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Title
「文部科学省がんプロフェッショナル養成プラン(口腔
がん専門医養成コース)」インテンシブコース,がん医
療における口腔ケア,摂食・嚥下リハビリテーションコ
ース海外視察報告
Author(s)
大久保, 真衣; 高木, 幸子; 石田, 瞭; 片倉, 朗
Journal
歯科学報, 111(5): 462-466
URL
http://hdl.handle.net/10130/2614
Right
我々は2010年9月21日から10月18日および2011年 2月7日から2011年2月28日において,東京歯科大 学大学院歯学研究科「文部科学省がんプロフェッ ショナル養成プラン(口腔がん専門医養成コース)」 に併設されたインテンシブコース,がん医療におけ る口腔ケア,摂食・嚥下リハビリテーションコース と し て,ア メ リ カ,フ ロ リ ダ 大 学 Department of Speech, Language and Hearing Sciences, Swallow-ing Research Lab(以下 SwallowSwallow-ing Research Lab と省略)を訪問し,海外における頭頚部の放射線療 法における摂食・嚥下リハビリテーションの実際を 研修させて頂きましたので,ここに研修内容に関し てご報告致します。
Swallowing Research Lab は,フ ロ リ ダ 大 学 の Dental Science Building 内の Speech & Hearing Center に あ り ま す(図1)。メ ン バ ー は Prof. Mi-chael A. Crary, Dr. Giselle Mann, SLP(言語病理学 士)(図2)と言語聴覚士の3名が常勤として構成さ れていました。また8名程度の修士,博士課程の学 生が研究のため Lab 内にて研究を行っていました。 またフロリダ大学 Shands 病院メディカルプラザ (図3)の放射線治療科においても摂食・嚥下リハビ リテーションを行っており,放射線治療が始まる前 の説明と同時にリハビリテーションの説明も行える という様子でした。Swallowing Research Lab のメ ンバーがこの2か所の診療室を往復しながら診療を 行っていました。このため患者の通院の負担が少な く,治療前の限られた時間で,有意義な多くの術前 評価を行っていました。
海外研究レポート
「文部科学省がんプロフェッショナル養成プラン(口腔がん専門医
養成コース)」インテンシブコース,がん医療における口腔ケア,
摂食・嚥下リハビリテーションコース海外視察報告
大久保真衣
1)高木幸子
2)石田 瞭
1)片倉 朗
2)3) キーワード:海外視察 がん 摂食・嚥下 1)東京歯科大学千葉病院摂食・嚥下リハビリテーション・ 地域歯科診療支援科 2)東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座 3)東京歯科大学大学院歯学研究科 がんプロフェショナル 養成プランコーディネーター (2011年7月19日受付) (2011年9月5日受理) 別刷請求先:〒261‐8502 千葉市美浜区真砂1−2−2 東京歯科大学千葉病院摂食・嚥下 リハビリテーション・地域歯科診 療支援科 大久保真衣Mai OHKUBO1), Sachiko TAKAKI2), Ryo ISHIDA1), Akira KATAKURA2)3): Overseas Observations Report for the Ministry of Education, Culture, Sports, Science & Tech-nology in Japan Training Programs for Health-care Pro-fessionals : Specialist Course in Oral Cancer, Intensive Course, Oral Care and Dysphagia Rehabilitation Course (1)Department of Dysphagia Rehabilitation and Commu-nity Dental Care,Tokyo Dental College Chiba Hospital 2)Department of Oral Medicine, Oral and Maxillofacial Surgery, Tokyo Dental College3)Training Program for Oncology Professional Plan Coordinator, Tokyo Dental College Graduate School PhD course)
図1 Speech & Hearing Center は Dental Science Build-ing2階に位置している。
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診療の流れ 初診時,放射線治療に伴う嚥下障害,構音障害, それに対するリハビリテーション内容について説明 を行っていました。その後,診療上取得したデータ を研究のために使用してもよいか話していました。 患者に診療行為で必要となるデータを活用するため 新たな負担を生じることがない,プライバシーを守 る,拒否する権限等の説明を行っていました。ほと んどの場合,説明書を持って帰ってもらい改め考え て頂き,次回約束日に答えを聞くという様子でし た。承諾を得た場合は,診療の同意書と研究の同意 書を最初の段階で一緒に得ていました。 診療開始時に,一人一冊ずつ治療前から治療後 フォローアップ数ヶ月後から5年後までの項目があ るカルテを作成していました。このため一人分のカ ルテは電話帳ほどの厚さになっています。しかし評 価項目,画像診断記録の評価用紙がすべて集約され ているので,未実施であったりすることがないよう に思えました。一般的な問診とともに,頭頚部がん 患者用 The Mann Assessment of Swallowing Abil-ity(以下 MASA-C)を用いていました。急性期脳血 管疾患患者用の The Mann Assessment of Swal-lowing Ability1) と内容がやや異なり,がん患者は意 思疎通が出来るため,指示に対する動作的な項目が 増え,さらに放射線治療の影響も考慮して口腔乾燥 に 対 す る 項 目 も 増 え て い ま し た。こ の MASA-C は,近々出版されるとの事でした。MASA-C の評 価が終わると,嚥下痛や嚥下困難を評価する
Vis-ual analogue scale を用いて,患者の主観的な評価 を行っていました。次に治療前のリンパ節腫大の確 認,舌の上下可動域,抵抗力,開閉口運動や膨らま し運動などの口腔の運動領域の確認,構音状態の確 認をしていました。Body Mass Index をとるため に身長,体重情報や基本的な食生活の情報等を記録 していました。 その後内視鏡検査や嚥下造影検査などの画像検査 を行っていました(図4)。まず始めに内視鏡検査 で,発音を行い,軟口蓋や喉頭の動きを評価しま す。その後緑色や青色のジュース(GatoradeⓇ ),に 増粘剤を入れた粘度の違うもの2種類と,増粘剤を 入れないもの全部で3種類を用意し,シリンジで摂 取させ,嚥下のタイミングや誤嚥の有無などを評価 していました。全ての画像データおよび音声データ は音響・音声解析装置,解析ソフトウェア KAY-Pentax(Pentax 社 製)を 用 い て 保 存 さ れ て い ま し た。また Shands 病院の放射線治療科内にある嚥下 内視鏡データにも繋がっているため,Dental Sci-ence Building 内の Speech & Hearing Center でも Shands 病院のデータをチェック出来るようになっ ていました。このシステムは放射線科領域で使用さ れている PACS(Picture Archiving and Communi-cation System,画像保管管理システム)のようなも のを目指したとの事でした。撮影後は画像を見せな がら,現在の嚥下の状態,今後の考えられる嚥下障 害等を説明していました。 次に,同日に放射線科にて嚥下造影検査を行って いました。消化管造影などで汎用される X 線透視
図2 Prof. Michael A. Crary(写真右),Dr. Giselle Mann (写真左)と筆者(写真中央)。
図3 フロリダ大学 Shands 病院メディカルプラザ。
歯科学報 Vol.111,No.5(2011) 463
装置を使用しており,立位のままバリウムを摂取し てもらっていました。あらかじめ研究等でも活用す るため,金属のついたネックホルダーを巻いても らっていました(図5)。このネックホルダーは中央 部と側方部(脊髄部相当部に沿うように)に位置づけ られ,一定間隔に金属の片がついているものでし た。このため距離の測定や頭部の傾斜の状態を評 価,計測することが可能でした。摂取してもらうバ リ ウ ム は E-Z-EM 社 製 の Varibar2) で し た。こ の Varibar は液体,はちみつ状,プリン状と形成され て製品化されています。このそれぞれの形状の製品 をシリンジに入れて摂取していました(図6)。製品 化されているため,摂取された物性が一定で,再評 価が容易であると考えられました。嚥下造影検査中 は幹部用プロテクターと頸部用プロテクターを着用 した放射線医と担当の言語聴覚士が,検査室内に 入って,一緒に撮影していました。撮影後は内視鏡 検査と同様に,すぐに患者に嚥下造影の画像の説明 をしていました。その後,同日もしくは後日,MRI 検査を行っていました。これは主に放射線科が行 い,中咽頭収縮筋相当部や顎舌骨筋などの ROI(関 心領域 Region of Interest)を計測していました。 また今回見学できませんでしたが,心理士が心理状 況を評価,記載する欄もありました。 この治療前データを全て取得してから,リハビリ テーションが施行されました。基本リハビリテー ションは一つ一つは複雑なものではありませんでし た。①発声:高音でイーと5秒間発声します。可能 であればいわゆる裏声で行います。これを10回行い ます。②舌抵抗:舌を口蓋に5秒間押し付けます。 これを10回行います。③ハードスワロー:唾液嚥下 図4 各検査機器と摂取食品。3種類の粘度と量を変化させて検査を行う。 図5 金属のついてネックホルダー,金属板が等間隔で並 んでいる。 大久保,他;がんプロ,インテンシブコース海外視察報告 464 ― 8 ―
後息を5秒間止める。これを5回行います。④開閉 口運動:ATOS MEDICAL 社製セラバイトを用い て,顎の開閉口運動を5秒間ずつ行います。体調に 合わせて,抵抗力の強さの調整を行っていました。 この①から④までを1セットとして,計4セット 行っていました(図7)。さらに1日2回,つまり1 日8セット行うのが基本となっていました。実際に 患者さんとともに一緒に行ってみると,1回行う分 には簡単ですが,継続すると疲労度が増し,続けて 行うのは大変困難となりました。患者さんは放射線 治療の影響を受けているので,毎日最低1回は担当 の言語聴覚士が状態をチェックしており,悪心など の体調不良や口腔乾燥などにより施行不可能な場合 は,回数を減らしたりして調整していました。 治療効果を検討する研究では,電気刺激装置(Es-tim)の効果を実際に検証していました。摂食・嚥下 リハビリテーションで用いられる治療的電気刺激 は,表面電極で経皮的に舌骨周囲筋群などを刺激 し,筋収縮を得ながら一定の嚥下訓練を行う方法で す3) 。対象となるのは,脳卒中による咽頭期嚥下障 害患者や頭頚部がん患者などでした。それぞれの症 状を熟知して刺激装置の電極貼付の部位を考慮して おり,内視鏡検査や嚥下造影検査を行いながら評価 検討していました。 今回の研修で学んだことの1点目は,摂食・嚥下 機能評価の厚いカルテに象徴されるように,治療前 から治療後にいたるまでの長期的な継続した嚥下評 価を行うことの重要性でした。そのためにも評価項 目の統一性,評価基準のずれがないようにする必要 性があると考えました。これには担当する者の評価 基準のキャリブレーションや,日々の観察評価の鍛 錬が必要と考えました。放射線治療前の慌しい時間 にも,嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査,心理士の評 価等の術前評価をしっかりと行っていました。治療 前からの介入し,術前評価をしっかり行っていく重 要性を再確認しました。2点目は,放射線治療中に おけるリハビリテーションの継続力です。リハビリ テーション担当医が毎日のように,放射線治療前後 に患者に面会し,リハビリテーションを継続させま す。体調,症状の問題もあるので,リハビリテー ションメニューを変更させながら,可能な限り毎日 のように行います。実際,体調がかなり悪く,リハ ビリテーション担当者に面会すら不可能な患者さん もいらっしゃいました。患者さん側からすると,た だでさえ辛い状況なのに,更に過酷なリハビリテー ションを行いに来るリハビリテーション担当者は, 顔も見たくないというのが本音でしょう。なぜリハ ビリテーションが必要なのかは頭で理解はしている が,身体がついていかないという様子でした。この ような場合リハビリテーションは行わず,現在の症 状等について治療担当医とディスカッションを行 い,状態の把握を行っていました。リハビリテー ションは行わなくても,挨拶など行いながら患者と の関係性は保ち,状態が回復した時に少しずつリハ 図7 基本リハビリテーションの流れ。 図6 Varibar を示す。日本では未承認である。 歯科学報 Vol.111,No.5(2011) 465 ― 9 ―
ビリテーションを再開することがスムーズでした。 3点目は,患者および患者家族とのコミュニケー ションの重要性です。食事は生活の一部なので,生 活環境,生活習慣を聞き出すために,気さくな雰囲 気でありながら生活の状態を聞き出すようにしてい ました。コミュニケーション・スキルの更なる向上 と聞き出すための時間の確保が必要であると考えら れました。 今後東京歯科大学病院で摂食・嚥下リハビリテー ションをどう実践してゆくべきかですが,1点目と してあげられるのは,他科との連携の強化です。現 在,東京歯科大学千葉病院では定期的に口腔外科と 放射線科を主に腫瘍カンファレンスを開催していま す。このカンファレンスには,口腔外科歯科衛生士 や摂食・嚥下リハ科も参加しています。これにより 病態の把握や術式の決定などを理解し,術前から必 要となるリハや口腔ケアの介入をしています。また 東京歯科大学市川総合病院でも,定期的に口腔外科 担当医,言語療法士と共に嚥下カンファレンスを開 催し,術前・術後の嚥下評価・リハビリ上の問題点 の抽出を行なっています。これをさらに発展させ継 続的に一人の患者を口腔外科担当医や歯科衛生士, 看護師,栄養士,薬剤師などと情報を共有して,協 議出来るシステム作りが必要であると考えます。ま た退院後の患者のリハも同様に継続してフォローし ていきたいと考えます。2点目は,日本人にあった リハ内容の修正開発です。フロリダ大学で行ってい るリハ内容は,一つ一つは簡単ですが何回も繰り返 し行うため量があります。このためかなりの体力を 消耗します。慣れてくれば問題ないということでし たが,体格的にも異なる日本人の高齢者には困難で あると考えます。このため,高齢者向けにやや負荷 を抑えたリハビリテーション内容にすることが必要 であると考えます。3点目は,リハビリテーション と補綴装置の開発です。日本のがん治療は外科治療 がメインです。このため,器質的な欠損部位には装 置等で補い,その装置と併用してリハビリテーショ ンを行う必要があると考えます。特に舌,口腔底 部,顎骨などの準備期不全の患者には重要であると 考えます。 さらに今回研究面でも参加させて頂く機会を得ま した。McNeill dysphagia therapy program を行っ た患者の嚥下のタイミングの違いを検討しました4)
。 嚥下圧のタイミングは,嚥下障害患者と健康成人高 齢者,若年者で比較するとタイミングが遅かったの ですが,McNeill dysphagia therapy program を行 うと改善出来るという結果を得ることができまし た。 今回の研修を通じて,認知に問題ないがん患者に おいて積極的に機器類を使用して,摂食・嚥下リハ ビリテーションを行う優れた医療の現状を体験し, 今後の日本における摂食・嚥下リハビリテーション の在り方や改善点が理解出来たと思いました。我々 にとって興味深い研修で,摂食・嚥下リハビリテー ションの在り方を再考出来る貴重な経験でした。 謝 辞 今回の海外視察を無事実現でき,東京歯科大学金子譲理事 長,井出吉信学長,大学院歯学研究科長井上孝教授,口腔外 科学講座柴原孝彦教授,オーラルメディシン・口腔外科学講 座山根源之名誉教授に心より感謝します。またこのような視 察を快く許可していただいたフロリダ大学 Swallowing Re-search Lab, Michael A.Crary 教授およびスタッフの方々に 感謝いたします。またこのような視察が実現したのは,東京 歯科大学の先生方,事務職員のご支援のお陰であります。こ の場をお借りしまして深く感謝の意を述べさせて頂きます。 本視察は文部科学省「がんプロフェショナル養成プラン」 により行なった。 文 献
1)Giselle Mann:Masa:The Mann Assessment of Swal-lowing Ability(Dysphagia Series),Singular Pub Group, US, 2002.
2)Lindsay Strowd, Julie Kyzima, David Pillsbury, Tom Valley, Bruce R, Rubin. Dysphagia Dietary Guidelines and the Rheology of Nutritional Feeds andBarium Test Feeds.Chest, 133:1397∼1401,2008.
3)Giselle D.Carnaby-Mann, Michael A. Crary. Examining the Evidence on Neuromuscular Electrical Stimulation for Swallowing A Meta-analysis. ARCH OTOLARYN-GOL HEAD NECK SURG, 133:564∼571,2007. 4)Yue Lan, Mai Okubo, Giselle Carnaby-Mann, Isaac Sia,
Giedre Berretin Felix, Michael A. Crary. Improved Tem-poral Coordination of Swallowing Following the McNeill Dysphagia Therapy Program(MDTP). The 2011 Dysphagia Research Society Annual Meeting Abstracts, 106,2011. 大久保,他;がんプロ,インテンシブコース海外視察報告
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