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光学超薄膜偏光素子の開発と軟X線エリプソメトリーへの応用

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Academic year: 2021

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光学超薄膜偏光素子の開発と軟X線エリプソメトリ

ーへの応用

著者

山本 正樹

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光学超薄膜偏光素子の開発と

軟Ⅹ線エリプソメトリー-の応用

(研究課題番号 09555007) 平成9年度∼平成1 0年度科学研究費補助金(基盤研免粛研究成果報告書 平成11年3月 研究代表者 山本正樹 (東北大学科学計測研究所)

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はしがき

偏光Ⅹ線は,原子・分子から固体・表面までのスピンの偏りや磁気的電子的対称性を研 究する強力な武器となる.特に,近年の放射光光源では,直線偏光や円偏光を直接発生で きるため,偏光Ⅹ線の科学は大きく進歩している.これらの光源側の発達に比べて,検出 器側での偏光計測は大幅に遅れていて,偏光Ⅹ線の偏光状態を計測・制御するための偏光 子や位相子などの偏光素子の開発が強く望まれている.現在,波長が30mm (光子エネル ギーで40eV)程度までの真空紫外領域では,従来の3 -4回反射型の偏光素子が見直され, 磁性原子の磁気円2色性の測定などに使われている.しかし,波長が約30nmを切ると反射 率が極端に低下して,最も有用な内殻吸収領域に入ると従来型は使えない. このような状況を背景として,本研究では, 1.軟Ⅹ線用の光学超薄膜偏光素子の性能 を向上し,軟Ⅹ線領域の偏光計測・制御の実用化をめざす.また,これと平行して, 2・ 光学超薄膜の物質対と周期膜厚を最適化し,適用波長域を広げる.さらに, 3・開発した 高性能偏光素子を使用して軟Ⅹ線エリプソメトリーの精度を上げて,これを新しい表面分 析法として発展させることを目的として研究をおこなった.その結果,各項目で次の成果 を上げることができた. 1.では,波長1 3nmでの透過型の1/4波長板と1/2波長板を, Mo/S iの基 板無しのフリースタンディング多層膜で実現できた.偏光特性は,放射光を光線として反 射型多層膜直線偏光子を用いた回転検光子エリプソメトリーで評価した. 2.では,従来は高々数%の反射率に留まっていた水の窓領域の多層膜反射鏡の高反射 率化に取り組んだ.物質対にはScに対して, Cr, Ni, Si, C, Alを選び, 20

0層試料で試作して周期性の最もよいS c/C rの組み合わせについてさらに研究を進め た.最終的にはECR方式のスパッタリング装置の成膜速度を安定化して, 5 0 0層を成膜 時間で制御し,成膜時の基坂温度を最適化した7 0℃で成膜して,波長3. 1 mmで反射 率1 5%を達成した. 3.では,消光率0. 00 1の偏光子で, 40mmの厚さのMo薄膜を試料にして親測さ れた共鳴条件を,理論的に解析し,膜厚で0. 01nm,屈折率で0. 001,消衰係数 で0. 0001の感度が得られることを明らかにした. 本報告書は,平成9年度, 1 0年度の2年間にわたって進めてきた研究の成果のうち, 2の水の窓用の高反射率多層膜の開発について述べるとともに,すでに出版済みの成果に ついては,研究論文の別刷りを加えて報告に代えた.軟Ⅹ線多層膜を利用した軟Ⅹ線光工 学の発展に向けて,本報告が役立てば幸いある.

研究組織

研究代表者:山本正樹(東北大学科学計測研究所)

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研究経費

平成9年度: 4, 900千円 平成10年度:7, 200千円 計 12, 100千円

研究発表

(1)学会誌等

A simple accurate method of aligⅧent of beamline optics with the use of EUV

multilayer polari2ierS: M. YamaDOtO, M. Furudate, M. Yanagihara, and H・ Kimura:

∫. Synchrotron R礼d. 5, 696-698 (1998).

Ellipsometry in the extreme ultraviolet region yith multilayer polariZierS:

M. Yamamoto and M. Furudate: Thin Solid Films 313-314, 75ト755 (1998).

軟Ⅹ線多層膜と応用の現状:山本正樹:精密工学会誌, 64, 996-999 (1998). 軟Ⅹ線ポラライザ-の最前線:山本正樹:レーザー研究, 25, 367-370(1997). 軟Ⅹ線エリプソメトリー:山本正樹:日本物理学会誌, 52, 687-693 (1997). 光学超薄膜による軟Ⅹ線光学の新展開(Invited) 一多層膜光学素子で実現される波長1 0 nmの超光学一 山本正樹,柳原美康,渡連誠

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(2)口頭発表

A Simple Accurate Method of Alignment Of a Beamline Optics vith Use of EUV Multilayer Polarizers: Masaki Ya皿a皿OtO, Minaji Furudate, Mihiro Yanagihara, ・and

Hiroaki Kimura: Int. Conf. Synchrotron Radiation Instrumentation '97, 1 9 9 7年

8月,東京

Ellipsometry in the Extreme Ultraviolet Region with Multilayer Polarizers:

Masaki Ya皿a皿OtO, Minaji Furudate, and Ko Maya皿a:

Int. Conf. on Spectr. Ellipsometry, 1997, May, Charleston

EUVエリプソメトリーによる金属層構造の超高感度計測 山本正樹,古館三七二 応用物理学会, 1997年10月,秋田 光学超薄膜による軟Ⅹ線光学の新展開(特別講演) 一多層膜光学素子で実現される波長1 0 nmの超光学一 山本正樹,柳原美虞,渡連誠 OpticsJapan'97, 1997年9月,仙台 水の窓領域の高反射率多層膜鏡の開発 坂野究,羽多野忠,古舘三七二,堀田善文,梅津裕生,柳原美康,山本正樹 応用物理学会, 1998年10月,広島 レーザー生成プラズマ光源軟Ⅹ線分光計によるイメージングプレートの感度評価 古館三七二,山本正樹 応用物理学会, 1999年3月,野田 軟Ⅹ線結像鏡用の多層膜分布制御シャッター機構の改善 梅津裕生,山本正樹 応用物理学会, 1999年3月,野田

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第一章 序論

波長にして数十nm以下と可視光線より短い光である軟Ⅹ線を利用すれば、 回折ボケが小さく高分解能の顕微鏡を実現できる。また、この光は物質によく 吸収されるという特徴を持っている。気体にも吸収されるので、光路を真空に しなければ伝播せず、バルクには透過しない。この特徴から、軟Ⅹ線に対して は、従来の可視光領域で用いられているレンズのような透過型の光学素子がな い。従って必然的に反射型の光学系にしなければならない。ところが、軟Ⅹ線 領域では物質の光学定数は真空の光学定数である1とあまり違わないという特 徴も持っており、波長が短くなればなるほど1に近づいていく。本研究で取り 上げる波長3.110nm (光子エネルギー398.6eV)での物質の光学定数を図1-1 に示す。これらはアメリカのローレンス・バークレー研究所がインターネット で公開している光学定数(以下、 「バークレー研究所公開の光学定数」もしく は「CnOのデータ」と呼ぶ)である〔1-1〕o 0.010 0.008 0.006 0. 004 0. 002 0.000 -0. 002 0.990 0.995    1.000 n 1.005    1.010 図1-1波長3.110mm (光子エネルギー398.6eV)での 米国バークレー研究所が公開している光学定数

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例えばこの図の光学定数を用いてバルクの直入射反射率を計算すればlo-6 オーダーの値となる。従って、軟Ⅹ線に対して直入射で高い反射率を持つ鏡が 開発されない限り性能の高い直入射光学系の実現は不可能である。そこで、多 層にして反射面を増やし各面からの反射光に強め合いの干渉を引き起こさせて 反射率をかせぐ軟Ⅹ線多層膜鏡が考えられた。 軟Ⅹ線多層膜鏡を使用することで、放射光利用〔ト2〕やⅩ線望遠鏡〔ト3〕、 Ⅹ線顕微鏡〔1-4〕、 Ⅹ線リソグラフィー〔1-5〕用の縮小光学系などに、直入 射光学系が発展してきている。しかし、この発展は軟Ⅹ線領域の中でも、主と して波長12nm付近に限られている。それはこの波長領域ではSiやBeのLお よびK吸収端を利用したMo/ SiやMo/Be多層膜反射鏡により、 60%程度の 直入射反射率が容易に得られるようになったからであり〔1-6〕 〔1-7〕 〔1_S〕、 それ以外の波長領域では約30%以下しか得られていない(図1-2)。また、炭 素のK吸収端(波長4.363nm、光子エネルギーにして284.2eV)より短波長領 域では殆ど未開発の状態であった。 1   -    8   1D  12        コ8 人(nm) Zl Zd 図1-2 軟Ⅹ線多層膜鏡による到達反射率の現状 2 a D u a P . 6 u 〓 t 2 E J O u l t 2 ( % ) × 吋 ∈ t J

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一方で、近年軟Ⅹ線領域の中でも特にwater window領域でのⅩ線顕微鏡に 関心が寄せられているoこのwaterwindow領域とは、酸素のK吸収端(543.1eV) と炭素のK吸収端(284.2eV)に挟まれた波長2.283-4.363nmの領域であり、 この波長領域の光は酸素のK吸収端波長よりも長波長であることから水 (H20)を比較的透過し易く、炭素のK吸収端波長よりも短波長であることか ら炭素に吸収され易い。そして、波長が短いことからおよそ9mmの回折限界 が期待できる。この二つの特徴から、生体試料(癌細胞など)を乾燥させずに 生きたままの状態で、しかも分子レベルで観察できる顕微鏡の実現が原理的に は可能であり関心が寄せられている〔1-9〕。しかし、波長が短いと周期長が小 さく多層膜の膜厚制御が難しいし、界面での拡散や粗さによる散乱が増すため に〔1-10〕 〔1-11〕 〔1-12〕、この波長領域においての多層膜反射鏡の開発状況は 悪く、入射角が直入射領域では3%程度の反射率しか達成されていない〔1-13〕。 一般に、 Ⅹ線の望遠鏡や顕微鏡で採用される二回反射の光学系(Schwarzschild 光学系など)では、スループットは最低でも入射光の1%は欲しいと言われて いる。従って、使用する反射型光学素子は10%以上の直入射での反射率を実 現しなければならない.本研究では、 waterwindow領域を狙った、軟Ⅹ線用多 層膜反射鏡の開発を目指している。 図112からもわかるが、一般に多層膜反射鏡は二つの構成物質のうち、片方 の吸収端の長波長側近傍で反射率が得やすい特長を持っている。これは、原理 は後述するが、吸収が小さくなるために光の侵入深さが大きくなること、分散 現象により他の物質と光学定数の絶対値の差を大きくとりやすいことに起因し ている.この特長から、本研究ではwater window領域内に吸収端を持つ物質 の中からSc (スカンジウム;光子エネルギー398.7eV、波長にして3.110nmに L吸収端を持つ)に注目し、 Scを用いた波長3.110nm付近の軟Ⅹ線用多層膜 反射鏡の開発に取り組んだ。

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第二章 目的

本研究では、 waterwindow領域内にあるSc L吸収端(波長3.110nm)を利

用した、 10%を超える反射率を持つ軟Ⅹ線多層膜反射鏡を開発することを目的 とする。

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第三章 軟Ⅹ線多層膜反射鏡の設計

3-1多層膜鏡の計算法

軟Ⅹ線多層膜反射鏡の原理は、可視光領域用の多層膜光学素子の設計に用 いられる多重反射干渉の式を吸収体に拡張すれば良い〔3-1〕。勿論、波長は二 桁程度短いので各層の膜厚は数nmと数原子層程度となる。ここでは平行平面 板モデルを考える.まず、基板に薄膜を一枚積層した単層膜を考える。この際、 膜内部での多重反射を考慮する必要がある。図3-1-1(a)のような平行平面板モ デルでは、真空に対する複素振幅反射率Rlを、二面でのフレネル係敬(基板 と薄膜の界面ではr。、薄膜の真空に対するものをrlとする)と膜内部を-荏 復する際の光路差に対応する位相差6 1を用いて次のように記述できる。 R.= r. + r. exp(-iS.) 1 + r.r. exp(-iS.) 61 - (42dl /A)NI COSQl (31111 ) (31-2) 但しd lは単層膜の膜厚、九は光の波長、 N.は薄膜の光学定数(N-n-ik)で ある。

Rl

図3-1-1(a)単層膜モデル

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単層膜モデルを多層膜に発展するには、 j層の多層膜を考える時、 0-1)層ま でをフレネル係数Ri_lの基板であるとみなせばよい(図3-1-1(b)).複素振幅反 射率は以下のように記述できる。 r)・ + Rj_. eXP(-i6j) 1 + r,R,_1 eXP(-i6,・) 6J = (42d, /A)N, cos少, (313) (314) (3-ト3)式は、それぞれ真空に対する複素振幅反射率、およびフレネル係数 を用いて次式のように変形できる。 R = rJ・(1 - rjR,_.) + (Rj_. - rj)exp(-i6j) I 1-rJ・R,_. +r)(Rj_. -r,)exp(-i6)) (311-5 ) ここで出来るだけ高い反射率を得るためには、反射面を出来るだけ増やすこ と、各界面からの反射を出来るだけ大きくすることが必要になる。前者を満足 させるには共に消衰係数kの小さい二物質を多層膜の構成物質として使用し、 入射光の侵入深さを大きくすれば良い。後者を満足させるにはJ n-ik lの差 が大きい二物質を選択すれば良い(物質対選択則) 〔3-2〕。また、習慣的に消 衰係数が小さい方(吸収が小さい方)の物質をスペ-サー、他方をアブソーバ ーと呼んでいる。 図3-1-1(b)多層膜モデル 6

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3-2 短波長領域での難点 短波長領域用の軟Ⅹ線多層膜鏡の開発は世界的に見ると数多く試みられて いると考えられるが、発表件数はわずかで高反射率が得られていない。この理 由として、入射波長が短くなるため各層の膜厚が約1nm以下と薄くなること に付け加えて、主として次に挙げる二つの原因があると考えられる。 3-2-1積層数の増大 図3-2_1は反射率が高くなるように、膜厚を最適化しながら層数を増やして 行った際に到達反射率がどのように変化していくのかをシミュレートしたもの である〔3-3〕。 80 1 00    200    300    400    500 Number of pa]rs 図3-2-1最適化計算 計算プログラムは研究室で開発されたものを使用した。また、光学定数にはバ ークレー研究所公開の値を用いた。波長はSc L吸収端である3.110nmで、直 入射角は150で行った。これにより、理想的な構造を持つ多層膜鏡の反射率 0               0               0 6 4 2 ( % ) 9 3 u e 1 3 a ] I O t ] ・ S 0 0

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射率が得られている波長12mm程度の軟Ⅹ線に対する多層膜鏡では、 Mo / Si などの組み合わせで計算すると、 50周期程度で約S0%の反射率で飽和状態を 示す。従って、波長3nm用の多層膜鏡では12nmのものと比較して必要な積 層数が大幅に増大する。積層数が多いと言うことは、周期長(もしくは入射波 長)に対する累積誤差が大きくなり干渉効果が弱くなり易いということである。 3-2-2 界面粗さによる反射率減衰が増大 一般に多層膜の界面粗さによる散乱損失は下記のDebye-Waller型の振幅減 衰係数〔3-4〕 〔3-5〕 (以下DWFと略する)で記述されている。 R/R. =exp 42W COSQ )2) `3叫 ここで、 R.は理想的な構造の多層膜鏡の反射率、 Rは実際に得られる反射率、 UはrmS粗さ、 ¢は直入射角であるo入射波長九が短くなれば、 Dwrは小さ くなり、損失は増大する.図3-2-2は¢-150 でのUに対するDWFの変化を 計算したものであり、反射率の減衰がorにとても敏感なことがわかる。 0.0  0.1  0.2  0.3  0.4  0.5  0.6  0.7 r.m.S. roughness (nm) 図3-2-2 Debye-Waller factor 8 8           6           4           2 0 . 0 . 0 . 0 . ( J o t u t 2 J J e l I 空 く r I a ^ q O Q ) O t ] ] ∝

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第四章 軟Ⅹ線多層膜鏡の作製

4-1成膜装置

本研究では、図4-1-1に示すェリオニクス社製イオンガンを備えたイオン ビームスバッタ装置(以下IBS装置と略す)を成膜に用いた。本装置の特徴

は、三機のECR (Electron Cyclotron Resonance)イオンガンを備えている点に ある。そのうち二機(スパック用イオンガン)は各々ターゲットに対して450 でイオンビームが入射するように配置してある。この二機は、 MoもしくはC 材の高加速電極を装着し、最大2kVまで加圧電圧を印加できる。一方、残り の一機は試料基板に対して450 でビームが入射するように配置してあり、電 極の選択によってイオンビームミリングまたはイオンビームアシストができる。 本研究ではこの一機は使用しなかった。排気はロータリーポンプとターボ分子 ポンプ(1500L/sec)で行っており、最高到達真空度は3.0×10 7Tb汀である。 ターゲットは水冷された三角柱型ホルダーの側面に固定する。 70×SO mm の板材を最大3枚取り付けることができる。多層膜成膜の膜厚はスバッタ蒸着 レートが一定として成膜時間で制御している。物質の切り替えは所定の時間に モーターでターゲットを1200 回転駆動して制御する。このターゲットの周囲 にはターゲットと同程度の大きさの二枚のカーボン板によるシールドを配置し ている。これは、イオンビームが電極から出射しターゲットに衝突するまでの 間に発散し、チェンバー(SUS製)内壁や内壁保護用のAlホイルなどがスバ ッタされて成膜試料に不純物として混入する恐れがあること-の処置である。 シールド材がCであるのは後に実証するが、イオンビームの加速電圧がlkV の場合にCのスパック蒸着レートが他の物質に比べて一桁程度低いためであ る。詳細は〔4-1〕を参照されたい。

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Assist or Milling longun

図4-トl IBS装置(上;平面図、下;側面図)

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サンプルホルダー後方には赤外線導入加熱装置(サーモ理工製; R-1000GA)が取り付けてあり、真空中で試料基板を裏面から局所的に加熱する ことができる。この装置は金を蒸着した回転楕円ミラーで、焦点の一つに配置 した赤外線ランプの光を、もう一つの焦点に配置した石英ロッド端に集光し、 この赤外線をロッド中の全反射で伝搬させ、基板裏面に導いて基板の加熱を実 現する。この装置では抵抗加熱法と比較して雰囲気を汚染せずに加熱できる利 点がある。また、この加熱装置では、熱電対(クロメル・アルメル)での測定 温度値を一定に保つPID制御が可能で、実験的に求めた最適なp、 Ⅰ、 D値を 予め入力することにより、 ±0.2℃の範囲で温度を一定にできる。 チェンバーには二つの真空窓が取り付けられており、エリプソメーター用 の光路が確保されている。光源には、波長633 nmの5 mWランダム偏光タイ プHe-Neレーザーを用いた。直線偏光子には消光率10■のダラン・トムソン プリズムを使用し、移相子には雲母製の九/4板を用いたo 消光位置は肉眼視 によって決定した。 簡単にエリプソメトリー(偏光解析法)の説明をする。一般に試料に対し て斜めに直線偏光を入射すると反射光は楕円偏光になる。この反射偏光状態は 入射偏光状態に依存し、かつ反射面の光学特性を反映する。従って、入射直線 偏光の偏光方位が既知であれば、反射光の偏光状態(楕円偏光の形状)を解析 することで光学的に見た表面状態を推測することが可能となる。 楕円偏光は、直交する二軸成分の振幅比と位相差で記述することが可能で ある。反射光学系で基準となるS-、 p-成分で考える場合に、偏光を表す量とし て試料の複素振幅反射率Rs、 R,の比であるpを次のように定義するo p =Rp/Rs =tanV・exp(iA)   (411 ) このpを構成する二つの偏光解析パラメーター¢、 △を実験的に求めることで 光学特性からみた表面状態を解析することができる。 この偏光楕円の計測には大別して測光法と消光法とがあるが、本研究では 正確度に優れている後者の消光法を採用した。消光法について今回の測定で用 いたPSCA偏光解析法で説明する。 PSCAは光源から見た素子の配置順であり、

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だけずらす働きを持つ光学素子で、位相が相対的に進む方を進相軸、遅れる方 を遅相軸と呼ぶ。楕円偏光の長軸もしくは短軸を九/4板の進相軸もしくは遅 相軸に一致させることによって入射する楕円偏光をその楕円率に相当した方位 を持つ直線偏光に変換する.本研究では、九/4板の進相軸を450 の方位角に 固定し、試料から反射する楕円偏光の長軸が±450 に一致して直線偏光に変換 されて検光子で消光されるように、偏光子、検光子の方位角をそれぞれ0-900 、 1350 -3150 の範囲で消光位置を探した(ゾーン2測定)。消光時の偏光子と 検光子の透過軸方位が、それぞれ偏光解析パラメーターである¢ 、 △を導出す る量となる。 エリプソメトリー全般の詳細は、文献〔4-2〕を参照されたい。 4-2 予備実験 本格的な試料の作製に入る前に二つの予備的な実験を行った。一方は多層 膜試料の周期構造の向上、他方は界面粗さの抑制を狙ったものである0 4-2-1イオンガンの時間安定性 多層膜試料作製の際、予め物質の単位時間当たりの蒸着速度(スパック蒸 着レート)を測定し、スバッタ時間によって膜厚を制御する。従ってイオンビ ームに時間的な変動があっては具合が悪い。そこで、イオンガン内部のプラズ マの安定性が重要になってくる。 まずcr/ sc 150周期多層膜を作製したo この時の成膜条件をTable 4_2_a.に 載せる。なお、詳しい試料作製の方法は後述する.この試料のCu Kα線(波 長0.1542 mm)による小角Ⅹ線回折パターンを測定した。得られた回折パター ンを図4-2-1に示す。 12

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Table 4-2-a. Fabrication conditions (a) * 、、辿 + 拙ヽ、沌 剴 罎リv 義.■' !給榔…….…≡.≡.≡≡ 、キミ _対▲車溝. 珊‡"SSS 譜 論議、SBsss.壬:≡≡ 劔 §某∝RSK∝二重喜一… +甲日 秦 言,... 剪 0       5      10      15       20 28(○) 図4-2-1装置調整前作製試料の小角Ⅹ線回折パターン 多層膜が一定の周期長で格子状態にあるならば、光路差に対応する位相差 ((3-1-4)式)が2冗の整数倍となる入射角の時に強め合いの干渉が起こり、 鋭いピークが出現する。周期構造が不完全であれば干渉効果の低下に伴いピー クが低くなり、夷にブロードになったり割れたり非対称な形状になったりする。 従って図4-2-1のⅩ線回折パターンからは、多層膜がきちんとした周期構造を していないことがわかり、スバッタ蒸着レートが不安定なのではないかと考え られる。

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早い時には20分程度でイオンビーム電流密度値に不連続な変動が起こる。例 えば約0.80 mA/cm2から約0.55 mA/cm2に不連続に減少し、暫くすると約0.80 mA/cm2に不連続に戻ることが続く。イオンビーム電流密度値が不連続に落ち 込む前兆として、マイクロ波反射波が値にして±0.03%程度ふらつくことが見 られた。そして、イオンビーム電流密度値が不連続に落ち込むと同時にマイク ロ波反射波の値も不連続に変化する。真空槽内を覗いてこの変化を観察してみ ると、プラズマの光が明るくなったり暗くなったりしていた。 これらの不安定を改善するためにイオンガンに 1)分解し絶縁不良部分を洗浄する、 2)導波管部分のスタブチューナー(以下、スタブと略す)を調整する、 3)内部印加磁場を最適化する、 4)導入Ar流量を最適化する、 という調整を施した。図4-2-2にイオンガンプラズマ発生部の断面を示す。マ イクロ波導波管部分は石英窓を挟んで真空部分と大気部分が繋がっており、導 波管大気部分には三本のスタブがある。真空部分にはコイルが巻いてありイオ ンガン内部に磁場を印加する仕組みだが、その巻数はわからない。また、真空 部分にはイオン化ガス(本研究ではAr)が導入される。

スタブ

′′ィ、一、一 -誓由≒=誓=誓-宣誓=誓】 vツ ツ " 真空 ■ 哘7 i S ′ ′ ′ 大気 ′ ′ 劔

●●●●●●働 曝

′ ′ マイクロ波アンテナ 図4-2-2 イオンガンプラズマ発生部の概略図(断面) 14

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調整2) ∼4)は以下のように行った。まずマイクロ波の反射波が全くふら っかないところまでイオン化ガス(Ar)の流量を多くし、印加磁場を少しず っ変えてイオンビーム電流密度値を大きくする。このときAr流量は約1.00 sccm でイオンビーム電流密度値は0.55-0.60mA/cm2であった。次にマイクロ波の 反射波のメーターを見ながら少しずつゆっくりとAr流量を絞り、マイクロ波 の反射波にふらつきが出てきたらふらつきがなくなるようにかつイオンビーム 電流密度値が大きくなるようにスタブを調整し、次に印加磁場を少しずつ変え てイオンビーム電流密度値が更に大きくなるところを探す。 40-50分間程度 様子を見て、落ち着いているようなら、再びマイクロ波の反射波のメーターを 見ながらAr流量を絞り、マイクロ波の反射波にふらつきが出てきたらスタブ を動かし、印加磁場を変えてイオンビーム電流密度値が更に大きくなるところ を探すo落ち着いていないなら落ち着くところまでAr流量を増やし、同じ操 作を行う。以上の操作を、できるだけイオンビーム電流密度値を大きくするこ とを第-に、 Ar流量を減らすことを第二に考えて繰り返し行った.結果とし て図4-2-3(a)∼(C)に示す状態にすることができた。なお、これらのグラフの横 軸はプラズマを発生させてからの時間(単位は分)である。 0      60     120    1 80     240 Time (min.) 図4-2-3(a)マイクロ波の反射波の時間変動 ( % ) o > e ≧ 6 L U ! M -O u O ! 7 3 9 一 I a t J

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IIIlL lJ■■■JU -丁_T.-_丁----㍗---㍗----Rightiongunト llLll 60     1 20     1 80     240 Time (min.) 図4-2-3(b)右イオンガンイオン電流密度値の時間変動 ]Llll ー▼ー'▼▼▼''''''▼▼'▼ I llltl 60    1 20    1 80     240 Time (min.) 図4-2-3(C)左イオンガンイオン電流密度値の時間変動 16 ( l u 。 \ V u J ) 世 樹 喋 伊 < t J ・ 0 A r >       O L O 9       t V       8       7 0       0       0       0 0       ■ 0       0 l ′       t D t 〇 〇       〇       〇 I b       〇 一 〇       ■ 0 0       0 ( z u J D J V u ) 嘩 撤 喋 押 < 七 ) I 0       5 9       8 0       0 0       5 8       7 0       0 0       5       0 7       6     6 0       0       0 5       0 5       5

(22)

マイクロ波の反射波に関しては、プラズマを立ててから最初の数十分に変動 はあるものの、それ以降は右のイオンガンでは0.25%、左では0.38%を中心 に安定している。イオンビーム電流密度借に関しては、両イオンガン合わせて ±0.51%以内で一定にさせることができたo しかし、イオンガン立ち上げから 4時間経つと、左イオンガンのイオンビーム電流密度値が連続的に減少してき た。それ以降の変化については測定しなかった。以上から、プレスパックも入 れた全スバッタ時間は4時間以内にするのが良いと判断できる。また、反射波 値が安定していない最初の数十分はプレスバッタに利用した。このイオンガン の状態で再度cr / sc 150周期多層膜を作製した。この試料のⅩ線回折パター ンを図4-2-4に示す。図4-2-4では図4-2-1と異なり、試料の周期性が確認で きた。つまりスバッタ蒸着レートの安定性が向上したと考えられる。この時の 成膜条件をTable 412-b.に載せる。但し、スバッタ装置を使用すればイオンガ ン内部にもスパック粒子が蒸着し部品も削られるため、十回に一回程度はスバ ッタ前に微調整が必要である。また、スタブ位置の解(マイクロ波の定常波が 安定するモード)は当然幾つも存在するので上記の条件が最も安定する位置で あるとは言えない。

Table 4-2-b. Fabrication conditions (b)

訣ミ S+WR 8+3「罟4S「罎羌」、鐙+ 6「 剪 I...=小一.詣嵩L.,5=:i:::::喜il;て=J,繰=≒=:.: 劔 :5:A:-:.y::.,.、、:.:.小:,..-..〟.:≡:;:〉ブ:::.I.Jf.;きききき与i:i:-:I:-...:.:七一L,L=..LP(.三p≡ ・;::二S粧i掠,::.,-...-..A...▲`‥■''JIW'';:=ここ.柿::::≡::==p'::,:::.:L'=-=='さ=======-fゴ=.こ :2:.:.:-ち:.:.:∼:…;:聯:.:二:A.L;.>;.:, ミミ

(23)

105 104 103 102 101 0       5      10      15      20 28(o) 図4-24 装置調整後作製試料の小角Ⅹ線回折パターン lS

(24)

4-2-2 表面温度校正用のSiのp -Temp.測定 多層膜試料作製時の基板表面温度やスパック物質の蒸着速度によって、界面 粗さを抑制することが出来るという報告がある〔4-3〕。本研究ではこれに習っ て作製時の基板表面温度を変化させることを考えた。しかし実際の試料作製時 には、基板表面が蒸着面なので熱電対を取り付けることは出来ない。従って基 板裏面にて温度測定を行わなければならないため、表面の温度を知るためには 校正の必要がある。本研究で使用した基板は、透過型sc単層膜に使用する基 板以外は全て市販のSi waferである。 Siについては光学定数の温度依存性が報 告されている〔4-4〕。光学定数が変化すれば、反射光の偏光状態も変化するの で、エリプソメーターで消光法により基板表面温度と偏光状態を一対一で対応 付けることができる。このpの温度依存性測定を以下p-Temp.測定と呼ぶ。 試料として30×30 mmに切り出したSi waferの表面に銀ペーストで熱電対 を固定したものを用いた。レーザースポットが出来るだけ銀ペーストの近くに 来るように試料をホルダーにマウントした(図4-2-4)0 アルメルークロメル熱電対 図4-214 p -Temp.測定

(25)

測定はIBS装置の真空槽内で行った.測定時の真空度は5・0×10JTorrであ る。基板表面温度の昇降温は前述のPⅡ)制御で行った。熱電対の示す温度値 は15分程度で-定借に落ち着くが、表面温度の不均一さをなくすために つ の温度で最低でも1時間ホールドし、その度に偏光解析法で測定した。この際、 温度の影響を大きく受けるのはSiの光学定数の実部(屈折率n)であり、そ の結果偏光データではpの実部に顕著に変化が現れる。図4-2-5にp ITemp・ 測定の結果を示す。測定点は三次曲線でフィッティングできた((4-2-1)式)0 この曲線式を用いれば、実際の測定値に対して±1.6℃以内で20-650℃の範囲 で温度を決定できる.ここでTsubの単位は℃である. Tmb =aPep)3.bPep)2.C(Rep).d  (4121 ) α ≡ _3.5143×106 b =_23616xlO6 C ≡ _5.4384×105 d = _4.2254xlO4 (4_2_1)式により、試料作製を開始する直前に、エリプソメーターでSi wafer 基板表面を測定することで、その温度を知ることができる。 llll Si-wafer EZ ○ Bo○u EIg 0 llll _0.23   -0.22   -0.21   -0.20 Rep 図4_2_5 Siwafer表面温度とpの特性 20 0 0       o o o o 6 4 2 ( D o ) . d ∈ o J . 0 9 e J J n S R e s i d u a I ( . C ) 5         0         1 5

(26)

4-3 物質対選びおよび試料の作製 4-3-1物質対選び 前述したように、本研究ではScのL吸収端(波長;3.110mm)を利用した、 scをスペ-サーとする多層膜鏡を作製する。以下、図1-1、 3-2-1、 3-2-2を参 考にしてもらいたい。物質対選択則に従ってアブソーバーとなる物質を選んだ わけだが、例えばptを選んだ場合を考えてみるo 界面粗さUは抑えられたと しても0.3 nm程度であると考えれば¢-150 の時のDWFは約0.25以下とな る。 Pt/Sc50周期多層膜では膜厚が1.05/0.56mm (それぞれPt/Sc)で15.1% の理論反射率となる。これにDWFを掛ければ反射率は3.4%となり目標値に 達しない。 150周期多層膜のものを考えれば膜厚は1.20 / 0.40 mmで33.2%の 理論反射率となる。これにDwrを掛ければ反射率は8.3%となり、まだ目標 値に達してない。しかしこれ以上積層していく場合d,t< 0.40mmとなり、実際 に作製するのは困難であると考えられる。従って、 Ptを始めとしてAuやRu、 W、 Moなど、消衰係数の大きい物質は削除した。 以上の検討の結果アブソーバーとしてNi、 Cr、 Si、Al、 CおよびMgを選 択した。 4-3-2 多層膜試料作製 多層膜反射鏡の作製には全てDS装置を使用したo なお、成膜条件は全て

Table 4-2-b.と同じであり、基板には市販のSi waferを約30×30mmに切り出し

て使用した。また設計は多層膜偏光子(¢-450 )を除いて直入射角150 で 行っている(図3-2-1)0 スパック蒸着レート(以下Rateで表す)は以下のようにして導出したo 温 度操作を施さずに、異なった成膜時間で二つのCr / Sc多層膜を作製し(実際 には1周期でSc、 Crそれぞれ1分ずつで成膜したものと、 1分と2分で成膜 したもの)、 Ⅹ線回折ピーク位置よりそれぞれの周期長を求める(導出方法は

(27)

Rate(Cr)をまず導出したo次にRate(Sc)は変化しないものと仮定し、適当な成 膜時間でSi/ScとC/Sc、Al/Sc、 Ni/Sc多層膜を作製し、 Ⅹ線回折からそれ ぞれの周期長を求め、 Scの膜厚を差し引いてRate(Si)とRate(C)、 Rate(Al)、 RatePi)を導出した。但し、 Rate(Mg)を求めるためのMg / Sc多層膜も作製し たが、理論的に予想されるⅩ線回折ピークが現れず、導出することが出来なか った。実際に作製する波長3.110mm用多層膜の周期長はRate算出用の多層膜 のものよりも小さくなる事を考えれば、 Mg/ Sc多層膜がうまく作製できると は考えにくく、従って周期構造が得にくい物質対であると判断して作製をとり やめた。結果をTable 4-3-a.に載せるo Rate(C)は他と比較して一桁小さいこと がわかる。

Table 4-3-a. Measured sputtenng rates of each material

Rate (nm/min.) 劔 .39 劔 r 劔 R 剴2纉" 劔 縱 .08

(28)

150入射用に作製した試料とその設計値をTable 4-3-b.に載せる. Cr / Sc多 層膜は作製時の基板温度を室温から150℃まで、幾つか温度を変えて作製した。 その他の試料は基板温度操作を行わずに室温で作製した。なお、これらの多層 膜のことを後述する多層膜偏光子と区別するために直入射試料と呼ぶ0

Table 4-3-b. Multilayer samples and their design thicknesses

秦 Cr/Sc 劔 50 劔劔0.90/0.71 Ni/Sc 劔 50 劔劔1.03/0.58 Si/Sc 劔 50 劔劔0.89/0.71 C/Sc 劔 00 劔劔0.89/0.72 Al/Sc 劔 50 劔劔0.88/0.73 前述したように、膜厚はスパック時間で制御した。マイクロ波の反射波がふ らついている両イオンガンを立ち上げてから最初の数十分間(最低30分間) は、ターゲット表面をエッチングして酸化皮膜などを取り除くためのプレスバ ッタに利用した。基板加熱はスパックを開始する1時間以上前から行った。

(29)

第五章 軟Ⅹ線多層膜反射鏡の評価測定

5-1 Ⅹ線回折 ここでは、作製試料のCu Kα線(波長0.1542 nm)による小角Ⅹ線回折パ ターンを示す。 多層膜の周期長Dは、斜入射角8と回折次数mを(5-1-1)式でフイツティ ングすることにより求められる〔5-1〕o ここで、 0>lo であるo sin20=Am2+Bm+C 但し、 A=A2/4D2 B =αえ2/2D2 C =α2A2/4D2 +26 (5111) ( 511-2 ) (5113) (51114) ここで、 αは多層膜界面での反射による位相の跳びに相当する定数であり、 6 は多層膜全体としての光学定数の平均値である。また、ここで説明したⅩ線回 折ピーク位置からの周期長算出方法の特長として2次の係数Aは屈折率に依 存しないことがあげられる。しかし、ピーク本数が3本以上ないとユニークな フィッティングが出来ない。 図5-1-1(a)∼(e)はアブソ-バ物質を変えて室温で作製した直入射試料の回折 パターンである。使用したⅩ線回折計のⅩ線の強度はⅩ線管の電圧と電流の積 で与えられるので、測定時のⅩ線管の電圧と電流を0.50 ≦28 ≦2.00 の範囲 は20kVXIOmA、 1.90 ≦20 ≦6.50 では30kVX10mA、 6.40 ≦28では50kV x150mAに全ての試料で一定にすることで、単純にカウント数でピークの高 さ(反射率)を比較することができる。 Cr/ Scは3次ピークまで確認するこ とができた。 Si/ScとAl/Scは2次ピークまで、 C/ScとNi/Scは1次ピー クまで確認できた。 1次ピークが確認できた五つ全ての試料で1次ピーク高さ を比較すると高い順からCr/Sc、 Si/Sc、 Al/Sc、 Ni/Sc、 C/Scである。ただ

し、 C / Scは100周期多層膜であり、その他は150周期多層膜である。 2次ピ

ークが確認できた三つの試料で2次ピーク高さを比較すると高い順からSi/Sc、

(30)

cr/sc、Al/scである。 3次ピークはCr/Scのみで確認できた。理論計算によ れば、測定範囲内ではどの試料も3次ピークまで出現する筈である。従って、 scに対してのアブソーバーをCrとした時が良い周期構造を得られているとい う予測がつく。また、五つ全ての試料で4次ピーク以上は確認できなかった。 0       5      10      15       20 28(○) 図5-ト1(a) Cr/Sc150周期多層膜の小角Ⅹ線回折パターン 1 0 4       1 0 3       1 ( ) g u n . q J e ) s I N n O 3

(31)

5      10      15      20 28(○) 図5-日(b) Si/Sc 150周期多層膜の小角Ⅹ線回折パターン 5      10      15      20 28(o) 図5-1-1(C)Al/Sc 150周期多層膜の小角Ⅹ線回折パターン 26 ( l ! u n ' q J t 2 ) S ト N ⊃ 0 0 ( l ! u n J q J t 2 ) S ト N ⊃ 0 0

(32)

5       10       15       20 28(o) 図5-1-1(d) C/SclOO周期多層膜の小角Ⅹ線回折パターン 10       15        20 28(○) 図5-1-1(e) Ni/Sc 150周期多層膜の小角Ⅹ線回折パターン ( ) g u n + q J e ) s I N n O 3 o o N o r l ■                       r l 1 0 4     1 0 3     1 0 2     1 ( l ! u n J q J t 2 ) S I N ⊃ 0 0

(33)

Ni / Sc多層膜のⅩ線回折パターン(図5-1-1(e))は、 1次ピークが広角側に あるので周期長が他のものと比較して薄くなっていることがわかる。これは単 純にスバッタ蒸着レート(Rate)が違っていると考えられるo その原因はRate の算出の際に(4-3-2参照)、 Rate(Sc)をScがどんな物質に蒸着される時で も界面反応などは起こらず幾何学的に積層が起こり、一定であると仮定したこ とにある。つまり図5-1-1(e)は、 CrにScが蒸着する時と、 NiにScが蒸着す る時ではRate(Sc)が異なることを示している。従って、 Ni / Scでは界面で混合 物層が出来るなどの界面反応が起こっていることが予想される。 基板表面温度を変化させて作製したCr / Sc 150周期多層膜のⅩ線回折パタ ーンは全て室温で作製した場合(図5-1-1(a))と同様に3次ピークまで確認で きた。作製時の基板表面温度の界面粗さ-の影響を把握するために、 2 8 - 0.50 (¢-89.750 )でのⅩ線強度をIO強度とみなしてCuKα線の反射率を求めたo IOを測定していないので正確な反射率にはなっていないが、比較をすること はできると考える。図5-1-2(a)∼(i)に示す.横軸は直入射角¢である. 28

(34)

llII IcuKα;九-0..542nm TSu.:R.T. 山._..._.山.山J」仙_… r肌「rql..trtlll.11rTTq7T-...「.-l叩 llーl 80     82     84     86     88     90 A咽le of incidence ( o ) 図5-1-2(a)基板温度を室温にして作製したCr/Sc 150周期多層膜の 小角Ⅹ線回折パターン 80     82     84     86     88     90 Angle of incidence ( o ) 図5-1-2(b)基板温度を40℃にして作製したCr/Sc 150周期多層膜の 0       0 0       1 L I L 1     . 1     1     3     4 l l 0   0 ・ 0   1 E I E ( % ) a o u t 2 1 U a l J の ∝ 1       1       1       3       4 -一 0   0 ・ 0   1 E I E ( % ) S u t 2 1 0 0 一 J a ∝

(35)

JIll IcuKα;九=0.1542nml Tsub=50oC JLLLJ..山.▲.一■一▲ J_山.JL.▲山d ーTV"nr.,r.1T叩町叩lWqq'一 llll 80     82     84     86     88     90 Angle of incidence ( o ) 図5-1-2(C)基板温度を50℃にして作製したCr/Sc150周期多層膜の 小角Ⅹ線回折パターン 80     82     84     86     88     90 Angle of incidence ( o ) 図5-1-2(d)基板温度を70℃にして作製したCr/Sc 150周期多層膜の 小角Ⅹ線回折パターン 30 0     0     1     . 1     1     3 1 0   1     0   0 ・ 0   恰 ( % ) a u u t 2 t u a l J e ∝ ( % ) s u t 2 1 0 a l J O t ]

(36)

lcuKa;i:...'5.2nh.I

Tsub=100oC hLlJL▲一▲血 「Yupp叩lTrW【■rpT.I-■.. J山,LL_LlA-LJLJ 80     82     84     86     88     90 Angle of incidence ( ○ ) 図5-I-2(e)基板温度を100℃にして作製したCr/Sc 150周期多層膜の 小角Ⅹ線回折パターン 80     82     84     86     88     90 Angle of incidence ( o ) 図5-1-2(i)基板温度を150℃にして作製したCr/Sc 150周期多層膜の 0     0     1     . 1     1     3     4 1 。 1     0   0 ・ 。 恰   恰 ( % ) 9 3 u t 2 P O u a ∝ ( % ) 9 3 u e I U a 一 J a t ]

(37)

各次数のピークからDwr((3-1-6)式)を求め界面粗さUを算出した結果を図 5-1-3(a)∼(C)にのせる.ピークの次数によってUの値が異なるのは、 IOを測定 していないことと測定時の角度分解能が悪いことが原因ではないかと思われる。 l次ピークからの結果と3次ピークからの結果は類似しているが、 2次ピーク に関しては、 70℃と100℃の基板温度で作製した試料のoが他と比較して大き くなっている。この理由は分からない。しかし、大雑把に見ると作製時の基板 表面温度を50℃程度にすれば界面粗さUが抑制されるのではないかと期待で きる。従って、次に作製時の基板表面温度を40℃∼70℃の範囲にして直入射 試料としてCr/Sc250周期多層膜(設計債; dsc-0.94nm、 dc.=0.67nm)を、 反射型多層膜偏光子としてCr/Sc200周期多層膜(設計値; dsc- 1.32nm、 dcr-0.88 nm)を作製したo作製したCr/ Sc 250周期多層膜のⅩ線回折パターンも cr/ sc 150周期多層膜と同様であるが、本研究で軟Ⅹ線反射率が最も得られた 試料(5-3で示す)のⅩ線回折パターンを図5-1-4に載せておく。多層膜偏光 子では4次ピークまで確認できた。多層膜偏光子は、周期膜厚が直入射試料よ りも厚いので、ピークは小角側にシフトした(図5-1-5)0 50 100        150 Tsu.ぐC) 図5-1-3(a) 1次ピークによる界面粗さUの大小比較 32 3           2 4           4 0 .     0 . ( s t ! u n . q J t 2 ) 也

(38)

碑ql\[/¥a)D要職些留9才ニ!4-oa竣乞(〇)e-I-⊆図 (3.) qns1 0SL OOL OS 碑ql\レ¥ひD寺領些留9才つは-oa竣Z (q)∈-I-⊆凶 (3.) qns1 09L OOL OS ● qeadpuz ● ZZ'0 P 7Ve一 e一 . 07)90 q ( a r b . u ⊃ i t s ) . 0 P 7 )         7 ) 9         -︼ ( ゝ           0 . 07UA(ゝ . 07)0 q ( a r b . u n i t s ) 0       0       0       0       0 日 ト     _ 1     _ レ     ー     7 ) 7 )       」 7       9       9       0

(39)

10      15       20 28(o) 図5-1-4 Cr/Sc250周期多層膜の小角Ⅹ線回折パターン 10      15       20 28(○) 図5-1-5 Cr/Sc200周期多層膜偏光子の小角Ⅹ線回折パターン 34

(40)

5-2 反射率測定装置

軟Ⅹ線反射率測定は高エネルギー加速器研究機構(以下KEKと略す)の 放射光実験施設(photon Factory ;以下P Fと略す)、 BL12A (詳細は第六章) で行い、測定装置には斜入射反射率計〔5-2〕を使用した。この反射率計の概 略を図5-211に示す。特長としては試料台と検出器は鉛直面内に0-20で動 いて測定を行う点が挙げられる。これは、電子の軌道面内から取り出した入射 光は振動面を水平面内に持つ直線偏光なので〔5-3〕、 S偏光の反射率が測定で きるように入射面を鉛直にしてある。また、 め-180 の直入射まで測定ができ る。 図5-2-1斜入射反射率計装置

(41)

回折格子には、島津製作所製の刻線密度1200 1/mm、曲率半径2mのものを 使用した。分光器内の光学素子の配置を図5-2-2に示す〔5-4〕。図5-2-2中の MEは楕円ミラーであり、そしてM,は平面ミラー、 Slは入射スリット、 Gは回 折格子、 S2は出射スリット、 MRは後置集光ミラーであるo検出器には光電子 増倍管(EMT)を使用した。また、反射率測定時の真空度は約8.0×10-‡Torr である.また、 γ-α-f=880 に配置されている. M R 1   G 図5-2-2 分光器光学素子配置 5-3 軟Ⅹ線反射率測定結果 5-3-1アブソーバー比較 作製した直入射試料のうちCr/Sc、 Si/Sc、 C/Sc、Al/Sc多層膜反射鏡の 軟Ⅹ線反射率漸定を行ったo測定試料は全て室温で作製したものである. C/ Sc は100周期多層膜、その他は150周期多層膜である。測定時の分光器の回折格 子出射スリット(S2)は100ミクロンである。図5-3-1(a)、 (b)はそれぞれCr/Sc 150周期多層膜、 si / Sc 150周期多層膜の軟Ⅹ線反射率測定結果である。ピー ク反射率はそれぞれ、 め-32.250 で5.3%、 め-210 で0.9%であった。 Al/Sc 150周期多層膜とC / Sc lOO周期多層膜については反射ピークを見つけられな かったo 測定したAl/ Sc 150周期多層膜とC / Sc lOO周期多層膜は測定感度 (0.25%)以下の軟Ⅹ線反射率であると推測できる。また、 Ni / Sc 150周期多 層膜は周期長が薄くなっているため測定は行わなかった。 36 2 _ I -■   、   S

(42)

3.05     3.10     3.15     3.20     3.25 Wavelength (nm) 図5-3-1(a) Cr/Sc150周期多層膜(室温)軟Ⅹ線反射率 3.05    3.10    3.15    3.20    3.25 Wavelength (nm) 図5-3-1(ら) Si/Sc150周期多層膜(室温)軟Ⅹ線反射率 4 3 2 ( % ) 8 3 u e I U a u a t ] ( % ) 8 u t 2 P O u O ∝

(43)

この結果からScをスペ-サーとする波長3.110 mm用の多層膜反射鏡では、 今回作製した試料(cr/scとsi/Sc、 C/Sc、Al/Sc多層膜)のうち、アブソ ーバーにCrを選んだものが良いことがわかった。また、 5-1に記述したよう にある程度は小角Ⅹ線回折パターンにより推測できることもわかった0 5-3-2 Cr/Sc多層膜鏡の軟Ⅹ線反射率測定 理論解析により、先の測定では波長分解能(A/A九)が約80と不充分であ ることがわかった。従って回折格子の出射スリットS2の幅を15ミクロンに絞 ることにより波長分解能を185にした。 S2のスリット幅を15ミクロンより狭 くすると入射光Ⅰ。の強度が不充分になってしまう。また、測定時の入射光の 直線偏光度は0.99である。直線偏光度の測定については後述する(6-2)0 Cr / Sc 150周期多層膜の軟Ⅹ線反射率測定結果を図5-3-2(a)∼(i)に示し、各

試料のピーク反射率Rmaxとその時の直入射角¢をTable 5-3-a.に載せるo Table 5-3-a.の第-列目は試料作製時の基板表面温度である。 3.10     3.15     3.20     3.25 Wavelength (nm) 図5-3-2(a) Cr/Sc150周期多層膜(室温)軟Ⅹ線反射率 38 ( % ) a o u e p o u a t ] ・ S 5

(44)

3.10     3.15     3.20    3.25 Wavelength (nm) 図5-3-2(b) Cr/Sc150周期多層膜(40℃)軟Ⅹ線反射率 図5-3-2(C) Cr/Sc150周期多層膜(50℃)軟Ⅹ線反射率 ( % ) o o u t 2 P a u O ∝ ・ S ( % ) o D u t 2 P e u O t J ・ S 5 5

(45)

3.10     3.15     3.20     3.25 Wavelength (nm) 図5-3-2(d) Cr/Sc150周期多層膜(70℃)軟Ⅹ線反射率 3.10     3.15     3.20     3.25 Wavelength (nm) 図5-3-2(e) Cr/Sc150周期多層膜(loo℃)軟Ⅹ線反射率 40 ( % ) O o u t 苛 O u e t ] ・ S ( % ) o D u t 2 P O u a ∝ ・ S 5 5

(46)

3.10     3.15     3.20     3.25

Wavelength (nm)

図5-3-2(i) Cr/Sc150周期多層膜(150℃)軟Ⅹ線反射率

Table 5-3-a. Measured renectance of Cr / Sc 150pairs prepared at different substrate

temp era‡ure ら ∴てこ=Cl■■弓J■.■ 鐙 ル? メ v菘ィ ィ,h*イ 興せ;※三三! R.T. 剿ニツ 40 剿ニツ綯 縱R 50 剴 " 70 剴 "綯 r絣 100 剴r紕 r R 150 剴b縒 b縱R ( % ) o u u t 2 P O u a ∝ ・ S 5

(47)

図5-3-3(a)は本研究で最も反射率の高かったCr / Sc 250周期多層膜の波長依 存性の結果である。 ¢-27.50 の時に波長3.155mmの光に対し、最高反射率 13.5%が得られた。入射角依存性は図5-3-3(b)に示す。この試料の作製時の基 板表面温度は40℃である。図5-3-4は作製した多層膜偏光子のうちで得られた 反射率が高かった試料の入射角依存性の結果である。 ¢ -47.00 の時に波長 3.153mmの光に対し、 23.1%の反射率が得られた。 本実験で得られた波長依存性の反射率ピーク形状は非対称であった。ピーク 位置より短波長側にはサイドピークがあり、長波長側はすそを引いている。 3.10    3.15    3.20 Wavelength (nm) 3.25 図513-3(a) Cr/Sc250周期多層膜軟Ⅹ線反射率(波長依存性) 42 ( % ) a 3 u e I U a u a t J ・ S 5

(48)

●-● +I+-. 1.I+ Sc/ Cr250 palrS 九=3.154nm ■→ ・●・●・●-●・●-≠●4 24   25   26   27   28   29   30   31 AngJe of Incidence (%) 図5-3-3(b) Cr/Sc250周期多層膜軟Ⅹ線反射率(角度依存性) Cr/ Sc 200 pal一s -●-●一一●-●--.-.+ +●++4-_ 40    41   42    43    44    45    46 An9le of Incidence ( ○ ) 図5-3-4 Cr/Sc200周期多層膜偏光子軟Ⅹ線反射率(角度依存性) ( % ) 8 u e l U a l J a ∝ ・ S ・ ∧ ︰ ー ′ ・ ∼ ∼ -・ ・ -● ∫ -・ -∼ ● \ 1 ● \ ・ 1 1 1 ● \ 1 -∼ -● . ㌔ ( % ) a D u t 2 1 3 0 一 旬 ∝ ・ S 0           5           0 2           1           1 5 0 1 . . . ∼ . ∼ 1 ・ ・ ∼ 1 . I . I ●   ● ● m n 3 5 h i 3 ≡ i

(49)

5-4 透過型Sc単層膜軟Ⅹ線透過率測定結束 本研究では波長校正と光学定数測定の目的で透過型sc単層膜透過率測定も 行った。 透過型sc単層膜の基板には銅板(13×20mm)の中心に¢6の穴を開け、穴 部分に銅メッシュを載せて、更に銅メッシュにコロジオン膜を張ったものを使 用した(図5-4-I)。以下、この基板を透過基板と呼ぶ。 IBS装置で透過基板上 にScを蒸着した。透過型sc単層膜の断面の模式図を図5-4-2に示す。作製時 の成膜条件をTable 5-4-a.に載せる. 基板:鍋+銅メッシュ +コロジオン膜 図5-4-1透過基板 図5-4-2 透過型Sc単層膜断面模式図 44

(50)

Table 514-a. Fabrication conditions of Sc monolayer n溢 汰 X'洪 Jm≡…莞言, 、etミSS訣 鈷 劔 1薄さ+十 乘顏メ网謄」ィク8*ク蔔& 8 3ィ 9j 韶Sク 8+ ____早_早 剪 Nta、Si、R+ # Nr+1絹毒琵蕪毒薄草K.--iXN'顎 滞V.,∼ 」ヲ辻罐リ モイネヤ 作製した透過型Sc単層膜のScの膜厚を知るために、透過型sc単層膜試料 作製後すぐにSiwafer基板に同条件(Table5-4-a.)でSc単層膜を作製したo Si wafer基板上にSc単層膜を蒸着した試料を膜厚算出用試料とする。膜厚算出 用試料の小角Ⅹ線回折パターンを測定しScの膜厚を求めたところ、dsc-111.2nm とわかった。 作製した透過型sc単層膜の透過率測定はKEK-PFのBL12Aに取り付けた 斜入射反射率計装置で行った。透過率測定の場合、試料平面を入射光に対して 垂直にしなければならないので、 SUS製のアングルに¢10の穴を開け、穴に 透過基板の銅メッシュ部分がくるようにマウントできるホルダーを作製し使用 した。透過型試料ホルダーと測定時の様子の概略を図5-4-3に示す。 図5-4-3 透過率測定概略図

E

M

T

(51)

まず、作製した透過型sc単層膜の透過光強度を測定し、次に透過基板の透 過光強度を激J定したo測定時の波長分解能は185であるo透過型sc単層膜の 透過光強度を透過基板のみの透過光強度で割ることでSc単層膜の透過率を算 出したo結果を図544に示す。実線は謝定結果、破線はバークレー研究所が ホームページ上で公開している単層膜透過率計算プログラムを使用して膜厚 111・2mmのSc単層膜の透過率を計算した結果である。 ll ■■I■ I I I一一一l一.一一一、一一、■- I 著耳爾 ツ 爾 vニツメ鶻贍V 7W&VヨV蹌 -I--CXROsimufatjon l 3.0      3.5 WaveJength (nm) 図5-4-4 Sc単層膜軟Ⅹ線透過率 次に、実験的に求めたSc単層膜の透過率と膜厚を用いてScの消衰係数を算 出したo結果を図5-4-5に示すo実線、破線はそれぞれ実験結果から求めた消 衰係数とバークレー研究所公開の消衰係数であるo図545では吸収端位置を 含めて短波長側ではバークレー研究所公開の消衰係数と異なっている。実験結 果では二本の鋭いピークが現れた。 46 1 0 0     8 0     6 0     4 0     2 0 ( % ) o D u t 2 7 7 ! u J S u t 巴 1

(52)

k o.002 3.0 Wavelength (nm) 図5-4-5 Sc消衰係数 3.5 一般にS準位以外はスピン軌道相互作用によって分裂する。従って、物質の吸 収端位置での光学定数は波長(もしくは光子エネルギー)に対して図5-4_5中 の破線(バークレー研究所公開の値)が示すような単純な変化をしない。原子 周期表によると、ScL殻の2p準位はスピン軌道相互作用により2p,/2準位と2plf2 準位に分裂し、それぞれの準位をフェルミ準位に励起するエネルギーは 398.7eVと403.6eVである。それぞれ波長にすれば3.110nmと3.072nmである。 また、 2p3′2準位と2pl′2準位間のエネルギーは4.9eVである。実験結果に現れた 二本のピークの間隔は光子エネルギーにすれば4.5eVであり、それぞれ低エネ ルギー側(長波長側)から2p3′2準位と2pl′2準位に対応付けられると考えられ る。従って、話が前後するが、これを利用して5-3-2で紹介した測定データ の波長校正を行った。なお、 2p3′2準位では電子が四重縮退、 2pl′2準位では二重 縮退しており、 2p3′2準位による吸収は2pl′2準位によるものよりも二倍大きく なる筈であるが、実験結果ではこの傾向が見られなかった。

(53)

第六章 軟Ⅹ線多層膜鏡の偏光子-の応用

本章では本研究で作製した多層膜鏡を偏光子として応用した例を述べる。軟 Ⅹ線領域では物質の屈折率がほぼ1に等しいため、ブリュ-スター角は450 となる。従って入射角を450 として設計し製作された多層膜鏡は反射型偏光 子として機能する。これを利用して、本研究の反射率測定で使用した放射光ビ ームライン、 KEK-PF BL12Aの直線偏光度測定を行ったo 良く知られている 放射光の偏光特性と実験結果を比較することによって正確など-ムラインの光 軸調整を行った。 まず、 KEK-PFのBL12Aについて述べるo使用可能な光子エネルギーの領 域はおよそ30eV∼1.5keV (波長では0.83-41nm)であり、軟Ⅹ線のビームラ インとして用いられているo光源(pF-Ring)からビームライン振り分けミラ ー(以下MOとする)までは約15mある。図6-1はMOから分光器までのビー ムラインの模式図である。分光器下流には後置鏡槽が設置されており、後置鏡 槽下流にカットオフフィルター、 MVA6 (マニュアルバルブ6)の順に続いて いる。ユーザーは、 MVA6下流に装置を取り付けて実験を行うことになってい る。 48

(54)

MonoOh romator 図 6 ・ t B L 1 2 A 薄 昂 ( M O 菅 が J t D i 諸 報 沖 d ) 4 9

(55)

6-1回転検光子法

本実験では反射率計の試料台と検出器が鉛直面内に0 -20で動くことによ り、入射面が鉛直面となっているため、光の水平成分(正確には電子軌道面に 電場の振動が平行な成分; ¢偏光成分)をS偏光成分、鉛直成分(電子軌道面 に電場の振動が垂直な成分; 7T偏光成分)をp偏光成分としているo 直線偏光度の測定は、作製したCr / Sc 200周期多層膜偏光子を検光子とし て用い、回転検光子法により行った。なお、この多層膜偏光子は図5-3-4で示 した試料とは別の試料であり、入射角450 で11%の反射率を持っており、 D=2.293nm、 o=0.462nmと見積もられた(解析方法の詳細は7-3)。導出され たパラメータから偏光能を見積もった結果を図6-I-1に示す。反射型偏光子の 偏光能pは (6-ll ) Rs+Rp で与えられる。ここで、 Rs、 R,はそれぞれ反射型多層膜偏光子のS偏光、 p偏 光の反射率である。図6-ト1より、 0.9999の偏光能が保証され、直線偏光度測 定を行うのに充分である。測定時の入射波長は3.300mmである。回転検光子 ユニットの概略を図6-1-2に示す。また、回転検光子ユニットは図5-2-1で示 したように反射率計下流側に取り付けた。 50

(56)

3.1 0    3.15    3.20    3.25    3.30    3.35 Wavelength (nm) 図6-1-1使用した多層膜偏光子の偏光能の波長依存性計算値 図6-ト2 回転検光子ユニット概略図 0 0 0 . 0 i . l 9 9     9 8 9           9 9           9 0 .     0 . a 3 u t 2 Z ! J t 2 1 0 d

(57)

MOミラーをあおり方向に2 mrad程度ずつ回転させながら、各回転角におい て検光子を3600 回して入射光の直線偏光度を測定する。なお、 MOのあおり 方向の回転角を◎とすると、 ⑳は光源からMOを見て反時計回りを正、時計回 りを負にとり(図6-ト3)、本実験での初期状態をo radとした。直線偏光度p.in は下記の(6-ト2)式で定義される。 pLzh -言霊  ( 61-2, ここでⅠ‥ Inは、それぞれ検光子によるo偏光、 7T偏光の反射強度である. 図6-1-3 MOあおり方向 52

(58)

直線偏光度plinの測定手順は以下の通りである.検光子の方位角0を3600

回転させて反射光強度IRの変化を測定する. IRは0の関数として(6-I-3)式

の形で表される。

Is - AB'pt,.n cos2(0-α湖+ccos(0-p)) ( 6i-3 )

ここで、 AはIRの平均、 αは偏光楕円長軸の方位角である。光軸と検光子の 回転軸にわずかな傾きがあると反射率の入射角依存性から本来の周期冗の正弦 波信号に周期2冗の変調が生じる. (6-1-3)式のEとβはそれぞれ傾きの量と方 位を示す.測定結果を(6-1-3)式で解析することによってPlinを求める。なお、 IR はMCPの出力を後置鏡ミラーチェンバー内平面ミラーのドレイン電流値で規 格化した、リング蓄積電流に依存しない量である。 6-2 測定結果 測定例として二つのMOのあおり方向回転角◎での測定結果を図6-2-I(a)、(b) に載せる。実線は(6-1-3)式によるフィッティング曲線である。 Cr/ Sc反射 型多層膜偏光子を検光子として回転検光子法で光軸調整を行うことで、調整以 前の状態から⑳が5.5mradだけ回転させた位置でPlin -0.99の最大値が得られ ることがわかった(図6-2-1(a))。

(59)

Plin ≡ 0・99 -90       0       90     1 80 Azimuth ( o ) 図6-2-1(a)直線偏光度測定結果(⑳-5.5 mrad) ー90 0       90     180 Azimuth ( o ) 図6-2-1(b)直線偏光度測定結果(⑳ニー1.1 mrad) 54 . 0         5 2 1 ( l ! u n . q J t 2 ) ー ・ O o ・ 5 ( ∝ こ l コ d l コ ○ ー ・ 5     1 ・ O o ・ 5 ( l ! u n ・ q J e )   ( ∝ ( ) l n d l n O

(60)

次に、 MO回転角◎と電子軌道面内からの観測位置のずれを表す観測角V (図 6-2-2)の関係を求めるo放射光のM0 -の斜入射角をOMOとすると反射光の 仰角は、 Y -2OsineMO である。光源からMOの距離をLlとし、 MOから分光器前置鏡(図5_2_2では ME)の距離をL2とすると、前置鏡に入る光の高さ 学乞l +(㌢ -2OsinCM。)L2 がoになる条件から、

㌢-1(一驚@)

(6-が得られる. BL12AではL1-15.6m、 L2=9.6m、 OM。-2.50であり、 (6_2_1)式 に代入すると、 ㌢ぉtan-I(-0.332×∂) で表せるo (6-212)式により、直線偏光度測定時の⑳からVが求まる。 ( 6-2-2 ) 図6-2-2 観測角概念図 放射光の性質として、電子軌道面内ではn偏光成分の強度I花がoなので、本 来は観測角V-o (rad)とは、その観測位置では直線偏光度phが1であること を意味している。 MOのあおり方向の回転角⑳は本研究で光軸調整を行う以前

(61)

も、観測角耶まo radにならないo従ってV-0 (fad)を与える⑳と区別するた めに、これまでのMOのあおり方向の回転角を以下◎′ とする。つまり、 ◎-◎′ 15.5 (mrad)であり、このずれは観測角Vが0.2 mradずれていることに相 当するo横軸に観測角V (mrad)を、縦軸に直線偏光度plinをプロットしたも のを図6-2-3に示す。 -0.5 0.0 0.5

Observation Ang一e V (mrad)

図6-2-3 BL12Aの直線偏光度 従来の放射光ビームラインの光軸調整は光の強度が大きくなるようにMOを動 かす手法であるが、電子軌道面から上方に0.2 md離れた光を取り出してい たことがわかった。本研究で作製した多層膜偏光子を使用した回転検光子法に より、直線偏光度p血が0.99となるMOの位置を見つけることができた。 Cr / Sc多層膜偏光子を使用した回転検光子法による直線偏光度測定は精皮 良いビームラインの光軸調整方法であることを実証した。 56 u o ! t t 2 N ! J e 一 O d J t 2 a u コ ー 0 0 a J 6 0 凸 ー ・ O o ・ 8     0 ・ 6     0 ・ 4

(62)

第七章 考察

本章ではCr/ Sc多層膜鏡について考察する。

7-1 Ⅹ線回折パターンによる多層膜鏡の評価

直入射試料として作製したCr / Sc多層膜鏡の小角Ⅹ線回折パターンのピー

ク位置から(5-1-1)式と(5-1-2)式を用いて周期長Dを導出した。導出した 各試料の周期長をTable 7-1-a.にまとめる。 Table 7-1-a.の第-列目は多層膜の周 期数、第二列目は作製時の基板表面温度である。

Table 7-1-a. Period ofCr / Sc multilayers

二p▲-: 150 蕋 1.755 1.755 1.$43 40 縱途 50 縱3r 70 縱Cb loo 縱32 150 縱# 250 鼎 I.728 1.737 Table 7-1-a.を図7-1-1に示すo横軸は作製時の基板表面温度(室温は25℃と する)縦軸はⅩ線回折パターンのピーク位置から導出した周期長である。試料 作製時の基板表面温度が高くなるにつれて周期長が減少している様子が伺える。 つまり、基板表面温度が上昇すればスパック蒸着レートが遅くなる傾向がつか

(63)

-トの温度依存性を考慮しなければならない。 本研究で作製した直入射試料のうち、最高反射率を得たCr / Sc 250周期多 層膜(図5-3-3(a)、 (b))と同等の反射率を得られる多層膜反射鏡を二枚作製で きると仮定する。この二枚の多層膜鏡で軟Ⅹ線を二回反射させる場合を想定す ると、スループットを1%以上にするには周期長を±0.01mmの範囲で一致さ せなければならない。本研究で作製した10個の直入射試料中、 6個で周期長 が±0.olnmの範囲で一致した。 50 100 Tsub(Oc ) 図7-1-1 Ⅹ線回折により求めた周期長の基板温度依存性 5S ( ∈ u ) p o 盲 d O S J J U

(64)

7-2 Sc光学定数の評価 ここでは5-4で紹介したSc光学定数についての議論を進める。 5-4で述べたように、本研究ではScの消衰係数kを導くことができた。原 理的には消衰係数k(a)が求まればKamers-Kronigの関係式を用いることで 屈折率n(W)を導出することができるoそこで図5-4-5に示す測定範囲以外の 波長域でのk(a)をバークレー研究所が公開しているもので外挿し(図7-2-1)、 Kramers-Kronig変換(以下、 K-K変換と略す)を行った. I 川H●▲▲… 糞3#r縒テCSr縋UeモカヨV 7W&VFイ A 薮F W'v Sエ5 $ w6イ

㌔ 剪

''...i 剪 ㌔ 100      1000      10000 Photon energy (eV)

図7-2-1 CXROのデータで外挿したSc消衰係数

K-K変換を用いた結果を図7-2-2(a)、 (b)に示す。図7-2-2(b)は図7-2-2(a)の

光子エネルギー398.7eV (波長3.110nm)近傍での拡大図であるo 吸収端位置

(65)

100       1000      1 0000

Photon energy (eV)

図7-2-2(a) Sc光学定数 2.8    3.0    3.2    3.4    3.6 Wavelength (nm) 図7-2-2(b)波長3.110mm近傍でのSc光学定数 60 ∩ k l   . 3   T L P   . 6   . 7   . 8   -9 . 1   . 0   E E E E E E E 1 0 0 1 1 1 1 1 1 1

(66)

バークレー研究所公開のSc光学定数と、単層膜の透過率測定から導出した Sc光学定数を用いてCr / Sc多層膜のS偏光の反射率をシミュレートした結果 をそれぞれ図7-2-3(a)と(b)に載せる。なお、多層膜基板としているSiとアブ ソーバー物質であるCrの光学定数はバークレー研究所公開の光学定数を使用 した。また、どちらのシミュレーションも、パラメータは周期長Dを1.792mm、 界面粗さをonm、周期数を150とした。バークレー研究所公開のSc光学定数 を使用した場合(図7-2-3(a))、 Sc吸収端位置(波長3.110nm)の長波長側近 傍で反射率が大きく増大し、吸収端位置で最大となっている。また、吸収端を またいでいるピークは鋭く削られている。一方、単層膜の透過率測定から導出 したSc光学定数を使用した場合(図7-2-3(b))、吸収端波長3.110mmから長波 長側に離れた波長3.141nmで反射率のピークを与え、理想的な構造の多層膜 でも30%弱の反射率しか得られないことがわかった。また、この図7-2-3(b)に よると、直入射角を大きくしていき反射ピークを短波長側にシフトさせていく と、反射率は¢-28.50の時に波長3.141nmでピークになり、 め-290 ,29.50 と 低下していくが、 ¢-300 でわずかだが再び反射率が高くなる。この¢-300 の反射率ピーク位置は波長3.096nmであり、図545の消衰係数に見られる2p,乃 準位と2pl′2準位に対応する二つのピークの谷間に-敦する。また、 2p3′2準位 のピークに対応する波長3.110nmの位置で反射率のくぼみが見られる。実際に 測定した軟Ⅹ線反射率(5-3-2で記述)では、再び反射率が上昇するピーク 形状は見られなかったが、波長3.110mmでの反射率ピークのくぼみは図5-3-2(a)、 O))や図5-3-3(a)で見られた。実測した反射率ピーク形状は、単層膜の透過率測 定から導出したSc光学定数を使用してシミュレートした場合と良く似ている と考えられるし、バークレー研究所公開のSc光学定数では説明ができないと 考えられる。バークレー研究所公開のSc光学定数を改善できたと考える。

参照

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