気相担持法によるニッケル/アルミナ触媒の製造
著者
上村 芳三, 幡手 泰雄, 碇 醇
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
29
ページ
121-127
別言語のタイトル
Preparation on Nickel/Alumina catalysts by gas
phase to surface deposition
気相担持法によるニッケル/アルミナ触媒の製造
著者
上村 芳三, 幡手 泰雄, 碇 醇
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
29
ページ
121-127
別言語のタイトル
Preparation on Nickel/Alumina catalysts by gas
phase to surface deposition
気 相 担 持 法 に よ る ニ ッ ケ ル / ア ル ミ ナ 触 媒 の 製 造
上 村 芳 三 ・ 幡 手 泰 雄 ・ 碇 醇
(受理昭和62年5月30日)
PREPARATIONOFNICKEL/ALUMINACATALYSTS BYGASPHASETOSURFACEDEPOSITION YoshimitsuUEMURA,YasuoHATATEandAtsushilKARI Nickel/aluminacatalystswerepreparedbythedepositionofnickelchoridevaporonspherical alumina(3.5mmdiameter)followedbythereduction、Theproductswerecharacterizedbya HCI-dissolvingmethod(todeterminenickelcontent),anelectoronprobemicroanalysis(EPMA),andbya tramsmissionelectoronmicrograph(TEM). Thenickelcontentincreasedbyincreasingthedepositiontimeinnickelchloride/argon,andit decreasedwithanincreasinthedepositiontemperature・ThenickelparticlediametersobservedbyTEMrangedfromlOto50nm・Twokindsofnickelprofiles,shellanduniform,wereobserved.
緒 論 工業的に重要な担持金属触媒の製造法としては,従 来,含浸法や共沈法が広く用いられてきている。これ らの方法は,金属触媒の前駆体から金属触媒として形 成されるまで多くのプロセスを含み(含浸法を例に挙 げるならば,l)含浸,2)乾燥,3)焼成,4)還元),従っ て触媒性能の積極的制御が困難であった。最近,気相還元法により一段プロセスで金属(Ni
及びMo)微粒子を得た研究l)や,気相燃焼法による Ni/SiO2の調製2)が報告されている。これらの他に真 空蒸着によるPt/Al203の調製3),気相から担体上へ のMoO2(OH)2吸着による担持Mo触媒の調製4)があ る。このような気相担持法は,触媒の物性制御性ある いは調製における再現‘性に優れていることが予想され るので,担持金属触媒の新しい製造法として有望と考 えられる。しかしながら,気相法による触媒調製は, 前述のような初期の研究例がごく少数あるのみで,調 製条件体系化のためには検討すべきことがまだ多く残 されている。 筆者らは,これまでに塩化ニッケルを用いた含浸法 ニッケル/アルミナ触媒に関し,担体の種類5.6.8.9.10) 担体粒子径7),金属含有量7.9),含浸液溶媒9)及び含浸 乾燥速度5,7.810)が,触媒の物性及び反応′性に及ぼす 影響を検討してきた。そこで,本研究においては,気 相担持法によりニッケル/アルミナ触媒を製造し,そ の担持条件が触媒の物性に及ぼす影響を検討した。 1 . 実 験 1.1触媒調製 担体として,直径約3.5mmの球状多孔質アルミナ (触媒学会参照触媒JRC-ALO-l,表l参照)を,ニッ ケル源として無水塩化ニッケルを用いて,気相担持法 によりニッケル/アルミナ触媒を調製した。 Table1.PhysicalpropertiesofJRC-ALO-l Form Composition BETsurfacearealm2・kg-ll ModalporediameterInml SpecificporevolumeIm3・kg-Il Whitesphere ワ+γ−aluminal2) 1.69xlO511) 9.012) 6.70xlO−412) 気相法による担持装置の図を図l(a)に,写真を図1 (b)に示す。担持用反応器本体(10)は,内径35mm,外 径42mm,長さ1mのムライト管の底部にキャリアア ルゴンガス導入口,中央部にアルゴンガス及び還元用 水素ガス導入口,頂部にガス出口を取り付けたもので10 122 H2 7 司Xit 建
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12 8 ■ 1 2 Ar 13 1 2 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 2 9 号 ( 1 9 8 7 ) Fig.1(b)PhotograPhofexperimentalapparatus, =f
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pLn111 らアルゴンガスを,中央部(蒸発部より下流側で,担 持用アルミナホルダー(8)から下方へ10mm)からは 水素ガスあるいはアルゴンガスを導入した。これらの ガスは,アルミナのシンタリングを防ぐため,シリカ ゲルカラム(4)及びドライアイスメタノールトラップ (5)を通して十分乾燥させてから反応管(10)に送入し た。系内空気をアルゴンあるいは水素で十分置換し 終った時点で,ヒーター(6)により,昇温を開始した。 蒸発部及び担持部が所定の温度に到達した後,内部温 度を一定に維持した。同時に雰囲気を変更,調製し, アルミナ上にニッケルを気相担持させた。以下,気相 担持操作の標準的な手順を述べる。蒸発部及び担時部 が所定の温度に到達した後,中央部に導入していた水 素ガスを4方コック(3)の操作によりアルゴンガスに 切り替えた。この操作により,塩化ニッケルホルダー (9)から発生した塩化ニッケル蒸気(実験前後の塩化 ニッケル減少量により蒸気発生速度は0.011mol・h-1) がそのままアルミナホルダー(8)中のアルミナに接触 するようになる。所定時間後,再び,アルゴンガスを 水素ガスに切り替え,還元を行った。所定時間の還元 後,装置を室温まで放冷し,サンプルを取り出した。 今回用いた装置においては,その構造上,アルミナ に担持されない気相バルクで生成するニッケル微粒子 7 necdIcvalve6heaterllthnzc−wayvalv2
flowmeter7thermocouplcl2partic1cfiltcr
four-wayvalve8supportholdcrl3bubbler
silicagelcoIumn9NiCI2holder
dryicc−methanollOreactor
trap Fig.’(a)Schematicdiagramofexperimentalapparatus.12345
構成されている。反応器下部は,塩化ニッケル蒸発部, 上部は,担持及び還元部となっており,それぞれ,ニッ ケル網で作った塩化ニッケルホルダー(9)及びアルミ ナホルダー(8)が固定されている。加熱は,管の外側 に巻き付けた径1mmのカンタルA1線ヒーター(6) により行った。保温のため,更に外側に,セラミック ファイバー及び耐火れんがを配置している。内部温度 は,管の上下より挿入した白金ロジウム熱電対(7)に より測定した。 一般化した実験手順を図2に,各Runの条件を表 2に示す。調製実験に際しては,約49の無水塩化ニッ ケルを塩化ニッケルホルダー(9)に,約39のアルミ ナをアルミナホルダー(8)にセットし,反応器底部か 壷溌
謡 淵トtv,−+−tv2−−4
123 上村・幡手・碇:気相担持法によるニッケル/アルミナ触媒の製造 Run No.畑憲鵬柵崖=1壷
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熱可塑性樹脂に埋め込み,220,600及び1500番のサン ドペーパーで触媒断面を露出させた。更に,この断面 を3000番のサンドペーパーで研磨した後,真空下で炭 素 を 蒸 着 し て 測 定 し て 測 定 用 試 料 と し た 。 加 速 電 圧 15kV,試料電流0.05ノαAで行った。 3 ) ニ ッ ケ ル 粒 子 の 形 態 触 媒 中 の ニ ッ ケ ル 粒 子 の 形状及び大きさを透過型電子顕微鏡(TEM,Hitachi H-700H)により測定した。測定用試料は,微粉末に 粉砕した試料を蒸留水に懸濁させ,上澄み液をコロジ オン膜上に落とし,乾燥及び炭素蒸着することにより 調製した。測定は,加速電圧200kV,フィラメント電 流20〆Aで行った。 vaporizationpart lOO lOO lOO lOOT
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lOO lOO lOO lOO 100 ︹エ]・QP﹄①︾ lower sample禽甲柵鯛厚
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量
time[min] ofexperiment. Fig.2Procedure conditions Table2.Preparation も担持実験中に得られる。これらの粒子は,出口フ の流路に設けたフィルター(12)によって捕集した。 NicontentIwt%I depositionpart 205 205 192 196 215 194 lOO lOO lOO lOO000000000000
355555
GllO73 G21073 G31073 G51073 G61073 G71073 1.2触媒物性の測定 l)総ニッケル含有量触媒の総ニッケル含有量 は,触媒中のニッケルを11.6N塩酸により溶解し,試 料液中のニッケル濃度をキレート滴定で測定すること により決定した。 2)局所ニッケル含有量触媒内部の局所ニッケル 含有量は,X線マイクロアナライザ(EPMA,Shi‐ madzuARLmicroprobeX-rayanalyser)により測定 した。測定用試料は次のようにして作成した。触媒を 1.53 (0.17)* 1.73 1.86 2.20 1.43 TvFvlFv2tvltv2 Tdtdtltdt2FdlFd2Fd3tdgltdg2tdg3 (Ar)(Ar) (H2)(Ar)(H2) IKlIcm3・min-llIminl{KlImin1Icm3・min-11{minl upper sample *Theproductwasnotfractionated・ 寺実験中に得られる。これらの粒子は,出口ガス500000
79993
1 1帥0卯卯卯卯
0.007 (0.17)* 1.43 1.73 1.96 1.38 '50 160 180 206 236 120 lOOlOO 0 365 192 196 215 194 150 160 180 180 180 120 lO73 1073 1073 1033 1013 1073 205 205 192 170 159 194000000000000
555555
Ar FV1 Fv20 5 0 1 0 0
Dcpositiontimeinargoncarrier〔min〕
Fig.4Effectsofdepositiontimeonnickelcontent. 124 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 2 9 号 ( 1 9 8 7 ) 0.84kPaより小さいことから,担持部の気相バルクに おける塩化ニッケル固相の析出は無いと考えられる。 図4及び図5に,ニッケル含有量に及ぼす担時時間 及び担時温度の影響をそれぞれ示す。ニッケル含有量 2.実験結果及び考察 2.1ニッケル含有量 今回調製した気相担持触媒の総ニッケル含有量(塩 酸溶解法)を表2の右端に,EPMA(点分析)によ り測定した局所ニッケル含有量を図3に示す。図3中 は,塩化ニッケル/アルゴン中における担持時間の増 加と共に増加し,担時温度の増加と共に減少している。 これらの結果から,塩化ニッケル蒸気/アルゴンから アルミナへの塩化ニッケルの沈着は,吸着によく似た 挙動を示していることがわかる。Fransenら4)は, 600°Cにおけるモリブデン化合物蒸気から多孔性担体 (シリカ,アルミナ及びチタニア)へのモリブデン化 合物の取り込みを吸着と表現している。 2 lowQr sampla ︹皇聖乏二一仁①︶仁oU−Uエ昌之 2 uppersamplg TV=1073KT
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1 0 0 0 1 0 5 0 1 1 0 0 Dcpositionte『叩erature【Kl Fig、5Effectsofdepositiontemperatureonnickel content. Fig.3Nickelconcentrationprofiles. 1 ︹誤一芸︺ 一厘。一厘OU 0 TV=1073Kt
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の円は,触媒粒子の断面を表し,引出し線で示した数 字がその位置でのニッケル含有量(EPMA法,重量%) を表している。また,円内の斜線は,目視観察による 断面の色(黒色あるいは灰色)の濃度を表しており, 大まかな相対的ニッケル含有量を表すと考えられる。 G1の下層サンプルは,典型的なシェル型のニッケル 分布を示しており,その他のものは,概ね均一型を示 している。 担持部直下の導入口からのガスが水素のみであるG 2においては,表2に示されるように,その他のRu、 に比べてニッケル含有量が1オーダー小さい。従って, 今回の調製実験においては,ニッケルの気相担持は, 主として担持部直下導入口からアルゴンを導入した場 合に起こる。また,その様式は,塩化ニッケル蒸気/ ア ル ゴ ン か ら ア ル ミ ナ 上 へ の 塩 化 ニ ッ ケ ル の 沈 着 で あ ると考えられる。本実験において,担持部に流通させ た塩化ニッケル蒸気の分圧は,0.69kPaであり,担持 部温度の最小値である1013Kにおける飽和蒸気圧 ①エ昌之 uppersampIe lower sampIe G1 IocaINicOmcntS
造
【0.064wt・ノ・】 0.062 1.9 、031 0.8 G2⑬三協
G3、
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、<脇
G5、二職
、ご鯛
G6唾警
G7唾簿
上村・I幡手・碇:気相担持法によるニッケル/アルミナ触媒の製造 125 2 . 2 ニ ッ ケ ル 粒 子 の 形 態 図6に今回調製した気相担持ニッケル/アルミナの 電子顕徴鏡写真を示す。比較のため,図7に気相析出 したニッケル微粒子(G2においてフィルター捕集), 図 8 に 含 浸 法 ニ ッ ケ ル / ア ル ミ ナ ( ニ ッ ケ ル 含 有 量
uppersamp1e
濯貸 !Pヤ 鴬G1
G2
G3
G5
1.16wt%)7),図9に担体ALO−lの電子顕微鏡写真 をそれぞれ示す。ニッケルを担持させていないALO− lの電子顕微鏡写真との比較からわかるように,ニッ ケル粒子は,黒い点として観察される。気相担持ニッ ケル粒子径は,10から50nmであり(図6),気相析出IowersampIe
Fig.6Transmissionelectronmlcrographsofnickelchloridevapordepositednickel/alumina.126 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 2 9 号 ( 1 9 8 7 ) 蝿霧瀞 Fig.7TramsmissionelectronmicrographsofnickelfineParticlesobtainedfromexitinG2. したニッケルの粒子径は,50から160nmである(図7)。
また,含浸法によって調製したニッケル/アルミナ中
のニッケル粒子径は,10から30nmである(図8)。 Fig.8Tramsmissionelectronmicrographsofimpre-gnatednickel/alumina(nickelcontent: 1.16Wt%) Fig.9TransmissionelectronmicrographofALO−1. 結 言 気相担持法によりニッケル/アルミナ触媒(ニッケ ル含有量0.2から2.2Wt%)を製造し,その担持条件 が触媒の物性に及ぼす影響を検討した。その結果,以 下のような知見を得た。 1)ニッケル含有量は,塩化ニッケル蒸気/アルゴン 中における担持時間の増加と共に増加し,担時温度の 増加と共に減少した。 2)気相担持法により得られたニッケルの粒子径は, 10から50,mであった。この結果より気相担持法によっ ても含浸法(10から30nm)とほぼ同等のニッケル/ アルミナ触媒を得られることがわかった。 3)シェル型と均一型の2種類のニッケル分布が観察 された。 本実験の特徴の一つは,担持及び非担持ニッケル触 媒を同一の条件下で同時に製造出来ることである。こ のようにして得られた担持及び非担持ニッケル触媒の 反応性を比較することにより,担体による効果を捉え ることも今後の展開として考えられる。 謝 辞 本研究は,文部省科学研究費補助金(奨励研究A, 61750893)の援助を受けた。また,装置作製にあたっ て,九州大学工学部応用化学諸岡成治教授並びに池水 喜義助手から貴重な御助言を頂いた。併せて謝意を表 する。上村・幡手・碇:気相担持法によるニッケル/アルミナ触媒の製造 127 Nomenclature Fd=gasflowrateofargonorhydoroge、introduced fromunderneathofdepositionpart[cm3・min-'] Fv=gasflowrateofargonintroducedfromreactor bottom [Cm3・min-l] Td=temperatureofdepositionpart [K] Tv=temperatureofvaporizationpart [K] tdg=timeelapsedatdepositionpartdefinedin Fig.2 [min] tdt=timeelapsedatdepositionpartdefinedin Fig、2 [min] tv=timeelapsedatvaporizationpartdefinedin Fig、2 [min] Literaturecited l)加藤康夫,諸岡成治,池水喜義,安武剛:化学 工学協会第19回秋季大会研究発表講演要旨集, SA303(1985). 2)Tsugo,Y、,H・Ooi,MYanoandY・Harano: ProceedingsofWorldCongressⅢofChemical Engineering,Vol,4,310(1986). 3)Baker,RT・K.,C・ThomasandR.B・Thomas:J: Catαノ.,38,510(1975). 4)Fransen,T、,P.C・vanBergeandP・Mars:Pro‐ ceedingsoftheFirstlnternationalSymposiumon ScientificBasesforthePreparationofHeter-ogenousCatalysts,405(1976). 5)上村芳三,椎原由美子,幡手泰雄,碇醇:鹿児 島大学工学部研究報告,No.26,113(1984). 6)上村芳三,幡手泰雄,碇醇:鹿児島大学工学部 研究報告,No.28,179(1986).