• 検索結果がありません。

重度知的障害のある人を対象とした国際生活機能分類ICFコアセットの作成

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "重度知的障害のある人を対象とした国際生活機能分類ICFコアセットの作成"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

重度知的障害のある人を対象とした国際生活機能分

類ICFコアセットの作成

著者

藤田 昌也

(2)

−1− 氏 名 学 位 の 専 攻 分 野 の 名 称 学 位 記 番 号 学位授与の要件 学位授与年月日 学 位 論 文 題 目 論 文 審 査 委 員 (主査) (副査)

藤 田 昌 也

重度知的障害のある人を対象とした

国際生活機能分類ICFコアセットの作成

博 士(心理学)

甲文第150号(文部科学省への報告番号甲第508号)

学位規則第4条第1項該当

2014年3月1日

松 見 淳 子

米 山 直 樹

井 出   浩

教 授 教 授 教 授

論 文 内 容 の 要 旨

 藤田昌也氏の博士学位請求論文の目的は、重度知的障害のある人を対象に2001年に世界保健機関(WHO) が発表した ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)の日本語版である「国 際生活機能分類―国際障害分類改訂版―」の有効性を検討することである。ICF は「健康状況と健康関連状 況を記述するための、統一的で標準的な言語と概念的枠組みを提供することを目的とする分類」(厚生労働省、 2002)として世界的にもその重要性が認められている。藤田氏は、重度知的障害のある人々のアセスメント を目標にした ICF コアセットを作成し、その有用性を検討している。コアセットとは、実践的な場面での ICF の利用を進めるために特定の疾病や特定の環境に合わせて必要な項目を選出したアセスメント・ツール を指す。  我が国の重症心身障害児施設は、福祉施設として入所者の日常生活を支えると同時に、医療機関として必 要な医療、看護、機能訓練などを提供する総合的な療育の施設として機能している。この施設の利用者は発 達的、医学的、生活機能上の問題を抱えているため、18歳以上の成人にも対応できるように、重症心身障害 児施設を医療制度上は病院として位置づけている。したがって、本博士論文研究の対象者には10歳代から60 歳代までの利用者が含まれている。6つの施設における実態調査の立ち上げから ICF コアセットの作成に 至るまで数年を要した大規模なフィールド研究である。  第1章の序論では、重度知的障害のある人への支援モデルを概観している。ICF は障害の生物医学モデル から生物心理社会モデルへの発展的移行の一環として位置づけられている。ICF の概念的枠組みによると、 人の健康状態は、生活機能と環境因子、および個人因子との相互作用により規定され、これら三つの要素は 具体的な項目の分類で示されている。藤田氏は、研究の主題である知的障害の定義と分類および支援につい て、我が国の状況を踏まえた文献の歴史的展望を行ったうえで、最新の生物心理社会モデルに基づいた健康 状態のアセスメントを掲げている。アセスメントには多職種の連携が必要であることを説き、そのなかで心 理職が貢献し得る技能について検討し、ICF コアセットの作成に関わる5つの実証的研究へと結びつけてい る。  研究1では、6つの施設を対象とし、生活支援員と看護師を対象に ICF の認知度と活用状況、および現 在のアセスメントの活用状況に関する調査を実施した。結果、臨床現場での ICF の認知度は低く、世界的 潮流にも関わらず ICF は活用されていないという現状が明らかとなった。

(3)

−2−  研究2は、研究の対象となった重症心身障害児施設における重度知的障害のある利用者の実態を明らかに することを調査目的として行われた。日本で60余年にわたり広く活用されている知的障害に関する「大島の 分類」によると、最も重度の知的障害および運動機能の障害を持つ施設利用者が博士論文研究の対象である ことが確認された。さらに、利用者の多様性が示され、重度の知的障害のある利用者には、身体障害を伴う 利用者と身体障害は比較的軽度であるが自閉症を伴い、行動的な問題を示す利用者が多いことも示された。  研究3では、多職種で構成される ICF 検討委員会を設け、重度の知的障害のある人を対象とした ICF コ アセットによるアセスメントシステムを作成した。コアセットとして、心身機能45項目、身体構造15項目、 活動参加43項目、環境因子11項目の計114項目が選出され、それらの評価を包括的に要約するためのアセス メントシートが作成された。  研究4では、17名の施設利用者をモデルケースとした評価を実施し、ICF コアセットに基づくアセスメン トの有用性を検討している。多職種への調査では、ICF コアセットを用いて評価した利用者の全体像の把握 や多職種の連携および情報の有用性に関する質問群に対して、概ね良好な回答が得られたことを報告してい る。  研究5では、ICF コアセットによるアセスメントを行った自閉症を伴う最重度知的障害のある成人利用者 1名に対する指導内容を報告している。応用行動分析を用いて、生活機能を高めるために、時計の一時間単 位の読みと時系列の順序を標的スキルに定め、段階的に指導した結果、対象者がこれらのスキルを習得でき たことを報告している。  第3章、総合論議では、重度知的障害のある人を対象とした ICF コアセットの有用性と今後の課題を検 討し、博士論文を結んでいる。

論 文 審 査 結 果 の 要 旨

 藤田昌也氏の博士論文研究の目的は、重度知的障害のある人を対象に、2001年に世界保健機関(WHO) が発表した ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)の日本語版である「国 際生活機能分類―国際障害分類改訂版―」の有用性を検討することである。ICF は「健康状況と健康関連状 況を記述するための、統一的で標準的な言語と概念的枠組みを提供することを目的とする分類」(厚生労働省、 2002)として世界的にもその重要性が認められている。藤田氏の博士論文研究は、大規模な重症心身障害 児施設で ICF 導入の促進を試みた点において、独創的かつ意欲的である。ICF コアセットとは、実践的な 場面での ICF の利用を進めるために特定の疾病や特定の環境に合せて必要な項目を選出したアセスメント・ ツールを指す。これまでの「障害」に関する分類に留まらず、人の「健康」に関わる側面についてのアセス メントを重視した ICF の概念的枠組みは、障害の生物心理社会モデルの考え方に一致するものであることを、 博士論文では序論から一貫して明確に論じている。藤田氏の研究は心理職として数年間に及び、多職種の連 携を土台にしたスケールの大きいフィールド研究として高く評価できる。  研究1と研究2は実態調査であり、ICF の認知度は生活支援員と看護師ともに低いことが分かった。研究 2では、重症心身障害児施設の利用者について実態調査を実施した結果、重度および最重度知的障害のある 利用者の多様性が示されたことから、コアセットでは項目の広がりを考慮する必要性があることが判明した。  研究3は、ICF コアセットの作成に関わる基盤的な研究であり、多職種による ICF 検討委員会を設置し、 項目の初期選出から最終選別、およびコアセットのモデルケースへの試験的適用と評価の過程が報告されて いる。コアセット作成の標準的な方法が存在しない現状下、藤田氏の研究はこの分野で先駆的な役割を果た したことを評価する。もともと ICF 本体は1400を超える項目から構成されるため、その中から重症心身障 害児施設の利用者を対象としたコアセットの項目を妥当に選別することは容易ではない。藤田氏は、現場に

(4)

−3− 詳しい多職種の経験に基づく選別方法を採用し、最終的に心身機能45項目、身体構造15項目、活動参加43項 目、環境因11項目の計114項目を選出した。コアセットに基づく包括的なアセスメント用紙の作成は、この 研究の最大の成果として評価できる。  研究4では、17名のモデルケースを対象に看護師と生活支援員による ICF コアセットによるアセスメン トを実施し、項目判定の信頼性を確認したうえで、質問紙を用いてコアセットの適切性および実施の便宜性 などについて検討を行っている。評価に時間がかかりすぎるなど楽観できない数値も結果に含まれているが、 今後、職員研修を導入することで現場への普及の促進が期待できる。  研究5では、ICF コアセットによるアセスメントを行った自閉症を伴った最重度知的障害のある利用者の 行動的指導の事例を報告し、ICF コアセットの有用性と結びつけている。しかし、コアセットの多岐にわた る項目と、焦点を絞った標的行動のアセスメントとの整合性については十分な検討が行われておらず、照準 化した行動アセスメントだけでよいとする考えもあることを指摘しておく。また、ICF コアセットによるア セスメントと指導内容の整合性の問題は世界的にまだ検討が十分に行われていないことも現状である。  2014年1月29日に実施された口頭試問では、コアセットの「コア」の意味について活溌な議論が交わされ た。今後はコアセットの幅広い普及に向けて他の施設での試行の必要性も認められた。また、社会的妥当性 の観点から、ICF コアセット作成の目的をさらに検討することが期待されるなど、博士論文研究の成果の応 用に向けて、今後の実践研究の発展が強く望まれる。論文の総合考察では、これらの課題の検討をさらに掘 り下げて行い、博士論文研究の限界点と併せて検討されたいとの意見も出た。これらの課題は、いずれも今 後、著者および当該分野が長期的、継続的に検討していく性質のものである。  総じて、藤田氏の博士論文研究はこれまで作成されてこなかった ICF コアセットを作成し、その有効性 を実証的に検討しようとした点において高く評価できる。これだけの規模のアセスメント・ツールの導入と 調査研究を実施できたことは、藤田氏の研究能力と臨床現場における牽引力を裏付けるものであり、研究は 博士論文としての水準を十分に満たしているものと判断する。  藤田氏は2014年1月10日に博士論文の公開発表を本学F号館で行った。審査委員会は、本博士学位申請論 文を慎重に審査し、1月29日に実施した口頭試問における結果と学会や医療現場などにおける諸活動から判 断し藤田昌也氏が博士(心理学)の学位を授与されるにふさわしいとの結論に達したのでここに報告する。

参照

関連したドキュメント

本章では,現在の中国における障害のある人び

Denison Jayasooria, Disabled People Citizenship & Social Work,London: Asean Academic Press

・公的年金制度の障害年金1・2級に認定 ・当社所定の就労不能状態(障害年金1・2級相当)に該当

A経験・技能のある障害福祉人材 B他の障害福祉人材 Cその他の職種

わが国の障害者雇用制度は、1960(昭和 35)年に身体障害者を対象とした「身体障害

目的 これから重機を導入して自伐型林業 を始めていく方を対象に、基本的な 重機操作から作業道を開設して行け

在宅の病児や 自宅など病院・療育施設以 通年 病児や障 在宅の病児や 障害児に遊び 外で療養している病児や障 (月2回程度) 害児の自

平成 支援法 へのき 制度改 ービス 児支援 供する 対する 環境整 設等が ービス また 及び市 類ごと 義務付 計画的 の見込 く障害 障害児 な量の るよう