大学院生の不登校傾向を測定する試み
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(2) 方 法 調査対象者および調査時期 首 都 圏 近 郊 の 大 学 院 修 士 課 程 に 在 籍 す る 大 学 院 生 763 名( 平 均 年 齢 23.3 歳 , SD =2.87) を 対 象 に 質 問 紙 調 査 を 2012 年 5 月 ~ 7 月 に 実 施 し た 。 な お , 学 部 生 は 同 時 期 に 収 集 さ れ た 堀 井 ( 2016) の デ ー タ を 用 い た 。 す な わ ち , 学 部 生 の 対 象 は 4 年 制 大 学 に 在 籍 す る 学 部 生 838 名( 平 均 年 齢 19.8 歳 , SD=1.24)で あ っ た 。大 学 院 生 ・ 学 部 生 の 性 別 ・ 学 年 別 の 人 数 は Table 1 に 示 し た 。 Table 1. 調査対象者数(人) 男性. 女性. 計. B1. 91. 90. 181. B2. 115. 108. 223. B3 B4. 102 114. 99 119. 201 233. 小計. 422. 416. 838. M1. 317. 63. 380. M2. 322. 61. 383. 小計. 639. 124. 763. 合計. 1,061. 540. 1,601. 注 ) B1 は 学 部 1 年 生 , B 2 は 学 部 2 年 生 , B3 は 学 部 3 年 生 , B 4 は 学 部 4 年 生 , M1 は 大 学 院 1 年 生 , M2 は 大 学院 2 年生を表す。. 質問紙 大学院生の不登校傾向を「大学院の正課活動への回避傾向」と定義し た。学部生の 不登校傾向を測定する従来の大学生不登校傾向尺度は, 内容として総じて大学院生の 不登校傾向も測定可能であると考えられた。但し, 一部文言を改変する必要があり, 大 学 生 不 登 校 傾 向 尺 度 の 項 目 内 の「 大 学 」と い う 語 を「 大 学 院 」に 改 変 し た 。ま た , 教 示文において, 項目内の「授業」は研究, 演習, 実習, 実技, 実験を含むことを説明に 加 え た 。 尺 度 名 は 大 学 院 生 不 登 校 傾 向 尺 度 と 命 名 し た 。 尺 度 は 12 項 目 か ら 構 成 さ れ る 。 各 項 目 に 対 す る 回 答 は , 「 非 常 に あ て は ま る ( 6 点 )」「 あ て は ま る ( 5 点 )」「 や や あ て は ま る ( 4 点 )」「 ど ち ら と も い え な い ( 3 点 )」「 や や あ て は ま ら な い ( 2 点 )」「 あ て は ま ら な い ( 1 点 )」「 全 然 あ て は ま ら な い ( 0 点 )」 の 7 件 法 で 求 め た 。 得 点 が 高 い ほ ど 各 項 目 の 意 味 す る 不 登 校 傾 向 が 高 い こ と を 表 す( 逆 転 項 目 を 除 く )。ま た , 学 部 生 に は 大 学 生 不 登 校 傾 向 尺 度 ( 12 項 目 7 件 法 ) を 用 い た 。. 結果と考察 探索的因子分析 大 学 院 生 不 登 校 傾 向 尺 度 12 項 目 に つ い て 因 子 分 析( 主 因 子 法 )を 行 っ た 。固 有 値 の 減衰状況と解釈可能性から 2 因子を抽出しプロマックス回転を行った。2 因子の累積. 128.
(3) 寄 与 率 は 58.0%で あ り , 因 子 間 の 相 関 係 数 は .60 と 中 程 度 で あ っ た 。本 研 究 で 得 ら れ た 因 子 構 造 は 学 部 生 の 堀 井 ( 2013) の 結 果 と 概 ね 同 様 で あ り , そ れ を 受 け て , 第 1 因 子 は「登校回避行動」, 第 2 因子は「登校回避感情」と命名した。 次 に , 大 学 生 不 登 校 傾 向 尺 度 12 項 目 に つ い て 因 子 分 析( 主 因 子 法 )を 行 っ た 。固 有 値の減衰状況と解釈可能性から 2 因子を抽出しプロマックス回転を行った。2 因子の 累 積 寄 与 率 は 55.8%で あ り , 因 子 間 の 相 関 係 数 は .47 と 中 程 度 で あ っ た 。こ の 結 果 も 堀 井( 2013)と 概 ね 同 様 で あ り , 第 1 因 子 は「 登 校 回 避 行 動 」, 第 2 因 子 は「 登 校 回 避 感 情 」 と 命 名 し た 。 以 上 の 結 果 を Table 2 に 示 し た 。 Table 2. 尺度の探索的因子分析の結果. 項目. 大学院生. 大学生. 不登校傾向尺度. 不登校傾向尺度. 因子 1. 因子 1. 因子 2. 因子 2. 登校回避行動 1.. 大 学 院 **を 休 み が ち で あ る. .78. .04. .83. .03. 2.. 欠席しがちな授業がある. .78. .03. .81. .02. 3.. なんとなく大学院. .68. .09. .80. .03. .66. .01. .65. .03. .64. .05. .58. .01. .40. .18. .53. .05. .15. .96. .12. .86. .01. .87. .03. .86. .19. .53. .17. .57. .19. .50. .04. .58. .28. .34. .10. .52. .10. .31. .01. .43. ―. .60. ―. .47. 4. 5. 6.. に行かないことがある. **. 一日の授業がすべて終わる前に帰宅するこ とがある 大 学 院 **に 行 き た い け れ ど も な ぜ か 行 け な いことがある 授業を遅刻しがちである. 登校回避感情 1. 2. 3. 4. 5. 6.. 日 曜 日 の 夜 , 明 日 大 学 院 **に 行 き た く な い と思うことがある 朝 , 今 日 は 大 学 院 **に 行 き た く な い と 思 う ことがある 大 学 院 **を し ば ら く 休 み た い と 思 う こ と が ある 一日の授業がすべて終わる前に帰宅したく なることがある 参加したくない授業がある 大 学 院 **に 行 く の は 楽 し い. 因子間相関 注 1). *. *. 因子 1. 逆転項目. 注 2) ** 学 部 生 を 対 象 と し た 調 査 で は 「 大 学 院 」 は 「 大 学 」 と 表 記 さ れ て い る 。. 確認的因子分析と信頼性 仮 定 し た モ デ ル は , 堀 井( 2013)に よ る , 学 部 生 の デ ー タ を 用 い て 探 索 的 因 子 分 析 を 行って得られた「登校回避行動」と「登校回避感情」の 2 因子構造である。大学院生 不 登 校 傾 向 尺 度 12 項 目 の デ ー タ に つ い て 最 尤 法 に よ る 確 認 的 因 子 分 析 を 行 っ た 。 モ デ ル の 適 合 度 は χ 2 (53) = 391.37(p< .01), GFI= .91, AGFI= .87, CFI= .91 , RMSEA= .09 で. 129.
(4) あ っ た 。次 に , 大 学 生 不 登 校 傾 向 尺 度 12 項 目 の デ ー タ に つ い て , 同 様 に 確 認 的 因 子 分 析 を 行 っ た 。 モ デ ル の 適 合 度 は χ 2 (53) = 400.09(p<.01), GFI= .92, AGFI= .88, CFI= .92, RMSEA= .09 で あ っ た 。 い ず れ も 適 合 度 は 概 ね 許 容 範 囲 内 で あ っ た 。 大学院生不登校傾向尺度および大学生不登校傾向尺度について, それぞれ因子別に, 当該因子に高い負荷量を示した項目のまとまりを下位尺度項目(各 6 項目)とし, 項 目 の 粗 点 の 合 計 を 下 位 尺 度 得 点 と し た 。 Cronbach の α 係 数 は , 大 学 院 生 不 登 校 傾 向 尺 度 の 「 登 校 回 避 行 動 」 が .83, 「 登 校 回 避 感 情 」 が .82, 大 学 生 不 登 校 傾 向 尺 度 の 「 登 校 回 避 行 動 」が .85, 「 登 校 回 避 感 情 」が .82 で あ り , い ず れ の 下 位 尺 度 も 高 い 信 頼 性( 内 的 整 合 性 ) を も つ こ と が 確 認 さ れ た 。 以 上 の 結 果 を Table 3 に 示 し た 。 Table 3. 尺度の確認的因子分析の結果. 項目. 大学院生. 大学生. 不登校傾向尺度. 不登校傾向尺度. 因子 1. 因子 2. 因子 1. 因子 2. 登校回避行動 1.. 大 学 院 **を 休 み が ち で あ る. .76. ―. .82. ―. 2.. 欠席しがちな授業がある. .72. ―. .81. ―. 3.. なんとなく大学院. .77. ―. .80. ―. .64. ―. .67. ―. .70. ―. .59. ―. .53. ―. .55. ―. ―. .84. ―. .83. ―. .88. ―. .87. ―. .65. ―. .61. ―. .61. ―. .58. 4. 5. 6.. に行かないことがある. **. 一日の授業がすべて終わる前に帰宅するこ とがある 大 学 院 **に 行 き た い け れ ど も な ぜ か 行 け な いことがある 授業を遅刻しがちである. 登校回避感情 1. 2. 3. 4.. 日 曜 日 の 夜 , 明 日 大 学 院 **に 行 き た く な い と思うことがある 朝 , 今 日 は 大 学 院 **に 行 き た く な い と 思 う ことがある 大 学 院 **を し ば ら く 休 み た い と 思 う こ と が ある 一日の授業がすべて終わる前に帰宅したく なることがある. 5.. 参加したくない授業がある. ―. .52. ―. .54. 6.. 大 学 院 **に 行 く の は 楽 し い *. ―. .37. ―. .42. ―. .64. ―. .45. .83. .82. .85. .82. 因子間相関. 因子 1. α 係数 注 1) * 逆 転 項 目. 注 2) ** 学 部 生 を 対 象 と し た 調 査 で は 「 大 学 院 」 は 「 大 学 」 と 表 記 さ れ て い る 。. 学年差と性差 大学院生不登校傾向尺度と大学生不登校傾向尺度のそれぞれ下位尺度ごとに, 学年 別 ・ 性 別 に 平 均 値 と 標 準 偏 差 を 算 出 し た ( Table 4) 。 そ れ ぞ れ の 尺 度 分 布 を 確 認 し た. 130.
(5) ところ, 「登校回避行動」は全体的にやや左方向に偏る傾向が見られた。これは登校 を回避するという行動面がやや生起しにくいという性質を反映したものと考えられた。 「 登 校 回 避 感 情 」に つ い て は 正 規 分 布 に 近 似 し て い た 。こ れ ら の 分 布 は , 堀 井( 2013) の学部生の結果と概ね同様であった。 Table 4. 尺度の平均値と標準偏差. 学部生. 大学院生. B1. B2. B3. B4. M1. M2. M( SD). M( SD). M(SD). M(SD). M(SD). M(SD). 登 校 回避 行動. 6.71( 5.74 ). 8.06( 6.76 ). 9.42(7.82 ). 9.75(7.95 ). 8.02(6.60 ). 9.13(6.72 ). 7.29( 5.71 ). 6.67( 6.54 ). 7.02(6.65 ). 9.36(8.70 ). 8.54(5.78 ). 7.67(5.80 ). 登 校 回避 感情. 16.76( 7.25 ). 19.81( 7.23 ). 20.67(8.40 ). 18.33(7.65 ). 16.02(7.60 ). 14.20(7.39 ). 16.82( 6.68 ). 19.71( 6.66 ). 20.65(6.53 ). 18.00(8.05 ). 15.21(7.48 ). 12.87(6.97 ). 注 1) 各 尺 度 得 点 の M (S D )は 上 段 が 男 性 , 下 段 が 女 性 を 表 す 。 注 2) B 1 は 学 部 1 年 生 , B 2 は 学 部 2 年 生 , B 3 は 学 部 3 年 生 , B 4 は 学 部 4 年 生 , M 1 は 大 学 院 1 年生, M2 は大学院 2 年生を表す。. 男 女 ご と に 学 年 別 に 平 均 値 を プ ロ ッ ト し た 図 を Figure 1 と Fig ure 2 に 示 し た 。 次 に , 2 要 因( 学 年 ×性 )の 分 散 分 析 を 行 っ た 。そ の 結 果 , 学 年 差 は「 登 校 回 避 行 動 」と「 登 校 回 避 感 情 」と も に 有 意 で あ り , 性 差 は「 登 校 回 避 行 動 」で 有 意 傾 向 が 認 め ら れ , 男 性 の得点が女性よりも有意に高い傾向が示された。なお, 交互作用は認められなかった ( Table 5) 。 (点). 10. 9. 8 男 7. 女. 6. 5. 0. B1. B2. B3. Figure 1. B4. M1. M2. (学年). 登校回避行動の学年別得点. 注 ) B1 は 学 部 1 年 生 , B2 は 学 部 2 年 生 , B3 は 学 部 3 年 生 , B4 は 学 部 4 年 生 , M1 は 大 学 院 1 年 生 , M2 は 大 学 院 2 年 生 を 表 す 。. 131.
(6) (点). 21 20 19 18 17 16. 男. 15. 女. 14 13 12 11 0. B1. B2. Figure 2. B3. B4. M1. M2. (学年). 登校回避感情の学年別得点. 注 ) B1 は 学 部 1 年 生 , B2 は 学 部 2 年 生 , B3 は 学 部 3 年 生 , B4 は 学 部 4 年 生 , M1 は 大 学 院 1 年 生 , M2 は 大 学 院 2 年 生 を 表 す 。. Table 5. 尺 度 の 2 要 因 ( 学 年 ×性 ) の 分 散 分 析 の 結 果. 登校回避行動 登校回避感情 p † < .10,. 学年差. 性差. F. F. 3.64 26.65. **. 3.82. ***. 1.01. 交互作用 F †. 1.52 0.28. * * p <.01 , * * * p <.0 01. 「 登 校 回 避 行 動 」 と 「 登 校 回 避 感 情 」 は そ れ ぞ れ 学 年 差 が 有 意 で あ っ た た め , Tukey 法 に よ る 多 重 比 較 を 行 っ た ( Table 6) 。 「 登 校 回 避 行 動 」 で は , 学 部 1 年 生 の 得 点 は 学部 4 年生と大学院 2 年生よりも有意に低く, 学部 2 年生の得点は学部 4 年生よりも 有意に低かった。「登校回避感情」では, 学部 1 年生の得点は学部 2 年生, 学部 3 年 生よりも有意に低く, 大学院 2 年生よりも有意に高かった。学部 2 年生の得点は大学 院 1 年生, 大学院 2 年生よりも有意に高かった。学部 3 年生の得点は学部 4 年生, 大 学 院 1 年 生 , 大 学 院 2 年 生 よ り も 有 意 に 高 か っ た 。学 部 4 年 生 の 得 点 は 大 学 院 1 年 生 , 大学院 2 年生よりも有意に高かった。大学院 1 年生の得点は大学院 2 年生よりも有意 に高かった。. 132.
(7) Table 6. 学年差の多重比較の結果 B1. 登校回避行動. 登校回避感情. B2. B3. B4. M1. B1. ―. B2. ―. ―. B3. ―. ―. ―. B4. ―. ―. ―. ―. M1. ―. ―. ―. ―. ―. M2. ―. ―. ―. ―. ―. B1. ―. <. <. B2. ―. ―. B3. ―. ―. ―. B4. ―. ―. M1. ―. M2. ―. <. M2 <. <. ― >. >. >. >. >. >. ―. ―. >. >. ―. ―. ―. ―. >. ―. ―. ―. ―. ―. 注 ) B1 は 学 部 1 年 生 , B 2 は 学 部 2 年 生 , B3 は 学 部 3 年 生 , B4 は 学 部 4 年 生 , M1 は 大 学 院 1 年 生 , M2 は 大 学 院 2 年 生 を 表 す 。. こ れ ら の 結 果 に つ い て 整 理 す る と , 「 登 校 回 避 行 動 」で は , 大 学 院 1 年 生 と 大 学 院 2 年生との間に有意な差が認められず, 大学院において学年差はないことが示された。 また, 大学院 1 年生は学部生の各学年との間に有意な差がないことが示された。学部 1 年生と大学院 2 年生との間には有意な差が認められたが, 全般的には大学院生と学 部生との間に「登校回避行動」はあまり差異が見られないことが示唆された。 ま た , 「 登 校 回 避 感 情 」は , 学 部 生 で は 2~ 3 年 生 で ピ ー ク に 達 し , 4 年 生 で 低 下 す る が, 大学院 1 年生は学部 4 年生よりも低く, さらに, 大学院 2 年生は大学院 1 年生よ り も 低 い こ と が 認 め ら れ た 。 「 学 生 生 活 サ イ ク ル 」 ( 鶴 田 , 2001, 2010) と い う 理 論 に よ る と , 学 部 の 中 間 期 ( 2~ 3 年 生 ) は 「 大 学 入 学 直 後 の 表 面 的 な 適 応 を 一 時 的 に 壊 す ような体験をする時期」であり, 中だるみや無気力も生じやすいとされている。その ためこの時期には「登校回避感情」が一旦高まるが, 中間期を脱すると「登校回避感 情 」 は 低 下 す る ( 堀 井 , 2013) 。 そ し て , 本 研 究 か ら は , 大 学 院 に 進 学 し た 者 は 「 登 校 回避感情」がさらに低下することが示唆された。 昨今, 進路意識や目的意識が希薄なまま「とりあえず」進学する若者が増加してい る ( 文 部 科 学 省 , 2004; 山 口 ・ 堀 井 , 2017) 。 大 学 院 へ の 進 学 に つ い て も 「 進 路 に つ い て十分吟味せず, 『とりあえず』, あるいは『なんとなく』進学している者」(池田, 2010) の 存 在 が 指 摘 さ れ て い る 。 「 と り あ え ず 」 進 学 し た 者 は 研 究 へ の 意 欲 や 向 上 心 が低く, それに伴い「登校回避感情」が高まることが推測される。しかし その一方で, 「大学院生は研究に多くの時間を割き, 研究への自発的な問題意識や取り組みが求め ら れ る 。そ う し た 専 門 的 な 研 究 を と お し て 意 欲 や 自 信 を 高 め る 者 が い る 」 ( 池 田 , 2010) という指摘もある。双方の側面があり得るが, 学生相談の従来の知見を踏まえると, 意欲や向上心が低い大学院生は確かに存在するが, 学部生と比較して目立って多いと いうことはない。大学院生全体としてみれば, 学部生よりは比較的意欲が高いと考え られ, それに伴い「登校回避感情」が低下することが推測される。それは「登校回避. 133.
(8) 感 情 」と の 関 連 が 生 じ う る 悩 み や 不 安 , 特 に 授 業 , 進 路 , 友 人 関 係 に 関 す る 悩 み や 不 安 が 学 部 生 よ り も 大 学 院 生 は 少 な い( 日 本 学 生 支 援 機 構 , 2018)と い う 調 査 報 告 か ら も 裏 付けることができる。但し, 大学院に進学した学生が学部と同じ研究室に所属する場 合は, 環境への馴化の影響もあって「登校回避感情」の低下が促進される可能性もあ る。 性差については, 「登校回避行動」において男性の得点が女性よりも有意に高い傾 向 が 認 め ら れ た 。堀 井( 2013)は 学 部 生 の 結 果 に つ い て , 「 男 子 は『 孤 立 傾 向 』等 を 背 景 に , 授 業 と い う 集 団 場 面 を 回 避 し , 『 登 校 回 避 行 動 』が 高 ま り や す い 」と 指 摘 し て い る。大学院生についても, 男性は女性と比較すると, 集団場面や対人場面を回避し, 「登校回避行動」が高まる傾向にあると考えられる。. まとめと今後の課題 本研究は学部生のデータと比較しながら大学院生の不登校傾向を測定する尺度の因 子構造を確認し信頼性の検討を行い, 併せて学年差と性差についても検討することを 目的とした。その結果, 大学院生不登校傾向尺度は学部生の不登校傾向を測定する尺 度と同様に「登校回避行動」と「登校回避感情」の 2 因子構造であることが確認され た。また, 下位尺度化した「登校回避行動」と「登校回避感情」はともに高い信頼性 (内的整合性)をもつことが確認された。さらに, 大学院生の「登校回避行動」は学 部生と量的に総じて差異が見られず, 男性が女性よりも高い傾向が示された。また, 大学院生の「登校回避感情」は学部生よりも低いことが示された。 これまで学部生の不登校傾向は, その要因と推測される, 精神的健康度の低さ, 精 神的回復力の低さ, 対人恐怖心性, うつ状態, 発達障害特性, アイデンティティ拡散, 自 己 否 定 感 な ど と の 密 接 な 関 連 性 が 報 告 さ れ て い る ( 堀 井 , 2013, 2014, 2015, 2016; 高 田 他 , 2015) 。 し か し , 大 学 院 生 に つ い て は そ れ ら の 関 連 性 が 判 明 し て い な い た め , 今 後, 大学院生不登校傾向尺度を利用し検証する必要がある。また, 学生相談の実際と いう点からは, 不登校傾向を有する大学院生への支援の在り方を検討することが求め られる。 注 1) 堀 井( 2006)の 表 5 及 び 表 7 に よ る 。調 査 対 象 は 東 北 地 方 の 大 学 院 生 744 名( 理 系 男 子 601 名 , 理 系 女 子 82 名 , 文 系 男 子 33 名 , 文 系 女 子 28 名 ) で あ る 。 な お , 表 8 に は 理 系 男 子 の 大 学 院 生 41.4% , 理 系 女 子 の 大 学 院 生 48.8% と あ る が , 正 し く は , 表 5 に あ る よ う に , 理 系 男 子 の 大 学 院 生 46.9%, 理 系 女 子 の 大 学 院 生 52.4%で あ る 。 ま た , 大学院(文系)の場合, 現在在籍する大学院について「行きたくないと思うことがあ り ま す か 」 と い う 項 目 に 対 し て , 「 頻 繁 に 思 う 」 と 回 答 し た 大 学 院 生 は 男 子 3.0%, 女 子 0%で あ り , 「 と き ど き 思 う 」と い う 回 答 を 含 め る と , 男 子 42.4%, 女 子 53.6%と な っ ている。. 引用文献 堀 井 俊 章 ( 2006). 大 学 生 に お け る 不 登 校 傾 向 の 実 態 調 査 . 山 形 大 学 保 健 管 理 セ ン タ ー 紀 要 , 5, 6267. 堀 井 俊 章 ( 2013). 大 学 生 不 登 校 傾 向 尺 度 の 開 発 . 学 生 相 談 研 究 , 33, 246258.. 134.
(9) 堀 井 俊 章 ( 2014). 大 学 生 の 不 登 校 傾 向 と 対 人 恐 怖 心 性 と の 関 連 . 横 浜 国 立 大 学 教 育 人 間 科 学 部 紀 要 Ⅰ ( 教 育 科 学 ) , 16, 135143. 堀 井 俊 章( 2015).大 学 生 不 登 校 傾 向 尺 度 の 開 発( 続 報 ).横 浜 国 立 大 学 教 育 人 間 科 学 部 紀 要 Ⅰ ( 教 育 科 学 ) , 17, 115130. 堀 井 俊 章 ( 2016). 大 学 生 の 不 登 校 傾 向 に 影 響 を 及 ぼ す 心 理 的 要 因 . 横 浜 国 立 大 学 教 育 人 間 科 学 部 紀 要 Ⅰ ( 教 育 科 学 ) , 18, 106114. 井 出 草 平 ・ 水 田 一 郎 ・ 谷 口 由 利 子( 2011).ひ き こ も り 状 態 に あ る 大 学 生 数 の 推 定 . Campus Health, 48(2), 186−191. 池 田 忠 義 ( 2010). 相 談 対 象 に 応 じ た 援 助 大 学 院 生. 日 本 学 生 相 談 学 会 50 周 年 記 念. 誌 編 集 委 員 会 ( 編 ) 学 生 相 談 ハ ン ド ブ ッ ク ( pp.98−102) 学 宛 社 文 部 科 学 省 ( 2004). キ ャ リ ア 教 育 の 推 進 に 関 す る 総 合 的 調 査 研 究 協 力 者 会 議 報 告 書 ― 児 童 生 徒 一 人 一 人 の 勤 労 観 , 職 業 観 を 育 て る た め に ― Retrieved from http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/023/toushin/04012801/002/010.pdf ( 2018 年 10 月 1 日 ) 日 本 学 生 支 援 機 構( 2007).大 学 に お け る 学 生 相 談 体 制 の 充 実 方 策 に つ い て ―「 総 合 的 な 学 生 支 援 」 と 「 専 門 的 な 学 生 相 談 」 の 「 連 携 ・ 協 働 」 ― Retrieved from h t t p s : / / w w w. j a s s o . g o . j p / g a k u s e i / a r c h i v e / _ _ i c s F i l e s / a f i e l d f i l e / 2 0 1 5 / 1 2 / 0 9 / jyujitsuhousaku_2.pdf ( 2018 年 10 月 1 日 ) 日 本 学 生 支 援 機 構 ( 2018 ). 平 成 28 年 度 学 生 生 活 調 査 結 果. Retrieved from. https://www. ja sso. go. jp /abou t/statistics/g akusei_cho sa/__icsFiles/afieldfile/2018 /06 / 01/data16_all.pdf( 2018 年 10 月 1 日 ) 高 田 純・内 野 悌 司・磯 部 典 子・小 島 奈 々 恵・二 本 松 美 里・岡 本 百 合・三 宅 典 恵・ 神 人 蘭 ・ 矢 式 寿 子 ・ 吉 原 正 治 ( 2015). 大 学 生 の 発 達 障 害 の 特 性 と 不 登 校 傾 向 の 関 連 . 総 合 保 健 科 学 : 広 島 大 学 保 健 管 理 セ ン タ ー 研 究 論 文 集 , 31, 27−33. 鶴 田 和 美 ( 2001). 青 年 期 ・ ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 危 機. 下山 晴彦・丹野 義彦(編). 講 座 臨 床 心 理 学 5 発 達 臨 床 心 理 学 ( pp.135−150) 東 京 大 学 出 版 会 鶴 田 和 美( 2010).大 学 生 を 理 解 す る 視 点 学 生 生 活 サ イ ク ル 日 本 学 生 相 談 学 会 50 周 年 記 念 誌 編 集 委 員 会 ( 編 ) 学 生 相 談 ハ ン ド ブ ッ ク ( pp.34−41) 学 宛 社. 山 口 源・ 堀 井 俊 章( 2017).高 校 生 の「 と り あ え ず 進 学 」と 進 路 選 択 自 己 効 力 と の 関 連 に 関 す る 分 析 . 教 育 デ ザ イ ン 研 究 , 8, 80−87.. 135.
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図
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