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4種類の方法による延伸,熱処理ナイロン6繊維の結晶化度の評価とその比較 利用統計を見る

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4種類の方法による延伸,熱処理ナイロン

6繊維の結晶化度の評価とその比較

(昭和55年9月1日受理) 功刀利夫

桜井潤一

橋本穂

Evaluation of Crystallinity by Four Different

Procedures and Their Comparisons for Drawn

and Annealed Nylon 6 Fibers

ToshioKUNUGI Jun-ichiSAKURAI MinoruHASHIMOTO

Abstract   In order to reexamine the slight variations of crystallinity with drawing or annealing, the four different procedures for determination of crystallinity have been tried on the 10 kinds of nylon 6 fibers which were prepared by the same methods as in the previous reports.  These procedures, except for the procedure used in the previous study, are Ruland’s procedure, density and X−ray differencial intensity procedures. Although the absolute values obtained by the four procedures differ from each other, the tendencies of variation of crystallinity with drawing and annealing were confirmed to be substantially identical to that described in the previous reports. Also the k values obtained by Ruland’s procedure were compared among the舳ers prepared under different conditions to yield the information concerning the imperfection of crystal lattice.

1.緒

言  著者らは,これまで冷延伸,熱処理,膨潤処理によ り調製したナイロン6繊維の微細構造と力学的性質と の相関関係について,種々の角度から検討し報告D−1°) してきた。それらの報告の中で,結晶化度は極めて重 要な微細構造因子であることを強調し,配向などの他 の構造因子との関連性,物性や力学的性質に与える影 響などを中心に述べてきた。しかし,ナイロン6で は,溶融紡糸後すでにかなり高い結晶化度をもつた め,その後の各種処理による変化の範囲は極めてせま い。  本報では,このような結晶化度の微妙な変化を再確 認するため,既報1)−10)と同一条件で調製した試料に ついてまったく異なる3種類の方法で結晶化度を再測 定し,得られた結果を既報1)2)で得た結晶化度の変化 傾向と比較検討した。用いた結晶化度評価の方法は, Rulandの方法11),密度法12)およびX線干渉強度差 法13)の3種類である。  一般に,結晶性ポリマーでは結晶が多くの欠陥を含 むので非晶相との間にはっきりした境界がなく,測定 方法によってこれをどこで区切っているかが問題とな る14)。このため,方法が異なれぽ同一の結晶化度の絶 対値を得ることはまったく期待できない。しかし,同 一方法による結晶化度の数値を比較値として用い,延 伸,熱処理による結晶化度の変化の傾向を検討した り,他の方法により得た変化の傾向との類似性を検討 することは十分可能であると考えられる。本報では, さらにRulandの方法11)で得られる結晶格子の乱れ についても考察する。

(2)

2.実

験  2.1 試料の調製  試料には単糸繊度23dの未延伸ナイロン6繊維を 用いた。これを原試料として既報1)−1°)と同様な方法 および条件で冷延伸および乾熱処理を施した。調製し た試料は未延伸および2,3,4倍冷延伸の未処理物, これと同じ倍率に冷延伸後乾熱処理した後処理物およ び未延伸で乾熱処理したのち2および3倍に冷延伸し た前処理物の計10種類に定めた。  2.2 X線干渉強度の測定  既報1)2)と同様条件で,繊維を細断して得た粉末試 料についてX線干渉強度を測定した。

 2.3密度測定

 試料の25°Cにおける密度をトルエンー四塩化炭素 系混合溶媒を用い,浮沈法により測定した。 1.8 1.6 1.4   1.2 日 1㌃1・o ・ざo.8 m O.6 O.4 0.2    0    0   0.2  0.4  0.6  0.8  1.0  1.2       s(A i)  図一1 s2 f2 ・s曲線および種々のk値に     対するs2f2D−s曲線 Fig. 1  curves of s2 f2 0r s2∫f21) versus     ぷ at various k values 3.各方法の概略

 3.1Rulandの方法

 Ruland 11)は原子の熱振動や格子の乱れのため結晶 領域によって散乱されるX線強度の一部がピークから 失われバックグラソドの散慢散乱になることを考慮し て,強度式に格子の乱れ因子Dを含めた次式を導き, これにより結晶化度(Xc)を求めることを提案した。      1:…c(s)ds lr・・戸∂・        (1)   Xc=      ∼r…(・)ゐ∼r・・ア・Dd・  ここで,sは(2 sinθ/λ)で,さらにθはBrag9 角,λはX線波長である。1,(のと1(s)はsにおけ る結晶ピークに基づく干渉性散乱強度と全干渉性散乱 強度,f2は測定しようとするポリマーの重み付き二 乗平均原子散乱因子である。なお,(1)式の積分範囲 は0∼。。でなくても,範囲をある程度広くとれぽ成立 すると考えられる。  つぎに,ナイロン6への適用において,Rulandの 方法の手順の概略を以下に示す。まず,ナイロン6の 構造単位(・NH(CH2)5 CO・)について重み付き二乗 平均原子散乱因子を次式によって算出し15),図一1に示 すようなs2f2∼sの関係図を作成した。

R一旦霊一     (・)

 ここで,凡は化学式におけるiタイプの原子の数 である。一方,格子の乱れ因子DはRuland 16)によ

り第1種および第2種の乱れについて共通なGauss

型の次式にまとめられた。 1.0 O.9 0.8 0.7 0.6 Q  O.5 O.4 0.3 0.2 0.1、    0   0.2   0.4   0.6   0.8   1.0   1.2          s(A−・) 図一2 種々のk値vc対するD・s曲線  Fig.2curves of D versus s at      variouS k ValUeS   Z)=exp(−k s2)       (3)

 この式より,kにいくつかの値を仮定しDとsの

関係を求めた結果を図一2に示す。ここで,kは熱運動 (kT)によるものと第1種(kl)と第2種(kll)の格 子の乱れによるものの三つの項の和で表わすことがで きる16)。   k=kT十kl十kll      (4)  さらに,得られたDを用いてkを定数として,図 一1に示すようなs2 f2 D∼sの関係を得た。図一1のs

(3)

に対するs2f2およびs2 f2 Dの関係を示す2種の曲 線から

κ議蕊   ⑤

を7つの有限の角度範囲について図上積分によって求 めた。7つの角度範囲とは下限(s・)を0.1とし,上 限(sp)を0.45,0.55,0.65,0.75,0.85,0.95お よび1.05とした各範囲である。このようにして種々の k値について得られたKとSp2の関係を示すと図一3

のようなnomogramとなる。

6 3 k=6 5 4.5 4 3.5 2    0.2 0.4  0.6 0.7 0.8  0.9 1.0  1.1   1.2        5P     s・−0・1 図一3 ナイロン6のくり返し単位{−NH(CH2)5    CO−}について得られたK・Sp関係図 Fig.3 Nomogram of頁values as a function     of k and sp calculated for the repea・     ting unit of nylon 6{−NH(CH2)5CO−} .硲 Is 号 逗 ⑤ ㌃        0.2  0.4  0.6  0.8  1.0  1.2        s(A.1) 図一4 3倍延伸後熱処理試料の521(s)・s曲線破    線は非晶バックグランドを示し,斜線部分    は非干渉性散乱を示す。 Fig.4  curve of s21(s)versus s for the nylon     6fiber which was annealed after dra.     wing up to 3.fold Broken line represe.     nts the amorphous background. Shaded     part indicates the incoherent scattering.  つぎに試料に対するX線散乱強度曲線から空気散乱 を差し引き,つづいて常法により偏光因子17)および 吸収因子18)の補正を施したのち,s21(s)∼sの関係 図を作成した。さらに,Rulandの手法11)にしたが い非晶干渉強度曲線および非干渉性散乱曲線19)を決 定し,合わせて縦軸を電子単位に変えた。その一例と して,3倍延伸後熱処理物の場合の結果を図一4に示す。  図一4について,前述の7つの角度範囲についてそれ ぞれ∫21(s)とs2 lc(s)の積分強度値をプラニメー ターで面積として求め・∫ll…c(・)ds/∫:ls・・(・)d・ で示される商を求めた。  つぎに上式で得られた結果にそれぞれ対応する’ Spa におけるKの値を乗じXCを算出した。ここで多く

のデータの中からもっともXCの変動の小さいk値

を選びそのXCを求める結晶化度として決定した。 この方法と既報1)2)で用いた方法との大きな差異は, 既報の場合第1次近似として結晶格子の乱れを考慮し ないで結晶散乱と非晶散乱を分離しバックグランドに 含まれる結晶散乱の一部を無視した点にある。した がって,既報の方法で得た結晶化度は真の値より若干 小さくなるといえる20)。

 3.2密度法12)

 密度法は多くのポリマーについてもっともよく用い られているが,ナイロン6の場合は異なる結晶型がし ぽしぽ共存しそれらが異なる密度をもつため,密度か ら正確な結晶化度の値を得ることは困難である21)。た とえぽ,α型結晶の密度は1,230g/cm3であるがβ 型結晶の密度は1,150g/cm3と報告22)されている。 また,試料に空隙を含まないことが必要であり,さら に結晶化度算出に必要な非晶密度が配向した非晶に対 して得られにくいことなど手法に問題点はあるが,こ こでは比較のために測定した。算出は次式12)により 行った。 Xc一

w≡窃    (6)

 ここで,dcは結晶密度23),ここではα型結晶と考 えて1,230g/cm3とし, dαは非晶密度24)で1,084 g/cm3とし, dは測定された試料の密度である。  3.3 X線干渉強度差法  Wakelinら13)はX線干渉強度差から結晶化度を求 める方法を提案した。この方法はナイロン6のような 完全な結晶や非晶試料が得られない場合にはとくに有 効で,試料のうちでもっとも秩序の高い試料と低い試 料を標準として,未知試料の秩序の程度をそれらに対

(4)

する相対的な値として表わしたものである。実際に は,主要な結晶ピークのすべてを含む2θの広い範囲 にわたって全散乱強度を測定し,同じ散乱質量に規格 化したのち,2θの小さな角度間隔でX線強度を読み とり比較する。いま,同じ角度位置における高結晶性 標準,低結晶性標準および未知試料の強度値をIc, 1αおよびIuとすれぽ,その強度差(lu −1のおよび (1・−1のを多くの角度位置について求め,(ん一1。) 対(1・−1α)の図にプロットする。このプロットから, 一般に回帰線が得られ,その方程式は次式で示され る。   (Ju−1α)=Cc(lc−1α)十B      (7)  ここで,C,は相関結晶度指数であり,この場合, 直線の勾配となる。またBは縦座標の切片である。

Bは理論的には0であるので,実験で得られたBが

小さいほどそのデータの信頼性が高いこと25)を意味 する。本研究では,高結晶性標準として4倍延伸後熱 処理繊維を,一方低結晶性標準として未延伸・未処理 フィルムを選んだ。また,測定した角度範囲は2θ= 5°から40°まで,強度読みとり角度間隔は0.4°とし た。一例として比較的良好な直線性を示した5倍延伸 後熱処理した試料のプロットを図一5に示す。ただし, このデータは他の熱処理物との比較値がないため表一1 に含まれていない。本研究でWakelinらの方法13) と異なる点はCcと結晶化度Xcとの間に比例関係が 成立すると仮定し,両標準試料の密度法結晶化度52.4 %と31.2%の値を用いてXcに換算した。これにより 他の方法で得た結晶化度との比較を可能とした。 (1。 −1。) 5 4 ○ 3 2 ○ O 1 一7−6−5−4 一3 一2 一1 1 2 3 4 ○ σ。−L) 一2 一3 ○ 一4 o 一5  一6 一7 ○ 一8  なお,この方法の場合,測定した干渉強度曲線を上 述のように同じ散乱質量に規格化する必要があるが, 空気散乱,偏光因子,非干渉性散乱などの補正はこれ らがIc,1α, Lに同程度影響し強度差の計算で相殺 されるので省くことができる26)。 4.結果および考察  4.1 4種類の方法によって得た結晶化度について  表一1に10種類の試料について4種類の方法により測 定した結晶化度の値を示す。また,図一6には,3種類 60 50 40

 60

目50

逼 禦

 40

50 40 30       1    2    3    4       延伸度  ○:Ruland法;△:既報で用いたX線法;  口:密度法;  ●:X線強度差法 図一6 4種類の方法で得られた結晶化度の比較 Fi9.6 Comparison of crystallinities evaluated    l)ythe four different procedures 表一1 4種類の方法で得た結晶化度と格子の乱れ因子(k値) Table l crystallinities evaluated by the four different proce・     dures, and the lattice imperfection factor(k value)

試㌔伸三繊讐’曙

X線干渉 強度差法  (%) 図一5 5倍延伸後熱処理試料のX線強度    差(Iu.1α)対(lc・1ののプロット Fig.5 Plot of(1u・1α)versus(1c・1α)     for the nylon 6 fiber which     was annealed after drawing     up to 5−fold

一{

一{

前処醐{

1 2 3 4 1 2 3 4 2 3 44.1 51.0 53.8 55.3 52.9 57.4 59.9 62.0 54.1 50.4 4.0 4.5 4.8 4.8 3.5 3.8 4.0 4.2 4.0 4.2 46.5 46.8 48.0 48.9 51.4 53.8 55.3 56.2 49.0 48.3 36.2 37.9 40.1 43.2 47.5 48.7 51.2 52.4 40.3 27.5 41.9 42.5 48.1 57.5 43.9

(5)

の処理物について各グループごとに延伸度に対する結 晶化度の変化を示す。図一6および表一1から明らかなよ うに,4種類の方法で得た結晶化度の絶対値は一致せ ず,一般にRulandの方法による値がもっとも高く, 密度法による値がもっとも低い。  とくに,Rulandの方法で得た値が既報1)2)の方法 で得た値よりも大きいことは格子の乱れによる散乱分 を結晶散乱に加算したためと理解できる。  しかしながら,延伸,熱処理による結晶化度の変化 は互いによく類似し,既報までに述べた結晶化度の変 化の説明1)『10)に矛盾しない。すなわち,未処理物の 場合は冷延伸により結晶化度が若干増大すること,後 処理物の場合すなわち冷延伸後処理すると対応する未 処理物よりも結晶化度が増大すること,また熱処理後 冷延伸した前処理物では延伸倍率の増大にしたがって 結晶化度が低下することなどが再確認できた。  4.2k値による格子の乱れについての考察  Rulandの方法で得たk値は表一1で示したように処 理履歴によって相違する。まず,未処理物におけるk 値は冷延伸により増大する傾向がみられ,これは冷延 伸により結晶格子にひずみがかかり格子の乱れが増大 したものと考えることができる。つぎに,後処理物に おけるk値は対応する延伸度の未処理物のk値と比 べて小さく,熱処理により結晶の完全度が増すためと 考えられる。また,前処理物におけるk値は比較的 小さく,冷延伸のさい生ずる結晶粒子の破壊がひずみ 部分で起こり,破壊後の結晶粒子は一般に格子の乱れ が小さいと推察される。  本研究で得られたk値は3.5から4.8までの値で

ある。また,前述のようにk値は熱運動による項

(kT)と第1種および第2種の格子の乱れによる項の 和(kl十kll)からなっているが, Ruland 16)による

とナイPン6のkTは平均等方性熱振動係数丑が

B=2kと表わされること27)からほぼ3と考えられて いる。したがって,(kl+kll)は0.5から1.8までの 値をとることになる。また,熱処理や冷延伸によって kTはあまり変化しない27)ので,表一1にみられるk値 の変化の大部分は第1種,第2種の格子の乱れに原因 するものと考えることができる。

5.結

 3種類の方法,すなわちRulandの方法,密度法

およびX線干渉強度差法により既報1)−10)と同じ処理 履歴をもつ10種類の試料につき結晶化度を測定し,既 報1)2)での結果と比較したところ,その絶対値はかな り相違したが冷延伸や熱処理による結晶化度の変化の 傾向はいずれの方法の場合も同じであることが確認さ れた。これによって,結晶化度の微妙な変化は既報で 述べた説明でよいことが確められた。また,Ruland の方法で得たk値から各処理物の結晶粒子の乱れに ついて有力な知見を得ることができた。

参考文献

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