ミツバ チ科 学 18(2):89-91 HoneybeeScience(1997)
ベルギーの養蜂
0.
vanLae
r
eand
E.Br
une
au
ベルギーを語 るな ら, もちろん, ヨーロッパ 連 合E
Uの本部 の置 かれ て い るブ リュ ッセル や,ブル ッゲ,ア ン トワープ,それにその他の, 何か しら注 目すべ き建築遺産の残 る町々につい て語 らねばな らない. しか し, この国 はまた, 皆様が この国を訪れ,養蜂場を見ていただ くの を楽 しみに して いる1
000
0
名 もの熱心 な養蜂 家がいる国で もある. 地理 と人 口 ベルギーは北半球,北緯510の温帯地域 にあ り,ヨーロッパの中西部 に位置 している (図1). 北 はオランダに接 し,東 に ドイツとルクセ ンブ ルグ,南 にフランス,西側 は北海である.面積30000
km
2の国土 に1
000
万 の人 口を擁 し, 世 界で最 も人 口密度 の高 い国の一つである.ベル ギーは三つの言語圏に分かれてお り,63%がオ ランダ語 (北部 :フラン ドル)を話 し,36%が フランス語 (南部 :ワロン州)杏,残 り1%が ド イツ語 (東部州)を母言語 とする.首都, ブ リ ュ ッセル は両 公用語 (フ ラ ンス語 とオ ラ ンダ 請)の通用地域である. 気候 は温暖で,年間約170日の雨天 はほぼ4 月か ら9月に集中 している. 植生一農業 と養蜂植物一 沿岸 と北西部 は低地で,一方,南東部 は丘陵 地帯 となっている.北海沿岸の広大な砂丘 に続 いて, その内陸の地勢 は, ローム層を砂土壌が 覆 っている地域か ら重 い粘土 までの様 々な土壌 が分布す る. これに続 いてさらに内陸側 には, 南東部では石灰質土壌,東部では表面泥炭 ロー ム層 とい った特殊 な土壌 が分布 す る. もちろ ん, これ らの土壌 にはそれぞれ異 なる植生が対 応 し,農業の形態 も地域 で異な っている. 図1 ベルギーの位置 農業 は,全国的に穀物やテ ンサイの栽培,放 牧や牧草地 などが中心である.林業 は主 に国の 南部地区で営 まれ, この地域 は広葉樹 とマツ頬 (軽 い砂地)の森林地帯 と して重要で,また果樹 について も重要 な地域がある. 主な蜜源植物 ベルギーの-チ ミツはおおよそ 80種の植物 を蜜源 と している.春 には,ヤナギ, クローバ ー,果樹, アブラナ科 ,タンポポ,サ ンザシが 主要蜜源で,夏 には, ニセアカシア, ライム, アマク リ, ブラックベ リー, ブラックニセアカ シア,雑草 や ヒースの類 が もっと も重要 で あ る.単一花のハチ ミツや甘露蜜 はまれである. 現代農業経営の最近の傾向 として農地 の一定 の割合を休耕地 としてお くことが多 い.多 くの 場合 に, そこには,土壌 の被覆,土壌改良を目 的 としたチュ- ビンガ-混合種子を蒔 いた りす ることが多 いが, これは同時に蜜源 として も充 分 な価値を持 っている. ベルギー産のハチ ミツは市場 のほんの数%を 占め るのみで,消費 され る- チ ミツの 80%以 上が輸入である. 花粉媒介 における養蜂の役割 -殺虫剤の影響一 他のどこで も同 じように,ベルギーで も養蜂 は生物多様性の保全 にとって不可欠 な要素 とな っている.膨大な非栽培植物 の種の維持 は国内 にまんべんな く散 らば っている充分 な蜂群の存 在でのみ保証 されている.野性の蜂群 は,天候 の不安定性,不十分な営巣場所,比較的長 い冬90 が原因で実質的に存続で きないので,多 くの原 野や森林 の植物 の生存 は養蜂家の存在 にかか っ ている.ベルギーの人口密度が高いことが, こ の点で は飼育 されている蜂群 を充分 な密度 に保 たせてお り, これによって生物的多様性の自然 なバ ランスが維持 されている. 問題があることも否定 で きない.第二次世界 大戦以降,除草剤 の広範 囲にわたる利用が多 く の野生 の蜜源植物の減少 を招 いている.開花期 にいい加減 に用 い られる殺虫剤 によって ミツバ チが死亡す ることも頻繁 に起 きている.近年, 除草剤や殺虫剤 の利用に関 して注 目すべ き改善 をみ ることがで きた.80年代後半 か ら制定 さ れてきた新 しい法律 によ り,道路沿 いでの除草 剤 の利用が禁止 され,草本の蜜源植物がかな り 増えた.殺虫剤の使用 に関す る最近の法規 は, ミツバチに毒性 のある薬剤 を, ミツバチが訪花 す るよ うな植物 に散布す ることを例外 な く不許 可 とし, また一方で,殺虫剤 の大量販売 ・消費 の認可 申請 の手続 きが生態毒物委員会で厳 しく 審査 され制限され るようにな ってきた. 経済的見地か らは,ベルギーの養蜂 は東北地 域 の広 い範囲で営 まれる果樹生産 における花粉 媒介 に とって必要不可 欠 な要素 とな る. さ ら に, レッ ドクローバーや ホワイ トクローバーの よ うな多 くの農作物や園芸作物が ミツバチによ る花粉媒介 に依存 してい る.現在, ナタネは栽 培が小規模化 している. 花粉媒介が最 も重要 なのは施設内栽培の作物 である.ベルギーでは施設園芸が広大な面積を 占めている. これまで施設園芸 は夏期 に限定 さ れていたが,近年では通年栽培へ とほとんどが 転換 し,たとえば, ス トロベ リー (Fragaria
x
ananassa), ラズベ リー (Rubusidaeus)や ブルーベ リー (Vaccinium corymbosum)などは 周知のところである.温室の トマ トの花粉媒介 にはマルハナバチが多用 されている.送粉昆虫 を守 る目的で,温室内の作物を加害す る害虫や ダニの防除方法 としての天敵 の導入が一般化す るようにな った. ベルギーの養蜂家 ほとんどのベルギーの養蜂家 は,別 に仕事 を 持 っているアマチュア養蜂家である.彼 らの大 多数 は退職者で, また,副業 としての養蜂 も続 けられている. ごく一部 の養蜂器材や生産物 の 販売 を主業 としている養蜂家がセ ミプロ養蜂家 といえるか もしれない. 養蜂家 の所有蜂群数 は平均10群で,蜂群当 た りのハ チ ミツ生産量 は大 きなば らつ きがあ り,4-5kgか ら50kgを超 え るものまで さま ざまで, 平均11kg/蜂群である. 養蜂協会 の これまでの記録 に基づ けば,養蜂 は主 に男性 に よ って行 なわれてお り,女性 は養蜂家 の10% 以下 にす ぎない. しか し,その数 は確実 に増加 している. ベルギーの養蜂家の平均年齢 は50-55歳で あるが,養蜂の始 めた年齢 は30-40歳で,40 年前 に比べて高齢化 している. 蜂の種類,蜂具,飼育注 もともとの土着のメ リフェラ種 は純系 として は滅多 に見つか らない.1950年代 にはイタ リ アン種の女王蜂の輸入が盛んであ ったが, これ も現在ではほとん ど姿 を見ない.代わ って北部 のカーニオ ラン種 が導入 されてい る .ここ10 年 はバ ックファス ト 系統 が興味を集 めている. アメ リカ産の女王蜂 は現在では低価格で シーズ ン初期 に輸入 されている.三代雑種 はまれに輸 入 されている. 1970年代 の初期 にメ レルベ クの農業研究 セ ンターで女 王蜂 の人工授 精 の研修 が始 め られ た.その5年余 り後 にな って,人工授精 は実際 に養蜂のために用 い られ, さまざまな成果 を も た らして きた.現在 は数人 のセ ミプロ養蜂家が 日常的に人工授精 を行 い,作 出 した女王蜂を大 量 に配分 している状況である. こうした人工授 精 はいずれ も合理的で科学的な系統選抜計画 の 一部 と して行 われ る. い くつかのセ ンターで は,世代 ごとにひととお りの選択基準 について 試験 を しなが ら各 品種 の系統維持 を行 ってい る. ベルギーとオランダの研究 グループは共同 で研究 を行 ってお り,実用 に結 びつ く選抜成果 を上 げている. 少数の養蜂家 は果樹, ナタネや ライムなどを 求めて移動養蜂を行 っている.ベルギーの養蜂
場 の多 くは囲 いや屋根 があるが,完全 な建物 に な っていることはまれである. 飼養技術 ベルギーの養蜂 は周辺諸 国 の養蜂 の影響 を大 き く受 けてお り,蜂具や管理技術 は地域 ごとに 特徴がある. ベルギーで もっともよ く用 い られ ている巣箱 は通常 の上部蓋式であ る.後側が開 閉で きる巣箱 はまれで,局所 的に普及 した もの で あ る.主 な巣箱 の型 式 と して はデ ー ダ ン ト (南部 に多 い),シンプ レックス,WBC,および ボワル ノであるが, その他 の巣箱 も特 に地域 に よ らず あ ち こちに分布 して い る. これ以外 に ち,古典的な養蜂器具 が用 い られて る. ほとん どの場合,養蜂家 の持 って い る分離 器 は3-4 枚 の巣板用で,放射状 に何枚 もの巣板が入 るよ うな大型 の分離器 はほとん ど見 られない. 個 々の (アマチ ュア)養蜂家 は,部分的 は手 引 きに習 い,残 りは自分 の経験 を下敷 きに,め いめいそれぞれに異 なる技術 を有 している. こ こ数年,蜂具や技術 にお ける合理化が進んでい るよ うだが, これ は蜂群 の 自然 な営みを保護 し てい こうとい う考え方 に基づ いている. フラマ ン人の居住地域 について は, メ レルベ ク (- ン トの南6km)の農業研究 セ ンターの養 蜂担 当部処であ る作物保護課 につ いて触れなけ ればな らない. その活動 は,病理学,農薬残留 分析,作物 の花粉媒介,女王蜂 の人工授精 と多 岐 にわた っている. フラ ンス語圏で は,農業研 究情報 セ ンター (CRJI)が-チ ミツ分析や各種 の 研 修 コ ー ス を 開 設 し,雑 誌 "Abeilles et Cie"を刊行,ハ チ ミツや花粉媒介 に関す る研究 を行 っている. 図2 7ピモンディア博物館に陳列されている各種 のスケップ巣箱 91 養蜂協会 ベルギーの養蜂家のほ とん どが何 らかの養蜂 協会 の会員である. これ らの地域 の協会 は会議 や研修旅 行 や,養蜂 の研 修 会 まで開催 して お り, これによ って地域 の養蜂 の振興 を行 ってい る. こうした協会 はい くつかの連合会 を組織 し てお り, それぞれ技術雑誌 を刊行 している. フ ラ ン ス 語 で は "La Belgique Apicole''と "Journalofthe KVIB", オ ラ ン ダ 語 で は "JournaloftheUnionRoyaledesRuchers Wallons"と "TheFlemishBeekeeper"が刊 行 されている.国内で は現在2つの連合会が法 人 と して登録 さている.近 い将来,変革が見 ら れ る模様 である. (翻訳 江津 真) 編集部よ り 本記事は,「ミツバチ科学」の読者の方々に,今年 9月 1日から6日にかけてベルギーのアントワープ で開催される第35回国際養蜂会議に参加 していた だけるよう,大会事務局か ら掲載を依頼されたもの である.
国際養蜂協会連合APIMONDIAは今年 100周年 を迎え,今大会は会議,展示会ともに力の入ったもの になるようである.会議の概要については,下記の大 会事務局に直接お問い合わせいただ くか,ツアーを 企画 している (社)日本養蜂はちみつ協会またはアジ ア養蜂研究協会にお問い合わせ願いたい. 第35回国際養蜂大会事務局 Prof.0.VanLaere
Dekokerlaan13,B-9940Evergem,Belgium Tel&Fax:+32-9-253-91-63
Email:[email protected]れet.be