はじめに 山間地域における産業廃棄物の堆積場および処理 場は現在に比べかつてはかなりずさんで各地で課題 を抱えている場合が多い。産業廃棄物処理場下流に 位置する弥高山地区の関屋池、八高池、谷川中流の 平成13年より平成16年の間および平成17年5月にお ける水質検査結果について検討し、水稲栽培等に影 響被害が出ない様に水質調査及び水稲への影響評価 を行ったので経過を報告します。平成13年度は年間 5回、平成14年より15年の間は年間4回の水質検査 が行われた。ここまでの結果から水質に大きな変化 はないことが確認されたので、水質検査の頻度は平 成16年度は年間4回、平成16年度は田植え前、収穫 1月前および12月の年間3回の検査とした。なお平 成17年度は第1回目調査が終了した時点までの結果 を対象に検討した。 調査地点は上流部の弥高山に廃棄物処理場があ り、その排水による農業用水のみならず環境影響を 知るために一般化学成分のみならず有害化学成分お よび農薬、環境ホルモンなどを追加して、谷川中流 部および下流部のため池である関屋池および八高池 の3地点において水質検査が定期的に実施された。 水質検査結果から、有害化学物質については、基 準値以上の検出は認められなかった。有害化学物質 として水質検査された成分は、カドミウム(Cd)、 シアン(CN―)、鉛(Pb),六価クロム(Cr(VI))、 砒 素(As)、総 水 銀(Total−Hg)、PCB、フ ッ 素 (F−)、ホウ素(B),トリクロロエチレン、テトラ クロロエチレン、四塩化炭素、ジクロロエタン、 1.2−ジクロロエタン、1.1.1−トリクロロエタン、 1.1.2−トリクロロエタン、1.1−ジクロロエチレ ン、シスー1.2−ジクロロエチレン、1.3−ジクロロ プロペン、チウラム、シマジン(CAT)、チベンカ ルブ、ベンゼン、セレン(Se)、フタル酸ジエチル ヘキシルなど農薬およびプラスチック可塑剤など環 境ホルモン様物質を含みの、合計47項目広範囲の水 質検査を行い、これらの影響はきわめて少ないこと を確認した1−17)。また農業用水等としての水質検査 結果も、概して上流の処理場の影響を3調査地点の 中では最も受ける谷川中流地点の水質は、関屋池、 吉備国際大学 政策マネジメント学部研究紀要 第3号,101−111,2007
産業廃棄物堆積場下流の水質変化の推移
−岡山県真備町のケーススタディ−
村本
茂樹
Changes in water quality from the landfill of industrial waste −Case study of Mabi−cyo in Okayama prefecture−
Shigeki MURAMOTO
吉備国際大学 政策マネジメント学部 環境リスクマネジメント学科 〒716−8508 岡山県高梁市伊賀町8
Department of Environmental Risk Management, School of Policy Management, Kibi International University 8, Igamachi, Takahashi, Okayama, 716−8508, Japan
八高池に比べ pH がやや高く、塩化物、硫酸イオ ン、電気伝導度がやや高く、全蒸発残留物および大 腸菌数もやや高い傾向にあった。各地点における年 度ごとの水質検査結果の評価は以下の通りである。 1.関屋池の水質検査結果について Photo.1 関屋池の全景 pH 値 は pH6.8∼9.5 の 範 囲 に あ り、平 均 pH 7.6でやや高いが問題は無い。また BOD 値も1.2∼ 7.0mg/L の範囲にあり、平均値は BOD3.0mg/L で汚濁は強くない。しかし、COD 値は5.8∼15.0 mg/L の範囲で、平均値が COD0.5mg/L とやや高 濃度を示し、農業用水基準値の6.0mg/L を大きく 上回っているが、池の規模は小さく、藻類などによ る湖内生産が大きいため、COD 値に反映したもの と推察される(Photo.1)。これは他の検査項目の窒 素やリンも富栄養化の限界値以下ではあるが、やや 高めであることなどが関係していると推察される。 電気伝導度は基準値30mS/m に比べ15∼37mS/m で、平均値は21.8mS/m であった。溶存酸素濃度 (DO)は5.5∼15mg/L の 範 囲、平 均 値9.7mg/L の高濃度を保っており、基準値の5.0mg/L 以上を 十分にクリヤーしていることなどを考慮すると、水 稲栽培に対しては特に 問 題 に な る と は い え な い (Figs.1,Figs.2)。また河川中流部に設置している 水浄化装置の機能をさらに効率的に稼働すれば問題 は解消されると考え、検査結果が出た際にその注意 および対処報告してきた。SS も1.0∼11mg/L の範 囲 で、平 均4.8mg/L で あ り、基 準 値 の0.01mg/L を大きくクリヤーしており水質汚濁は強くないと判 断される。また、栄養塩関係の総リンは濃度範囲が 0.013∼0.5mg/L であり、平均濃度は0.05mg/L で あった。濃度がやや高いが通常の池の水質としては 高濃度とはいえない(因みに児島湖では平均値が 0.053mg/L)。ただ高濃度が継続されれば問題が生 じる可能性はあるがそれは現在のところは無く、中 流部の水浄化装置の稼働に対し引き続き注意が必要 である。アンモニア性窒素の濃度範囲が0.05∼1.0 mg/L であり、平均濃度は0.19mg/L であり、硝酸 イオンの濃度範囲は0.1∼6mg/L であり、総窒素は 0.41∼1.9mg/L の範囲で、平均0.84mg/L あった。 やや時期による濃度変動が大きいが、平均的には農 業用水基準の1.0mg/L を下回っており、八高池に 比べ窒素の成分がやや高いが、農業用水としては特 に問題になる濃度ではないと判断される。したがっ て、さらに水質を改善するためには、上流に設置し た水処理施設の稼働に十分注意を払いながら調整を していくことが必要と考えられる(因みに児島湖の 平均値は1.8mg/L)。次に塩化物イオンと硫酸イオ ンについてみると、塩化物イオン濃度範囲は10∼52 mg/L、平均21.3mg/L、硫酸イオンの濃度範囲は 11∼81mg/L、平均31.4mg/L であり、いずれも上 流の影響をやや受けていると推察される。特に農作 物などに影響の出る濃度ではないと考えられる(塩 化物イオン、硫酸イオンの農業用水基準値はなく、 水道水基準値では塩化物イオン濃度は200mg/L)。 全蒸発残留濃度の範 囲 は120∼270mg/L で、平 均 163mg/L と八高池に比べやや高い(Figs.3)。しか し溶解成分濃度は我が国の河川水質よりは高いが、 世界の河川水の平均値程度であり問題はないと考え られる(因みに水道水の基準値は500mg/L)。 なお、下流部の地下水(井戸水)などへの影響も 102 産業廃棄物堆積場下流の水質変化の推移−岡山県真備町のケーススタディ−
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Ⴎൻ‛䉟䉥䊮䋨㑐ደᳰ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪈㪇 㪉㪇 㪊㪇 㪋㪇 㪌㪇 㪍㪇 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ Ⴎൻ ‛䉟 䉥 䊮 㩿㫄 㪾㪆 㪣 㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ 㔚᳇વዉᐲ䋨㑐ደᳰ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪌 㪈㪇 㪈㪌 㪉㪇 㪉㪌 㪊㪇 㪊㪌 㪋㪇 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ 㔚᳇ વዉ ᐲ㩿㫄 㫊㪆 㫄 㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ ᄢ⣺⩶ᢙ䋨㑐ደᳰ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪉㪇㪇 㪋㪇㪇 㪍㪇㪇 㪏㪇㪇 㪈㪇㪇㪇 㪈㪉㪇㪇 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ ᄢ⣺ ⩶ᢙ 䋨䌍 䌐 䌎 㪆 䋱 䋰 䋰 䌭 䌌 䋩 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ ో⫳⊒ᱷ⇐‛䋨㑐ደᳰ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪌㪇 㪈㪇㪇 㪈㪌㪇 㪉㪇㪇 㪉㪌㪇 㪊㪇㪇 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ ో⫳ ⊒ᱷ ⇐‛ 㩿㫄 㪾㪆 㪣㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ 考慮して、農業用水以外に水道水の監視項目および それらに含まれない有害化学物質の項目についても 調査を実施して、安全性への検討を行った。その結 果、いずれの項目においても、環境基準値(B 類 型)以下の濃度であり、概ね危険性はないと判断さ れた。検査項目は陰イオン界面活性剤(MBAS), カドミウム、シアン、鉛、六価クロム、砒素、総水 銀、アルキル水銀、PCB,フッ素、ホウ素、トリク ロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭 素、ジクロロエタン、1.2−ジクロロエタン、1.1.1 −トリクロロエタン、1.1.2−トリクロロエタン、 1.1−ジクロロエチレン、シスー1.2−ジクロロエチ レン、1.3−ジクロロプロペン、チウラム(CAT)、 チベンカルブ、ベンゼン、セレン、フタル酸ジエチ ルヘキシルである。水質検査の結果、フッ素、ホウ 素以外は定量限界値以下であり、フッ素、ホウ素に ついても特に影響のある濃度ではなかった。 こ れ ら の 結 果 か ら、八 高 池 の 水 質 に つ い て は COD 値が高濃度を示す時期があったが、これは池 内における藻類の繁殖などによる影響と考えられ、 溶存酸素の濃度も十分であり特に問題はないと推察 された。他の栄養塩類、大腸菌数も基準値以下にあ り、有害化学物質は認められなかったことから水質 は上流からの影響は出ていないと判断される。しか し、中流の水浄化装置の稼働が順調であればさらに 良い水質の確保が可能であり注意が必要と考えられ る。特に水稲の生育に対しては植付期の水質が影響 しやすく要注意である。分けつ期、穂孕期にも有害 化学物質の影響による障害が発生しやすいが、現在 のところ影響は出ない水質を保っていると判断され る。 2.八高池の水質検査結果について pH 値は pH6.7∼8.3の範囲にあ り、平 均 pH7.4 で問題は無い。また BOD 値も1.2∼7.1mg/L の範 囲にあり、平均値は BOD3.1で汚濁は強くない。 Figs.3 関屋池の水質(塩化物イオン、電気伝導度、 大腸菌数、全蒸発残留物)の経年変化 104 産業廃棄物堆積場下流の水質変化の推移−岡山県真備町のケーススタディ−
し か し COD 値 の 範 囲 は5.6∼17.0mg/L で、平 均 値が COD10.7mg/L と高濃度を示し、農業用水基 準値の6.0mg/L を大きく上回っているが、池に規 模が一般の湖沼とは小さく、いわゆる藻類などによ る湖内生産が大きく、COD 値に反映したものと推 察される。これは他の検査項目の窒素やリンも富栄 養化の限界値以下ではあるが、やや高めであること などが関係していると考えられるが、電気伝導度も 基準値の約1/2の10∼26mS/m で平均14.2mS/m であること、溶存酸素濃度(DO)も5.6∼12mg/L の範囲で、平均値は9.3mg/L の高濃度を保ってお り、基準値の5.0mg/L 以上を十分にクリヤーして おり特に問題になるとはいえない(Figs.4,Figs.5)。 河川中流部に設置している水浄化装置の機能をさら に効率的に稼働すれば問題は解消されると考え、そ の注意および対処を報告している。SS も2.0∼10 mg/L の範囲で、平均5.1mg/L であり、基準値 の 100mg/L を大きくクリヤーしており汚濁は強くな いと判断される。 また栄養塩関係の総リンは濃 度 範 囲 が0.017∼ 0.11mg/L であり、平均濃度は0.04mg/L であり、 やや高いが通常の池の水質としては高濃度とはいえ ない(因みに児島湖では平均値が0.053mg/L)。ア ンモニア性窒素の濃度範囲は0.05∼0.21mg/L であ り、平均濃度は0.09mg/L である。また硝酸イオン の濃度範囲は0.06∼0.06mg/L であり、特に高くな い水質を保っている。総窒素は0.21∼3.6mg/L の 範囲で、平均0.9mg/L と、やや時期による濃度変 動が大きいが、平均的には農業用水基準の1.0mg/ L を下回っており、上流の水処理施設の稼働に十分 注意を払いながら調整をしていく注意が必要と考え られる(因みに児島湖の平均値は1.8mg/L)。次に 塩化物イオンと硫酸イオンについてみると、塩化物 イオン濃度範囲は6.0∼27mg/L、平均13.4mg/L、 硫酸イオンの濃度範囲は3.7∼120mg/L、平均20.0 mg/L であり、いずれも上流の影響をやや受けてい ると推察されるが、特に農作物に影響の出る濃度で はないと考えられる(塩化物イオン、硫酸イオンの 農業用水基準値はなく、水道水基準値では塩化物イ オン濃度は200mg/L)。全蒸発残留濃度の範囲は96 ∼190mg/L で、平均121mg/L と溶解成分濃度は我 が国の河川水質よりは高いが、世界の河川水の平均 値程度であり問題はないと考えられる(因みに水道 水の基準値は500mg/L)(Fig.6)。およびそれらに 含まれない有害化学物質の項目についても調査を実 施し、安全性への検討を行った。その結果、いずれ の項目においても、環境基準値(B 類型)以下の濃 度であり、概ね危険性はないと判断された。検査項 目は陰イオン界面活性剤(MBAS),カドミウム、 シアン、鉛、六価クロム、砒素、総水銀、アルキル 水銀、PCB,フッ素、ホウ素、トリクロロエチレ ン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素、ジクロロ エタン、1.2−ジクロロエタン、1.1.1−トリクロロ エタン、1.1.2−トリクロロエタン、1.1−ジクロロ エチレン、シスー1.2−ジクロロエチレン、1.3−ジ クロロプロペン、チウラム(CAT)、チベンカルブ、 ベンゼン、セレン、フタル酸ジエチルヘキシルであ る。フッ素、ホウ素以外は定量限界値以下であっ た。なお、下流部の地下水(井戸水)などへの影響 も考慮し、農業用水以外に水道水の監視項目および それらに含まれない有害化学物質の項目についても 調査を実施し、安全性への検討を行った。 こ れ ら の 結 果 か ら、八 高 池 の 水 質 に つ い て は COD 値が高濃度を示す時期があったが、これは池 内における藻類の繁殖などによる影響と考えられ、 溶存酸素の濃度も十分であり特に問題はないと推察 された。他の栄養塩類、大腸菌数も基準値以下にあ り、有害化学物質は認められなかったことから、水 質は上流からの影響は出ていないと判断される。し かし、中流の水浄化装置の稼働が順調であればさら に良い水質が保てると考えられ注意が必要と考えら れる。特に水稲の植付期の水質が影響しやすく要注 村本 茂樹 105
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Figs.4 八高池の水質(pH,BOD,COD,DO)の経年変化 Figs.5 八高池の水質(総窒素、アンモニア窒素、
硫酸イオン、総リン)の経年変化
Ⴎൻ‛䉟䉥䊮䋨㜞ᳰ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪌 㪈㪇 㪈㪌 㪉㪇 㪉㪌 㪊㪇 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ Ⴎൻ ‛䉟 䉥 䊮 㩿㫄 㪾㪆 㪣 㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ 㔚᳇વዉ₸㩿㫄㫊㪆㫄㪀 㪇 㪌 㪈㪇 㪈㪌 㪉㪇 㪉㪌 㪊㪇 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ 㔚᳇ વዉ ₸㩿㫄 㫊㪆 㫄 㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ ᄢ⣺⩶ᢙ䋨㜞ᳰ䋩 㪇 㪈㪇㪇㪇㪇 㪉㪇㪇㪇㪇 㪊㪇㪇㪇㪇 㪋㪇㪇㪇㪇 㪌㪇㪇㪇㪇 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ ᄢ⣺ ⩶ᢙ 㩿㪤 㪧㪥 㪆㪈 㪇㪇 㫄 㪣㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ 意であるがこれまでのところ影響も発生しておら ず、水質的にも影響の出る濃度ではないと判断され た。また調査時期による水質の濃度変動はあるもの の、分けつ期、穂孕期にも有害化学物質の影響によ る障害が発生しやすいが、小田川本流の流量は関屋 池、八高池からの水量に比べ極めて大きく、現在の ところ影響は出ない水質を保っていると判断された (Photo.2)。 3.谷川中流の水質検査結果について pH 値 は pH7.5∼8.2の 範 囲 に あ り、平 均 pH7.9 とやや高く、弱酸性を好む水稲には適切範囲をやや 超えて必ずしも好ましくないが、障害が出るほどの pH 値ではない。むしろカドミウムなどの重金属の 影響も現れにくい値であり、高梁川水系、成羽川水 系でも流域の岩質は石灰岩地帯であり、pH 値も 8.0前後を示しており特に問題は無い。有機的な汚 濁の指標である BOD 値は0.5∼2.6mg/L の範囲に あり、平均値は BOD1.1mg/L で汚濁は強くない。 また COD 値も2.0∼7.2mg/L の範囲で、平均値が COD4.9mg/L と農業用水基準値の6.0mg/L 以下 であり、この点は問題はないといえる(Figs.7)。 しかし、電気伝導度は農業用水基準値30mS/m に比べ、33∼67mg/L の範囲にあり、平均値は49.3 mS/m でありやや高く、溶解塩類が多いことを示 している。塩化物イオンと硫酸イオンについてみる と、塩化物イオンの濃度範囲は23∼100mg/L であ り、平均53.6mg/L、硫酸イオンの濃度範囲は54∼ 160mg/L、平均93mg/L であり、いずれも上流 の 影響をやや受けていると推察される。しかし、特に 農業などに影響の出る濃度ではないと考えられる (塩化物イオン、硫酸イオンの農業用水基準値はな く、水 道 水 基 準 値 で は 塩 化 物 イ オ ン 濃 度 は200 mg/L)。 Photo.2 関屋池、八高池の下流部の灌漑用水路 Fig.6 八高池の水質(塩化物イオン、電気伝導度、 大腸菌数)の経年変化 村本 茂樹 107
㫇㪟䋨⼱Ꮉਛᵹ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪎 㪎㪅㪉 㪎㪅㪋 㪎㪅㪍 㪎㪅㪏 㪏 㪏㪅㪉 㪏㪅㪋 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ 䌰䌈 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ 㪙㪦㪛㩿⼱Ꮉਛᵹ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪇㪅㪌 㪈 㪈㪅㪌 㪉 㪉㪅㪌 㪊 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ 䌂䌏 䌄 㩿㫄 㪾㪆 㪣㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ 㪚㪦㪛䋨⼱Ꮉਛᵹ䋩 㪇 㪈 㪉 㪊 㪋 㪌 㪍 㪎 㪏 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ 䌃䌏 䌄 㩿㫄 㪾㪆 㪣㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ 㪛䌏䋨⼱Ꮉਛᵹ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪈㪇 㪈㪉 㪈㪋 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ 㩿㫄 㪾㪆 㪣 㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ 全蒸発残留濃度の範囲は230∼570mg/L で、平均 378mg/L と関屋池、八高池に比べ2.3∼3倍高濃度 だが、溶解成分濃度は、世界の河川水の平均値の3 倍程度、わが国の河川水4倍程度であり、特に問題 はないと考えられる(因みに水道水の基準値は500 mg/L)。また溶存酸素濃度(DO)は6.0∼12mg/L の範囲で、平均値9.7mg/L の高濃度を保っており、 基準値の5.0mg/L 以上を十分にクリヤーしている ことなどを考慮すると特に問題になるとはいえな い。SS も1.0以下を保っており、水量は多くないも のの淀んではいないことを示しており、基準値の 100mg/L を大きくクリヤーしている。したがって 硫酸イオン、塩化物イオンの濃度がやや高い場合が ある他は水質汚濁はないと判断される。 また、栄養塩関係の総リンは濃度範囲が0.003∼ 0.06mg/L であり、平均濃度は0.01mg/L と低濃度 である(因みに児島湖では平均値が0.053mg/L)。 アンモニア性窒素は濃度範囲が0.02∼0.09mg/L で あり、平均濃度は0.05mg/L と低濃度であるが、硝 酸イオンの濃度範囲は0.03∼1.9mg/L であり、平 均0.81mg/L で あ っ た。総 窒 素 の0.45∼2.0mg/L の 範 囲 で、平 均1.2mg/L の 大 半 は 硝 酸 性 窒 素 に な っ て お り、酸 化 状 態 に あ る こ と と 判 断 さ れ る (Figs.8)。平均的には農業用水基準の1.0mg/L を 下回っており、関屋池、八高池に比べ窒素の成分が やや高いが、農業用水としては特に問題になる濃度 ではないと判断される(因みに児島湖の平均値は 1.8mg/L)。し か し、大 腸 菌 数 に 関 し て は、2∼ 150,000MPN/100mL と時期による変動が大きく、 畜産廃棄物などからの排水が混入した場合があると 推察され、注意が必要である。したがって、下流部 の地下水(井戸水)などへの影響をも考慮し、この 水系における上流からの影響には十分に注意を払う 必要があり、農業用水以外に水道水の監視項目およ びそれらに含まれない有害化学物質の項目について も調査を実施し、安全性の検討を行った。その結 Figs.7 谷川の水質(pH,BOD,COD,DO)の経年変化 108 産業廃棄物堆積場下流の水質変化の推移−岡山県真備町のケーススタディ−
✚⓸⚛䋨⼱Ꮉਛᵹ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪇㪅㪌 㪈 㪈㪅㪌 㪉 㪉㪅㪌 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ ✚⓸ ⚛㩿㫄 㪾㪆 㪣㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ ⎣㉄䉟䉥䊮䋨⼱Ꮉਛᵹ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪉 㪋 㪍 㪏 㪈㪇 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ ⎣㉄ 䉟 䉥 䊮 㩿㫄 㪾㪆㪣 㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ Ⴎൻ‛䉟䉥䊮䋨⼱Ꮉਛᵹ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪉㪇 㪋㪇 㪍㪇 㪏㪇 㪈㪇㪇 㪈㪉㪇 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ Ⴎൻ ‛㩿㫄 㪾㪆 㪣㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ 㔚᳇વዉ₸䋨⼱Ꮉਛᵹ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪈㪇 㪉㪇 㪊㪇 㪋㪇 㪌㪇 㪍㪇 㪎㪇 㪏㪇 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ 㔚᳇ વዉ ₸㩿㫄 㫊㪆 㫄 㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ 果、いずれの項目においても、環境基準値(B 類 型)以下の濃度であり、概ね危険性はないと判断さ れた。検査項目は陰イオン界面活性剤(MBAS), カドミウム、シアン、鉛、六価クロム、砒素、総水 銀、アルキル水銀、PCB、フッ素、ホウ素、トリク ロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭 素、ジクロロエタン、1.2−ジクロロエタン、1.1.1 −トリクロロエタン、1.1.2−トリクロロエタン、 1.1−ジクロロエチレン、シスー1.2−ジクロロエチ レン、1.3−ジクロロプロペン、チウラム(CAT)、 チベンカルブ、ベンゼン、セレン、フタル酸ジエチ ルヘキシルである。水質検査の結果、フッ素、ホウ 素以外は定量限界値以下であった。 これらの結果から、谷川中流の水質については有 機物汚濁は少ないものの、硝酸性窒素、総窒素はや や高く、溶解性塩類を示す全蒸発残留物濃度が比較 的高濃度であった。これは塩化物イオン、硫酸イオ ンがやや高いことが影響しているものと推察され る。しかし、特に水稲の植付期は影響しやすく要注 意であるが分けつ期のクロロシスの現象も発症して いない。また穂孕期にも有害化学物質の影響による 障害が発生しやすいが、現在のところ影響は出てお らず、ほぼ健全な水質を保っていると判断される (Figs.9)。しかし、上流からの排水の混入は不規 則性もあり、突発的な影響が起こらないとも限らな いので下流部への影響を出さないためには継続して 十分な監視、管理が必要であると考える。 4.服部関屋地区の井戸水の水質検査結果について 服部関屋地区の住民所有の4軒の井戸水の水質検 査を実施した。その結果を表2に示す。水質検査項 目 は、pH、BOD、COD、SS、DO、カ ド ミ ウ ム (Cd)、シアン(CN−)、鉛(Pb)、六価クロム(Cr (VI))、砒素(As)、総水銀(Total−Hg)、透視度
の12項目で、調査期間は平成11年9月∼15年9月の
間に9回実施された。その結果、4軒の井戸水とも
Figs.8 谷川の水質(総窒素、硝酸イオン、塩化物
イオン、電気伝導度)の経年変化
⎫㉄䉟䉥䊮䋨⼱Ꮉਛᵹ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪉㪇 㪋㪇 㪍㪇 㪏㪇 㪈㪇㪇 㪈㪉㪇 㪈㪋㪇 㪈㪍㪇 㪈㪏㪇 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ ⎫㉄ 䉟 䉥 䊮 䋨䌭 䌧 㪆䌌 䋩 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ ో⫳⊒ᱷ⇐‛䋨⼱Ꮉਛᵹ䋩⚻ᐕᄌൻ 㪇 㪈㪇㪇 㪉㪇㪇 㪊㪇㪇 㪋㪇㪇 㪌㪇㪇 㪍㪇㪇 㪋 㪌 㪎 㪐 㪈㪉 ⺞ᩏ ో⫳ ⇐ᱷ ⇐‛ 㩿㫄 㪾㪆 㪣㪀 䌈㪈㪊ᐕ 䌈㪈㪋ᐕ 䌈㪈㪌ᐕ 䌈㪈㪍ᐕ 䌈㪈㪎ᐕ に特に異常はなく、環境基準値を超える項目は確認 されなかった。A 氏宅の井戸で pH8.0∼pH9.3の範 囲で、平均8.5であった。pH がやや高かった。逆 に B 氏 宅 の 井 戸 水 は pH5.6∼6.5の 範 囲 で、平 均 pH6.2とやや酸性を示しており、金属の溶解も心配 されたがカドミウム、鉛、六価クロム、砒素、総水 銀などもいずれも基準値以下であったことから注意 は必要だが、特に水質としての問題はないと判断さ れる。また C 氏宅および D 宅の井戸水の pH はそ れ ぞ れ6.1∼7.5の 範 囲 で、平 均 pH5お よ び6.3∼ 7.1の範囲、平均6.7であり問題はないと判断され る。これらの井戸水はやや溶存酸素(DO)の時期 による変動が大きいことが判明した。A 氏宅では DO3.6∼10mg/L の 範 囲 で あ り 平 均6.8mg/L で あった。B 氏宅では DO2.6∼10.6mg/L の範囲で、 平 均7.3mg/L、C 氏 宅 で は DO1.2∼8.3mg/L の 範囲で、平均4.4mg/L と溶存酸素が不足していた。 D 氏宅では DO1.4∼11.6mg/L の範囲にあり、平 均5.6mg/L であった。これらの井戸は通常は使用 していないことが多いと推察される。したがって利 用する場合は、極力汲み替えを行い水の動きを作っ てからの使用が望ましい。幸いに有害化学成分はい ずれの井戸水も含有していないことが確認されてい るので植物への給水等の利用は可能であるが、ただ し飲用に供する場合は保健所などでの検査をした後 に使用する必要がある。 まとめ 平成13年から平成17年5月までに実施された真備 町弥高山地区の廃棄物堆積場排水の影響を受ける関 屋池、八高池、谷川中流の水質検査の結果、農業用 水への影響は少ないと考えられた。播種から穂孕み 期、収穫期に至るまで年間4∼5回の調査の結果か らは水稲の生育被害は出現しなかった。またこの水 系にある服部地区の住民宅4軒の井戸水の平成12年 8月∼16年12月の間に行われた水質検査結果から、 ややアルカリ性を呈する井戸水があったが、環境基 準を超える検査項目は幸いにも認められなかった。 したがって、洗浄や植物の給水などには問題はない が、飲用水として使用するためには、大腸菌数を含 め保健所で検査した後に使用されるべきである旨の 指摘を行った。 文 献
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Figs.9 谷川の水質(硫酸イオン、全蒸発残留物)
の経年変化
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Abstract
The result of water−quality analysis about 20 elements including toxic substances, heavy metals, organic chloro
−chmeicals of water in the down stream by Sekiya pond where the influence from waste landfill drain in Mabi−
cho high mountain district investigated between 2001 and 2005. The influence on the agricultural water was
thought to be few from the result of the water survey of 4−5 times a year during sowing and harvest season and the growth damage of rice plants did not appear for the investigation period. Moreover, characteristics to be inspected that exceeded the value of environmental standards except for the alkalinity slightly high were not for-tunately admitted though there were a water−quality test result of doing in well water in four resident houses in the Hattori district .
Key words : Water quality, industrial waste, landfill, irrigation water, well water, rice plants