人工知能学会研究会資料 SIG-SWO-038-03
学習指導要領にもとづくコンテンツの体系化手法の研究
A study about the Organization of Video Contents based on the
Educational Curriculum
浦川真
1宮崎勝
1山田一郎
1藤沢寛
1Makoto Urakawa
1, Masaru Miyazaki
1, Ichiro Yamada
1, Hiroshi Fujisawa
11
NHK 放送技術研究所
1
Science & Technology Research Laboratories NHK
Abstract:
We constructed the curriculum ontology which has the relation of brush-up and preparation between items of study. The connection of each items on the ontology are generated based on their new or existing words with utilizing the order of items of the curriculum published by the ministry. This ontology enables us to find the path of study for specific terms and to make videos aligned with study path. We provide the way of constructing ontology and structuring video contents.
1 はじめに
教育分野において、MOOC(Massive Online Open Course)といったオンライン学習サービスの普及や、 学校教育における動画活用など、インターネット技 術を活用した学習サービスが注目を集めている。さ らに、画一的な学習順序に則るのではなく、学習者 の理解や進捗に合わせた学習サービスなども必要性 が謳われている。動画の活用については、NHK でも 「NHK for School1」による動画クリップのインター ネットでの公開に取り組んでいる。その他、電子教 科書への動画埋め込みなど盛んになっている。 学習サービスが拡充し、動画を始めとした教材コ ンテンツが増加する中、教師支援や学習支援などを 目的にオントロジーを活用した研究が多くなされて いる[1]。また、埼玉県では、セマンティックコンピ ューティングの教育利用に関する研究として、オン トロジーの教育利用を幅広く検証している[2]。本論 文では、文部科学省が公開している学習指導要領か ら、各学習目標内の単語をもとに、学習指導順序知 識を抽出し、オントロジーとして再利用可能な形で 構築した。この学習順序オントロジーにより、指導 要領の各学習目標を前提知識関係でつなげ、学習順 序知識として利用する方法を提案する。また、学習 順序に合わせた動画提供方法についても提示する。 1 http://www.nhk.or.jp/school/
2 学習指導要領
現行の学習指導要領は、小学校、中学校、高等学 校に分けて文部科学省の Web サイト2にて公開され ている。ただし、学習指導要領は、機械可読な形式 ではなく、人が Web ブラウザを利用して読むための 文章として html ファイルや PDF ファイルとして公 開されている。実際、小学校と中学校の指導要領は html にて、高等学校の指導要領は PDF ファイルで公 開されている。細胞に関する学習において、中学理 科第 2 分野(3)(ア)(ア)の「生物と細胞」は、中学理科 第 2 分野(5)(ア)(ア)の「細胞分裂と生物の成長」を学 習する上で前提知識になる。しかし、「生物と細胞」 と「細胞分裂と生物の成長」の間には「気象観測」 といった内容が構成されているため、「生物と細胞」 と「細胞分裂と生物の成長」の繋がりを把握するこ とが難しい。 本論文では、中学理科及び高校理科を対象に学習 指導要領を手動で書き起し、指導要領内の各学習目 標の前提知識関係の繋がりを単語の類似性と継承性 により抽出し、学習順序オントロジーとして構築し た。なお、本論文では、例えば、中学理科第 2 分野 (5)(ア)(ア)の「細胞分裂と生物の成長」といった学習 指導要領の最小単位を学習目標と呼ぶこととする。 2 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/1 356249.htm2.1 学習順序知識の抽出
学習指導要領は、各学習目標で何を学ぶかを記述 している。例えば、上述の、中学理科第 2 分野 (3)(ア)(ア)の「生物と細胞」では「生物の組織などの 観察を行い,生物の体が細胞からできていること及 び植物と動物の細胞のつくりの特徴を見いだすこ と。」、中学理科第 2 分野(5)(ア)(ア)の「細胞分裂と生 物の成長」では、「体細胞分裂の観察を行い,その過 程を確かめるとともに,細胞の分裂を生物の成長と 関連付けてとらえること。」と記述されている。学習 指導要領では、学ぶことが順番に記述されているた め、後で習う内容には、先に習う内容には無い新た な単語が出現する。 本論文では、学習指導要領の各学習目標を、新し く出現した名詞(新出語)と、前にも使われていた 名詞(既出語)に分けて関連性を計算する。例えば、 中学理科第 2 分野(3)(ア)(ア)の「生物と細胞」の新出 語は「動物」、「細胞」であり、既出語は「体」、「つ くり」、「植物」、「組織」、「生物」である。一方、中 学理科第 2 分野(5)(ア)(ア)の「細胞分裂と生物の成長」 の新出語は、「細胞分裂」、「染色体」、「体細胞」、「複 製」、「分裂」、「成長」であり、既出語は「細胞」、「過 程」、「体」、「生物」となる。 学習目標毎に新しい単語が出現する学習指導要領 においては、従来の、単語の一致を基準とした文間 の類似度を計算する手法では、「生物と細胞」と「細 胞分裂と生物の成長」といった連続して学習すべき 学習目標間の関連度が低くなってしまう。そこで、 新たな基準として、ある学習目標の新出語と、別の 学習目標の全単語の類似度を「類似性」と定義し、 ある学習目標の新出語が、別の学習目標の既出語に 出現することを新出語の「継承性」と定義した。こ の新出語の「類似性」と「継承性」を加算すること で、学習目標同士の関連度を計算した。なお、各学 習目標は、指導要領内での記載順を持っているため、 この関連度は順序性を持つことになる。本論文では、 学習目標間の関連度を順序付き関連度と呼ぶ。 図 2 に、類似性と継承性について概要図を示す。 まず、中学理科第 1・2 分野といった特定の指導要領 の各学習目標を、記述されている順に、その学習目 標で初めて新出した単語を新出語、既に使われた単 語が出現した場合は既出語として抽出しておく。そ の上で、学習目標同士の順序付き関連度を求める。 図 1 の例では、学習目標 X が学習目標 Y より前に構 成されている例を示す。学習目標 X の新出語 W1・ W2・W3 と、学習目標 Y の全単語 W0・W3・W4・ W5 の類似性と、学習目標 X の新出語 W1・W2・W3 の中で、学習目標 Y の既出語に使用されている割合 である継承性を求める。 「類似性」スコアの計算では、ALAGIN フォーラ ム3で公開されている文脈類似語データベースを利 用した。このデータベースでは、100 万語の単語に 対して、約 1 億ページの Web 文書上で文脈を手掛か りとしたクラスタリング処理(2000 クラス)を行う ことにより、単語が 2000 次元のベクトルで表現され ている(wx 及び wy)。類似性スコアを、このベクト ルのコサイン類似度(式(1))の総和により計算した (式(2))。継承性スコアは、学習目標 X の新出単語 数を m、学習目標 Y の既出語に継承した単語数を s とし式(3)により求めた。式(3)の q は、新出単語の学 習目標内での出現回数であり、学習目標内で頻出す る単語が継承されている場合、継承性のスコアが高 くなる。順序付き関連度を O(X,Y)として求めた。 (1) (2) (3) (4) ※学習目標 X の新出語 ※学習目標 Y の全単語 wx= , wy= 図 1 新出単語の類似性と継承性の概要 今回、中学理科の「第 1 分野」「第 2 分野」、高等 学校理科の「科学と人間生活」、「物理基礎」、「物理」、 「化学基礎」、「化学」、「生物基礎」、「生物」、「地学 基礎」、「地学」の順に、232 全ての学習目標を統合 した。統合した学習目標リストと、学習目標内容か ら形態素解析により自動抽出した名詞(新出語・既 出語)の例を表 1 に示す。全学習目標に対して、学 3 https://alaginrc.nict.go.jp/ W1 W2 W3 W0 W4 W5 W3 W0 学習目標X 新出語 既出語 類似性 継承性 W1 W2 W3 W0 W4 W5 W3 W0 ※学習目標Xより学習目標Y方が後に出現する場合 Xの新出語とYの全単語の類似度の総和をスコア化 Xの新出語のうち、Yの既出語に継承している割合をスコア化 学習目標Y 学習目標X 学習目標Y習目標同士の類似性及び継承性により、その順序付 き関連度を計算した。表 1 では、各学習目標に対し て予習関係となる学習目標の例を示している。本論 文では、0.6 以上の学習目標を予習候補とした。 表 1 統合した学習目標リスト(抜粋) 学習 目標 No 学習目標名とその内容 新出語 (例) 既出語 (例) 導出元の指導要領 1 光の反射・屈折。光の反射や屈折の実験を行い,光が水やガ ラスなどの物質の境界面で反射,屈折するときの規則性を見 いだすこと。全反射も扱うこと。また,光の屈折で入射角と 屈折角の定性的な関係にも触れること。 光 反射 屈折 ・中学理科第 1 分野 (1)身近な物理現象 ア 光と音 (ア)光の屈折・反射 2 凸レンズの働き。凸レンズの働きについての実験を行い,物 体の位置と像の位置及び像の大きさの関係を見いだすこと。 光源の位置と像の位置,像の大きさの定性的な関係を調べる こと。その際,実像と虚像を扱うこと。 凸レンズ 実像 虚像 ・中学理科第 1 分野 (1)身近な物理現象 ア 光と音 (イ)凸レンズの働き (略) (略) (略) (略) (略) 48 生物と細胞。生物の組織などの観察を行い,生物の体が細胞 からできていること及び植物と動物の細胞のつくりの特徴を 見いだすこと。 細胞 動物 植物 生物 ・中学理科第 2 分野 (3)動物の生活と生物の 変遷 ア 生物と細胞 (ア)生物と細胞 49 生命を維持する働き。消化や呼吸,血液の循環についての観 察,実験を行い,動物の体が必要な物質を取り入れ運搬して いる仕組みを観察,実験の結果と関連付けてとらえること。 また,不要となった物質を排出する仕組みがあることについ て理解すること。各器官の働きを中心に扱うこと。「消化」に ついては,代表的な消化酵素の働きを取り上げること。また, 摂取された食物が消化によって小腸の壁から吸収される物質 になることにも触れること。「呼吸」については,細胞の呼吸 にも触れること。「血液の循環」に関連して・・・ 酵素 吸収 循環 消化 小腸 肝臓 腎臓 細胞 動物 呼吸 体 ・中学理科第 2 分野 (3)動物の生活と生物の 変遷 ア 動物の体のつくり と働き (ア)生命を維持する働 き (略) (略) (略) (略) (略) 232 膨張する宇宙。現代の宇宙像の概要を理解すること。ビッグ バンの証拠や宇宙の年齢も扱うこと。 宇宙像 ビッグ バン ・高校理科地学 (4)宇宙の構造 ウ 銀河と宇宙 (イ)膨張する宇宙 表 2 学習目標同士の関連度計算結果(抜粋) 学習目標 No 学習目標名とその内容 スコア 学 習 目 標 No(予習) 学習目標名とその内容(予習) 48 生物と細胞。生物の組織な どの観察を行い,生物の体 が細胞から・・・ 2.31 49 生命を維持する働き。消化や呼吸,血液の循環につ いての観察・・・ 1.84 59 細胞分裂と生物の成長。体細胞分裂の観察を・・・ 1.79 172 生体物質と細胞。細胞の内部構造と・・・ 49 生命を維持する働き。消化 や呼吸,血液の循環につい ての観察・・・ 0.75 161 細胞とエネルギー。生命活動に必要なエネルギーと 代謝について理解すること。 0.73 50 刺激と反応。動物が外界の刺激に適切に反応してい る様子の観察を行い・・・ 50 刺激と反応。動物が外界の 刺激に適切に反応している 様子の観察を行い・・・ 1.46 187 刺激の受容と反応。外界の刺激を受容し,・・・ 0.92 188 動物の行動。刺激に対する反応としての動物個体の 行動について理解すること。
本計算により得られた順序付き関連度をもとに、 各学習目標を前提知識関係でつなぐ必要がある。そ こで、指導要領の最後に出現する学習目標から探索 することで、前に学習すべき別の学習目標と関連付 け各学習目標の前提知識関係を作成する。表 1 を例 にとると、学習目標 No.188 と学習目標 No.187 には、 学習目標 No.50 が前提知識として関連付けられる。 さらに、学習目標 No.50 には学習目標 No.49 が、学 習目標 No.49 には学習目標 No.48 が、それぞれ前提 知識として関連付けられる。前提知識候補が複数あ った場合は、より学習目標 No が近い、つまりより 近い位置に記載されている学習目標を採用した。図 2 に、学習目標 No181(遺伝子と染色体)から学習 目標 No.188(動物の行動)までの学習目標から、学 習目標同士の順序付き関連度をもとに前提知識とな る学習目標を探索した結果を示す。 図 2 探索した学習目標同士の繋がり
2.2 学習順序知識の RDF 化
2.1 で抽出した学習順序及び、文部科学省が公開し ている学習指導要領をもとに、学習順序オントロジ ーを手動で構築した。オントロジーダイアグラムを 図 3 に示す。本論文では、本オントロジーのドメイ ンとして cur(http://cur.nhk.or.jp)を定義したが、研究 用として構築したため公開はしていない。 本オントロジーのコンセプトは、学習順序を決定 する際に利用可能であることと、NHK が保有する映 像コンテンツの体系化にあるため、指導要領の各学 習目標をオントロジーの中心に配置した。学習目標 のクラスを「cur:ItemOfStudy」で表し、当該クラス のインスタンスが指導要領における学習目標となる。 さらに、「cur:hasBrushUp」プロパティにより復習学 習目標と繋がったり、「cur:hasKeyword」プロパティ や「cur:hasNewKeyword」プロパティにより、新出及 び既出単語とのトリプルを形成する。 学習指導要領自体に階層構造があり、各学習目標 は指導要領を構成する最小単位である。そのため、 学習目標が属する指導項目を「cur:TopicOfStudy」ク ラスとして定義した。また、各指導項目が学習され る「学校」「学年」、「教科」「分野」もそれぞれクラ スとして定義した。図 4 に、具体的なインスタンス 例を示す。 図 3 学習順序オントロジー 図 4 学習順序オントロジーのインスタンス例3 学習順序オントロジーの活用
本項では、構築した学習順序オントロジーの活用 例として、学習パスの可視化及び映像コンテンツの 体系化について紹介する。 48 59 49 50 60 61 生物と細胞 生命を維持する働き 刺激と反応 細胞分裂と 生物の成長 生物の殖え方 遺伝の規則性と遺伝子 181 減数分裂と受精 161 細胞とエネルギー 162 163 180 遺伝情報とDNA 遺伝情報の分配 遺伝子と染色体 40 配偶子形成と 受精 182 配偶子形成と受精・胚発生 185 184 186 細胞の分化と形態形成 植物の器官の分化 187 188 刺激の受容と反応 動物の行動 183 初期発生の過程 生物の観察 単元 No 単元名 rdfs:domain rdfs:domain rdfs:range rdfs:range rdfs:domain rdfs:range xsd:decimal rdfs:subPropertyOf rdf:datatype rdfs:domain rdfs:domain cur:ItemOfStudy cur:Keyword クラス cur:hasItemNumber プロパティ cur:hasKeyword cur:hasNewKeyword 外部クラス/プロパティ cur:hasBrushUp cur:TopicOfStudy cur:hasGoal cur:hasItem cur:hasSubTopic rdfs:domain rdfs:range rdfs:domain cur:FieldOfSubject cur:Subject cur:StageOfSchool cur:Year rdfs:domain rdfs:range cur:TaughtAtField rdfs:range cur:TaughtAtStage cur:TaughtAtYear xsd:literal rdf:datatype cur:TaughtAtSubject rdfs:range cur:IsPreparationOf rdfs:domain rdfs:domain rdfs:range rdfs:range Owl:InverseOf ObjectTypeProperty Instance Literal DataTypeProperty cur:Item00011 hasItemNumber 48 身近な生物の殖え方を観察し, 有性生殖と・・・ cur:K00009 生物 生物の殖え方 rdfs:label rdfs:label cur:hasKeyword cur:K00010 細胞 rdfs:label cur:K00020 cur:hasNewKeyword 有性生殖 rdfs:label cur:Item00005 cur:Item00004 cur:hasBrusUp hasGoal cur:ItemOfStudy cur:Keyword cur:hasItem cur:Topic0022 生物の成長と殖え方 rdfs:label cur:Topic005 cur:hasSubTopic 生命の連続性 身近な生物についての観察,実験を通し て,生物の成長と殖え方,遺伝・・・ hasGoal cur:TopicOfStudy cur:Filed001 第2分野 cur:TaughtAtField rdfs:type rdfs:type rdfs:type rdfs:type cur:Subject001 cur:TaughtAtSubject 理科 cur:Stage001 cur:TaughtAtStage 中学 cur:StageOfSchool cur:Subject cur:FieldOfSubject rdfs:type rdfs:type rdfs:type Class cur:hasKeyword3.1 学習パスの可視化
既存の学習指導要領では、2 項で述べたように、 「生物と細胞」と「細胞分裂と生物の成長」の間に は「気象観測」が構成され、特定の内容への理解を 継続して深めるようには並んではいない。一方、本 稿にて構築したオントロジーは、各学習目標が持つ 新出単語と既出単語に則り、予習・復習関係を表し ている。例えば、図 5 に示す SPARQL クエリにより、 「細胞」を最初に学ぶ学習目標からの、予習パスを 取得することが可能である。図 5 中の①②③は、ク エリとその取得対象となるトリプルの関連を示して いる。 図 5 「細胞」を学ぶパスを取得する SPARQL 図 5 の SPARQL クエリにより得られた結果を表 3 に示す。表に示す通り、学習目標 No.48 からの学習 パスを取得できている。その可視化の例を図 6 に示 す。図 6 から、「細胞分裂」に関して学習するパスを 把握できる。 表 3 クエリにより得られた学習目標の組み合わせ 図 6 クエリにより得られた結果の可視化例3.2 映像コンテンツの体系化
学習順序オントロジーを活用することにより、順 序性を考慮した映像コンテンツ提示が可能になる。 図 7 に、ある 2 つの映像コンテンツがあった場合に、 ど ち ら の コ ン テン ツ を 先に 提 示 す る べ きか を 、 SPARQL クエリによりオントロジーから取得する流 れを示す。映像コンテンツには、動画だけでなく、 その内容を示すテキストが付与されているものとし、 事前に形態素解析等によりテキストからキーワード を抽出する。その上で、両コンテンツがどの学習目 標に紐づくかを下記 SPARQL により取得する(図 7 の①)。図 8 は、図 7 の①でコンテンツ A の学習目 標を取得するためのクエリである。結果として、学 習目標 49 の「生物と細胞」と学習目標 59 の「細胞 分裂と生物の成長」を取得できる。一方、コンテン ツ B は、学習目標 61「遺伝の規則性と遺伝子」や学 習目標 162「遺伝情報と DNA」、学習目標 163「遺伝 情報の分配」を取得できる。 得られた学習目標情報をもとに、両コンテンツの 提示順を、オントロジーにおける学習目標の位置に 着目し、予習スコアを計算し決定する。学習順序オ ントロジーには、学習目標同士の予習及び復習とな る繋がりを cur:hasBrushUp として定義している。両 コ ン テ ン ツ で 取 得 さ れ た 学 習 目 標 同 士 の cur:hasBrushUp の出現回数の総和を比較し、多い方 が相手を復習として定義している度合が強いと考え、 後で提示するコンテンツとして決定した(図 7 の②)。 図 9 は、図 7 の②で予習スコアを計算するためのク エリ例であり、コンテンツ B の学習目標 59 とコン テンツ A の学習目標 49 が復習関係にあるため、1 としてカウントしている。学習目標同士のカウント の総和により、コンテンツ B から見たコンテンツ A の復習スコアは 6 で、その一方でコンテンツ A から 見たコンテンツ B の復習スコアは 1 であるため、コ ンテンツ A を先に提示すべきであることが分かる。 cur:hasBrushUp cur:hasBrushUp cur:hasNewKeyword 細胞 Rdfs:label ?End ?Start ?Path1/?Path2 ① ① ② ② ③ ③ No 学習目標 No 学習目標(予習) 59 細胞分裂と生物の成長 60 生物の殖え方 60 生物の殖え方 61 遺伝の規則性と遺伝子 61 遺伝の規則性と遺伝子 162 遺伝情報とDNA 162 遺伝情報とDNA 163 遺伝情報の分配 163 遺伝情報の分配 164 遺伝情報とタンパク質の合成 163 遺伝情報の分配 180 減数分裂と受精 61 遺伝の規則性と遺伝子 181 遺伝子と染色体 180 減数分裂と受精 182 配偶子形成と受精 60 生物の殖え方 183 初期発生の過程 183 初期発生の過程 184 細胞の分化と形態形成 184 細胞の分化と形態形成 185 配偶子形成と受精・胚発生 184 細胞の分化と形態形成 186 植物の器官の分化 59 60 61 細胞分裂と 生物の成長 生物の殖え方 遺伝の規則性と遺伝子 181 減数分裂と受精 162 163 180 遺伝情報とDNA 遺伝情報の分配 遺伝子と染色体 配偶子形成と 受精 182 配偶子形成と受精・胚発生 185 184 186 細胞の分化と形態形成 植物の器官の分化 183 初期発生の過程 学習 目標 No 単元名図 7 映像コンテンツの順序を取得する流れ 図 8 学習目標を取得するためのクエリ 図 9 予習スコアを計算するためのクエリ
4 他の研究との関連
本研究では、学習目標内の新出語に着目している ため、専門用語もしくは重要単語ベースの学習順序 と言える。そのため、学習する生徒向けサービスに 利用できる。例えば、高校理科において「遺伝子と DNA」を学習している際の復習として中学理科の 「遺伝の規則性と遺伝子」を学び直すことがサービ スモデルとして想定できる。一方、オントロジーを 教育分野に適用する研究としては、教師向けの授業 デザインに応用する研究がなされている[4]。この研 究と本研究は教育への観点が違うため、オントロジ ーの特徴を活かして融合することで、新たなオント ロジーモデルも考えられる。BBC における学習指導 要領オントロジー活用[3]は、Web ページを体系的に 構成するための取り組みである。BBC のオントロジ ーでも学習目標毎にトピックキーワードを定義して いるが、学習目標同士をつなぐための共通語として 利用するにとどまっている。4 まとめ
本研究では、学習指導要領の各学習目標の新出語 の類似性と継承性に着目し、学習順序オントロジー を 構 築 し た 。 また 、 学 習順 序 オ ン ト ロ ジー 及 び SPARQL クエリを活用することで、中学校や高等学 校をまたいだ学習パスの形成や、映像コンテンツの 順序を持たせた提示ができることを示した。 課題としては、類似性と継承性から得られる学習 目標関係の評価と、オントロジーから得られる学習 パスが、実際の教育現場で有用かどうかの検証が必 要である。また、教育コンテンツ以外についても、 本研究で得られた順序性提示が適用できるか検証し ていく。参考文献
[1] 田代久美, 富樫敦, 寺島賢紀: e-Learning における学 習支援システムに関する研究, 電子情報通信学会技 術研究報告. ET, 教育工学 105(488), pp.43-46,(2005) [2] http://www.center.spec.ed.jp/d/h22/347_H22_kenkyu_Se mantic_computing.pdf[3] Dong Liu., Eleni Mikroyannidi., Robert Lee.: Semantic Web Technologies Supporting the BBC Knowledge & Learning Beta Online Pages, Publication Source, CEUR Workshop, (2014) [4] 林雄介, 笹井俊信, 溝口理一郎: オントロジー工学 的モデリングによる学習指導案からの経験的知識抽 出 に 向 け て , 人 工 知 能 学 会 全 国 大 会 論 文 集 25, No.1H1-3IN,(2011) コンテンツB「遺伝と遺伝子」 コンテンツA「細胞分裂と成長」 細胞 胚 核 受精卵 細胞分裂 細胞 遺伝情報 DNA らせん構造 細胞周期 48 59 オントロジー学習順序 48 61 162 163
1
6
①これらの単語を持つ単元を抽出 ①これらの単語を持つ単元を抽出 ②相手が予習になるかを計算 ②相手が予習になるかを計算 ③予習スコアの比較 先に学ぶ 後に学ぶ SPARQL-A SPARQL-B SPARQL-A SPARQL-B 183 分配 SELECT DISTINCT * WHERE {?Item cur:hasNewKeyword / rdfs:label ?NewKeyword. FILTER
(?NewKeyword IN(“細胞”^^rdfs:Literal,“胚”^^rdfs:Literal,“核”^^rdfs:Literal,“受精卵 "^^rdfs:Literal,"細胞分裂"^^rdfs:Literal))
?Item rdfs:label ?label_Item. ?Item cur:hasItemNumber ?Num_Item. }
SELECT COUNT(*) WHERE {
?Item1 cur:hasBrushUp* ?Item2. ?Item1 cur:hasItemNumber ?Item1_No. ?Item2 cur:hasItemNumber ?Item2_No. FILTER(?Item1_No=“162"^^xsd:decimal) FILTER(?Item2_No="48"^^xsd:decimal) }