ロシア向け植物工場及び水産物の輸出拡大に関する
統計的分析 ―極東連邦管区を事例として―
著者
中村 哲也, 丸山 敦史, 濱島 敦博, 増田 聡
雑誌名
TERG Discussion Papers
号
428
ページ
1-14
発行年
2020-07-01
1
TOHOKU ECONOMICS RESEARCH GROUP
Discussion Paper
Discussion Paper No.428
ロシア向け植物工場及び水産物の輸出拡大に関する統
計的分析
―極東連邦管区を事例として―
中村哲也(共栄大学)・丸山敦史(千葉大学)・濱島敦
博(吉備国際大学)・増田聡(東北大学)
2020 年 7 月 1 日
GRADUATE SCHOOL OF ECONOMICS AND
MANAGEMENT TOHOKU UNIVERSITY
27-1
KAWAUCHI,
AOBA-KU,
SENDAI,
980-8576 JAPAN
2
Ⅰ.課題 2016 年 5 月のソチでの首脳会談の場で,安倍総理からプーチン大統領に『ロシアの生活環境大国, 産業・経済の革新のための協力プラン』が初めて披露された[1]。この首脳会談では,日露経済交流の 促進に向け,8 つの項目からなる協力プランが提示されてから,日露でプロジェクトが進められてい る[1]。8 つの項目とは,①医療水準を高め,ロシア国民の健康寿命の伸長に役立つ協力,②快適・清 潔で,住みやすく,活動しやすい都市作り,③日露中小企業の交流と協力の抜本的拡大,④石油・ガ ス等のエネルギー開発協力,生産能力の拡充,⑤ロシア産業の多様化促進と生産性向上,⑥極東にお ける産業振興,アジア太平洋地域に向けた輸出基地化,⑦日露の知恵を結集した先端技術協力,⑧両 国間で多層での人的交流の飛躍的拡大等が提示されている[1]。8 項目の「協力プラン」では, 日本の 技術と経験を活かし,ロシアの人々が生活環境の改善を直接実感できる協力に主眼が置かれている[1]。 8 項目のうち,③では大企業だけでなく,中小企業による投資及び輸出を促進するため,日露双方 において,中小企業向けのセミナーやベンチャー支援等を行うプラット・フォームを整備することで, 両国における中小企業のビジネス・チャンスの拡大に繋げることを目標にしている。またロシアでは 極めて人気が高い日本食レストランの出店を図り,日本人経営の日本食レストランの出店拡大を目指 している。また,8 項目のうち,④では多くの資源に恵まれるロシアが強みをもつ炭化水素の開発を 進めるとともに,日本の優れた省エネルギー及び再生可能エネルギーを導入することで,ロシアのエ ネルギー・インフラ開発にかかる協力を進めている。 以上のように,日本企業にとっては,高いポテンシャルを持つロシア市場におけるビジネスを開拓 するきっかけとなっており,日露両国にとって互恵的な形での協力が進んでいる。 わが国の農産物輸出に関する先行研究は,佐藤(2009)(2010)や成田(2012)が台湾を,中村・ 丸山(2010)がシンガポールを,中村・丸山(2015)(2016a)や郭ら(2017),濱島ら(2018)(2019), 大島(2019)が香港を事例地として研究を進めてきた。これまでの日本産の農産物輸出に関する研究 は,輸出量と輸出額が多い東南アジアを中心に研究が実施されてきた。他方,ロシア向けの農産物輸 出に関した先行研究となると,JETRO[2][3]や首相官邸[4]が挙げられるが,研究報告は数少ない。中 村ら(2020)は,ロシア人が食中毒や残留農薬,食品添加物の 3 つが食の安全性を脅かしており,国 際認証を受けない輸入農産物よりGLOBAL G.A.P.や JGAP 等の国際認証を受けた輸入農産物の方が 信頼性は高いことを報告している。また,わが国の農水産物は,モスクワ周辺及び極東ロシアを中心 に輸出されているが,極東向けの農産物輸出を議題とした先行研究となると,下渡(2011),中島(2012) 等があるぐらいで,研究成果は非常に乏しい。浪川(2015)は,ロシアへサンマの食文化を輸出し, 日本の秋とサンマの関係,調理法や食べ方といったものをストーリー立てて PR し,輸出先の消費者 との結びつきを強め,日本各地で展開しているブランド戦略を,諸外国に展開することを提案してい る。服部(2015)や中村(2016b)も,日本食を世界に普及させるには,農産物一品一品を単品で輸 出するのではなく,日本の食文化ごと輸出したうえで,現地のシェフにレシピは任せ,多品目・多品 種の日本食材を輸出することを提案している。上述した先行研究を総括すると,東南アジア向けの日 本産輸出に関する先行研究は多数存在するが,ロシア向け輸出に関する研究は経済協力プランがソチ の首脳会談以降に始まったこともあり,2020 年現在,数少ないことがわかる。 そこで本稿では,ロシア極東連邦管区を事例として,市民が日露経済協力プランにどのくらい期待 しているのか考察したうえで,ロシア向け植物工場や水産物の輸出を拡大するにはどのような条件が 必要になるのか,統計的に分析し,考察する。 Ⅱ.研究の方法 1.本稿の構成 本稿の具体的な構成は以下の通りである。 第Ⅲ章では,ロシア人はわが国が提示した8 つの協力プランや,わが国の技術協力,植物工場プラ ントの輸出,及び日本食レストラン出店等にどのくらい期待しているのか,また日本産の食品や農産 物,及び魚介類をどのくらい購入したいのか,考察する。 第Ⅳ章では,人工光型植物工場輸出への期待は,人工光型植物工場の長所と短所にどのくらい影響 しているのか,また日本産の食品や農産物の購入志向は,購入したい理由と購入したくない理由にど のくらい影響しているのか,順序ロジット分析の推計結果から考察する。合わせて,ロシア向け魚介 類の中でも最も輸出量が多いサンマを事例として,ロシア人は原産地や放射性物質の検査体制を提示3
し,小売価格にどのくらい影響しているのか,コンジョイント分析の推計結果から考察する。 Ⅱ.調査設計と推計方法 1.調査設計 調査はSurveyMonkey で Web アンケートを作成した上で,消費者パネルに対してアンケートを配 信・調査を行った。調査票の言語はロシア語である。調査対象地域は極東連邦管区であり,327 名が 回答し,そのうちの 301 名が完全回答した。集計日は日本時間の 2019 年 6 月 14 日(金)~15 日 (土)である。 なお,サンプル選定の際,性別,年齢別等などの組合せにより分類し,その各組から母集団に比例す る標本を選出するQuota Method を選択する場合があるが,本稿でのサンプリングは消費者パネル内 の母集団の分布に従った。ただし,インターネット調査では,人口が多いハバロフスク地方や沿海地 方,20~40 代からの回答が多いことや,高齢層の回答は少ないこと,エンジニアや大卒者以上の学歴 層が多いこと等,調査の限界もあり,サンプルに偏りがあることが予想される。 2.推計方法 本節では,順序ロジット分析とコンジョイント分析の推計方法について説明する。 (1)順序ロジット分析 1)人工光型植物工場輸出への期待 まず,『植物工場輸出への期待』(以下,表5 参照)を目的変数として,順序ロジットモデルを推計 する。目的変数は,期待しない=1,あまり期待しない=2,どちらでもない=3,少し期待する=4, 期待する=5 として,推計した。説明変数は,「人工光型植物工場野菜の長所と短所」(以下,表 6 参 照)のうち,その他を除いた評価項目を導入した。 ここでは,人工光型植物工場に期待している者は,長所と短所を理解しているかどうか検証する。 よって,①帰無仮説H0:「人工光型植物工場に期待している者であっても,その長所と短所を理解で きていない」,対立仮説H1:「人工光型植物工場に期待している者ならば,長所と短所を理解できる」 という仮説が棄却されるか,検討したい。 2)日本産食品や農産物の購入志向 次に,『日本産食品や農産物の購入志向』(以下,表8 参照)を目的変数として,順序ロジットモデ ルを推計する。目的変数は,購入したくない=1,あまり購入したくない=2,どちらでもない=3,多 少購入したい=4,購入したい=5 として,推計した。説明変数は,「日本産農水産物を購入する理由・ 購入しない理由」(以下,表10 参照)のうち,その他を除いた評価項目を導入した。ここでは,日本 産食品や農産物の購入する者は,日本産の品質は高いと感じているのか検証する。よって,②帰無仮 説H0:「日本産食品や農産物の購入する者は,日本産の品質は高いと感じていない」,対立仮説H1: 「日本産食品や農産物の購入する者は,日本産の品質は高いと感じている」という仮説が棄却される か,検討したい。 推計は AIC や尤度比の値を考慮して,最適な推計結果だけを示した。各説明変数は Backward Selection method を用いて,20%有意水準以上の説明変数を削除し,有意水準 1~10%で有意であっ た変数だけが残るように,最適な推計結果が得られるまで推計した。 以下,表にあるcut とは閾値変数を示し,Pr(y=1)=Pr(βx<cut1),Pr(y=2)=Pr(cut1<βx<cut2)のよ うに対応している(y は従属変数のカテゴリー,x は説明変数,βはパラメータ)。 (2)コンジョイント分析 更に,ロシア向けサンマを事例として,原産地(水揚げ地)や放射性物質の検査体制,及び小売価 格を提示した場合,どのサンマが選択されるのか,コンジョイント分析を推計する。 表1 は,コンジョイント分析に使用した属性と水準を示したものである。表中より,サンマの属 性は,『原産地(水揚げ地)』,『放射性物質の検査体制』,『1 缶(250g)当たりの小売価格」の 3 つ とした。水準は,『原産地』が「宮城産」(気仙沼港),「北海道産」(根室港),「台湾産」の3 水準, 『放射性物質の検査体制』が「検査あり」,「検査なし」の2 水準,1 缶(250g)当たりの小売価格4
が 「 90ruble 」 , 「 100ruble 」 , 「 110ruble 」 , 「120ruble」,「130ruble」 の 5 水準に設定し,直交 計画により8枚のプロファイル・カードを作成した(図 1)。 そして最後に,サンマを購入する者は,放射性物質の 検査体制が整っていたならば購入するのかどうか検証 する。よって,③帰無仮説H0:「放射性物質の検査体制 が整っていてもサンマの小売価格に差はない」,対立仮 説H1:「放射性物質の検査体制が整っているならば,サ ンマの小売価格に差がある」という仮説が棄却される か,検討したい。 Ⅲ.調査結果の概要 1.サンプル属性 表 2 は,サンプル属性を示している。まず,性別を見ると,男性が 47.2%,女性が 52.8%を占め た。平均年齢40.4 歳であり,30~39 歳(40.2%)や 40~49 歳(25.2%),20~29 歳(15.3%),及 び50~59 歳(12.6%)の年齢階層が多い注 1)。学歴は,大学(47.5%)が最も多く,短大・専門が 24.3 % , 高 等 学 校 が 14.3%,大学院が 14.0%と なっている注2)。居住して いる州は,ハバロフスク地 方が 31.9%,沿海地方が 28.9%,ブリヤート共和国 で14.3%を占めた。家庭内 に 12 歳以下の子供(もし くは孫)がいる者が53.5% を占めた。職業は,エンジ ニア/専門家が 23.6%と最 も多く,一般事務勤務者 ( 19.6 % ) や 公 務 員 (11.0%)が多い。平均月 収 は 39,377RUB ( = ruble)であり,1RUB を 0.014634USD(2020 年 6 月 8 日)で換算すると, 576.24USD となる。ロシ アの1 人当たり名目 GDP ( 2018 年 IMF ) は 11,289USD であるが,年収 に 換 算 す る と 6,915USD となり,2018 年の所得より 低くなってしまう。2018 年 に 入 り ,USD に 対 し て RUB が急落していること もあり,ロシアの所得は下 落傾向にあると予想され る 。 所 得 階 層 は 10,001-1 2 3 産地(水揚げ 地) 日本・宮城 県 台湾 放射性物質 の検査体制 検査あり 検査なし 価格(1缶 250g) 100ruble 120ruble どれも買わ ない 次の3種類のサンマから、買いたいもの1つに○を つけてください。どれも買いたいと思わないときに は、「どれも買わない」に○をつけてください。 図1 コンジョイント質問例(サンマ) 属性 産地(水揚げ地) ①北海道 ②宮城 ③台湾 放射性物質の検査体制 ①あり ②なし価格(1缶250g) ①90ruble ②100ruble ③110ruble ④120ruble ⑤130ruble 水準 表1 コンジョイント分析に使用した属性と水準 度数 割合 度数 割合 男性 142 47.2% 世帯員数平均・SD 3.20 1.1 女性 159 52.8% エンジニア/専門家 71 23.6% 19歳以下 7 2.3% 一般事務勤務者 59 19.6% 20~29歳 46 15.3% 公務員 33 11.0% 30~39歳 121 40.2% 自営業 31 10.3% 40~49歳 76 25.2% 年金受給者 25 8.3% 50~59歳 38 12.6% 工場勤務者 18 6.0% 60~69歳 12 4.0% 主婦/主夫 16 5.3% 70歳以上 1 0.3% 求職者 13 4.3% 平均・SD 39.4 11.1 学生 8 2.7% 中学校 0 0.0% 農家 /漁家 6 2.0% 高等学校 43 14.3% 病気療養中/休職中/産休 2 0.7% 短大・専門 73 24.3% その他 19 6.3% 大学 143 47.5% 10,000RUB以下 17 5.6% 大学院 42 14.0% 10,001-20,000RUB 54 17.9% ハバロフスク地方 96 31.9% 20,001-30,000RUB 54 17.9% 沿海地方 87 28.9% 30,001-40,000RUB 54 17.9% ブリヤート共和国 43 14.3% 40,001-50,000RUB 50 16.6% ザバイカリエ地方 18 6.0% 50,001-60,001RUB 21 7.0% アムール州 18 6.0% 60,001-70,000RUB 17 5.6% サハリン州 12 4.0% 70,001-80,000RUB 10 3.3% サハ共和国 11 3.7% 80,001-90,000RUB 6 2.0% カムチャツカ地方 8 2.7% 90,001-100,000RUB 9 3.0% ユダヤ自治州 4 1.3% 100,001-120,000RUB 5 1.7% マガダン州 4 1.3% 140,001-160,000RUB 1 0.3% チュクチ自治管区 0 0.0% 275,001-300,000RUB 1 0.3% 12歳以下子供いる 161 53.5% 300,001RUB以上 2 0.7% 12歳以下子供いない 140 46.5% 平均・SD 39,377 35,216 州 出所:SurveyMonkeyによる調査結果から作成 注:1)子供とは,中学生以下の子供を示す。 注:2)年齢,所得の平均・SD(標準偏差)は階級値を用いて算出した。 表2 サンプル属性(n=301) 個人属性 個人属性 性 年 齢 学 歴 子 供 月 収 職 業
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20,000 RUB 及び 30,001-40,000RUB がそれぞれ 17.9%と最も多く,40,001-50,000RUB が 16.6% 等となっている。 2.調査概要 (1)ロシアの生活環境大国,産業・経済の革新のための協力プラン 表3 は,わが国が提示するロシアの生活環境大国,産業・経済の革新のための協力プランを市民が どれくらい期待しているのか,尋ねた結果を示したものである。 1)医療水準を高め,ロシア国民の健康寿命の伸長に役立つ協力 わが国は,わが国の経験や知見及び技術を活用しながら,ロシアの医療水準の向上と国民の健康寿 命の伸長に貢献している。そこで,わが国の協力によって,ロシア人の健康寿命が延びることを期待 しているのか尋ねてみた。その結果,「期待する」(40.5%)者と「多少期待する」(32.6%)者を合計 すると73.1%の者が期待すると答えた。 2)快適・清潔で,住みやすく,活動しやすい都市作り わが国は,都市環境整備に関する日本の技術・経験・ノウハウを活かし,ロシアの街を快適・清潔 で住みやすく,活動しやすい街にしようと考えている。そこで,わが国の協力によって,ロシアの都 市が活動しやすい都市になることを期待しているのか尋ねてみた。その結果,「期待する」(44.5%) 者と「多少期待する」(31.6%)者を合計すると 76.1%の者が期待すると答えた。 3)日露中小企業の交流と協力の抜本的拡大 わが国は,大企業だけでなく,中小企業による投資及び輸出を促進し,両国における中小企業のビ ジネス・チャンスの拡大に繋げようと考えている。そこで,わが国の協力によって,中小企業が交流 し,協力することでビジネス・チャンスが拡大することを期待しているのか尋ねてみた。その結果, 「期待する」(38.9%)者と「多少期待する」(29.6%)者を合計すると 68.5%の者が期待すると答え 評価 平均 質問 標準偏差 40.5% 32.6% 9.6% 10.0% 7.3% 3.890 122 98 29 30 22 1.246 44.5% 31.6% 7.3% 10.3% 6.3% 3.977 134 95 22 31 19 1.226 38.9% 29.6% 13.0% 13.3% 5.3% 3.834 117 89 39 40 16 1.227 43.9% 32.6% 8.3% 10.6% 4.7% 4.003 132 98 25 32 14 1.170 44.9% 31.2% 9.6% 9.3% 5.0% 4.017 135 94 29 28 15 1.170 45.5% 30.6% 10.6% 8.0% 5.3% 4.030 137 92 32 24 16 1.167 46.5% 28.6% 10.3% 9.6% 5.0% 4.020 140 86 31 29 15 1.186 43.5% 32.9% 13.0% 8.3% 2.3% 4.070 131 99 39 25 7 1.051 注)表中の平均とは,5段階のリッカート尺度を使った質問項目を得点化し,平均したものである(表4,表5,表8,表9も同様)。 医療水準を高め、ロシア 国民の健康寿命の伸長 に役立つ協力 あなたは、日本の協力によって、ロシア人 の健康寿命が延びることを期待します か。 快適・清潔で、住みやす く、活動しやすい都市作 り あなたは日本の協力によってロシアの都 市が活動しやすい都市になることを期待 しますか。 日露中小企業の交流と 協力の抜本的拡大 極東における産業振 興、アジア太平洋地域 に向けた輸出基地化 あなたは、日本の協力によって、極東の 産業を振興し、ウラジオストクが輸出基地 化することを期待しますか。 日露の知恵を結集した 先端技術協力 あなたは、日本の協力によって、先端技 術が向上することを期待しますか。 両国間で多層での人的 交流の飛躍的拡大 あなたは、日露両国の人的交流が拡大 することを期待しますか。 あなたは、日本の協力によって、中小企 業が交流し、協力することでビジネス・ チャンスが拡大することを期待しますか。 石油・ガス等のエネル ギー開発協力、生産能 力の拡充 あなたは、日本の協力によって、エネル ギーが開発されることを期待しています か。 ロシア産業の多様化促 進と生産性向上 あなたは、日本の協力によって、ロシアの 産業が多様化し、生産性が向上すること を期待しますか。 表3 ロシアの生活環境大国,産業・経済の革新のための協力プラン(n=301) 評価項目 期待す る 多少期 待する どちらとも いえない あまり期 待しない 期待しな い
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た。 4)石油・ガス等のエネルギー開発協力,生産能力の拡充 わが国は,ロシアが強みをもつ資源の開発を進めるとともに,日本の優れた省エネルギー及び再生 可能エネルギーを導入することで,ロシアのエネルギー・インフラ開発に協力したいと考えている。 そこで,わが国の協力によって,エネルギーが開発されることを期待しているのか尋ねてみた。その 結果,「期待する」(43.9%)者と「多少期待する」(32.6%)者を合計すると 76.5%の者が期待すると 答えた。 5)ロシア産業の多様化促進と生産性向上 わが国は,日本での経験,知見及び技術を活用しつつ,日露の専門家間の交流等を通じて,ロシア の産業多様化と生産性の向上に貢献しようと考えている。そこで,わが国の協力によって,ロシアの 産業が多様化し,生産性が向上することを期待しているのか尋ねてみた。その結果,「期待する」 (44.9%)者と「多少期待する」(31.2%)者を合計すると 76.1%の者が期待すると答えた。 6)極東における産業振興,アジア太平洋地域に向けた輸出基地化 わが国は,ウラジオストクにおいて,エネルギーや農林水産業,医療,輸送インフラ及び都市開発 を進めようと計画している。そこで,わが国の協力によって,極東の産業を振興し,ウラジオストク が輸出基地化することを期待しているのか尋ねてみた。その結果,「期待する」(45.5%)者と「多少 期待する」(30.6%)者を合計すると 76.1%の者が期待すると答えた。 7)日露の知恵を結集した先端技術協力 わが国は,日露の双方が強みをもつ情報通信技術や人工知能等の先端技術を活用し,双方の国民が 協力の成果を実感できる協力を進めようと考えている。そこで,わが国の協力によって,先端技術が 向上することを期待しているのか尋ねてみた。その結果,「期待する」(46.5%)者と「多少期待する」 (28.6%)者を合計すると 75.1%の者が期待すると答えた。 8)両国間で多層での人的交流の飛躍的拡大 日露両国は,大学・スポーツ・文化・観光等の幅広い分野で人的交流を抜本的に拡大させようとし ている。そこで,日露両国の人的交流が拡大することを期待しているのか尋ねてみた。その結果,「期 待する」(43.5%)者と「多少期待する」(32.9%)者を合計すると 76.4%の者が期待すると答えた。 (2) 再生可能エネルギーの推進志向と日本の技術協力への期待 表4は,ロシア人が再生可能エネルギーをどのくらい推進しているのか,そして技術協力にどのく らい期待しているのか,尋ねた結果を示したものである。 1)発電コストによる財政負担 極東連邦管区では,発電用燃料の輸送コストが高く,電気代が高くなっている。市民は,発電コス トの高さが地方政府の財政負担につながっていることを知っているのか尋ねてみた。その結果,「よ く知っている」(47.2%)者と「少し知っている」(27.6%)者を合計すると,の者が知っていると答 えた。 2)地熱及び風力発電の推進 カムチャッカ半島のパウジェトカ(Pauzhetka)地熱発電所は,1966 年から電力を供給している。 そこで,市民は地熱発電を推進するのか,尋ねてみた。その結果,「全く推進しない」者が 69.8%を 占めた。 サハ共和国のヤクーツクやカムチャッカ半島では,2014 年以降,風力発電によって電力を供給し ている。そこで,市民は風力発電を推進するのか,尋ねてみた。その結果,「全く推進しない」者が 69.4%を占めた。7
3)日本の協力による地熱及び風力発電技術の向上 極東連邦管区における風力発電の導入ポテンシャルは最大300MW(原発 3 基分)と資産されてい る[5]。そこで市民は,わが国の協力によって,風力発電の技術が向上することを期待しているのか尋 ねてみた。その結果,「期待する」(30.2%)者と「多少期待する」(33.9%)者を合計すると 64.1%の 者が期待すると答えた。 地熱発電所の心臓部といえる地熱発電用タービンは,全世界の7 割が日本製である。そこで市民は, わが国の協力によって,地熱発電の技術が向上することを期待しているのか尋ねてみた。その結果, 「期待する」(36.5%)者と「多少期待する」(30.6%)者を合計すると 67.1%の者が期待すると答え た。 (3) 人工光型と太陽光型植物工場の推進と植物工場への期待 表5は,ロシア人が人工光型植物工場と太陽光型植物工場のどちらを推進するのか,そしてわが国 の植物工場技術にどのくらい期待しているのか,尋ねた結果を示したものである。 1)人工光型と太陽光型植物工場の推進 植物工場には「人工光型」と「太陽光利用型」の植物工場があり,温室栽培とは異なる施設である。 そこで,ロシア人は,人工の光を利用した植物工場と太陽の光を利用した植物工場のどちらを推進す 評価 平均 質問 標準偏差 9.3% 13.0% 16.3% 20.6% 40.9% 2.292 28 39 49 62 123 1.359 評価 平均 質問 標準偏差 42.9% 36.9% 10.6% 6.0% 3.7% 4.093 129 111 32 18 11 1.048 表5 人工光型と太陽光型植物工場の推進と植物工場への期待(n=301) 人工光型 と太陽光 型植物工 場の推進 あなたは、人工の光を利用した植物 工場と太陽の光を利用した植物工場 のどちらを推進しますか。 評価項目 人工光 型を推進 する 人工光 型を少し 推進する どちらと もいえな い あまり期 待しない 期待しな い 太陽光 利用型を 少し推進 する 太陽光 利用型を 推進する どちら ともい えない 人工光型 植物工場 輸出への期 待 あなたは、日本の協力によって、植物 工場が輸出されることを期待していま すか。 評価項目 期待する 多少期 待する 評価 平均 質問 標準偏差 47.2% 27.6% 6.6% 12.6% 6.0% 3.973 142 83 20 38 18 1.259 評価 平均 質問 標準偏差 4.0% 5.3% 15.0% 6.0% 69.8% 1.678 12 16 45 18 210 1.149 5.3% 5.6% 13.3% 6.3% 69.4% 1.711 16 17 40 19 209 1.205 評価 平均 質問 標準偏差 30.2% 33.9% 16.6% 12.3% 7.0% 3.681 91 102 50 37 21 1.221 36.5% 30.6% 13.6% 12.0% 7.3% 3.771 110 92 41 36 22 1.261 どちらと もいえな い あまり期 待しない 期待しな い 評価項目 風力発電 技術の向上 あなたは、日本の協力によって、風力発電 の技術が向上することを期待しますか。 期待する 多少期 待する あまり推 進しない 全く推進 しない あなたは、発電コストの高さが地方政府の 財政負担につながっていることを知ってい ますか。 発電コスト による財政 負担 どちらと もいえな い 評価項目 とても推 進する 少し推進 する 地熱発電の 推進 あなたは,地熱発電を推進しますか。 風力発電の 推進 あなたは,風力発電を推進しますか。 地熱発電 技術の向上 あなたは、日本の協力によって、地熱発電 の技術が向上することを期待しますか。 表4 再生可能エネルギーの推進志向と日本の技術協力への期待(n=301) 評価項目 よく知っ ている 少し知っ ている どちらと もいえな い あまり知 らない 全く知ら ない8
るのか,尋ねてみた。その結果,太陽光利用型を「推進する」(40.9%)者と「少し推進する」(20.9%) 者を合計すると,61.8%の者が太陽光利用型植物工場を推進すると答えた 2)植物工場輸出への期待 わが国の技術を使って,極東連邦管区へ LED を使った人工光型植物工場を輸出する計画が進んで いる。そこで,わが国の協力によって,植物工場が輸出されることを期待しているのか尋ねてみた。 その結果,「期待する」(42.9%)者と「多少期待する」(36.9%)者を合計すると 79.8%の者が期待す ると答えた。 3)人工光型植物工場野菜の長所と短所 表6は,ロシア人が人工光型植物 工場野菜の長所と短所をどのように 評価しているのか,尋ねた結果を示 したものである。 まず,長所についてであるが,「気 候変動の影響を受けることがない」 (61.8%)ことが最も多かった注 3)。 次いで,「安定した価格での供給が可 能である」(47.2%)ことや,「高齢者 や障害者による作業が可能である」 (45.8%)こと,「短期間で出荷可能 な状態まで育てられる」(45.5%)こ とが続いた。 他方,短所についてであるが,「人 工的な感じがする」(59.1%)ことが 最も多かった注4)。次いで,「野菜の 値段が露地物の 2~3 倍ぐらいする」(48.8%)ことや,「初期投資が高額である」(44.5%)ことが続 いた。 4)太陽光利用型植物工場野菜の長所と短所 表7は,太陽光利用型植物工場野菜の長所 と短所をどのように評価しているのか,尋ね た結果を示したものである。 まず,長所についてであるが,「人工光型よ り光熱費が安い」(63.8%)ことが最も多かっ た。次いで,「人工光型と相性の悪い根菜等も 栽培可能」(57.1%)であることや,「人工光型 より維持費が安い」(55.1%)ことが続いた。 他方,短所についてであるが,「人工光型ほ どの高効率,周年生産は不可能」(54.5%)であることが最も多かった。次いで,「設置時に広大な敷 地が必要」(51.8%)であること,「農薬が必要」(33.6%)であることが続いた。 (4) 日本産食品や農産物の購入志向と日本食レストラン出店の期待 表8は,ロシア人は日本政府の情報公開を信頼しているのか,日本産食品や農産物を購入したいの かどうか,日本食レストラン出店をどのくらい期待しているのか,尋ねた結果を示したものである。 1)日本政府の情報公開の信頼性 日本政府は福島第一原発による放射性物質の飛散を情報公開している。ロシア人は,日本政府の情 報公開を信頼できるのか,尋ねてみた。その結果,「少し信頼できる」(37.5%)者が最も多いが,次 度数 割合 気候変動の影響を受けることがない 186 61.8% 安定した価格での供給が可能である 142 47.2% 高齢者や障害者による作業が可能である 138 45.8% 短期間で出荷可能な状態まで育てられる 137 45.5% 農業知識が乏しいアルバイトでも作業が出来る 117 38.9% 棚状に複数段配置でき、土地を効率的に利用できる 106 35.2% 病原菌や害虫の侵入がない 97 32.2% 量や形、味、栄養素などの品質が一定している 91 30.2% その他 13 4.3% 人工的な感じがする 178 59.1% 野菜の値段が露地物の2~3倍ぐらいする 147 48.8% 初期投資が高額である 134 44.5% 生産費が高額である 82 27.2% 栽培できる野菜が葉菜類やハーブ類に限られる 60 19.9% その他 12 4.0% 長 所 短 所 表6 人工光型植物工場野菜の長所と短所(複数回答) 評価項目 度数 割合 人工光型より光熱費が安い 192 63.8% 人工光型と相性の悪い根菜等も栽培可能 172 57.1% 人工光型より維持費が安い 166 55.1% その他 15 5.0% 人工光型ほどの高効率、周年生産は不可能 164 54.5% 設置時に広大な敷地が必要 156 51.8% 農薬が必要 101 33.6% その他 21 7.0% 長 所 短 所 表7 太陽光利用型植物工場野菜の長所と短所(複数回答) 評価項目9
いで「どち ら で も な い 」 (21.9%) 者が多く, 「あまり信 頼 で き な い 」 (15.6%) 者も多かっ た。 2)日本産食 品や農産物 の購入志向 ロシア人 は,日本の食品や農産物を購入したいと考えているのか,尋ねてみた。その結果,「購入したい」(36.9%) 者と「多少購入したい」(36.2%)者を合計すると,73.1%の者が購入したいと答えた。 3)日本食レストラン出店の期待 わが国は,質の高い日本食レストランの出店を後押ししている。そこで,ロシア人は,わが国の協 力によって,日本食レストランが出店することを期待しているのか,尋ねてみた。その結果,「期待す る」(44.9%)者と「多少期待する」(29.6%)者を合計すると,74.5%の者が購入したいと答えた。 (5)魚介類の食志向と放射性物質安全確認,及び日本産魚介類の購入志向 表9は,ロシア人はどのくらい魚介類を食しているのか,魚介類を購入する際に放射性物質の安全 確認をしているのか,日本産の魚介類をどのくらい買いたいのか,尋ねた結果を示したものである。 1)魚介類の食志向 まず,ロシア人がどの程度魚介類を食べるのか尋ねてみた。その結果,「よく食べる」(37.5%)者 と「少し食べる」(48.2%)者を合計すると,85.7%の者が魚介類を食べると答えた。 2)魚介類の放射性物質安全確認 次に,極東ロシアは,地理的に日本からも近いため,福島の事故後,魚介類に関して放射性物質の 安全性を確認したのかどうか,尋ねてみた。その結果,「全く確認しなかった」(63.1%)者と「あま り確認しなかった」(12.6%)者を合計すると,75.7%の者が確認していなかった。極東ロシアにおい て,ロシ ア人は, 放 射 性 物 質 の 安 全 性 を 確 認 す る 者 は 少 数 派 と い え る だ ろう。 3 ) 日 本 産 魚 介 評価 平均 質問 標準偏差 37.5% 48.2% 3.0% 10.0% 1.3% 4.106 113 145 9 30 4 0.957 評価 平均 質問 標準偏差 2.0% 11.0% 11.3% 12.6% 63.1% 1.761 6 33 34 38 190 1.144 評価 平均 質問 標準偏差 29.9% 39.2% 10.0% 8.6% 12.3% 3.658 90 118 30 26 37 1.319 魚介類の放 射性物質安 全確認 あなたは,福島の事故後,魚介 類に関して放射性物質の安全性 を確認するようになりましたか。 魚介類の食 志向 あなたは,魚介類を食べますか。 評価項目 表9 魚介類の食志向と放射性物質安全確認,及び購入志向(n=301) 評価項目 よく食べ る 少し食べ る どちらと もいえな い あまり食べ ない 全く食べ ない どちらと もいえな い あまり確認 しなかった 全く確認 しなかっ た よく確認 した 少し確認 した どちらと もいえな い あまり購入 したくない 購入した くない 評価項目 日本産魚介 類の購入志 向 あなたは,福島産以外の日本の 水産物が小売店で販売されてい たら購入しますか。 購入した い 多少購 入したい 評価 平均 質問 標準偏差 15.0% 37.5% 21.9% 15.6% 10.0% 3.319 45 113 66 47 30 1.196 評価 平均 質問 標準偏差 36.9% 36.2% 10.3% 9.0% 7.6% 3.857 111 109 31 27 23 1.226 評価 平均 質問 標準偏差 44.9% 29.6% 12.6% 6.3% 6.6% 3.997 135 89 38 19 20 1.196 とても信 頼できる 評価項目 少し信頼 できる どちらと もいえな い あまり期待 しない 期待しな い あまり信頼 できない 全く信頼 できない どちらと もいえな い 多少期 待する 日本政府の 情報公開の 信頼性 あなたは日本政府の情報公 開を信頼できますか。 表8 日本政府の情報公開の信頼性,日本産食品や農産物の購入志向,日本食レストラン出店の期 待(n=301) 日本食レスト ラン出店の期 待 あなたは、日本の協力によっ て日本食レストランが出店す ることを期待していますか。 評価項目 期待する 購入した くない 購入した い 多少購 入したい どちらと もいえな い あまり購入 したくない 評価項目 日本産食品 や農産物の 購入志向 あなたは、日本の食品や農 産物を購入したいと思います か。10
類の購入志向 極東ロシアにおいては,日本産のサンマ等の魚介類が小売店やスーパーで販売されている。そこで, ロシア人は,福島産以外の日本の水産物が小売店で販売されていたら購入するのかどうか,尋ねてみ た。その結果,「購入したい」(29.9%)者と「多少購入したい」(39.2%)者を合計すると,69.1%の 者が購入したいと答えた。 (6) 日本産農水産物を購入する理由・購入しない理由 表10 は,日本産農水産物を購入する理 由・購入しない理由について尋ねた結果を 示したものである。 日本産を購入する理由については,「品 質が高い」(75.1%)ことが最も多かった。 次いで,「味が良い」(58.5%)ことや,「鮮 度がよい」(48.8%)こと,「日本製は信頼 できる」(48.5%)等があげられた。 他方,日本産を購入しない理由について は,「値段が高い」(67.1%)ことが最も多 く,次いで「放射能に対する不安がなくな らない」(41.9%)ことがあげられた。また, 「国産(ロシア産)を買いたい」(25.2%) という理由が,日本産を購入しない理由の 上位に挙げられている。中村ら(2021)や JETRO[6] でも,ロシア人は国産を好む 傾向にあったが,本稿でもロシア人が国産を好む傾向が見られた。 Ⅳ.推計結果 本章では,順序ロジット分析とコンジョイント分析の推計方法について説明する。 1.順序ロジット分析推計結果 (1)人工光型植物工場輸出への期待 表11 は,人工光型植物工場輸出へ の期待は,人工光型植物工場の長所 と短所にどのくらい影響しているの か,推計した結果を示したものであ る。 人工光型植物工場の長所を見る と,「量や形,味,栄養素などの品質 が一定している」という係数(0.811) が正の値を示している。また,「高齢 者や障害者による作業が可能であ る」という係数(0.680)も正の値を 示している。これらの2 項目は,人 工光型植物工場の長所として期待さ れていた。 逆に人工光型植物工場の短所を見 ると,「野菜の値段が露地物の 2~3 倍ぐらいする」という係数(-0.404) が負の値を示している。人工光型植 物工場の短所は価格面にあることが 明らかになった。 度数 割合 品質が高い 226 75.1% 味が良い 176 58.5% 鮮度がよい 147 48.8% 日本製は信頼できる 146 48.5% 安全性が高い 139 46.2% 外見が良い 112 37.2% 日本のイメージが良い 76 25.2% その他 12 4.0% 値段が高い 202 67.1% 放射能に対する不安がなくならない 126 41.9% 国産(ロシア産)を買いたい 76 25.2% 日本の農水産物になじみがない 60 19.9% 日本の放射性物質の基準・検査が信用できない 55 18.3% その他 10 3.3% 購 入 す る 理 由 購 入 し な い 理 由 表10 日本産農水産物を購入する理由・購入しない理由(複数回 答) 評価項目 標準 誤差 量や形、味、栄養素などの品質が一定している 0.811 0.251 0.001*** 安定した価格での供給が可能である 0.372 0.226 0.100 高齢者や障害者による作業が可能である 0.680 0.227 0.003*** 栽培できる野菜が葉菜類やハーブ類に限られる -0.393 0.278 0.158 野菜の値段が露地物の2~3倍ぐらいする -0.404 0.224 0.071* cut1 1.017 0.226 0.000*** cut2 -0.780 0.222 0.000*** 尤度比 603.3*** AIC 617.3 χ2値 31.5 疑似R2 0.050 注:4)限界効果については,紙面の関係で省略した(表12も同様)。 注:1)***,**,*は1%,5%,10%の水準で統計的に有意であることを示す(表 12~13も同様)。 注:3)推計式には,人工光型植物工場野菜の長所と短所(表6参照)を説明 変数として導入したが,Backward Selection methodを用いて,20%有意水準 以上の説明変数を削除し,有意水準1~10%で有意であった変数だけが残る ように,最適な推計結果が得られるまで推計した。 注:2)cutとは閾値を表し,cut1は「少し期待する」,cut2は「期待する」を示して おり,「期待しない」~「どちらともいえない」は統合した。 係数 p値 表11 人工光型植物工場輸出への期待(順序ロジットモデル推計結果) 変数11
ロシア人は,人工光型植物工場に期待している者は,長所と短所を理解しているため,①の帰無仮 説は棄却された。 (2)日本産食品や農産物の購入志向 表12 は,日本産の食品や農産物の購 入志向は,購入したい理由と購入した くない理由にどのくらい影響している のか,推計した結果を示したものであ る。 日本産を購入する理由を見ると,「品 質が高い」「安全性が高い」「日本のイ メージが良い」「日本製は信頼できる」 な ど の 係 数 は そ れ ぞ れ 正 の 値 ( 各 1.311,0.744,0.548,1.136)を示した。 ただし,「鮮度がよい」という係数(-0.572)は負の値を示し,ロシア人は日 本産に対して鮮度が良いとは感じてい なかった。世界の多くの国々に輸出さ れている日本産であるが,高額なため 売れ残り,鮮度が落ちてから消費者に 購入される場合も少なくない。ロシア 人にも日本産の鮮度が良くないと指摘 される結果となった。 他方,日本産を購入しない理由を見 ると,「日本の農水産物になじみがな い」「日本の放射性物質の基準・検査が 信用できない」「国産(ロシア産)を買 いたい」などの係数はそれぞれ負の値(各-0.693,-0.872,-1.321)を示した。ロシアでは 国産が重視され,かつ日本産の販売量も少な いためなじみがないのであるが,日本産を輸 出拡大するには放射性物質の基準や検査体制 が強化することが望まれる。 2.コンジョイント分析推計結果 (1)推計結果 表13 は,コンジョイント分析による推計結 果を示したものである。 まず,小売価格(1 缶 250g)の係数(-0.095) は,負の値を示しており,経済学的な条件を満 たしている。選択肢固有定数項(ASC)の係数 (-0.776)は,日本産の小売価格が高いため, 負値を示している。 まず,原産地を見ると,北海道産の係数 (0.569)は正の値を示すため,ロシア人は北 海道産を高く評価している。ただし,北海道産 ×ハバロフスクの係数(-0.247)は負の値を示 すため,ハバロフスク地方と北海道が漁場的 に近いこともあり,品質差をあまり感じない ためか,ハバロフスク地方では北海道産を高 標準 誤差 品質が高い 1.311 0.290 0.000*** 安全性が高い 0.744 0.255 0.004*** 味が良い 0.443 0.270 0.102 日本のイメージが良い 0.548 0.292 0.060* 鮮度がよい -0.572 0.282 0.042** 日本製は信頼できる 1.136 0.251 0.000*** 日本の農水産物になじみがない -0.693 0.288 0.016** 日本の放射性物質の基準・検査が信用できない -0.872 0.309 0.005*** 国産(ロシア産)を買いたい -1.321 0.277 0.000*** cut1 0.028 0.282 0.920 cut2 -2.117 0.313 0.000*** 尤度比 529.4 *** AIC 551.4 χ2 値 126.2 疑似R2 0.192 注:3)推計式には,日本産農水産物を購入する理由・購入しない理由(表10 参照)を説明変数として導入したが,Backward Selection methodを用いて, 20%有意水準以上の説明変数を削除し,有意水準1~10%で有意であった 変数だけが残るように,最適な推計結果が得られるまで推計した。 表12 日本産食品や農産物の購入志向(順序ロジットモデル推計結 果) 変数 係数 p値 注:1)cut1は「多少購入する」,cut2は「購入する」を示しており,「購入しな い」~「どちらともいえない」は統合した。 標準 誤差 宮城産 -0.076 0.927 0.601 北海道産 0.569 1.766 0.000*** 放射性物質検査あり 0.830 2.292 0.000*** 小売価格(1缶250g) -0.095 0.909 0.012** 宮城産×ハバロフスク -0.071 0.931 0.655 北海道産×ハバロフスク -0.247 0.781 0.072* 放射性物質検査あり×ハバロフスク 0.082 1.086 0.580 宮城産×教育水準(高) 0.301 1.351 0.053* 北海道産×教育水準(高) 0.335 1.397 0.012** 放射性物質検査あり×教育水準(高) 0.127 1.136 0.378 宮城産×所得水準(高) 0.303 1.354 0.090* 北海道産×所得水準(高) 0.259 1.296 0.087* 放射性物質検査あり×所得水準(高) 0.237 1.267 0.159 選択肢固有定数項(ASC) -0.776 0.460 0.000*** 対数尤度 520.1*** サンプルサイズ(回答者数) 7224 (2408) 注:2)ASCは「どれも買わない」に設定した選択肢固有定数項を示 す。 表13 コンジョイント分析推計結果 変数 係数 p値 注:1)原産地は台湾産,放射性物質検査は検査なしを基準とし た。12
く評価していない。 次に,放射性物質の検査体制を見ると,ロシア人は検査がある(0.830)サンマを高く評価している。 更に,宮城産×教育水準(高) の係数(0.301)と,北海道産×教育水準(高) の係数(0.335)は正の 値を示すため,教育水準が高い者は,宮城産と北海道産を高く評価している。 加えて,宮城産×所得水準(高)の係数(0.303)と,北海道産×所得水準(高) の係数(0.259)は正 の値を示すため,所得水準が高い者は,宮城産と北海道産を高く評価している。 以上,ロシア人は高額な日本産のサンマを購入したいという者は一般的に少ないかもしれないが, 放射性物質の検査体制が整うならば,教育水準が高く,所得水準が高い富裕層に日本産サンマは購入 されるだろう。 (2)WTP 推計結果 表14 は,ロシア向けサンマの支払意 志額(WTP)を推計した結果を示した ものである。 表中の95%信頼区間は,Krinsky and Robb の方法で求めた信頼区間であり, 支払意志額(WTP)は 2.50%から 97.5% の区間で 0 をはさまなければ有意であ ることを示す。 支払意志額(WTP)を見ると,ロシア 人は北海道産であれば5.956ruble だけ 高く評価する。そして,教育水準が高い 者ならば,北海道産に3.504 ruble を追 加して高く評価する。 更に,放射性物質の検査がされてい れば8.688 ruble を追加して高く評価す るだろう。 以上,わが国が,ロシアへ向けてサン マを輸出するには,放射性物質の検査 体制の確立を目指すことが不可欠となるだろう。また,ロシア人は,放射性物質の検査体制が整って いるならば,サンマに高値を付けるため,③の帰無仮説は棄却された。 Ⅴ.結論 本稿では,ロシア極東連邦管区を事例として,市民が日露経済協力プランにどのくらい期待してい るのか考察したうえで,ロシア向け植物工場や水産物の輸出を拡大するにはどのような条件が必要と なるのか,統計的に分析し,考察してきた。分析した結果,下記の諸点が得られた。 第1 に,日露首脳会談で安倍総理がプーチン大統領に 8 つの協力プランを提示したが,7 割前後の ロシア人が8 つの協力プランを期待していた。特にロシア人が期待しているのは,日ロ両国の人的交 流の飛躍的拡大や,極東におけるアジア太平洋地域に向けたウラジオストクの輸出基地化,先端技術 の向上等があげられた。エネルギー開発については, 7 割のロシア人が地熱発電や風力発電を推進す ることに消極的であった。しかし,日本の技術によって地熱発電や風力発電の技術が向上することに ついては,7 割の市民から賛同が得られた。 第2 に,協力プランの 1 つである中小企業交流・協力の抜本的拡大のうち,植物工場プラントの輸 出が期待されているが,7 割強以上のロシア人が期待していた。人工光型の植物工場野菜の長所とし ては,気候変動の影響を受けることがないことや,安定した価格での供給が可能であること,高齢者 や障害者による作業が可能であること,短期間で出荷可能な状態まで育てられることがあげられた。 他方,短所としては,人工的な感じがすること,値段が露地物の 2~3 倍ぐらいすること,初期投資 が高額であること等が続いた。 第3 に,ロシア人に対して,人工光型の植物工場と太陽光型の植物工場があった場合,どちらを選 ぶのか尋ねたところ,6 割のロシア人が太陽光型の植物工場を選んだ。太陽光型の植物工場の長所に 2.50% 97.50% 宮城産 -0.791 -5.703 3.577 北海道産 5.956 2.412 24.893 放射性物質検査あり 8.688 4.056 35.121 宮城産×ハバロフスク -0.749 -6.753 3.598 北海道産×ハバロフスク -2.589 -11.474 0.410 放射性物質検査あり×ハバロフスク 0.864 -3.180 6.588 宮城産×教育水準(高) 3.148 -0.173 13.803 北海道産×教育水準(高) 3.504 0.619 14.293 放射性物質検査あり×教育水準(高) 1.332 -2.150 7.643 宮城産×所得水準(高) 3.178 -0.622 14.557 北海道産×所得水準(高) 2.716 -0.470 11.827 放射性物質検査あり×所得水準(高) 2.479 -1.179 12.006 注:2)表中のM WTPは,2.50%から97.5%の区間で0をはさまなければ有 意であることを示す。 表14 ロシア向けサンマの支払意志額(WTP) 変数 M WTP 95%信頼区間注:1)表中の95%信頼区間は,Krinsky and Robbの方法で求めた信頼区 間である。
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ついては,人工光型より光熱費が安いことや,人工光型と相性の悪い根菜等も栽培可能なこと,人工 光型より維持費が安いことがあげられた。他方,短所については,周年生産は不可能であること,広 大な敷地が必要あること,農薬が必要であることが続いた。 第4 に,7 割以上のロシア人が,日本の食品や農産物を購入したいと考えており,日本食レストラ ンが出店することを期待していた。そして8 割以上のロシア人は魚介類を食する習慣があるが,7 割 のロシア人が日本の魚介類を購入したいと回答した。日本産の農水産物を購入する理由については, 品質や食味,鮮度などは評価された一方で,購入しない理由については価格面だけでなく,放射能に 対する不安も少なからず危惧していることも挙げられていた。 第 5 に,順序ロジット分析を推計した結果,ロシア人は,人工光型植物工場に期待している者は, 長所と短所を理解しており,植物工場野菜の品質の高さも理解しているが,高額なコクも知っていた。 また,日本産は安全性が高く,味が良いことなども購入する理由に挙げたが,鮮度については評価さ れていなかった。 最後に,コンジョイント分析を推計した結果,一般的なロシア人は高額な日本産のサンマを購入し ない傾向があるものの,放射性物質の検査体制が整うならば,教育水準が高い富裕層は日本産のサン マを購入することが明らかになった。そして支払意志額を推計した結果,教育水準の高いロシア人は 北海道産に高値を付け,放射性物質の検査証明があったならば,より高額でも購入することが明らか にされた。 以上,ロシア極東連邦管区で日本産の輸出拡大を目指すには,鮮度保持を重視したうえで,富裕層 をターゲットとし,放射性物質の検査管理がなされた日本産の輸出を拡大するべきであろう。 (注) 注1)ロシアの平均年齢は 38.73 歳(2015 年国連),15 歳未満人口比率は 17.61%,15 歳-64 歳人口 比率が68.22%,65 歳以上人口比率が 14.18%であった。本稿のサンプルには 19 歳未満の回答者 がいない分,平均年齢は若干高い。 注2)大卒人口比率(OECD,2017 年)は 47.84%であり,本稿のサンプルの大卒比率は高い。 注3)矢野・中村・丸山(2016)は,植物工場野菜が,管理された環境で安定生産が可能なことはよ く理解されていることを明らかにしており,本稿の結果とほぼ一致する。 注4)矢野・中村・丸山(2016)は,植物工場野菜の質に関する知識が乏しい人ほど,植物工場野菜 の質に不安を抱える人が多いことを指摘している (引用文献) 大島一二(2019):香港経済の現状と日本からの農林水産物・食品輸出の課題,桃山学院大学総合研 究所紀要 第 45 巻第 2 号,pp.55-68. 石塚哉史・神代英昭(2013):わが国における農産物輸出戦略の現段階と展望 (日本農業市場学会研究 叢書) ,筑波書房,p163. 郭万里・菊地昌弥・根師梓・林明良(2017):香港における農林水産物・食品の輸出拡大の一因と今 後の展開に関する一考察:日系食品小売企業の実態をもとに 佐藤敦信(2009):台湾市場への日本産果実の輸出拡大とその課題―輸出入検疫との関連で―,農業 市場研究,第18 巻第 1 号,pp.57-62. 佐藤敦信(2010):農協による果実輸出の問題状況と課題-大分県 H 農協における日本産梨の対台湾輸 出の事例から,協同組合研究,第29 巻第 1 号,pp.117-126. 下渡敏治(2011):鳥取県における農産物輸出への取り組みとその課題 : ロシア極東地方(ウラジオス トック)への輸出,野菜情報,93,pp.28-40. https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/1112/chosa01.html 中島和彦(2012):鳥取県産農産物のロシア輸出にチャレンジ(特集 国産農畜産物輸出を考える), 技 術と普及,49(12),pp.25-27. 中村哲也・丸山敦史(2010):栃木産巨峰のシンガポール輸出と消費者意識-シンガポール SCOTTS 伊勢丹におけるアンケート調査から-,フードシステム研究,第16 巻第 3 号,pp.78-83. 中 村 哲 也 ・ 丸 山 敦 史 (2015):香 港に おけ る栃 木産 米の 購買 選択 行動 と市 場可 能性 : ― 香港 FOODEXPO2013 栃木県ブースにおける対面調査からの接近―,農林業問題研究,第 51 巻第 3 号,14
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