者に対し,委託に基 づく連帯保証人として立替金を弁済した者が,金融業者の行為によって立替払 業者が有していた自動車に対して有していた所有権もしくは担保権が侵害され, 自動車価格相当の損害を被ったもので,連帯保証人は弁済により,損害賠償請 求権に代位し,あるいはその譲渡を受けたとして,金融業者に対し,損害賠償 を求めた事案である。上記大阪高判平成8年10月8日は,分割払いのため所有 権留保付き売買契約により自動車を購入した者が,当該自動車に譲渡担保権を 設定するに際して, 未だ全額を弁済していないにもかかわらず,既に全額支 払った旨の説明を行なった場合に,自動車登録証上の所有者(留保売主)に確 認することなく漫然とこれを信じた金融業者には過失があるなどとして,損害 賠償請求を認めた。また,東京高判平成13年10月23日判時1763号199頁62)は, 62) 本件評釈として,吉岡信一・私法判例リマークス25号61頁,宮尾尚子・判タ1096号(平成13年度 主要民事判例解説)86頁がある。

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上記大阪高判平成8年10月8日と同様に,所有権留保付売買契約により自動車 を購入した者が自動車を譲渡担保に供した事案である。買主が,自動車の販売 会社から自動車を購入するに際し,購入代金を立替払いした者が,買主から譲 渡担保の設定を受けた自動車金融業者に対して,不法行為による損害賠償請求 をした。留保買主と立替払業者(信販会社)との間の立替払契約には,留保買 主が立替金債務を完済するまでは,本件自動車の所有権は,立替払業者に留保 され,留保買主は当該自動車を譲渡担保に供することができないこと,これに 反した場合には当該自動車を直ちに立替払業者に引き渡さなければならない旨 が合意されていた(なお, 車両登録上の所有者名義は, 自動車の販売会社で あった)。上記東京高判平成13年10月23日は, 立替払契約により所有権が留保 され,担保に供することが禁じられている自動車につき,自動車金融業者がこ れを知りながら自動車を担保に取る行為は,借主(留保買主)の横領行為に加 担する不法行為であり,また借主(留保買主)が借り替えのために他の自動車 金融業者に自動車を引き渡す横領行為をすることを知りながら,自己の債権を 回収するために自動車を引き渡す行為も横領加担行為として不法行為になると 判示して,損害賠償請求を認めた。 これらの事例から,判例及び裁判例においては,留保買主が売買目的物に譲 渡担保を設定する権限を有しないことが前提とされているといえよう。そうす ると,所有権留保と譲渡担保という二つの非典型担保が競合する状態にあると いうことにはならないだろう。 これらの事例で問題になった売買目的物は,自動車等の特定動産であったが, 所有権留保の目的動産が,集合動産譲渡担保の目的となった場合にも,これら の事例と同様に考えることができるかが問題となりうる。集合動産譲渡担保の 目的となる動産は,原材料や在庫商品のように個々の物の個性が乏しいもので あり,転売が予定されていると考えられるが,このような物を,所有権を留保 しつつ継続的に売却することになるからである63)

(21)

 所有権留保と集合動産譲渡担保の関係に関する近時の判例(最二小判平 成30年12月7日) これまでにみたとおり,判例は,所有権留保のされた売買目的物につき買主 は処分する権限を有しないということを前提としている。しかし,従前,判例・ 裁判例の事案において所有権留保の目的物は特定動産であったところ,所有権 留保の目的動産が流動集合動産譲渡担保の目的物となった事案に関する判例は 存在しなかった。 ところが,近時,所有権留保と集合動産譲渡担保権の関係を争点とする判例 が現れた。最二小判平成30年12月7日64)(以下,「平成30年最高裁判決」とい う。)は,所有権留保の対象である動産の所有権は, 所有権留保条項の定めの とおり,その売買代金が完済されるまで売主から買主に移転しないものと解す るのが相当であると判示して,当該動産につき,動産の買主から譲渡担保権の 設定をうけた債権者は,留保売主に対して譲渡担保権を主張することができな いとした。かかる判断は従前の判例と異なるものではないと思われる。しかし, 倒産手続における所有権留保の扱いや所有権留保の対抗要件について判示する 最高裁判決が現れたこともあり,所有権留保と譲渡担保の関係について,従前 の判例の考え方が維持されうるのか,平成30年最高裁判決の原審(東京高判平 成29年3月9日金法2091号71頁65))を契機に注目を集めていた。そこで,以下 では,この判決について,少し詳しく取りあげてみることにしたい。 63) 小山・前掲注13)718頁参照。 64) 裁判所ウェブサイト(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/171/088171_hanrei.pdf) 参照。また,最高裁判例特報として,金法2105号6頁に掲載されている。 65) 本件評釈等として,石口修・新判例解説 Watch・文献番号 z18817009-00-031551674(民法(財産 法)No.155),白石大「本件判批」金法2096号6頁,古澤拓「本件判批」金法2099号68頁,進仕肇 「本件判批」金法2093号4頁,谷本誠司「本件判批」銀法830号64頁(以上,2018年),松本恒雄「担 保裁判例の動向」現代民事判例研究会編『民事判例17・2018年前期』(日本評論社,2018年)17,18 頁がある。

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【事実の概要】 X(原告・控訴人・上告人)は中小企業等への融資等を主たる事業とする金 融機関であり,Y(被告・被控訴人・被上告人)は自動車部品等の製造,販売 等を主たる事業とする会社である。また,A株式会社は,金属スクラップ等の 処理,再生,販売等を主たる事業とする会社である。 YとAは,平成22年3月10日,YがAに対して金属スクラップ等を継続的に 売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。 本件売買契 約には,取引条件として,次のような定めがあった。 ア YからAへの目的物の引渡しは,原則として,AがYの子会社から定期 的に目的物を収集することにより行われる。 イ Aは,Yから引渡しを受けた目的物を受領後速やかに確認して検収する。 ウ Yは,検収に係る目的物について,毎月20日締めで代金をAに請求し, Aは,上記代金を翌月10日にYに支払う。 エ 目的物の所有権は,上記代金の完済をもって,YからAに移転する(以 下,この定めを「本件条項」という。)。 Yは,Aに対して,本件売買契約に基づき売却した金属スクラップ等の転売 を包括的に承諾しており,Aは,Yから当該金属スクラップ等の引渡しを受け た直後にこれを特定の業者に転売することを常としていた。 XとAは,平成25年3月11日,極度額を1億円として,Aからの個別の申込 みに応じてXがAに融資を実行する旨の契約66)を締結し,上記契約によりXが Aに対して現在及び将来有する債権を担保するため,Xを譲渡担保権者,Aを 譲渡担保権設定者とする集合動産譲渡担保設定契約(以下「本件設定契約」と いい,これによって設定された譲渡担保権を「本件譲渡担保権」という。)を 66) 原審によると,極度額を1億円として,Aからの個別の申込みに基づきXが融資を実行する旨の コミットメントライン契約である。

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締結した。本件設定契約には,次のような定めがあった。 ア 譲渡担保の目的は,非鉄金属製品の在庫製品,在庫商品,在庫原材料及 び在庫仕掛品(以下, これらを併せて「在庫製品等」という。)で, Aが 所有し, 静岡県御殿場市内の工場(以下「本件工場」という。)及び精錬 部で保管する物全部とする。 イ 本件設定契約の締結の日にAが所有し上記の保管場所で保管する在庫製 品等については,占有改定の方法によってXにその引渡しを完了したもの とする。 ウ 上記の日以降にAが所有権を取得することになる在庫製品等については, 上記の保管場所に搬入された時点で,当然に譲渡担保の目的となる。 本件譲渡担保権に係る動産の譲渡につき,平成25年3月11日,動産及び債権 の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律3条1項に規定する登記 がされた。 Yは,平成26年5月20日までにAに対して本件売買契約に基づき売却した金 属スクラップ等については,一部を除いて,同年6月10日までにAから代金の 支払を受けた。 Yは,平成26年5月21日から同年6月18日までに,Aに対し,本件売買契約 に基づき,金属スクラップ等を売却した。 Aは,平成26年6月18日,Yを含む債権者らに対して,事業を廃止する旨の 通知をしたが,Yは,同通知の時点で,平成26年5月21日から同年6月18日の 期間に売却した金属スクラップ等について代金の支払を受けていなかった。 Yは,平成26年11月,Aを債務者として,本件工場で保管されている金属ス クラップ等につき,本件条項に基づき留保している所有権に基づき,動産引渡 断行の仮処分命令の申立てをし,平成27年1月13日,上記申立てを認容する旨 の決定(以下「本件仮処分決定」という。)がされた67) 67) 原審によると,Yの動産引渡断行の仮処分命令の申立てに対して,Xは,同年12月1日,自らが

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Yは,平成27年1月20日及び21日,本件仮処分決定に基づき,本件工場で保 管されていた金属スクラップ等を引き揚げ,その頃これを第三者に売却した。 なお,上記金属スクラップ等の一部には,AがYに対して代金を完済したもの が含まれていた(以下,上記金属スクラップ等のうち上記の代金の完済に係る ものを除いたものを「本件動産」という。)。 Xは,Yに対し,上記の金属スクラップ等の引揚げ及び売却がXに対する不 法行為に当たるとして5,000万円の損害賠償金及び遅延損害金の支払を請求し, 選択的に,これによってYが得た利益は不当利得に当たるとして同額の不当利 得金の返還及び民法704条前段所定の利息の支払を請求した。 【第1審判決】 第1審判決(東京地判平28.4.20金法2091号82頁)は,①売却時に,YとAの 間において売買目的物が特定されているので,本件所有権留保の対象となる動 産の範囲は明らかであるから,本件所有権留保の目的物の特定に欠けるところ はない,②本件売買契約において目的物の所有権は,当該目的物の代金の完済 をもってYからAに移転すると定められており,そうすると,目的物の所有権 は,代金の完済までは移転しないことになるから,代金が完済されていない本 件動産についてAが所有権を取得したとはいえず,本件譲渡担保はAの所有し ない本件動産に係る部分については無効であるから,Xが本件動産についての 譲渡担保権をYに対して主張することはできない,③AからYへの物権変動が あったとはいえず,この点でもXとYとは対抗関係に立つものではなく,Yは, 仮に対抗要件を具備していないとしても,Xに対し,自らの留保所有権を主張 本件動産の所有権を有する旨主張して,Aに対する占有移転禁止の仮処分等を申し立てたが,東京 地方裁判所は,平成27年1月13日,本件動産はYに所有権が留保された動産であるから,Aがその 所有権をXに承継取得させる余地はない,本件売買契約の契約条項によっても,同契約が,本件動 産について留保所有権に優先する動産譲渡担保権を設定することまでをも許容する趣旨であるとは 解されないなどと判示して,Yの申立てを認め,Xの申立てを却下する決定をした。

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することができるとし,Yによる本件動産の引き揚げ及び処分がXとの関係で 不当利得または不法行為を構成するものとはいえないとして,Xの請求を棄却 した。これに対し,Xが控訴した。 【原判決】 原判決(東京高判平成29年3月9日金法2091号71頁)は,次のような理由に より,Yが本件動産のうち代金支払済みの動産を売却して処分したことは,X に対する不法行為を構成するものとしたうえ, Xには,177万7,154円の損害が 発生したと認定して,原判決を変更し,Xの不法行為に基づく損害賠償請求を 177万7,154円及び遅延損害金の請求の限度で認容した。そこで, Xが上告受理 申立てを行った。 〔原判決の判旨〕  本件所有権留保の成否及びその有効性について68) 「本件売買契約においては,これに基づいてAに引き渡された目的物の所有 権について,契約所定の決済日(毎月20日締め・翌月10日払い)に基づく代金 の完済をもってAに所有権が移転する旨が定められていたものであるから,当 該約定(以下「本件約定」という。)の効力により,本件動産については, A に対する引渡しの時点で,Yに所有権が留保されたものというべきである。」 「本件所有権留保は,本件売買契約に基づき売却された動産全体について設定 されるものであり,売却時において,Y及びAの間において売買目的物が特定さ れている以上,本件所有権留保の対象となる動産の特定に欠けるところはない。 一方,本件約定により,決済日における代金の完済時に目的物の所有権はA に移転するところ,当該完済の事実は,」前記の「所有権留保の成立を前提と して,これを消滅させる事実というべきであるから,Xにおいて,当該完済に 68) 以下において,見出し及び番号等の記号は筆者が付したものもある。

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係る動産の範囲を含めて主張立証責任を負うものと解するのが相当である。」  Yが,Xに対し,本件動産の留保所有権を主張できるかについて 〔譲渡担保の成否〕 「本件約定によれば,本件売買契約に係る目的物の所有権は, 当該目的物の 代金の完済をもってYからAに移転するものと定められており,本件動産のう ち,Xにおいて代金の完済を主張立証した動産を除く部分については,その所 有権がAに移転していないこととなる。これを前提とすると,当該部分につい て本件譲渡担保は効力を有せず,Xは,これをYに対して主張することはでき ないものと解される」(以下,この部分を①として引用することがある。)。 「物権の設定及び移転は当事者の意思表示により生ずる(民法176条)ところ, 本件約定の内容は,売買目的物の所有権の移転時期を代金完済時と明示的に定 めるものであり,Aへの所有権移転(物権変動)の効力自体を代金の完済にか からしめるものと解するのが自然である。本件所有権留保の目的が本件売買契 約に係る代金債権の担保であるとしても,Yは,当該目的の実現のため,売買 契約による物権変動自体に関して本件約定を締結したものというべきであり, 上記目的が物権変動の有無を左右するものとはいえない。」 「本件動産については, Yは,Aによる転売につき包括的な承諾を与えてい たものと認められる。しかしながら,当該転売代金がYに対する売買代金の支 払の原資となることに照らせば,Yは,上記担保目的の実現のために転売を包 括的に承諾していたものに過ぎず,YとAの間の物権変動の有無自体を左右す るものとはいえない。」 「包括的な転売の承諾の趣旨が担保目的の実現にあることを前提とすると, 当該承諾が,Yにおいて,本件所有権留保に優先する譲渡担保の設定を許容す る趣旨とは到底考え難」い。

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〔所有権留保と動産譲渡担保の関係〕(以下,この部分を②として引用すること がある。) 「  確かに,本件約定の合理的意思解釈として, 本件所有権留保についてXア 主張の担保的構成を採用した上で,Yの担保権(所有権留保)とXの動産譲渡 担保を対抗関係として理解することも,理論的には不可能とはいえない。 イ  しかしながら,上記理論構成を前提とすると,YがAに売却した動産は, Aの責任財産の一部を構成し,転売等を通じてその価値を維持又は向上させ, Aの全債権者,特に本件譲渡担保を有するXの利益となるものである(この点, 金融債権者による与信も,抽象的には責任財産の維持・増加に資するといいう るが,少なくとも具体的な担保権の目的物の増加に直結するものではない。)。 この点,…アメリカ合衆国統一商事法典においては,動産売買の売主の代金 債権に係る担保権について, 動産の種類に応じて対抗力の付与のための要件 (公示,競合する担保権者に対する通知)が定められる一方で,上記のような 債務者の責任財産の維持・向上に対する政策的な考慮から,当該要件の具備を 前提として,対抗力を備える他の担保権に優先する旨を定めているものと認め られる。 ウ  一方で,前記 の理論構成を前提とすると,我が国においては,留保所有ア 権と動産譲渡担保権の優劣は対抗要件の具備の先後により決するほかなく,本 件動産譲渡担保につき登記がされた後は,その後に本件工場に納品された動産 についても占有改定による引渡しとしての対抗力を有するため,本件所有権留 保はこれに劣後し,また,Yは,特段の事情のない限り,Xに対し動産先取特 権を主張することもできないものと解される(最高裁判所昭和57年(オ)第 1408号同62年11月10日第三小法廷判決・民集41巻8号1559頁参照)。 このよう な結果は,前記 で述べたところに照らすと,留保所有権と動産譲渡担保権のイ 間の利益衝量として適切なものとはいい難く,むしろ,動産譲渡担保の設定に より,動産売買に係る与信取引を急激に萎縮させるおそれが大きいものといわ

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