• 検索結果がありません。

第2章 必修教科等の研究 2 社会 言語活動を通して育む,歴史的分野における社会的思考力・判断力・表現力 : 社会的事象を多面的・多角的に思考し,公正に判断し行動につなげていく生徒の育成のために

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "第2章 必修教科等の研究 2 社会 言語活動を通して育む,歴史的分野における社会的思考力・判断力・表現力 : 社会的事象を多面的・多角的に思考し,公正に判断し行動につなげていく生徒の育成のために"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

2 社会

言語活動を通して育む,歴史的分野における社会的思考力・判断力・表現力

─社会的事象を多面的・多角的に思考し,公正に判断し行動につなげていく生徒の育成のために─ 上田 真也 1.研究テーマによせて (1)はじめに 完全実施となり2年目となる新学習指導要領におい て,授業における「言語活動」が重要なキーワードの ひとつであることは周知の通りである。これまでの社 会科実践においても「言語活動」を通して,社会科が 求める力のひとつ,「社会的思考力・判断力・表現力」 を高める授業実践を展開してきた。昨年度は,地理的 分野における研究に主眼を置き,言語活動の充実を図 ることを通して,社会科(地理的分野)が求める力, 「社会的思考力・判断力・表現力」を育む取り組みを 実施した。 本年度は,昨年度の地理的分野に続き,歴史的分野 における「社会的思考力・判断力・表現力」を育みた いと考える。 また,本校の研究主題である『思考と表現をつなぐ 「判断」のありように着目した学習指導研究』ともリ ンクさせながら,思考ツールなどを活用した協同的に 学び合う過程を重視した上で,とりわけ「判断力」を 育む手立てを講じたい。そのためにも,史実に基づい た歴史認識を深め,歴史的事象の諸場面において,課 題解決的学習や当事者による意思決定に対する賛否を 問う学習などを展開し,歴史における公正な判断とは 何かに迫りたい。 昨年度より完全実施となった新学習指導要領におい て,次の5点が,歴史的分野の概要としてあげられて いる。 ① 「我が国の歴史の大きな流れ」を理解する学習の 一層の重視 ② 歴史について考察する力や説明する力の育成 ③ 近現代の学習の一層の重視 ④ 様々な伝統や文化の学習の重視 ⑤ 我が国の歴史の背景となる世界の歴史の扱いの充 実 このことから,歴史的分野においても「言語活動」 の充実を図る必要性があることがわかる。さらに,上 記③に関しては,旧学習指導要領の「近現代の日本と 世界」は新学習指導要領では「近代の日本と世界」と 「現代の日本と世界」とにそれぞれ独立させた構成と なった。本研究では,歴史的分野の中でも「近代の日 本と世界」に着目する実践となっている。 また,社会科学習全体に対しては昨年同様,本校が これまで大切に してきた社会科 学習として,社 会に対する関心 を深めて,他者 との関わりを通 し,共に生きる 姿勢や態度を育 成する学びを深 めるという視点 から,課題解決 【授業づくりで意識する三要素】 本論の要旨 本校社会科では,様々な視点から社会的事象をとらえさせ,生徒自らが思考し,正しい価値観を形成し た上で,公正な判断のもとに,よりよい社会の創造に向けた行動につなげていくことを目標とし,「社会的 事象を多面的・多角的に思考し,公正に判断し行動につなげていく生徒の育成」を研究主題に掲げている。 これまでの研究・実践においても様々な学習場面を設定し,多面的・多角的に思考する力や公正に判断す る力を養い,実社会において生徒自身が何らかの形で行動がとれることを意図して研究に取り組んできた。 本年度は,昨年度新学習指導要領が完全実施となり,大きな変化がもたらされた地理的分野に続き,歴 史的分野における研究に主眼を置き,昨年度同様,言語活動の充実を図ることを通して,社会科(歴史的 分野)が求める力(社会的思考力・判断力・表現力)を育みたいと考える。 キーワード 言語活動の充実,社会的思考力・判断力・表現力,歴史における公正な判断

(2)

に向けた生徒同士(座席近隣同士による簡単な交流や 4人グループによる意見交流・討論など),生徒と教 師(教師による机間支援やプリント点検,個別の意見 発表など)または学校外の人材(本年度は公民的分野 で税務署・市役所より講師招聘)や家庭(新聞の切り 抜きや家族へのインタビューなど),地域社会の関わ りの中で学習することを重視すると同時に,さらに, 言語活動の充実を図る活動(具体的には4人グループ による班活動や思考を可視化する思考ツールの使用な ど)を通して,生徒たちが様々な立場や思いの人々と の関わりをもち,共通点や相違点を認めることで,相 互理解や協調を重視した社会の創造につなげたい。 (2)研究分野について 本年度は,担当学年が第2学年及び第3学年である。 そうした点で,両学年の授業において歴史的分野を取 り扱う機会に恵まれた。このことにより,(1)で触 れたように,昨年度の地理的分野に続き,本年度は歴 史的分野に関わる内容を研究分野とした。 2.研究仮説 歴史的分野において,歴史的事象を課題に応じて調 べたり,資料から読み取ったことを説明したりする場 面を設定し,当事者の立場で考えさせたり,判断させ たりしながら,歴史的事象について是非を問うたり, 評価したり,価値判断する場面を想定した授業づくり をすれば,社会科(歴史的分野)が求める力(社会的 思考力・判断力・表現力)を育むことができるであろ う。 3.研究方法 社会科が求める力を育むために,言語活動やグルー プ活動,生徒の多面的・多角的な思考を促す活動など のあり方を模索しながら,授業づくりを行う。特に, 生徒自身が「判断」しなければならない場面を設定し たり,判断した根拠や判断理由を問うたりする場面を 設定する。 4.授業実践Ⅰ(平成25年8月30日・第2学年) (1)主題(単元,題材) 近世から近代へ (2)主題によせて(単元設定の理由,題材観) 本単元は,江戸時代における幕末動乱期から急速に 近代国家への道を歩むことになり,明治時代へと移り 変わる,まさに近世から近代への転換期を扱う。また, 新学習指導要領においては,近現代の学習を一層重視 するという観点から従前の中項目「近現代の日本と世 界」から,大項目「近代の日本と世界」として独立構 成されており,本単元はその前半部となる「日本の近 代化」の前段にあたることになる。そのため,欧米諸 国の近代化はもとより,欧米諸国のアジア進出という 当時の国際情勢における流れの中で,日本の開国を扱 う必要がある。 もちろん,日本国内における,開国の対概念として の鎖国政策や,幕政への諸改革の失敗,尊王攘夷,ア ジア近隣諸国の動きといったことなどにも着目させ, 近世というひとつの時代の終焉を大観させる単元でも ある。 そのため,国際情勢の流れの中における一国の開国 ではなく,開国を近世から近代への分岐点としての重 要な歴史的事象と捉え,開国によってもたらされる日 本への影響を軸に据え,生徒の歴史的事象に対する理 解の深化や近世から近代への転換期を大観させること を通して,江戸幕府が下した開国という選択を再評価 し,当時の日本における開国の是非を生徒に判断させ たい。 第2学年の生徒は,これまでの歴史的分野の学習に おいて,「近世の日本」,「近代の日本と世界」の『欧米 の発展とアジアの植民地化』に取り組んできた。学年 集団としての学習態度は真面目で,課題に対して前向 きに取り組む生徒が多い。また,適宜調べ学習を取り 入れ,歴史的事象について教科書や資料集,図書室の 書籍等を活用して調べ,自分が調べてわかったことを ノートやワークシートにまとめたり,まとめた内容を グループ(4人)で発表し合ったりする活動も展開し てきた。その際,発表内容を個別にメモさせたり,グ ループでまとめた意見を板書させたりして,学んだり, 考えた内容を目に見える形で捉えさせてきた。ただ, 生徒の多くは,歴史的事象を主観的に捉えたり,発表 内容をそのまま鵜呑みにしてしまったりする傾向が見 られる。そのため生徒には,歴史的事象をより客観的 に捉えさせ,時代背景等を踏まえた上で,歴史的事象 の在り様に対する是非を問わせたい。そこで,歴史的 事象に対する当時の「判断」に着目し,その時代の流 れやその時代を生きた人々における正しい(理想的) 判断とは何か,そして,史実が示す選択が適切なもの であったのかどうかに迫りたい。 (3)学習目標 近世から近代へと移り変わる幕末期を,欧米諸国の 動きとともに多面的・多角的に捉え,欧米諸国による 革命がもたらしたものや日本における開国の影響につ いて考え,その是非を問うことを通して,近代国家の 道をあゆもうとする日本と世界の在り様を追究する態 度を養う。

(3)

(4)単元の評価規準 社会的事象への 関心・意欲・態度 社会的な思考・判断・表現 資料活用の技能 社会的事象についての 知識・理解 ①欧米諸国における近代社 会へのあゆみと成立,アジア への進出,日本における開国 の影響について関心を高め, 意欲的に追究しようとして いる。 ②欧米諸国における市民革 命や産業革命,日本を含むア ジア諸国の動きなどについ て多面的・多角的に考察し, その過程や影響の是非につ いて適切に判断している。 ③欧米諸国における市民革 命や産業革命,日本を含む アジア諸国の動きなどに関 する様々な資料を収集し, 有用な情報を適切に選択し たり,読み取ったりしてい る。 ④欧米諸国が近代社会を成 立させてアジアへ進出した こと,その流れの中で日本 が開国したことを理解し, それらに関連する知識を身 に付けている。 (5)単元の学習計画 (全7時間) 時程 学習内容 評価の観点 関 思 技 知 第1時 江戸時代~そのころの諸外国は?<英・仏・米・亜(中・印)>~ ◎ ◎ 第2時 革命①~革命により何が変わったのか?<市民革命>~ ◎ ◎ 第3時 革命②~革命は何をもたらしたのか?<産業革命>~ ◎ ◎ 第4時 革命③~革命の影響と欧米諸国のアジア進出~ ◎ ◎ 第5時 ゆらぐ幕府の支配 ◎ ◎ 第6時 開国(★本時) ◎ ◎ 第7時 江戸幕府の滅亡 ◎ ◎ (6)思考力・判断力・表現力を伸ばす方策(「BIWAKO TIME」「情報の時間」との関連) ・開国による国内の影響を思考ツール(+プラス-マイナスシート)で分析・整理する。 ・開国の影響をふまえて,開国の是非を総合的に判断し,グループ内で意見交流する。 (7)本時の目標 開国という歴史的事象を多面的・多角的に読み取り,その是非を総合的に判断することができる。 (評価規準 思②・技③) (8)資料・教具・準備など 教科書・資料集・ワークシート・ノート・プロジェクター 【授業で使用したワークシート(B5サイズ)】 【生徒が記入したワークシート(B5サイズ)】

(4)

(9)本時の学習過程(第6時) 学習内容と学習活動 指導上の留意点,★思・判・表を伸ばす方策,◆評価 導 入 1.開国とはどういうことか,当時の状況 をふまえて確認する。 ・江戸幕府の対外政策を踏まえた上で,開国とはどういうことか生徒 の解釈を確認させ,開国について再認識させる。 展 開 2.開国を迫る黒船来航により,幕府が動揺したこ とを知る。 3.開国という選択がもたらしたものは何 か確認させ,その影響について考える。 4.開国の是非について,自分の考えを書く。 5.開国の是非を総合評価する。 6.評価結果をグループ内で意見交流する。 7.開国の評価を最終判断する。 ・開幕始まって以来の一大事に,幕府を含め日本が大きく揺れる中で,対外 政策に対する選択が迫られたことを意識させる。その際,アメリカ大統領の 国書やペリーの風刺画等を示し,当時の状況を想起させる。 ・開国とは諸外国と条約(主な条約として日米和親条約と日米修好通商条約 を提示)を結ぶことでもあったことを確認させ,そのことによる国内の影響 について考えさせる。 ★+-シートを用いて,開国の影響を分析・整理する。 ・当時の日本にとっての開国について, 自分の考えを書かせる。 ・自分の考えをふまえ,日本にとっての 開国を三段階で評価させる。その際,判断 理由を考えるよう促す。 <評価方法:三段階評価> ○=開国は良かった △=開国は良い面と良くない面の両面ある ×=開国は良くなかった ・評価結果について判断理由を踏まえて,意見交流させる。 ・自分の評価を再考し,最終判断させ, ○・△・×にわけた黒板に,自分の評価 結果をマグネットネームシートで示させ る。 ★評価を判断するにいたった過程や判断理由などを述べさせる。 ◆[思考・判断・表現]規準②・③:ワークシート・ノート ま と め 8.開国後の影響を踏まえて,次回の内容を想起す る。 ・次回が,江戸幕府の滅亡と近世の終焉であると触れておく。 開国の是非について考えよう

(5)

(10)成果と課題 今回の授業は,判断にスポットをあてた歴史的分野に おける実践であった。特に生徒一人ひとりが「開国を評 価する」ことで,判断する場面を提案する形となった。 また,本授業が本校の研究協議会であったため,公開授 業として多くの参会者と共に授業研究協議に臨むこと ができた。 次に本実践の山場である「開国の是非を評価する」場 面にいたる前段で,生徒が「+-シート」(思考ツール) を用いて開国の影響をどのように分析したかを示して おく。 【+(プラス)】 ・外国とのつながりを持つことで国が進展した。 ・外国の商人と盛んに取引が行えるようになった。 ・港のある町が栄えた。 ・貿易港周辺の商業が盛んになった。 ・外国の技術を手に入れられた。 ・生糸の原料となる日本の蚕が売れるようになった。 ・外国と友好的になれる。 【-(マイナス)】 ・生糸などの品不足により,絹織物業が圧迫された。 ・物価が高くなって経済が混乱した。 ・貨幣価値が低下した。 ・日本に関税自主権がなかった。 ・日本の金が流出した。 ・不平等な条約を結ぶことになった。 ・攘夷運動が激化した。 ・桜田門外の変などが起きるなど,政情が不安定と なった。 ・貿易赤字となった。 ・海外から安い綿織物が輸入されることにより,綿 織物業が打撃を受けた。 以上のように,生徒は教科書や資料集から開国による 影響を「+-シート」に整理しながら分析することがで きた。この過程を経ることで,開国に対して自分はどう 捉え,どう考えるのかを述べることができたと考える。 次に示すのは,そうした過程を経て,記述された開国 に対する生徒の「自分の考え」の一部である。 ・最初はアメリカの方が圧倒的に強かったので言わ れるがままになってしまった。それがために,経 済が混乱。 ・日本にとってはマイナスのことの方が多かったと 思う。不利か有利かを考えて開国すれば良かった と思う。 ・日本が無理やり条約を結ばされた形なので日本に とって納得のいく取引ではなかった。メリットに 対してデメリットが多い。 ・貿易のおかげでにぎやかにはなったが,さらに物 価が高騰したり,国内で品不足が起こったりとあ まり日本にとってよくない状況が続いたと思う。 ・商業が盛んになり,外国の技術が得られたが金貨 や生糸が外国へ流されたり,国内の産業が成り立 たなくなってきたりするなど問題点も多い。 このように「+-シート」で分析した内容をもとに自 分の考えを記述しており,その内容の多くはマイナス面 を強調する記述が多かった。ただ,プラス面についても 言及していることから,「+-シート」による分析が生 かされた形となっていることが伺える。 以上の流れを踏まえて,本時の山場である「開国の是 非を評価する」こととなる。すると,先の自分の考えで は,マイナスの要素の印象が強いとされる記述が多かっ たが,結果は次のようになった。 ○=開国は良かった 【1人】 △=開国は良い面と良くない面の両面ある 【20人】 ×=開国は良くなかった 【16人】 最終的に三段階で評価することになったわけだが,そ の多くが「×」とはならなかった。つまり,前段の自分 の考えを述べる場面では,内容から「×」の評価に偏る ことが予想されるのであるが,「開国の是非を評価する」 となると一概に「×」とはならなかったのである。つま り,この場面で「開国の是非を評価する」ことに対して 生徒の「判断」が見られたのである。○・△・×の評価 理由のおもなものは次の通りである。 【○】 ・いろいろとマイナスの部分もあるが,外国と貿易 をしたりして他の国のこともわかったので良かっ たと思う。もし,開国していなかったら,日本は もっと外国に遅れていたと思う。 【△】 ・開国をしなければ,イギリスに清がやられたよう に日本がアメリカにつぶされていたかもしれな い。 ・今の時点ではマイナス面の方が多いけれど,これ から日本がどう外国と貿易していくかで変わって くる。文化は入ってきたと思うからそういう面で はプラスになると思う。 ・江戸の当時は,日本の権利がうすいなど日本にと って良くなかったけれど,長い目で見ると現在で は良くなっているし,また横浜がにぎわうように もなったから良かった面もある。 ・開国をしたことで,開国しなかったことを理由に 攻められなくなり,外国の技術を手に入れること ができたのはいいが,金貨や生糸の流出や関税自 主権が認められなかったことから経済が混乱した

(6)

のは良くないと思う。 【×】 ※上述の「自分の考え」と同じ内容が多いため割愛。 このように「開国の是非を評価する」について,生徒 がどの部分に価値を置いているかを確認することがで きた。ただ,実際の記述からはプラスの要素よりマイナ スの要素の方が具体的な内容として示されることとな り,その多くが経済的内容の記述が目立っていたことも 事実である。これは,中学生が扱う教科書や資料集の内 容がそういった点について触れていることによるとこ ろが大きいと考えられる。この点については,協議会に おいてプラスの資料が不足していたとの指摘の通りで ある。とりわけ,社会科の学習において社会的事象を客 観的に捉える場合,どの資料(歴史的分野の場合は史料) を扱うかは重要である。より客観的に事象を捉えようと するならば,異なる性質の資料を同等数準備し,提示す る必要があろう。今回は,その部分についてはやや資料 (史料)の準備不足が見られた結果となったと言える。 また,「開国の是非を評価する」場面では,当時の当 事者の立場(開国当時の日本側の立場)で評価すること を前提としていたが,結局,立場が徹底しきれず,評価 理由の記述内容の下線部分(筆者加筆)にあるように, 仮定や予想,未来からの振り返りといった内容が見られ ることとなった。「開国の是非を評価する」のはあくま で当時の立場で「開国」をどう評価(判断)するかであ り,現代に生きる私たちが結果やその後の経緯を知った 上で,評価(判断)するものではないのである。そのあ たりは,協議会でも「歴史的事象を判断する」ことへの 難しさが指摘された。 今回のような「判断」を扱う場合,次のような思考活 動が想定される。 ・「判断」の『理由』・『根拠』・『是非』・『価値』・『過程』 を問う思考活動。 ただし,同じ「判断」であってもその「判断」をする主 体が誰かによって,中身は異なってくる。つまり,既に 「判断」された内容を生徒が「判断」の価値づけをする 場合と生徒自身がその立場で「判断」をする場合とによ る違いである。今回の「開国の是非を評価する」という 活動では,既に「判断」された結果としての開国に対す る評価(価値判断)であったが,判断する主体が「当事 者」の視点と「未来人」の視点といったように両者が混 同されており,学級全体の思考活動として主体者が統一 しきれなかった点が反省点であった。歴史的分野の場合, どうしても「未来人」,つまり現代に生きる者の目で過 去を見てしまうため,歴史的事象の公正な「判断」がで きにくくなってしまうということである。やはり,歴史 的分野の場合,どの立場で「判断」させるのかを明確に する必要があるといえよう。 5.授業実践Ⅱ(平成26年1月~・第2学年) 4の実践を経て,第2学年の歴史的分野で再度,「判 断」にスポットを当てた実践を行った。単元は,4の実 践と同じく大項目「近代の日本と世界」のうち,明治時 代にあたる「近代国会へのあゆみ」を扱うこととした。 ここでは,明治維新をテーマに新政府が行った新しい 改革をピックアップさせ,具体的にどのようなカテゴリ ーに分類できるかを前段で 【付箋を用いて分類】 捉えさせた。 その後,明治維新で目指 すところとなる日本の近代 化にスポットを当てた。こ こで扱う近代化政策を「殖 産興業」・「徴兵令」・「学制」 ・「地租改正」の4つに絞り,4人グループ内で担当を 決め,政策の概要等を調べ学習させた。その際,ただ調 べるだけでなく,新政府の役人の立場で自分が担当する 政策の重要度を説くよう指示した。次にグループ内で交 流させ,「判断」の場面につなげた。今回の「判断」は, 立場を当時の新政府とし,4つの近代化政策の重要度を ランキングするのではなく,政策を優先度の高い順に並 べかえるという課題にした。そうすることで,当時の日 本の近代化をより効果的に進めるのにまず何が必要か という点を「判断」させるようにした。結果は,最優先 にすべき政策として,「殖産興業」・「地租改正」に集中 した。その「判断」理由としては,日本の経済的基盤の 確立の必要性を挙げる声が多かった。 6.まとめ 社会科の求める「思考・判断・表現」のうち,これま で,「思考」や「表現」に注目する実践はあったが,「判 断」に特化した実践は少ないと感じている。とはいえ, 社会科において「公正な判断」を求めている以上,「判 断」を意識させることは重要であるといえよう。ただ, 「思考」すること,「判断」すること,「表現」すること は,個別に育成する要素ではなく,三要素が一体となっ て培われていく力であると考える。ある社会的事象につ いて思考する際,一定の「判断」が働くであろうし,「思 考」したり,「判断」したりしたことを「表現」する場 面においても,「表現」の仕方を「思考」し,「判断」し て「表現」しているはずである。そういう点で,「思考」 →「判断」→「表現」といった単純な連続性の思考過程 を求めるのではなく,「思考」と「判断」と「表現」が 行きつ戻りつしながら,その総体として社会的思考 力・判断力・表現力の育成を求めたい。そのためにも, 今後も引き続き,社会科の学習活動や学習課題におい て言語活動の充実を図る手立てを模索し,社会的思考 力・判断力・表現力を高めていきたい。

参照

関連したドキュメント

自ら将来の課題を探究し,その課題に対して 幅広い視野から柔軟かつ総合的に判断を下す 能力 (課題探究能力)

地方創生を成し遂げるため,人口,経済,地域社会 の課題に一体的に取り組むこと,また,そのために

アナログ規制を横断的に見直すことは、結果として、規制の様々な分野にお

「社会人基礎力」とは、 「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な 力」として、経済産業省が 2006

[r]

印刷物をみた。右側を開けるのか,左側を開け

目的3 県民一人ひとりが、健全な食生活を実践する力を身につける

 今日のセミナーは、人生の最終ステージまで芸術の力 でイキイキと生き抜くことができる社会をどのようにつ