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名古屋市立大学開学70 周年記念シンポジウム コンピューターを用いた新たなデザイン手法の可能性とその教育について考える ~デジタル技術による『拡張創造』〜

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環境デザイン研究所 2019 年度活動報告

名古屋市立大学開学 70 周年記念シンポジウム

コンピューターを用いた新たなデザイン手法の可能性とその教育について考える

~デジタル技術による『拡張創造』〜

向口武志

はじめに 名古屋市立大学開学 70 周年記念シンポジウムの一環と して、芸術工学研究科環境デザイン研究所主催による「コ ンピューターを用いた新たなデザイン手法の可能性とそ の教育について考える~デジタル技術による『拡張創造』」 を開催した。IT 技術を使った設計・製作手法であるデジタ ル・デザインやデジタル・ファブリケーションをどのよう に学び、使っていくのかを、本学でデジタルデザインを教 える東福大輔氏、先駆的な教育に取り組む広島工業大学の 杉田宗准教授、京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab Design Factory の井上智博氏にそれぞれ講演頂いた後、 活発な意見交換を行った。 開催概要 開催日:2019 年 11 月 23 日(土)13:30〜17:00 会場:名古屋市立大学ミッドタウン名駅サテライト 主催:名古屋市立大学芸術工学研究科環境デザイン研究所 後援:日本建築学会東海支部、 日本建築家協会東海支部愛知地域会 参加人数:62 名 「しごとのアルゴリズム」(東福大輔/零三工作室一級建 築士事務所主宰、名古屋市立大学非常勤講師) 東福氏からは、自身が中国で実現してきた設計例、また 進行する設計プロジェクトのなかでどのようにデジタル デザインを使っているのかが語られた。 氏がデジタル・デザインを導入したのは中国で建築設計 を行っていた時期であった。中国での建築設計は大規模プ ロジェクトが多い一方、奇抜なデザインが求められる傾向 にあるという。デジタル・デザインは作業の省力化を図り、 手作業では難しいデザインを提案する有効な手法であり、 段階的にデジタル・デザインを採用していった経緯が事例 とともに紹介された。 進行中の設計プロジェクトについては、建築設計におけ る実例紹介と共に、事務所で使っているローコストのデジ タル・ファブリケーション環境や、ロボティクスを応用し た建築例として、倒立振子の技術を利用した土地に固着し ない建築の提案が語られた。デジタル・デザインを導入す るハードルが低くなっている状況と活用範囲の拡がりを 実感できる話題提供であった。 写真—1 東福大輔氏の講演の様子

環境デザイン研究所 2019 年度活動報告

ミングした。MIDI データなので、GarageBand などの DTM アプリで利用することができる。本展示では AF3、 AF4 がピアノ、T7 がベース、T8 がマリンバの音色にあて られた。 ERP 波形をモチーフにしたスピーカーの制作 本展示は、加藤大香士准教授監修のもと、博士前期課程 大学院生2名(李逸、井上英章)が共同制作した脳波視覚 化の試みを報告するものである。一般的なERP 波形をイ メージした曲線を360 度回転させ、3D プリンターによっ てスピーカエンクロージャを造形し、参考展示となった。 マルチメディアパフォーマンス 本パフォーマンスは、水野研究室の博士前期課程大学院 生でキーボーディストでもある押山晶子と大同大学情報 デザイン学科の原田昌明講師とのコラボレーションで実 現されたインタラクティブ音楽の実演である。 押山が作曲し自らキーボードを演奏する2曲が上演さ れた。2曲はインタラクションの仕組みを異にしているが、 いずれも音の空間移動を作品の重要な要素としている。 第一曲は、押山作曲の楽曲がキーボードで演奏される際 のベロシティをMAX を通じて映像パラメータに影響させ る作品であり、オーソドクスな映像・音楽のインタラクシ ョンが実現された。舞台効果のために、音楽演奏用のキー ボードやPC が設営される場所と映像操作の PC 設営場所5 メートル程度離れていたので、二人の人間がコンタク トを取り合って上演することは不適切であった。そのため、 キーボードの特定のnote number を映像開始のトリガー として同期させるシステムが組まれた (写真-3)。 こうしたパフォーマンスでの演奏者は通常の音楽演奏 (キーボードを弾くこと)に加え、トラック切り替えや Leap Motion の制御も行い、さらに全体のインタラクショ ンを効果的に見せる演出を考える必要がある。 第二曲も押山の作曲作品だが、ここではLeap Motion に 写真-3 音楽とインタラクティブに形を変える映像 よって演奏中にリアルタイムで定位を移動・回転させる システムが組まれた。 キーボードで制御されるのはピア ノ音源のほか、音声ファイルに固定された人工合成音であ る。 Leap Motion を作動させるための掌の回転は、Logic のシーケンスデータとして時間的に固定されたなかでの 即興的な視覚効果を持ち、動作と音響のインタラクション を効果的に見せることに成功していた(写真-4)。 写真-4 演奏中に掌で定位変化を制御する まとめ 会場にはおよそ 100 名の NICOGRAPH 参加者が列席し た。大学関係者のみならず産業界の方々にも参加いただ いたので、芸術工学研究科でのインタラクションデザイ ンについて一定の広報効果を得ることができた。

環境デザイン研究所 2019 年度活動報告

名古屋市立大学開学 70 周年記念シンポジウム

コンピューターを用いた新たなデザイン手法の可能性とその教育について考える

~デジタル技術による『拡張創造』〜

向口武志

はじめに 名古屋市立大学開学 70 周年記念シンポジウムの一環と して、芸術工学研究科環境デザイン研究所主催による「コ ンピューターを用いた新たなデザイン手法の可能性とそ の教育について考える~デジタル技術による『拡張創造』」 を開催した。IT 技術を使った設計・製作手法であるデジタ ル・デザインやデジタル・ファブリケーションをどのよう に学び、使っていくのかを、本学でデジタルデザインを教 える東福大輔氏、先駆的な教育に取り組む広島工業大学の 杉田宗准教授、京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab Design Factory の井上智博氏にそれぞれ講演頂いた後、 活発な意見交換を行った。 開催概要 開催日:2019 年 11 月 23 日(土)13:30〜17:00 会場:名古屋市立大学ミッドタウン名駅サテライト 主催:名古屋市立大学芸術工学研究科環境デザイン研究所 後援:日本建築学会東海支部、 日本建築家協会東海支部愛知地域会 参加人数:62 名 「しごとのアルゴリズム」(東福大輔/零三工作室一級建 築士事務所主宰、名古屋市立大学非常勤講師) 東福氏からは、自身が中国で実現してきた設計例、また 進行する設計プロジェクトのなかでどのようにデジタル デザインを使っているのかが語られた。 氏がデジタル・デザインを導入したのは中国で建築設計 を行っていた時期であった。中国での建築設計は大規模プ ロジェクトが多い一方、奇抜なデザインが求められる傾向 にあるという。デジタル・デザインは作業の省力化を図り、 手作業では難しいデザインを提案する有効な手法であり、 段階的にデジタル・デザインを採用していった経緯が事例 とともに紹介された。 進行中の設計プロジェクトについては、建築設計におけ る実例紹介と共に、事務所で使っているローコストのデジ タル・ファブリケーション環境や、ロボティクスを応用し た建築例として、倒立振子の技術を利用した土地に固着し ない建築の提案が語られた。デジタル・デザインを導入す るハードルが低くなっている状況と活用範囲の拡がりを 実感できる話題提供であった。 写真—1 東福大輔氏の講演の様子 名古屋市立大学大学院芸術工学研究科紀要 芸術工学への誘い vol.24(2019) 69 ■

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環境デザイン研究所 2019 年度活動報告

名古屋市立大学大学院芸術工学研究科環境デザイン研究所

「ミッドジャパン音の芸術祭」名古屋市立大学企画

講演とコンサート「レゾ・エクスペリメンタル」

水野みか子

「ミッドジャパン音の芸術祭」概要 「ミッドジャパン音の芸術祭」は、東海地方を拠点に表 現活動を行う大学教員、表現者が中心となり、音による表 現の多様性と可能性を追求するために 2019 年度に開始さ れた。東海地方のみならず中部地方全域にわたって、音に よる表現活動のさらなる活性化をめざし、大学キャンパス を中心に複数会場において、コンサート、展示、ワークシ ョップ等を実現していくものである。 初回にあたる今年度は、 2020 年 2 月 21 日から 23 日ま での三日間にわたり、愛知県立芸術大学、名古屋市立大学、 名古屋芸術大学、名古屋音楽大学、およびこれら大学のサ テライト・サイトを会場として、コンサート5件、ワーク ショップ&レクチャー2件、インスタレーション展示 2 件 が実現された。 このうち、環境デザイン研究所との共催で実現されたの は、名古屋市立大学北千種キャンパスで開催された「レゾ・ エクスペリメンタル」である。 「レゾ・エクスペリメンタル」企画内容 2020 年 2 月 22 日(土)13 時 30 分より、名古屋市立大 学芸術工学部キャンパス大講義室と芸術工学棟の音響デ ザイン室を専用通信回線で結んで「レゾ・エクスペリメン タル」が開催された。企画タイトルは、ネットワークを 示すフランス語の単語 réseau を用い、実験的な通信 パフォーマンスを意味している。演奏される音楽がフラン ス起源の電子音響音楽に何らかの形でコンテンツとして つながっていることをも示唆している。 「レゾ・エクスペリメンタル」は二部構成をとり、第一 部は台湾国立交通大学教授で作曲家のユーチュン・ツェン Yu Chung Zeng 教授による講演、第二部はツェン教授の 作品を含む五つの音楽作品を上演するコンサートとなっ た。ツェン教授は来日して講演を行う予定だったが、コロ ナウィルスの影響によるフライトキャンセルにより来日 不能となったので、急遽、ネットワークを通じての遠隔講 演となった。 講演「アナログ時代からデジタル時代へのミクスト音楽の 作品」 ツェン教授は、1960 年代のアナログ機器の時代から現 代までのミクスト音楽について、スコアや動画などの視覚 資料を豊富に交えながら解説された。ミクスト音楽、すな わち、器楽または声楽の生演奏と電子音響/プログラムを 混合させて上演される音楽は、レスピーギの《ローマの松》 やメシアンの《トゥーランガリラ交響曲》といった古典の レパートリーに始まる、というツェン教授の音楽観には、 管弦楽や独奏曲から台湾伝統音楽までの器楽音楽や声の 上演に対する深い思念と熟練の技が象徴される。とりあげ られた現代作曲家は、マリオ・ダヴィドフスキ、カイヤ・ サーリアホ、コート・リッピ、カールハインツ・エッセル であり、それぞれ器楽・声楽パートと電子音響やエフェク 環境デザイン研究所 2019 年度活動報告 「建築教育のアップデート」(杉田宗/広島工業大学環境 学部建築デザイン学科准教授) 杉田宗氏は日本におけるデジタル・デザインの先駆者の 1人である。ペンシルバニア大学大学院での留学時代から 取り組んでいたプログラムによりアクティビティから形 態をつくり出す研究とその理論に基づく一連の空間制作 を紹介した上で、氏は情報技術の進歩が建築に与えうる影 響は「新しい建築」と「新しい働き方」の2 点にあると指 摘した。前者の意義は見たこともない“Output”を生み出 すことであり、コンピュテーショナルによって手作業では 難しかった斬新な形態の建築を目指すことにあるという。 昨今重要になってきているのが後者であり、“process”が 重要であるとする。さらに両者の技術をもつ人材の育成が 大切であるという課題を提起した。 次いで海外の最新動向が動画を交えながら報告された。 学生一人一人の机の横に3D プリンターが備えられる南カ リフォルニア建築大学(SCI-ARC)の製図室の様子、チュ ーリッヒ工科大学(ETH)などのロボットアームやドロー ンによる建築施行の自動化の実例など、興味深い教育や研 究環境が紹介された。 杉田氏は日本ではデジタル・デザインに関わる先端技術 を取得するためには、学生自身が自主的に学ぶししか方法 がないことに問題があるとし、技術の拡がりを高めるため にはより積極的な教育環境の整備が必要であるとする。そ のため自身が教鞭をとる大学では BIM、コンピュテーシ ョナル・デザイン、デジタル・ファブリケーションに関す る充実した教育プログラムを課し、さらに研究室での様々 な取り組みによって、デジタル・デザインを担う人材育成 を模索する様子を具体的に知ることができた。 「デジタルファブリケーションの現在」(井上智博/京都 工芸繊維大学 Kyoto Design Lab テクニカルスタッフ、 FABLAB 北加賀屋運営) 井上氏は民間のデジタル・ファブリケーションの場であ るファブ・ラボ「北加賀屋」に関わる中でのメーカーズ・ ムーブメント(デジタル技術を用いたものづくり)に関す る話題、また日本の大学の中で最も充実したデジタル・フ ァブリケーション施設である京都工芸繊維大学 Kyoto Design Lab におけるデジタル・デザイン、デジタル・フ ァブリケーション教育の現場を紹介した。 まずファブ・ラボが主宰するワークショップは多くの 人々が気軽にデジタル・ファブリケーションに接する様子 が報告された。また2014 年に発足した Kyoto Design Lab のデジタルファクトリーについては、デジタル・ファブリ ケーション機器や学内の様々な学部から集められたデジ タル工作機械の様子が詳細に報告された。 施設は学内の利用に留まらず、世界中の大学と提携した 研究や制作のワークショップが並走して行われ、井上氏ら は国際プログラムに際してテクニカルなバックアップを 担っている。専門性や国籍を超えたコラボレーションによ り生み出される作品は多種多彩であり、充実したデジタ ル・ファブリケーション環境で変わる興味深い教育状況を 理解することができた。 写真—2 質疑応答時の様子 (左より東福氏、井上氏、杉田氏)

環境デザイン研究所 2019 年度活動報告

「建築教育のアップデート」(杉田宗/広島工業大学環境 学部建築デザイン学科准教授) 杉田宗氏は日本におけるデジタル・デザインの先駆者の 1人である。ペンシルバニア大学大学院での留学時代から 取り組んでいたプログラムによりアクティビティから形 態をつくり出す研究とその理論に基づく一連の空間制作 を紹介した上で、氏は情報技術の進歩が建築に与えうる影 響は「新しい建築」と「新しい働き方」の2 点にあると指 摘した。前者の意義は見たこともない“Output”を生み出 すことであり、コンピュテーショナルによって手作業では 難しかった斬新な形態の建築を目指すことにあるという。 昨今重要になってきているのが後者であり、“process”が 重要であるとする。さらに両者の技術をもつ人材の育成が 大切であるという課題を提起した。 次いで海外の最新動向が動画を交えながら報告された。 学生一人一人の机の横に3D プリンターが備えられる南カ リフォルニア建築大学(SCI-ARC)の製図室の様子、チュ ーリッヒ工科大学(ETH)などのロボットアームやドロー ンによる建築施行の自動化の実例など、興味深い教育や研 究環境が紹介された。 杉田氏は日本ではデジタル・デザインに関わる先端技術 を取得するためには、学生自身が自主的に学ぶししか方法 がないことに問題があるとし、技術の拡がりを高めるため にはより積極的な教育環境の整備が必要であるとする。そ のため自身が教鞭をとる大学では BIM、コンピュテーシ ョナル・デザイン、デジタル・ファブリケーションに関す る充実した教育プログラムを課し、さらに研究室での様々 な取り組みによって、デジタル・デザインを担う人材育成 を模索する様子を具体的に知ることができた。 「デジタルファブリケーションの現在」(井上智博/京都 工芸繊維大学 Kyoto Design Lab テクニカルスタッフ、 FABLAB 北加賀屋運営) 井上氏は民間のデジタル・ファブリケーションの場であ るファブ・ラボ「北加賀屋」に関わる中でのメーカーズ・ ムーブメント(デジタル技術を用いたものづくり)に関す る話題、また日本の大学の中で最も充実したデジタル・フ ァブリケーション施設である京都工芸繊維大学 Kyoto Design Lab におけるデジタル・デザイン、デジタル・フ ァブリケーション教育の現場を紹介した。 まずファブ・ラボが主宰するワークショップは多くの 人々が気軽にデジタル・ファブリケーションに接する様子 が報告された。また2014 年に発足した Kyoto Design Lab のデジタルファクトリーについては、デジタル・ファブリ ケーション機器や学内の様々な学部から集められたデジ タル工作機械の様子が詳細に報告された。 施設は学内の利用に留まらず、世界中の大学と提携した 研究や制作のワークショップが並走して行われ、井上氏ら は国際プログラムに際してテクニカルなバックアップを 担っている。専門性や国籍を超えたコラボレーションによ り生み出される作品は多種多彩であり、充実したデジタ ル・ファブリケーション環境で変わる興味深い教育状況を 理解することができた。 写真—2 質疑応答時の様子 (左より東福氏、井上氏、杉田氏) ■ 70 環境デザイン研究所 2019 年度活動報告

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