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都市鉱山から人工鉱床への展開

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都市鉱山から人工鉱床への展開

著者

中村 崇, 柴田 悦郎, 白鳥 寿一

雑誌名

東北大学多元物質科学研究所素材工学研究彙報

64

1/2

ページ

65-72

発行年

2009-03-01

URL

http://hdl.handle.net/10097/48492

(2)

都市鉱山から人工鉱床への展開

中村 崇

*1

,

柴田悦郎

*1

,

白鳥寿一

*2

Development of Artificial Deposit from Urban Mine

By Takashi Nakamura, Etsuro Shibata and Toshikazu Shiratori

1

はじめに

金属資源もエネルギー資源同様サブプライムに発した世界的な金融恐慌の波にのまれ,需要が落ち 込み,価格も大きく低下し,高騰前の価格に逆戻りしている.しかしながら,中国やインドの一部は 明らかに経済成長へ向けて離陸しており,金融システムが落ち着きを取り戻すと,再成長をすると予 想される.本来,資源は数年の短期では,対応できないものであり,価格低下で問題が解決したとす ると政策ならびに対応の方針を誤る可能性がある.わが国は,本質的に自国の地殻中の地下資源を開 発し終わっており,もはや地下から採掘するわけにはいかない.金属資源の確保の可能性は,一つは 経済水域にある熱水鉱床であり[1],もう一つはいわゆる“都市鉱山”である.本資料は,都市鉱山[2] に関する最近の動きをまとめ,これから進む方向性を示すものである. 都市鉱山は,よくレアメタルと対になって使用される.そこでまずレアメタルについて整理を 行う.“レアメタル”を考える場合,その範疇に何を含めるかが重要である.端的に言えば,鉄, アルミニウム,銅,亜鉛,鉛以外はある意味ですべてレアメタルとなり,レアメタルの捉え方は 立場に寄って大きく変わる.資源エネルギー庁で所管の総合資源エネルギー調査会鉱業分科会 レアメタル部会では,備蓄を行っている7鉱種(Ni,Cr,Co,Mn,W,Mo,V)にPt, R.E. などを加 えて 31鉱種をレアメタルとしている [3].ただ,備蓄7鉱種は,鉄鋼の添加元素としての必要 量が大きく,一般のレアメタルのイメージとは異なる.多くの人のレアメタルに対するイメー ジは,元素としての発見が新しく資源量が少なく,そのためにコストが高く生産量が少ないと いうことである.例としては,ITO に使用されるInや磁石に使用される希土類金属(Nd,Dy) が挙げられる.しかしながら,希土類金属はそれほど資源の絶対量として少ないわけではない. 4.2 x109 Yen 912.8 x109Yen 1.5 x109Yen Value of products of critical metals Value of secondary products used with critical metals Total value of all productions Concerning critical metals

Fig.1 Comparison of value of products of critical metals to total value of all productions concerning critical metals. ただ地域的に偏在し,その意味では資 源確保上のリスクが大きい.資源確保 リスクの場合,どのような国が資源を 寡占しているかが重要である.Nbな どは大変な寡占状態であるが,現実に 供給障害が起こるとは考えにくい.資 源の供給制約ならいわゆる銅,亜鉛, 鉛の非鉄金属の方が厳しい可能性もあ る.その点を考慮し,最近はクリティ カルメタルの表現をとることも行われ ている[4].また,レアメタルの市場を 価格で見るとそれほど大きくない.貴 金属,銅,など非鉄金属を含むレアメ タル全体の価格とそこから直接生産さ *1東北大学多元物質科学研究所 *2東北大学環境科学研究科

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66 都市鉱山から人工鉱床への展開 第 64 巻 第 1,2 号

Demand of world market 1000

Im p o rt p ri ce $ /k g 0 5 10 15 20 25 30 60 80 100 120 140

Fig.2 Relationship between demand of world market and import price of rare earth metals.

れる関連部品価格,それが関与するすべて の産業の取引額を,産業連関表を用いて算 出したものをFig.1に示す.金属素材その ものの総額は,小さいが最終製品になると 900兆円を超し,日本のGDPの約70%に 近いことがわかる.しかしながらレアメタ ル価格は,大きな市場を持つ鉄やアルミニ ウムなどの金属と異なり,常に投機に影響 される.Fig.2にレアメタルの代表である希 土類金属の世界需要と輸入価格の関係を示 す[5].これから一時需要増で価格が低下し たことがわかる.この本質は,中国の中小 の企業の乱立により,一時生産夥多になっ たためと思われる.最近の価格高騰は,確かに中国の輸出規制の影響であるが,一時異常に供給過剰 の状態が起こり,価格が低下したが,需要の増加により適正価格に戻ったとも言える.投機対象から 外れても十年前のような低価格でいつでも手に入るとの認識は改める必要がある.

2

都市鉱山

[2]

「希少資源であるレアメタルの安定供給の鍵は,レアメタル資源国からの協力と共に,国内あるい は海外に蓄積したスクラップのリサイクル体制の確立にある」と今から21年前の1987年に当時東 北大学選鉱製錬研究所(現在の多元物質科学研究所の前身の一部)教授であった南條によって本資 料の前身である東北大学選鉱製錬研究彙報に記載されている.この指摘は,まったく現在の状況を 予言しているといえる.その中には的確に「レアメタルの重要性はハイテク産業の糧とも言われ, Natural Resources Primary Production Primary Materials Secondary Production Secondary Materials New Material Production Urban Materials New Materials Scraps Resource Recovery Valuables Collection Spent Materials Use Waste Disposal

Fig.3 Supply chain of resources. その供給ストップがその まま本邦の産業の停滞を 意味するまでになった」 とも記述されており,現 在でもまったくそのまま 何も変えずに使用可能で ある. その中でFig.3に示す よ う な 資 源 の リ サ イ ク ルチェーンを提案してい る.ここでも“もの”と しての流れが,いわゆる 現在議論されている動脈 から静脈を通して循環す る 循 環 型 の サ プ ラ イ チ ェーンが示されている. 公表された当時は,石油 ショックも治まり,資源 価格がそれほど高騰して いなかったこともあり,

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多くの人間がその重要性を認識できずにいた.しかしながら,その教えは連綿と受け継がれ,現在選 鉱製錬研究所の流れをくむ,多元物質科学研究所ならびに環境科学研究科で「都市鉱山」から「人工 鉱床」へと新たな展開を迎えている.

3

資源の動向

この数年続いた金属資源価格の高騰は,世界金融の信用収縮のために生産活動が急落し,その結果 を受けて急落した.金属資源価格,特に非鉄やレアメタル金属にとっては,下落,乱高下自体は,珍 しくないが,今回の場合は,非常に急激で,かつ国内企業にとっては円高も重なり,大変厳しい状況 になっている.しかしながら,金属資源の寡占状態が変化したわけではない.逆にこのような下落後 は,中小の体力がない資源会社や鉱山はつぶれるので,さらに寡占が進むことも予想される.現在の 経済状況は日本にとっても大変厳しい状況であるが,経済が回復した状況を見据えて,資源に対応す べきであり,逆に言えば資源確保のいい機会といえる. レアメタルの問題を議論するときにその資源の偏在性が取り上げられる.経済産業省がまとめた資 源の偏在の例をFig.4に示す[6].確かにかなりの元素が特定の国に集中している.この場合も何を対 象にするかで議論の内容が大きく異なる.現在,問題となっているのは主に中国に頼ってきた希土類, W,Inなどであり,同じように偏在しているTa,Nbはそれほど大きな問題となっていない.最近の 危機意識は,中国の資源政策の転換によるもので,場合によっては中国にとって戦略物質と認識され たら全面的な輸出禁止になる可能性があり,そのことが供給を受ける側の最大のリスクといえる.そ の対策は経済産業省資源エネルギー庁内の総合資源エネルギー調査会鉱業分科会レアメタル対策部会 で検討され,おおむね下記の4つの総合対策が重要との結論になった[6]. 探鉱開発の推進 レアメタル探査の強化を中心とした海外資源の確保 リサイクルの推進 いわゆる都市鉱山の開発 代替材料開発 特殊な希少金属を使用しなくても機能を出現させる材料の開発 レアメタル備蓄

W

94! in 2 countries

88% 6%

"#

16%

$%

88% $% 10%

"#

63%

&'

75%

&'

17%

REMs

93%

R. E metals

93! in China

Nb

98! in 2 countries

Ta

79! in 2 countries

Pt

92! in 2 countries

(5)

68 都市鉱山から人工鉱床への展開 第 64 巻 第 1,2 号 それぞれ,効果の出る時間軸が異なり,速効性は, の備蓄で,それから リサイクルの推進, 代 替材料開発, 探鉱開発の推進と続く.本来資源が関与する政策は,長期的視野が重要であり,この ように時間軸を考慮し,長期的な対策まで明示したことは大きな意味がある.

4

大量生産システムにおける資源

まず循環使用における経済性を考える.単価の高い金属でも十分なリサイクル率が得られていない. 特に比較的高価なはずの一部の非鉄金属やレアメタルのリサイクル率は十分でない.その理由はひと えにスクラップやそれらの含有している廃棄物の資源としての利用が難しいためであり,その本質は 排出される廃棄物からの回収物が大量生産システムに適用できないためである. 18世紀の産業革命以後,人類はそれまでの人力,畜力,水力,風力のほかに蒸気機関,内燃機関, 電気モーター,原子力など大きなエネルギーを制御できるようになり,装置の大型化を進め,効率の よい生産技術の開発に成功し,現在のような大量生産技術を確立した.おかげで多くの人口を養うこ とが可能な食料を生産し,中世では一部の貴族しか行えなかった豊かな生活を営むことが可能となっ た.したがって,環境問題でよく喧伝されている「大量生産,大量廃棄が問題である」との指摘は適 当でなく,正確には「過剰生産,大量廃棄が問題である」とすべきである. ところで,この現在の素材の大量生産システムと技術の本質を支えているのは,現在の資源のあり 方である.資源の一般的な定義は難しいが,素材資源に関しては「素材の元となる成分を高濃度に含 み,不純物が一定しておりかつ一定箇所に一定量集中して存在すること.」と定義できる.このように 現代は大きく二つの異なった性質を持たなくては資源と言えない.この二つとも重要であるが,大量 生産を可能ならしめているのは,後半の「不純物が一定しておりかつ一定箇所に一定量集中して存在 すること」にある.例えば銅鉱石の平均濃度は1∼ 2%である.この濃度は決して高濃度とは言えな いが,硫化鉱であることを利用し,浮遊選鉱で高濃度に濃縮する技術を開発した現代では,この濃度 で資源足りうる.しかしながら不純物の濃度が一定し,量がまとまって存在することが必要である. 特に不純物の種類や量が一定していることで始めて大量生産システムの中に投入することが可能とな る.不純物の除去法は不純物の濃度によって大きく異なる.不純物が一定していないと言うことは, 原料が変わる度にプロセスを変える事を意味し,このような製造システムは組み立て産業ならまだ対 応可能であるが素材産業では不可能である.したがって,高濃度の鉱石でも不純物の種類や濃度が不 安定で,集中して存在しない場合は,標本としての価値はあるが,資源としては無価値となる.これ らのことを金属資源に限定してまとめた結果をTable 1に示す.平均品位では人工資源の方が優位で あるが,まとまっていない(収集が困難),品位がばらつく(不純物が一定していない)点が天然資源 に劣る.つまり,大量生産システム対応できない点である.

Table 1 Characteristics of natural resources and man-made resources.

Characteristics Natural resources Man-made resources Amount Enough, however, some of them

have to consider depletion

Insufficient, however, increase recently

Existence form Concentrated, most of them can be extracted effectively

Dispersed, higher cost for their collection

Content Low high

Impurity Relatively high but constant Relatively low but not stable Cost of extraction Low High

(6)

天然資源は現在の経済原理の中で採取可能と判断されたものが資源とみなされるのであるから「天 然資源がこのような特性を持っている」という言い方はおかしく,「このような特性をもったものを 発見して天然資源とみなしている」のが現実である.よくリサイクルは経済合理性がないと指摘され るが,現在検討されているリサイクルが必ずしも経済合理性を持ったものを対象としていないからで ある. 以上の問題点を解決するために現状の経済環境で資源化が困難な副生物,廃棄物を資源化のために は,一時期保管(Reserve)し,蓄積を行い,将来の原料(Stock)とすることが必要といえる.我々 は,そのような保管・管理を行うことを“人工鉱床を作ること”と考えている.具体的に人工鉱床は, ある種の中間処理物の資源化目的の管理場所といえる.

5

資源循環のための人工鉱床作成の試み

都市鉱山の概念は,前述したように南條[2]によって提唱された.我々は,その後20年経過した今, 都市鉱山の重要性を再確認しながらRtoS(Reserve to Stock,「人工鉱床構想」)を提唱し,新たなリ サイクルの構築について検討している[7].今までのリサイクルは,基本的に廃棄物の削減の中を目的 とし,有価金属を回収しその処理費用を少しでも削減しようという思考の中から行われてきた.これ に対し,「人工鉱床構想」は,金属資源の循環をより全面に押し出し,より多くの金属資源を回収する 考え方を推進してみようとする試みである. この構想を進めることを考慮し始めたのにはいくつかの背景がある.一つは,これまで述べたよう に非鉄メジャーの巨大化により,少数の企業による資源の寡占化が進んできたことや,いくつかの国 において金属資源について国家管理が始まってきたことにより,我が国の産業界が容易に資源を買い 求めることについて困難になりつつあることである.二つめは,一部の国々に偏在するレアメタル類 が我が国の高度な工業生産品を支えており,これらの金属の消費は世界的に見ても日本が最大消費国 であるにかかわらず,それらを回収できるリサイクルシステムが根本的に存在しないという事実であ る.そして,これら金属を含むいわゆるハイテク製品は,使用後アジア圏に流出してしまうことによ り,共存する有害元素の管理や回収工程で使用される物質の管理も主導的にできないようになりつつ あることである.これらを象徴する出来事は最近のニュースにも多く,一部金属の供給不安がでたり, 中国での金属回収過程で有害物質の漏洩があったりということは記憶に新しい. レアメタル類のリサイクルを考える場合には社会の変化を十分に考えておく必要がある.すなわち, 鉄や銅,亜鉛やアルミニュウムといったベースメタルは電力や構造物などの都市インフラを構築する ものとして利用されてきており,比較的一定品質のものが大量に集めることも可能で,現在のリサイ クルのシステムが構築されてきた.一方,レアメタル類は最近のハイテク製品の中に使用されること が多く,個人消費財として広く薄く社会に拡散している事実がある.現状,金属中でも比較的集めや すいもの,かつ,既存の回収システムで回収が可能な金・銀・銅程度が行われているが,レアメタル のリサイクルには経済的に無理があり,従来の回収システムから外れたものは廃棄物となるか,ある いは,環境規制が厳しくない近隣国に流れる結果になっている. 1998年のデータによれば,EUにおいて国民一人当たり年間14kgのWEEEを廃棄しており,年間 総計600万トンとされていた[8].WEEEが当時より毎年3∼ 5%増加しているという報告から推定 すると,現在ではこの数字は,年間20kgに迫るものと推定できる.我が国においての廃棄量を推定す るに当たって,実際に国民一人あたりの排出がどのようになっているかは,重要と考えられる.この ような集計は行われていないため,まず,この重量試算を行った.その手法は,非常に粗いが,製品の 出荷統計から推定を行った.詳細は報告しているのでそちらを参照していただきたい[9].結果の一例 として推定した金属量をTable 2に示す.プリント基板とその関連配線での使用が多いCu・Pb・Sn および貴金属について,マテリアルフローの不明分との比較を示した.これには各金属のリサイクル

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70 都市鉱山から人工鉱床への展開 第 64 巻 第 1,2 号

Table 2 Estimation of metal amounts from man-made resources in Japan. Metals Category amount(t) Recycle

ratio Unknown amount Estimation amount(t) Remarks Au Electronics/ machine 134 40% 80.4 42 Ag Electronics/ photo 672 30% 470.4 670 Except battery Pt Electronics/ catalyst 1.9 30% 1.33 1.5 Pd Electronics/ catalyst 7 30% 4.9 3.7 Cu Wire/ Electronics 1530000 90% 153000 110000 Pb Battery/ solder 39000 30% 27300 10300 Including pigment Sn Sloder/ Electronics 12400 30% 8680 5300 Zn Galvanizing/ battery 6800 25% 5100 11900 No Consideration of Galvanizing Ni Electronics/ battery 4800 25% 3600 7000 No Consideration of super alloys Cd batter 600 25% 450 220 Co Magnetic/ battery 11070 20% 8856 unknown Ga GaAs,GaP 53 20% 42.4 23 In ITO,solder 486 90% 63 46 Ge Fluorescent material 7700 20% 6160 unknown Ta condenser 205 20% 164 133 RE(Nd,Sm,Dy,L) Magnet/ battery 4000 20% 3200 unknown 率も考慮してある.この際,リサイクル率が推算されている例もあったが,ほとんどのものは明確で なかった.したがってここでは,EEE(electrical and electronic equipment)として製品となって市

場に出たものがWEEEとなった場合のポテンシャルを算定することが目的のため,工程スクラップ などでリサイクルされるものは,WEEEに関与しないとし,一般的には使用量の20∼ 30%程度を除 いたものがEEE化されるとした.マテリアルフロー上では,Cuは電線・伸銅,Pbは,はんだ,Sn は,はんだ・電子部品・伸銅品に使われたとされるものとの比較である.Cuについて電線はいわゆる 送電のためのものを含まないが,WEEE以外の使用先もあり,WEEEのポテンシャルはマテリアル フローでの使用量410,000tに対し,WEEEの使用量は約110,000tとなった.Pbについては,は んだでの使用量13000tに対し,積算値で約10000tとなり,近いものとなった.ただし,WEEE積 算側にはブラウン管などに使用されるPbガラスが含まれているため,はんだ由来は5300t程度と想 定されること,また,諸外国でよく言われるWEEE中のPbの環境負荷を論ずる場合には,塩ビ・塗 料に含まれWEEEに使われるPbも考慮しなくてはいけないことについて注意しておく必要がある. Snははんだと伸銅(真鍮)なので,CuやPbより近接した値がでた.比較的用途が明確で大量に使 用されている金属の比較では具体的に説明できる範囲の結果となったため,この前提条件を貴金属類 にも当てはめて実施した結果も合わせてTable 2に示した. これらの金属は使用量が少ないが,用途に対する使用量がある程度はっきりしているため,WEEE 積算を行った結果はPt,Pdでは近いものとなった.しかしながら,今回の積算結果はAuでは少な め,Agでは多めとなった.Auではマテリアルフローでのカテゴリーが電気通信・機械部品であるこ

(8)

とや,Agでは,酸化銀電池のWEEE中での使用量があいまいなことが原因としてあげられる. 述べてきた推算結果は,各ステージで多くの仮説が入っており,その精度は高いとは言えないし,そ の一つ一つの仮説について細かく議論することは意味のないことであると考える.ただし,各非鉄金 属のマテリアルフローの不明は,おのおのの金属で若干の違いはあるにせよ,WEEEの非鉄金属ポテ ンシャルと明確に関連があることはわかった.次に注目しておきたいのは,その絶対量である.Cuに ついて言えば,年間消費量140万tのうち,推定値で11万トンがWEEE起因,Pbについては,1万 トンであり,管理されるとはいえ環境面での考慮が必要である(PbについてはRoHS指令により,今 後改善する可能性が想定される).また,Auについては推定値で40tが廃棄されてしまっていること になることはこの金属の価値や,エコロジカルリュックサックの大きさから考えると,経済的のも環 境的にも問題である.このため,より回収を強化して,リサイクル率を高めていくことが重要である. そのため,RtoS研究会では,廃電気・電子機器のうち家電リサイクル法で回収されない小型の機器 である廃小型電子機器(Small Domestic Applicant, SDA)について,リサイクル技術の開発試験に供 する機器の対象年度を決定すると共に,試験試料を得る目的で回収試験を昨年度実施した.この試験 は秋田県の協力を得て,秋田県大館市(人口8万人)において全市民を対象とした一種の社会実験であ る.大館市に白羽の矢が立ったのは,市内に家電リサイクル工場があり,産業廃棄物の中間処理・最 終処分場,製錬の前処理などができる一連のインフラがあたため,市が一般廃棄物の取り扱いを認め ることで,どのような事態にも対処できると考えられたからであった. 2006年12月末から3月末までの3ヶ月間実施したSDA収集予備試験では,集荷された重量は約 7t,個数は約5000個であり,重量の85%は不燃ゴミ,ポストは15%,個数からは,不燃ゴミからは 36%,ポストからは64%,公民館18%であった.地域性やポストなどが市の全域に行き渡ってはいな いことなどもあり,電気製品の生産量=廃棄ポテンシャルの推計結果と比較し,量的には充分とは考 えられないが,予備試験の結果からは以下のようなことがわかった. 実施した粗大ゴミからの家電品ピックアップと一般設置ポスト収集方式ではそれぞれの特徴が あるが,両方を合わせることで全商品範囲の収集には有効であること.また,収集に関して盗 難など大きなトラブルはなかった. 収集品の解析では,市場的に消滅している商品の廃棄が急激に行われており,より早く収集シ ステムを構築しなければ,これらに含まれる金属資源がノーリターンとなる危険があること. 小型家電の廃棄品はかなり年数に幅があり,技術開発の資料の絞り込みも今後必要であるとと もに,その解析のための試料の総量はまだ不足していること. これらのことからは,一般廃棄物としてのノーリターン化や海外流出を防ぎつつ,社会システムの 構築のためのデータを得るためには,早期に範囲を広げていくことが重要である.幸いにも大館市内 では市民権を得てきており,新たな仲間として,ニプロ,ニプロファーマの工場と,デンコードー, K’sデンキの電気量販店が加入,皆が何とかできるシステムを作ろうというポテンシャルが内在して いると考えられる. 2007年は北秋田エコタウン(40万人)の範囲で実験を行い,2008年は秋田市を中心とした県中央 地域,大曲・横手を中心とした県南部地域に試験範囲を広げて,より詳細なデータを得ることを計画 している. その外,2008年12月からは従来の経済産業省だけでなく,環境省の支援も受け,新たな地域での 収集実験の拡大を検討中である.また,回収後の資源化技術については,2007年から経済産業省の補 助金を受け,行政独立法人 石油天然ガス・鉱物資源機構の中で解砕,その後の個体分離,さらに最終 的な製錬技術の一部まで一貫したプロセスの開発を目指し,研究を推し進めている[10].

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72 都市鉱山から人工鉱床への展開 第 64 巻 第 1,2 号

6

まとめ

レアメタルの資源状況の概説を行い,これからは以前のような安価な資源が簡単に手に入る状況に は戻らないことを示し,その対応策として鉱山開発やリサイクル促進,代替技術開発の必要性を強調 した.

我々が提案しているRtoS(Reserve to Stock,「人工鉱床構想」)は,金属資源を廃棄物からではな く鉱石として扱うことで,リサイクル可能性の拡大,将来への備蓄の概念,環境負荷低減を実施でき るようにするためのパラダイムの転換である.これには,今回取り上げたWEEE(廃電気・電子機 器)以外にも,より低品位なものを回収することも含まれる. 現在,収集試験に関しては,環境省と経産省の支援を受け,秋田から飛び出してさらに拡大してい る。我々は,提案している人工鉱床の基本的な概念を理解してもらい,地域に適した手法で広く展開 されることを望んでおり,これをきっかけに全国に広がり,真に日本のレアメタル資源の確保と環境 保全の両立ができることを希望している。

文 献

[1] 平成20年度 総合資源エネルギー調査会鉱業分科会資料, (2008) [2] 南条道夫:東北大学選鉱製錬研究所彙報,43, 239(1987) [3] 独 立 行 政 法 人 石 油 点 ガ ス・金 属 鉱 物 資 源 機 構 資 料 『 レ ア メ タ ル 備 蓄 デ ー タ 集 (31鉱 種)』(2005) http://www.jogmec.go.jp/mric web/organization/japan/g3/shiryo haihu page/haihu.html

[4] クリティカルメタル対策に関する提言(2007)11月 技術同友会

[5] 平成19年度鉱物資源対策調査報告 経済産業省 資源エネルギー庁 鉱物資源課(2008)

[6] 平成18年度 総合資源エネルギー調査会鉱業分科会 資料(2006)

[7] 白鳥寿一,中村崇:資源と素材, 122, 325, (2006)

[8] Questions & Answers on EU Policies on Electric and Electronic Waste   EU Press Release MEMO/05/248, Brussels, 11 July 2005 http://europa.eu.int/rapid/pressReleasesAction.do?

[9] 白鳥寿一,中村崇:資源と素材, 123, 171, (2007).

[10] 小 型 廃 電 子 機 器 か ら の 希 少 金 属 回 収 技 術 開 発 独 立 行 政 法 人 石 油 点 ガ ス・金 属 鉱 物 資 源 機 構 (2007) http://www.jogmec.go.jp/jogmec activities/technology metal/recycling/index.html

Table 1 Characteristics of natural resources and man-made resources.
Table 2 Estimation of metal amounts from man-made resources in Japan.

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